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#3653 戦後に行われている戦争:基本的社会秩序の破壊と改変 Dec.3,2017 [3. 日本殲滅のシナリオ]

 加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』を読み始めている、著者は近現代史家で東大の先生。彼女は18世紀に書かれたルソーの「戦争及び戦争状態論」という論文を引用して、大きな戦争があった後は、敗戦国の社会秩序の書き換えがなされるとほかの二つの事例を挙げてこの本の序章で主張している。
  日本では大日本帝国憲法が否定され天皇が日本を統治するという国体が書き換えられた。戦後に制定された憲法前文にはリンカーンのゲティスバーグ演説の文言 "of the people, by the people, for the people" が格調の高い日本語で書かれている事実を指摘する。リンカーンの演説と憲法前文の一致に驚いた。

「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し(of the people)、その権力は国民の代表者がこれを行使し(by the people)、その福利は国民がこれを享受する(for the people)。」

  「人民の、人民による、人民のための」という訳でなじんでいたので、語彙を換えているだけで同じ意味の日本語であることにいままで気づけなかった。このことを知っただけでもこの本を読む価値がある。憲法前文は憲法の基本的原理を謳っているから、日本のアメリカ化宣言として読むことができる。
  戦後、ドイツは国家の原理であるワイマール憲法を日本は大日本帝国憲法を否定することになった。リンカーンのゲティスバーグ宣言自身が南北戦争で62万5千人の戦死傷者が背景になっている。「ゲティスバーグでの北軍の死傷者数は2万3千人と言われています。その場所でリンカーンが "for the people" と演説する」(p.28)。

  「巨大な戦争の後には基本的な社会秩序の書き換えがなされる、とのルソーの真理に気づけるかどうか」、歴史的なものの見方が問われていると序章を締めくくっている。

 ルソーの真理とはルソーが書いた「戦争および戦争状態論」で結論付けられた洞察、
戦争は国家と国家の関係において、主権や社会契約に対する攻撃、つまり、敵対する国家の憲法に対する攻撃、というかたちをとるのだと」...p.41
  わたしはいままで憲法をこういう視点から眺めたことはないからとても斬新に感じる、目から鱗が落ちるようだ。わたしが提唱している21世紀の経済学で標榜する「職人経済社会」は西欧経済学の公理である奴隷労働を否定し職人仕事観に基づいているから、日本が1300年間培ってきた社会秩序を根こそぎにされるとその影響を強く受けることになる。日本の未来に重大な影響が出てくるので看過できない。
 
 憲法が書き換えられ、天皇が日本を統治するという国体が失われただけで終わっているなら、1300年間受け継いできた伝統的な価値観はそれほどダメージは受けないが、いまも進行形で伝統的な社会秩序が書き換えられつつあるとしたら、それは日本の未来にとって由々しき問題となる。
  安倍総理の提唱する「働き方改革」には日本の伝統的価値観の破壊装置としての重大な意味が隠されていることに気がついた。
 加藤陽子さんの著書を引きつつ、いまある問題に焦点を当ててシリーズでとりあげていきたい。そういう理由であらたなカテゴリー区分「日本殲滅」を設けた。日本の伝統的な価値観や社会秩序が具体的な形をとって破壊されつつあることを意識したい、自覚できなければそれにストップがかけられないからだ。
  健全な保守主義という立場からの論考となるだろう。


***12/4 12:45追記
投稿欄をぜひご覧ください。富士通やシャープで開発や新規事業を担当されたkoderaさんとの対話が楽しい。koderaさんは東大工学部機械工学科、同大学院卒の理系の人です。経済学が専門のebisuは仕事でシステム開発をしていたことがあるので、そこが共通のプラットフォームです。

 koderaさんのブログは二つあります。
*創造性の開発、新規商品を開発しよう
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 単行本と文庫本をリストしておく、この本の初版は2009年の出版。中学・高校の社会科の教員はこの本に目を通してもらいたい。教員を職業にするということは、その職についている間は常に学ばなければならぬということを自覚したい。
 引用は単行本のページ数で書いた。


それでも、日本人は「戦争」を選んだ

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