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変わりつつある町(3) 滞在型観光 [87.根室の話題]

 2,008年3月14日   ebisu-blog#137 
 総閲覧数: 7292/109 days (3月14日23時30分) 

 
  午後9時半、合同庁舎前の温度表示板は+5度。見間違えたかと思った。この時間帯では今年最高気温である。屋根を叩く雨音が心地よい。

 老舗の大野屋旅館が暖房設備の工事で休業したままである。もう1ヶ月以上たつがどうやら店じまいだったようだ。いろいろ噂は流れていた。2度利用したことがあったが、残念である。
 春国岱は一昨年の台風もどきの低気圧で倒木被害が30%近くにものぼることが明らかになった。それでも、大鷲は今日も春国岱の上空を飛んでいる。観光スポットとしては素晴らしい場所である。
 ところが木道は荒れ果てたまま整備されていないし、太いものでは直径80センチほどもある丸太で組まれた展望台も朽ち果てるに任せて、登ることすらできない。
 根室はパッケージ観光旅行では通過ルートに当る。滞在型の企画はほとんどないようだ。東根室駅も観光スポットのひとつだが、トイレすら整備されていない。列車で来て東根室でバスに乗り換えるツアーやバスで周遊してくるツアーがある。今年はとっくに始まっている。夏になると毎日何台かバスが停まるが、トイレがないので旅行客が気の毒である。明治公園内に二つもトイレを整備するくらいなら、観光客が訪れる最東端の駅である東根室にトイレの設置をすべきだろう。トイレを我慢できなくなったバス客が近所にトイレを借りに駆け込むことがある。

 滞在型の観光には宿泊施設が必要だが、老舗の大野屋旅館に続いて他の旅館が店じまいするようなことがないことを祈りたい。グランドホテルは相変わらず青息吐息のようだ。設備は古いままで外装も手入れがなかなかされない。その一方で、民宿常盤が開業した。しかし、根室全体では宿泊室数が減っている。新年度はどうなるだろう。旅館、ホテル、民宿は総じて勢いがないように見える。
 
 温泉の出ないことが大型の宿泊施設ができない理由のひとつに上げられるだろう。50度クラスの温泉さえ出れば、宿泊施設のみならず泉質によっては他にも用途が考えられるだろう。温泉付の特別養護老人ホームがあっても好いし、新病院のお風呂や暖房に利用することもできるかもしれない。

 根室には窓を開けて車を走らせていると、硫黄の匂いのする場所が一箇所ある。気のせいかもしれないし、そうでないかもしれない。私にはわからないので、専門家が調査して欲しい。

 市立病院赤字を住民一人当たり1万円に縮小できたら、年間9億円近いお金が浮いてくる。温泉掘削技術は近年ずいぶん進化したと聞く。根室市で温泉を掘削して、うまくいったら、ホテル業者にお湯を販売しても好いのではないか。地元資本でできないなら、自治体でやるという手がある。それくらいの遊び心が実現できるような健全財政でありたいものだ。

  このようなことを書き連ねながらふと別のことも頭に浮かぶ。朽ち果てるのを待つかのように丸太でできた展望台が白化している。さびしい感じはするが、人間の営為などいずれはこの展望台と同じ運命、生きていたものが白骨と成り果てることを象徴しているようにも見える。
 そうしてこの春国岱をもう一度眺めるとき、寂れたなかに実に味わい深い風情が感じられるのも事実である。
 気がつくと私が大鷲を見ているのではなく、大鷲が人間を観察しているようにも見えてくる。大型宿泊施設や温泉が根室のために必要か?そう問いかけるかのように大鷲が防波堤のコンクリートに佇んでじっとこちらを見ている。
 町の繁栄は自然破壊をもたらす。春国岱はこのままの方がいいのかもしれない。自己の利益のみを考える輩は時間とともに滅ぶ。人間よ、謙虚に、そして豊かな自然に遠慮しながらつましく暮らすべきだと大鷲が語ったような気がした。


変わりつつある町(2) 小売業 [87.根室の話題]

  2,008年3月14日   ebisu-blog#136 
 総閲覧数: 7248/109 days (3月14日13時40分) 

 
 風の強い日である。海氷はオホーツクのはるか彼方に消え去り、結氷した沿岸に取り残された氷が残るのみである。今朝の最低気温はは0付近だっただろう。

 市内の出生数の顕著な減少が幼児対象のビジネスに影響していることを前回のブログで書いた。この5年間で30%の減少である。同じ減少率を続けると假定すると平成23年には年間出生数が170人ほどになってしまう計算である。顧客が半分になるということだ。小学校や中学校の統廃合は時間の問題である。いずれは市内4校体制になるだろう。厚床地区にひとつ、歯舞地区にひとつ、市街化地域に二つである。

 小売業の変化はもう数十年前から一貫した傾向が出ている。仕入れができない。地元小売店単独での仕入では、全国展開チェーンにかなわない。最初の事例がファミリーデパートである。ポスフールに変わっている。今年度は、マルシェデキッチンがJRの系列になって息を吹き返したように見える。お店は以前よりもだいぶ込んでいる。地元単独の仕入ではポスフールや札幌コープに太刀打ちできない。こうして仕入を軸に系列化が進む。
 最近、セブンイレブンの進出が噂されている。市内に5店舗開業するという。いくつか具体的な話が伝わってくる。著名な全国チェーンである。
 周辺に位置する地元の小売店やコンビにとっては脅威だろう。最初は地元小売店が淘汰される。次に、大型店とコンビ二との間の競争が始まるだろう。

 もう地元企業が単独仕入で対抗できる余地がないようだ。翻って、中標津の東武サウスヒルズはよく戦っているようにみえる。たいしたものだ。実情はきついのかもしれない。
 新年度は、セブンイレブンが何店舗か開店するだろう。市民にとっては便利になるが、古くから続く地元の小売店で店じまいするところが出てくるかもしれない。
 仕入れ量が違うし、仕入れルートも違う。地元の小売店が仕入れるよりも安い値段で売っても利益がある。それほど仕入れ値段が違う。わたしもある大手企業で購買担当者の経験が数年あるので、規模の小さい企業の仕入れ交渉に限界のあることはよくわかる。問屋とは値段の交渉はしない。問屋をパスしてメーカーと直に交渉をする。問屋の役割は在庫を抱えて、注文したらすぐに納品できる倉庫機能として使っていた。購入量が違えば交渉の仕方もルートも違うのは当たり前だろう。全国チューン店が地元資本を駆逐していくさまは時代の流れであるのだろう。
 緑町商店街は昔日の面影がないほどに寂れた。かろうじて人がにぎわうのは、お盆と金比羅さんのお祭りのみである。