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#4109 Sapiens: p.8 Oct. 19, 2019 [44-2 Sapiens]

<最終更新情報>
10/20 朝6時20分itの用法解説追記 10時15分<余談:平井呈一>を追記 
10/21 朝8時20分 itの用法、江川泰一郎『改訂三版・英文法解説』からの引用追記


 話がつながっているので、読者の便利のために前回の文を再掲する。
Mommals weighting sixty kilograms have an average brain size of 200 cubic centimetres.  The earliest men and women, 2.5 million years ago, had brains of about 600 cubic centimetres.  Modern Sapiens sport a brain were  averaging 1,200-1,400 cubic centimetres. Neanderthal brains were even bigger.  
  That evolution should select for larger brains may seem to us like, well, a no-brainer. 

 ここまで、前回とりあげた。ここからが、今回取り上げる文。

(1)  We are so enamoured of our high intelligence that we assume that when it comes to cerebral power, more must be better.

 辞書を引いてしばらく考えていたが、構文がつかめないという。なんてことはない、受験英語でお馴染みの「so…that」構文である。「…」の部分が長いだけ。「問題をよりよくとくために必要なだけの小部分に分割すること」。(デカルト『方法序説』「四つの規則」、「第二」より)
a) We are so enamoured of our high intelligence that we assume that
b) when it comes to cerebral power
c) more(=(larger brains) ) must be better

  bの文に使われている [come to] の訳にこまっていた。これは成句である、用例を知らないと訳せない。ジーニアス4版を引いても、適当な用例が見つからなかった。生徒の質問にはトコトン付き合わなければならない。わからなければ、わからぬと言い、そして調べる誠実さが教える側には必要だと思う。生徒からの質問は、内容によっては自身の勉強の機会でもあるから、ありがたいことなのだ。勉強の楽しさはこういう探索をすることにも見出せる、面白いのである。丁寧に『英語基本動詞辞典』のcomeの項を読んでいく。こういう専門辞書を丁寧に読むことは、これを作った小西友七さんの膨大な知識の一部をわが身に吸収することを意味している。それが積み重なっていくことで、思考にゆっくりと変化が訪れる。
------------------------------------------
NB30 「O<人[物・事]ということになると」の意で 'when it comes to O'  《Oは名詞・動名詞》の成句表現がある。:Joe is not good in sports, but when it comes to arithmetic he's the best in the class.--Makkai  ジョーはスポーツは不得意だが、算数となるとクラスで一番だ / I get nervous when it comes to tolking to Mr. Johns.--Clark  ジョーンズ氏と話す段になると神経質になる 
------------------------------------------
 役に立つ辞書です。英語が好きな生徒諸君は、正月のお小遣いで購入したらいい。「基本動詞」「形容詞・副詞」「名詞」の三種類が出ている。『英語基本動詞辞典』はcomeの用法解説に9頁を費やしている。

 toは「到達」を表すので、whenが付加されると、「それが算数のところまで来ると」⇒「算数となると」、こういうことだろうか。
 この節で主語となっている it は、<[漠然と状況・事情を示して]■決まり文句に多く、日本語に訳さない>。ジーニアス4版には用例として、次の文が載っている。
-------------------------------------------
 It's your turn. あなたの番です /  How's it going.ご機嫌(景気)はいかが? /  I made it.間に合った。やったぞ /  It happens.よくあることだよ /  Forget it.(そのことは)もういいよ / Can it.うるさい  / Hold it. とまれ / Get it? わかった(=I got it.) 
-------------------------------------------

 英語が苦手な高2の生徒5名相手にやっている英語短期特訓補習授業#4105の(11)で 'It's your turn.'をとりあげている。https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-10-17
 高校生がもっている受験英文法書にはどうなっているのか調べてみた。江川泰一郎『改訂三版・英文法解説』の代名詞の章「36. 状況のit」「(1)主語となる例」の4文例目(p.48)にピッタリ('come to'も含まれている)のものが載っていたので紹介する。

-------------------------------------------
When it comes to making things, Mike is the cleverest person I know.
(何か物を作るとなると、マイクほど器用な人を知らない)
-------------------------------------------
 '状況のit'の文例として、成句の'come to'を絡めたものを選ぶところに江川先生のセンスの良さがでている。驚き桃の木山椒の木です。


a) わたしたちは自分の高い知能に酔いしれているので、that以下のことを前提に考えている
b) 大脳のパワーとなると
c) より大きい脳のほうがいいに決まっている

 that節が2回出てきて、あとのほうはthat whenとなっているし、最後の節は主語が省略されているので、頭がくらくらして、真っ白けになったのだろう。「…」が短ければ、「so…that」構文を見落とすはずがない。大きな脳をもっていても、時に麻痺してしまう。(笑)
 わたしも成句表現の勉強になった。だから、教えるということは勉強するということと同義である。
 論理を追って読んでいれば、「more=larger brains」であることはだれでも気がつく。英語は同じ語を続けて使わないから、比較級を含む名詞句はこの場合のようにmoreで言い換えたら読み手にわかる、初めて見たね。ハラリは読み手にその程度の読解力のあることを前提に、この本を書いている。
「わたしたちは自分の高い知能に酔いしれているので、脳となると、大きい方がいいに決まっていると考えている」

「わたしたちは自分の高い知能に酔いしれているので、脳については、大きいに越したことはないはずだと思い込んでいる」柴田訳
 柴田訳でもitは訳出されていない、決まり文句のitだから、ジーニアスの説明通りの処理をしている。
 ここでも訳文の言葉の節約の跡がみられる。「脳がより大きい」⇒「大きい」。

 assumeには「仮定する、前提する、妥当である」などの訳語があるが、「思い込んでいる」とさらりと片付けたところが巧い。
 こうして丹念に見て行くと、プロの技は参考になる。わたしたちは訳文を短縮する必要がないのだから、ハラリが脳にイメージしたものを、誤解なく伝えるわかりやすい訳文をこころがけたらいい。でも、本音を言うと、永井荷風の『断腸亭日常』のような、短くて切れる日本語で書いてみたいものだ。彼の弟子の平井呈一の翻訳は切れる日本語、臨場感のある日本語翻訳として最高水準を見せてくれている。ラフカディオ・ハーンの作品で鬼気迫るものがある。遠藤利國あるいは平井呈一で弊ブログをググれば出てくると思う。「余談」に追記・引用しておく。



(2)  But if that were the case, the feline family would also have produced cats who could do calculus and frogs would by now have launched their own space programme. Why are giant brains so rare in the animal kingdom?

 ここは構文がつかめなかったのではなく、論理的整合性がとれなくなってしまっての質問だった。話の筋が見えなくなっただけ。仮定法過去の文だから、もうちょっとで独力で読めただろう。
 the case: 真相、事実、ほんとう   feline:ネコ科の  calculus:微分積分

a) But if that were the case,
b) the feline family would also have produced cats who could do calculus
c) and frogs would by now have launched their own space programme


  ここまで切り離したら、仮定法を勉強し終わった高校2年生にはそれほど難しくない。
a) しかし、それが本当のことだとしたら、
b) ネコ科は微積分のできる家猫を産み出しただろうし、
c) カエルはいままでに自らの手でつくった宇宙計画を発進させているだろう

 指示詞のthatは「進化がより大きな脳を選んだということ」を受けている。

「だが、もしそれが正しければ、ネコ科でも微分や積分のできる動物が誕生していただろう。」柴田訳
 文字の節約のためだろうか、柴田訳にはカエルが宇宙計画をスタートさせる話はカットされている。

 Why are giant brains so rare in the animal kingdom?
 「なぜ巨大な脳は動物界ではそんなにも稀なのか?」
 
「ホモ属だけがこれほど大きな思考装置をもつに至ったのはなぜなのか?」柴田訳
 翻訳のプロの意地だね、ここは原文が類推できるような甘い日本文にはしないという、柴田さんの意地を感じました。

 これで解説終わりです。O君、すっきりしたかな?
 Z会のテストで出てくる長文が、語彙は教科書の3倍くらい、構文も複雑なものが多いので、理解できなところが出てくると言っていたが、次第に読み慣れてくる。

<余談:平井呈一の名訳>
#2550 文脈把握問題(1):『風とともに去りぬ 三』から Jan. 1, 2014
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2014-01-01


 では、どういう翻訳がいいのかということになるが、具体例を一つ挙げておきたい。
 たとえば、ラフカディオ・ハーンの著作の翻訳者である平井呈一の翻訳物に比べたら、日本語の使い方の巧みさは到底かなうものではない。それは日本文学に対する造詣の深さの差と作文修行の差だろう。平井は荷風の直弟子である。あることで荷風の逆鱗に触れ、破門になり、郷里へ戻って翻訳を始めた。
 平井の訳は登場人物の息遣いがはっきりわかる緊張感のあるものになっている。遠藤利國著『明治廿五年九月のほととぎす』のラフカディオ・ハーンの章に転載された『日本雑記』の平井の訳(131~135㌻)を読めばその腕のすごさと日本語のセンスのよさがわかる。こういう名訳が絶版になり消えていくのはもったいない。翻訳のお手本として残したいものだ。

==========================

 ハーンは明治二十七年に熊本を去り、二十九年四月には漱石が松山中学から五高に転任するが、この頃の熊本には十五年ほど前の西南戦争の記憶がまだ生々しく残っていたらしい。ハーンは1901(明治三十四)年に Japanese Miscellany (邦題『日本雑記』あるいは『日本雑録』を出版したが、そのなかに「橋の上」という題で、炎暑の厳しい夏のある日、熊本市内を流れる白川にかかる古い橋の上で平七老人という出入りの俥屋から聞いたという、次のような話しを記している。

 「二十二年前」と平七が額を拭きながらいった。「いえ、二十三年前に―わしはここに立って、町の焼けるのを見とりました」
 「夜かね?」とわたくしは尋ねた。
 「いえ」と老人はいった。「昼過ぎでござんした。―雨のしょぼしょぼ降る日で。・・・・戦の最中で、町はカジで焼けとってね」
 「だれがいくさをしていましてか?」
 「お城の兵隊が薩摩の衆といくさをしとりました。わしらはみな弾丸(たま)よけに地べたに穴を掘って、その中に坐っとりました。薩摩の衆が山の上に大筒を据えたのを、お城の兵隊がそいつを目がけて、わしらの頭越しにドカン、ドカン打ちましてな。町じゅうが焼けました」
 「でも、あなたどうしてここへ来ましたか?」
 「逃げてまいりました。この橋のとこまで駆けてまいったのです。―ひとりでな。ここから三里ばかり離れたところに、兄貴の農家があったんで、こっちはそこへ行こうと思って。ところが、ここで止められましてな」
 「だれが止めましたか?」
 「薩摩の衆です。―なんという人だったか分かりません。橋までくると、百姓が三人いましてな。―こっちは百姓だと思いました。―それが欄干によりかかって、大きな笠をかぶって、蓑を着て、わらじをはいとりますから、わしは丁寧に声をかけると、なかのひとりがふりかえって、『ここに止まってろ!』といって、あとは何もいいません。あとの二人もなにもいいません。それで、こりゃあ百姓じゃないとわかったんで、わしは恐くなりましてな」
 「どうして百姓じゃないことが分かったのですか?」
 「三人とも、蓑の下に長い刀(やつ)を―えらく長い刀をかくしとりますんで。ずいぶんと上背のある男たちで、橋の欄干によりかかって、じっと川を見おろしとりました。わしはそのそばに立って、―ちょうどそこの、左へ三本目の柱のところへ立って、同じようにわしも川を眺めておりました。動けばバッサリ殺(や)られることは知れとります。だれもものをいいません。だいぶ長いことそうやってらんかんによりかかっとりました」
 「どのくらい?」
 「さあ、しかとは分かりませんが、―だいぶ長かったに違いござんせん。町がどんどん燃えとるのを、わしは見とりました。そうしとる間、三人ともわしにものも言わんし、こっちを見もせんし、ただじっと水を眺めとる。すると馬の音が聞こえてきました。見ると、騎兵の将校がひとり、あたりに目をくばりながら、早足でこっちへやってきました。・・・・」
 「町から?」
「さいで。―あのそれ、うしろの裏道を通りましてな。・・・・三人の男は大きな編笠の下から、騎兵のくるのをじっとうかがっとりましたが、首は動かさずに、川を眺めているふりをしとる。ところが、馬が橋へかかったとたんに、三人はいきなりふり向いて、躍りかかりました。ひとりが轡(くつわ)をつかむ、ひとりは将校の腕をにぎる、三人目が首をバッサリ。―いやもう、目にもとまらぬうちに。・・・・」
 「将校の首をかね?」
 「はい。キャアともスウともいわんうちに、はやバッサリで。・・・・あんな早業は見たことござんせん。三人ともひとことも申しません」
 「それから?」
 「それから三人して死骸を橋の上の欄干から川へ投げ込みました。そして、ひとりが馬をいやというほど殴りますと、馬はつっ走りました。・・・・」
 「町の方へ戻ったのか?」
 「いいえ、馬のやつは向こうの在の方へ追いやられましたんで。・・・・切った首は川へ捨てずに、その薩摩の衆のひとりが蓑の下に持っとりましたよ。・・・・それからまた三人して、先ほどと同じように欄干へもたれて、川を見ております。わしはもう膝がガクガク震えて。顔を見るのも恐くて、―わしは川をのぞいとった。・・・・しばらくするとまた馬の音が聞こえました。わしはもう、胸がドキドキして、心持が悪うなってきて。―ひょいと顔をあげてみると、またひとり騎馬兵が道をパカパカ駆けてきよった。橋にかかるまで、三人とも身じろぎもしない。と、かかったとたんに、首はバッサリ。そしてさっきと同じように、死骸を川へ投げ込んで、馬を追っぱらう。そんなふうにして三人斬ったね。やがてサムライは橋を立ち去っていきよった。」
 「あなたもいっしょに行きましたか?」
 「いえ。―やつら、三人目を斬るとすぐ出かけたですよ。―首を三つさげて。わしのことなんか目もくれなかったね。わしは、その衆がずっと遠くへ行っちまうまで、動くのが恐くて、橋の上にすくんでおりました。それから燃える町の方へ駆けもどったが、いや駆けた、駆けた!町へはいったら、薩摩勢は退却中だという話しを聞きました。それからまもなく、東京から軍隊がやってきよって、それでわしらも仕事にありついて、兵隊にわらじを運んだね」
 「橋の上で殺されるのをあなたが見た人たちは、何という人?」
 「わからないね」
 「たずねてみようともしなかったの?」
 「へえ」 平七はまた額をふきながら、「いくさがすんでよっぽどたつまで、わしはそのことはぷつりともいわなかったからね」
 「どうしてね?」
 平七は、ちょっと意外だという顔をして、気の毒だといわんばかりににっこり笑いながら答えた。―
 「そんなことを言っちゃ悪いものね。―恩知らずになりますもの」
 わたくしは、真っ向から一本やられたような気がした。
 われわれはふたたび行をつづけた。

==========================

 やはり、文学作品は日本文学を志し、ある程度の修業を積んだ者がやるに限る。平井は永井荷風の直弟子で、師匠から破門された異端児である。ご覧の通り、腕は確かだ。




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#4106 Sapiens: p.8 The Cost of Thinking Oct. 18, 2019 [44-2 Sapiens]


Mommals weighting sixty kilograms have an average brain size of 200 cubic centimetres.  The earliest men and women, 2.5 million years ago, had brains of about 600 cubic centimetres.  Modern Sapiens sport a brain were  averaging 1,200-1,400 cubic centimetres. Neanderthal brains were even bigger.  
  That evolution should select for larger brains may seem to us like, well, a no-brainer. 

 体重60㎏の哺乳類の平均的な脳の容積は200㏄、250万年前の人類は600㏄、これらに対して現生人類はⅠ200-1400ccもの巨大な脳をもっているのである。このデータには驚きだ。そしてネアンデルタールのほうがわたしたち現生人類よりも大きいのである。体格もよかった。ネアンデルタールは絶滅したのではなくて、わたしたちの中に溶けてしまったのかもしれない。日本人にはネアンデルタールのDNAが多く混ざっていることが化石のDNA解析でわかっている。
 sportが動詞で使われているが、これは辞書引かないと意味が分からないから、引いた。文脈からも意味の判断のつかない単語に出くわしたら、素直に辞書に訊く。目的語を伴っているから他動詞の項を見よう。
 sport:vt …をみせびらかす (ジーニアス4版) 
 sport: to wear or be decorated with something 
  …(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
 なるほど、何かで着飾って見せびらかすということなんだ。
 脳をひけらかすホモ・サピエンスの脳は平均で1200-1400ccあった。10万年前に6種のヒト属が地球上に暮らしていた時から、わたしたちと同じ脳容積を有していたのである。ネアンデルタールはそれより少し大きい、身体も脳も大きかったようだが、性質が平和的でおとなしかったのかもしれない。だから、ホモサピエンスに絶滅させられたのかも。でも、そんなことはSapiensには書かれていない。
 生徒から質問の出たのは一箇所だけ。一番最後の文である。


 こういうときは飾りを全部外してしまうとわかりやすい文になる。
  That evolution should select for larger brains may seem like a no-brainer. 
            S            V
 飾りの句を外した文を黒板に書いたら、生徒から、「[to us] がどうして飾りの句だとわかるのですか?」という質問があった。「経験の差だよ」と言っては身もふたもない。辞書の用例を見たらだれにでも判断がつく、[seem to be] [seem to do]  [seem like a 名詞句]はあっても[seem to us] はない。マドンナの名曲「Like a virgin」を知ってたらOKだ、知らない?そうか。
 では、ユーチューブのURLを紹介しておこう。2009年の収録、あのころはまだ若いね、世界一のセクシー・シンガーだった。
*https://www.youtube.com/watch?v=s__rX_WL100
 
マドンナ役にピッタリの女子高生がいても、学校祭のパフォーマンスでこの曲はけっしてやらないように、先生たちが卒倒する。(笑) 
 ジーニアスには「It seems like a good idea.それはいい考えのようだ」が載っている。そのまんまの用例だ。それよりは「She seems like a virgin.」「He seems like a cherry boy. 」のほうが覚えやすいだろう。(笑)

 主語が長いから、itで置き換えて、助動詞mayも取り払ってもっと簡単にすると、
 It seems like a no-brainer. (それは「脳なし」のようなもの=だれにでもわかることのようだ)

 ほら、そっくりになった、とっても簡単。


 高校英文法に戻って補足解説しよう。主語がthat節構造になっている。
 if evolution should select for larger brains のifがとれてthat節になったのではないか。should select のshouldは仮定法過去、条件節で用いられるshouldで、ほとんど可能性のないことを表す。進化が意志をもってより大きな脳を選択するわけはないので、shouldを使ったのだろう。[to us] は付加語で、「現生人類であるわたしたちはパスカルの言うように「考える葦」、そのわたしたちにとっては」くらいな意味合い。[,well,] も付け足しで、「えーっと」「うーんとね」という話を切り出すときに使う間投詞だろう。「どんなものかというと、えーっと、「脳なし人間」、要するに脳がなくてもわかるほど単純なことなんだな」ってな具合です。

 「(ありえないことですが、)進化がより大きな脳を選択しているということは、われわれ現生人類にとっては、自明のことのように思えます」


 no-brainer:(考える必要もないほど)明白なもの。(ジーニアス4版)
 something that very simple to do or understand (Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
 if...should: Michael Swan 'Practical English Usage' p.237, No.261-1

 翻訳文は、原文と同等程度の量に収めたいというのが出版する側の事情だ。原文の2倍もあるようなわかりやすい翻訳にすると紙代や印刷代も2倍になる。売れないということ。売れる価格帯を想定して、翻訳文の量が決まり、翻訳者に注文が出る。21世紀の出版事情、なかなかたいへんなのだ。そういう目で、翻訳者である柴田氏の訳文をお読みいただきたい。訳文を短縮するために、[to us] も [,well,]も端折っています。(笑)

「進化が大きな脳を選択するというのは、わざわざ脳を働かせなくてもわかることに思えるかもしれない。」柴田訳
  That evolution should select for larger brains may seem to us like, well, a no-brainer.


 こうして原文と並べ、長さを比較してみたら翻訳者の苦労がわかろうというもの。進化は大脳の大きさにこだわるようなものではないことを前提に置きながら、ハラリは現生人類の脳が大きいという事実を述べている。この訳文では進化が大きな大脳を選択しているかのようになっている。こうして意味がまるで違っているのを承知で仕事しなくっちゃいけない、プロってたいへんだな。


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わたしは版を継いで、かれこれもう40年間このスワンのこの本とお付き合いしていますが、また新しい版がでたようです。3版は'fully revised'でしたが、今回も全面改訂のようです。110頁増えて、768頁になっています。書かれている英文はとっても平易で読みやすいので、英語が好きな高校生と大学生そして社会人にお勧めします。わたしの示したページ数は第3版のものですので、悪しからずご容赦ください。
Practical English Usage, 4th edition: (Paperback with online access): Michael Swan's guide to problems in English

Practical English Usage, 4th edition: (Paperback with online access): Michael Swan's guide to problems in English

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これも改訂版、4版です。わたしの持っているのはこれよりも古い「new edition」、引きやすくて便利です。ページ数は一緒です。書かれている英文はわたしにもわかる平易なものです。wellの用法はこの辞書と次にあげる辞書で確認しました。
Collins Cobuild English Usage: B1-C2

Collins Cobuild English Usage: B1-C2

  • 作者: Collins Uk
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    この辞書と次の辞書は、翻訳家の柳瀬尚紀(根室高校の先輩)さんから、弊ブログ投稿欄で教えていただきました。英語に不案内なわたしはとっても重宝してます、宝物です。高校生や大学生には不要な辞書です。名辞典ですが、買い手が少ないので再版も増刷もされないでしょう。このシリーズで名詞辞典があることをいま検索していて知りました。
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#4102 Sapiens: p.8-9 : Oct. 12, 2019 [44-2 Sapiens]

<最終更新情報>
10/15朝8時46分 この本が要求する読解力のレベルに関する具体的な追記

 ほぼ一月ぶり、Sapiens 講読授業を再開した。1年半後の大学入試の必要条件になっているので、生徒が英検2級を受験するために、1か月間授業を休止していました。他に3年生が3人受験したそうだから、全員合格してもらいたい。
 産業用エレクトロニクスの輸入商社で6年間働いた経験があるが、経理部の女性社員に全商簿記1級と英検2級の人がいた。その経験から判断するのだが、英検2級は仕事でつかえるレベルではない。就職の際の武器になるのは準1級から、現実は厳しい。
(根室高校で過去に全商1級と英検2級の両方を取得した生徒はいません)

 この授業は進研模試英語偏差値70以上の生徒が対象、数学が得意で英語が苦手の偏差値40前後の2年生の生徒5人には別メニュー「英語短期特訓授業全10回」を用意してあります。どちらも「学校教育の範囲外の生徒」です。(笑)
 学力格差が大きいので、学校で全部の生徒に対応するのは無理です。地域の教育は学校と私塾が分担・協力してやるしかありません。
 

 この生徒との授業は対話形式で進みます。わかり切ったものはパスしますが、意味上重要な個所や受けている句がなにか不明あるいはわかりづらいときはこちらから質問します。基本的には代名詞がなにを受けているかは全部取り上げています。生徒のほうから質問がありました。興味深いものがあったので、さきにそちらを紹介したい。原文の出てくる順に付番しておきます。

(3) The truth is that from about 2 million years ago until around 10,000 years ago, the world was home, at one and the same time, to several human species.   And why not? Today there are many species of foxes, bears and pigs.  The earth of hundred millennia ago was walked by at least six different species of man.  It's our current exclusivity, not that multi-species past, that is peculiar-- and perhaps incriminating.  As we will shortly see, we Sapiens have good reason to repress the memory of our siblings.

   傍線部の文の解釈が議論になりました。代名詞「it」は何を受けているのかという問題と、文の構造がどうなっているのか、この2点です。二つの問題を解決しないと、意味理解ができません。
 前文の主語「The earth of hundred millennia ago」は「our current exclusivity」とイコールの関係にはありません、10万年前と現在ですから当然ですよね。だから候補から外します。では、もうひとつ前の文の主語「 many species of foxes, bears and pigs」はどうでしょう、この名詞句は複数ですからitで受けることはできませんし、やはりour current exclusivity」とはイコールにはなりませんから、これも候補から外れます。
 生徒に質問を投げ返します。
「itはなにを受けていると思う?」
 生徒の解釈は「it」は that節だというものです。「not that multi-species past」を受けているという発想は、「it is ...that...」という構文からの発想からでしょう。currentとpastが照応しているらしいことは承知しています。前のページで、someとothers、someとmanyの照応があったからそういうところは気配りが利いています。

 結論からいうと、3文前の「The truth」を受けているようにみえます。it の指すものがこんなに離れたのでは、ルール違反、わかりにくい文になってしまうし、事実そうなっています。ここだけは読み手泣かせの悪文と言うしかありません。代名詞を元の語に置き換えて、シンプル・センテンスに書き直します。

①The truth is our current exclusivity. ⇒It is our current exclusivity.

② not multi-species  past.
③that is peculiar
④and (that is) perhaps incriminating (us).


 シンプル・センテンスに書き換えたら、意味が簡単につかめます。

● 真実はわたしたちしか現存していないこと
● 複数の種が共存していた過去ではなくて現在のわたしたちしか存在していないという状況
● わたしたちしか現存していないということが特異である
● 真実はおそらく私たちを有罪にする

 真実には定冠詞 the がついています。200万年前から10万年前まで存在した複数のホモ属が、現在ホモ・サピエンスしか存在していない、そしてそれはホモ・サピエンスが他のホモ属の種を絶滅に追いやったからだということ、それが人類史の真実です。
 ①の「our current exclusivity」と②の「not multi-species  past」は同格、言い換えです。③の「that」は「our current exclusivity」を指していますから、関係代名詞の非制限用法、「that」は関係代名詞です。
 もっと簡単にすると…
 The truth is A, not B. 「真実はBではなくてAということ」

「真実は複数の種が存在した過去にはなくて、現在の状況、すなわちヒト(Homo)属がサピエンス種しか存在していないということにある。そしてそれが特異なのである。ヒト属はサピエンス種しか現存していないという事実によってわたしたちは有罪なのである。」

 生成文法知識だけでははっきりしない文ですから、ハラリが展開する論理を精確に読む必要があります。だから、母語で文脈すなわち論理的な展開を読む能力が英文を読む際にも必要です。レベルの高い本を読んでいないと、英文で書かれた論理も追うことができません。語彙が豊かでロジカルな本をたくさん読んでください。ハラリのサピエンスは、新書版レベルの本よりも上のレベルの本の読解力を要求しています。新書版でも経済学説史の大家・内田義彦先生の書かれたもの(岩波新書)は別です。このレベルの本が読めたら十分です。
(少し古くなりますが、顎の強い人は、和辻哲郎『鎖国』『古寺巡礼』『風土』なども読んでみたらいかがでしょう。中3の生徒が今日、『鎖国』をひっぱりだして、音読してました。もちろんすぐにギブアップです。『古寺巡礼』は読みやすいが、『風土』は難易度が上がります。)

 
生徒の理解には違和感があったので聞き置き、そして授業が終わってからじっくり考えてみました。④の文は、「ホモ・サピエンスがおそらく有罪である」と主張しています。ホモ・サピエンスが、兄弟姉妹に当たるホモ・デニソワ人やホモ・ルドルフェンシス人やネアンデルタール人などを絶滅に追いやった犯人ではないか。だから、有罪だということ。現在進行形で書かれていることにも注意。論理的にそうなるという意を含んでいます。論理は「ホモ・サピエンスがホモ属の他の種を絶滅に追いやった犯人として有罪である」という結論へ向かって進行中だということ。
 どうやら翻訳者の柴田氏は「it」が何を受けているのか突き止めていないようです。訳文にそれが現れています、主語がない。わからないところはこういう風に上手に逃げてしまうのも、翻訳技術(?)です。だれにでもわからないところはどこかに出てきます。(笑)
 翻訳者の柴田氏はスマートに処理して簡潔な訳文を提示してくれています。訳文には多少問題(誤訳)がありますが、日本語としてスムーズで美しい。わたしには許容範囲です。訳文にはやっかいな主語が抜けています。

複数の種が存在した過去ではなく、わたしたちしかいない現在が特異なのであり、ことによると、わたしたちが犯した罪の証なのかもしれない。」柴田裕之訳


 最後の文の「as」節の訳とそれ以降の主節の訳についても質問がありました。かれの理解では論理的整合性がとれないのだそうです。どこだろう、述べるところを聞いてみました。

(4)As we will shortly see, we Sapiens have good reason to repress the memory of our siblings.

 siblingsは「兄弟姉妹」、男女の別がないときに選択する用語。日本語では「兄弟」の中に、姉妹も含めて言うことがあります、たとえば「親兄弟」という用法、この中には姉妹も含まれています。
 従属節はwillがあるから、これからのことです。生徒はひょっとしてshortlyの意味を勘違いしていたのかもしれません。「すこしして、まもなく」という意味です。このasは「as you know(ご存じの通り)」と同じ用法です。「すぐあとで見るように」と素直に訳せばいいだけ。asは意味が多いから、迷いますね。「we sapiens」は同格です。

「ほどなく見るように、わたしたちサピエンスには格好の理由がある/ 兄弟姉妹たち(ホモ・デニソワ人、ホモ・ルドルフェンシス人、ホモ・エルガステル人、ホモ・ネアンデルタール人)の記憶を抑圧するための」

 ホモ・サピエンスは兄弟姉妹たちの記憶を消したいのです。いくつも存在した他のヒト種を絶滅に追いやったのは自分たち自身だからです。そういう理解で論理的整合性は保たれています。もう少し読めば、そのあたりに関する具体的な記述が出てきます。ハラリが前もってAs we will shortly see」と言っているだけです。ページをめくってみたら、「Our Brother's Keepers」(p.14)という節で、サピエンスと他の種との交雑説と交代説を紹介しています。「兄弟たちsiblings」が消えた経緯(いきさつ)を二つの説を紹介しながら推定しています。さて、生徒はこういう説明で納得するかな。



 次の文を読んで、「英語にも反語表現ってあるんですね」そう言いました。古典文学・文法の知識が応用できている、うれしいね。

(1)  Who knows how many lost relatives of ours are waiting to be deiscovered in other caves, on the islands, and in other climes?
(失われた多くの親戚が他の洞窟や島や別の気候帯の地域で発見されるのを待ち続けているのを誰が知ろうか、誰も知らない。)

 翻訳者の柴田さんはあっさり片付けています。高校生は参考にして、スキルを磨いたらいい。

他の洞窟や島、地域で発見される日を待っている私たちの失われた親戚たちが、あとどれほど多くいるか知れない」柴田裕之訳

(2) The members of some of these species were massive and others were dwarves.  Some were fearsome hunters and others meek plantgathers. Some lived only on a single island, while many roamed over continents. But all of them belonged to the genus Homo.  They were all human beings.


 manyをどのように訳したらいいのかという質問がありました。「some…many…」と関連させて読んでなかったようです。本を読むのに慣れたらなんでもないこと。繰り返しになるので、省略がなされているだけ。
「これらのサピエンスのメンバーのあるものは一つの島だけで暮らし、大部分は大陸をさまよった」

<永久歯と強い顎を持ち合わせた大人でないと読めない本>
 この授業を受けている生徒は、1か月間英検2級の受験参考書を2周して、過去問を5年間ほどやって、ストレスを感じていたのだそうです。英検2級はほとんどがネィティブの小学生高学年くらいのレベル。使われる語彙も文の難易度も制限されていますから、文が平易なのです。高校教科書もせいぜいネィティブの中学生レベルの読み物。それに対してハラリのSapiens は大人の読み物です。高校教科書レベルの英文を卒業した人は、英字新聞や少し硬い本、あるいは文学作品を読んだらいい、語彙が広がります。高校3年生で2000語レベル、英字新聞では数万のレベルです。
 日本語の読書も、乳歯レベルの読書から永久歯レベルの読み物への橋渡しが学校教育ではできていません。小学生低学年では国語授業が週に9時間もあり、多くの先生たちが時間を持て余しているらしいのです。それなら、大人の読み物を使って、ルビ付きのテクストで週に3時間ほど音読トレーニングをしてもらいたい。漢字の使用に制限のつかないテクストを音読トレーニングすればいい。江戸時代は5歳から「師曰く、巧言令色鮮し仁」なんてやってました。覚えてしまってますから、大人になったら会話の中で自然に使えるんです。そして語彙が数万になれば読んで理解できる本が飛躍的に増えます。
 英文も同じですよ。児童書からはじめて、たくさん読んで、どんどんレベルを上げて語彙を増やしたらいい。
 永久歯レベルの本、つまり強い顎と硬い歯をもった大人が読む本を自然に読めるようになるのは3%もいない。トレーニングを積めば、たいていの人は英字新聞やハラリの''Sapiens'のような大人の本を読めるようになるはず。

 この生徒は、こういう方式(全文書き取り&和文をノートに書く&語彙や文法や修辞法への注記)で30頁も読めば、あとは辞書を引きながら独力で読めるレベルに到達できそうです。60頁辺りから、ノートへの書き取りはやめて速度重視の読書へ切り換えたらいい。100頁を越した当たりでは、授業内容がまるで違っているでしょう。わたしと同程度には読めるようになり、教えることがなくなります、それでいい。そして若い人にはその次のステージがあります。生徒の成長が楽しみです。
 


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#4077 Sapiens:p.5-6 Sep. 5, 2019 [44-2 Sapiens]

 明日は前期期末テストの最終日である。数Ⅱが明日だというのに、教科書準拠問題集の復習は退屈でつまらないからハラリを読みたいという。数学と英語はケアレスミスがない限り百点だろうから、まあいいか。この生徒は進研模試とZ会の模試の偏差値アップにしか興味なし。(笑)
 時間はかかるが、だんだん読めるようになってきた。今日は一つだけ、代名詞 it が何を受けているのかについて確認があったのみ、もちろん正解だった。とくに解説が必要なところはなかった。面白いことが書いてあったので、その部分を紹介する。

 The more eastern regions of Asia were popurated by Homo erectus, 'Upright Man', who survived there for close to 2 million years, making it the most durable human species ever.

 it: Upright Man
  there: the more eastern regions of Asia

  makingの主語は前の文章と同じだから、分詞句となっていることはいままで何度も解説した通り。以下のふたつの単文が元。

The more eastern regions of Asia were popurated by Homo erectus.
The more eastern regions of Asia made it the most durable species ever.

 こういう二つの文章がandで接続され、そのあとで同じ主語なので後続の方が省略され、動詞のmadeが分詞句となったのだ。
(アジアのもっと東側に住んでいたのが、ホモ・エレクトス(「直立した人」の意)で、そこで200万年近く生き延びた。)柴田訳

 訳がうまいね。主語は'The more eastern regions of Asia'だが、翻訳者の柴田さんはここでは副詞句に訳している。これはよく使うテクニックだから覚えておくとよい。主語が人や生き物ではないときには副詞句にして訳すというのは翻訳の常套手段だ。この生徒は、高校3年間分の教科書を読んだ際に、こうしたテクニックを知ってはいるが、まだ十分に使いこなせていない。慣れるためにハラリの著書は便利がいい。その都度、本にマークを入れていけばいいのだ。どれくらいの頻度で出てくるか見当がつく。

 わたしの興味を引いたのはアンダーラインを引いた部分である。
 ホモ・エレクトスが約200万年にわたって生き抜いたということ、これはすごいことだ。ホモ・サピエンスが東アフリカで進化し始めたのが20万年前、そして認知革命が
7万年前である。200万年にわたって生き抜いたということは、環境に適応して生きたということであり、ホモ・エレクトスは自らの生存環境=生態系を激変させなかったということだ。生態系と共存するという姿は、鎮守の森を大切にし、生態系を破壊しないような生き方を選択してきた日本人の文化や伝統に近い。そういう選択肢が、現代の今でもあるということ。


 ホモ・エレクトスと比較したときに、ホモ・サピエンスの異様さがよくわかるホモ・サピエンスは急激に環境を変えてしまったし、いまも激変させつつある。同属を絶滅に追いやっただけでは飽き足らず、地球に生きる他のありとあらゆる生物種を絶滅に追い込んできたし、いまもそうしている。サピエンスの地上での増殖はどこか癌細胞の増殖に似ている。そうだとすると、じきに宿主を殺して自ら滅んでいく。
 地中を掘り起こして、ウランを含むさまざまな金属を取り出し、消費する。石炭も石油も掘り出して消費する。原子力発電所を数百基稼働させて、海水の表層を温め、海洋水の温暖化を進める。このままだと北極の氷は原子力発電所の排熱によってなくなるだろう。原子力発電所が生み出すエネルギーの2/3が海へ放出され、海水を温めている。
 プラスチックが海へ大量に流出して、マイクロプラスチックと化し、海産物を通して人間の体内に蓄積されつつある。いまや水道水すらマイクロプラスチックが含まれており、人間の体内でどのような影響をもたらすのか見当もつかない状況である。
 ハラリは次のように書いている。

 This record is unlikely to be broken even by our own species. It is doubtful whether Homo sapiens will still be around a thousand years from now, so 2 million years is really outoof our league.

(これほど長く存在した人類種は他になく、、この記録はわたしたちの種にさえ破れそうもない。ホモ・サピエンスはいまから1000年後にまだ生きているかどうかすら怪しいのだから、200万年も生き延びることなど望むべくもない。)柴田訳


 ところで、生徒はこの本の語彙にだいぶ慣れてきた。生物種へのラテン語名の付け方、そして個々の意味や階層構造を知ったので、何を言っているのかよく理解できるようになってきた。
 families(科)⇔genus(属)⇔species(種)
 Homo属にはsapiensである我々のほかに、Homo erectusやHomo neandelthalensisやHomo rudolfensisなどのsiblings(兄弟たち)がいる。
 ホモ・サピエンスとはホモ(ヒト)属のサピエンス種ということだ。ラテン語名の命名のしかたは「属名ー種名」になっている。たとえば、ホモ属サピエンス種だから、ホモ・サピエンス、パンテラ(豹属)・レオはライオンのラテン語の学名という風に。
 わたしたちは、ヒト科ヒト属サピエンス種ということになる。ネコ科にはライオンとチータと家猫がおり、犬科には狼とキツネとジャッカル、象科には象とマンモスとマストドンがいる。
 同種でないと交雑できないということになっているが、サピエンスと同種ではないはずのネアンデルタール人やホモ・ルドルフェンシス人のDNA解析が進み、いま世界中の種族のこれらヒト属のsiblingsたちとの交雑の程度が比較できるようになっている。種が違うと交雑できないということだったが、DNA解析からは微妙な問題がもちあがっている。広範囲に交雑している種族もあるから、一部は別種とは言い切れない存在かもしれない。そういう事情は、次回読むことになる。

 良質の原書は読み方によっては奥が深く、とっても面白いし、1頁読むごとに達成感がある。使われている専門用語が集積され、周辺知識が整理されてくると、とっても読みやすくなる。本を読む速度が上がると同時に、理解が深くなる。だから、「はじめちょろちょろ、なかぱっぱ、赤子泣くとも蓋とるな」なのだ。
 和辻の『古寺巡礼』や『風土』、西田幾多郎『善の研究』を日本語音読トレーニングで読もうかと思ったことがあったが、文脈読みのスキルを磨き、読解力をさらに育てることは、ハラリ 'Sapiens'でもできそうだ。


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#4074 Sapiens:p.6 Sep. 1, 2019 [44-2 Sapiens]

<最終更新日時>
9/4朝8:45

 9/2、お昼過ぎに庭の松の木のてっぺん付近でセミが鳴いていた。庭でセミの声を聞くのははじめてだ。小学生のころは根室にはセミがいなかった。60年が過ぎて、いつのまにか気候が温暖になっているのだろう。

  Sapiensは進研模試英語偏差値70オーバーの生徒向けの授業である。原書が読めるレベルまで英文読解力を鍛錬することを目的としている。対象は一人だけ、だから生徒が興味をもてそうな分野の本を選んでいる。この本は生物学や宗教や技術の進化に言及するから、それらの専門用語に慣れるまでしばらくかかる。使われている語彙の範囲は万のレベルだろう。2000語程度で書かれている高校英語教科書とはだいぶ差がある。差が大きいのは使用語彙だけではないことが、このシリーズの記事をお読みいただけばわかるだろう。

 さて、生徒から質問のあった個所は6頁の1行目だ。

 Moreover, as we shall see in the last chapter of the book, in the not-so-distant future we might again have to contend with non-sapiens humans.

 in the last chapter of the bookとmight、これらふたつをどう訳していいのかわからないということだった。前者は「本の最後の章」ってなんのことか、具体的な意味(=話の筋)が分からない、どういうことですかというのが質問の主旨。
 書き手が言葉を紡ぎながら脳内につくりあげたイメージを読み手が自分の脳に再現し、それを母語である日本語の語彙を駆使して、滑らかな作文をするのが和訳と常日頃言っているので、この生徒は「本の最終章」という日本語にはしたものの、著者の脳内の具体的なイメージを受け取りそこなっていることを自覚していたということ。かれにとっては、「本の最終章」は具体的な内容をもたぬ意味不明な日本語であった。だから、わたしの役割は、ひとつはなぜそういう質問が生じたのかの背景を探ることと、文法的な解説を交えながら「本の最終章」という言葉に具体的な内容を与えることだった。

  Moreoverという接続詞のあとに、asという接続詞が節を引き連れて登場してくる、そしてその直後に強調のために語順が変わり in the not-so-distant future という場所を示す副詞句が文頭に来て、主語という順になっているので、まごついたのだろう。might have to contend with という助動詞を伴う動詞句も長ったらしい。こういう風にイレギュラーな事項が三つもあるから、簡単な前置詞句、in the last chapter にまごついたのだろう。この程度の文はすぐに慣れる。
(前置詞句と言ったり副詞句と言ったりするが、文の機能に注目しているときは副詞句と書き、単語の並びに注目しているときは前置詞+名詞なので前置詞句と書くので、以後、そのように理解していただきたい。副詞句と書いた方が概念が広くなる。前置詞句ではなく、実際に副詞がくる場合があるからだ)

 in the last chapterは定冠詞がついているから、すぐにそれと特定できるものだ。書き手のハラリと読み手のわたしたちの間で、すぐにそれとわかる最終章と言えば、いま読んでいるハラリの本の最終章以外にない。それが定冠詞の役割なのである。そしてそのあとの前置詞句of the bookにも定冠詞がある。だから、「この本の最終章のことだから、目次を見てごらん」と指示した。
 目次の最終章のタイトルは、「20 The end of Homo Sapiens」(ホモサピエンスの終焉)である。ページをめくってみたら、最終章である第20章には以下の6つのサブ・タイトルがある。「そう遠くない将来in the not-so-distant future」とハラリが予告した内容が6項目並んでいる。いま地球上を支配しているサピエンスに非ざる生き物が出現して、わたしたちが競争に敗れ、支配的地位から転落する運命が訪れるかもしれないと具体例を挙げて最終章で論じているのである。

20 The end of Homo Sapiens
 ● Of Mice and Men
 ● The return of the Neanderthals
 ● Bionic Life
 ● Another Life
 ● The Singularity
 ● The Frankenstein Prophecy

  サピエンス自身にどのような「進化」が訪れるのか、あるいはまったく別の生き物が出現しサピエンスを亡ぼす可能性があるのか、写真も載っているから、ページをめくってざっとみたらいい。人間の耳を背中に生やしたマウス、ネアンデルタール人のDNAをサピエンスの卵に移植して、ネアンデルタール人を産み出すことも可能になる。コンピュータの指数関数的な進化は、近い将来人工知能が一つの生命体として君臨しかねない可能性を大きくしている。人工知能とネットワークと機械が一体化したまったく別種の生物(自ら考え、自己を設計改良し、自分自身を再生産する機械)が出現するかもしれないのである。
 好奇心の強いこの生徒は「シンギュラリティ」という用語を知っていた。「な~んだ、そういうことか」と納得、自分が視野狭窄に陥っていたことに気がついた様子。
 文構造が複雑になると、わけが分からなくなり、そこで脳のワーキングエリアを使い果たし、簡単な句の理解にまで脳の資源をまわす余裕がなくなるのである。数学でもこういうことはよく起きる。計算トレーニングを十分に積んでこなかった者は、複合問題で計算にワーキングエリアを使ってしまい、ミスが出やすくなる。十分に計算トレーニングを積んできた者は、計算ではほとんどワーキングエリアを使わなくて済む。
 普通の文でこの場所を示す前置詞句が出てきたら、理解できないわけがない。第3文型に場所を示す前置詞句がついただけの簡単な構造なのだから。生徒とともに歩く、こういう「道草」が愉しい。

 面白そうだから、ハラリはここでなぜwillを使わずにshallを使ったのかと訊いてみた。「willを使うとどのようにニュアンスが変わるのか、対比しながら答えを探してみろ」、ebisu先生から生徒への質問と指示。生徒は電子辞書でshallを引きはじめる。
 こういう細かいところが大事なのだ。ハラリはwillではなくて、shallをここで使った。同じ意志未来でもwillとshallはニュアンスが違う。willは「~するつもり」だが、shallはもう決まっていてそこに向かって否応なく進行していく感じがする。
(この生徒は翌週、推定の助動詞と推量の助動詞の違いを質問した。古典は英語に比べて助動詞が多くて活用があるから、攻略に苦労する。それだけ微妙なニュアンスが表現可能ということで、日本語が心の機微を実に事細かに表現できる機能をもっていることに驚かされるのである。「旺文社古語辞典別冊 助動詞・助詞の早わかり表と百人一首の手引き」によれば、32個の助動詞があり、それぞれ活用をもっているので、英語の比ではない。日本語の場合は動詞のあとに助動詞がつき、それも二個連続でつく場合もあるから、複雑この上なし。
 端(はな)からたいへんだとおもっているし、事実その通りだから、余計にこんがらがって見えてくる。質問した生徒は「推定」と「推量」の語彙のニュアンスがわからないらしい。推定は何か客観的な根拠があってのことだが、推量は主観的判断であるから多少不確かさをその語のニュアンスに含んでいる。willとshallの使い分けのように、推定と推量の助動詞の使い分け、機能や意味の違いが判らなければ、書かれた文章の意味を精確に理解することはかなわない。この生徒は1月ごろに初めて受験した漢検が2級、そして見事に合格しているが、本の濫読期がなかったので、運用の場面でのこういう意味の近い語彙のニュアンスに対する感度が鈍いのはしかたがない。説明が終わった後で分厚い辞書、大辞林で語義を確認し、当該項目を読んで聞かせた。疑問に思ったら、かれがもっている電子辞書で引けばわかること。広辞苑のひとつ前の版が入っているはず。目の前にいたから、ebisu先生を辞書代わりに使ったのだろう、いいように使われてます(笑):9/4日追記)
 彼の電子辞書にはジーニアス4版が載っているので、それを引いていた。わたしが使っているのも同じもの、もちろん頑固に紙の辞書だが。そろそろ電子辞書がほしい。(笑)

shall:意志未来〈軽い予告・予定から厳かな予言まで〉

 ハラリは著作全体のプロット(大まかな筋立て、構想、章割り)を決めてから書き始めたようだ。具体的な章割りまですんでいたのかもしれない。書き方には大きく分けて2種類ある。たとえば、小説家にはプロットを細かく決めてから書き始めるタイプと、とにかく書き始めて、主人公が自由に動き回るうちにテーマと展開すべき章が決まっていくというスタイルをとる書き手がいる。最近読んだ岩井圭也『夏の陰』は前者であり、35年前に読んだ夢枕獏は典型的な後者、発散型である。どこへ飛んでいくのか、主人公が何を始めるのか、書いている本人がわからない。のめりこむうちに物語の主人公に書かされているのである。
 ハラリは第1章を書いている時点で、すでに最終章の内容が決まっていたということ。プロットを周到に検討して書き綴るタイプ、緻密な書き手だ。

 こういう時は、文法書の当該箇所、shallの項を読んでおいた方がいい。たとえば、江川泰一郎『英文法』のshallの項(219頁)だ。もちろん、手持ちの文法書でいい。

 では、asは?
 asが従属節を導く接続詞であることは形を見たらすぐにわかる。品詞を決めてから辞書を引くのが原則だと前にも書いた。asの項目を引くと、接続詞だけでも意味がたくさんある。

as:同じほど、ように、すると同時、するにつれて、なので、けれども、

 辞書に並んだ和訳を暗記する必要はないのだよ。ようするに、主節と従属節をつなぐのだから、その両方を訳してみたらいい。それから、どういう接続詞がふさわしいのか、日本語で考えたらいいのである。whileも文脈から判断するしかない扱いが厄介な接続詞だ。~する間にのほかに、逆接の接続詞だったり、添加だったり、譲歩だったり、対照だったりするから、文脈で判断するしかないケースが多い。

 mightはよく出てくる助動詞である。助動詞はすべて話者(この場合は書き手であるハラリ)の心的態度を表すものだ。mayの過去だから、mayよりも現実から離れている(だから過去形を用いる)感じがする。調子が弱くなるのである。canとcould、willとwouldも同じことが言える。

(そのうえ、本書の最終章で見るように、そう遠くない将来、わたしたちは再び、サピエンスでない種の生き物(現生人類)と競い合う羽目になるかもしれない。)柴田裕之訳

 アンダーライン下部分を空欄にして、適当なつなぎ言葉はなにかと生徒に訊いたら、正解した。辞書引かなくても、接続詞の意味は文脈が読めたら、わかるものだ。
  スラッシュを入れて、頭から読む方法を書いておく。
 Moreover, as /we shall see /in the last chapter of the book/, in the not-so-distant future/ we might again have to contend /with non-sapiens humans.
(その上さらに/わたしたちは見ることになる/本の最後の章で/そう遠くない将来に/わたしたちは再び競い合うことになるかも/サピエンスではない者たちと)
 接続詞asは、ここまでやってから適切な日本語の接続詞がなんなのか、文脈から判断するとよい。
 スラッシュで切り刻んでしまうから、一つ一つの句と文の理解が簡単になる。慣れると頭の中でスラッシュを挿入しながら、チャンク(意味の塊)単位で読むようになり突然読解速度が大きくなる。この生徒の場合はどのあたりからそうなるのか、注目している。繰り返しているうちに、それはある日突然に臨界点に達して、変化が起きるのだろう。

  だいじなことは、母語でちゃんと文脈が読めることだ。日本語の本をたくさん読まずに、書かれた英語が読めるようにはなかなかならぬ。母語のテクストの文脈が読めないのに、英語で書かれた文脈が読めるはずがないではないか。この生徒は日本語テクストの音読授業で15冊ほど読んだから、論説文の読解力はできのよい大学生並みである。最後に読んだのは福沢諭吉著『福翁自伝』と山本義隆著『近代日本150年史ー科学技術技術力総力戦体制の破綻』、この2冊は大学生でも読むのに苦労するだろう。

 わたしは、大学でこういう原書講読授業を受けてみたかった。ほしかったものを手に入れる時期は過ぎ、欲しかったものを与える季節のなかで暮らしている。
 それはそういう授業の提供を願う生徒がいるから可能なのだ、ニムオロ塾で勉強しようと集まってくれている生徒たちと通わせてくれている保護者のみなさんに感謝。
 ニムオロ塾の提供する授業がどういう形になるのかは出遭った生徒一人一人で違ってくる。授業の中身を決めているのはどうやらわたしではなくて、それを受ける生徒の学力レベルということになっている。だから、英語が苦手な高校2年生5人に対しては、高3教科書を使った10回の短期特訓授業がうまれた。英語が苦手のはずの2年生たちが、すべての文を音読10-30回やってリズムを体にしみこませ、すべての文の文型分解に付き合い、和訳(自分たちの日常会話レベルの訳文)にチャレンジしている。
 2時間半の授業なのにちっとも嫌がっていないのが不思議だ。勉強の仕方がわからなかっただけで、音読作業や文型分解作業、和訳作業に参加しているうちに、それぞれの作業が案外楽しく、時間の過ぎるのが早い、食わず嫌いだったことに気がついたのだ。「独力で英語の勉強ができるようになる」というのが、この短期特訓授業の獲得目標である。
*https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/archive/c2306052528-1



<濫読のススメ>
 小学校高学年で、濫読期を通過すべきだ。ジャンルを問わず、興味の赴くまま、片っ端から読む時期を経験した子どもは高校生になってからも学力が大幅にアップする。日本語読解力はすべての科目を制覇するための基礎技術である。読解力が急激に伸びる時期に濫読が起きれば、いわゆる「伸びしろの大きい子」に育ってしまうから、国語も英語も学力アップに制限がなくなる。数学も社会も理科も教科書は日本語で書かれているから、予習するためには、十分な読解力が必要だ。
 そして本を読むことで、様々な見方、考え方、性格(人間類型)のあることを知るから、親元を離れて大学生になっても、インチキ・グルに影響されてカルトに染まるというリスクも大幅に減ずることができる。

〈 音読リスト〉…
*#3726 
日本語音読トレーニングのススメ:低下する学力に抗して Apr. 18,2018
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-04-18-1

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< 国語力アップのための音読トレーニング >
 中2のトップクラスのある生徒の国語力を上げるために、いままで音読指導をしてきた。読んだ本のリストを書き出してみると、
○『声に出して読みたい日本語』
○『声に出して読みたい日本語②』
○『声に出して読みたい日本語③』
○『坊ちゃん』夏目漱石

○『羅生門』芥川龍之介
○『走れメロス』太宰治
○『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
 『五重塔』幸田露伴
 『山月記』中島敦
●『読書力』斉藤隆
●『国家の品格』藤原正彦
●『すらすら読める風姿花伝・原文対訳』世阿弥著・林望現代語訳
●『日本人は何を考えてきたのか』斉藤隆

『語彙力こそが教養である』斉藤隆
●『日本人の誇り』藤原正彦

◎ 『福翁自伝』福沢諭吉

 14年間で14冊読んでいる、現在進行形が2冊で合計16冊。
 これから読むものをどうしようかいま考えている。だんだんレベルが上がってきた。哲学に踏み込むかどうかは生徒の意欲次第。

◎『善の研究』西田幾多郎
◎『古寺巡礼』和辻哲郎
『風土』和辻哲郎
 『司馬遼太郎対話選集2 日本語の本質』文春文庫
 『伊勢物語』

(○印は、ふつうの学力の小学生と中学生の一部の音読トレーニング教材として使用していた。●印の本はふつうの学力の中学生の音読トレーニング教材として授業で使用した実績がある。◎は大学生レベルのテクストである。音読トレーニング授業はボランティアで実施、ずっと強制だったが2年前から希望者のみに限定している。)
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夏の陰

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 この英文法書は43年前に、黒田さん(当時早稲田大学大学院英文学研究科)へ「文法書は何使っているの?」と訊いたときに、「これ一冊だけ」とかれが推薦してくれたものだ。まさか受験英文法書を挙げるとは思いもよらなかった。以来、本棚の隅に飾ってある。(笑) 院生になって半年ぐらいしたら、空手部に入部していた。
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#4068 Sapiens:page 5 Aug. 23, 2019 [44-2 Sapiens]

 <Sapiens:第3回>

 Presumably, everyone reading this book is a Homo sapiens -- the species sapiens (wise) of the genus Homo (man).

  Genera in thier turn are grouped into famillies, such as the cats (lion, cheethas, house cats), the dogs (woves, foses, jackals) and the elephants (elephants, mammorths, mastodons).

 genusの複数形がgenera datumの複数形がdataであるのと同様に。
 classfy ⇔ group 分類 ⇔ 統合
(「分類⇔統合」のように、一方を使うときは他方のあることを前提としている、そういう概念を対概念という。「具体⇔抽象」「善⇔悪」「相対⇔絶対」) 

  アンダーライン部が生徒から質問のあった部分である。どのように訳したらいいのかわからないという。なかなかいい質問だ。こういう質問が出るのは、腕が上がってきた証左だろう。

 turnは回転を表しているから、回転式銃の弾倉を想像してもらいたい。円形上に弾が入っており、一発目を撃つと回転して二発目が撃てるようになる。
 前段の文で、「この本を読んでいる人はホモ・サピエンスーーホモ(ヒト)属のサピエンス(賢い)種である」と書いている。種がまとまって属を形成するということ。「種⇒属」の方向である。「下位概念から上位の類概念へ」である。
 「いくつかの属は科にまとめられる」とあるから、「種⇒属⇒科」、「種」から「属」へ「属」から「科」へ、順送りにということ。「種」から「属」へ、「属」から「科」へと、下位類概念からより高次の類概念への方向での説明が続いている。「種⇔属⇔科⇔目」は4項の対概念であることに注意。
 thier=genera'sである。さまざまな種が属にまとめられ、順に、今度はさまざまな属が科にまとめられるということ。

 エレファントとマンモスは知っているが、その祖先にあたるマストドンを知っている人は少ないだろう。辞書を引きながら、生物系統図上の動物名とその配置を知ることになる。それも楽しみの一つ。
 「目⇒科⇒属⇒種」という分類になっている。

 引用した文章の前から、classfy(分類)の話が始まっている。「Biologists classfy organisms into speces. 生物学者たちは生き物を種に分類する」と書いて、ヒト科、ネコ科、犬科の動物たちを属に分類して見せた。今度は逆の方向だ。classfy(分類)ではなくてgroupe(上位類概念への統合)の「generaの番」である。そこにくるっと方向転換を感じただろう。著者もそう感じたから逆方向の動きを表す「in thier turn」と書いた。turnには順番と論理の回転の二重の意味が込められているのだろう。


(そして、本書の読者はおそらく全員、ホモ(ヒト)属のサピエンス(賢い)という生き物である「ホモ・サピエンス」のはずだ。属が集まると「科」になる。)柴田訳

 柴田訳のように、細部にこだわらずに、端折ってしまうのも翻訳の技術ではあるだろうが、高校生や大学生は、こういう細部にこだわってもらいたい。著者が書いているときに浮かべたイメージを自分の脳に再現して、それを母語で作文することで、英文読解スキルがアップするからだ。



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#4065 Sapiens: page 4&5 Aug. 18, 2019 [44-2 Sapiens]

 高2の生徒と一緒に読む、ハラリの Sapiens. 
 英文をノートに写し、辞書を引いて訳文をノートに書き、それから不明な点や自分の訳に違和感があれば質問するという形式でやっている。福沢諭吉の適塾方式(『福翁自伝』参照)に似ている。手間はかかるが、読む力はつく。
 筆者が英文を書いているときに脳内にイメージしているものを、自分の脳に再現し、それを自分の語彙を使って日本語として違和感のないレベルの文章にしあげる。ときに「大和言葉落とし」を要求している。解説は質問の周辺へも及ぶ。典型的な英文解釈授業であるが、よく読むことはよく書くことに通ずるもので、その辺りへの配慮は解説を読んでいただければわかるだろう。必要最小限の範囲で、生成変形英文法を取り入れた解説になっているので、英文解釈が英作文トレーニングにもなっている。高校で受けた英語授業とは一味違っているはず。
 なお、この授業を受けている生徒は進研模試で、英語の偏差値が75(全国レベルで千人中6位)付近である。目標は進研模試の偏差値を80(千人中1位)オーバーにしたいことと、Z会のテスト問題が進研模試よりも語彙数と英文の難易度が高いので、解けない領域があり何とかしたい。Z会模試英語の偏差値70をコンスタントに超えることを目標にしているようだ。
 480頁あるから、全部やったら高校で英語の教科書30年分くらいの分量がある。塾では半分やったら十分だろう。残りは自分で楽に読めるようになっている。このレベルの本の読解の基礎ができたら、あとは自分で試行錯誤、いつまでも塾に頼っていてはいけない。好奇心の赴くままに、さまざまなジャンルの本を自在に読めるのた理想だ。
 段階的に読み方を変えていくつもりだから、読書速度は徐々にアップしていく。
「はじめちょろちょろなかぱっぱ、赤子泣くとも蓋とるな」…(笑)

 今週、質問のあった個所は四つ、順に取り上げる。

1.Biologists classfy organisms into species. Animals are said to belong to the same species if they tend to mate with each other, giving birth to fertile offsprings.

  アンダーラインを引いた部分について質問があった。
 受験英語では文頭に分詞構文がでてくるが、実際にはこの文のように、あとの方で出てくるのが普通だ。すぐに慣れるよ。

 元々は重文である。句構造を節に書き直すと次のようになる。
 and they give birth to fertile offsprings. 
   ⇒ giving birth to fertile offsprings
(こういう風に1段階で simple sentence から元の文に書き換えられる場合を、'文法工程指数1'と呼ぶ、名前だけ記憶しておいて。文法工程指数が多くなれば、意味がつかみにくい難解な文章になりそうだと思った人は、センスがいい。きっと数学もできる人だろう。「拡張」は数学の学習では頻繁に出てくる。え、知らない、そりゃあいけません。中学と高校の数学の主要テーマは概念の拡張なんです。たとえば、数の概念の拡張、自然数⇒有理数⇒実数⇒複素数、関数概念の拡張、一次関数⇒単純な二次関数⇒一般的な2次関数⇒高次関数⇒さまざまな関数(指数関数や対数関数や三角関数)、斜交座標で定義すれば平面ベクトル、三次元で定義されたら空間ベクトル、多次元になれば線形代数。一連の拡張操作の中で数学が展開されていきます。「拡張」を意識してください。)
 they=animals
 「動物が繁殖力のある子孫を生む」
 主語が同じだから、あとの方の主語が省略され、動詞が分詞に書き換えられて、句構造になるだけ。分詞構文なんて特別なものがあるわけではないのだ。受験参考書にあるような文頭に分詞が来るようなへんてこりんな文章は、新聞や本を読んでいてもほとんど出てこない。新聞ででてくるときは日本人のスタッフ・ライターの書いたもの。受験英語をひきずっている。基本は重文の場合に、あとに出てくる文の主語が前の文の主語と同じなら、あとの方がdeleteされて、動詞が分詞になるだけ。単なる修辞上の、それゆえ統語論上の操作に過ぎないのだ。だから文頭にもって来るというのは、違和感が生じる。主語が不明だからだ。後に続く文を読まないと、主語が何になっているのか判断がつかない。読みにくい文になるということ。本来は後置される分詞句が文頭にくるというのは、倒置であり、強調である。だから受験英語では特殊な例だけやっており、基本の形を教えていないということだ。物事は基本用例を教えてから、それと対比することで例外的な文例を教えるべきだろう。

「生物学者は生き物を「種」に分類する。動物の場合、交尾をする傾向があって、しかも繁殖力のある子孫を残す者どうしが同じ種に属すると言われる。」柴田裕之訳

 冠詞については{a,an,the,Ф}の4つの場合に分けて、だいじなものだけ授業中に確認をしている。Фは無冠詞の場合である。当該名詞句にアンダーラインをつけて例示する。
 Biologists classfy organisms into species. Animals are said to belong to the same species if they tend to mate with each other, giving birth to fertile offsprings.
 複数形の名詞句の場合は複数形でない場合(a,an,the,Ф)はシーンや意味がどのように変化するのか、定冠詞がついている場合は、無冠詞や不定冠詞になるとシーンや意味がどのような影響を受けるのか、重要だと思ったら、生徒に訊ねている。高Ⅲの教科書でトレーニングを積んだから、ずいぶん扱いなれて来た。


2.Horeses and donkeys have a recent common ancestor and share many physical traits.
 trait:(生活・習慣の)特徴
 recentをどのように訳せばいいのかというのが生徒の質問だった。recentはrecentlyで高校生にもなじみのある普通の単語である。O君は文意から「最近」と訳したのでは意味が通らないと思ったのである。だって、辞書に載っているのは、次のような用例だから。
 recent event: 最近の出来事  in recent years: 近年の 
 頭から直訳してかみ砕いてしまおう。
 「馬とロバが共通の近い祖先をもっている、そして(馬とロバは)多くの身体的な特徴を共有している」
 この場合のrecentとは、馬とロバの共通の祖先から、それぞれが分かれた数千万年単位の時間軸で、「最近」と言っているのだ。著者の頭の中のイメージはそういうこと。生徒のイメージは「最近」というのは数日前か、せいぜい数年前のこと。
「馬とロバは比較的最近、共通の祖先から分かれたので、多くの身体的特徴を共有している」柴田訳

  いい質問だった。文意を考えながら、前後関係を考慮に入れて読んでいるからこその質問である。そんなに長いスパンを「最近」とは言わないという語感が、「最近」という訳語を当てはめてしまうことを躊躇(ためら)わせたのだろう。著者のrecentのイメージが、自分の脳内に再現できて、前後関係からも矛盾なければOKだ。

3. But they show little sexual interest in one another.  They will mate if induced to do so -- but their offspring, called mules, are sterile.

  ここでは induced をどう訳せばいいのかわからないということだった。
  mules:ラバ。ウマとロバのあいの子。
  sterile:「繁殖力のない」。
 theyは馬とロバのこと。
 ここでも同一主語だから、あとの方が省略されている。書き直すと。
 They will mate if (they are) induced to mate so.
   induce:する気にさせる
 受け身の文であることとdoがmateだと気がつけばなんてことはなかっただろう。これは高校生にはちょっと難易度が高かった。mateが「番う、交尾する」なんて意味があるの知っている高校生はまずいないだろうね。「友達」しか知らないだろう。たとえば、classmate。動詞で使われているときは、「番う、交尾する」そういう意味になる。文意が通じないときは、辞書を引いて文意にかなう訳語を見つけよう。willのあとにmateが来ているから、動詞だということはすぐにわかるね。mate の動詞の項から訳語を探したらいい。辞書を引く前に、先ず品詞が何か確認すること。
 「馬とロバが番(つが)う気にさせられたら、番うだろう」
 番う気にさせるのは人間である。誰でもいいことだから、わざわざ by someone なんて付け足さない。
 ところで、someone、anyoneなのにno oneだけ間にスペースが入るのはなぜか知っていた?nooneと書いてみたらわかる。oが二つ続いて不細工だろう?美しくないのは嫌なんだよ。somebody、anybody、nobody、こちらはoが重ならないから、切り離す必要がない。比較するとわかるだろう?

「だが、交尾相手として互いに興味を示すことはない。交尾するように仕向けられればそうするが、そこから生まれた子供(ラバ)には繁殖力がない」柴田訳
 
 一箇所気になるところが見つかった。
 their offspring, called mules, are sterile.
 be動詞はareは誤用でisが正しい。mulesと複数形で書いたのでそれに引っ張られたのではないか?
 their offspring, called mules, is sterile.
 では、次のように書いたら、書き手のイメージにどのような違いが生じるのか?
 their offspring
s, called mules, are sterile.

4. Lions, tigers, leopards and jaguars are different spieces within the genus Panthera. Biologists label organisms with two-part Latin name, genus followed by species. Lions, for example , are called Panthera leo, the species leo of the genus Panthera.


  アンダーライン部のところをどう訳せばいいかわからないということだった。こういうときは次の文を読めば、具体的に書いているから、先を読んでから考えろと言っている。後ろは前の文の具体的な説明になっている。高3の英語教科書『Vivid Ⅲ』で何度も出てきて、処理の仕方を教えたはずだが、語彙の難易度が上がっているから、そちらに気をとられて右往左往している。大丈夫、もう少しで慣れる。(笑)
 「例えば、ライオンはパンテラ・レオ、パンテラという属のレオ種」という風にtwo-part Latin nameの具体例がちゃんと書いてある。「二つの部分からなるラテン語の学名」という意味だ。
 高校生物の教科書(東京書籍 Biology)をみても、ラテン語学名の付け方には言及していないから、そういう周辺知識がないと躓くが、それがなくても先を読むだけで何を言っているのか具体的に了解できる。だから、わからない句があったら、読み進むことを勧めたい。
 十数年前に、根室市のほうから野鳥や草花、木の解説資料を作るので、英作文を依頼できないかというような電話依頼があったことがある。和名に関する知識もないし、ラテン語分類学名を記載しなければならないので、専門家でなければできない仕事ですと、お断りしたことがあった。鳥類学、植物学の専門家のお仕事です。

「ライオン、虎、豹、ジャガーそれぞれ種が違うが、みな豹属に入る。生物学者は二つの部分(前の部分が属を表す属名、後ろの部分が主の特徴を表す種小名)からなるラテン語の学名を各生物種につける。たとえば、ライオンは、パンテラ(豹)属のレオ(ライオン)で「パンテラ・レオ」。」柴田訳


  ついでに書いておくけど、ラテン語学名は「科=属=種」というような階層構造になっている。

 ハラリのサピエンスは高3の教科書に比べたら、難易度が高い。語彙と統語法の両方で難易度があがっている。


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Sapiens: A Brief History of Humankind

Sapiens: A Brief History of Humankind

  • 作者: Yuval Noah Harari
  • 出版社/メーカー: Vintage
  • 発売日: 2015/04/30
  • メディア: ペーパーバック
  この本は480頁ある。高3の英語教科書 Vivid Ⅲ は、全部で9章、各章4つのパートで構成されている。本文のページ数は36頁だが、1ページの文字数が半分程度なので、およそ18頁が高校1年間で学ぶ英文量だ。成績上位の生徒にとっては、あまりにもスローでストレスが多い授業になる。
 1・2年生の教科書は文字が大きいので、分量は3年生の教科書よりもずっと少ない。3年間合計してもSapiens 45ページ分に満たない。
 高校の英語授業は分量が少なすぎ、2000語程度の制限された語彙数で難易度を下げてリライトされたものをいくら読んでも、大人の読み物、たとえば英字新聞の一つのジャパンタイムズ記事レベルの読み物ですら独力で読むことはかなわない。このシリーズが、たくさんの文を読みたい高校生や大学生の役に立つことができればうれしい。



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#4046 Sapiens:page 4 July 27, 2019 [44-2 Sapiens]

<最終更新情報>
7/28 朝11時15分

 Sapiens 原書講読は、高校英語の教科書3年分を終了し、進研模試で全国偏差値が75を超えている高2の生徒の個別指導授業である。7/26日の授業で解説した文(4頁)のみをとりあげる。


(1) Animals much like modern humans first appeared about 2.5 million years ago.

  主語の訳にてこずっていたようだ。 2.5 million years ago を2万5千年前と誤読したために、文意が分からなくなった様子。年の単位は million だよというと、「あっ!」と声をあげた。論理的に読んでいるからこその躓きだった。前のページにあった文章が記憶にあるので、どういうことかと疑問がわいたのだろう。読者には何を言っているのかわけがわからないだろうから、関連部分を以下に引用する。

 Three important revolutions shaped the course of history: the Cognitive Revolution kick-started history about 70,000 years ago. The Agriculural Revolution spend it up about 12,000 years ago.  The Scientific Revolution, which got under way only 500years ago, may well end history and start something completely different.  This book tells the story of how these three revolutions have affected humans and thier fellow organism.


歴史の道筋は、三つの重要な革命が決めた。約7万年前に歴史を始動させた認知革命、約1.2万年前に歴史の流れを加速させた農業革命、そしてわずか500年間に始まった科学革命だ。三つ目の科学革命は、歴史に終止符を打ち、何かまったく異なる展開を引き起こす可能性が十分にある。本書ではこれら三つの革命が、人類をはじめ、この地球上の生きとし生けるものにどのような影響を与えてきたのかという物語を綴っていく。)柴田裕之訳


 現人類が現れたのは20万年前、そして認知革命が起きたのは7万年前で、農業革命が1.2万年前、この情報と現人類によく似た動物が2.5万年前に現れたという新しい情報はつじつまが合わない、何かおかしい、どこか理解がまちがっていると、それで考え込んでいたようだ。数字の単位の読み間違いは、思い込んでしまっているので何度見ても気がつかぬ。こういう時は思い込みを消して、虚心に文をながめることができればいいが、いったん意識が集中してしまうと、周辺部が見えなくなる。
 文脈読みして、論理的な整合性、ものごとの生起の順序をチェックしながら読んでいるのだから、こういうミスはステップアップへつながる。既読の文章を要約して脳内に次々にため込みながら、その情報といま読んでいる文章の論理的な整合性をチェックしつつ読む技を磨いている、そういう中で起きたミスだ。
 次のステップは「集中解除」のしかたをトレーニングするのだが、こちらはなかなか難しい。ヨガや座禅の呼吸のコントロールになれたら、やりやすくはなる。そんなことを教えるのは面倒だ。本人がどうしてもやりたいと言えば、教えないこともない。多分そういうことに興味がないから、この生徒には無駄。(笑)


 主語が長いことで、戸惑う読者がいるかもしれないので、補足説明しておく。likeはもちろん前置詞で、「~に似ている」である。muchが修飾しているから、「とてもよく似た」とやればいい。英語が苦手な生徒はlikeが動詞だと勘違いして、そこであえなく沈没する。余分な肉(修飾語)を削ぎ落して、骨格だけ抜き出すと、簡単な文になる。
 Animals  appeared about 2.5 million years ago.
 慣れてくると、こういう風に骨の部分がすぐに見えるようになる。animalsと読んで、それがどういうアニマルなのかと思いながらmuch like modern humansを読み、そして動詞句を読み取る。「何がどうした」と単語の並んでいる順番通りに読んでいくわけだ。
 
英語が苦手で英文を読まなければ、いつまでたっても骨の部分が見えてこない。

 さて、ハラリはここでは「ape 猿人」という用語を使わずに、「人類にとてもよく似た動物がおよそ250万年前にはじめてあらわれた」とだけ書いている。どのような系統があって現人類に至るのかはすぐに後で述べるつもりだからだろう。250万年前の東アフリカに現れたアウストラロピテクス、ヨーロッパとアジア西部に現れたホモ・ネアンデルターレンシス、アジアのもっと東に住んでいたホモ・エレクトス、インドネシアのジャワ島で暮らしていたホモ・ソロエンシスなど、後ほど次々にさまざまな種が紹介される。
 ホモ・エレクトスは200万年間も地球上で暮らしていた、お利口にならなかった
からだろう。20万年前に現れたホモ・サピエンスはお利口になりすぎて、これから先1000年後に絶滅せずに生き延びるのは至難の業に思える。人類が生き延びれば、わずかの期間に地球上のさまざまな生命の絶滅が急速に進み、生態系の単純化がある選を超えたら、人類自身が生き延びられなくなりそうだ。人類が絶滅すればまた地球は豊かな生態系を回復していくだろう。そしてまた現人類のような生物が現れ、繁殖しすぎて絶滅へと向かう。生徒はどのような読み方をするのだろう?


(2)  On a hike in East Africa 2 million years ago, you might well have encountered a familiar cast of human characters: anxious mothers cuddling their babies and cluches of carefree children playing in the mud; temperamental youthes chafing against the dictates of society and weary elders who just wanted to be left in peace; chest-thumping machos trying to impress the local beauty and wise old matriarchis who had already seen it all.

 ここは仮定法過去完了の文だと迷わず見抜いたのでちょっと驚いた。生徒がどこで判断したのかというと「might well have encountered」をみてそうではないかと思ったという。if節がないのに、仮定法だとわかったのは、条件節のない仮定法の文を何度も見ていたからだ。
 on以下の副詞句を「歩き回れば」と条件文として的確に訳していた、好いセンスしている、ほめた。

 これは仮定法の条件節が副詞句になっているめずらしいタイプの仮定法で、高校教科書の範囲を超えている。受験参考書の江川泰一郎『改訂三版英文法解説』には263頁に「(5)その他 次のような副詞句でもif-節に「相当する仮定を表せる」と、簡単な例文を挙げているのみ。
 I think that picture would look better on the wall(=if you hung it on the other wall)
  (その絵はもう一方の壁にかけたほうがもっと引き立つと思います)
 安井稔著『改訂版英文法総覧』には載っていない。if節で始めるのはいかにもいかにもで、表現がダサいということが、この文を見るとわかる。ハラリはイスラエル人であり、イスラエルではヘブライ語とアラビア語が公用語だから、外国語である英語で書いていることになる。

 castの訳に苦労していた、辞書から適当な日本語が見つけられない。こういうときは紙の辞書がいい、スクロールしないでも全部が視野におさまるからだ。生徒はシャープの電子辞書を使っている。電子辞書は薄くて軽い、そして音声が出るので、発音の確認に便利だ。英英辞書も載っている、唯一の欠点は当該項目の意味の一覧はスクロールしないと見れないということ。
 こういう時は本文のcastの前後を見る、「 a familiar cast of human characters」、名詞句になっているので、castは動詞ではなくて、名詞の項を参照して、「人間の特徴を有する見覚えのあるcast」に都合のいい日本語を探す。ジーニアス4版には「⑥様子、格好、気質;種類、タイプ」とある。「人類の特徴を有する見覚えのある光景に出くわすことになる」くらいの訳はできるだろう。
 電子辞書だとこういうケースが調べにくい。①から初めて、順に②③④⑤、そして⑥までスクロールしなければならないからだ。
 of は全体の一部分を切り取って示したようなイメージでとらえたらいい。「人間の特徴」全体からその「見覚えのある様子」の一部分を取り出して見せている。コロンのあとで具体例を六つ挙げているから、そちらを読んでからこなれた日本語の文章を再考したらいい。

 cluchesを動詞ととってしまって、そこであえなく撃沈。文章を理解するときに品詞のミスは致命的なことがある。「わからないときはそのままにして次を読め」と繰り返し言っているが、そこで停止して、アイスパンが先まで届いていない。いったん思い込んだものを消すのも慣れてきたら、意識的にできるようになる。この技は数学でも重宝する。
 自分で気がつくのがよいので並べて見せた。

a)anxious mothers cuddling their babies
b) cluches of carefree children playing in the mud
c) temperamental youths chafing against the dictates of society
d) weary elders who just wanted to be left in peace
e) chest-thumping machos trying to impress the local beauty
f) wise old matriarchs who had already seen it all


  青で示した単語が骨格部分である。これらは前の文の補足説明として、具体例を挙げただけ。それがわかればcluchesは名詞だと気がついたはずで、意味も問題なくつかまえることができただろう。ようするに 'three slices of bread' と同じ。three slices = clutches, bread=children というわけだ。生徒はclutchを辞書で引き、動詞の項目をみて珍訳をこねくり回し、数分間首をひねっていた。これも、clutchが動詞だという思い込みが外せない限り、正解には行きつかぬ。だから、「そこがわからなければ、ほうっておいて次を読め!」と繰り返し言っている。意識の集中が外れる。


 アンダーライン部は全部名詞句だ、その補足説明として~ing句や関係節がくっついているだけ。そうすると、上から順に、「不安げな母親たち、屈託のない子供たち、短気な若者たち、元気のない年寄りたち、酸いも甘いも噛み分けたたち」、ということになる。「matriarchs」とは「家母長、女家長、女族長」である。交雑する母系社会や強いオスが支配権を握ってたくさんのメスを囲い込む社会、両方があったのだろう。この部分では、ハラリは交雑する母系社会を想定して書いているようだ。
 それでclutchをもう一度引かせてみると、clutch(2)という項があり、a cluch of kids (同じ腹から生まれた子どもたち、子どもの小集団)が見つかった。

 わからない箇所を飛ばして、読むべし。そしてもう一度もどって考えると、なーんだということがよくある。こういうところは、一緒に読んで具体的な文章でスキルを伝えるのがよい。

 『サピエンス全史』の訳者、柴田裕之氏の訳を貼り付けておく。
もしあなたが200万年前に東アフリカを歩き回ったとしたら、きっとお馴染みの群像に出くわしたことだろう。心配そうに赤ん坊を抱いてあやす母親、泥まみれで遊ぶ屈託のない子どもたち、社会の掟にいら立つ気難しい若者たち、そっとしておいてもらいたがる老人たち、たくましさを誇示し、あたりに住む愛らしい娘の気を惹こうとする男たち、酸いも甘いも噛み分けた賢い女性の長老たち。

<生徒の感触>
 高3の教科書に比べるとずいぶん難易度がアップしている。ハラリは英語が母国語ではないのに、これほどの文章が書けることに生徒が驚いていた。
 テクストの難易度が上がったことが快い刺激になって、愉しいようだ。すらすら読めるところと、読めないところがモザイク状になっている。
 もう、高3教科書レベルのテクストではつまらない。教科書は語彙を制限してリライトしたものであり、いわばお子様ランチ。まともな大人の読み物にチャレンジしたら、歯ごたえが違う。離乳食のような高校英語教科書はつまらない読み物になってしまった。

 「知之者不如好之者、好之者不如楽之者」『論語』(岩波文庫)「雍也第六20」117頁
 「
これを知るものこれを好むものに如かず、これを好むものこれを楽しむものに如かず」

 
<余談>
 英語が苦手な高2の生徒5人と高1の生徒2人対象に、2.5時間×10回(水曜日)の授業を始めた。高3の英語の教科書を使っている。苦手な生徒は塾に来ても数学ばかり勉強して、なかなか英語をやりたがらないので、業を煮やしてしゃにむにやらせようというわけ。いまやらなければ受験にはとても間に合わない。何をどのようにやっているかは、次の弊ブログ記事で紹介してある。

#4036 英語短期特訓開始:2時間×10回 July 17, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17

#4044 英語短期特訓授業(2nd) July 25, 2019

https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-07-25


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