#4641『 Cutting Edge』 長文問題No.18:2通りの読みかた Oct. 29, 2021 [62. 授業風景]
ざっと全体に目を通したら段落のアンダーラインの部分の訳が意外にむずかしいことに気がついた。
この文だけを切り離して読むなら、2通りに読めるのだが、生徒はどう読んだのだろう。気になって、生徒がノートに書いた訳文を読んでもらった。
There is a paradox at the heart of our lives. Most people want more income and work hard for it. Yet, as Western societies have got richer, their people have become no happier. This is no old wives' tale. It is a fact proven by many pieces of scientific research. As I'll show, we have good ways to measure how happy people are, and all evidence says that on average poeple are no happier today than people were fifty years ago. At the same time, however, average incomes have doubled. This paradox is equally true for the United States, Britain and Japan.
これが冒頭の段落です。生徒の訳は次のようになっていました。
「わたしたちの人生の中心に逆説がある」
何だか哲学問答のように聞こえます。ありていに言うと、何言っているか意味わかんないということです。
livesを「人生」と訳したのだが、livesには他の「生活」という訳語があります。どっちなのでしょう?
heartを「中心」と訳したようです、これも「心臓—体の中心部、心—感情の中心部、中心」などの多くの訳語があります。
辞書によって並べ方は違いますが、だいたい同じです。問題は言葉の定義の内、あなたがどれを選択するかです。選択したときに、なぜそれを選択したのかを考えましょう。
life:①命、生命 ②一生、生涯 ③人生 ④生活...(ジーニアス4版)
heart:①心臓 ②心 ③中心・核心 (ジーニアス4版)
heart:①心臓 ②心・気持ち ③気力 ④中心 (スーパーアンカー)
paradoxには「逆説」と訳注がついています。この日本語をどう理解したのでしょう?
辞書によって定義が異なるので、手元にある辞書3冊から引用しますので、どれがいいか見比べてください。
「表現の上では一見真理に反するように見えていて、実は真理を言い得ている言葉」(角川『必携国語辞典』)
「通常の把握に反する形で事の真相を表そうとする言説 ②〔論〕相互に矛盾する命題が共に帰結しうること。また、その命題」(『大辞林』第三版
わたしには一番古い辞書の広辞苑の定義がしっくりきます。
英英辞典はどうでしょう?
paradox: a situation or statement which seems impossible or is difficult to understand because it contains two opposite facts or characteristics. (Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
(二つの正反対の事実や特徴を含むために理解するのが困難な、または不可能と思われる状況や陳述)
paradox: 1. a person, thing, or situation that is strange because they have features or qualities that do not normally exist together.(通常は両立しない特徴や特性をもつという理由で奇妙に感じられる人・物・状況)
2. a statement consisting of two parts that seem to mean the opposite of each other, or the use of this kind of statement in writing. (相反するような2つの部分からなる陳述、または文章でそういう矛盾するような表現)(Macmillian English Dictionary)
paradox: a situation or statement with two or more parts that seem strange or impossible together. (Oxford Wordpower Dictinary)
(どこかヘンで両立しない2個あるいはそれ以上の部分をもった状況あるいは陳述)
3番目に引用したOWDは学生向けのコンパクトな英英辞典です。ふだんはCALDとOWDを使っていますが、それでもピンとこないときはMEDを引きます。
話を元へ戻しましょう。こういう時はどんどん読み進めばわかるようになっています。問題提起して、それを具体的に後段で展開するというのは、ごく普通の論理展開ですから、二通りに読める場合に先を読み進めば、どちらが正解なのかわかります。だから、どんどん先を読んで、論理的な整合性をチェックすればいいのです。
そこで後に続く部分を読んでいくと、平均して現在の人たちは50年前の人たちよりも収入は2倍なのに幸福ではないと書いてあります。収入が2倍になったら、より幸福に感じてあたりまえですが、現在のわたしたちはそうは思っていないというのがパラドックスなのです。incomeは「所得」であって「収入」ではないのですが、これは軽々額に関する記事ではないので、「収入」の訳語を充てました。「所得」は専門用語の匂いがしますから。
後段部分との論理的な整合性から判断すると、livesは「生活」、heartは「キモチ」と訳すべきでしょうね。
「わたしたちの生活実感には逆説がある」
日本語としてはこれぐらいがいいでしょう。
この問題には解答集に全訳が載っています。そこを書き抜いておきます。
「わたしたちの人生の中心には1つの逆説がある。」
何の話かわかりますか?50年前に比べて収入は2倍なのに、幸福に感じる人が少ないと後段に説明がありますが、これでは論理的な整合性はありません。
大学の「比較的良質」のゼミでは、テクストを読むときには論理的整合性をチェックしながら読みます。日本語の文章も英語の文章も、論理的な整合性を追いながら段落ごとの意味を把握するのは普通のことです。そういう読み方を普段からやってください。中学生でももちろん可能です。
(わたしは小学生高学年の頃にはそうした読み方をしていました。北海道新聞の社説を読むのが毎日の習慣になったのが4年生の時でしたので。あの1年間が一番国語辞書を引きました。なにしろ知らない用語がたくさん載っていたので。でも半年もしたら、ほとんど辞書は必要がなくなりました。新聞の政治経済欄を読むくらいの語彙が蓄積されたからです。新聞を定期講読してなければ、小4であれほどの語彙拡大は無理だったでしょう。いま新聞を定期購読しない家庭が増えています。当時(1959年頃)の北海道新聞にはルビがふってありました。だから、漢和辞典の必要はありませんでした、国語辞典だけでOK。たまたまいい時代に育ったといえます。)
本文に即して、日本の事情をチェックしてみます。団塊世代のわたしたちが大学を卒業したのが50年前で、当時の大卒の初任給は4.6万円ですが、現在は21万円だから、4.6倍です。物価の上昇を考慮する(購買力平価だ)と、4割り増しくらでしょうね。
モノは次いで、「主要先進国の実質賃金指数の推移」という面白い統計を紹介します。最近20年間の賃金成長率を高い順に並べると、
韓国 167%
米国 82%
フランス 69%
ドイツ 59%
日本 -8%
にわかには信じられないような数字が並んでいます。韓国はwestern societiesには属しませんが、米国・フランス・ドイツは代表的な西欧社会に属する国です。
この20年間で主要先進国で実質賃金が低下したのは日本だけなのです。本文の段落の最後の部分に「この逆説は米英日にとっては真実である」と記してあります。
日本では大企業の経営者たちの経営能力が劣っているから、人件費を抑えることでかろうじて利益を出しているのです。にもかかわらず、この30年間で日本の大企業の取締役の報酬は2-3倍に上がっています。いままで節度のあった日本の経営者たちがこの20年間でひどく強欲になったということのようですね。「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」は日本人が受け継いできた大切なビジネス倫理ですが、それが最近20年間で消えかかっているようです。日本人が受け継いできた経営倫理を大学でしっかり教えないといけませんね。そういう視点で見たら、トヨタの「かんばん方式」や下請けいじめなどは最低の経営政策です。
だから、この問題文にあるように、西欧社会は50年間で実質賃金が2倍以上になっているというのはたしかなことのようです。日本経済が最近20年間でひどく劣化したのがこの実質賃金指数からわかります。
まとめです。
livesやheartにはそれぞれいくつか訳語があるので、複数の読み方ができます。だから、読みを一つに絞らないでください。複数に読める可能性を残しておいて、あとに続く文を読んで論理的な整合性を考えて、何が適訳か判断しましょう。
<余談>
この問題集の解答は生徒には渡されていません。しかし、ネットで手に入るようですね。誰かが入手したら、必要な友達へスマホで簡単に配信されます。このレベルの問題を独力でなんとかに理解できる生徒は、10人いないでしょうね。
でも解答は後から見ないと、見ながらやっていたら学力はアップしませんよ。
自分のためですから、単独で無理なら数人で議論しながら楽しく全訳してみてください。英吾を理解する力がしっかりつきます。
頑張れ、根室高校生!
応援してます。...54年前の卒業生より(笑)
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#4574 中学校は今日定期テスト実施 June 21, 2021 [62. 授業風景]
数学が苦手な生徒たちがこの2週間ほど焦ってテスト範囲の問題に取り組んでいた。教科書準拠問題集で範囲が指定されているので、指定された範囲の問題は全部解いておかなければならない。当たり前の話だが、それができない生徒が半分くらい居そうだ。下位30%の生徒たちは家で勉強しようにも、独力では無理、わからないところが多すぎて自力で勉強できるレベルではない、だから、テスト範囲の問題もほとんど解答を丸写しで終わるかやらずじまいだ。
普段の学習スタイルや家庭学習習慣に問題があることは生徒自身も親もわかっているが、どうしたらいいのかわからないのである。
学校の先生たちは忙しくて、下位30%の生徒に放課後補習はなかなかできない。自力で無理なのだから親が教えたらいいのではないかと思うが、中学生になると教えられる親は少ない。中学生に英語と数学を教えることのできる保護者は2割いるだろうか?中学生の時に成績上位2割以内にいた親ならやれそうだが、都会に進学して滅多に戻ってこない学力層が上位2割だ。根室の子どもたちの学力が釧路根室管内で最底辺にまで落ち込んでしまったのにはそういう構造的な問題が背景にある。
根室西高校が廃校になって、それ以降は「全入」状態となっている根室高校は学年180人ほどだから、普通科の特設コースの1学級35-40人がそういう学力層である。根室高校の「進路決定状況」を見ると大学合格者数は81名、そのうちの半数がFランク(BF)大学である。複数合格者を含んでいるので、実際の大学進学者数は6割の48名、その中で偏差値45以上の大学への進学者数は20名程度しかいないように見える。
偏差値45以上の四年制大学への進学者数を20名と仮定すると、中学校では成績上位12%の学力層ということになる。まことに厳しいデータといえるが、これが普通科の合格偏差値45(下位1/3)である根室高校の現実である。
念のために書いておくが、Fランク大学でも上位数%は大学へ入学してから一生懸命に勉強して学力が飛躍的にアップする生徒がいます。勉学に目覚めたそういう生徒は他の大学の大学院へ進学したらいい。大学を卒業して社会人になってからきっと芽が出せます。だって、必要なことはちゃんと自分で勉強して身につけられるようになったのだから当然です。
合格偏差値45の根室高校でも、今年は1人国立旭川医大医学部へ現役合格者が出た。古里根室へ戻ってきて塾をはじめて18年、ようやく成果を出してくれる生徒が現れました。もちろん生徒がよかった、ちゃんと努力できる生徒でした。案外大事なのは生徒と先生の相性ですが、それもよかったね。「医学科学校推薦型選抜(道北・道東選抜)試験」へ応募26名、共通テストの得点で応募者の半分を切り捨て、課題論文テストと面接がそれぞれ300点満点で、合格者10名中2番目の得点で合格でした。興味のある方はカテゴリー「65-1 旭川医大現役合格者の軌跡」をクリックしてご覧ください。僻地の根室だって、7年かけたらチャレンジできます。この生徒に続く後輩が何人も出現してほしい。やり方は弊ブログに記録してあります。
さて、本題へ話題を戻そう。金曜日の8時半になって、中1の生徒と中3の生徒から、試験範囲の問題数題の質問が出た。他の科目(社会)もやっていた。あと30分になって慌てて数学の問題でできなかった問題の質問攻め。なんとか全部解説した。よかったね間に合って。(笑)
「わかったというのとできるは全然違う、わかっただけではテスト本番では正解できません、だから、土日で質問した問題はあと2回解いておくこと」
「グッドラック!」
ちゃんとやったかな。わかっただけで安心してそれ以上やらないのが習慣となり、何年も繰り返して性格にまでなっているから、生徒自身も自分との戦いだ。わたしは伴走してあげられるだけ、あとは家でどれだけ予習や復習を積み重ねるかだ。今年になってきて入塾した生徒たち、どこまで化けるか、入塾してきた生徒たちはいま一生懸命に勉強し始めてます。親がくれたチャンスを無駄にしないでほしい、親への感謝の気持ちもしっかりもってもらいたい。数人はいままでで一番熱心に勉強した様子だったのがとってもうれしい、いい結果が出せたら自信がわく。自信がつけば、次のテストではさらによい結果が出せる。背丈と同じで、学力の伸びにも旬の時期がある。自分で手ごたえを感じながらぐんぐん伸ばしたらいい。
雨降りの中、もう学校について1時間目のテストが始まっている。8:57記す。
(今月下旬6/26にベネッセ模試がある。1年生の数学の平均点が20点前後だ、もちろん百点満点で。なんとか25点付近になってほしい。根室の生徒たちはこの模試で、はじめて全国水準での自分の学力を知る。)
*北海道のFランク大学
同じ大学でも学部や学科によって偏差値に大きな差がある。例えば北海学園大学を見ると、文系学部は偏差値が40-50の範囲にあるが、工学部は偏差値42の建築学科を除くと他の学科は偏差値40以下でFランクである。
<余談:英作文問題の配信>
昨年1月14日から作成しemail配信を始めた英作文問題が6027題になった。いままでに配信したのは1000題に満たない。生徒たちの消化能力の問題があるし、そんなにたくさん要らない。もっぱらわたしの英作文トレーニング用になってきている。(笑) 1万題を越えたら、どんな世界が見られるのだろう?高3の生徒に隔月週1回の頻度で、教科書VIVIDⅢを使って音読トレーニングと語順通りの読解の仕方を伝授しているのだが、昨年と教え方が違ってきている。英作文問題6000題の効果だろう。今年英語の音読特訓(無料)に参加できる生徒はついている。去年のebisu先生よりも教え方に磨きがかかっているからだ。8月から中3と隔月交代で水曜日2時間の特訓授業をやることにしている。中学生は英語の教科書にQRコードがついていて、それをスマホで読み込むと、教科書のそのページの音読を聞ける。中学生は全員、使いかたをマスターして、遊び半分、楽しんでいるようだ。
高校教科書も来年から同じ方式を取り入れてもらいたい。
先週から高2と高3への英作文問題と解説の配信を週2回から、7回へ変更している。
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#4566 二か月間募集停止:「満員御礼」 June 11, 2021 [62. 授業風景]
いま17名、内訳は中学生が10名、高校生が7名。昨年は高校生が8割だったから様変わりである。学力テストの点数が学年平均以下の生徒は、3か月くらいはレギュラーの週2日(数・英)以外にも来てよいことにしているから、現在は週3日きている生徒が少なくない。
水曜日は休みなのだが、高3の生徒で受験を前にして英語の長文が読めない生徒が数人いるので、5時から7時まで高3の教科書「VividⅢ」を使って音読と読解トレーニング特訓をしている。一人高2の生徒が混じっている。高校生で参加希望があれば、学年が3年生でなくても受け入れている。教科書はわたしの方からプレゼントします。中3の生徒が部活を終わるのが7月だから、8月からは中3と高3は隔月で長文音読と読解トレーニングをすることになる。8月は中3、9月は高3、10月は中3...というわけだ。英語の語順通りにスラッシュリーディングしながら英文の意味をつかまえるトレーニングである。英語の語順どおりに意味を考えていく、すなわち英語脳に切り換えるためのトレーニングである。作文もある程度できるようになります。高校生にはスマホへ英作文問題を週2回送信しています。
根室でこんな授業を受けられる機会はもうないかもしれません。このスキルは面授(直接向かい合って教えること)しなければなかなか伝わらないのです。2時間授業で15回くらいやれば、英語がとっても苦手でも、独力でかなり読めるようになります。ちゃんとノートに教科書の英文書いて、単語の意味くらいは調べてこないとダメですよ。聞き流しただけで成績が上がるなんて魔法はありません。そういうことを期待している生徒はご遠慮願います。(笑)
そういうわけで、水曜日の特訓は「愉しみ」でやっているので、仕事じゃないので授業料はいらない。(笑)
昨日は、早い時間に6名、遅い時間帯にも6名、入塾して間もない生徒は手間がかかるので、これ以上の受け入れは無理である。6/21から中学校は定期テストが始まるから、そこでいままでよりも数学や英語が20点以上アップし、4月のテストに比べ、学年順位が10番以上アップすれば自信がついて勉強したくなる生徒が出てきます。
いまは家庭学習をはじめたら、わからないことが多くて、続けられない。ある程度理解が進まないと、復習すらできない。ましてや予習は全然無理。予習ができるようになると学力は目に見えて上がります。予習はある程度も学力がなければできるものではありません。予習で成績が劇的にアップするのは、学校の授業が復習になってしまうからで、授業を聞いてよくわかるので、私語をしないで落ち着いて授業に耳を傾けるように変わります。
家庭学習習慣ゼロ
⇒ 復習中心の授業:小中の学習で穴の開いている箇所を見つけて穴をふさぐ
⇒ 復習が独力でできるようになる
⇒ 塾では予習へ切り換え
⇒ 学校の授業が塾の学習内容の復習になる
⇒ 学校の授業が理解できるように変わる
⇒ 本人に自覚が生まれるほど学力がはっきりアップする
こういうことなのです。
今月はもう新規塾生の受け入れは無理ですが、夏休みに入るころには1-2名受け入れ可能になると思います。ニムオロ塾は極東の町の小さな個別指導なので、申し訳ありませんが、受け入れる人数には限りがあります。現在の週4日を拡大するつもりもありません。塾ビジネスの拡大には、古里へ戻ってきてから開業後、一貫して興味がないのです。
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#4072 「先生、土日やってないんですか?」 Aug. 31, 2019 [62. 授業風景]
9/1 正午
8/19から中3、8/22から高1の新しい生徒が来て勉強している。数学の基礎を固めるのと、勉強のしかたを身に着けてもらうために、最初の1か月は毎日来てもらうことにした。そろそろ手一杯である。生徒の学力レベルにもよるが、一クラス7人、生徒総数20-24人くらいが、わたしの個別指導の限界である。健康上の理由で、週4日体制は崩したくない。高校統廃合の影響で、中学生が勉強しなくなったのと、高校生が増えたので中高の比率が4:6、高校生が6割になった。来年は高校生が8割になる。高校生を教えている私塾は根室に二つだけ。中学生の塾と高校生の塾で棲み分けが進みつつある、ケセラッセラ。
高1の新入生は苦手の集合と数Aの場合の数や確率の章をやっていた。個別指導だから生徒たちからは質問が次々に飛んでくる。昨日のB帯(7時半から9時まで)の授業は、中2、高1×2、高2×3、高3が勉強していた。それぞれ英語があきれば数学にチェンジ、やっているモノは教科書あり、学校の宿題プリントあり、教科書準拠問題集あり、難易度の高い塾用問題集『SIRIUSシリーズ』ありと、学力と興味に合わせてバラバラ。
高2男子二人は4時半ころから9時まで奥の大きな座卓で化学の勉強をしていた。教えあいをしているときは、声が授業の妨げになるので、奥の座卓が便利だ。そこでやる分には、声が邪魔にならない。1階にも3人分の自習スペースがある。他にも部屋と座卓があるから、生徒の7割が一度に来ても大丈夫だ。
来週火曜日(9/3)から根室高校は前期期末テストがはじまるから、生徒たちはテスト範囲の消化に大わらわ。
ふだんちゃんとやっている生徒は、テスト前1週間になってから慌てることがない。昨日もハラリのSapiensをやろうとしたから、「来週定期テストだから、今日はテスト勉強していいよ」と告げたが、いくぶん不満顔だった。(笑) ふだんちゃんとやっているから、塾では難易度の高いテクストをいつも通り読みたいということなのだろう。進研模試やZ会の模試の偏差値アップを目標にしているから、学校の定期テストは眼中にない。目標の医学部がもうすぐB判定に入りそうだ。ハラリのSapiensが100頁ほど消化し終われば、その領域に到達するだろう。
難易度の高い問題集で勉強しているから、教科書準拠問題集レベルは「お子様ランチ」になっている。でも、なかにはシビアな問題もある。群数列の最後の問題でてこずったと言っていた。「この問題、答えを見たら負けだと思った」、チャレンジ精神というべきか負けん気が強いというべきか、自力で解いたのだそうだ。時々意地になるから、観察していて面白い。
漸化式の問題は昨年は学校では扱わなかったが、今年はテスト範囲に入っている。基本タイプの2つのほかは、教科書には解説のないタイプの問題が載っていたから、ほとんどの生徒が理解できていないだろう。教科書には ①an+1=pan+q 型の漸化式しか解説が載っていない。
漸化式には数Bの範囲内に限定しても、他にもタイプがある。②qの部分がnの一次式になっているタイプ、③2次式になっているタイプ、④q^nになっているタイプ、⑤分数式になっているタイプ(an+1=pan/ran+s)、 ⑥S=(anの式)、⑦連立漸化式、⑧隣接三項間漸化式、⑨対数の漸化式等がある。準拠問題集の72番には②の一次式のタイプと③の2次式のタイプと④累乗のタイプが載っている。
(高校で扱うのは有限数列だが、無限数列の世界はもっとたのしくなる。πだって、eだって、さまざまな無限級数であらわすことができる。オイラーの公式()では、指数関数が三角関数の和で書ける、実数の世界では見えてない数の調和が表層に浮き出てくる。オイラーの等式( )では虚数単位とπとeが一つの等式のなかに調和しており、二つの無限小数が虚数単位の助けを借りて、-1に化ける。数の世界の美がここに現れている。シンプル、じつに美しい。高校生は受験なんか気にせず、高校の範囲を超えて興味の赴くままにどんどん勉強したらいい。)
昨年の根室高校2年生は、数Bはベクトルをやってから数列だったので、数列は後期期末テストの範囲になっており、時間が足りなくなって漸化式の章を端折り、群数列までだった。
数Bの教科書を見ると、テスト範囲は38頁までだ。あと半年あるが、「第3章確率分布と統計的な推測」はやらないのだろうから、空間ベクトルと平面ベクトルが108頁まで残りは70頁、ほぼ2倍の速度でやらないと教科書が終わらない計算になる。とても無理な速度だ。ここまで追い込まれたら、残り半年でカバーできる量ではない。さて、根室高校の数学担当の先生たち、どうするのだろう?
「第1章第3節漸化式と数学的帰納法」の最後の項目である数学的帰納法もテスト範囲から除外されてる。現代数学にとって数学的帰納法は証明の柱だから、ここは外してほしくない。むしろ、メインテーマの一つに据えたいくらいだ。数理論理学の自然数の定義ではゼロを含むんだ。ペアノの自然数の公理というのが5つあるのだが、数学的帰納法と密接に関係している。
ついでだから書いておく。
①公理1:ゼロは自然数である。
②公理2:任意の自然数の後者は、また自然数である。
③公理3:0はどの自然数の後者でもない。
④公理4:自然数xの後者と自然数yの後者が一致しているなら、x=yである。
⑤公理5:ある性質が0に対して成立し、その上、その性質をもつ任意の自然数の、その後者に対しても成立するなら、その性質はすべての自然数について成立する。
『証明と論理に強くなる~論理式の読み方から、ゲーデルの門前まで』小島寛之著 技術評論社2017年刊
公理5は数学的帰納法そのもの。
教科書や受験参考書だけでは高校数学の意味は理解できそうもないね。
経済学部へ進学して、将来ノーベル経済学賞をとりたい人は、ユークリッド『原論』とこの小島さんの『証明と論理に強くなる』の2冊は必読書です。まったく新しい経済学が、ここから生まれます。ebisuが言うのですから、ほんとうです。(笑)
1年生のほうをみると、数Aは条件付確率をテスト範囲から除いた。昨年はテスト範囲になっていたが、今年は昨日までのところだが、教えていない。条件付確率は生徒たちの理解がとっても悪い。意味がつかめたら、条件付確率の公式なんて不要なのだが、そこらあたりを理解できる生徒は普通科では5%、120人中5~6人くらいなもの。
なんだか、昨年よりも授業速度が落ちているように感じる。生徒たちの学力低下が著しいのでしかたがないと言えば、どこまでも後退することになりかねない。難易度の低い問題と緩慢な授業、イージーな方へ流れたら、30年後に根室を担う30歳代の層の学力、知力はどうなるのだろう?すでに市政も民間企業も問題山積みだが崩せる人材がいない。現実を直視していないだけで、根室市の人材の枯渇はずっと以前からはじまっている。
8/22から来ている生徒が、金曜日の授業が終わった後で、「先生、土日はやっていないのですか?」と微笑みながら訊いた、やる気満々、めんこいね、この生徒は、毎日12時ころまでしっかり勉強しているから、毎回質問がたくさんある。1か月もしたら、勉強の仕方がわかってくるし、理解が進むので、質問の回数はどんどん減っていく。最初は手間を一杯掛けなきゃいけない。この次のテストのときは、期待に応えて土曜日はやらなきゃいけないかな。(笑)
水曜日はテーマを設けて、補講に充てることもある。いま、英語が苦手な高2対象に、高3の英語教科書を使った短期集中特訓を10回やっている。無料の特訓だから、参加はやる気のある希望者だけ。これが終われば、英作文の特訓を数回やることになる。苦手な科目は背中を押してやらないと、自力では歩き出せない。しばらく押してやれば、自力で歩くようになる。塾先生はなんだか理学療法士に似ている仕事だ。
英語の短期トレーニング授業は今週と来週はテスト期間なのでお休み。
<余談:群数列の問題>
学力トップの生徒がてこずったと言っていた教科書準拠問題集「WIDE数ⅡB」の問題を紹介する。数学が得意だった人は、久しぶりにやってみたらいい。
[69]数列1/1, 1/2, 3/2, 1/3, 3/3, 5/3, 1/4, 3/4, 5/4, 7/4, 1/5,・・・について、次の問いに答えよ。
①15/16は、この数列の第何項か。
②この数列の52項は何か。
③初項から第200項までの和を求めよ。
高2の生徒二人、HとRからこの群数列の問題で質問があったので解説した。わかったようでも1時間後にすらすらできるとは限らない、家に帰ってから、2回やっておけば試験は大丈夫だろう。数列の基本要素が詰まった良問である。
内容をちゃんと理解したら、①16/18、②60項、③初項から230項までの和、という風に数字を変えてやってみたらいい。こうしておけば数字を変えて問題が出題されても時間内に対応できる。
そういう勉強のしかたをしてもらいたい。ふだんの勉強にほんのちょっと工夫して手間暇かけたら、内容の理解がまるで違ってくる。そういうことを生徒たちの疑問に応えながら伝えたい。こういうことをわたしは「拡張」と名付けている。新しい概念や概念の拡張も高校数学ではだいじことだ。具体例を挙げると、微分・積分、実数⇒複素数、直交座標⇒斜向座標(ベクトル)など。
答え、①第128項 ②13/10 ③195
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#4020 プラスの連鎖反応 Jun. 16, 2019 [62. 授業風景]
根室高校と柏陵中学校と啓雲中の前期中間テストが今週終わっている。
昨年11月から来ている中2の生徒がbe動詞と一般動詞の区別がなかなかつかないのでdoやdoesをbe動詞と一緒に使うミスが多発する。何度も繰り返し教えているが、やっているときはよくても、試験ではたくさんミスを出していた。市販の問題集ではらちが明かないので、この生徒用に問題をつくって試してみることにする。英文の音読だけはよくなった。
部活が忙しいので家庭勉強の時間がなかなかとれない生徒である。だから、教えてその場でできても、翌週にはまた同じことを繰り返し教えなければならない羽目になる。毎日2時間は勉強してほしいが、部活で疲れて寝るのが早い、10時ころには寝てしまう。体力のない生徒がきつい部活をやると、この生徒のように学業に大きく影響する。このままでは1年たってもあまり成績が変わらない可能性が高い。課題は生活パターンを変えることだ。しばらく様子を見ることになるが、家庭学習をしない生徒は学力が上がらないので休塾勧告をすることになる。入塾時に生徒と保護者あてに「個別指導塾の上手な利用のしかた」という文書でどういう場合に休塾勧告するかあらかじめ通知してある。#3947のURLを末尾に貼り付けておくので興味のある方はお読みいただきたい。
休まずにきちんと来て、一生懸命に勉強する生徒に休塾勧告することはない。生活習慣を変えられるまで辛抱強く待つのも教育だからね。何年間もやってきた生活習慣がおいそれと簡単に変えられないことは当たり前、しかし変える意思がなければアウトだ。塾へ来ても成績が上がらなければお金と時間の無駄。
昨年4月から来ている中3の生徒Aさんは家で全然勉強しない、夜中の2時過ぎまでスマホをやっている状態だったので、母親と相談して学校からかえってきたら10時まで取り上げてもらうようにした。ところが1週間足らずでもとに戻ってしまった。Aさんは部活をやっているので塾も休みがちだった。部活で疲れて月に2回ほど休むのが普通の状態。他にピアノも習っているので忙しい。でも家で勉強しなければ、塾へ来たってほとんど効果はない。
同じ部活で同級生の女の子Bさんが5月から入塾し、下がり続けている成績に歯止めを掛けたくてせっせと塾にきて勉強し始めた。つられて塾に来る回数が増えたAさんは試験前に勉強に熱が入り質問の内容が違ってきた。五月は二人とも13回来ている。月8回の個別指導だが、成績の上がらない生徒は短期間回数を増やして対応している。Aさんは塾に来始めてから1年2か月、ようやく数学の点数がガッツリ上がった。78点とれて本人は自信がついてますますやる気になっている。数学にも英語にもアレルギーがあったのでそれを外すのに1年かかった。英語はまだ駄目だが、「to不定詞」が全然わからないと、学校の先生にプリントをもらってきて自主的に勉強するように変わった。これにはびっくりした。裏も表もないあっけらかんとした性格、スマホ使用時間や家で勉強した時間を訊くと嘘は言わない、正直で面白い生徒だ。もう一人のBさんは塾へ通い始めて一月半、まだ下げ止まったとは言えないが、いまのペースでやっていれば、9月の学力テスト総合Aでは結果が出るだろう。
塾で困るのは、テストの点数の虚偽報告だが、たまにいる。塾の先生をだましたって生徒には何の得もない。10年くらい前に得点ん通知票をもってこない生徒がいた。素直でまじめな生徒だったから、科目当たり10~15点も増やして報告しているとは思わなかった。こういうときは嘘をつかなきゃならない事情がその生徒にはあるということ。なるほどそういうことで悩んで嘘をついていたのかと、そこまで理解できれば次のステップをどうすればいいのか見えてくる。11月下旬に三者面談したときにお母さんが得点通知票をもってきた。そのあと大車輪で勉強して何とか根室高校へ入学したが、ほんとうに危なかった、心臓に悪い。高校へ入学してからはしっかり勉強したようで、成績は中の上で卒業した。中学時代はインチキしたけど、本来は努力できる素直でまじめな生徒だった。こういう生徒を見放してはいけないのだとあらためて思う。
12月から来ている高校1年生Cさんが、思ったよりも数学の点数がとれて、クラスがアップした、もちろん本人は喜んでいる。中3の1学期の範囲の因数分解や無理数の計算のところがガタガタだったので、そこにパッチを当てるのに大わらわだった。
4月から来始めたもう一人の高校1年生Dさんはクラスダウン、二人は同じクラスになった。模試が29日にあるので、クラスが下がったほうの生徒には来れる日はドンドンおいでと伝えてある。中3のときは数学が大の苦手だったと、中学時代の定期テストの数学の点数を報告してくれた。早く言ってくれたら別対応できた。確認しなかったわたしが悪い。いま計算分野を固めておかないと、二次関数にはいると長患いとなるから、看過できない。
高2の生徒は6人いるが、EさんとFさんの二人は数学のクラスがアップした。あとの4人は最上位のクラスだから現状維持だ。下のクラスから這い上がった生徒Eさんは2017年12月から来ている。軽い部活とバイトに忙しい。バイトは慣れてくると雇用する側ができるだけたくさん仕事してほしくなる。売上が違うからだ。Eさんはバイトに入る日が増えて休みが多かったが、この2か月はちゃんと来て勉強したので、実績となって現れたのだろう。いい笑顔で点数の報告をしてくれた。もう一日多く来れたら、90点獲れただろう。成果が出ると教えているほうもうれしい。
F君はもう一つランクアップすると最上位のクラスだから、さらに頑張ってほしい。大好きな夜釣りに行っても、塾は休むな。学校から家へ帰って、眠って塾をパスしてしまうことがある。
一週間前から試験勉強を始めたトップの生徒は、平均点が90点を軽く超えている。定期テストの点数も学内順位も問題外で眼中にない、全国模試で3科目偏差値で80越えを狙っている。数Ⅱは満点取れるかどうかというところまでやっている。英語も長文読解になれたし、要求に応じて構文解説もしているから文法問題もスキルが上がっているだろう。高3の英語の教科書を読み終わったので、来週木曜日からハラリのSAPIENSを原書で読む。高校英語の教科書よりはいくぶん難易度が高いから最初の内はたいへんかもしれない。じきに慣れる。
連鎖反応だろうか、家であまり勉強しない生徒が3人、成績がアップした。まあ結果オーライとしておこう。家でも勉強して次の試験でさらにいい結果が出せたらますますうれしい。高2の生徒は一人を除き英語が苦手だ、学校の宿題の長文問題をやるようになってきたが、教科書をもっと読み込まないといけない。英語の勉強に費やす時間がまだまだたりない。アレルギーは少し取れてきたように感じる。
根室高校は金曜日から学校祭の準備期間に入った。7月14、15日までずっと続く。クラス対抗で催し物やパフォーマンスをやるから熱が入ってしまう。学校祭が最大の思い出という人が多い。困るのは、この期間、高校生たちの勉強がお留守になること。学校祭が終わると港まつり、花火大会、お盆(根室は7月)と続き、夏休みに入るころには金刀比羅神社の例大祭(8月9-11日)の稽古で忙しくなる。
ようするに、6月初旬の前期中間テストが終わると、金刀比羅神社の例大祭まで、根室高校生はずっとお祭り気分で心ウキウキ、ほとんどの生徒が勉強に手がつかぬ。困ったもんじゃ。いつからクラス対抗で得点を競うようになったんかい?学校祭を盛り上げようと誰かが考えてやり方を変えたのだろうが、まさかこんなことになるとはおもわなかっただろう。卒業後の進路指導もしている学校の先生たちはまずいと思っているだろうね、意見を聞いてみたい。
学校祭は別な能力を育てる場でもある。「多視点的構想力・共感価値実現力・主体的革新力」の三つの能力である。
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*#3947 個別指導塾の上手な利用のしかた Mar. 8, 2019
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Sapiens: A Brief History of Humankind
- 作者: Yuval Noah Harari
- 出版社/メーカー: Vintage
- 発売日: 2015/04/30
- メディア: ペーパーバック
#3641 先生、ストレッチのし方教えてください!にびっくり Nov. 18, 2017 [62. 授業風景]
11/19 朝8:35 「石火の機」を追記
朝9:50 身体の声を聴くことの大切さとスキルス胃癌の診断
昨日(11/17)の最低気温が今冬初めてマイナス、庭にあるスズメ用の水盆に氷が張っていた。
体験入塾の中2の生徒が二人来た。ニムオロ塾は一クラス7人までの個別指導だから、数学と英語のワークを持ってきて質問をどうぞと伝えてあった。授業は他の生徒と一緒、ときおりやっている問題とノートを覗いてこちらから質問したり、質問を受けたりしながら、観察して学力レベルとどのあたりから躓いているのかを判断する。学習指導要領に縛られないから、生徒の学力に応じてヒントの出し方や説明内容が変わる、だから学校とはずいぶん趣の異なる授業になる。塾生の友人に体験入塾の一人が九時過ぎたよと促された。
「あ、もう九時」
そこでまた手を挙げた。
「ストレッチの仕方を教えてください」
体験入塾でこういう質問、いやお願いは初めて。(笑)
唐突で面白いので、なぜ、そして体のどこの部分のストレッチの仕方を教えてほしいのか訊いた。肩が固いので肩のストレッチを教えてほしいという。ピッチャーをやっているから、肩の柔軟性は選手寿命にも影響する、柔軟な肩ほど特定の腱への負荷を減らせるし球威を上げられる。彼にとっては大事なことなのだろうから期待に応えてみようと思った。
ストレッチの話が出てきたのは前段があるのでそこから説明しておきたい。進路に合わせた指導をしたいので、授業の合間に将来の夢を尋ねることがある、問うとその生徒はプロ野球の選手になりたいときっぱり。成長期は骨が先に伸びて腱や筋肉は後追いでそれに見合ったものに成長するから、負荷を特定の部位にかけ続けたら、腱が壊れてしまう。中学時代は基礎基本トレーニングに徹して、地区大会ぐらいで勝ちたいからと無理しないように話した。この中学校はわたしが知っている限りで、4番打者のピッチャーを二人つぶしている。投げさせすぎてピッチャーを断念せざるをえなくなった。一人は武修館へ進学して甲子園に出場した。わたしはユウトに甲子園で投げさせてやりたかった。中1のときに助言しなかったことに忸怩たる思いがある。1学年上のもう一人は野球部をやめてバド部に、そして高校ではお姉さんと同じ陸上部へ。三つの部でそれなりの実績を残した。運動神経抜群の生徒だった。水泳で全道2位の成績を残したS君と学力で競い合っていた、常にS君の後塵を拝していたが文武両道、釧路公立大学を卒業している。S君は室蘭工大を卒業している、北大には少し届かなかった。
野球に関しては、小学校と中学校の部活指導にスポーツ医学への配慮が欠けている。野球部やバド部の顧問を引き受けたら、スポーツ医学のイロハぐらいは勉強しよう。子どもたちの未来を左右しかねない仕事だ、仕事には報酬と権限と責任が伴っている。引き受けたからにはそれなりの努力しよう。ちゃんとやるのはたいへんだね。
体験入塾の生徒へ、プロになりたいのなら、本格的なトレーニングは身長の伸びが落ち着いた高校に入ってからでいいと助言したのである。そうした会話の延長線上に「ストレッチのやり方を教えてください」発言が出てきた、どうやら勘の鋭い子のようだ。自分にいま必要なものを塾長がもっていると確信した発言に聞こえてしまったから、「石火の機」で反応した。石を打ちつけたとたんに火花が出る、その瞬間の判断だから、思惟が介在しない。大事なことはあれこれ考えるよりも石火の機に生じた判断を受け入れたらいい。自分の損得が介在したら判断を誤り、碌な結果にならない。
さて、ストレッチの基本は呼吸が大切なのでそれをやって見せるために、机を少しずらして場所を確保した。開脚して胸を床にぴったりつける動作をやって見せる。息をゆっくり吐きながら自分の体重を頭の先に乗せて倒していく。3回息を吸って吐くと胸が床にぴたりとついた。実技で見せるのが一番だ。
「おお!胸が床についている」
と声が上がった。子どもは正直だ、ebisuは団塊世代の爺さんだから、胸は床につかないと思っていたのだろう。57歳で胃癌の手術をするまではブリッジしてそのまま立てた。背中も柔軟だったが、術後は切った跡が引き攣(つ)れる気がしてブリッジをしなくなったら、いつの間にかできなくなっていた。肩も硬くなっていた。使わない部分は退化するのである。使い始めたらある程度は戻るし、機能低下をなだらかなものに制御できる。使いすぎて筋肉にストレスをため続けたら炎症を起こして固くなるが、そのあたりをコントロールできたら体の柔軟性はいくつになっても維持できる。毎朝、ベッドの上で10-15分くらい4種類のストレッチ運動をしてから起きている。ストレッチをすると、身体のあちこちが気持ちいいと声を上げる。身体を動かすたびに、身体が発する声を聴けばいい。自分の身体がどういう状態かよくわかる。
(わたしは2006年に巨大胃癌とスキルス胃癌を併発したが、初診の時に岡田先生に「胃癌だと思うので内視鏡検査をお願いします」と告げた。すぐに内視鏡検査をしてくれ、胃癌の診断をつけてくれた。幽門部の手前に大きな胃癌があり通路を完全にふさいでいた。診断結果を聞きながら、スキルスもあるはずだから、検査を続行してほしいとお願いした。外科のあるところでないと粘膜標本は採れないので、釧路の病院への入院を勧められた。3週間ほど内科的な検査を続けてスキルス胃癌の診断が下りた。なぜスキルスのあることがわかったのか種明かしをしておこう。身体の声を聴くことに慣れていたからだ。胃の裏側のほうに冷たく広がりつつある「何か」があると身体の感覚が告げていたのである。わたしの知識の範囲では、それはスキル膵癌だった。その通りだったのである。身体の声を聴くことに慣れたほうがいい。なによりうろたえずにすむ。)
体重の重みを感じながら、ゆっくり息を吐いて倒していくだけ。息を吸うときには動きは止める。息を吐き始めたらまた体重を感じながら倒していくだけ。決して勢いをつけたり反動をつけたりしないこと。それをやると筋肉が切れてしまうことがある。切れたらやけどの引き攣(つ)れと似たようなことが筋肉に起きる。その部分が結合織となって固くなる。肩のストレッチもやっり方は同じで、左手で右手の肘を抑えて息を吐きながらゆっくり息を吐きながら左側へ倒して筋肉を伸ばしてやる。前かがみにならないようにやるのがコツ、小指の先と親指の先をくっつけると力を抜きやすくなる。かならず逆側もセットでやること。
もう一つ大事なことを教えた。体をひねる動作である。やり方は一緒、やっているうちにだれでも体をひねる角度が180度は開くようになる。ひねりの可動域が大きくなるとボールを投げる時に腕に無理をかけずに投げられるようになる。体のひねりを指先に伝えることができるようになれば、球威は格段に増す。腕で投げるのではなく腰の回転で投げる。それができるようになったら、足の裏から腰の回転そして指先までエネルギーを伝えながらボールを投げられるようになったら素晴らしい。
「真人の息は踵(かかと)をもってなし、衆人の息は喉をもってなす」(『荘子』)
ebisuは小学生時代から長柄の鉞(まさかり)で廃材を叩き割って石炭ストーブの焚き付けをつくっていたから、背筋と腰が強い。18歳の時に東京新宿で、高校で同じクラスだった友人のKとMと三人でパンチボールを叩いたことがある。100円入れて叩くやつだ。KとMが叩いたあとにわたしがやった。二人は150-160kgあったから、なかなかのもの。
(根室高校にあった総番制度の幕引きをした最後の総番長がK、三人の副番長の一人がMだった。ひと月ほど前にMが根室に来た。Kから二人で飲んでるから来ないかと電話をもらったが、授業中で外せなかった。50年ぶりで三人で飲みたかったな、三人そろって飲んだのは18歳のとき、高円寺だった。二人ともちょっだけやんちゃだったが性格は温厚、人はとってもいいのである。何十年たっても気分は高校時代のまま、あいつらも生涯の友。)
ああ、パンチボールの話だった、ebisuは踏み込まずに腰の回転だけで叩いたのだが180㎏を超えていた。当時はプロボクサーのパンチ力がどの程度か知らなかったが、それを知っている今は並のプロボクサーよりも破壊力のあるパンチだったことがわかる。身体が柔軟で、可動域が広かったからである、背筋が強かったこともある。体は細かったが背筋力も200kgほどあった。長柄の鉞で四寸角や五寸角の廃材を叩き割っていた効果は大きい。腰の回転が腕を伝って拳まで届かせることができれば破壊力が大きくなるのは当たり前。動き始めは力を抜いてゆっくり、当たる瞬間に速度と気力がマックスに達するようにやればい。1万回もやっていればそういうタイミングを体が覚えてしまっている。小学生低学年の時から、面白半分に拳や手刀で焚き付けを1万本以上も割っていたから、中学生になったころには拳は空手を数年やった者たちよりも硬く重かっただろう。踏み込んで叩いたら頭蓋骨を粉砕骨折することになるから一度も人を叩いたことはない。大概のことでは腹を立てぬ人間になっていたのは、怒りに任せて力を解放すれば人殺しなる、それが怖いからだろう。
<試用期間>
昨日来た生徒は、午前中に母親から問い合わせがあった。「子どもが塾に行きたいと言っているので電話しました、どういう風にやっているのですか?」、親が塾に行けと無理やりのケースは効果が薄いが、本人が学力を上げたくて塾へ行きたいと言っているなら、部活がきつくても文武両道を貫けるだろう。最初が肝心である。だから、初回はきついことを言う。でも、学力が低いことを理由に断ったことはない。中学時代はとんでもなく伸びるやつがいる、だれがそうなるのかはわからない。成績が急激に伸びる生徒たちには、ちゃんと塾に来て、問題が解けるようになると楽しそうに夢中で勉強するという共通項がある。百点満点で30点取れていたら見込みがある、数英のいずれかの科目がクラス一番になるかもしれない。そういう生徒が十人に1~2名くらいの割合で現れる。だから面白くて、体力が続く限り塾長はやめられぬ。
入塾後3か月間は試用期間、文字通り「お試しの期間」である。部活を理由に疲れたからと休む生徒は3か月間だけ。お金と時間が無駄になるからやる気が起きた時にまた来たらいい。3か月間来るべき日に定められた時間を守って通塾できたら合格、正式に入塾を認める。昨年から方針を変えた。受け入れるのは学力を上げたい生徒だけ。体験入塾の日に伝えることにしている。今年は二人ばかり伝え忘れた生徒もいた。ちょっと手を焼いている。(笑)
一緒に来たもう一人に確認したら、「友達に誘われたので来ました」とはっきり。月に2回やっている日本語音読トレーニングは次回が12/5だから、参加するなら斎藤隆著『日本人は何を考えた来たのか』(祥伝社)をリライアブルブックスで注文したらいいと伝えた。帰りに本屋によって注文していこうと誘っていた。
「俺たち、三人塾メンだ」
おいおい、そんなに簡単に決めなくていいぞ、他も試してみたらいい。
親の仕事の都合で送り迎えの時間が定まらない場合は、生徒のせいではないから、相談に応じることにしている。迎えが遅くなるから3時間というケースもある。小さい塾だから臨機応変にそういうこともできる。小さいことはいいことだ。
*#2635 蟹江敬三さん胃癌で死去:ステージ3、病診連携が奇跡を起こすこともある Apr. 7, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-07
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#3322 高2の英語授業 : やれば力は飛躍的に上がる June 8, 2016 [62. 授業風景]
先週土曜日に高2の生徒が教科書を読み始めた話をどこかに書いた。今日が2回目だ。
前回の授業で「折り紙」の話を読んだ、今日は「ミクロの決死圏」という映画の話だ。1966年の米国映画だから、東京で1967年にこの映画を観たのだが、新宿のどの映画館だったか忘れてしまった。中学生のころ、SF小説が大好きで、母校の光洋中学校図書室(当時の蔵書は昭和42年の火災で焼失)にあったSF小説の数々は「ご馳走」だった。名作も駄作も片っ端から読むことで次第に目が肥えた、いいものだけでは肥やしにならぬ。
今日、生徒が教科書を読むのに付き合っていて、原題が'Fantastic Voyage'だとはじめて知った。
辞書を引きながら頭から読んでいき、わからないところ、日本語にしにくいところは生徒から質問がある。質問されたら、どのように頭から読むのかやってみせる、そのあと構文解析をやる。表層構造をシンプルセンテンスに分解して見せるのである。変形生成英文法を簡便に用いるのがいいようだ。
2回の授業で教科書26ページ分を読み終わった。章と章との間に挟まっている文法問題は本文を理解できたら独力でやれるから、塾の授業でいちいちやる必要がない。学校の授業が復習になるが、多少複雑と思われる構文は全部深層構造に分解して解説してあるから、学校の授業が「お子様ランチ」に見えてくる。
生徒が言うには「2週間で終わりそう!」、そんなに早くは全部読みきれないだろうが、3週間で教科書1年分は消化できる。
あとは短編小説か簡単な論説文を教科書の10倍量くらいやれば、進研模試で偏差値60は軽く超えるだろう。英語が嫌いでやりたがらなかった生徒が、塾へ来て1年が経ち、ようやく変わり始めた。真ん中程度の英語の成績の生徒が半年後にどういうことになるのか、教えるほうもドキドキワクワクである。(笑)
これから1年間でずいぶんな量を読むことになるので、進研模試偏差値70はクリアできるかもしれない。苦手の英語を得意科目に変えて、とりあえず英語の偏差値だけは早慶レベルを超えよう。この生徒は数学が今回最上位のガンマクラスへアップした、ずっこけながら滑り込んだのは運がよいからだろう。危なっかしくてみていられない。
ここまで持ってくるのがたいへんで、ここから先は楽だ。嫌がる馬に水を飲ませに池まで引いていく必要がなくなったからだ。自分で池まで行って、たらふく水を飲めばよい。
< 余談-1 >
「折り紙」の章を学校の授業でやりはじめたが、ずいぶん簡単だったと言っていた。内容がちゃんとわかるようになると、授業が楽しくなる。
努力する ⇒ 実績が出る(成績が上がる) ⇒ 自信がつく ⇒ さらに努力できるようになる ⇒ さらに成績が上がる ⇒ ・・・・・ ⇒ ・・・・・
こういう好循環過程に突入すればあとは螺旋状の階段を駆け上がることになる。塾の役割はほとんど終わっている。テクニックの伝授だけでよい。受験テクニックではありません、英語の場合はちゃんと英文が読めるまっとうなスキルを育てることです。そのまま国立大の2次試験対策になります。
< 余談-2:個別指導 >
高2の生徒に教科書の読解指導をしているときに教室にいたのは5人。中2一人、中3一人、高2が二人、高3が一人である。
中2の生徒が連立方程式の問題をやっていた。中3の生徒は英語のワーク(教科書準拠問題集)と数学のワーク、因数分解の複雑な問題をやっていた。高2の生徒のうち一人は数Ⅱの二項定理の展開問題、もう一人がこの生徒、そして高3の生徒が数ⅠAの問題集をやっていた。質問が次々に飛んでくるから、その合間をみながら、高2の生徒に読解指導。個別指導だからこんなやり方ができる。
一人、元気のよい中3が昨日入塾、今日が2回目、部活に熱心だが、勉強のほうのガッツもなかなか。2年先輩の帯広南商業へ進学した生徒を髣髴とさせる、昨年学年トップだったそうだ。
さっさと3年生の問題集を済ませて、数Ⅰと'Grammar in Use' をやりたい。エンジン全開にさせたらどれくらいの速度が出るのか楽しみだ。週2回だが、やる気があり、ちゃんとやる生徒だけ2倍の4日間の出席を認めている。
70% 20%
#3095 やった、数学の問題集全部解き終わった! July 30, 2015 [62. 授業風景]
〈更新情報〉
7/30 朝6時45分追記: 「11時から6時半まで」「余談-1」「余談-2」
根室の夏は日本一涼しい。今日の最低気温は高めで15.5度、最高気温は13時の24.6度である。
中1の生徒の一人からこんな要求があった。
「夏休みになったら、毎日11時にいっていい?」
「いいよ」
この生徒は土日に事情があって家庭学習時間がとれない。首都圏の中学生に比べたら、家庭学習時間は半分である。これは大きなハンディとなっているから、そろそろそうした障害を取り除いておかなければならない。どんなに許容しても後1年間だ。根室で学年一番をとればいいだけなら、それでもいいが、目標としているところが違う。
私は胃袋と体力がないので、昼寝はしないといけないし、2時間半おきくらいに食事も必要だから、べったりついては教えられない。幸いなことによくできる生徒だから難しい問題にぶつかったときに質問に答えるだけでいい。実績だと7時間半の授業で5回くらいだ。必要と判断したら高校の範囲まで教える。
(学校の夏休み期間中は生徒はだれでも3時から7時までは来ていいことにしている。7時20分からレギュラーの授業が入っているので、7時までは見てあげられる。レギュラーの授業のある日に来ると3時から9時まで6時間勉強していい。)
その中1の生徒が、今日「中1数学シリウス」の問題を全問やり終わった。時間の1/4くらいをやさしすぎる学校の宿題処理に充てて、数学の問題集を毎日10~12ページやり抜いた。終わったところで、ガッツポーズ。
「先生、おわったよ!」
「なかなかいい追い込みだった、よくやった」
区切りのよいところで、この生徒は明日から4日間お休み。シリウスシリーズはそれほど難しい問題が載っていない、北海道の塾用教材である。自分の実力が有名私立高校受験でどれくらいのものか、受験用の「難問題集」を一冊やらせて認識させておく。1学年たったの60人では全国レベルを考えると競争はないも同然。
根室市内に限定しても、10年前なら(学年生徒数90人で)5番以内に入るのも危ぶまれるのが現在の学年トップの生徒たちの実力だ。各中学校は学力テストと定期テストの学年トップ5の五科目合計点数を過去10年分、廊下に張って知らしめたらいい。
(ついでにデータを書きとめておくと、私の母校の花咲小学校は当時1学年6クラス360人(全校生と1700人)だったが、昨年の新入生は39人、今年は32人、どちらも2クラス編成になっているから、クラスのサイズは1/3以下、学年生徒数は1割に激減、競争もへったくれもあったものではない。市内の小学校と中学校はさっさと2校に統廃合すべきだ。通学は無料のマイクロバスで送迎してやればいい。費用は道に負担させよう。統廃合は教員削減による人件費負担軽減で、道庁にメリットが大きいから、送迎バスを運行させることぐらい呑むだろう。)
ニムオロ塾は個別指導だから、生徒の学習速度と進学先に合わせたスケジュールをひいて指導している。
この生徒の数学の学習スケジュールは、来年3月までに中2の問題集をやり終え、中学を卒業するまでに、数Ⅱをやり終えることにしている。今のペースだと数Bを中3で終えるのは無理があるが、土日に勉強できる体制になれば手が届く。高校1年のときに数Bと数Ⅲをやり終え、あとの2年間は難問集にチャレンジ。2年前になるが、もっと速度の大きい生徒がいた。1年生の3学期には3年生の数学をやっていた。二年になる直前に、転校して行った。こういう生徒たちを同じ学年で競わせてみたい。1学年最低100人の規模を確保しなければ、なかなか成績上位層を競わせることがむずかしい。
英語は高校1年からジャパンタイムズ記事を教材に使う。科学・医学・経済・健康などの分野の記事をピックアップして精読トレーニングをさせる。大学レベルの授業を予定している。
問題は国語で、読書があまり好きではない。私の分類法*によれば、nonA∩B∩nonCタイプの生徒である。日本語の文章を読んでもイメージがわかないが、論理的な文章は読める、しかし複雑な概念相互の関係に関するイメージ化能力はまだない。
英文の読解力の基礎は母国語であり、日本語のかなり難易度の高い本が読めない者に、同様なレベルの英文も読めるわけがない。
岩波新書や中公新書が専門書の入門書として最適だから、哲学・言語学・医学・健康・経済学・政治学・思想・歴史学などの分野から、10冊程度ピックアップして音読トレーニングに付き合ってあげようかと考えている。いまやっている音読テクストは斉藤隆著『読書力』である。書きなぐったと思われる文章で勢いはあるが、かなり校正が甘い、しかし内容はしっかりしている。それが終われば藤原雅彦『国家の品格』、そして林望『すらすら読める風姿花伝』を予定している。ここまでは他の塾生も一緒だ、速度が違うだけ。そこから先は30冊くらいのリストと本棚にあるものは現物を手にとって生徒自身に選ばせたい。
嫌々やっても効果はないから、本人にその気がなければやるつもりはない。中学生になっても自覚が生まれず、やらなければならないことに好き嫌いを言い出すようでは見込みはない、我慢する力を鍛えよう。
この生徒は他の数人の塾卒業生たちとともに、自分の仕事を通じてふるさと根室をある分野でしっかり支えてくれる。団塊世代のebisuは、ふるさとに希望の芽をいくつか残しておきたい。そのために2002年の12月にふるさとに戻って塾を開いた。世のため人のためという希望は意外とかなうもの。将来どこに住んでもいいのだよ、高校を卒業すると同時に根室から出て行った人も、住みついたところで一人ひとりが仕事を通じてその地域と日本を支えたらいい。
(HNふくろうさんが、似た生徒がいるとコメント欄に書き込んでくれている、励みになるでしょう、生徒に伝えます。感謝)
*〈余談-1〉
私の分類法を説明しておく。該当箇所を抜粋しておくので、4つの「イメージの力」の記事を参照してもらいたい。
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言葉からイメージを創れるタイプをA型、創れないタイプをnon-A型、数直線や図形を頭の中に想い浮かべて処理することができるタイプをB型、それができないタイプをnon-B型と分類したい。
もう一つ特別なタイプがある。文章を読みながら諸概念を構造物のようにイメージできる能力がそれである。言葉と言葉、異なる専門用語同士の関係を立体構造物を眺めるようにイメージできる能力をもつ者は稀だ。この能力をもつ者は、もたない者としばしば会話が成立たない。なぜか?同じイメージを共有できないからである。
A型 ⇔ non-A型
B型 ⇔ non-B型
C型 ⇔ non-C型
3組で各組2つだから、全部の組み合わせは2^3=8である。学力の点から言うと、
non-A & non-B & nonC ⇒ 最弱
A & B & C ⇒ 最強
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*#2593 イメージの力(1):ピアニスト&作曲家加古隆の原風景 Feb.14, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-02-14
#2595 イメージの力(2): 6タイプに分類 Feb.16, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-02-16
#2597 イメージの力(3):Aとnon-A型について Feb. 16, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-02-16-2
#2734 イメージの力(4):言葉のイメージ化トレーニング July 16, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-16
*#3041 コミュニケーション能力とは何か?(1) May 10, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-05-10
#3042 コミュニケーション能力とは何か(2) :<事例-2> May 12, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-05-11
<7/26 ポイント配分割合変更>
70% 20% 10%
<余談-2>
ポイントの配分割合を変えたので、日本ブログ村の「根室情報」セグメントの順位が3位に下がっています。その代わりに、「日本経済」で6位をキープしています。
1月に経済学の論文を書いてアップしていますが、この数日、追加記入やらカットやら校正やらと手を入れてます。
マルクス『資本論』の公理公準を書き換え、日本の伝統的な仕事観に基づいた21世紀の経済学の全容を明らかにしています、興味のある方はご覧ください。カテゴリー「資本論と21世紀の経済学」をクリックすれば出てきます。これからも折に触れて関連記事を付け足していきます。
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*#2935 『資本論』と経済学(1):「目次」 Jan. 25, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-25
#2947 『資本論』と経済学(11) : 「労働観と仕事観:過去⇒現在⇒未来」 Jan. 29, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-29-4
#2948 『資本論』と経済学(12) : 「公理書き換えによる21世紀の経済学の創造」 Jan. 29, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-30
#2950 『資本論』と経済学(13) : 「経済学体系構成原理は四つ」 Jan. 31, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31-1
#2951 『資本論』と経済学(14) : 「第1の公理を巡って:マルクスの労働観と日本人の仕事観」 Jan. 31, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31-2
#2952 『資本論』と経済学(15) : 「対極にあるもの:ヨーロッパ労働観⇔と日本の仕事観」 Feb.1, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31-3
#2953 『資本論』と経済学(16):「日本人の仕事観:仕事は楽しい!」 Feb.1, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-01
#3073 高校生の哲学への関心度 July 5, 2015 [62. 授業風景]
<更新情報>
7/6 朝10時追記 英語の長文読解力の基礎は岩波新書レベルの本の読書量にあり。
7/6 17時追記 脳を使いすぎると筋肉の「炎症」と類似の症状を起こす。若いうちに負荷をかけなかった脳に30歳を過ぎて郷土の負荷をかけるのは危険な場合もある。脳が疲れて心が折れるのである。脳とこころはつながっている。
土曜日の高校生の授業は学校再準備作業で全員が登校しているから、休むものが多かった。夕方、明治公園で仮装ダンスの練習をしたクラスも少なくなかったようだ。
生徒は学校の進学講習で使っている英語の問題集をやっていた。最初は文法語法問題、それを終わると長文(?)問題。たったの1ページほどの分量でも「長文」というのだから苦笑い。たくさん読まないと読めるようにはならない。百題くらいピッくアップして辞書を引いて精読し、クリアファイルに保管して何度もやってみたら、長文の出題パターンに慣れる。週にたったの1題解いても2年間で百題になる。これを繰り返せば十分だ。
「長文」を読むのが辛くなったようなので15分ほど休憩を入れた。3時間ぶっとうしはきついのだろう。
全力でのめりこむと時間なんて矢のように飛んでいく。脳のエンジンがフルパワーになるとそういう快い「瞬間」が訪れる。周りの音と時間の感覚が消失してしまう。βエンドルフィンが大量に脳から分泌されるのだろう。繰り返すことで、そういう状態を自分の意志で創り出せるようになる。むずかしい問題に集中しているとき、難解な専門書を読んでいるとき、なにか難解な問題を考え続けているときに、プログラミングをやっているときにそうした状態になる。だから、高校生の時期には、自分の現在のレベルを超えるものにチャレンジすべきだ。そうした過程を通して脳の働き方が変わる。脳は質量を持った物理量ではあるが、大事なのはその「働き」である。よい脳は自分で創れるということ、いや自分にしか創れない。難解な問題を考え続けることが脳を鍛える。将棋の7冠王の羽生善治さんは江戸時代の詰め将棋の百題難問集を一月かけて全問を自力で解いたという。大数学者の岡潔も旧制中学の時代に数学の難問題集を解いている。易しい問題ばかりやっていたのでは、脳は鍛えられない。そういう意味では脳は筋肉に似ている。鍛えれば鍛えるほど発達するのである。
(若いうちなら負荷をうんとかけても、脳が柔軟だから受け止められるが、30歳を過ぎる辺りから厳しいかもしれない。使いすぎて「炎症」を起こしたり、筋肉の「断裂」のような現象を起こすことがある。情緒不安定になったり、躁鬱病を発症することがあるようだ。脳が疲れて心が折れた状態だから、そういう時は自然に触れて、脳を休ませなければならない。脳とこころはつながっている。)
会話文を除いて、センター長文で出てくる文は書き言葉ではあるが、ネイティブの中学生程度のものが大半。高校生の読み物にしては内容は幼いレベルだろう。2次試験は大学の専門課程で読むような本から採録している場合が散見されるので、一般的には内容のレベルが上がる。そのときに重要になるのが、中・高校生の内にそうした専門書または入門書程度の読書をどれだけこなしたか量が問われる。新潮社の百冊は文学だから、まったく不十分で、岩波新書レベルの本は最低50冊は読んでおきたい。そういうレベルの読書経験が内容の濃い長文を読む際に読解力の基礎となっている。
フランスの高校生は哲学が必修科目であるから、難解な文を読まざるをえない。科学の普遍的な方法を扱ったデカルト『方法序説』は哲学書でありながら国語の教科書に収載されているという。デカルトは「デカルト平面」の考案者であり、数学者でもある。理系だ文系だなどという仕分けをしてしまったら何が起きるのか?『方法序説』は哲学書だから国語のテクストとしては扱えない。デカルトはデカルト平面の考案者で数学者だから、国語の教科書には採録できないなんて馬鹿な話がまかり通ることになる。論理的に文章を読むためには実に重要な示唆が「科学の四つの規則」に含まれているのに、もったいない。ユークリッド『原論』も冒頭部分の解説を国語で扱ったら論理的思考に実に役に立つ。文系・理系の区別が、そうした異分野クロスオーバを阻んでしまう。
フランスでは成績の良い生徒は哲学という教科を通して文章読解力が鍛えられると説明したら、「哲学の本がありますか」と訊くので、数冊本棚から引っ張り出した。
ヘーゲル『精神現象学』、デカルト『方法序説』、ヘーゲル哲学の解説書数冊を隣の机の上に積み上げた。生徒は何冊かめくって、パス。ちょっとむずかしいものを出しすぎたようだ。岩波講座哲学は18冊あるが、わたしだって高校生の時にこのシリーズは読んでいない、なにしろこの本の第1巻が発売されたのが1967年11月で、ebisuが根室高校を卒業した半年以上後のことだった。もちろん、新宿紀伊国屋書店で発売と同時に購入した。『精神現象学』を買ったのはさらに数年後のこと。
(解説書のイポリット『ヘーゲル精神現象学の生成と構造』は学部のゼミの指導教授であった市倉先生の翻訳である。朝まで翻訳をしていて、午後の授業で眠そうなことが何度かあった。眠そうですねと訊くと、「イポリットの翻訳をしていたら空が明るくなっていた」なんてことをおっしゃった。)
今日になって、ずっと軽い哲学入門書があったことに気がついた。「世界で一番やさしい哲学の本」と銘打ったヨースタイン・ゴルデル著『ソフィーの世界』である。これは中学生にも読める哲学の入門書だ。実際に塾生で一人だけ読んだ生徒がいる(現在高校三年生)、今週見せてあげよう。
哲学は歯が立たぬと思ったか、そりが合わぬと思ったか、生徒は「先生、心理学の本ある?」と訊いてきたので、フロイト『著作集1』を引っ張り出して見せた。これは食いつきがよさそうだった、内容は精神分析の入門書である。顕在意識と潜在意識を分析したもので、夢と神経症の分析が行われている。心理学の古典的名著であり、フロイトによって心理学は精神科学としての自己の領域を確立したといっていいのだろう。フロイトの異端の弟子のW.ライヒの著作が数冊ある。性的エネルギーであるリビドーの抑圧が神経症を生み出す過程が分析されている。社会心理学としてはライヒに『ファシズムの大衆心理』(上・下2巻)があるが、これも本棚に並んでいる。ライヒのこの著作を挙げてエーリッヒ・フロムがかすんで見えるという人もいる。しかし、ライヒの真骨頂はオルゴンエネルギー研究にある。
「面白そうならフロイト、もっていって家で読んでいいよ」と伝えると、リックサックに入れてもって帰った。
他に、臨床心理士の「聞く技術」の解説書が数冊ある、ハウツーもので読みやすいので見せたらどういう反応を示すだろう。
生徒たちが、いつ、何に興味をもつか先生にも生徒自身にも予測がつかない。何気ない話を糸口に、突然哲学や心理学に興味を抱いたり、物理学や数学が面白いと思ったり、古典文学に関心をもったり、コンピュータサイエンスにのめりこんだりする。
書斎にさまざまな分野の専門書があるというのは、そうした生徒たちにとっては「触発」の機会が増えていい。なにより、そうした生徒たちの興味の広がりを目撃するわたしが楽しい。
12年前にはじめたこの小さな私塾はようやく思い描いた形に近づいており、ふるさとに存在するだけでも意味があると自負している。体力の限界に突き当たるまではなかなかやめられない。
わたしがもっているのは1967年版の「岩波哲学講座」18巻である。第一巻は「哲学の課題」というタイトルになっている。岩波書店は1987年に哲学講座新版を出しているので、そちらを紹介する。(旧版は入手困難のため)
日本人の書いた哲学書を2冊紹介する。和辻哲郎訳の懐奘の書いた『正法眼蔵随聞記』はebisuにも理解できるが、道元の著作は何度読んでも分からない。読んだだけではわからない種類の本で、修行が必要だ。リストに上げた本はすべて本棚にあるから、塾生が手にとって読むことができる。仏教は本来は宗教ではなく、哲学というのが正しいように思える。生・老・病・死からの魂の救済にもなるから宗教であると受け止められたのだろう。
豆粒よりも米粒よりももっともっと小さい小さい粒の知性の持ち主のebisuが思うに、お釈迦様は人類史上最高の知性の持ち主である。初期仏教経典群を読むと無限に透明な知性の光が感じられる。お釈迦様の智慧の働きには限度がない。スッタニパータ(『ブッダの言葉・スッタニパータ』岩波文庫 中村元訳)やダンマパダや阿含経典などの初期仏教経典群を読むと良く分かる。それらも、本棚に並んでいる。
わたしの書棚には阿含経典初版の単行本が全冊(6冊)揃って並んでいる。これは手に入りにくいので同じものが文庫になって発売されているので、そちらを紹介する。
阿含経典〈1〉存在の法則(縁起)に関する経典群 人間の分析(五蘊)に関する経典群 (ちくま学芸文庫)
- 作者:
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/08
- メディア: 文庫
阿含経典〈2〉人間の感官(六処)に関する経典群・実践の方法(道)に関する経典群・詩(偈)のある経典群 (ちくま学芸文庫)
- 作者:
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/09
- メディア: 文庫
阿含経典〈3〉中量の経典群/長量の経典群/大いなる死/五百人の結集 (ちくま学芸文庫)
- 作者:
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/10
- メディア: 文庫
#3063 緯度・経度・時差の問題 :さて、どう教えようか? Jun. 19, 2015 [62. 授業風景]
市街化地域の中学校は18日が期末テスト(or 前期中間テスト)。1日で終わるところと、2日やるところがある。
補習時間にテスト勉強しに来た生徒の質問を捌いていたら、時差の問題の質問があった。以下はそのコメントを元に書き直したものである。
*ブログ「情熱空間」:「やっとスタートラインに立ったか?」
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/7999166.html#comments
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中2の生徒が、時差の問題をやっていた。質問が出たので、緯線と経線、緯度と経度をきちんと理解しているかどうかをチェックしてみる。
小学校高学年で本を読まない子は、国語辞典も引かないし、ましてや漢和辞典など引くはずもない。経緯と書いて「けいい」「いきさつ」と読むことも教えておきたい。ものごとの経過やこれまでのなりゆきを現す言葉だ。白川静『字統』で「緯」を引くと、もともとは城郭の上下を左右に巡る形」とある。
熟語は基本漢字でできているものがほとんどだから、2000字ほどの基本漢字を漢和辞典で引いた子どもは、本を読むのに苦労しない。組み合わされている漢字を見ただけでおおよその意味が了解できる。どの分野の専門用語も基本漢字でできているところが日本語の優れている点である。基本漢字を理解していれば、どんな分野の本でも読めるのである。英語はそれぞれの専門分野の専門用語を1000~2000語程度は知っていなければ専門書を読むことができない。ラテン語やギリシア語の接頭辞・語幹・接尾辞で専門用語ができているからだ。
ところで時差の問題は、緯度と経度の区別がつかないと位置が定まらないから計算できない。経度には東経と西経の区別があり、緯度に北緯と南緯の区別がある。ロンドン(グリニッジ天文台)を基点に、東側と西側それぞれ180度に経線が引かれている。日本でつくられたメルカトル図法の世界地図は日本が中心なので、時差の説明の時には、英語表記の世界地図を使うことにしている。黒板にマグネットでとめてグリニッジがロンドンにあることを確認する。この地図だとロンドンが世界地図の真ん中に来ているので、時差の説明がしやすい。地図を見ながら、頭の中に世界地図を描く訓練、イメージ造形トレーニングは女生徒は苦手で、男子は得意な者が多い。脳の大きさ(男女差がある)が関係しているのだろう。だから、女の生徒と男の生徒には空間イメージに関連する事項は説明の仕方をそれぞれ工夫しないといけない。
最近は児童書以降は本を読まない生徒が増えており、日本語の基本語彙を知らない生徒が多いので、緯線の緯は「よこいと」、経線の経は「たていと」の意味とこのあたりから説明しないといけない。
地球儀だと縦糸は赤道付近では平行線だが、北極と南極で交わる。球を平面図で表現すること自体に無理があり、メルカトル図法の地図では経線は平行線となっているが、地球儀では平行線が北極と南極の二点で交わるという不思議な現象に気がついてくれたら楽しい。
平行線が交わらないというのは平面幾何学の話で、球面幾何学では平面幾何学の平行線公準が覆るのである。ヒルベルト『幾何学基礎論』で非ユークリッド幾何学では平行線公準が成り立たないことに言及している。興味があればリーマン『幾何学の基礎をなす仮説について』も読んでみたらよい。後者はわたしにはさっぱり分からなかった。
英語表記の世界地図には経線が15度単位で引かれているから、時差を考えるときにはカウントがしやすい。地球を北極上空から眺めると、赤道で円が描かれている。「360度÷24時間=15度/時間」となり、15度で1時間時差が生じることがわかる。地理にも数学が役に立つ。
たとえば、「ロンドンと日本の時差は何時間か?」という問題にはこの世界地図を見ながら経線の数を数えるだけでいい。9本目にロンドンがあるから時差は9時間。
ニューヨークは西経75度だが、経線の本数は14本目にあるから、時差は14時間。それを確認してから、計算に入る。東京とロンドンが135度あり、ロンドンとニューヨークが75度あるので、東京-ニューヨークは「135+75=210度」離れている。「210度÷15度/時間=14時間」、単位も計算に入っていることを理解させたい。
「度÷(度/時間)=度×(時間/度)=時間」
それに、地球の中心から赤道を零度として半球上に角度を取れば、横糸の緯度が360度ぐるりと円を描くことになると説明すれば、空間イメージを頭の中に描くことのできる男子生徒のごく一部が理解できる。
日本語の分からない生徒に、緯度や経度を教えるのも、時差を教えるのも、きちんとやろうとしたらなかなかたいへん。
学校の先生も苦労しているのだろう、日本語の分からない生徒が増えているからね。漢和辞典くらいは小学校高学年で引く癖をつけよう。学校と家庭で協力してこういう課題に取り組まないといけない。もっとも、本を読まなければ知らない漢字に出会うこともないから、辞書を引くはずがないね。
(社会人になったときに困るよ、上司の話が理解できない、仕事で必要な本が読めなかったら、きちんとした社員の仕事は任せることができないから一生アルバイトになりかねない。学力の低い者が増えれば地域経済はがたがたになる。)
地球儀をイメージして、北極-ロンドン-南極を通る面で割った円を描くと、地球の中心から0度が赤道で、日本の明石市が北緯35度のところにあることが分かる。根室の落石岬は北緯40度付近にあるから、地図帳を広げてみたらいい。
北極上空から見ると、平面の円に見える地球は同心円状に緯度の円が並んでいる。北極を中心にロンドンを通る経線を0度とすると、左(東)側135度に兵庫県明石市があり、落石岬はぴったり145度。180度は太平洋上にあることが分かる。日付変更線は180度付近にジグザグに引かれており、「極東」の日本付近からはじまっている。なぜ日付変更線がジグザグに引かれているのかもチェックポイントの一つだ。東の端っこにある日本は、世界時間で見ると一番早く夜が明けることがわかる。
日本が夜明けの5時には、東経75度のインドのデリーはまだ真夜中の1時、8~9時間の時差のあるヨーロッパ諸国は午後9時か10時である。西経75度のニューヨークは14時間の時差で午後3時。
ここまでしっかり理解しておけば、時差の基点を東京からロンドンやニューヨークに移してもプラスにするかマイナスにするかは簡単に判断がつくだろう。
本を何冊か紹介しておきたい。
『百万人の数学』(上下2巻・筑摩書房)はたいへん楽しい本だ。地球や天体を数学的に眺めたらどうなるのか。円周率は?などいろんな疑問に答えてくれる本だ。中学数学がわかれば上巻のほうは読めるが、下巻は高校数学が前提だ、中高生はトライしてみたらどうだろう。紹介する本は全部ニムオロ塾の本棚にあるから、塾生は手にとって見たらいい。
ハイキングが趣味だったから、関東周辺の地形図が数十枚ある。
百万人の数学〈上〉 (1969年) (筑摩叢書)
百万人の数学〈下〉 (1971年) (筑摩叢書)
学の体系としてのマルクス『資本論』を研究するために必要があり読んだ本である。学の体系としては数学が唯一2400年前に成功している。
わたしがもっているのは1977年版のもの、当時の定価8500円。
ユークリッド原論 追補版
ユークリッド幾何学の公理・公準の特殊性は非ユークリッド幾何学の公理・公準と対比して明確になる。学の方法論としてはユークリッド幾何学が普遍的なものだが、公理・公準は対象が何かで変わるもの、この点が経済学研究にとっても重要なファクターとなる。マルクス『資本論』に対していかなる経済学を対置するのかがわたしの経済学研究のライフテーマ。それはすでにカテゴリー「資本論と21世紀の経済学」にシリーズ論文としての体裁で、四百字詰め原稿用紙300枚分をアップしてある。ピケティの『21世紀の資本』は分配論で現状の資本主義の矛盾を緩和するだけのもの。古典派経済学以来の経済学体系を根本から問い直したものではない。ヒルベルトの『幾何学基礎論』は経済学研究にとって、読むべき重要な文献。
幾何学基礎論 (1969年)
絶版になっているので、筑摩学芸文庫のほうを紹介する。
幾何学基礎論 (ちくま学芸文庫)
幾何学の基礎をなす仮説について (1970年)
幾何学の基礎をなす仮説について (ちくま学芸文庫)
地図は楽しい。日本地図センターから地形図の取り寄せ方法。5万分の一や2.5万分の一の地形図には番号が振られている。地形図の読み方は山登りやハイキングをする人たちは必ず身につけておきたい技だ。慣れてくると地形図の各地点から景色を眺めたときの三次元イメージを頭に思い浮かべることができるようになる。
世界各国には用途にあわせてさまざまな種類の楽しい地図や美しい地図がある。海外の製薬メーカで美しい地図をつかったカレンダーを出しているところがあった。一時もっていたが、それらは棄ててしまった。
地図を歩く手帳 (1980年)
地図から旅へ (講談社文庫)
地図-「遊び」からの発想 (講談社現代新書 (671))
山登りやハイキングを趣味にしたい人は、ぜひ読んで欲しい。
入門講座 2万5000分の1地図の読み方 (Be‐pal books)
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