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#4991 日本株価は高いのか?:データで検証 Jun. 7, 2023 [91.経済]

 昨日6/6の日経平均は32,506.78円、ダウ平均は33,573.28/$、その差は1066.50ポイントです。
 21世紀に入って、こんなに差が縮まったのは初めてでしょう。記憶にある限りでは8000ポイントの差が最大でした。バフェットが4/11に日本商社株を大量に購入して、日本株は買いだと叫んだ途端に5000円くらいも急伸しています。4/10が27,633.66円ですから、2か月弱で4873.12円アップしたのです。

 第2次安倍政権が成立したのが2012年12月でした。この年末の日経平均終値が10,395.18円、ダウ平均が13,104.14で、2708.96ポイントの開きがありました。
 為替を見ると、2012年末は79.79円/$、昨日の対ドルレートは139.55円/$ですので、ドル換算して現在の株価をダウ平均と比べてみます。

 10395.18円/79.79(円/$)=130.28$
 32506.78円/139.55(円/$)=232.94$...1.79倍
 これが日経平均をドルベースでの比較する場合の基礎データです。2012年に比べて、ドルベースでの日経平均成長率は79%です。「79%ch」と書いたりします。

 ダウはどれくらいの倍率になるのか?
 32908.24/13104.14=2.51倍

 「151%ch」ですね。
 データが示すところは、米国ダウ平均が日経平均の2倍の成長率だったということ
 米国ダウ平均株価の成長率を1とすると、日経平均株価のそれは0.71です。この11年間で、日経平均株価はダウ平均株価に比べて相対的に3割下落したということ。これが「アベノミクス三本の矢」の結果です。日本政府と上場企業の経営者たちは成長戦略ではなくて、「低成長戦略」をとったということ
 ようするに、この12年間で日経平均が3.1倍にアップしていますが、そのはほとんどが円安に起因するということです。ドルベースでは1.71倍ですからね。「3.1-1.7=1.4」、これが円安によって底上げされたということ。年金機構が50兆円ほど上場企業株を保有していますし、日銀の上場企業保有株も増えています。日銀保有株は昨年9月で時価総額で48.2兆円です。GPIFはそれよりも少し少ない。両方で90兆円を軽く超えていますが、いずれ売りに出さないといけませんが、量が大きすぎて株価の大暴落を招きかねないので、処分に窮しています。GPIFは年金支払いのために、保有株式を市場で売却しなければなりません。日本の上場株はこういう株価下落リスクが大きくなっています。

 データが示したのは、日本企業はこの11年間低成長にあえいでいるということ。その比率はダウを1とした時に、0.71にすぎないということです。名目賃金を抑えてマイナス成長にして、そういう状況下で12年間、毎年平均4.5%の成長を続けたということ。
 大数学者の岡潔先生風に言うと、自他弁別能が働いて、エゴ丸出し、自分だけがよければいいという経営だったということです。動物本能による経営が日本企業のほとんどを汚染しています。無差別性智が働けば、取締役の所得をアップするよりも先に、社員の給料をアップし、非正規雇用を正規雇用にできうる限り切り換えて、生活の安定を図ったはずです。守るべきは、伝統的なビジネス倫理である「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」。人も我も一緒、そして経営者に必要なのは「小欲知足」の心構え。

 日本の上場企業では、自社株買いが流行っているようです。昨年は30兆円、今年は昨年を上回っています。東証1部上場株の時価総額が800兆円だとすると年間4%の株式を買い入れて、消却して株価の底上げをしていることになります。5年間やれば、150~175兆円も消却することになるので、日経平均株価はその分(25%)値上がりするでしょう。
 一歩で株式分割もあるので、これは単位当たり株価が下がる方に作用します。両方が混じりあってどうなっているかなんて統計はありません。だから何が何だかわからないというのが本音です。
 自社株買いは、内部留保が溜まって、未来へ向けて投資も積極的にしないので現預金が余って余ってしようがないのでやるんです。つまり、リスクをテイクせず、成長の見込みがあまりない企業だということになります。自社株買いで株価を上げる企業が増えている日本で、20年後に上場企業はどうなているでしょうね?
 日本企業はもっと未来へ向けて、余剰資金を投資してほしいですね。どうして日本企業は未来へ向けて、リスクを覚悟で新規事業分野に投資できないのでしょう?

 その理由は簡単です。日本の上場企業の経営者たちが小利口だからですよ。何かすれば大損する可能性があります。大損すれば株価が大きく下がり、取締役は責任を問われます。何もせずに、自社株買いをし続けたら10年間くらいは株価を維持できます。株価が維持できなくなるころには自分は引退しています。情けない。
 上場企業の経営者には難関大学出身者が多いのです。受験勉強で培ったスキルは、企業経営にはほとんど役に立たない。受験勉強は答えのある問題をどれだけ高速で正解するかを競うのが目的です。企業がマネジメントで直面している諸問題の多くが、文系・理系の区別に関係がありません。それらの両方がクロスオーバーしている領域で現れています。
 システム技術と機械と数学はマネジメントに不可欠な分野です。何より大切なことは、好奇心に任せて、さまざまな分野の専門知識を吸収し、答えのない問題を考え続ける習慣をもつことです。高校生や大学生の時にそういうことをやらなかったら、企業のマネジメントは無理です。近道反応します。利益をアップするためには費用を削ればいいなんて、たとえば、社員の首を切って、半分以下しか支払わないですむ非正規雇用を増やします。イージーですが効果的なんです。当面の利益はそれで確保できますが、それは未来に希望のない利益です。いつ、非正規雇用に転落するか不安の中で生活して、幸せなわけがありません。経営者がエゴ丸出しになると、そういうことが平気で行われます。社員を減らして非正規雇用を増やして、利益を増大させることで、自分たちの報酬アップを提案して株主総会で決議します。1990年代初頭に比べると取締役の年収は平均して2-3倍にもなっています。「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」というのは日本の伝統的なビジネス倫理ですが、それとは真逆の自分だけよければいいという、エゴ丸出しの経営がまかり通るようになりました。それでも、日本の伝統的なビジネス倫理を守り、従業員を大切にする企業も生き残っています。そういう企業が上場企業に増えてもらいたい。

 #4989の<余談>のところで、具体例に触れています。SRLは臨床検査業界最大手の企業ですが、巨大市場の米国へ進出しません。自動化ラボとしては1988年頃に圧倒的に世界一でした。大手臨床検査センターを傘下に持っている製薬メーカーからから設備をまること売ってくれないかと打診があったことがありました。あれから30年がたつのに、社長が何度か交代しても、米国進出の気配もありません。売上を3倍にできるのにやらない。意気地なしです。失敗するのが怖くて、誰もいい出さない、それを「小利口」だというのです。親会社の富士レビオ(HUホールディングス)からもそんな経営政策が出てきません。日本企業の多くが、世界に通用する技術を持っていながら、米国に進出しません。リスクテイクが怖くて、チャンスをつかめないのです。

 好奇心の赴くままに専門知識をインプットしたら、その専門知識をすぐに仕事で使ってスキルを磨くことも大切です。本を読むだけでは十分ではありません。実際にやってみることでわかることの方が圧倒的に多いのです。

 正解のある問題を小中高と12年間もやり続け、好奇心を押し殺して魂の成長を抑え続けてきたらアウトです。そんな人材が、上場企業の取締役に多ければ、成長が見込めないのはモノの道理です。

 米国と中国の覇権争いで、日本へ半導体工場を新設する追い風が吹いています。生産拠点がいくらかは日本へ戻って来るでしょうね。長期的には日本経済に追い風となるでしょう。

<銀行預金を株式投資で運用したら...> 
 先ほどはドル換算して眺めたので、今度は円ベースで眺めてみます。2012年に3000万円を日本株に投資していたら、6460万円になっています。米国株なら1億3400万円です!
 銀行預金で寝かせておくなんて、何とばかばかしいことでしょう。もちろん、投資していた企業が業績不振で経営破綻もありうるし、株価が半分になることもあります。今話したのはあくまでも「平均値」での話です。なるべく分散して投資するのが安全です。リスクをとるのかとらないのか、それはあなたの意思次第。銀行預金の半分くらいやってみたらいかが?
 3000万円の預金があったら、1000万円は日本株へ、1000万円は米国株へ、残りの1000万円だけは銀行預金で持つなんて組み合わせはいかが?

 20年後に、米国企業の成長率を1とした時に、日本企業が0.5以下にならぬことを祈ります。



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#4667 日本のGDPはピーク時からどの程度下がったか? Dec. 8,2021 [91.経済]


 12/7のNHKラジオでの日本総研寺島実郎氏の解説より

 日本のGDPは1994年がピーク、そのときのGDPは全世界の17.9%、いまは5.4%にすぎない。
 ロンドンエコノミストの新年号は日本をほとんど取り上げなくなった。

 日本のGDPのシェアーは27年間で1/3以下に減少したということ。日本経済はとっくに「老年期」へ突入しています。ありもしない経済成長を叫び、赤字国債を乱発、愚かな話です。経済縮小を受け入れたらいいだけ。
 建物や土地が余り値が下がるし、首都圏の通勤地獄も解消、水産資源量が減っても人口が減れば一人当たり水産資源量は維持できます、人口が減ることで必要な食料の絶対量も減少するので、機械化やシステム化して自動耕作が進めば、食料自給率は簡単に上がりそうです。
 人口が減少すれば、水害の頻発する地域に家を建てる必要がなくなります。がけ崩れのしやすい地域にも家を建てなくていい。
 このように人口減少や経済縮小にはメリットがたくさんあります。人口減少や経済縮小を前提に未来のビジョンと戦略をデザインしていけばいいだけですよ。人口減少下でどうやって地域医療の質を維持あるいはアップするか、智慧が求められています。

 FB友の別海町の元教育長のMさんは、退職した後、ボランティアで子どもたちのバレーボールを支援しています。ふだんは朝早くから畑を耕して、いろんな野菜や果物を栽培しています。みんなで持ち寄って地産地消の即売会にも参加してます。とっても楽しそうに見えます。

 根室管内では別海町や中標津町は野菜や果物の栽培に適していますから、耕作放棄地が農業好きな町民に貸し出されるようなシステムができたら、食料の自給化が進みそうです。地域に住む人たちがビジョンを創って、10年ほどの時間を掛けて、試行錯誤して、必要な条例や仕組みを用意して行かばいいのではないでしょうか。
 人口減少時代、経済縮小時代は、地域に住む人々の智慧が試される時代でもあります。

<余談:日本のGDPの中身は大丈夫?>
 日本のGDP550兆円の内、20-30兆円がなんだか説明のつかないもののようです。政府の説明も歯切れが悪い。ところで、一般会計予算規模は百兆円があたりまえになりました。これもGDPに加算されるので、日本のGDPの20%ほどは政府セクターです。比率はこの30年間で「着実に」上昇しています。この予算規模を維持するために来年は60兆円を超える赤字国債が発行されます。日本のGDPは世界全体のGDPに占めるシェアーが5.4%と1/3に減っただけでなく、政府セクターが増えて中身がスカスカになりつつあります。民間企業の力の衰えが著しい。さらに30年後には日本のGDPのシェアーは3%以下かもしれません。そういう前提で国家戦略を見直すべきでしょう。経済成長と声高に叫んで、いくら赤字国債を増やしてお金をバラまいても効果はありませんよ。政府財政の破綻が早まるだけです。
 インフラの維持がしばらくの間できなくなる、公務員への給料の支払いの停止や大規模な人員整理が起きる、株価が暴落する、急激かつ大規模な円安が起きる。
 そんなことが起きても、そう長いことはありません。しばらくの間きついだけです。そうですね、10年以下でしょう。いえ、とくに楽観論に根拠はありません。政府財政がつぶれても日本という国家がなくなるわけではありませんから。その機能が、しばらくの間著しく衰えるだけです。重篤な病気になったので、お休みの期間がしばらく必要だというだけの話だとわたしは理解しています。
 預金や持ち株や不動産には財産税が課せられ、その大部分が没収されます。赤字国債乱発のツケは国民のわたしたちに回ってくるのです。身もふたもないことを言って申し訳ありません。



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#4657 米国金利上げで円安が進むと日本経済はどうなるのか? Nov. 23, 2021 [91.経済]

 パウエルFRB議長が再任されるというニュースが飛び込んできた。これで米国の長期金利が上がっていくことが確定したようだ。
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円安進み、一時1ドル=115円台に パウエルFRB議長の再任影響


23日のアジアの外国為替市場で対ドル円相場が一時、1ドル=115円台前半と2017年3月以来、約4年8カ月ぶりの円安水準をつけた。米国の金利が上昇し、ドルを買い円を売る動きが強まった。
 前日にバイデン米大統領が米国の中央銀行、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長を再任する方針を表明した。次期議長の候補者として名前が挙がっていた金融緩和に積極的なブレイナード理事よりも利上げ時期が早まるとの見方から、米国の金利が上昇。金利の高いドルを買い、円を売る動きが加速して円安ドル高が進んだ。(ニューヨーク=真海喬生)
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 ゼロ金利に別れを告げ、米国の利上げが進むことになる。日米の金利差は金利裁定取引によって円安を生むが、日本は米国に追随して利上げできない。今後2年間にわたり米国長期金利が3%にまで上がると何が起きるのだろう。
 仮定の話である。米国の金利が少しずつ3年間で5%にまでアップしたとしよう。その結果、為替が130円/ドルまで円安になったとすると、日本の貿易収支は大きな赤字を抱えることになる。

 GDP輸出・輸入の額を並べてみよう。単位は兆円である。
 2018年 556 81.4(14.6%) 82.7
 2019年 559 76.9(13.8%) 78.6 
 2020年 538 68.4(12.7%) 68.0

 円安になって輸出額が増えてもGDPに占めるその割合が年々小さくなっており、2020年には13%を切っているので、日本経済への影響は微々たるものだが、円安によって生ずる物価騰貴が国民生活へのダメージとなることは避けられない。日本人の一人当たり個人所得は過去20年間横ばいである。GDPが対前年比で3.8%落ちているのも気になるところ。日本経済はあちこちに赤信号がともり始めた。

 実質所得が横ばいの中で物価が騰貴しだしたら国民生活が圧迫されるのは論を俟(ま)たぬ。
 しかし日銀に金利を上げて円高誘導する選択肢はない。金利を上げたら、政府財政の国債金利負担が大きくなるからだ。日本の長期金利上昇は政府財政破綻を引き起こすことになりかねないので、日銀は長期金利を上げられない。

 たとえば、10年物国債の金利が5%になったら、毎年50兆円の赤字国債を発行するとしたら、年々2.5兆円ずつ利払いが増えていく。10年後には25兆円と計算上はなるが、国債の残高は1300兆円あるので、それの借換債分が上積みされる。平均で償還期限が15年とすると借り換え分は年間86兆円にもなるから、その金利は年々4.3兆円ずつ増えることになる。新規発行分と合わせると10年後には年間68兆円の利払いになるから、政府財政は破綻する。だから日銀は金利を上げられない。経済はじわじわと進む円安により深刻なダメージを受ける。

 長期金利を上げて調節できなければ円安は止まらない。金利を上げても日銀の抱えている540兆円の国債は評価替えをしないので表面上は評価損は出ないが、国際金融機関は評価損を計算して日銀が実質的な巨額債務超過であると評価することになる。それは日本円が国際主要通貨から滑り落ちることを意味しないだろうか?
 日本経済の困難を打開するためには、金利を上げて日銀が実質債務超過になり、政府財政が破綻するしか選択の余地がなくなる。国民にとっては地獄である。預金や株式の封鎖と財産税課税によって根こそぎ巻き上げられることになる。

 自民党と公明党の政治は経済の悪化とともにいずれつぶれることになる可能性が出てきたのだが、それまでに経済運営ができる健全な野党が育っていなければ、政治と経済の両面で深い混迷だけが生ずることになりはしないか。
 現在行われている立憲民主党の党首選挙を見ると4人の候補者に政策的な相違はほとんど見当たらず、なんとも凡庸な小粒の人材が並んでいるだけ。

 さて、どうしたものかな。一度は地獄を潜り抜けるしかなさそうだ。期間は20年くらいかな。
 日本人はあんがい困難な中をしっかり生き延びてきた、といっても慰めにはならぬ。多くの国民がこれまでに蓄えてきた財産の半分くらいが毀損してしまうのだから。



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#4596 日米株価格差拡大:四年前と今 Aug. 1, 2021 [91.経済]

 7月末の日米株価は次のようになっています。
              日経平均    NYダウ      日経-ダウ
 2017年 19,925.18円 21,891.12$ -1,965.94
 2021年 27,283.59円 34,935.47$ -7,651.88
  差   7,358.41円  13,044.35$   -5,685.94           


       為替レート    
 2017年 (¥110.31/$) 
 2021年 (¥109.66/$) 
                     

 この四年間で日本の株価は7358円値上がりし、米国のそれは13044$アップています。為替レートは動いていませんから、為替レートの変動による見かけ上の格差拡大ではありません。
 日米の株価は正味で5685ポイントも日経平均とNYダウのポイント差が拡大したということです。
 米国の株価を押し上げた主力はGAFAですが、日本には日経平均を牽引するそうした大型の新興勢力が見当たりません。日本の上場企業は新陳代謝が著しく遅くなり老いたということ。日本の上場企業の地盤沈下が日米株価の格差拡大に現れているとみるべきでしょう。
 さらに10年がたったら、日本経済はもっと老いますが、この格差拡大はどうなるのでしょう?

 ところで、日本の株式市場で株価は、年金基金の株式保有と日銀の買い入れに支えられています。年金基金は年金支払いのために株式の売却をし続けなければなりませんが、株価下落を抑えるためには日銀が買い支えるしかありません。その日銀も法律によって保有株式の売却期限が定められていますので、その時が来れば株価は現在の水準を維持するのは困難です。つまり現在の株価水準は政府の低金利政策と年金基金と日銀の株式買い入れによる自作自演が映し出す幻影です。それらが外されたときに本当の姿が現れます。低金利政策と株価の時価評価で日本の大手銀行は統廃合を繰り返し、そして収益源を失って青息吐息です。平成元年統計では、時価総額で世界のトップ10に日本の銀行が5社(日本興業銀行、住友銀行、富士銀行、第一勧業銀行、三菱銀行)もランクインしていますが、平成31年には50位以内に日本の銀行は1社も入っていません。

 株価と並んで、重要な指標は一人当たり国民所得ですが、4/7に更新された「世界の一人当たりの名目GDP(USドル)ランキング」を見ると日本は$40,146で23番目です。英国22位、フランス24位、韓国27位、イタリア$31288で28位となっています。
 日本人の一人当たり国民所得は10年後にどうなっているでしょう?

  1990-2017年の間の「一人当たり国民所得の推移グラフ」をご覧になると、あなたには長期的な変化の方向が見えるかもしれませんね。

 一人当たり国民所得の格差拡大を止める方法があります。
 この格差拡大はグローバリズムに乗っていますから、グローバリズムを終焉させることで、格差拡大システム全体を破壊できます。あいにくと、日本経済もグローバリズムにどっぷりつかっているので、その部分はクラッシュするでしょうね。
 国際的な分業体制を縮小していけばいいのです。地産地消、自国の生産システムで生産できないものだけ輸入します。先進国の生産システムの縮小版を創り、開発途上国へそういうシステムを移植していきます。こうした観点から眺めると、日本にはさまざまな分野の産業、生産システムが揃っていますから、新しい生産モデルそして経済モデルを作成するには、非常に有利な位置にいることがわかります。 
 各国が自国民が消費するもののほとんどを自律的に生産できるシステムがあれば、貿易が減少すると同時にグローバル企業はその存立基盤を失います。
 経済システムを根こそぎ変えるのですから、時間もかかるし、人類の叡智をそこに向かって結集しなかればならならないので、ロシア革命や中国の革命よりも、ずっとスケールの大きい経済社会実験になります。企業経営の理念とかマネジメント力が問題になりますから、そういう経験のなかったレーニンや毛沢東には無理な仕事でした。
 新しい経済モデル建設にチャレンジする、さて、人類はそういう方向へ進むことができるかな?

 新しい経済社会の公理としてわたしは「職人仕事」を提案しています。それを公理とすればまったく新しい経済社会を建設できます。経済学の体系構成すなわち経済モデルについてその根源にかかわる議論が一度もなされていません。世界の経済学はそういうことにいつ気がつくのでしょう?経済学の勉強だけやっていたのでは見えてきません。数学の公理的体系モデルに関する勉強もしなくっちゃね。(笑)
 日本では職人仕事は神聖なもの、神に物をささげることから技術の粋を尽くしたものをつくる、そしてそれは自己実現であり喜びでもあります。ドイツにはマイスター制度があります、ところがマイスターの仕事は経済学に視野には入ってきません。西欧の経済学は労働が苦役であるということがベースになっています。古代の奴隷労働が労働概念の淵源にあります。
 そこが納得できなかったので、業種を変えて5回転職を繰り返して、何が真実なのかそしてマルクスの間違いとはなんだったのか、経済学の公理に何を措定すればよいかがようやく確認できました。業種を5度変えて働きましたが、仕事が苦役だなんて感じたことは一度もありません。

<余談:前のところの続きですがここから雑談です>
 前任者から仕事を引き継いだ途端にそれはクリエイティブなものに変わりました。引き継いだ仕事はその都度全部やり方を変えました。システム化することで消滅した仕事も多い。ルーチンに費やす時間は数分の一になるので、複数の分野に関わるプロジェクト仕事に関わることになります。一番多い時は5つのプロジェクトを抱えていたことがあります。産業用エレクトロニクスの輸入商社へ中途採用されたときのことですが、入社1週間後に社長が6つのプロジェクトの発足を宣言し、その内の5つを任されました。どれも会社の未来を左右する重大なテーマが設定されていました。臨床検査最大手のSRLでも創業社長の藤田さんとその後の社長近藤さんのお二人から直接の指示でプロジェクト仕事を担当しています。どんなプロジェクトでも失敗したことがないのです。だから失敗から学んだことがありません。コンピュータの性能が急速にアップして、それを利用することで複数の専門分野に関わる複雑な問題が解決できたという、いい時代の中で仕事していたからです。10年早かったら不可能でした。
 必要なお金は、経営改善することで調達してましたから、いくらでも使えます。輸入商社時代は社員200名規模の小さな会社でしたが、経営改善で粗利益が5億円ほどアップしたので、システム投資に必要な資金は簡単に調達できました。SRLでは経理担当役員と管理部門担当副社長が1年目から経営改善成果を認めて提案には何でもOKを出してくれていたので、やりやすかった。入社して2か月で経営統合システム開発を任され、半年後には全社予算編成の責任者でした。その間に経理部長から東証2部上場審査をクリアするために問題になっていた案件を片っ端から解決したので、たいがいの要求は通ったのです。検査試薬コストカットを提案して、じゃあプロジェクトを作るからお前がやれと、言われて16億円のカットを2年目にやっています。2か月間のプロジェクトだったのに、それが終わるとそのまま購買課へ異動、卸問屋ではなくメーカーと直接交渉でコストカットをしたから20%ほど下げられたのです。それまでは卸問屋と交渉してました。下がるわけがありません。問屋のマージンは十数パーセントですから。仕事を見ていた親会社の元経理部長だった監査役が「購買なら部長だろう」「いいえ、平です」と伝えると、苦笑してました。経営統合システムの担当部分を8か月で本稼働させた仕事を見ていたからです。普通は購買部門なんかでは使いません。一人で機器と設備を担当したので八王子ラボの隅から隅まで知ることができました。元々機械は大好きでした。エレクトロニクスの輸入商社で、6年間勉強させてもらったので。世界の最先端のさまざまな計測器類や時間周波数標準機の構造や機能を知っていました。検査機器はインターフェイスが遅れていました。マイクロ波計測器ではGPIB、双方向のインターフェイスバスが標準装備でしたが、臨床検査に使う機器にはそれがありませんでしたね。マイクロ波計測器はディテクターとデータ処理部とインタフェイスバスでできているのです。要するに同じ、だから理解が速かった。やれるときには何でも学んでおくものです。予想できないところで役に立ちます。学んで役にたたなかったものはありません。



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<8/1午後11時20分>
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#4556 日本人はなぜ株に投資せず預金するのか? June 4, 2021 [91.経済]

 老人が預貯金をもっていても株式投資する人が諸外国に比べて極端と言えるほど少ないのはなぜだろう?
 こうした疑問を持つ人は多いのではないか。
 実にシンプルな答えがある。日本人の伝統的なビジネス倫理に反しているというのがそれ。
 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」
 というのは伝統的な商道徳であるが、そのほかにも多くの商家で受け継がれてきた家訓の中に「浮利を追ってはいけない」というものがある。住友家の家訓の中にもその条がある。
 濡れ手に粟をつかむような利益を追ってはいけない、商売は信用を第一にすべきということだ。たとえば、大震災でモノが値上がりしているときに、買い占めをして大儲けをしてはいけないということ。そういうときにも平時の適正な利益を守り、買い手に喜んでもらい、信用の実をあげろということ。日本では創業200年以上の老舗企業が他国に比べて圧倒的に多い。それは伝統的な商道徳を守り、信用を大事にしてきたからだ。
日本では泥棒にも倫理があって、一番いけないのは火事場泥棒。こいつは泥棒の風上に置けぬ者。人が困っているときに、チャンスとばかりそこに付け込んで一仕事するのは泥棒だっていけませんや。大地震があるたびに、避難して留守になった家から家財道具を盗む事件が後を絶たない。情けないね。平均的な倫理観が欧米や中国並に近づいているということ。

 株価は上がったり下がったり、博打のようなもので、そんなものに一喜一憂していたら、日常のビジネスが疎かになる。
 1970年代終わりから1980年代初頭にかけて、株価の値上がりが激しくて上場企業の株式投資が流行ったことがある。新聞紙上では財務担当取締役の手柄としてもてはやされた。本業の利益よりも大きな利益を手にできたからだ。そういう財務担当取締役はさらに株式投資にのめり込んだ。だが5年とたたぬうちに、結果は惨憺たるものになった。巨額の損失をだして責任を問われ会社を追われた。
 だいぶ遅れて、米国でも類似の事件が起きた。2001年に起きた全米7位の売上と21000人の従業員を雇っていたエンロンの粉飾決算事件である。負債額は400億ドルを超えていたとされている。

 ソフトバンクの孫正義氏がエンロンとよく似たビジネスモデルで事業を拡張している。あのやり方は案外古くとてつもなくリスキーなのである。
 日本の大企業はよく海外企業を買収して、経営できずに大赤字を出しては損切りして売却している。近くは日本郵便がオーストラリア物流会社のトール社を買収して4000億円の赤字を出して、減損処理している。

 わたしは臨床最大手SRL社の学術開発本部スタッフとして働いていた時(1990年ころ)に、米国の染色体検査会社を100億円で買収する案件を担当したことがあるが、染色体検査に関する日米の法律規制の違いと社内にマネジメントができる人間がいなかったので、買収提案拒否の稟議書を書いた。OKを出していたら、また「お前がやれ」ということになり米国で数年間経営に携わることになっただろう。日本でやりたい仕事がいくらでもあった。臨床検査会社を米国につくるための橋頭保として利用する手はあった。八王子ラボの自動化設備をもって米国進出すれば売上規模を2倍以上にできただろう。売上規模で見たら、世界ナンバーワンである。しかしわたしにはあまり魅力的な仕事ではなかった。

 日本人の老人たちが、利息が付かないのに預貯金を続け、一向に株式投資をしないのはこういう理由があったのだ。日本の伝統的なビジネス倫理に悖(もと)るのである。そんなビジネス倫理をもっているのは世界中で日本だけだろう。その日本人も、浮利を追う個人や企業経営者が増えて、怪しくなってきている。
 博打は胴元が儲かるようになっている。株価が変動して売買が増えれば、手数料収入を手にする証券会社がリスクなしで儲かるようになっている。
 米国には年金を株で運用して、老後資金を失った人がたくさんいる。そりゃ、儲かった人もいるよ。でもプロだってコンスタントに儲け続けるのはとってもむずかしい。ましてや素人の個人投資家が...

 日経平均とダウ平均の比較データを挙げる。
2017年5月末 日経平均19650.57  ダウ平均21008.65 差-1358.08 為替¥110.83/$

2021年5月末 日経平均28860.08  ダウ平均34529.45 差-5669.37 為替¥109.52/$

 対ドルレートはほとんど一緒だが、日米の株価は4311.29ポイントも拡大した。それも日銀がETFを30兆円も購入して株価を支えたからである。その株は2026年中に売却することになっている。日本の株式市場がどうなるか知れたものではない。

 弊ブログ#4544より引用
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日銀保有のETFは昨年11月末決算時点で簿価ベースで29兆円あり、2026年3月末までに売却処分することに決まっている。売却をはじめたら、日経平均は暴落するだろう。2013年に就任した日銀黒田総裁の任期は2023年4月までである。売却処分するのは黒田氏ではない、お利口な人だ。首相官邸参与の浜田宏一が「3か月で物価上昇2%」を達成できる人物と評したが、あれから8年、道いまだ遠し。
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#4257 四枚の大陸プレートの衝突部にある日本列島と経済のデザイン May 26, 2020 [91.経済]

 COVID-19の第2波(ヨーロッパ型、第1波は武漢型)は沈静化しつつあり、次の第3波のパンディミックまで小休止、その間に準備すべきことは多い。


 地球を覆っている地殻は十数枚あり、そのうちの四枚が衝突しているところに日本列島が乗っかっており、そんな地域は地球上に日本列島以外にはない。北から時計回りで挙げると、東日本が載っている北米プレート、日本海溝に沈み込んでいる太平洋プレート、南から押し上げる圧力で富士山を造ったフィリピン海プレート、そしてユーラシアプレートである。その四枚の継ぎ目に形成されたのが日本列島なのである。複雑な地殻構造の上に日々暮らしていることを忘れてはならないのだろう。
 台風による大雨や長雨で崩れやすい場所、すなわち住居には適さない場所が多いことも日本列島の地殻構造と成立の経緯から当然のことだろう。火山灰地は崩れやすい、とくに山や丘陵地帯の斜面や斜面の接続部で水が流れる一帯ががそういう場所だ。
 巨大地震、大津波、火山噴火、地殻が不安定なことによる自然災害は残念ながら予測しがたいことをわたしたちは2011年3月11日の東北沖巨大地震やその後の火山噴火などで知った。地震も噴火もまったく予想されていなかった場所ですら突然起きる。さまざまな分析で地震や噴火の起きる確率が高くなっているところでも、いつ起きるのかについては確たる推論の方法がないというのが事実である。天からの恵みと災厄は同じコインの表と裏の関係、いつなのかがわからないからつかの間の幸せを楽しめるのではないか。

 COVID-19でリモートワークが増えている。首都圏から離れることが可能な人は思いっきり離れて仕事したほうがいい。そうすれば、首都圏で直下型の地震が起きたときの被害を小さくできる。経済機能もリモートワークで一部を分散化・温存できる。教育のオンライン化はまだごく一部で始まったばかり、さまざまな障害のあることが次第に判明してきているが、一つ一つ解決したらいい。自然災害や地球規模でのパンディミックが起きたときの備えになる。

 言いにくいことだが、自然災害は人間の都合に配慮してはくれないから、これから第3波のパンディミックと重ならぬ保証がない。それに備えるには今何をなすべきなのだろう。

 四百年に一度の根室沖巨大地震は地層に大量に運ばれた海砂の堆積層としてその記録が刻まれている。5500年間に13回の大津波(20~30m)が北海道太平洋沿岸を襲ったことが地層調査から判明している。東海と南海大地震も危険域に入っていることがもう30年も前から叫ばれている。1923年9月1日11時58分に起きた関東大震災(震源地不明)からもうじき100年目を迎える。富士山の宝永の噴火は1707年11月28日であり、すでに313年が過ぎている。同じ年に南海トラフを震源とする宝永の大地震(1707年10月28日)が起きている。宝永の大地震が起きてから富士山噴火が起きた。東南海大地震が起きれば、富士山噴火の可能性が大きいことぐらいは地震学者でなくてもわかる。
 噴火の可能性が高まっているという火山学者が増えているが、いつそれが起きるかは誰にもわからない。2014年9月27日の木曽の御岳山の噴火はいきなりだった。鹿児島湾や九州西側に巨大海底カルデラの存在がわかっている。過去に巨大噴火が起きたことだけはたしかだ。九州に住む人が全滅するほどの規模だったらしい。
 日本列島にはそうした地震や津波そして火山噴火がいたるところで起きてきた。起きるたびに甚大な被害を受けつつも、自然の恵みもいただいて生き延び、暮らしてきたのである。

 社会や経済の仕組みを根本からデザインしなおすときに来ている。COVID-19は天からのメッセージと受け止めよう。リモートワークできる人たちは首都圏を離れ、教育はこれから来るパンディミックに備えて、デジタル化を進めたらいい。それが自然の流れである。

 平時に赤字国債を大量に発行するような愚かなことはやめよう。自然災害が起きるたびに赤字国債が必要になるから、個人も企業も地方自治体も政府も、自然災害に備えて貯蓄や内部留保を増やそう。政府も地方自治体も借金をなくし、年間予算額と同額の災害復興積立金をもとう、それを使わなければならないときは繰り返し来るのだから。来たときには惜しみなくそれを使おう。幸いなことに日本の企業の内部留保は500兆円もある。
 企業レベルで見れば、内部留保を薄くして配当を増やし、一人当たり人件費を減らしながら経営者の報酬を1億円にするなどのグローバル・スタンダードは狂気の沙汰である。強い管理貿易で国内に必要な生産拠点を維持しよう。そういう、自立型の閉鎖的な経済体制を世界中に広め(輸出す)ることで、経済格差が縮小できる。

 日本列島に住む私たちは、世界のほかの国々に住む人たちとはかなり事情が違っているから、日本列島で暮らしてきた私たちが育んできた伝統的な価値観を大切にし、自然災害と折り合いをつければいいだけ。

*脆弱な日本列島:https://www.zenchiren.or.jp/tikei/zeijaku.htm
*富士噴火に関する火山学者の意見
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64713
*2014年の御嶽山噴火 - Wikipedia



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#4022 日米株価比較:3年間で大きく変化あり Jun. 21, 2019 [91.経済]

 Five Year Diaryというものをつけ始めて3年目である。レギュラー項目に株価や為替レート、気象情報などがある。気象情報は毎年そう変わりがないが、日米の株価についてはこの3年間で驚くほど変化した。数字を並べるのでご覧いただきたい。

          日経平均   ダウ平均    差   
①2017年6月20日 20230.41  21467.14  1236.73 
②2018年6月20日 22555.43  24657.80  2102.37 
③2019年6月20日 21462.86  26773.04  5260.17 
④=③-①     1232.45   5305.90  4023.44

  為替相場の推移
 ①111.41/$ ⇒ ②110.30/$ ⇒ ③107.33/$

 日本の株式市場は2年間でわずか1232円しかアップしていないが、米国の株式は4023.44ドル・アップしている。「日米の株価の差」に注目すると、1236.73から5260.17へ4023.44ポイントも拡大してしまった。

 GAFAの株式の影響が大きいのではと思って検索してみたら、2018年データでそのシェアは11%である。

 日本政府は異次元の金融緩和と称してマイナス金利にまで踏み込んでいるが、経済の実態には何の効果もないどころか、このデータを見ると経済の足を引っ張っているようにしか見えない。政府の経済成長戦略には中身がないということ、それどころか、事実は政府財政破綻リスクを大きくしただけである。

 この株価水準も異常なバブルである。GPIF(年金機構)と日銀の株保有増大によって、すでに日本の株式市場の1割が「国有」と言ってよい状態にある。GPIFは年金支払いのために保有株式を売却しなければならないし、日銀も24兆円も上場株式を購入したから、株価下落による巨額債務超過が迫っている。だから、何が何でも株価は維持しなければならない。金融庁が老後資金2000万円をいいだし、自己責任で株式投資をするように誘導しているが、すでに挙げた理由により長期的には株価が下落するのである。その損失を老後資金で補填しようという狙いが金融審議会の報告書に透けて見える。
 GPIFと日銀は老後資金で株式投資しさせて、売り逃げようというわけだ。政府と日銀による前代未聞の巨額詐欺事件と言ってよい。素人の個人投資家がもうけを出せるほど株式市場は甘くないのである。ご用心。

 GPIFが株価下落によって巨額損失を出せば、年金支給額を減額せざるを得ないし、日銀が巨額債務超過となれば通貨としての円への国際的な信用が下落し、世界中で円売りの嵐が起こり、極端な円安となり、物価は暴騰する。
 もうじき参議院選挙があるそうだが、こういう金融・経済政策を論議して、衆議院解散もしてもらいたい。国難が迫っており、東京オリンピックに浮かれている場合ではないとわたしは感じている。

 さまざまな人たちが日本列島に居住して、縄文時代から数えると1.2万年の文化的伝統の上にわたしたちの暮らしがある。長期にわたる人口減少と、長寿命と急速な高齢化という激変の時代で、経済成長なんてありはしない、あるのは人口減少と急速な高齢化による経済縮小である。そういう前提で、経済政策や金融政策を考えるというのが健全な保守主義というものだろう。
 江戸期の日本の人口は3000万人と言われている。人口が激減すると言っても、江戸期の人口に比べたら2倍以上である。人口縮小とそれに伴う経済縮小、そういう状況下も豊かな経済は成立する。

 どうして自民党内部からこういう意見がまったく出てこないのだろう?現在の政権が、健全な保守主義とは対極にある急進主義=過激派であると考えると合点がいく。玉石混交であるのを振り分けもせず、米国の対日要求のままにさまざまな規制を外すことによって、倫理レベルの低い米国流の経営哲学や価値観に染まる、愚かとしか言いようがない。
 米国は1,000年後に日本人が育て上げた商道徳、「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」にたどり着くのである。
 年間の報酬額が10億円を超す役員がいるとか、1億円を超す取締役がずらりと並んでいるとか、自分だけがよけりゃいい、社員の待遇はそのまま、非正規雇用を増やして利益を増やそうなんて下劣の極み。米国企業は、いまは「猿の時代」と言ってよい。そんなものをなぜ真似るのか?取締役であるか執行役員であるかを問わず、役員へは年間報酬3000万円以上はだしませんと宣言する一部上場企業があっていい。「売り手よし、買い手よし世間よしの三方よし」という伝統的な商道徳を守るなら、利益を役員の報酬を法外に上げることに使うのではなく、消費者と従業員へ回すのが筋。高額報酬につられてくるようなCEOは、報酬アップのためならなんでもやりかねない。カルロス・ゴーンと西川日産社長がいままさに証明してくれているではないか。

*#4016 老後資金2000万円:なぜいまのタイミングで… Jun. 13, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-06-12-1





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#3945 日米株価と円/ドルレートの推移から見えてくるもの Mar. 6, 2019 [91.経済]

 日米の株価の推移と円ドルレートをみていると、この2年間で大きな変化の生じていることがよくわかる。


 2017年3月7日(月)と2019年3月6日(火)の日米株価をダウ平均と日経平均で比べてみる。
  2017年    2019年     
 ¥19,379.14  ¥21726.28   差2347.14 
 $20,954.34  $25806.63  差4852.29
  113.92/$   111.89/$  差-2.03
 
 日経平均は2年間で2347.14しか上がっていないのに、ダウ平均は4852.29も上昇している。ドル/円レートはほとんど動いていないから、米国企業の評価額の半分しか日本の企業の評価額がアップしていないということ。
  日経平均とダウのポイントの差を見ても同じことがいえる。2017年にはその差は1575.2ポイントだったが、2019年には4080.35と差が2.59倍に広がった。

 米国企業の株価を押し上げているのはGAFA(google、Apple、FaceBook、Amazon)だろう。

 マイナス金利とGPIF(年金基金)の株購入と円安誘導による株価上昇に躍起になっても、米国の株式市場に比べて日本の株式市場は株価が半分しか上昇していない。長期的に日本企業が地盤沈下しつつあるように見える。日本企業の成長力が米国企業のそれに比べて弱体化しているのだろう。
 異次元の金融緩和や日銀による株式購入、ふるさと納税制度=合法的住民税脱税なんて馬鹿な政策をいつまでもとり続けていると、中小企業の経営力はさらに弱まる。小手先のごまかしをすればするほど、問題は複雑でややこしいものに化け、手に負えなくなり、膨らみに膨らんだ末にいつか破裂する。
 異次元金融緩和をやめたときに日本の株価は実態を表す。実態は現在の株価よりもかなり悪いのである。いまは金融緩和や円安誘導、そしてGPIFや日銀の株式購入で株価が膨らんでいる。
 2年後、3年後にこれらの数字がどのようになっているか興味のあるところだ。

 GAFAが上がりどまるあるいは大幅に下げるというリスクはないのか?
 そして日本企業の成長力はこのまま鈍化を続けるのだろうか?
 一律ではない、よくなる企業と悪くなる企業がある、業界も成長力をアップする業界とずるずるとダメになる業界に分かれてくる。人材次第だ。
 ブラック企業の行方も興味深いところだ、ブラックで人材難を抱えながらもしぶとく生き残るのはどういうビジネスモデルの企業なのだろう、世の中から悪がなくなることはないからそれもまた好奇心の対象となる。



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#3644 いまの株価をどう見るか:森永卓郎 Nov. 23, 2017 [91.経済]

 11月15日、NHK朝のラジオ番組「社会の見方・わたしの意見」で森永卓郎氏が標記のテーマで株価水準の評価と解説をした。論旨を紹介した後で、さらに突っ込んだ分析をしてみる。

 株価水準の評価方法には二つある、一つはPER(株価収益率)でもう一つはバフェット指数である。

 PER=株価÷(税引き後所得÷株式数)

 PERは株価が一株当たりの税引き後利益の何年分に相当するかという指標である。バブル期の1980年代後半から1990年代初頭には60倍に達していた。現在は15倍であるからPERからすると適正水準にある。

 もう一つの評価方法は著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏が開発した指標である。

 バフェット指数=上場株式の時価総額÷DDP

 この指数が1であれば適正水準、1.5だとバブル崩壊水準と判断されるのだが、現在1.3倍でバブル水準である。
  PERとバフェット指数は連動して動くのが自然だが、日本の株価はPERとバフェット指数が乖離している。
 その原因は企業が労働分配率を下げて利益を増やしているからだと森永氏は主張するが、その通りだと思う。労働分配率を下げると労働者の所得は減少するが、第2次安倍政権になってから実質賃金は3%減少した。所得が減少すれば消費が伸びない。消費が増えなければいずれ不景気になる。
 都心の不動産バブルについても指摘があった。銀座四丁目交差点の鳩居堂の地価が1992年に1.2億円だったが、現在1.33億円で、バブルの頂点を超えている。オリンピックがらみで不動産投資が増えているからで、投資ブームはオリンピック前に終わる。そうすると、値下がりがはじまり、銀行が融資を引き揚げる。資金手当てに不動産を売却したり、株を売却して資金を手当てすることになる。都心の不動産価格の暴落と株価の低下が避けられないから、ミニリーマンショックのようなことが日本国内で起きるという。その時期を早ければ来年、遅くとも再来年(東京オリンピックの前年)と予測している。

 さて、ebisuの分析をつけたそう。自動車メーカが利益を伸ばしている。第2次安倍政権の直前、2012年11月は80¥/$であったが、昨日は111.27¥/$、1.39倍の円安である。自動車メーカーは1.39倍の逆数である0.719倍に労働者の賃金を国際的には引き下げたことになる。4割の円安はドルベースでみると3割の賃金低下を引き起こす。2012年に日本の労働者の最低賃金が1600円/時間だとするとドル換算で20ドルだが、現在は14ドルということ。日銀の異次元の金融緩和とそれに続くマイナス金利導入で円安を演出した。アベノミクスは、結果として、日本人の賃金をドルベースで3割も下げることに成功したのである。だから安倍政権が始まってから、自動車産業のみならず、輸出産業が空前の利益を上げ続けてもおかしくはない。それは、輸出産業が強くなったのではなくて、国際的に日本人の賃金水準が3割も下がったためである。
 全産業に占める輸出産業の比率はいまや25%程度に過ぎない、他の75%の産業分野は円安によって原材料費が高騰して経営難にあえいでいる。これがアベノミクスの実態だ。

 大手臨床検査センターのSRLは1984年には売上高経常利益率が12%あった。それから数年して、急成長期が終わると、利益率は8%に落ちた。非正規雇用の準社員を全員社員と同等の待遇にすると、計算上会社の利益はゼロとなることに気がついた。そのあたりの事情は90年代後半になっても変わらなかった。売上高600億円で50億円の利益だったが、営業部門やラボ部門で働く準社員を社員と同等の待遇にすると利益はゼロ、そうした事情はいまも変わっていないのだろう。
 非正規雇用の拡大は企業経営を甘くしてしまう。一部の例外を除き、いまや大半の上場企業が非正規雇用の拡大で利益を増大させているといってよい。その一方で役員報酬は上昇を続け、1990年ころの2.5倍になっている。
 日本企業から、「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」の価値観がじわじわと失われつつある。株主と取締役、執行役員がよければ、あとは野となれ山となれ。これでは日本企業の永続的な発展は無理だろう。一生懸命に浮利を追っている。
 働いている従業員もよくなるためには、経営者の経営能力が成長しなければならないのだが、これがほとんど絶望的だ。コストカットで利益を増大させるというのは経営としては下の下であるが、カルロスゴーンのようにそういう(お金の亡者のごとき)経営者がマスコミでもてはやされてきた。毎朝イワシの目刺しを食べ、粗衣粗食に甘んじ、死後は家屋敷を寄付するという、金銭に恬淡としていた経団連会長の土光さんのような人がいなくなったということか。当時も土光さんのような人は希少種だった。この20年間で日本企業の実力は中身の充実がないがしろにされて、見かけ上の利益が増えている。
 わたしは軍事用・産業用エレクトロニクス輸入商社でも、SRLの子会社経営にタッチした時でも、合計5社の経営や経営改善にタッチしたが、赤字を黒字にするために経費を削ったり、人件費を削ったりしたことはない。「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」はやればやれるのだ。歴史の古い日本企業にそういう価値観が生き残っている。希望の星だろう。

*#3499 ドイツと日本:生産性比較 Feb. 6, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-06

 #3502 労働生産性向上の果実はどこへ? Feb. 9, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-08-1

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#3502 労働生産性向上の果実はどこへ? Feb. 9, 2017 [91.経済]

 #3499でドイツの就業者一人当たり労働生産性と日本のそれを比べた。ドイツの方が労働生産性が高いということになっているが、働き方が異なるので、直接数字を比べるのは問題があることは理由を挙げて述べた。
 #3499で採りあげた就業者一人当たり労働生産性に関する数字を見て考えてもらいたい。

 2016年 832万円
 2011年 784万円
 差し引き  48万円 

 就業者一人当たり所得がいくらなのかネットで検索したが見つからないので、数字を仮定する。この5年間で年収が30万円低下したと仮定するとどういう結論になるのだろう。

 勤労者一人当たりの所得は非正規雇用割合が増えれば低下する。非正規雇用の賃金は正規雇用の4割ほどしかない。ドイツの派遣社員はたったの100万人だそうで、正規雇用に比べて6割の給与水準だ。
 非正規雇用割合は年々増大し、2011年で36%、2017年現在40%ほどにもなっているだろう。非正規雇用割合が増えていけば勤労者の一人当たり平均所得が低下していくのは当然である。

 このデータから労働分配率の計算をしてみよう。

 2011年: 430万円÷784万円=54.8%
 2016年: 400万円÷832万円=48.1%

 産出した付加価値に対して支払われる人件費割合が労働分配率だ。
 生産性上昇分で48万円、非正規雇用割合の増大で30万円が勤労者の財布からどこかへ飛んでいった。その結果、5年間で労働分配率が6.7%も低下した。
 行き先ははっきりしている。企業の内部留保とこの20年ほどで倍以上になった役員報酬、そして株主への配当である。

 日本の伝統的な商道徳は「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」である。経営者と株主がよくて従業員が悪いというのは日本の伝統的な商道徳とは真っ向から対立する。日本の経営者は頭のネジがおかしくなってしまったのではないか。自分たちの役員報酬は2倍に上げて、非正規割合を拡大して人件費を削ることに邁進している。大企業の経営者たちは強欲でエゴの強い人間が当たり前になってしまったようだ。こんなことを30年も続けたら経済社会はおかしくなるし、地道な経済成長もできなくなる。価値観が変わってしまえば「人財」育成も困難になってしまう。

 安倍首相が声高に賃上げを叫ぶ一方で、労働分配率が下がり続ける。やるべきことはごまかしの経済成長や労働規制の緩和ではなく、経済規模(GDP)を縮小し非正規雇用割合を減らすことだろう。
 経済成長ができないものだから、政府予算を膨らませて見かけ上のGDPを増やすことに汲々としている。2016年のGDPの内100兆円が政府予算支出によるものだ。赤字財政をやめたらGDPは50兆円低下し、経済成長率は10%ほども低下する。人口縮小時代に入っているのだから、GDPが減少するのも経済がマイナス成長になるのも当たり前のことで、それをそのまま受け入れたらよいのである。
 政府支出はGDPに含まれる、だから経済成長を三本の矢の一つに挙げている安倍政権は見かけ上の経済成長率をプラスにしたくて予算を膨張させ続けている。これが亡国の道でなくてなんだろう。

 口先だけ、ごまかしの多い安倍総理に替わりうる、穏健で健全な保守政治家の台頭を望む。


*#3499 ドイツと日本:生産性比較 Feb. 6, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-06


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