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学年末テストが終わって [62. 授業風景]

2,008年3月10日   ebisu-blog#131 
 総閲覧数: 6875/105 days (3月10日23時45分) 

 
 期末テストが終わって、生徒から報告が入りだした。中学1年生がほとんどわかった。H中学では男子二人が450点前後である。どちらも運動系部活で好成績を誇っている。文武両道派が学年末でこれだけやれれば充分である。難易度の低い問題でこれ以上点数を競っても意味がない。今後は難易度の高い問題にシフトしつつ、速度を上げよう。中学3年の終わりまでに、高校1年の範囲を終了することに重点を移す。国立大へ合格するためには速度を上げて、1年半早く数学と英語は高校の範囲を終了しておくべきだ。
 E君は380点の殻を破る努力が必要だ。部活をやりつつも1日2時間家庭学習時間を確保して、一気に400点を超そう。
 Ki君は着実に合計点を上げている。一時は数学の復習が足りなくて危うい局面があったが、よく乗り越えた。春休みに方程式の文章題と平面図形と空間図形の復習をしっかりやっておくこと。好成績を挙げた直後が大事だ。手を緩めずにしっかり勉強しておくこと。2年生でどこまで成績を伸ばせるか楽しみだ。
 熱が出て休んだN君も、しっかり成績が上がったはずだ。手応えがあった。
 Ko中学のNさん、Ogさん、Osさんもしっかり上がった。カゼのためにHさんが休みだった。授業に気まぐれなところが見受けられるが、前回の学力テストからしっかり点数を上げている。今後は苦手と思っている科目を辛抱して勉強するように努力して欲しい。総合点が安定して上がることになる。
 Ke中学のSさん一人だけ総合点が下がったね。部活が忙しいので数学だけ来て、個別指導だけれど、あなたの場合は集団指導のほうが向いている。ポイント指導の個別授業よりも、もっとべったり説明を聞いた方が成績アップにつながりそうだ。夜7時半からだから、そろそろ英語も授業に出て、皆と同じ速度で勉強してみないか?
 全員の成績があがることは滅多にない。誰かしら下がる人がいる。下がったときには具体策が必要だ。今までのやり方を続けると拙いことがあるが、その辺の判断は塾長がする。2回続けて下がったときには親も交えて三者面談で対策を協議しよう。学年トップクラスは大学受験に焦点を合わせて速度を上げることに重点をおいた指導をするので別だが、成績下位や中位クラスの生徒の場合、成績の上がらない塾なんて通う意味がないと思う。「教育投資」は投資額(=授業料)に見合った効果があってしかるべきだ。
 明日、2年生の結果がおおよそわかる。

 高2数学は速度が3人三様である。一人は来週数Ⅱを終わり、受験問題の数Ⅰに入る。数Ⅱ・Bの代わりに簿記で大学受験をすることになるので、6月の日商2級合格は必須の課題だ。OさんとS君はこれから半年が勝負だ。M君は6月の日商3級に再度チャレンジだ。内容が理解できてきたから、後は速度を上げるトレーニングに的を絞ればいい。
 高校生は込み合っていないから、毎日来て構わない。個別指導だからそれぞれ自分が強化したい科目を勉強すればよい。この辺りは小さな塾の強みだろう。生徒のニーズに応じて臨機応変な対応ができる。Aさんが数Ⅰを、Bさんが数Ⅱを、Cさんが英文法を、Dさんが時事英語を、Eさんが簿記2級という具合に、同じ時間に来ても、それぞれ個別指導可能だ。


#130 成績不振の生徒から学ぶ 2,008年3月10日 [57. 塾長の教育論]

 2,008年3月10日   ebisu-blog#130 
 総閲覧数: 6744/105 days (3月10日9時00分) 

 
 成績不振の生徒の多くは生活習慣に原因がある。家庭での学習習慣のない生徒は、少なくとも中・高生については確実に成績不振となる。
 小学校まではごまかしがきくが、中学生になると家庭での学習習慣のない生徒成績は不振のままになる。そのようなケースであると判断したら、生徒に改善を促す。しかし多くは改善できないのが実情である。小学校6年間で固まってしまった生活習慣をそうやすやすと変えられるものではない。煙草や飲酒の習慣を考えてもわかるだろう。
 そのような場合は保護者に来てもらい、三者面談し、生活習慣を変えるために協力をお願いすることになる。 

 ところがある生徒、中学生のZ君としておこう。クラブ活動をしているこの生徒は6時頃に部活が終わると家に戻り、食事をして寝てしまう。9時頃に目を覚まし、1時間ほど起きていてからまた寝てしまう、そういう生活習慣の生徒である。当然勉強する時間はない。塾でやるだけである。復習はまったくしない。先週教えたことが、今週まるっきり記憶にないということがしばしばおきる。
 4月に1ヶ月ほど個人的な補習をしたが、効果はすぐに消えた。学習習慣が身につかなかった、そう勘違いしていた。
 この1ヶ月くらい、あることに気がついた。書くのが遅い。いいや遅いことはずっと気がついていたし、板書をノートに写すが遅く「先生、消さないで!」とたまにいうことはあった。廻ってノートを見るといつもほとんど書いていない。なまけているのだから、口酸っぱくその都度注意すれば改善できると思い込んでいた。しかしいくら、その都度注意しても効果がない、何かがおかしいと気がついた。
 よく観察すると、一時的な記憶領域が未発達であるようなのだ。書くのが遅いので、日本語トレーニングのための音読教材に使っていた『国家の品格』(藤原正彦著)を時間を測って写させてみた。5分でたった2行しか書けない
 これではっきりした。英語の単語が書けないのもこれが原因であろう。単語ひとつを書くのに複数回黒板を見ている。
 事情がわかりやすくなるのでコンピュータ専門用語を使わせて欲しい。脳内のworking strage area(一時記憶域)が小さいようである。板書をノートに写すためには、黒板に書かれたことを一時的に記憶しなければならない。そういうエリアをコンピュータ用語ではワーク・エリアという。その空間が狭い。だから、ひとつの単語すら一つ一つの文字単位でしか記憶できない。
 全科目にその影響が現れているかといえばそうではない。英語と国語と数学と理科ができない。しかし社会の成績は平均点を超えている。社会科は好きだという。もっとも答案はほとんどがひらがなで書かれていたので、漢字で書く練習をするように注意したができるようになっただろうか?確認が必要だ。
 このように「好きだ」という意識は学習効果を著しく高める。逆もまた真である。嫌いだとか苦手意識を持ってしまったらその科目の成績は上がらないか、下がる
 Z君には脳内のワークエリアを広げるためのトレーニングが必要のようだ。しばらくの間、学校の帰りによって、本を書き写すトレーニングをすることにした。
 こういう生徒は滅多にいない。はじめてである。板書を写す作業の遅い生徒はいたし、英単語を書けない生徒もいたから、いままでみた成績不振の生徒の中には、たんに学習習慣がないだけでなく、脳内のワーク・エリアの未発達な生徒がいたのかもしれない。
 新年度から小学生に使う国語教材を探していたら、まちがってアマゾンに注文した本があった。『陰山流・日本語トレーニング百枡書き取り―日本語力を鍛えれば学力はつく』という本である。文章を読み上げてそれを書き取るトレーニング教材である。読み上げCDがついているので、これも試してみることにする。

(断っておくが、わたしは陰山方式の教育には反対である。計算トレーニングの百枡計算は、伝統文化である算盤の修練に比べたらお話にならないほどの効果しかないし、パターン記憶による文章問題トレーニングも頭脳を硬化させてしまうだけで、社会人になってからの副作用が強い。単なる解法の暗記で、昔からの詰め込み教育を名前を変えただけの代物にしか見えない。陰山氏は自分の生徒たちがとのような社会人となったかを見ていない。企業人として三十数年の経験がある私は、そういう思考パターンを身につけた生徒たちがどのような企業人となっているか、結果をいくつも見てきた。しかし、このテキストはZ君のためには最適だろう。嫌いなものでも役に立つと判断すれば使うのは当然だ。塾は生徒の成績を上げるためにある)

 春休みの間、本人がきちんと補習に来るかどうか、それも含めて試してみる。間違えて注文した本だったが、偶然とは面白いもので、たぶんこの本は彼にとって効果があるだろう。
 未発達だったら適切なトレーニングをすればよい。そのためには教師は授業中に生徒をよく観察しなければならない。授業途中に廻って歩き、ノートのとり方や計算の仕方は最低限チェックする必要がある。

 ニムオロ塾では日本語トレーニングのために「音読+三色ボールペンで文の要旨や、大事な箇所に青や赤で線を引きわける」トレーニングをしている。中学生が対象である。日本語があらゆる教科の基礎で、数学の文章題すら、文章の論理的な理解ができるか否かが鍵となる。
 もともと国語の成績が不振な生徒に個人的に試してみた。いつも50点以下だったのが3ヶ月トレーニングをしたら、78点とれるようになった。それで、効果のほどが確認できたので、全員にやらせている。教材は「新書」を使っている。高校生から大学生レベルの読者を対象にした本である。『国家の品格』もその中の一冊である。

 教えることには熟練したスキルが必要である。それは毎日の授業で生徒から学び、磨くしかない。効果のほどは3ヵ月後にブログで報告する。