#4697 大谷真一先生ありがとうございました:市立根室病院眼科医 Jan. 20, 2022 [29. 道東の地域医療を考える]
旭川医大から元学長の好意で根室へ常勤医として赴任されていた市立根室病院の眼科部長大谷真一先生が2月1日の診療で退職されると1月15日の北海道新聞が報じていました。大谷先生は2015年6月に来られて、6年半精力的に診療と手術をこなしてこられました。白内障の手術だけでも毎週水曜日平均して5人くらいやってこられたようです。
わたしも大谷先生がなされた白内障患者手術1500人のうちの一人です。6年間の先生の仕事の大きさを感じずにはいられません。老人人口が8000人ほどいますから、白内障患者や緑内障患者が多いのです。眼科はいつも混雑しています。
白内障手術をしていただいて、わかったのですが、手術は4人のチームでなされますが、息がピタッとあっていました。点滴での麻酔だけですから全部聞こえます。手術が始まると水晶体が破壊されて吸引されると何も見えなくなり、終わると同時にプラスチックレンズを通して光が眼に入り、周囲がが見えます。あれは感激と驚きでした。
手術機器もツァイス社製の最高性能のものでした。光学系はツァイスが最高です。ソニーのカメラがツァイスのレンズを使用しています。
(最大手の検査センターSRL八王子ラボで機器の購入を担当していた時(1987-89)に、ウィルス検査室の蛍光顕微鏡の半分以上くらいがニコンやオリンパス製だったのですが、それらを全部ツァイス社製のものに買い替たことがありました。入社してすぐに、東証2部上場審査要件で、暗礁に乗り上げていた経営情報系システムを8か月で稼働させ全社の予算編成を担当して、検査試薬の値引き交渉を提案し、製薬メーカーと直接交渉して毎年16億円ほどコストカットを3年間やったので、わたしは当時平社員でも権限が大きかったのです。経理担当役員Iさん(ガンちゃん)と専務のY口さんがたしの提案にはノーは言いません。オリンパスの2倍近い、ニコンの1.5倍の値段でしたが、性能がいい。世界最高性能のものを使わないと、最高品質の検査はできないし、なにより検査をしている人たちに最高のものを使っていい仕事をしてもらいたかった、単純な理由です。「え、全部ツァイスの蛍光顕微鏡にしてくれるのですか」とウィルス検査課の課長の驚いた顔が眼に浮かびます。)
患者の側から見ると、同じドクターに診察してもらうのが安心なのです。いままでの病態を理解してくれていますから。わたしは白内障手術をしていただいたほうの眼は緑内障の前駆症状があり、年に2度経過観察中です。
医師が変わると治療方針も変わることが多く、それで不安になる患者もいます。3年くらいの間に頻繁にドクターが変わって不安を抱いていた知り合いの患者さんの話を古里の戻って2年目くらい(2004年頃)に聞いたことがありました。そのときは自分が眼科で受診することなんかないと思っていました。ところが加齢とともに状況は変わりました、他人ごとではなかったのです。
同級生の劇画家、神田たけしの五十周年展示会を見に行ったときだったか、大谷先生が奥様と男のお子さんと文化会館前で遊んでいるのを偶然おみかけしました。ああ、小さいお子さんがいるんだと思ったのと、先生がずいぶん背が高いので驚きました。一度、診察の合間に北海道の北部の方へ勤務が変わったら、適当な塾があるだろうかとお尋ねになりました。僻地の高校からは医大への現役進学がとっても困難であることを自身の進学で経験していたからでしょうね。やはり札幌がいい、札幌南高校がダントツに実績があります。そのようにお答えしたように思います。
わたしの勝手な推測ですが、おそらくお子さんの教育が最優先事項だったのではないかと思います。そろそろピカピカの1年生、お子さんは札幌の小学校に通学と考えるのが合理的です。勝手なことを書いて申し訳ありません。根室の地域医療の未来を考えるときにとっても大切な論点なので、あえて言及させていただきました。
市立根室病院では学齢期のお子さんのいるドクターはいないのでは?理由は簡単、根室は教育の僻地です、学力が低い。根室高校は偏差値45の高校です。首都圏の偏差値45の学校から国公立大学医学部の進学実績はゼロでしょうね。ありえない話なのです。根室は高校が1校ですから、生徒は玉石混交なのです。うまく育てたら、同レベルの難関大学に毎年3-5人現役合格者が出せるポテンシャルがあります。それが実現できていないだけ。たった一人ですが、7年通塾して国立旭川医大へ合格した生徒が昨年現れました。
根室高校から、毎年国公立医大へ現役合格者が出せたら、あるいは大谷先生は市立根室病院勤務をもっと長く続けてくれたかもしれませんね。地域医療の充実を考えるときに、教育抜きでは打てる手が狭くなります。根室は地域医療を守るためにも、高学力の生徒を育てるべきです。わたしのブログには具体的な提案や、実際にやってきたことの記録が残されていますから、参考にしてもらいたい。
ところで、大谷先生は旭川医大出身で、岡田医院の消化器内科専門医である岡田優二先生の後輩です。
数年前に東京のメガネ屋さんで視力検査をしたとき、一度眼科を受診した方がいいと言われて、東京の住まいの近くの眼科クリニックを受診したら白内障との診断があり、手術を決めました。根室に戻って主治医の岡田先生に相談したら、腕のいい後輩が市立根室病院にいるから紹介状を書いてあげると言われて、お願いしました。分厚い紹介状を開いて開口一番、「岡田先生とどういうご関係ですか?」と問われ、「小さな塾をやっていて息子さんを教えています、それだけです」とお答えしました。
なにかで岡田君の現役合格を知って、進学校じゃない道内の高校から現役で旭川医大へ合格するのはほとんど不可能なのだとおっしゃって、わがことのように喜んでくれました。
次回の眼科の診察は出張医の方が担当してくれるようです。2/2から3月末までは出張医で対応と、新聞記事に載っています。異動の時期までのピンチヒッターが派遣医、4月からは常勤医のドクターが決まっているということでしょうね。眼科の患者にとってはありがたい。
大谷真一先生、お世話になりました。
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#3885 地域を支える医師を量産しよう:自前の地域医療の仕組みづくり Dec.20, 2018 [29. 道東の地域医療を考える]
12/24 11時追記
最近人づてに知ったのだが、釧路市の総合政策部長のOさんは光洋中学⇒根室高校出身者。数人知っているが、釧路市役所の部長職は大卒がほとんどだから、かれもそうだろう。
教育は町の礎、未来への芽である、だから市教委へ教育政策を任せっぱなしにしていない、釧路市役所総合政策部は町のグランド・デザインに教育政策を組み込むつもりのようだ。釧路市議会では市議と教育長の岡部さんが教育問題で活発な議論を戦わせている。「基礎学力保障条例」制定(2012年12月14日)以降、市政の教育への関心の度合いが大きくなっている。根室市役所総合政策部にもそういう視点が必要だろう。
さて、ここからが本題である。市立根室病院の常勤医はこの数年12人前後を推移している。売上が30~35億円ほどあるから、常勤医換算で30人ほど医師が必要であると仮定してみる。たりない18人は大学からの派遣医師でやりくりするしかない。
地域医療のネックは医師の不足にある。その地域が自前で医師を育てられなければ、他地域から医師を招聘せざるを得ない。それが困難であることは根室の現状を見てもあきらか。足りない分は北大や札医大へ非常勤医派遣をお願いするしかない。
長期的にみれば解決策はある、やっていないだけだ。根室からの医学部進学者に奨学金を出せばいい。学費は国公立・私大を問わず全額支給、毎月25万円の生活費を支給し、アルバイトはしないで勉強に専念してもらう。大学を卒業したら医療技術を磨くために10年間は戻ってこなくていい、奨学金の返済は10年間猶予しよう。そして5年間根室に戻って医師をしてもらえば奨学金返済を免除しよう。根室へ戻って市立病院へ勤務する場合は2500万円の年収を保障しよう。
看護学校への進学者にも奨学金の返済は10年猶予してやったらいい。都会の病院でスキルを磨いて戻ってきてもらった方が根室の地域医療のためになる。
根室の中学生の中には毎年2~3名は医学部進学が可能な生徒がいる。お金がかかるから、端から医学部進学を考慮に入れていない。実にもったいないことだ。都会の進学校と同じシステムで中高の6年間育てたら、毎年2人は医学部へ送り込める。
20年間続けてみようじゃないか。根室出身の40人の医師が誕生する。戻ってきた医師のうち何割かは古里で診療を続けることになるだろう。何人根室に骨をうずめるか見てみたいものだ。
1人5000万円かかるとして、40人では20億円である。根室出身の常勤医がつねに15人いれば、大学からの派遣医師にかかわる人件費が年間10億円、20年間では累計200億円の赤字が減らせる。
やり方次第で医師は必要なだけ自前で育てられるし、地域医療の半分んは地元出身の医師で支えることができる。
ニムオロ塾では5年前から都会の進学校と同じシステムで一人の生徒を育てている。「個別指導・特設コース」と命名したい。根室にそういう塾が必要だ。指導能力のある者は、定年になったら根室へ戻って古里のために数年間汗を流してもらいたい。
地元出身の医師が戻ってくる頃には結婚して子どもがいる。子どもの教育をしっかりできなければ、根室に戻ってこない。だから、根室でも医学部進学が可能になる教育システムが必要なのだ。私塾と根室高校が連携すればやれる。
根室市内で学力テスト学年3番以内に複数回エントリーできた生徒には、さらに学力を伸ばすために個別指導塾へ週4日通う権利を付与しよう。塾の授業料は市側で負担しよう。経済的に恵まれない家庭の生徒でも優秀なら医学部進学できて、根室の地域医療の重要な担い手となる道を拓いてやりたい。こういう具体的な政策を実現するのは根室に住むわたしたち大人の責任である。
結論を箇条書にまとめておく。
<奨学金支給条件>
〇医学部進学者の学費は全額奨学金として支給する
〇6年間毎月25万円支給し、勉学に専念してもらう⇒アルバイト禁止
〇10年間奨学金返済猶予期間を設ける
〇5年間根室で診療したら、奨学金返済を免除する
<選抜条件>
〇中学生で市内全校で学力テスト五科目合計点が学年3位以内の2-3名を選抜して医学部進学の意思を確認する
〇選抜した生徒が個別指導塾へ通うつもりがあるなら、週4日の授業料を根室市で負担する
<下げ止まらない中学生と高校生の学力>
12年前のことだ。市街化地域で一番学力の高かった柏陵中学校の1年生3クラスのひとつが学級崩壊を起こした。2年生となりクラスが再編されたら、騒ぐ生徒が散らばって増殖した。学力テストの五科目平均点がいきなり50点も下がった。そして下がったままだ。柏陵中学校は十数年前は五科目300点満点の学力テストで140点台だった。いい時には160点を超えたこともあった。光洋中が今年は140点台を維持しているらしい。母校であるがここが一番学力が低かった。年度によって5人ほど学力の高い生徒が出る年度があるので、そういう年は平均値も高い、数年に一度の頻度。そういう年を「当たり年」と呼んでいる。喜ばしいことだ。漁と同じよう
柏陵中学校うの今年の3年生の学力テストの平均点は総合Bも総合Cも100点(300点満点)を切っている。9月の学力テスト総合Aは修学旅行が予定されていて未受験、折あしく数日前の9/8が胆振大地震による全道ブラックアウトで延期となった。
4月103.6点、10月学力テスト総合B90.2点、10月学力テスト総合C95.6点
(啓雲中:4月101.1点、9月A101.5点、10月B100.7点、11月C117.3点)
啓雲中学校は総合Bよりも総合Cが17点も高かった。校長先生が書いている学区通信によれば、放課後補習で教えあいをやったそうだ。学力の高い生徒が学力の低い生徒に教えたら、平均点が上がったということのようだ。いろんなことを試みている。秋田県大館市でやっている「学び合いの授業」と似ている。
柏陵中学校では、15年前は100点未満の生徒はゼロに近かった。平均点が百点を切ったのは初めてだろう。
<学力低下と地域医療の関係>
根室市教委はふだんの学力テストデータすらモニターしていない、だから危機感無しだ。
高校1校体制になってから根室高校生の学力低下も拍車がかかっている。新入生の最初の全国模試で数学の学年平均点が20点を切りそう、もちろん百点満点だ。こんな状況を放置している根室市に小中高生の子どもを連れて赴任したいと思う医者がいるか?子育てを終わった医師しか赴任する気になれないだろう。それもあって慢性的に常勤医が不足している。医師が来ない原因を一つ一つ取り除く必要がある。
学力低下を放置したら、地域医療崩壊だけではすまない、地元企業は人材を確保できず、そして地域経済も地域社会もドミノ倒しのごとくに倒れていく。
どうするのも根室で生まれ育ったわたしたち次第だ、それぞれができる範囲でなにかやったらいい。
<余談:四国の地域医療を支える県立大学医学部>
四国の人口は375万人だが、県立大学医学部が四つもある。道東の人口は約百万人だが、医学部のある大学は一つもない。道東に国立医科大学を設置してもらいたいというのは当然の主張である。道東の市と町が協働して国立道東医科大学設置の運動をしたらいい。まずは根室市役所総合政策部と釧路市役所総合政策部が医科大学設置について打ち合わせをはじめよう。核になるところができたらあとはなんとかなる。
国立道東医科大学ができて、道東地域枠が15人なら、30年で450人の医師が誕生するから、道東地域医療の医師不足は消滅する。
(歩留まりは1割くらいかもしれない、2割なら道東の地域医療はずいぶん変わるだろう:2019年2月2日追記)
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#3800 もったいない:育てそこなっている貴重な人材群 Aug. 5, 2018 [29. 道東の地域医療を考える]
7月に初めて全国模試を受験した生徒が三科目総合偏差値が目標通り75-80の間だった。この生徒は小学5年生の1月から指導している。ポイントは数学の先取り学習と日本語音読指導にあった。英語は考えるところがあって中学生になってから教えているが、数英の二科目偏差値だとほとんど80である。偏差値80は1000人中トップ。進研模試は46万人が受験しているから、偏差値80は進研模試受験生の中で全国上位460人ということ。有名私立進学高校の生徒たちが参加していないので、それを考慮すると上位3000人以内くらいと考えておこう。
東京では国立難関校へ進学する生徒たちは小4からスタートだ。個別指導塾で中学受験の勉強をし始める。同じシステムで小4から教えたら、根室の子どもたちの中には高校1年の最初の進研模試で三科目偏差値が80を超える生徒が平均して1学年に3人ほど出てくるだろう。このうち2人が国立大学医学部へ進学してくれたら、根室の地域医療は劇的に変わる。
35歳まで奨学金の返済は猶予しよう、よそで腕を磨いてから35歳くらいで2年に1~2人が戻ってくるとすると30年で22名である。市立根室病院の常勤医不足は根本から解消できるし、17億円の赤字を年間5億円以上改善できる。常勤医一人分を派遣医で賄うとすると年間8000万円かかるのである。年間5億円のコストカットが無理なくできる、いや診療精度を上げて実現できる。10年間で50億円違ってくる。30年前にこういうことをしていたら、根室の地域医療はまったく違ったものになっていただろう。
道東の地域医療の未来を切り拓くためにやることはたった二つ。
①地域医療に責任をもつ国立道東医科大学を釧路に誘致すること
②根室から医学部進学者を増やすこと
この二つが長期戦略上重要である。
道東の人口は95万人である。人口百万人以下の県は香川県、山梨県、福井県、徳島県、高知県、この五つの県の中で医学部あるいは医科大学のない県は一つもない。道東には地域医療に責任をもつ医科大学があって当然である。
9月に市長選挙がある。次の市長は地域医療の未来について明確なビジョンを市民に率直に語ってもらいたい。未来に夢の描ける根室市であってもらいたい。30年後に向けていま打てる手を打とう、それが当代のわたしたちの責任である。
*#2709 偏差値と「100人(百校)中の順位」対応表 June 22, 2014
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-22
#1861 "先生、みて!" : うれしい学年トップ Mar. 1, 2012
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-03-01
70% 20%
<国公立大医学部合格ライン>投稿欄から
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過去の模試の成績上位者の志望先やサンデー毎日「大学入試全記録」の合格数をもとに、京大や国公立大医学部合格圏人数を推定しますと全国で16000人程度となります。これは同世代上位1.4%程度にあたるため、根室の高校生1学年当たり3人くらい、上手に育てたら国立大学医学部へ進学可能という推測は妥当だと思われます。
参考
京大合格圏16000名の推定進学先
東大:3100
京大:2900
国公立医学科:5000(理三京医除く)
他大非医:5000(一橋900東工600阪大700東北350九州350名古屋300慶応500早稲田300北大200他800)
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おわたりさん
面白いデータの提示ありがとうございます。
全医学部の定員は9262人(H28年)となっています。文科省のデータです。
*http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/27/10/__icsFiles/afieldfile/2015/10/21/1363060_3.pdf
このうち国公立の医学部定員は4923人。
*http://college-rank.org/igakubu-hensachi-2
旧7帝大の医学部定員は797人
京大合格圏の16000名で切ったところを国公立医大合格者4923名の足切りラインと仮定したわけですね。
確認のためわたしも計算してみます。
高校1年生の人口を104万人と仮定すると、
16000/1040000=1.54%
根室の高校1年生は175人ですから、
175人×1.54%=2.69人
やはり2-3人ですね。平均値で見ると3人くらいは国公立医大に合格させられる可能性ありということのようです。
そして進研模試偏差値80オーバーなら、三人とも難関国立大学医学部受験が可能になるのでしょう。。
16000人の足切りラインがとっても参考になりました、ありがとうございます。
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#3743 国立道東医科大学誘致(1):見果てぬ夢 May 22, 2018 [29. 道東の地域医療を考える]
市立根室病院のここ数年間の年間赤字額は17億円前後である。10年前は8億円前後だった。よくこのような重い負担に耐えている。ふるさと納税というインチキな制度のおかげでもあるが、こんな悪法はさっさと廃止したほうがいい。しかし廃止されたら、根室の財政破綻に直結することになる。
いずれにしろ健全な状態ではない。
旭川医大は1973年に設置された。道東の要である釧路に国立医科大学がないのは実に不思議なことだが、1960年に「国立釧路医科大学誘致期成会」が結成されていることを数日前に知った。1970年の「第3期北海道総合開発計画」には釧路市に医科大学を誘致することが明記された。しかし、1973年に設置されたのは旭川、釧路の夢はあえなく潰えた。当時の事情を知る人から直接聞いた話では、文部省のリストからいつのまにか釧路が削除されていたという。旭川市の文部省への根回しが上手だったということ、釧路の行政マンがまんまと出し抜かれた。
それ以来、釧路から国立医科大学誘致要望の声が上がることがなくなった。一度負けただけなのに再び立ち上がる気力すらなくしてしまったのである。道東の住民は打たれ弱いのかもしれぬ。これでは不毛の原野でへこたれなかったご先祖たちに申し訳がない。豊かないまは、ご先祖たちの不屈の闘志のたまものである。
全国の県で大学医学部あるいは医科大学のない県は一つもない。道東の4支庁管内、十勝・釧路・根室・オホーツクの人口総数は2017年の国勢調査では95万人であり、人口規模で見ても面積で見ても道東は一つの県と考えてよい。
<十勝・オホーツク・釧路・根室管内の人口>
(平成27年国勢調査データ)
オホーツク計 293,542人
十勝計 343,436人
釧路計 236,516人
根室計 76,621人
合計 950,115人
人口1,000,000人以下の県は8つある。
40位 香川県 995,842人
41位 山梨県 863,075人
42位 佐賀県 849,788人
43位 福井県 806,314人
44位 徳島県 785,491人
45位 高知県 764,456人
46位 島根県 717,397人
47位 鳥取県 588,667人
最下位の鳥取県は釧路市と縁がある。釧路市には鳥取神社があるが、これは明治時代に島根に吸収されて職を失った鳥取県庁の職員が離職の憂き目にあい、鳥取城下は貧窮のどん底、士族に不穏な動きがみられたことから政府が鳥取藩士の北海道移住を決めた経緯がある。根室県令が受け入れを決定した。丸太小屋と鍬二丁が支給された。最初の冬がよく越せたと思う。本州から農業指導員が来て湿原地帯を開墾して稲を植えたが、米が獲れるはずもない。その鳥取藩の士族たちが精神のよりどころとして創建したのが「鳥取神社」である。
その人口58万人の鳥取県には国立鳥取大学という総合大学があり、そして医学部があるが、人口95万人を擁する道東には総合大学も医科大学もない。だから、総合大学の大切さも医学部の大切さも、釧路市民のほとんどが生活実感として知ることがない。
釧路も根室も子どもたちの学力に対する意識が低い。それは親だけにとどまらない、教育行政機関もまた徹底的に学力軽視である。釧路では指導主事室が基礎学力保障の障害になっている。指導主事室との軋轢を恐れて前教育長H氏は改革を避け、業を煮やした学校教育部長は職を辞した。指導主事室と学力問題で軋轢を避けたら、基礎学力保障なんてできるわけがない。毎年抽象的な目標を掲げるのみで、何年かけても学力向上に成果を上げられない。
道東に総合大学がないことや医科大学がないことも住民の学力軽視の風潮を助長している。身の回りに総合大学がない、大学医学部や医科大学がないということは、日常生活でそういう人種を目にすることがないということ。そうした劣悪な教育環境がそこに住む住民の無意識に作用している。
最近、ネットで話題になっている釧路出身の東大卒阿部幸大さん(ニュヨーク州立大学大学院留学中)は東大へ進学した当初、教育環境の格差の大きさに驚いたと書いている。本屋に並ぶ学参本の種類も量もまったく違う。塾のレベルも違う、そしてほとんどの子どもたちが小学生のころから大学へは当然行くものだと思っている。釧路の事情はまったく違った、そう書いている。
*#3734 教育の地域格差の盲点:釧路市出身の阿部幸大さん May 2, 2018http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-05-02
釧路に国立医科大学ができたら住民の意識はどのように変わるだろう?
旭川医大のある旭川でナンバーワンの進学校は旭川東高校である。昨年は旭川医大に現役10人、浪人生6人が合格している。釧路の道東医科大学ができたら、釧路湖陵から道東医科大学へ進学する生徒が十人になるかもしれない。根室からも別海町からも中標津町からも道東医科大学へ進学したいと小学生のころから勉強する生徒が増えるだろう。小中高の先生たちの意識と生徒の意識が変わる。
毎年道東の子どもたちが、20名も道東医科大学に進学できるようになったら、道東の構造的ともいえる常勤医師不足の問題は解消できる。
わたしは次のようなことを考えている。道東の地域医療に責任を持つべきは、北大、そして道立の医科大学である札医大である。しかしながら、その中心にあり、地域医療をしっかり担うべきは道東医科大学だろう。
3大学共同で道東の地域医療を支えてもらいたい。道東医科大学が4割、北大と札医大がそれぞれ3割くらいがバランスがよい。
2004年に新臨床医師研修制度が導入されてから、大学附属病院本院の医師不足が目立ち始め、各地に派遣していた医師の引き上げが起きた、医局制度の崩壊である。
釧路には釧路市医師会病院があったが、旭川医大の本院のドクター不足で引き上げが決まると同時に閉院となった。旭川から見たら、釧路は遠いところなのだろう。列車だと特急で最短5時間半かかる、東京駅から特急で5時間半だと岩手県盛岡市あたりだろうか、新幹線なら4時間半で新青森駅についてしまう。根室まではさらに2時間半かかるから、8時間である。新幹線なら東京を出発して余裕で函館についてしまう。旭川から見ると道東はそれくらいの距離感がある。だから、本院の医師が不足したら、ためらうことなく道東は切り捨てとなる。道北の地域医療に責任をもつ旭川医大なのだから優先順位を考えると当然の意思決定である。道東は北大医学部か道立医科大学である札医大が責任をもつというのが筋論だろう。
自分たちで何とかしようと努力をやめてしまった道東の住民、わたしたちが一番情けない。このような情けない状態から抜け出そうではないか、具体的な方法はある、道東医科大学を新設すればよい。
さて、どういう手順で「独立行政法人道東医科大学」を誘致すべきか、数人の人たちと具体的な話を始めようと思うのだが、いずれにしても、一世代、30年かけるつもりで取り組むべき課題に思える。予定よりも早くできたら万々歳だが、無理はしなくてよい。わたしの役割は小さい、とっかかりのほんのわずかな部分をお手伝いできるだけだから、成果をこの目で見ることはかなわない。
当代のわたしたちがやるべきは、「独立行政法人国立道東医科大学誘致プロジェクト」という大きな荷車の車輪を一回りさせることだけ。住んでいるところをよくしたい、あるいは故郷の未来に布石を一つ打っておきたい、そういう志を同じくする者が数人一緒に気持ちのよい汗を流すことになる。心配いらぬ、動き出せば引き継ぐ若い人がきっとあらわれる。
いつになるのかわからぬが、お空の上からニコニコ顔で見ていよう(笑)
いままで、道東の地域医療問題を取り上げ、国立道東医科大学の必要性に何度も言及してきたので、主なものをカテゴリー「道東の地域医療を考える」にまとめた、クリックしてお読みいただきたい。
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① #343 国立道東医科大学新設と同附属根室病院構想
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-10-08
② 市立根室病院建て替え現地で(北海道新聞より)
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-10-15-3
④ #1354 医師不足:ある記者の提言 Jan. 27, 2011
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-01-26-1
#1613 X線CT検査 水平切り?道東に医科大学がほしい Aug. 3, 2011
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-08-03-1
⑤ #2513 市立根室病院の経営状況について:財政再建特別委
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-28
⑥ #2811 大学病院新設と地域医療:Medical school in Sendai Sep. 16, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-09-16
⑦ #2917 お医者さんの仕事を知ろう(「青少年医療体験」のお知らせ) Dec. 21, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-12-21
⑧ #3096 市民医療講演会8/6開催:曲がり角にさしかかる地域医療 Aug. 1, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-07-31
⑨ #3098 地域の未来を語る会 Aug. 9, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
*#3734 教育の地域格差の盲点:釧路市出身の阿部幸大さん May 2, 2018
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-05-02
*「田舎から東大」記事を読んだ社会学者が語る「学歴分断」の現実
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55745
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#3098 地域の未来を語る会 Aug. 9, 2015 [29. 道東の地域医療を考える]
<更新情報>
8/11 9時 <余談>追記
8月6日13時半から15時まで、根室振興局地域政策課の主催で標記の会が開催された。
参加メンバーは公募の2人(SSさんとIさん)と振興局のご指名が6人。「出席者名簿」の順に紹介する。個人名は書かない。
根室市文化推進協会代表 Fさん
大地未来信用金庫地域みらい創造センター次長 Mさん
北海道教育文化研究所副所長 Iさん
根室地域障害者が暮らしやすい地域づくり委員会代表 SSさん(女性)
一般社団法人Be-W.A.C代表 YMさん(女性)
日本ロングトレイル協会北根室ランチウェイ代表 SMさん
知床標津マルワ食品 代表取締役 Tさん
公益財団法人知床財団普及・情報係長 YSさん(女性)
司会は北海道総合政策部政策局計画推進課主幹佐々木敏氏。
(公募が受け付けられると、道庁作成の資料が事前に郵送されてきました。)
配布資料は次の5種類です。語る会とはいってもすでに論点が決められていました。
資料1:北海道の総合計画について
資料2:新しい総合計画の策定に向けた考え方
資料3:道民意識調査の概要(平成26年7月)
資料4:企業等意向調査の概要(平成27年1~2月)
資料5:地域懇談会(グループインタビュー)の概要
1時30分ぴったりに会議が始まった。道庁側の作成資料と住民アンケートの説明が30分、自己紹介と道側が整理した論点ごとに出席者に意見が求められた。
佐々木主幹は端から順に4分以内でまとめるように言い添えて意見を求めた。お膳立てしたあったテーマの最後の項目「北海道の地域や未来を担う多様な人材」は時間切れできなかった。終わりの方で急いでまとめて、3時ジャストに終了。手際がいいのか悪いのか判断がつかないヘンな会議となった。
民間会社では、ターゲットを決めたら、とことん話し合う。決めた時間をオーバするなら、日を改めて結論が出るまで議論する。仕事とはそういうものだ。民間企業で時間で働くのはパートタイマーの賃労働者。
座っている席の順に、道庁側に近い方から佐々木さんが指名。
最初はIさん。Iさんは教育関係者だから、根室市内の生徒たちの学力がこの十年間で著しく低下したことをデータを挙げて簡単に説明した。市街化地域の3中学校では学年の3~4割が小学4年生程度の「読み書き計算」があやしい現状は、根室の未来に深刻なダメージを与えるだろうと警告した。その一方で学力上位層の枯渇化現象が起きている。10年前には市街化地域の3校だけで学力テスト5科目合計点が1学年400点以上が40~50人いたが、現在は4~12人程度に激減。高学力層を厚くして地域医療を守るためにも地元出身の医師を増やす努力をすべきだと話した。人口減少問題と絡めて地元企業のオープン経営への切り替えを提起したかったが、4分だから学力問題だけに絞った。
2番目は障碍者の団体の代表SSさん。障碍者に働く場所がほしいという切実な願いを吐露した。
3番目はロングトレイルのSMさん。北根室でロングトレイル、ようするにフットパスだがそれで北根室に人を呼び込もうというわけだ。歩くことが人間の基本だと持論を展開していた。だから、本は読まないし、偏差値の高い生徒を医者にするなんて意味がないとこれも持論を展開。
4番目は標津でしゃけ節を試験製造している食品会社のTさん。焼津に通って製造技術を教えてもらった苦労段を語った。現在8人雇って手作りでしゃけ節をつくっているという。鰹節と違った出汁がでるので、これを普及できたら、日本食に別の出汁が加わることになると夢を語った。
5番目は根室市文化推進協会代表のFさん。この人は東京から移住してきた宝飾デザイナー。根室のよさを宣伝して、根室に移住者を呼び込みたいと夢を語った。
6番目は台地みらい信金のMさん。企業をつないで、地元企業のネットワークをつくりたいと、仕事の夢を語る。
7番目は社団法人Be-W.A.CのYMさん、「べっかいわくわく」を記号化してネーミング。コミュニティセンターをつくって、お母さんたちの交流を促進しているようだ。東京出身で、別海の漁師の嫁に来たと自己紹介。
8番目は知床からYSさん。横浜出身の方。知床が世界遺産に登録されて、財団の普及・情報係長はこの人で3代目(?)かな。知床の自然を利用して人を呼び込みたいと夢を語った。
意見の出た問題のひとつは地域医療を支えるために地元出身の医師を増やすこと。これにはロングトレイルのSMさんが反対、偏差値の高い者を医者にしたって意味がないという意見。Iさんは学力上位層が激減しているので、地元から医師を出すのが困難になっているので、学力上位層を育てる方策が必要だと発言しただけ。学力は高いが医者になりたくない者をむりやり医者にするような話はしていないが、そう受け取った様子。実際には、学年トップクラスの生徒が何人も医師になりたいと思っていながら、高校生になって全国レベルを知ることで、学力不足を痛感して断念するのをIさんは何人も見ている。根室の中学生は全国レベルを知らずに学校生活を送っている。能力が高くてもスタートが遅れたらアウトである。首都圏では小学校4年から中学受験で勉強をスタートさせる。
医師が足りないなら、東京から呼べばいいというのがFさんとYMさん。Fさんは3年前に移住してきたが、根室の医療事情がお分かりではない様子、YMさんは別海(尾岱沼)だからそういう根室の深刻なニーズをご存じない。別海も中標津も医師不足で困ったという事態を引き起こしていない、医師不足で困っているのは根室管内で根室市だけの固有の問題なのである。それは市政の失政と関連がある。
学力問題で、大地みらい信金のMさんから面白い意見が出た。札幌支店に転勤になった同僚の子どもたちがまいっているというのである。授業のレベルが高く、宿題の多いことにへたっているという。根室の小中学校の宿題は他地域に比べて極点に少ないのが実情である。ある転勤族が中標津から来たときに、宿題の少なさに驚いていた。こんなに少なくて、根室以外のところへ転勤になったときに大丈夫かと不安をもらしていた。根室の常識は他地域では非常識、とくに学力問題でその傾向が強い。
Iさんは、学齢期前の家庭の躾と小学校入学時の家庭学習習慣の躾が大事であることを指摘。
次に、地域の未来を担う子どもたちの学力がこの十年間で著しく低下したことに対してのご意見。遊びが足りない、体力と学力には関係があるという意見を披露したのはYMさん。大人がこどもに遊びを教えるべきだというのはロングトレイルのSMさんの他にお二人いた。ようするに施設を作り、そこで大人が子どもに遊びを教えればいいというのである。よく遊ぶ子は体力もつき勉強もできるようになる、もっともなご意見。
しかし、よく考えてみてほしい、子どもは遊び方を大人から教えてもらうものなのだろうか?団塊世代のIさんは次のように語っていた。
市立根室病院下に「古川の池」があって、そこにはトン魚やゲンゴロウ、蛙や大きいカラス貝が生息していて、近所の子どもたちの格好の遊び場になっていた。本町の海岸には石組みの突堤があり、石にはつぶ貝がびっしりついていて、石の隙間には小魚が泳いでいた。そこは子どもたちの遊び場になっていた。ひざまで海につかるとウニもいた。花咲小学校下の海岸は砂浜で子どもたちが遊べた。布切れの端をつかんで友達と二人で2mも移動すればイカやタコの幼生や海老がとれた。花咲小学校のグランドの後ろは、原野で長いスロープがあり、スキーやソリの遊び場だった。雪が降っていなければ放課後は生徒たちがたくさん遊んでいた。北海道銀行のあるところは空き地で、近所の子どもたちが、「缶けり」「ケンパ」「ドッチボール」などをして遊んだ。家の裏の空き地では、「ビー玉」「パッチ」「釘刺し」「パチンコ」など外遊びの種類は多かった。昔は生活圏内に子どもの遊び場がたくさんあったが、いま60年前に主要な遊び場だった場所がひとつも残っていない。岸壁の埋め立てや特定地域の再開発をするときには子どもの遊び場をつぶしていないかよくよく検討すべきである。
以上がIさんの発言の趣旨。
大人に教えてもらって覚えた遊びはほとんど記憶がないというの団塊世代の共通認識だろう。こどもたちは遊びの発明の名人である。生活圏内に遊び場があることが、外遊びの絶対条件である。車で親に連れて行ってもらわないと遊べないようなところでは、頻度が少なくて体力がつくわけがない。
東京から尾岱沼の漁師の嫁に来たYMさんは、地元にずっと住んでいたわけではないから、その辺の環境変化がわからないから、無理もないのである。
地域医療に関して、Iさんから次のような提案があった。人口99万人の地域にに医科大学が一つもないのは道東だけである。道東の地域医療に責任を持つ「道東医科大学」を釧路に誘致してもらいたい。そのための道庁と道東の各市町村長は結束して医科大学誘致運動を起こすべきだ。
花咲線廃線問題をIさんが提起。利用しない鉄道線路は廃線になるのは当然と、標津線の廃線の経緯を思い出してSMさんが発言。ボランティア活動を主体とするNPO法人を事業の受け皿にしたときに、どういう採算になるのか道庁のほうから北海道JRに申し入れを行ってほしいとIさん。モデルケースが創れるかもしれない。やってみる価値はあるだろう。
釧路⇔根室間の線路脇にロングトレイルをつくれば、スコットランドのように鉄道利用者が増えて鉄道が存続できるとSMさんが我田引水のご意見。
障碍者雇用の問題については障碍者雇用促進法という法律で、一定規模以上の企業は雇用を義務付けられているが、その点はどうなのか根室振興局からも道側からも数字の提示がなかった。出席者の肩書きを考えたら当然予想できた発言だが、事前に肩書き入りの応募書類を贈ってあるはずなのに、何の準備もなかった様子に、唖然としてしまった。根室振興局道庁はこの問題への関心度が低そうである。わたしが、道庁側の人間なら、事前に出席者の肩書きをチェックして、事前に調べておくべきデータの指示はする。有能な部下が独りいれば、そんな指示も不要である。
Fさんは、バックのメーカとジェリーのコラボレーション展示会を東京品川で開催したという。根室をテーマにしたデザインのものを並べ毎日30万人×30日=1000万人の人に根室を知ってもらったと報告。計算根拠がよくわからないが、東京新宿西口駅前の広場でときどき地方の物産展をやることがあったが、あそこなら一日百万人×30日で3千万人の人に根室を知ってもらえるのだろうか?
それが若い人に移住につながるなら結構な話だ。いろいろ活動した結果、移住実績は何人あったのだろう?人口動態データをみるとピントが外れているといえる。前に弊ブログで出生・死亡・転入・転出データを10年間ほど並べたことがあった。根室の人口減少は毎年450人前後、高校を卒業して進学のために転出するのが毎年150人、このほとんどが戻ってこない。それ以上に大人が根室を離れていっている。人口減少を食い止めるためには、移住を促進ではなく、地元から若い人の流出をどれだけ減らせるかをターゲットにするのが本筋だろう。
根室の人口減少の主たる原因は若い人が夢をもって働ける企業が少ないことによる。同族企業でオーナが会社を私物化していては社員が意欲をもって働けるわけがないし、親だって自分が勤務していた企業に子どもが就職するのを喜ばない現実がある。企業は公器でもあるから、決算・予算情報は従業員へ公開すべきだ。基本に立ち返ったこういう努力を惜しんではならない。
高校を卒業して毎年150人ほどが根室を離れて進学し、戻ってこない。転入転出の差は300~500人だから、高校生の流出だけでは説明がつかない。定年退職をして根室を離れる例が多いのは高校の先生や市役所職員が多いと聞く。子どもが大学へ進学して戻ってこないから、定年になったら親のほうから、子どもたちの住む都会へ移住する人が多いのかもしれない。
道庁からの出向者である歴代の教育長3人は教育長の任を解かれると、すぐに根室を離れている。
〈配布された道の住民調査資料から〉
「資料3」によれば、「できれば今と同じ市町村に住んでいたい」という道民の割合は76.2%である。根室では2009年6月に実施した青年会議所の調査資料がある。そのアンケート調査では「ずっと住み続けたい」と回答したのは8.3%に過ぎず、「できれば住み続けたい」が46.1%、両方あわせても49.9%である。市民の43%が「住み続けたくない」と回答している。
(一昨日北見へ行って来たが、駅前商店街はしっかり残っていた。駅前通りの2番街と三番街がアーケードとなっていて、にぎわっていた。活気のある町に感じた。北見市の人口は12.6万人である。商店街の規模は人口18万人の釧路市よりも、よほど大きく活気があった。)
道民意識と根室市民意識のこのギャップをどのように分析するのかが問われてよかった、市政に関与できるのは「10%のオール根室村」という閉鎖性が大きな問題であることは論を俟たない。
同じ資料の「ウ 今後の社会的問題について」に「老後の生活」に不安を感じている人が84%もいる。ほとんどの人が老後の生活に不安を抱えている。子どもがそばにいないことや地域医療が貧弱なこと(根室は療養型病床がⅠベッドもない珍しい市である)、公共交通機関が風前の灯であることが主要な原因だろう。
そういうわたしは、1年おきくらいに母親の様子を見るために、東京からふるさとを訪れていたが、あるときに、帰ろうとしたら寂しさに耐えかねて目にいっぱい涙を浮かべて見送る母を見たときにふるさとへ戻る決心をした。もともと、50歳になったら、ふるさとに戻って役に立ちたいと考えていた。
その母親を4年前に見送って、こんどは娘の願いを聞かなければならない。
「お父さん、根室で死なないで、元気なうちに東京へ戻ってきて、冷たくなったお父さんにあうのはいやだから」、これにはまいった。
でも、根室にいる、もうだめだと思うまでは。
会議が3時ちょうどに終わったあとでIさんが大地みらいのMさんに話しかけた。店頭公開企業を一つ創ってみないか、そうすれば人口減少の歯止めになる。大地みらいも超優良顧客を確保できる。一社やれば、オーナは数十億円を手にできるから、あとに続くものが必ずでる。最初の一社をどう創るかが決め手になる。店頭公開2社、東証Ⅱ部と東証Ⅰ部上場と4回の上場に関与した人材は北海道ではただひとりIさんのみ、大地みらい信金とIさんが組めば、根室の未来が切り拓けるだろう。これは民間にしかできないことだ。
大地みらい信金さん、全国の信金で株式の店頭公開をバックアップしたところはまだないよ、もしやり遂げたら全国一の信金だと胸を張っていい。田舎信金のままで終わるもよし、仕事の内容が全国トップの信金になるもよしだ。もう12年間見送り続けた、来年着手できなければチャンスは二度と来ないだろう。仕事を担うにたる人材なしにはことは成らない。そんなに難しい仕事ではないのだからやってみたらいかが?
次回は、Iさんが事前に作成しておいたメモを公開したい。
〈参考〉
*2009年6月の根室青年会議所による「市民意識アンケート調査」
http://ameblo.jp/nemurojc-b/entry-10283985445.html
このアンケート調査はサンプルに偏りがあり、初歩的なところで問題が多いことを承知で数字を挙げておく。
43%の市民が根室に住み続けたくないと答えている。筆頭に上がっているのが「医療・福祉」である。病院建て替え問題一つとってもその好い加減さに市民はうんざりしている。市民の思いは市政に反映されない、あきらめが広がっていると見るべきだろう。だが、諦めてはならぬ、いい町をつくるのはそこに住む住民以外に誰がいる?
<余談>
道庁は毎年同じテーマ(人口減対策)を掲げているのではないか。高橋はるみ知事は4期目の道政の舵取りをしているが、人口減対策に関してはなす術がない。やることははっきりしている、北海道には優良な企業が少ないから、毎年若者が大量に流出していく。「雇用の確保が急務だ」と2008年の北海道新聞社説も述べている。そんなことは誰もがわかっていることだが、だれも答えが出せない、だから北海道総合政策部政策局計画推進課は毎年同じ課題と取り組んでいる。答えは簡単、オープン経営に切り替える仕掛けをつくればいい、そして店頭公開企業を増やせばいいのである。前者は道と市町村のやること、後者は民間のやることだ。
2008年4月18日の道新社説をご覧いただきたい。
*#171道内人口急減 知恵絞り地域守らねば(道新・社説)
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-04-17
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#3096 市民医療講演会8/6開催:曲がり角にさしかかる地域医療 Aug. 1, 2015 [29. 道東の地域医療を考える]
標記講演会が8月6日午後6時から、根室市総合文化会館多目的ホールで開催される。
講師:札医大学長島本和明氏 「北海道の食材で美味しく健康」
主催:ねむろ医心伝信ネットワーク会議
共催:根室市、大地みらい信金
札医大の学長でなければ、なかなか楽しそうな講演テーマであると思う。北海道でただ一つの道立医科大学として札医大が、道東のとりわけ根室の地域医療にどのようなビジョンを抱いて対応しているのか学長である島本氏の思うところを訊いてみたい。
どうしてこのような場違いなテーマになったのか、企画した人たちの心がわからぬ。根室市民の関心は、根室の地域医療の未来がどうなるかにある。
ロシア200海里内でのサケマス流し網漁が来年から禁漁になるというニュースが流れたこの町で、いまのんびりと「北海道の食材で美味しく健康」というのはいかがなものか。イズシを漬けるベニ鮭はもう庶民に手には入らない。食べなれたベニでなければ美味しくないから、イズシを漬けるのをやめる家庭が増えるのではないか。イズシという食文化が風前の灯である。
では、庶民の魚であり水揚げ日本一を誇る花咲港のサンマの未来はどうか?台湾の1000トンクラスの大型漁船が、十隻も北洋の公海上でサンマ漁をやり続ければ、資源が激減するのは目に見えている。根室の漁船は19トン未満が主力である。1000トンの漁船10隻が漁場に常駐して乱獲し続けたらどうなるのか?根室の水揚げの何倍もの量のサンマが箱詰めをされてすぐに船内で冷凍保管され、輸送船が順番に漁船を回り箱詰めされた冷凍秋刀魚を積み込む。品物は中国大陸へと運ばれ、漁船はそのままフル操業を続ける。
中国人が新鮮な焼き秋刀魚を「香ばしい」といいながら舌鼓を打っているのをテレビで見たが、複雑な心境である。一尾たったの50円だという、産地の根室より安い。かつてなかったビジネスモデルが冷凍技術の進歩で成立してしまっている。公海上での1000tの大型漁船による漁獲と船内で箱詰め冷凍処理、そして輸送船による回収。
ロシア200海里内のサケ・マス流し網漁禁止で、漁業会社や水産加工会社のいくつかが経営困難に陥るだけではない。市内には来年から仕事にあぶれる雇われ漁師が続出する。そのうちの何割かは出稼ぎ先で定職を見つけて家族を呼び寄せることになるから、根室市の人口減が加速するのはどうやら避けられそうもない。その影響は水産業だけではない、消費全体が落ち込むから、小売業や飲食業は打撃が大きい。そういう状態の2年後にサンマ資源の激減が襲うことも考慮に入れて対策を打たなければならない。補助金は一時のことで、結局は自ら何とかしないと、生き残れない。
市税収入も減るし、病院の売上も減る。TPPが締結されたら、医療費が上がっていく。韓国では米国とのFTA締結で薬価が1.5倍になったという。毎月薬をたくさん飲んでいる人は、TPPで薬代が1.5倍になることを覚悟して準備しなければならない。上がるのは薬価だけでない、診療費も混合診療で大幅にあがってしまう。日本の医療保険制度が深刻案打撃を受ける。
市立根室病院は10年前に比べて赤字の幅が2倍の17億円前後になっている。旧建物を除却処分したときには損失額は20億円を超えたのではないか。なぜ、こんなに赤字が増えたままになっているのかについては、常勤医が減ってそれに替えて派遣医の割合が増えたこともかかわりがある。常勤医一人分を派遣医で肩代わりすると経費は年間8000万円を超える。3倍に人件費が増える仕組みになっている。もちろん、医師を派遣しているのは札医大だけではない。それぞれの科にはそれぞれの事情があって、派遣医を必要としている。
もっとも、これだけでは赤字2倍増大の説明がつかない。ほかにも理由があるはずだが、何年たってもその原因が明らかにされたことはない。経営管理を目的として課を新設したり経営改善を業務委託したこともあるが、まったく効果がなかった。
新病院建物に替わってベッド数は199床から135床に3割強減少、事業規模が縮小したはずなのだが、10年前には8億円前後だった赤字が17億円に増えた。弊ブログで実績値に基づき、その損益計画や予算のインチキぶりを何度も指摘したのだが、病院事務局は実に甘い損益計画と年度予算を公表し続けた。上場企業なら担当役員の首だけでなく、社長の首も飛ぶほどのいい加減な予算案や計画案だった。毎期、実績が予算を何億円も下回っていた、関係者はわかってやっているのだから、市民を愚弄するにもほどがある。北海道新聞は実際の赤字額すら報道しなくなってしまった。
国公立大学は独立行政法人に衣替えされ、それ以来、各大学は収入増に一生懸命である。島本氏は2010年に札医大学長に就任した。収入を増やすためには、常勤医よりも派遣医の方が大学側からすると望ましい。収入が3倍にできるからである。そのこと自体を悪いとは言はない、独立行政法人化された道立医大が自分の利害で動くのはむしろ当然のことだろう。丸々呑む必要はないし、利害が対立するのだからお互いに交渉の余地はあるはずだ。
大地みらい信金は釧路の医療法人孝仁会が札幌に進出するのに、資金面での後ろ盾をしていると、道新で報道されたことがあった。医療法人がどういう金融機関をメインバンクにしようとそれも勝手だから、だれにもケチはつけられない。大野病院を買収して、釧路から札幌への進出は通常の流れとは逆で、孝仁会の病院運営の巧みさを表していると素直にとっていいのだろう。
このことから孝仁会は大地みらい信金の重要顧客であることがわかる。
①孝仁会⇔大地みらい信金
大地みらい信金は優良な貸付先がなくて困っている。それは以前に元理事長が「財界さっぽろ」のインタビュー記事で語っている。優良貸付先として孝仁会が現れた。資金が必要となるようなことをするときは、必ずメインバンクには相談を入れるのが普通のやり方である。密接なビジネスパートナーの関係にある。
次にいこう。経営手腕に優れた孝仁会理事長の斉藤孝次氏は昭和47年札医大卒業である。札医大学長の島本和明氏は昭和46年札医大卒だから、二人は1学年の差で先輩後輩の仲。
②孝仁会理事長⇔札医大学長
さて、三番目はわが町の市立根室病院の病院長は東浦勝浩氏である。何年卒かわからないが、学長の島本氏や理事長の斉藤氏の同窓の後輩であることは間違いないだろう。
③孝仁会理事長、札医大学長⇔市立根室病院院長
さて、②③の三人は同窓の関係にあり、①は利害関係を表している。
最後は市長の諮問委員会「明治公園憩いとふれあいの森構想市民委員会」の委員長だった大地みらい信金元理事長K氏、一部の委員の反対があったにもかかわらず、異例の速度で審議終了し、明治公園の再開発事業40億円にゴーサインを出した。しかし、まだ市議会は承認しておらぬ。
④市長⇔大地みらい信金⇔オール根室村
明治公園は観光の名所でもあり、根室振興局でも力を入れて宣伝している。赤レンガサイロが残っているのはここだけらしい。開発されたら、建物が建つ、土木工事もなされる、十年ほど前に使われなくて撤去された野外アスレチック設備のようなものも、子どもの人口が半分以下になっているのに自然を破壊して造られてしまう。25年後には人口はいまより1万人減少している、いったい誰のための再開発だろう?
夕張信金が夕張市の箱モノ行政の片棒を担いで夕張市を財政破綻に導いたが、似たようなことをしているようにみえる大地みらい信金は大丈夫か?背に腹は替えられない事情がなにかあるのだろうか。万が一の時には道庁が肩代わりして、金融機関は貸付責任を取らなくでいいから、こんなに美味しい貸付先はなかなかない。浮利を追ってはならぬというのは日本の伝統的な商道徳ではないか。
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*#2334 大地みらい信金3期連続の増益そして地域経済は衰退 Jun. 19, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-19
「#2318 わけのわからぬ「根室市の家計簿」(1):広報ねむろより Jun. 2, 2013」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-02
*財界サッポロ2012年2月号より元理事長の発言部分を抜粋
http://www.zaikaisapporo.co.jp/kigyou/intervew/115.shtml
「不安があるから預金が増える。地元の中小企業も設備投資を控える。資金需要がない。われわれとしても融資先がない。どうしても預貸率は下がります。」
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根室市の監査委員の一人は、大地みらい信金元専務理事である。どこの都市でも、市の取引業者を監査委員に任命するところはないだろう、それほど監査業務の常識に反する。常識や監査業務の基本原則をないがしろにしている。「独立不羈の第三者」というのが監査人の立場である。
⑤根室市の監査委員⇔元大地みらい専務理事
こういう人間関係や利害関係からどういう図柄があらわれるのだろう、考えてみたらいい。
長谷川市長はとっくに市立病院経営をあきらめているのではないか。
市立病院建物は国の補助金で造られたから、建物ごと市立根室病院を売却できない。もう選択の余地がないようにみえる。運営委託をお願いするしかないところにとっくに追い込まれてしまったのだろう。
後はタイミングだけ。①②③④⑤をよく眺めてみたら、そのあたりも自然に見えてくるだろう。
何も言わなかった市民に責任の半分があることは言うまでもない。
市議会の三人の議員が病院建て替えに際して、長谷川市長に説明を求めたことがあったが、無視されたのだが、要求したことは賞賛に値する。長谷川市政の地域医療政策にはじめて異議を唱えたのだから。
毎年17億円もの赤字を垂れ流し、でたらめな予算編成を繰り返しているのに、オープンな場で一度も市民説明会すら開催されたことがない。夕張市もこうだったのだろう。地域医療は市民にとっても、病院で働く職員にとっても重要である。
市民無視の市政の中で何が起きたかをメモしておきたい。ネットで検索したら、2007年と2009年に車の中で出産した事例のニュースがヒットした。ひとつは別海病院への搬送中に23歳の女性が、もうひとつは18歳の女性が釧路の病院へ搬送途中の出来事であった。
前者は生まれた赤ん坊の体温が34度まで下がっていたという。おそらく、これ以外にもあるのだろう。母子のいずれかが亡くなっても、あるいは両方が亡くなるリスクもある。
万が一のことがあったら、誰のせいでもない、この町に住んで子どもを生む人の責任である。産科がないことを承知で根室の町に住むということは、そういうリスクがあるということだ。リスクを避けたいなら、若い女性は産科のある町へ移住するしかない。市立根室病院から産科がなくなってからもう8年もたつ。新病院建物には広い分娩室も産科病棟もあるが休業状態である。年間150人前後が生まれているのだから、死人が出ていないことは奇跡だ。出産が近くなると、釧路のホテルで待機する妊婦さんも増えている。だれかがついていなければ不安も大きい。
運営が孝仁会に委託されても産科の再開は難しいかも知れない。若い女の人たちは、この町の地域医療がどうなるのか訊いてみたいだろう。
私の心配の一つは、運営主体が変われば、ドクターも看護師をはじめとしたスタッフもほとんどが入れ替えになるということだ。そうでなければ大きな経営改革ができない、夕張市の先例が示している。どちらに転んでも困る人たちがたくさん出てしまう、ジリ貧とはこういうこと、わたしの心配が杞憂に終わってほしい。
「ねむろ医心伝信ネットワーク会議」は本来はこういう地域医療にかかわる重大なことをオープンに議論するとか、具体的な提案をまとめるとかする場ではないのか?
根室にはふるさとをこころから愛してやまぬパトリオット*が何人いるのだろう?
<処方箋>
間に合わぬことは百も承知で20年後のために正論を書く。
道東の医療に責任を持つ、国立道東医科大学の誘致運動を近隣市町村を巻き込んでやればいい。釧路管内、帯広管内、網走管内、根室管内の総人口は99万人である。これだけの人口のところに医科大学がひとつもないという地域は、この道東のほかには日本にはないだろう。
釧路に国立医科大学を誘致し、道東の医療に責任を持たせるのが一番よい。根室に分院を開いてもらおう。
30年も50年も正論を主張せずに来たから、ジリ貧になった。ふるさとの未来のために正論を堂々と主張し、あたりまえのことがあたりまえに実現できる町にしよう。
*#1030 nationalism とpatriotism :遠藤利國訳・幸徳秋水『帝国主義』May 17, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-05-17
#343 国立道東医科大学新設と同附属根室病院構想
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-10-08
#2811 大学病院新設と地域医療:Medical school in Sendai Sep. 16, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-09-16
#2513 市立根室病院の経営状況について:財政再建特別委は機能しているか? Nov. 28, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-28
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#2917 お医者さんの仕事を知ろう(「青少年医療体験」のお知らせ) Dec. 21, 2014 [29. 道東の地域医療を考える]
医師志望の生徒は対象の学年の中には全部あわせても3人程度だろう。なぜかは「余談」で語る。医師志望ではないが、看護専門学校への進学を考えている生徒もこのセミナーへ応募したらいい。
日時:2月5日16:30~18:30
場所:市立根室病院 3階大会議室ほか
(集合場所:16:20までに市立根室病院1階ロビー集合)
対象者:小学校5年生以上・中学生
(小学生は保護者等の送迎、中学生は保護者等の迎えが必要です。また保護者同伴の参加も可能です。)
申込先:根室市教育委員会 教育総務課学校教育担当
Tel. 23-6111(内戦2414、2415)
(申し込み締め切り日:1月9日)
講話:「根室から医師を目指そう」 岡田医院 副院長 岡田優二先生
主催:根室三郡医師会
共催:根室市立病院
公園:根室市、根室市教育委員会、ねむろ医心伝信ネットワーク会議、根室市保健医療対策協議会
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<余談-1>
根室から医者になる生徒が輩出すれば、地元に戻ってくる確率は小さくない。問題は親が医師でない場合だ。
道内のある町では開業医に数千万円単位の開業資金提供をしているところがある。循環器内科の病院だ。この話はebisuが東京に住んでいたときのかかりつけの歯科医(北大)から数年前にインプラントをやったときに聞いた。町として資金援助の申し入れがあったのでその町での開業を決意したという。講話をするドクターと同じ医科大学出身の医師である。
新規で開業する場合には建物はもちろんのこと、検査機器にもお金はかかる。根室市としてどういうバックアップを用意するのか具体的なものをあきらかにしたらいい。根室市のホームページで条件をはっきりすれば根室で開業しようと名乗り出る医師がいるかもしれない。
<余談ー2:学力レベル>
医学部へ合格するには大学受験偏差値で70前後が要求される。全国レベルで大学受験生百人中・上位2人が該当する。
根室市内の高校から大学へ進学する生徒数は毎年45~60人で、そのうち偏差値55(上位1/3)のレベルの大学へ進学できるのは推薦を含めて8~10名程度。偏差値60以上(上位16%)になると毎年1~3人。H24年度データでは大学進学45人に対して看護も含めた専門学校へ65人(看護専門学校へは14人)となっている。
15~20名くらいは応募すれば合格できるレベルの大学への進学になっている。そういうレベルの学校を卒業しても就職先がむずかしい。偏差値40以下は全国レベルで成績下位16%だから、学力の低いことの証明になってしまう。偏差値45で下位1/3、偏差値48クラスの大学でも就職活動はたいへん苦労しており、百社以上の会社へ応募しても正規雇用の職はなかなか決まらないのが現状である。
*根室高校進路状況
http://www.nemuro.hokkaido-c.ed.jp/?page_id=31
中学校で実施している難易度の低い文教学力テストでは400点以上を上位層と考えていいが、最近はこの層がゼロの学校・学年が市街化地域3校に出現するようになった。
文教学力テストで五科目合計点が常時400点だとおおよそ偏差値45~48くらい、400~420点で偏差値50~52である。450点を常時越える生徒は大学入試偏差値でおおよそ55だと考えてよい。そこから先は難易度の低い文教学力テストでは計測できない。定期テストの平均点は文教学力テストよりもおおむね百点多い、つまり生徒の学力に合わせて異常に難易度が低い。改善すべき点は書かずともわかるはず。
ebisuは東京渋谷駅前(渋谷警察署側)の進学教室で大学院時代に3年間専任講師をしていたことがある。たとえば、首都圏の子供たちで医学部進学目指す者は、小学4年生から個別指導進学塾へ通うケースが多い。小学生対象の全国模試を受験して自分の実力を知る。そして小学4年から予習中心の学習をする。
有名私立中学へ入学し、速度の速い授業を受け、進学塾でトップレベルの生徒たちを集めたクラスで1年前倒しの授業を受ける。もちろん私立の中高一貫校は1年前倒しで授業をやっている。
そういうレベルの生徒たちと競うことになる。偏差値どころか全道平均値や根室市内平均値すらでない時代遅れの文教学力テストでは成績トップ層を育てられない。
根室の子供たちは高校生になってから進研模試を受験して全国レベルでの自分の実力を知る。これでは遅い。首都圏の子供たちは中学受験で全国模試を受けている。ここにも改善すべき点がある。
根室高校普通科の1年生の数学と英語の平均点は百点満点で20点台である。釧路湖陵のそれは60点台のようだ。まともな大学への進学という点からは根室の生徒たちの学力レベルは「悲惨」な状況である。
根室に住む大人たちの努力で変えられることがある。市街化地域の3校合計で学力テストで1学年に400点超の学力層が10年前は45人前後いたのだが、最近数年は4~12人程度に激減し、学力下位層が膨らんでいる。学力テスト400点は全国模試偏差値で45~48にすぎない。400点を超えた生徒は学年順位が4番以内だ、学校によっては1番。全国レベルで平均点に達しない得点でも、学年によってはトップになれる。全国レベルの平均にも達していないのに、ナンバーワンだと勘違いを起こす。そこから先がほんとうの勝負なのだが、競争相手がいないので自分の実力を過信して努力をやめてしまう。
学力上位層を増やし、それらの者たちを都会と同等程度の環境でトレーニングすれば、医学部進学者は増やせるのである。保護者も学校の先生たちも市教委も学習塾もそれぞれやるべきことやできることがある。
ebisuは学力トップ層の生徒には全国レベルで偏差値60がどの程度なのかを生徒に伝え、目標を示す。それは学習スケジュールと問題集の難易度レベルの2点に集約される。東京の中高一貫校の生徒がいまどの学年のどの辺りの学習をしているのか、使う問題集の難易度のレベルはいかほどか。
根室の子供たちの学力テストの平均得点は下がり続けている。学力分布もこの数年で大きく変化した。五科目平均点で学力上位層が1/3いかになり学力下位層が倍になっている。現状から言うと、根室から医学部進学が可能な偏差値65以上の生徒の出現は数年に一人ということになる。ダントツ学年トップをとり続ける生徒だけがチャレンジ可能な領域だ。
どんなに学力下位層が増えても、学力上位層が減っても、たまにそういう生徒がいるからおもしろい。
(C中学校の2年生ではそういう生徒が親の転勤で根室を去った。気合の入った勉強をしていた。3年生でもそういう生徒がいた。室蘭と札幌でそれぞれトップレベルで戦っている。)
<余談-3>
根室の地域医療で不足しているのは医師だけではない、正看も不足している。看護学校へ進学して根室へ戻りたいという生徒は少なくない。H24年の根室高校の進路資料では14人、H25年は22人が正看の学校へ進学している。就職難を反映して看護学校への進学希望者が増えているから、このペースなら15年後には市立根室病院の正看を「自給自足」できる。15年×18人=270人、5人に一人が戻って地域医療を支えてくれたら、市立根室病院だけでなく、地元医院も助かる。
塾でも看護学校進学については特別の配慮をしているし、これからもするつもりだ。ニムオロ塾では今年は二人が看護専門学校へ進学している。ほかの塾でもがんばってくれているだろう。それぞれがやるべきこと、やりうることをやればいい。医師も看護師も「自給自足」のために、それぞれの立場でできることはたくさんある、根室の大人たちがやるべきことをやれば結果はついてくるものだ。
<余談ー4:国立道東医科大学新設構想>
道北には旭川医大、道央には北大医学部と札幌医大がある。道東にはなぜか地域医療に責任を持つ医科大学がない。旭川医大も釧路医師会病院から医師を引き上げた。本院の医師が手不足になったからだろう。ほかに頼っていてはもう地域医療が回らない。網走・釧路・根室管内の地域医療に責任をもつ国立道東医科大学を新設すべきだ。道東の道議と国会議員は党派を超えてこの仕事に協力してもらいたい。
*#343 国立道東医科大学新設と同附属根室病院構想
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-10-08
*#2606 根室の中学校の過去6年間の学力低下を検証する Feb. 28, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-02-27-1
#2607 生徒の学力低下に気がつかぬ学校と根室市教委 Mar. 1, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-03-01
#2756 偏差値55以上の大学受験生対象の塾はビジネスとして成立たぬ現実(根室) Aug. 1, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-01-1
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#2811 大学病院新設と地域医療:Medical school in Sendai Sep. 16, 2014 [29. 道東の地域医療を考える]
仙台に医科大学(東北医科薬科大学)が新設されるという。医師不足の悲鳴が全国各地から上がっている。首都圏でも千葉、埼玉、茨城の各県で医師が不足している。なぜ全国各地に深刻な医師不足が起きてしまったのだろう?医師会という小さな集団の利害を重視して医学教育政策の判断を歴代総理や文科省大臣、厚生大臣が間違えてしまったからと読める。
先を読まずに小さな利害集団の目先の利益ばかりに焦点を合わせていると、公共の利益とか国民の利益という遠くにあるものが見えなくなり判断を間違える好例なのだろう。そういう「型」は身近にいくつもあるのではないか。人間は失敗からなかなか学べないものらしい。
私は道東の医療に責任をもつ「国立道東医科大学」をどうしたら誘致できるか、釧路管内と根室管内の首長さんたち、そして市議や町議のみなさんに共に考、意見が一致したら行動してもらいたい。そのためにこのJT紙の社説は大いに参考になるはずである。
東北は大震災で病院がなくなるとか、放射能汚染を避けて引っ越してしまうとか、住民が仮設住宅へ移動していなくなり閉鎖になるとか、さまざまな理由で病院がなくなったり、病院からたくさんの医師や看護師が去った。
文科省は医師が過剰になることを怖れて1980年代から医科大学の新設を認めていない。医師不足の影響が余り大きいので各大学医学部の定員増は行った。それでも首都圏の一部を除くほとんどの地域で医師不足が深刻になっている。救急救命科、小児科、産婦人科の医師不足がとくにひどい。
(産婦人科医の減少は数年前に福島県での訴訟判決によるところが大きい。裁判官が判決にそういう社会的な影響を考慮しなかったからだろう、決して医学教育政策を間違えたから産婦人科医の不足が全国に蔓延することになったのではない。)
わたしは、釧路に国立道東医科大学を創り、道東の地域医療に責任をもたせるべきだと弊ブログに書いたことがある。こんかいJT紙の記事を読み、考えておくべき点が多々あることを知った。
道東に住んでいる皆さんに議論の材料を提供したいと思って仙台に新設される東北医科薬科大学に関するJT紙社説をとりあげた。英語に興味のない人は拙訳と解説を読んでもらいたい。
*国立道東医科大学新設と同附属根室病院構想
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-10-08
(WORDにコピペして、解説の部分を消去すると本文だけを残せます。)
Medical school in Sendai | The Japan Times
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Medical school in Sendai
(1) The education ministry has given the go-ahead for Tohoku Pharmaceutical University in Sendai, Miyagi Prefecture, to open a medical school. Under the government’s policy of controlling the number of practicing physicians, it will be the first medical school to open at a university in the country since 1979.
文科省は東北薬科大学へ医科大学開設の承認を通知した。文科省は開業医数を一定数に抑制する政策をとっているから、医科大学新設は1979年以後初のケースである。
文科省は東北薬科大学に医学部を併設する許可をだした。仙台には東北大学医学部がある。大病院も東北大が1000床、東北薬科大が450床、厚生病院、市立病院など大病院がいくつもある。新設される東北医科薬科大学は旧東北薬科大附属病院の450床を600床に増床する計画。
(2) While the move is billed as a response to the severe shortage of doctors in Tohoku in the wake of the March 2011 Great East Japan Earthquake, care needs to be taken so that opening the new school does not drain the already stretched staffing at hospitals in many parts of the region.
医学部新設の動きは(the move)は2011年3月11日の東北大震災が起きた後に深刻な医師不足を生じており、その対応策として宣伝されているものである。その上にこのような手当てがなされることで、医学部新設(の朗報)はすでに限度一杯働いて消耗しつくしつつある東北地域医療現場からスタッフが消えてなくなることを防止することになる。
is billed as ~は高校生が使う辞書には載っていないかも知れぬ。GeniusとE-gateには載っていなかった。受験英語ではこんな句動詞を知っておく必要はない。
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bill something as something
Longman
*http://www.ldoceonline.com/dictionary/bill_2
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この段落の英文は日本語にしにくい。careがtakeの目的語なのだが、すぐにわかっただろうか?
care needs to be taken so that opening the new school does not drain the already stretched staffing at hospitals in many parts of the region.
この文はそのままでは理解しにくいが、生成変形英文法を利用して一部を次のように書き換えると理解が楽になる。高校英文法でも対処できるだろう。
they needs to take care so that opening the new school does not drain the already stretched staffing at hospitals in many parts of the region.
もちろん同時並行で文脈も読んでチェックしている。なるべきニ方向から攻めるようにしている。
元の文は受動態になっている。その理由は動作主がわかりきっていることと、言いたいことはそこにはないからだ。主語になっているcareはtakeの目的語なのだが、それを一目で見抜けた高校生や大学生はすばらしい。theyは文科省や県知事、そして医学部新設の申請を出す大学など、関係機関と関係者である。
普通の高校生には、こういうときにこそ英文法参考書が役に立つ。
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「その回路は水からの破損を防ぐために、プラスチックに封じ込められた」
The circuit was sealed on plastic so that water would not damage it.
=The circuit was sealed in plastic for the purpose of preventing water from damaging it.
『表現のための実戦ロイヤル英文法』「第24章 文の転換」「第1節 分の種類の転換」「275B 副詞節を含む複文」「(3) 動名詞と副詞節」P.570
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この用例に従って訳すと、次のようになる。
「必要な手当ては、医学部の開設がすでに疲弊しきっているその地域の医療機関のスタッフがいなくなってしまわないようになされる。」
英文を書きなおしてみると意味がよくわかる。
Care needs to be taken for the purpose of preventing opening the new school from draining the already stretched staffing at hospitals in many parts of the region.
しかし、これらの知識がなくても、コンテキスト(文脈)を考えることで適確に読むことはできる。小中学生の時期に濫読期を通過している生徒は高速で読みながら無意識の内にコンテキストを追っている。そういう読み方に慣れているのである。たとえていうと、読書部というブカツで読む速度を上げ文脈を追いかけるトレーニングを毎日繰り返していたようなもの。そういう濫読期を経験した生徒とブカツ三昧でほとんど本を読んでいない生徒との間には読書力に圧倒的な差ができてしまっている。その差が、英文を読む際にも大きく影響してしまう。
中高生の皆さんには、日本語の本をたくさん読むことを勧めたい、年齢に応じて読む内容のレベルを上げたらいい。
たくさん読んでいるものは概して書く力も大きいものだ。なぜかというと、読書力が基礎学力の土台であるからだ。大量に読んで、たくさんの用例が頭の中に収納されていると、いつかそれが自分の文章の骨となり肉となってにじみ出てくることになる。
「読み・書き・そろばん(計算)」、これは重要性の大きい順序で並んでいる。わたしは「読み・書き・そろばん」を「基礎学力の三要素」と呼んでいる。
もうひとつ書くべきことがある。接続詞のwhileの用法で、順接も逆接もあり、なんでもありというのがwhileだから、前後関係から適当な日本語を当てるしかない。英文を書く際には前後関係から誤解なく読み取れる場合以外は遣わないほうがいい。「ああ、そうか」と思わずに、こういうときは自分で辞書を引いてたくさんの用例を確認してみよう。「辞書は読め」とは昔の人はいいことを言う。
ネット辞書のLONGMANから・・・
http://www.ldoceonline.com/dictionary/while_1
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while1 S1 W1
while I'm/you're etc at/about it
spoken used to suggest that someone should do something at the same time that they do something else:--------------------------------
丁寧にやると、こういう具合に解説がどんどん長くなってしまうので、以降はなるべく日本語訳を例示するだけにとどめて簡単に済ませたい。
(3) Past efforts to control of the number of doctors have resulted in a severe shortage, with the number of doctors per 1,000 people at 2.4 or about two-thirds of the average in industrialized countries. A bigger problem is the regional disparity in the availability of doctors, with the number in all prefectures of the Tohoku region below the national average. The education ministry has so far responded by increasing the enrollment quota at existing university medical schools, but since the early 1980s it has maintained a policy of not authorizing the creation of new schools.
過去に行われた医師数を制限するという政策(efforts)が深刻な医師不足を招来し、医師数は住民千人当たり2.4人で全国平均の2/3。いままでのところ、文科省は大学医学部の入学定員を増やすことで対応している。しかしながら、1980年代以降は文科省(it)は医学部新設(new schools)を認めない政策をとり続けている。
(4) The decision to open a new school in Tohoku — which the ministry says is an exception to the policy — came in response to a plea by Miyagi Gov. Yoshihiro Murai to cope with the severe shortage of doctors in the region made worse by the 2011 earthquake and tsunami, which resulted in the rise in the number of patients and an exodus of medical staff.
東北での医学部新設決定は―文科省では例外と述べており―2011年の大震災とツナミによってさらに悪化した東北地域の深刻な医師不足に対応するために宮城県知事村井康弘が嘆願したことで実現した。大震災とツナミでたくさんの患者が増え、医療スタッフが大量に県外へ去っていった。
しんどい話だ、震災で患者が増えたのに、医師や看護師を含む医療スタッフが大勢県外へ去ったのである。毎日はたけいじりをして、適度な仕事があったのに、庭すらない仮設住宅で3年間も暮らしていたら具合が悪くなる人が大勢出るのは当たり前だ。残量放射能と排出し続ける放射能の影響も深刻だ。甲状腺癌が数十人単位で出ている。
(5) While it may help ease the absolute shortage in the number of doctors in Tohoku, doubts have been raised if it will address the problem of immediate shortages in the region.
医学部新設(it)は東北地域の絶対的な医師不足緩和に役立つかもしれないが、いまある東北地域の医師不足の問題への取組になるかどうかという疑念も生じている。
あとで出てくるが、ついでだから書いておく。
2016年に医学部ができたとして、それから卒業生が出るまで6年かかり、臨床研修が2年とすると、新米の医師が誕生するのは10年後であることを考えると、当面の医師不足への対処策とはならない。医学部が新設されても、医師の供給という観点からは、ようやく10年先に希望の光が見えはじめるというのが実情なのである。
だから、こういうことは震災が起きてからではなく、平時にきちんとやっておかなければいけない問題なのだ。そういう意味でも、いま道東に国立大学医学部を新設しておくことが大事なのである。
いつまでも根室市単独での企画に固執している時代ではない。根室管内の他の4町と協同企画とか、釧路市や北見市や網走市と一緒にやれる大きなことはある。特定の小さな集団の利害にとらわれているから大局が見えなくなってしまうのだろう。視野が狭い市長殿は3期も市政の旗を振る、30代40代に市長をやるといういう人が出てこない、根室の町の人材の枯渇は目を覆うばかりだ。四年後の市長選挙はどうなるのだろう?
(6) It would take at least more than a decade for the graduates of the new school, which Tohoku Pharmaceutical University plans to open in April 2016, to take on full-fledged rolls as doctors in the region’s medical services.
東北の医療機関で一人前のドクターとして(on full-fledged rolls as doctors )仕事をするために新設医学部から卒業生を出すには少なくとも10年以上かかる。その東北医科薬科大学は2016年4月に開設予定だ。
先に解説したとおりだ。喫緊の問題の解決にはならない、喫緊どころか2年後に医科大学を開設しても一人前の医師が一線で働くのに20年くらいかかることがあきらかだ。
新設医科大学の定員は120名だそうだ。20年先の地域医療にしっかり貢献してもらいたい。全国の他の地域でも医科大学新設を認めるべきだ。北海道にひとつ、東北六県には東北医科薬科大学、首都圏で医師が不足している、茨城、千葉、埼玉の各県に一つずつ、・・・30年後には医者が余る、それくらいでいい。
(7) The university also needs to address the problem of students leaving their regions to take jobs in urban areas, instead of working in rural areas. A system needs to be created to encourage graduates from the new school to remain in the region and help to fill its medical needs.
東北医科薬科大学も学生が田舎で仕事をしないで都市部に職を求めて学生が東北地域から去っていくという問題をなんとかする必要がある。新しい医学部の卒業生が東北にとどまり、その地域医療ニーズを満たすためことを奨励するような制度を創る必要がある。
せっかく医学部を新設しても、卒業生が首都圏へ去っていくのでは意味がない。地元の地域医療ニーズを満たすために、卒業生が地元医療機関に残ることを促進するような仕組みがなければならぬ。買い物、文化的な施設など首都圏と東北は大きな差があり、結婚して将来生まれてくる子供の教育問題を考えても、東北医科薬科大学の卒業生には就職先として首都圏の医療機関が魅力的に映る。
(8) Creation of a new university medical school is believed to require roughly 300 experienced doctors to serve as teaching staff. This has caused concern that the new school could exacerbate the current shortage of doctors if it recruits physicians from local institutions to serve as teachers. Sendai, by far the largest city in Tohoku, already has a concentration of doctors. There are worries that the depletion of medical staff from more rural parts of the region could accelerate.
医科大学を創るには、教育スタッフとして仕事をするおよそ300人のしっかりした経験のある医者が必要だ。仙台は東北で群を抜いた大都市であり、すでに医者が集中している。医科大学を創ることで、東北の僻地から医療スタッフの枯渇が加速する心配もある。
北海道にもう一つ医科大学を創るとしたら、北大と札医大のある札幌でもないし、旭川医大のある旭川でもない。道東が空白地帯となっているから、道東に国立医科大学を新設すべきだ。30年間は北大医学部から教授を招聘すればいい。北大の第二医学部の位置づけで結構だ。30年をかけて優秀な卒業生に順次交替していくのが穏やかでいい。
(9) To facilitate reconstruction of the areas devastated by the 2011 disasters, the government and local authorities should consider other steps to address the current staffing problems at many of the region’s institutions.
2011年の大災害で荒れた東北地域の復興を促進するために、政府と東北諸県は医療機関が抱えている現行の医師不足問題をなんとかするために別な手段を考えるべきだ。
そうだよな、医学部を新設しても一人前の医者が育つには15~20年かかるから、それまでのつなぎの政策がいる。このまま医師不足で地域医療が崩壊するのは困る。何らかの別途の対策が必要であることは論を俟たぬ。
(10) The government’s policy on the education of doctors has zigzagged over the past several decades. The number of medical schools increased rapidly in the 1970s in response to the medical needs of the postwar economic growth, but the government reversed the policy in 1982, citing alleged concern over a future glut of doctors.
医師養成に関する国の政策は30年間ほど蛇行してきた。1970年代に戦後の経済成長に伴う医療ニーズに対応するために医学部を急速に増やした。しかし将来医師が過剰になるという理由で政府はその政策を1982年に見直したのである。
1980年代の自民党文教厚生族議員のごり押しで、日本は医療政策を決定的に間違えた。根室の医師不足も、道内のほかの地域の医師不足も、当時の自民党文教厚生族議員の判断の誤りで生じたのである。特定の集団の利害を代表する議員が多ければ、大局を誤る好例である。国の医療政策を特定の利害集団の好き勝手にさせてはいけない。特定集団の利害に偏った恣意的な政策選択が中小都市と町村の深刻な医師不足をもたらした。
(11) Then, in 2008, the education ministry started approving increases in enrollment quotas at existing schools. Total enrollment quota at the nation’s 80 medical schools increased by 1,400 from 2007 to around 9,100 this year.
その後、2008年になり文科省は既存の医学部入学定員の増員を認め始めた。80の国立大学医学部入学定員は2007年から1400増加して今年約9100になっている。
120人の医学部を全国で30箇所増やせば、4200人入学定員が増える。これくらいの規模で医学部新設をやるべきではないのか?急にはやれないから、毎年二つずつ、15年かけてやればいい。
(12) The regional imbalance in the number of doctors remains a serious problem, with many prefectures in eastern Japan — not just Tohoku but areas closer to Tokyo such as Saitama, Chiba and Ibaraki — falling behind the national average in the number of doctors per 1,000 residents. Opening new medical schools in those Kanto prefectures should also be considered.
医師数の地域格差は深刻な問題のままであり、東日本の諸県そして東北ばかりでなく東京近県の埼玉県、千葉県、茨城県も住民千人当たりの医師数が全国平均値を下回っている。関東諸県の医学部新設も同時に考慮されるべきである。
(13) Severe doctor shortages in certain departments such as emergency medicine, pediatrics, and obstetrics and gynecology also need to be addressed. The government policy on medical education will need constant review amid the changing needs of Japan’s society and future demographic projections.
救急医療や小児科そして産婦人科のような特定の科の深刻な医師不足をなんとかしなければならない。医学教育に関する国の政策は変化する社会のニーズや将来の人口予測に応じて継続的に見直しが必要である。
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参考までに拙訳を例示しておいた。
扱われている問題を身近な問題に置き換えて考えてみたらよい、市立根室病院の医師不足を大きな視点からとらえなおしてみることはムダではない。
記事本文の内容から、1980年代の医学教育政策の大きな誤りによって、現在の深刻な医師不足が生まれたことがわかる。70年代以降の総理大臣は次のようになっている。
70(44) | 鈴木善幸 | 昭和55.7.17 -昭和57.11.27 | 864 | 69歳 | 明治44.1.11 | 平成16.7.19 (93歳) | 岩手県 | 864 |
71(45) | (第1次) 中曽根康弘 | 昭和57.11.27 -昭和58.12.27 | 396 | 64歳 | 大正7.5.27 | 群馬県 | ||
72 | (第2次) 中曽根康弘 | 昭和58.12.27 -昭和61.7.22 | 939 | 65歳 | ||||
73 | (第3次) 中曽根康弘 | 昭和61.7.22 -昭和62.11.6 | 473 | 68歳 | 1,806 | |||
74(46) | 竹下 登 | 昭和62.11.6 -平成元.6.3 | 576 | 63歳 | 大正13.2.26 | 平成12.6.19 (76歳) | 島根県 | 576 |
75(47) | 宇野宗佑 | 平成元.6.3 -平成元.8.10 | 69 | 66歳 | 大正11.8.27 | 平成10.5.19 (75歳) | 滋賀県 | 69 |
76(48) | (第1次) 海部俊樹 | 平成元.8.10 -平成2.2.28 | 203 | 58歳 | 昭和6.1.2 | 愛知県 | ||
77 | (第2次) 海部俊樹 | 平成2.2.28 -平成3.11.5 | 616 | 59歳 | 818 | |||
78(49) | 宮澤喜一 | 平成3.11.5 -平成5.8.9 | 644 | 72歳 | 大正8.10.8 | 平成19.6.28 (87歳) | 広島県 | 644 |
79(50) | 細川護煕 | 平成5.8.9 -平成6.4.28 | 263 | 55歳 | 昭和13.1.14 | 熊本県 | 263 | |
80(51) | 羽田 孜 | 平成6.4.28 -平成6.6.30 | 64 | 58歳 | 昭和10.8.24 | 長野県 | 64 | |
81(52) | 村山富市 | 平成6.6.30 -平成8.1.11 | 561 | 70歳 | 大正13.3.3 | 大分県 | 561 | |
82(53) | (第1次) 橋本龍太郎 | 平成8.1.11 -平成8.11.7 | 302 | 58歳 | 昭和12.7.29 | 平成18.7.1 (68歳) | 岡山県 | |
83 | (第2次) 橋本龍太郎 | 平成8.11.7 -平成10.7.30 | 631 | 59歳 | 932 | |||
84(54) | 小渕恵三 | 平成10.7.30 -平成12.04.05 | 616 | 61歳 | 昭和12.6.25 | 平成12.5.14 (62歳) | 群馬県 | 616 |
85(55) | (第1次) 森 喜朗 | 平成12.04.05 -平成12.07.04 | 91 | 62歳 | 昭和12.7.14 | 石川県 | 387 | |
86 | (第2次) 森 喜朗 | 平成12.07.04 -平成13.4.26 | 297 | 62歳 | ||||
87(56) | (第1次) 小泉純一郎 | 平成13.4.26 -平成15.11.19 | 938 | 59歳 | 昭和17.1.8 | 神奈川県 | 1980 | |
88 | (第2次) 小泉純一郎 | 平成15.11.19 -平成17.9.21 | 673 | 61歳 | ||||
89 | (第3次) 小泉純一郎 | 平成17.9.21 -平成18.9.26 | 371 | 63歳 |
医師が不足してから手を打ったのでは遅いということだ。常に先を読み、先手を打たなければ深刻な問題に数十年も苦しめられることになる。特定の集団の利害を考慮し、大きな判断を誤ることはいたるところにある。
それは国政も根室市政も同じだ。9月14日の市長選挙で「オール根室」の支持を受けていながら有権者の36.3%の得票しかなかった、3期目の市長さん、これからは特定の利害集団の意見ばかり聞かずに、63.7%の市民の声に謙虚に耳を傾けよ。
ついでに、昔読んだもので面白かったマーク・ピーターセンの著書を挙げておく。
まだ読んでいないが昨年出版された最新刊があるようなので紹介しておく。
#1613 X線CT検査 水平切り?道東に医科大学がほしい Aug. 3, 2011 [29. 道東の地域医療を考える]
昨日のこと、市立根室病院でCT検査をした結果説明を聞きに主治医のところへ伺った。相変わらず2階へ走って駆け上がり内視鏡検査を終え、急ぎ足で下りて来る。診察時間を確保するために移動は走る!息が切れているかと思いきや慣れているからそんなことはない。ディスプレイにCT画像を表示しながら説明をうけた。
CTは"computer tomography"の略であり、"コンピュータ断層撮影"と訳される。胴体を輪切りにした画像を表示するのだが、今回は続きがあった。板ワサ、かまぼこを想像してもらいたい、包丁で縦に輪切りにしたのが従来のCT画像であるが、これを水平に輪切りにした画像を見せてくれた。もちろん、パソコンでデータを計算して水平にカットした画像*を表示できるわけはないだろうから、CT装置附属のコンピュータで計算処理した画像が市立根室病院から光回線で送られて医院側のパソコンに保存してあるのだろう。
フィリップス製のX線CTに新しいソフトが導入されたのかもしれないが、詳しいことはわからぬ。道東でEUの高性能X線CTを導入している病院はほとんどないだろう。国産品の東芝製品のシェアが高い。釧路医師会病院では4年前に東芝製のX線CT装置を買い換えているが、それよりも画像が鮮明にみえた。ちなみに医療機器メーカーとしてEUではフリップスとジーメンスが有名だ。米国ではGEとHPだろう。釧路医師会病院がなくなってから市立病院のX線CT装置のお世話になっているがフィリップス製のこの装置で3度目の検査である。最初はぴかぴかだったが、色がすこし年季を感じさせるものに変わってきた。解像度は十分だろうが、病院建て替え後は買い換えるのだろうか?診療上は解像度が高いのでいまのままで何の問題もないだろう。メカ部分にトラブルがなければ買い替えの必要はない。
それにしてもすごい時代になった。1986年ごろ病理画像診断で将来そうしたことをしたいと考えていたことがあったが、コンピュータの性能も回線の性能も追いついてしまった。病診(病院・診療所)連携ですでに画像伝送が実現している。
画像伝送データの大きさなど考えなくてもいいほど回線速度もそれを処理するパソコンの性能もよくなった。伝送速度だけとっても当時の10万倍を超えているのだろう。メインメモリーは1980年頃はキロビット単位ではなかったか。64kビットRAMがでたのはその頃だったような気がする。いまではgiga・ビット単位である。100万倍になっている。メモリー量の拡大は社会の質的な変化をもたらしてしまった。
ドクターの説明は丁寧だった。垂直に切ってみても水平に輪切りにしてもどこにも再発の兆候がなかった。84年に仕事で関わった"古典的な"腫瘍マーカー・CA-19-9の検査結果も大丈夫だ(輸入していたのは東レ富士バイオで関係会社だったので、東証Ⅱ部上場のために利益移転とならないような"客観的"な値決め方式を提案した。私は検査会社へ上場準備要員として中途入だったが、輸入商社での経験があったので東レ富士バイオ側の輸入業務も大筋理解しており、納得のいく方式で仕入値段を決めさせてもらった)。もう一つの腫瘍マーカーCEAもOKだ。
こうして5年間の癌との戦いが終わり、主治医による根治宣言があった。スキルスと巨大癌の併発だって根治例はある、私がその証拠の一つだ。助けていただいた命は世のため人のために使いたい。
5年間の戦いはいい医者との出会いがあってのこと。地元の消化器内科の専門医のO先生、釧路医師会病院で執刀してくれた若き外科医のドクターGのお陰である。
旭川医大の撤退による釧路医師会病院閉院を例にとるまでもなく、この5年間に根釧の地域医療は脆弱化の一途をたどっている。道東の町の地域医療に責任をもつ医大がほしい。
道東の市町の首長たちはこぞって道東医科大学を釧路に新設・誘致してもらいたい。不可能だと思ったらできない、できない理由をとりのぞくために智慧を絞ればいい。誰かに任せっぱなしにするのではなく、それぞれが実現に向けてできる範囲のことをすればいい。
*CT画像の"水平切り"についてあるドクターからサジェッションがあったので注記しておく。
「CTの水平切りは通常見慣れた画像(いわゆる輪切り)で、縦に合成した画像(肉屋の冷凍庫にぶら下がっている奴)を縦切りと言った方が間違いないと思います。今のCTは本体内部のコンピューターが蓄積されたデータを使ってユーザーが求める画像構築が可能です。」
なお、フィリップス製のこの装置は「3D構成もできる~画質の良いマシン」だそうだ。だとすると、水平カットは当初からソフトがもっていた機能である。どういう角度でもカットできる。さすがフィリップス製、たいへんな高性能マシンで、使い慣れてきたということだろう。
#1354 医師不足:ある記者の提言 Jan. 27, 2011 [29. 道東の地域医療を考える]
久々に地域医療を採り上げる。
病院問題では北海道新聞根室支局のK記者が精力的な取材を続けてくれている。根室市民の一人として北海道新聞根室支局の取材記事に感謝したい。
記者は取材はしても自分の意見を述べる機会は案外ないものだが、彼の意見が1月7日付「道東」版の「やちぼうず」というコラムに載ったので採り上げたい。以下の記事は根室に赴任してきて、彼が取材を積み重ねたすえにだとりついた結論であるので、それなりの重みを私は感じている。
医師不足
市立根室病院をはじめ、各地の公立病院で医師不足がますます深刻になっている。この問題を取材していると、地方都市の公立病院の医師確保は、その自治体の力だけでは難しくなっていると思う。
市立根室病院では、昨年末に外科医が1人退職し、現在の常勤医は13人。経営計画にある15人を下回る危機的な状況だ。
常勤医をすべて医大の医局からの派遣医でまかなっていたころは、ある医師が退職しても、すぐに次の医師が派遣されてきた。現在はこうした制度がなくなったため、市が独自に採用した医師が多く、退職者が出ても後任のあてがない。
こうした現状を改善するためには、医師の採用や人事を各自治体がそれぞれ行うのではなく、もっと大きな枠組みで実施できないものかと思う。
例えば、全道の公立病院の人事を一喝で行う仕組みがあれば、医師は中小の病院や大病院を異動でまわるようになる。都会と地方都市との偏在を是正できるし、医師にとっても、定期的にさまざまな病院での勤務を経験できるメリットがある。
公立病院の医師不足を放置すれば、地域医療が崩壊しかねない。医師不足に伴う赤字も、各自治体の財政を揺るがしかねないところまで来ている。抜本的な対策が必要だ。
< コメント >
少し話しがずれるかもしれない。従業員が3000人もいて製造部門と販売部門、本社管理部門があると部門を横断的なさまざまな問題が日常的に持ち上がる。子会社も含めると約5000人、規模が大きくなるにつれてもちあがる問題も複雑になり、しっかりした大局観と複数の分野の専門スキルが問題解決に必要になる。
そこである人が、あらゆる問題に対処可能なスーパー部門を立ち上げて部門横断的な問題やグループ会社横断的な問題に対処すればあらゆる問題が解決できると考えた。
そういう部門を立ち上げようとふさわしい能力の人材を探してみたが、あらゆる部門にわたって問題を具体的に解決できるような数十の専門スキルを有する仕事のスーパーマンは実際にはひとりもいなかった。
結局、私のいた会社では「スーパー部門」をつくることはできずに、部門横断的な問題が持ち上がるごとに問題解決に必要な人材を集めてプロジェクトを立ち上げ、ことに対処したのである。どの会社でも事情は同じだろう。
このK記者の意見には肯ける。地域医療を地方自治体に任せたらぐちゃぐちゃにしてしまう市町村もあるから、責任能力のない自治体から権限を採り上げて北海道全体の医師を管理する道庁の部門があればいいというのは素直な発想である。
北海道に限らず、45府県も同じような状況だから、国が責任をもてばいいというような話になる。
しかし、これはキューバ型の社会主義医療を意味しており、あまたある民間病院との並立・共存が困難になるだろう。
このように地域医療問題は医師不足の解消一つとっても、それぞれの具体案にはそれぞれの隘路のあることがわかる。
医師不足は医師の供給を増やすことでしか解消できないのだろう。
①医学部の定員を増やす
②医科大学(釧路に道東医科大学)を新設する
そういう具体的な政策でしか解決できない。そして結果が出るのは10年後、20年後である。
にわかに状況は変えることができない、だからこそK記者も言うように「抜本的な対策が必要」なのだろう。
彼は根室の地域医療問題を取材していい記事を発信し続けてくれた。問題は極めて困難であるから、これからもますます多方面にわたる取材を重ねて地域医療問題に健筆を振るってほしい。
【補遺:運営格差は小さくない】
実際にはお隣の厚岸町立病院のように一般会計からの繰出金を3億円程度に減らすことに成功した町もある。
ほとんど規模が違わないのに根室は今年度13億円の赤字補填が必要になる。
地方自治体や院長の管理運営能力に雲泥の差があるということだ。病院は建物だけではない、医師、看護師、薬剤師、レントゲン技師、検査技師、事務スタッフなどそこで働く人々の意識によっても経営結果に大きな差が開くものなのである。
高齢化社会を迎えて医療ニーズの大きい分野は療養型病棟だが、新病院には1ベッドもない。根室は今後数十年間全国に例がほとんどない療養病床ゼロの市だ。
その地域の医療ニーズにあったいい病院は赤字の幅を小さく出来るものだ。改善の余地はある。
高齢化と同時進行の人口減少。そして老人は生まれ故郷で必要な医療が受けられずに死んでいく。それだけでことはすまない。
医師の数は急には増やせないから今後20年間は医師不足が続くだろう。そうした中で、病院運営に失敗した町の地域医療が崩壊していく。その町のトップが能力不足なら財政が健全性を失うところも出てくる。地域医療が崩壊すると同時に市財政の健全性が失われる、そういう自治体が北海道のあちこちに出現することになる。町を守るのは結局はそこに住む人々、私たち自身の関わり方が問われている。
誰かがやってくれるという意識を棄て、地域医療に関する自分の意見をもとう。