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#5028 学力格差を無視した指導はそろそろ卒業すべきでは? Aug. 3, 2023 [47.3 そろばん(計算)]

<最終更新情報>8/4午後8:50<余談-3:教育に関する私の問題意識>を
  追記8/5朝8:35追記


 小学校1年生に入学した時から、就学前に幼稚園の先生や親がどのような教育をしたかで学力格差があります。もちろん、遺伝的な特性も学力格差に影響しているでしょう。
 その格差は、子供たちが成長するのしたがって拡大していく場合が少なくありません。
 そうした子どもたちの学力格差を無視して、同じ教え方で教えるというのは、とくに学力の高い上位2割の子どもたちには弊害が大きことを具体的に説明しようと思います。どのように育てたらいいのかについて、わたしの意見を申し述べてみたいと思います。

 #5026では小学1年生で出てくる、繰り上げや繰り下げのある足し算引き算や4年生算数で出てくる乗算を例にとって、教え方の違いをまな板に上げました。桁の繰り上げや繰り下げのある加減算はソロバンで教えたほうが、だんぜんシンプルで美しいことがわかります。ソロバンの授業を小学生1年生から週2時間導入することは、算数への苦手意識を回避できる優れた方法であることを解説しました。

 今回は小学5年生の「分数÷整数」の教え方を取り上げます。上位1/3は学習指導要領を超えて、教えていいのです、どのように教えているのか、そして小学生高学年の学力上位2割の生徒たちがどの程度まで理解できるのかについても言及します。

 「6/7÷3=  」
 この問題は、「割り算の時は、分母にかける」と教えます。掛け算が「分子にかける」と対をなしています。
 「6/7÷3=6/(7×3)=6/21」
 こういう教え方をすると、分数同士の割り算の時にまた別の説明が必要になります。説明の仕方が増えれば増えるほど生徒は混乱するだけです。こういう小さいことが積み重なって、ますます算数が嫌いになっていきます。

 学習指導要領通りの教え方なのでしょうが、わたしは、そういう教え方をしません。「整数は分母が1の分数だが、分母が1の時は書かないだけ」、「÷3」=「×1/3」であることを説明します。
 そうすると、「分数×整数」も「分数÷整数」も同じ方法でやれることになります。割り算の方は除数を逆数にすれば掛け算ですから、「分子同士、分母同士を掛ければいい」だけです。「割り算の時は分母に掛ける」なんてへんてこりんなことを教える必要がありません。
 「6/7÷3=(6/7)×(1/3)=(6×1)/(7×3)=6/21」

 逆数の逆は「ひっくり返すこと」と教えたらいいだけです。これが理解できない生徒はいませんでした。学校では、「掛け算の時は、分子に掛ける、割り算の時は分母に掛ける」と教えるのは学習指導要領にあるからでしょう。文科省はもうずいぶん前に、「学習指導要領は最低基準である」と述べていますが、現場は学習指導要領通り、つまりなかなか変わらないのです。
 4年生で「3ケタ×3ケタ」の掛け算を授業でやっている先生もいまだに少数派でしょう。「3ケタ×3ケタ」までやらないと、筆算の一般法則は理解できない人が確実にいるようです。
 その結果何が起きるのか?
 高校生になってから、「3ケタ×3ケタ」の乗算のできない生徒がでてきます。(笑)
 低学力層ではありません、上位20%の生徒ですら、「3ケタ×3ケタ」の乗算のやり方がわからない者が出てきます。ソロバンを使った乗算を知っている子どもは、ケタをいくら増やしても対応できます。桁が少ない場合と運指がまったく同じですから。
 筆算の計算ルールは同じなのですが、「3ケタ×2ケタ」までしかやっていないと、「3ケタ×3ケタ」の筆算ができない生徒が一定数出現します。
 小学校の先生が高校数学を教えることはないでしょうから、自分の指導方法に問題があることに気がつけません
 同じことは高校の数学の先生にも言えます。社会人になってから、文系と言えども数ⅡBや数Ⅲが必要になります。プロジェクト・マネジャーになると、両方の分野の専門家を集めて仕事をするので、それぞれの分野の専門家とは専門用語で話をしないといけません。専門用語を使わないと、10倍時間を費やしても、相互理解は不十分なままになります。

 わたしは、小学5年生には約分が出てくるところで、「素数」の説明をしています。分子や分母が素数になれば、素数の倍数以外とは約分できないからです。素数同士では約分ができないということは知っておいた方がよい。説明は簡単です。

「素数:1と自分自身以外に約数をもたない数、ただし、1は除く」
{2、3、5、7、11、13、17、19、23、、、、}

 100以下の素数を生徒にリストアップしてもらえば、それでOKです。素数という概念の定義を知ることは数の世界を考える上でとっても大切なことです。中学数学になれば、整数の定義、正の数や負の数、無理数や実数の定義など数に関するさまざまな定義が出てきます。図形分野も定義を理解しないと証明問題ができませんから、三角形・正三角形・二等辺三角形や平行四辺形・長方形・正方形・菱形などの概念の定義や概念の包含関係に小学生の時から慣れていていけないことはないのです。概念の包含関係や類概念、上位概念などについて、中学校でも数学以外ではほとんど教えていません。論理的な思考を育むために機会をつかまえて教科横断的にどんどん教えるべきです。
 小学生高学年の学力上位1割はそういうことが理解できるのですレベルの低い速度がのろくて中身の薄い授業で退屈しきっていますよ。「だらだら、そんなわかり切ったことを50分もかけて説明しないでほしい」、なんて思っています。心の声に耳を傾けたら、聞こえてくるかもしれません。学校の授業がそういう生徒のニーズに応えられたら、高学力の生徒は塾通いの必要がなくなります。

 文章題を解くときも、xを使った方程式でやるやり方を教えてかまわないのです。覚えて使える生徒は使えばいい。上位2割は問題なくやれます。もちろん、百題くらいは、方程式の計算問題をやらせます。計算は習熟が大切ですから。
 問題の難易度は生徒によって変更します。使う問題集を生徒の学力に応じて変えたり、同じ問題集でも学力の高い生徒は全問題を「絨毯爆撃」させ、学力の低い生徒には「基本問題」だけをピックアップしてやってもらいます。問題の消化速度に文章題でも1:10ほどの差がありますから、学力差が大きいのに同じ問題量とか、難易度を揃える必要はありません。目の前にいる生徒たちの学力格差を無視して教えてはいけないのです。

 脳の使い方もトレーニングします。イメージを脳内で操作できる生徒には、そういう課題を与えます。
 計算で使う運動野と文章題理解や解法戦略を考える論理脳は場所が違います。それらを使い分けたほうが問題が解きやすいのは事実です。図形問題で脳内でイメージ操作ができる生徒は、勘がよくなります。補助線の引き方、補助線の見つけ方が巧みになります。断面図も脳内で操作できます。

 さて、まとめです。
 上位20%の生徒は、学習指導要領を超えてどんどん教えたあげたらいい。概念定義や照明の大切さを小学校算数を通じていくらでも教えられます。それだけの受容力があるのが、学力上位20%です。上位10%なら、指導の仕方次第で偏差値45の田舎の高校から現役で難関大学受験さえ可能になります。
 日本が科学技術立国で生き延びるとしたら、それは学力上位10%をいかに育てるかにかかっています。学力上位10%は文系理系の垣根を軽々と乗り越えられます

  高学力生徒用の個別指導アプリを開発したら、個別指導ができるでしょう。生徒自身で自律的に難易度の高い授業や問題にチャレンジすることになります。アプリを開発したらいいだけ、いい時代になりました。
 通信教育のN高が、大学の授業を高校生が履修できるようなシステムを作るつもりでいるとネットで公表していました。どんどんやってもらいたい。
 
<余談-1:文系理系の壁を越えられる人材の育成>
 デジタル大臣を拝命しながら、デジタル技術をまったくご存じない河野大臣、強情でわがままなだけ、つける薬がありません。彼の下で働く官僚たちがお気の毒です。こんな大臣が来たら、わたしが官僚なら死んだふりしてるか、事務次官ならさっさと天下りさせてもらいます。奴隷じゃないので阿呆に一生懸命に仕える義務はありません。
 新型コロナでわかったのは厚生省の医療技官にシステム分野の専門知識がないということ、仕様書すら書けません。だから、医療とデジタル分野のクロスオーバーした複合分野の仕事のマネジメントができないのです。この先も十年以上ダメでしょうね。COCOAでは同じ理系分野でも医系技官とデジタル技術者の間でインターフェイスができなかったということ。感染接触アプリCOCOAが不具合だらけでついに機能しませんでした。PCR陽性者のデータ収集でも、ファックスや手作業からずっと抜けられませんでした。これも同じ理由です。
 1987年に臨床検査コードに関する大手六社と日本病理学会臨床検査項目コード検討委員会で産学共同プロジェクトを組織したときは、厚生省の医系技官にはデジタル分野で専門知識や技能のある人材がいないようなので、声がけしませんでした。4年間の毎月作業部会を開催して、1991年に日本標準臨床検査項目コードが臨床病理学会から公表されています。それ以来、この臨床検査項目コードが全国のすべての病院やクリニックの院内システムで使われています。例外はありません。医療のインフラが一つ完成したということです。
 なぜ厚生労働省の医系技官にデジタル能力がないと断言するかというと、1986年に「臨床診断エキスパートシステム開発と事業化案」という提案書を書いたときに、文献を調べました。関東逓信病院を中心にNTTがチャレンジしていました。それで、その提案書を携えて、NTTデータ通信事業本部と2回打合せしました。コンピュータの性能や通信回線の性能がこのエキスパートシステムの要求仕様を満たすのに30年以上かかるという結論でした。東京⇔大阪で専用回線を引くと月額30万円の時代でした。しかも画像データは無理、それで断念したのです。実際には十数年でした。(笑)産業用エレクトロニクスの輸入商社に6年間いたのに、見通しを誤りました。
 そのときに調べた文献の中に厚生省が関係したものは一つもなかったのです。デジタル時代へと突入しているのに、この分野へ関心を持ったり、大きな構想で動いている医系技官が一人もいないことがわかっていました。だから、臨床検査項目コードの日本標準制定産学共同プロジェクトを組織する際に、厚生省には声を掛けなかったのです。いまだに、医療とデジタル技術の複合分野を担える人材が育っていません。育たないのでしょうね。新型コロナ騒動が理由を明らかにしてくれました。不都合な事実もストレートに事態が明らかになるようなシステムができあがると、ごまかしようがなくなります。感染研によるデータの独占もできません。
 1988年ころのエイズ騒ぎの時もすごかった。エイズサーベイランス委員会がHIV新規陽性患者数を年間数十例と発表していましたが、SRL1社だけで年間500前後のHIV検査陽性が出ていました。ウエスタンブロット法で、全数確認検査していたので、検査に間違いはありません。エイズサーベイランス委員会は、この時も医師からの報告数を集めて公表していたのです。まるで信用できない数字でした。最大の臨床検査会社であるSRLにすら、HIV検査陽性者数の問い合わせはありませんでしたそれで何を引き起こしたのか?HIV陽性者数が少ないということで、日本は先進国でエイズ対策が一番遅れて、その後HIV陽性者の激増を招きました。あれは医療行政が起こした人為的な災害でした。COVID-19になっても同じでしたね。予算が大きいのでもっとひどいことになった。
 医療行政は欺瞞に満ちているので、複合分野を担える人材がいないほうが都合がいいのかもしれません。しかしそれは国民のニーズとはまったくかけ離れています。

 民間企業も官僚も政治家もいま必要な人材は、理系と文型の壁を軽々と越えられる人です。1000人に一人いたらいい。そういう人材を育成するためには、小学校の算数教育から変えなければならないような気がします。理由はすでに述べました。理系人材のすそ野を広げるために、そういう改革が必要だということです。

<余談-2:ある理想の授業>
 生徒たちが自由勝手、点でバラバラににやっているようで、自然に統制がとれている見事な授業を紹介します。水野さんの授業です。名人芸です、見終わってほっこりしました。
「静かではないが、騒がしくない。きちんとしてはいないが、乱れてはいない。生き生きとした自由あふれるクラス」見事に実現していらっしゃる。これが彼の達成目標でした。TOSSの創始者である向山洋一先生の目指したものです。弟子の彼は見事にやり遂げたと思います。
*「win3チャンネル 写真で見る水野学級」

 win3とは「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」の教育版です。教育分野でこんなことをいう人に初めて出会いました。もう十数年のお付き合いです。学校の方は早期退職されて、子育てに関するNPO法人で活躍なさっています。道東では有名な先生です。

(動画の中に水野さんがつくった計算プリントが出てきます。掛け算の問題がびっしり書かれていました。「3ケタ×2ケタ」の問題で終わっていました。「3ケタ×3ケタ」がありません。この辺りに、水野さんとわたしの教育に対する問題関心の違いが現れています。高校生になって「3ケタ×3ケタ」の掛け算が出てきたときに、戸惑う生徒が出てきます。成績上位の生徒には必須の問題が、学習指導要領にはないのです。学習指導要領は最低限のことを書いているという風に、文科省は表現を数年前に変えました。水野さんがあのプリントをつくったのは、その前だったのでしょう。
 教育に対する問題意識が異なれば、教育のビジョンも達成すべき目標も違ってきます。そしてそのビジョンや目標を達成するための戦略も違ってくるのはあたりまえなのです。計算問題のプリントだって中身が違ってくるのです。
  教育というのは重なり合う山、山脈のようなものです。その頂上はいくつもあります。水野さんとわたしは教育という山脈の違う頂を登っているのだと思います
頂が違うと見える景色も異なります。どちらがいいということはありません、それぞれの頂上で望んだ景色を見ることになります
 わたしは、企業人として、難関大学出身者と一緒に仕事して、彼らが得てしてマネジメントに弱い、ビジョンや大きな構想を描き、それを達成するための戦略策定、そしてその実行に、一流大学出身者ではない者たちに比べて弱いということを経験として知りました。社会人となってからでは、もう遅いのです。正解のある問題を中高と6年間やり続けたら、ほとんどの人が思考の型が固まってしまって、もう柔軟性を取り戻せないのです。受験勉強で失うものがあるらしいということに気がつきました。
 受験勉強で培った能力のどこに根源的な欠陥があったのか、勉強の仕方のどこが間違っていたのかというのが教育への関心の出発点でした。そのために古里へ戻って小さな私塾を2002年11月に始めました。そして20年間生徒たちを観察しました。現在の教育のどこが間違っているのか、その答えを見つけたかったのです。)

<余談-3:教育に関するわたしの問題意識>
 わたしは授業スキルにそれほど重きを置きませんが、小学生の段階では授業スキルの優劣が子どもに与える影響は小さくありませんから、水野さんのようなすばらしい先生が増えたらありがたい。スキルの高さから彼の教育技術は偏差値80を超えているでしょうね。つまり、あのレベルの先生は1000人に一人くらいの割合でしかいません。その事実は、授業技術が開示されても、容易にコピーできないということなのです。ソロバンの十段位を取得するのと変わらないトレーニングが必要だとはわたしの感想です。珠算の十段位は素質と努力があれば10年で到達できる目標ですが、水野さんクラスの授業スキルを獲得するためには30年の修行を要するでしょうね、それくらいすばらしいということです。どんな分野でも「名人」と認められる人は万日(=30年間)、修行を怠りません。「一生これ修行」と思っている人が少なくありません。

 極論が事情を鮮明にしてくれるので、大学の授業のことを書きます学部のゼミで3年間指導を受けた市倉宏祐先生(哲学)や経済学史の内田義彦先生の講義、大学院での院生3人による経済史の増田四郎先生の授業は、それぞれ、感銘深いものでした。それは三人の先生の授業スキルが高いからではなくて、思索の深さと、それまでに積み上げてきた専門知識の量に圧倒されたからです。三人とも、それぞれの分野で国内ではトップレベルの学者ですが、大学の授業では授業スキルは問題にもなりません。線形代数の授業は、たしか、笹井先生というお名前だったような気がしますが、4面の黒板に全部で20枚ほど式を展開しながら、解説するものでした。必死にノートに写して、授業の後で仲間数人が集まって、「わかったか?」って、中身を必死に理解しようとしてました。社会思想史担当の若い助教授には授業の後で、友人数人で1時間以上議論してもらうことが時々ありました。マックスウェーバーの専門家でした。どれほど先生の授業の内容を理解して、質問や議論してたのか冷や汗ものですが、商学部会計学科の学生の中には会計学や原価計算だけではなく、経済学を勉強している生徒もいます。公認会計士2次試験科目には、当時は経済学も含まれていましたので。わたしのように好奇心から出題範囲ではないマルクス『資本論』全巻を読んでいる者もいるのです。分野の異なる人間が、年齢や学生と助教授という壁を乗り越えて議論することは、ドキドキしながらお互いの理解が進み、担当する先生の授業へもフィードバックがなされ、愉しいのです。
 チンプンカンプンのわからない授業でもいいのです。手取り足取りして教えるのは小学生の時代だけ、中学校や高校は自律的に問題意識を持って勉強できるように切り替えていく時期です。大学ではわかる努力は学生がすべきものというのが暗黙の前提でした。先生に求めるのは、深い学識と思索でした。学者と言ってもピンからキリまでいます。学生は授業を受けることで、担当する教授たちの学識の深さや、質問することで思索の深さを測っています。そういうことをやって、いい先生を見つけてゼミを選択し、指導を受けます。

 そうしてみると、中学校と高校の授業は小学校と大学の中間に位置しているので、中学校は生徒にわかりやすい授業を、高校は生徒にわかりにくくても、内容がしっかりしていればいいということになるでしょう。いつまでも生徒にわかりやすい授業は必要がない、生徒の思索や精神の成長段階に応じた授業でよい、というのがわたしの意見です。
 そして上位10%の学力の生徒を、その学力にふさわしい授業を、小学生の時から受けられるようにしたいというのがわたしの願いです。いままで述べたように、教える内容と教え方が標準的な学習指導要領とはまったく違っています。ICT利用で、学校教育でもそういうことが可能な時代になりました。学力上位10%の子どもたちが、好奇心を満足させられるような、知的レベルの高いアプリの開発をすればいいだけです。
 日本が科学技術で国の産業基盤を支え続けようとするなら、そのためにどういう人材を育成するのかというビジョンや具体的な目標があるべきで、そのビジョンや目標を実現するための具体的な長期戦略が必要だというのが、わたしの言いたいことでした



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#5026 繰り上げのある加算は筆算よりはソロバンで...:脳の使い方 Jul. 29, 2023 [47.3 そろばん(計算)]

<最新更新情報>●7/30朝8:35 計算操作を「m+n」「m-n」という風に一般式で解説
  ●7/30午後3時半追記
 

 脳の使い方の観点から、加減算の学び方・指導の仕方を比較してみます

 小学校での繰り上げのある計算の指導は次の手順でやります。
 たとえば、「7+8」。

 「7+8=7+(3+5)=10+5=15」
 7があるので、7の補数は3ですから、8を「3+5」に分解します。7に合わせて8を「3+5」に分解するので論理野である左脳の仕事です。
 9なら「3+6」です。4なら「3+1」、5なら「3+2」、6なら「3+3」、7なら「3+4」という処理をしなければなりません。

 珠算の教え方は少し違います。
 「7+8=7+10-2」
 8の補数である2を利用して、「8=10-2」とやります。9なら「10-1」、4なら「10-6」、5なら「10-5」、6なら「10-4」、7なら「10-3」です。10が固定されているので、「7-n」では引く数nの補数を暗記していれば、反射神経で計算できます。「m+n」の計算をするのに、mは考慮しなくていい、nの補数だけを暗記していれば反射神経で計算ができるところが、珠算の加算操作の優れている点です。
 筆算ではmに合わせてmの補数を求め、次いでnを分解しなければいけません。「mの補数+(n-mの補数)」なんて複雑な操作をやっているのですから、加算減算で、ケタの繰り上げ計算、ケタの繰り下げ計算のところで、落ちこぼれが3~5割出るのはあたりまえだわな

 ソロバンではこれを指の操作でやるので「運指」と言います。指の動きですから、脳の運動野の受け持ちです補数は9個しかありませんので暗記してしまいます、あとは反射神経ですから、論理的な思考の時に使う左脳領域を消費しません筆算に比べて操作もシンプルです
 十の位の「一珠」を親指で上げると同時に人差し指で1の位の「一珠」を二つ下ろします。親指と人差し指を同時に動かします。トレーニングで、考えずに手が動くようになります。脳の運動野の仕事です

 引き算はどうでしょう?
 「15-8」は筆算では、「15-(5+3)=15-5-3=10-3=7」
 ソロバンではやはり8の補数の2を利用して、「15-8=15-10+2」=5+2=7」

 ソロバンでは引き算も補数を使います。足し算の時は補数の引き算に、引き算の時は補数の足し算になっていますから、引き算の方が簡単です
 指の動きは、十の位の「一珠」を親指で卸すと同時に人差し指で8の補数は2ですから、一の位の「一珠」を二つ上げます。親指と人差し指が同時に動かします。反射神経の働きです

 ソロバンは「一珠」四つと「五珠」を動かして計算しますので、実際に計算過程を珠の動きとして認知できます。筆算方式は繰り上げ繰り下げ計算が抽象的なので子どもに向いた指導法とは言えません無理な指導法には副作用があります。計算に苦手意識を刷り込んでしまいます。ソロバンによる計算は筆算に比べて、シンプルで美しいのです。だから、理解が容易です。

 3割程度の子どもが小学校1年生で、繰り上げ計算のある加算や、繰り下げ計算のある引き算が苦手になります。筆算方式にこだわるあまり、計算苦手の生徒を作り出しているという側面があります。筆算方式にこだわっていると、3割程度の生徒が算数が苦手になり、そのまま中学生になって数学アレルギーが強くなります。

(小学生の時に計算で躓き、中学生になって軽い数学アレルギーを発症した生徒は、こうこうせいになったらどうなるでしょう?根室高校普通科を例に挙げると、数Bだけでなく、数Ⅱの選択制になって、履修しない生徒が増えています。十年さかのぼると、数Ⅱも数Bも必修だったことがありました。いまや根室高校卒業生の数学能力は、数ⅡBが必修だった時代に比べて、著しく落ちています。仕事で難易度の高い問題は理数の区別がありません。こんなに数学の能力が落ちたら、社会人になってから統計の専門書も読めないような低学力になってしまいます。北海道医療大学臨床心理学科に進学した生徒が、大学で使っている統計学の教科書を見せてくれたことがありました。東大の教養学部で使っているものでした。数Ⅱ・Bをやっていないようでは授業についていけません。わたしは文系志望の生徒も高校では数Ⅲまで履修すべきだと思っています。企業人となったときに、困難な仕事は文系理系の区別がないのです。それらふたつがクロスオーバーしたところで問題が起きます。両方やれなきゃ解決ができないのです。プロジェクト・マネジャーになれば、理系・文系それぞれの専門家と専門用語で対話をする必要が出てきますから。)

 割り算は引き算が混じるので、引き算が苦手だと、計算速度が著しく遅くなるので、隣の生徒と比べて、自信喪失、苦手意識はますます高じます。計算速度でどれくらい差があるのか、中1の生徒5人で競わせたことがあるので後でデータをお見せします。「読み・書き・ソロバン(計算)」では計算スキルが一番格差が大きいのです。小学校の先生も中学校の先生も、生徒を見ればみなさんわかっているはずですが、珠算を1年生から教えて、日本の子どもたちの計算スキルをアップしようという意見はどこからも聞こえてきません。それは、学校の先生たちが計算分野に関しては指導のプロではないからです。珠算の指導法とトレーニングに関しては「素人」です。そして学習指導要領でも小学1年生から珠算を教えるようにはなっていないからやれません。生徒のことを考えたらやってもいいはずですが、珠算指導の専門的なスキルがない。

 極東の町の中学生の学力テストの平均点は3割前後、30点付近です。びっくりするほど数学が不得手の生徒が多いのです。だから、中学生で数学が苦手な生徒(学力テスト30点未満)は約半数です。原因は小学校の計算指導にあります。もちろん家庭での学習指導にも問題があります。ほとんどの親がフォローしていません。高学歴の親が多い首都圏とは事情が違います。やればできるはずですし、やっている親はいますが、ごく少数でした。
 ケタの繰り上げ計算、繰り下げ計算で躓く子供が多いので、困っていましたね。どうしたらいいのかやりかたがわからない。小学低学年は教えていなかったのですが、相談依頼があると指導の仕方を含めて応じていました。

 さて、今度は乗算を、筆算とソロバンで比べてみたいと思います。
 桁が少ないとそれほど違いは出ません。
 
  25
 × 3
    15
      6
      75

 実際には1を小さく書いて、その次に3x2=6とやって、小さく書いた1と足します。
 ソロバンでは、25と置いて、5の隣から3x5=15,次に五珠を人差し指で払い、「3x2=6」と頭の中でやって、2から一つあけて、6を足します。こう書くと面倒なようですが、指の動きは単純です。
 
 3ケタ同士の乗算をやってみます。
 「256x378」
 筆算では小さい字が3段並びます。
 珠算のできる生徒は、エアーで指を動かして計算します。
   256
  ×378
  2048
    1802
    768
    96768


  ソロバン方式では繰上りの小さな字がでてきませんから、計算ミスが少なくなります。そしてそれぞれの段の計算は指を使った暗算ですから、瞬時にできます。
 「256x8=2048」、「256x7=1802」、「256x3=768」
 暗算でいきなり、
   2048
       1802
       768

 格段の数字を暗算で書いていくだけです。桁を一つずつずらせて書き終わったら、縦に暗算で答えを書きます。スッキリしてますから、計算ミスがあっても見つけやすいのです。段ごとに掛け算するときに桁上がりの数値が記入され、次いで三つの数字を縦に加えていくときに再度桁上がりの数字が小さく書き込まれたら、小さい数字があちこちにあってミスが生じやすいことは了解できるでしょう。このように暗算を併用すると、実にスッキリ、余分なものがないので、検算しやすいのです。計算メモを書くときに検算しやすいというのは大事な要件です。暗算がある程度できる生徒は、各段の数字はパッと見ただけで再計算してチェックできます。縦の加算も速い。

 コンピュータ言語でCOBOLというのが昔ありました。事務用の処理言語で数値計算には向いていませんが、プログラムを書くときに、ストラクチャード・コーディングというやり方が導入されました。1980年頃からでしたでしょうか。プログラムを作成する人と、それをメンテナンスする人は開発段階から時間がたっているので、別の人ということになります。そこで他人の書いたプログラムでも読みやすくなるように、ロジックごとにインデントをつけてロジックのカタマリを構造的に見やすくしたのが、ストラクチャード・コーディングでした。いまではどのプログラム言語でもストラクチャード・コーディングされています。書いた人自身がチェックしやすいし、担当者が変わってもメンテナンスするときに、アルゴリズムが読みやすいように工夫されています。
 だから、計算でも、後からチェックしやすい記述というのは、一般原則と言ってよいでしょう。

  そういうわけで、暗算方式併用の筆算では、小文字の繰り上げ計算メモを書き込む必要がありませんから、これだけで、計算速度やチェック速度は標準的な生徒の筆算の2~5倍くらいになり、余計な数字を書かないわけですのでシンプルですから計算精度もアップします。
 暗算併用ではなくて、ソロバンでやると、掛け算をしながら加算していくので、三段の数字を最後に加えるという操作がありません。計算過程がさらに短縮されます。
 3桁同士の掛け算なら、1級なら百題やってもミスはほとんどないでしょう。ソロバン使えば、10分間で、3ケタ×3ケタの乗算なら、40題くらいはできます。ソロバンなしなら、30題前後。
 小4の生徒では、筆算方式でやらせたら、10分間で7~10題くらい、ミス2~3題が標準速度と標準正解率かもしれません。
 後で出てきますが、ソロバンの全国大会で、3ケタ同士の掛け算10問は、種目別優勝者の金本三夢さんが12.69秒で終了しています。100問なら2分半かからない。すさまじいスピードです。動画の10分ちょうどのところあたりを見てください。

 ソロバンを使って計算指導すると、計算が苦手な生徒はほとんどいなくなるでしょうね。珠算塾でトレーニングして3か月で6級レベルに達しない生徒はほとんどいません。
*全珠連6級問題プリント
 全珠連1級問題プリント

 計算指導に関してはソロバンが圧倒的に便利なのです。どうして小学校の先生はソロバン使って教えないか?いいえ、ちゃんと教えています、3年生や4年生で教えているのです。加算減算を教えたずっと後で教えています。学習指導要領通りにやっているのです。時間数が足りていません、数時間やり方を習っただけで、できるようにはなりません。トレーニングが必要です。英語の勉強と似ています。
 もう一つは小学校の先生は、計算指導の専門家ではありませんから、珠算は見取り算だけ教えて、乗除算は教えていません。プリントを作成して乗除算も教える学校もありますが、トレーニングが重要ですから、授業で数回教えただけで効果があるとは思えません。
 剣道だって柔道だって書道だって華道だって茶道だって、1回で教えるのは無理というもの。柔道は受け身の稽古だけでも毎日やって数か月を要します。基本の型が身につかないと怪我をします。日々鍛錬してはじめて基本的な型が身につきます。珠算も同じなのです。

 ソロバンを暗算でやるときは脳内にソロバンの画像が浮かんでいます。画像処理ですから、右脳を使っているということ。そして指の動きと画像が連動しているので、運動野の脳も使っています。使わないのは論理をつかさどる左脳です。筆算は左脳を使ってやっています。だから、文章題をやるときには文字情報を理解するのに左脳を使い、計算にも左脳を使うということになり、左脳に負荷がかかって、文章問題の理解ミスや計算ミスが出やすくなります。
 ソロバンに慣れた生徒は、数学の問題を解くのに、脳で分散処理(左脳で論理処理、右脳で画像処理、運動野で指の動きの処理)していますから、圧倒的に有利です。脳全体が活性化しています
 ソロバンをやると、脳の使い方が違ってくるというところが大事なのです。マルチ処理ができるようになります。意識して使うと飛躍的な学力アップが訪れます。

 脳内で画像処理ができるようになると、図形を描いて、脳内で補助線を引いたり、図解を回転させたり、先生が黒板に書いた文字を脳に再現できるようになります。慣れてくると、黒板に書かれた文字を再現するだけで、1科目数分で復習できます。書いたときの状況、説明が芋づる方式でそのまま再現できます

 難問にぶつかると、問題を数問丸ごと記憶できます。図も含めて記憶できるので、紙と鉛筆があれば、解法が頭に浮かんだ時に、すぐに書きだすことができるようになります。難問を数題頭の中に入れておいて、随時、紙に書いて考えることができます。バスや電車を待つ間に、記憶を再現して解き方を考えることができます。眠る前に記憶しておくと、朝目が覚めたときに解けているなんてことが多くなります。

 脳の使い方という点から、計算指導の在り方を見直したらいかがですか?
 小学1年生は週2時間、珠算を教えたら、日本の子どもたちの数学の能力が底上げできるでしょう。高校数学になっても微分積分や複素平面も数の操作とイメージ(無限小への分割や回転)が基本ですから、珠算で数に関するセンスを養っておくのは大切なことです。数学の分野で断トツ世界一であることは日本の国力を考えると、とても大事なことではないでしょうか。
 それゆえ、「読み書きソロバン」という教育の基本に関する日本の伝統を見直すべきです。
「読み書きソロバン」というくらいですから、伝統的な教育方法を小学校で取り入れたらいいのですが、それには珠算指導の専門家が必要です。学級担任制でいま教えている先生たちにやってもらうのは無理です。具体例を挙げて申し訳ないですが、北海道教育大には珠算という科目もないし、教えられる先生もいないでしょう。どこの学芸大や教育大でも似たようなものかもしれません。日本の教育大や学芸大がなぜ珠算の研究をしないのかとっても不思議です。珠算は計算技術としてはダントツに世界一です。計算オリンピックをやったら、1位から10位まで、日本が独占するでしょう。ソロバンを使っても暗算でも同じことです。それだけ珠算が計算技術として優れているということ。
 江戸時代からコンピュータが普及するまで、計算技術では日本がダントツに世界一でした。それはソロバンの使い方が巧みだったからです。運指法はいまでも進化しているようです。わたしにはできませんが、両手を使った運指法があります。乗算がとてつもなく速い。左手は人差し指だけ使っています。
*珠算十段選手の掛け算(両手弾き)
*そろばん日本一決定戦動画
*15歳以下のそろばん日本一決定戦動画
 一番最後の大会は、15歳以下という制限があります。ソロバンの大会でも、ソロバンを使わず暗算でやっている参加者が多いのです。指で動かすとよりも、頭の中で珠を操作する方が速いのです人類が道具を使わないで計算するやり方で、断然最速です。ソロバンを使った計算トレーニングがいかに優れているかのエビデンスです

<珠算指導教員の確保案>
 全珠連検定試験3段以上の人を、一コマ8000円を支払って雇えばいいと思います。日本にはそういうレベルの人材が十分います。人口1万人当たり、1.6人でいいのですから。

 小学1~3年生まで、週2回指導するとすると、
 80万人÷25人/クラス=32000クラス
 一人、週10コマ持つとすると、必要人数は
 32000×週2回÷10=6400人
 1~3年まで週2回珠算指導すると、必要人員数は
 6400人×3=19200人 
 19,200÷(123,000,000÷10,000)=1.6人/1万人
 実際には全校生徒が十数人の僻地の郡部校があるので、これだけでは折れば、教員は間に合わないでしょう。そういう学校はなるべく統合すべきです。

 参考資料を追加しておきます。総務省の「経済センサスー基礎調査 ソロバン教室ランキング」資料によれば、全国のソロバン教室の数は6753軒です。人口10万人当たり5.31軒です。
 事業所単位のカウントですから、ひとつの事業所で複数の教室をもっていたら、教室数はもっと多いことになります。総理府の事業所の定義をみてもそのあたりが判然としませんので、解釈を保留します。
 参考までにデータを記すと、極東の町で十数年前まで曙町にあった高橋珠算塾では3段以上の段位取得者は、たぶん100人を超えています。昭和43年頃で4段と5段が6人ほどいました、当時小学高学年か中1だったと思います。一人が4段に合格すると、すぐに数人がそれに続きました。5段に一人合格するとやはり同じ現象が起きました。競争は大事です。そのご、十段位もいたと聞いています。高橋珠算塾で最初に日本商工会議所珠算能力検定1級合格者は根室高校初めての東大現役合格者の横田さんでした。十年くらい後に、わたしが2人目。商工会議所検定試験1級の問題を半分の時間で合格点が取れれば、全珠連3段相当です。
 全珠連珠算検定で3段以上の段位認定者はおそらく全国に10万人以上いるでしょう。女性が多いから、主婦で仕事に就いていない人が少なくないと思います。非正規雇用である場合は学校で授業を受け持った方がお得になるくらいの時給を保障すればいいだけ。

<余談:中1年生の計算速度格差>
 同じ学年の中学1年生5人に計算競争させたことがありました。一番遅い生徒と速い生徒では1:30の差がありました。30題やった生徒は偏差値45の根室高校から小樽商科大学へ合格しています。中高とずっとサッカー部でしたから、文武両道の生徒。
 クラス25人とすると、1:30の速度格差は普通でしょうね。五人の中には珠算塾へ通った生徒がいませんでした。珠算塾へ通って熱心にトレーニングした生徒がいれば、1:50くらいの格差が生じます。
 面談したときに、母親で五段の人がいました。暗算がわたしより断然速かった。生徒の中では野球少年の中2の生徒が3段でした。釧路高専へ進学し、いま専攻科で学んでいます。もちろん数学がよくできました。珠算は小学6年生でやめています。

<余談:基本は型の繰り返し>
 ビリヤードの基本トレーニングは素振りです。キューをもってやるときは、重みを感じながら、右ひじが固定されて動かないようにイメージして腕を振ります。毎日素振りをして、身体に感覚を染み込ませます。次第に、肘を意識せずとも肘を視点にぶれない素振りができるようになります。何万回って振るんです。慣れてきたら、キューをもたなくても、手にキューの重みを感じながら、エアーで素振りができるようになります。
 基本メニューのパターンを繰り返し練習して、撞点の位置、ストップショット、ドローショット、フォローショットを意識して右掌に感覚を染み込ませます。プロのコーチに教えてもらったトレーニング基本メニュー図面が50通りくらいあります。
 頭でクッションシステムを計算しても、同じテーブルでも、その日のコンディションが違うので、微調整が必要です。だから、基本トレーニングを怠ると、微調整もできません。
 
 計算も同じことです。繰り返しトレーニングして、考えなくてもできるようにしておきます。反射神経に任せておけるくらいになればベストです。
 なお、指を使わない暗算は運動野だけでは処理できませんので、指を動かした方が楽です。
 わたしは小学生になる前から、ビリヤードをしていました。すぐに脳内でビリヤードができるようになりました。無限に撞けます。基本パターンを緑色のラシャを敷いたテーブルに赤と白のボールをありありと思い浮かべ、手の感触を再現して動かすことができます。中学生の時にその能力が勉強に使えることに気がつきました。黒板に書かれた文字をページをめくるように脳内に再現できるのです。するとその文字を書いたときの先生の説明が芋づる式に思い出せたのです。だから、授業が終わって数分間目をつぶって脳内に板書を再現するだけで、復習を終わらせることができました。家へ帰れば、ビリヤード場で遊んでいてよかった。数学だけは時間をかけて考えました。社会は学校の授業と小4から読んでいた北海道新聞の「卓上四季」「社説」「政治経済欄」が役に立ちました。習っていないことが学力テストで出題されても、新聞で読んで知識があるので正解できました。
 脳の使い方はビリヤードとソロバンでトレーニングできたのです。

<文部科学省へのお願い>
 教育村(文科省と学校の先生たち)内部で議論していたら、いつまでたっても解決できない問題の一つが、日本の伝統的なソロバンを算数教育の基本に据えるということです。いままで議論の俎上にすら上ったことがないのでは?願わくば、小学1年生から学校教育に珠算を取り入れるために、全珠連と話し合ってください
 学習指導要領を変えて、珠算を1年生の時から週2時間確保してください。他の科目の時数を削って確保してください。
 科学技術立国で日本が生きていくためには、理数系の人材を現行の2倍ほしい(大学の理系定員も増やさなければならない)。そのためには、まずは算数が苦手になる筆算による指導法を珠算に変えましょう。いまは計算指導の稚拙さから、小学校で半数の生徒が、理系コースをあきらめざるをえない状況に追い込まれています。そんな現状を根本から変えましょうよ。
 1~3年生で珠算専門の指導人材は、時給8000~10000円で全珠連検定3段以上の有資格者を充てればいい。珠算塾の先生たちは生徒が学校へ行っている間は時間が空いているので、授業を受けもてます。仕事をしていない主婦にも高段位の保持者が多数います。
 小学校の先生たちは算数の指導がずっと楽になりますよ。こんなに優秀な計算(ソロバン)の専門家が多数いるのは世界中で日本だけです。豊富にある最高高品質の教育資源をまったく使っていないというのは、愚かです
 計算指導は珠算の専門職に任せた方がいい。もちろん、小学校の先生で3段以上の有資格者がいたら、そういう先生がやればいい。ほとんどいないでしょうね、調べてください。算数の基本である計算指導に素人を充てているお寒い状況を理解して、現状を変えてください。

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 いままで、脳の使い方という観点から、加算減算の指導法がチェックされたことはなかったでしょう。珠算を小1から計算トレーニングのために導入すべきという主張も、教育村の中では出てきたことがなかった。科学技術を担う若い人たちをたくさん育てるために、珠算を学校教育の柱の一つにすることは日本の未来を根底から変えるかもしれないのです。まずは議論が必要です。「読み・書き・ソロバン(計算)」の指導は、文科省のなかった江戸時代の方がずっと優れていたように感じます。どうしてこんなに後退したのでしょう?
 教育村のみなさん、異論があったら、投稿欄へ書いてください。垣根を超えた対話は実りも大きいものです。。
 

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#3374 小学2年生の算数:足し算・引き算の教え方 July 23, 2016 [47.3 そろばん(計算)]

 小2の子どもの居るお母さんから相談がありました。算数の○cm△mmというような単位付の計算ができないというのです。
 小2は教えていないのですが、相談に応じますからいらしてくださいと電話で告げて来ていただきました。できなかった算数の問題をもって来てもらって、状況をうかがいました。具体的なものがないと要領の得ない相談になりますから。
 親子だとなかなか教えるのが難しい場合があります、親は「何でこんなのわかんないの!」と叱ることになるし、子どもも親へ甘えが出るから喧嘩になって、教えられないと、まあ、こういったことです。じつはわたしにも身に覚えがあります。仕方ないので、友達二人連れておいで、一緒に教えるから、その代わり授業中はお父さんではなくて先生だからね、そのつもりで。しばらく、近所の子ども二人と一緒に教えました。東京暮らしのときの話です。

 単位のつかない問題からチェックしてみました。桁上げや桁下げが理解できていない子どもが案外多いものです。簡単にチェックできるので、こんな問題をやってもらいました。

 「5+9=?」

 「13」、即答でした。
 「ブー!もう一度考えてみて」
 30秒ほどたってから、
 「14」
 「ピンポーン!正解」
 今度は引き算です、桁下げがスムーズに行くかチェックです。

 「14-9=?」

 1分ほどかかりました。桁上げ、桁下げを伴う問題は、とたんに速度が落ちてしまうようです。これは大きな問題です。放置してはいけません。なぜなら、次の問題には桁上げが含まれる場合があるからです。最初は桁上げのない単純な問題から。

 2cm3mm+3cm5mm=

 「cmはcmのついている数字同士を足せばいいんだ、2+3はいくつかな?」
 「5」
 「5cmだね、では3+5はいくつだろう?」
 「8です」
 「そう8だ、だから、5cm8mmと単位をつけて答えを書けばいいだけだよ、できそうかな」
 
 問題5題をそれぞれ単位ごとに足し算と引き算の答えを訊いて、口頭でそれぞれcmとmmをつけて答えを確認しました。

 「じゃあ、5題、今度は一人でやってご覧」

 あっという間に答えを書きました。覚えたから当たり前です。でも、本人は「わかった、できた」と自信が生まれています。表情にちょっと元気がでています。
 次にやるべきは、桁上げ、桁下げを伴う問題です。
 
 5cm8mm+2cm4mm=

 こういう問題は桁上げ操作がスムーズにできない生徒はつっかえてしまいます。そこで最初の問題「5+9=」に戻ります。
 10の補数を覚えてもらいます。

 1の補数は9
 2の補数は8
 3の補数は7
 4の補数は6
 5の補数は5
 6の補数は4
 7の補数は3
 8の補数は2
 9の補数は1

 以上で終わりです。足すと10ですから、簡単に覚えることができるでしょう。ランダムに一桁の数字を言って、10の補数を言わせるゲームをしたらいい。間髪をいれずに補数を言うトレーニングです。面倒なら、電話帳を開いて、下4桁を次々に言えばよい。
 4⇒?
 8⇒?
 5⇒?
 ・・・

 さて、今度は補数を利用した桁上げの計算例を挙げます。
 「5+9」は10を足して9の補数の1を引きます。こういう計算になります。
 「5+9=5+10-1=15-1=14」
 こういう風に2段階入れて計算します。書くと長くて面倒なようですが、慣れてくると機械的な操作ですから、考えなくてもできるようになります。「桁上げの生じる足し算は簡単な引き算に」なります。

 足し算の次にやるべきは桁下げの生じる引き算です。1分間ほどかかった「14-9」は次のようにやります。

 「14-9=14-10+1=4+1=5」

 桁下げのある引き算が補数の足し算に替わりました。お母さんが問題を作ってもよいし、桁上げ・桁下げのある計算ドリルを選んで買ってきて、繰り返しやらせましょう。百題、千題やらせればいいのです。
 じつはこれはソロバンのやりかたなんです。「14-9」は10を引いてから1を足します。小学生2年生には1年間ソロバンを習わせたいですね。こういう計算にまごつく生徒が中学1年生で4人に一人ぐらい居ます。昔に比べたらおそらく4倍です。お母さんたちが珠算塾に子どもを通わせなくなりました。小学生に英語なんか習わせるよりは2年間珠算を習わせたらいい。根室は5段以上の名手が何人も居ます。十段位を取得した人が過去に一人居たはずです。根室は一時期、北海道ではソロバンの先進地域でした。曙町にあった珠算塾、高橋尚美先生が根室の珠算のレベルを上げてくれました。すばらしい先生でした。根室高校から初めて東大へ現役合格したYさんが一番弟子で、その次が2年先輩の澤山さん(岬町で珠算塾と学習塾を経営しています)、そして3番目の不肖の弟子がebisuです。わたしは高校時代に高橋先生にビリヤードを教えてちょっとだけ恩返しをしました。(笑)

 九九がもうすぐ出てきますが、九九の練習を大きな声でさせてください。暗誦できるようになったら、2段階目はストップウォッチを使って高速でやらせます。スマホの機能にありませんか?
 3段階目は逆九九の暗誦トレーニングです。次のようにやります。
 9×9 81
 9x8 72
 9x7 63
 ・・・
 8x9 72
 8x8 64
 8x7 56
 ・・・
 ・・・
 1x1 1
 
 これもストップウォッチで時間を計ってやらせてください。「読み書きソロバン(計算)」は速度が大事なのです。速度が2倍の子どもは同じ時簡に2倍の問題を消化してしまいますから、速度の大小が問題消化量の多寡に直接影響します。速度の大きい子は1時間の勉強で速度の遅い生徒の10倍もやることができます。学力に圧倒的な差が出るのは当たり前です。

 割り算の商を立てるのに、逆九九ができるのとできないのとでは速度に倍の差がつきます。こういうトレーニングを小2のときにおろそかにすると、中学校になってから計算速度が標準の3倍もかかるようになってしまいます。3時間勉強しても標準速度の生徒の1時間分しか問題を消化できません。

 30人のクラスでトップ3人と下位3人では、速度に30倍の差があります。計算速度が遅いと脳の働きも遅くなります。遅いことに脳が慣れてしまうからです。毎日やることこそ、長い期間の内にとんでもない学力差を生みますから、おろそかにしないでいただきたい。

 次に問題になるのは文章題です。これは日本語の文章を正確にそして速く読むことのできる生徒が圧倒的に有利なことは言うまでもありません。
 音読が有効です。この次にやり方を書きます。小学2年生のお子さんの居るお母さん、必らず読んでください。

 ちなみに、この生徒は月に一度ほど、お母さんに教え方のフォローをしてあげます。小学生低学年での漢字や短文章トレーニングのやり方しだいで学力に大きな差がつきます。
 困ったときは誰かが相談に乗るとか、助けてくれる、そういうあったかい古里でありたい


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