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#3934 釧路/根室でいずれ起きる上場企業の出現:大きな流れを読む Feb. 19, 2019 [11. 中小企業家育成コラム]

<最終更新情報>
 2/20 夜11時

 弊ブログを書き始めてからすでに12年が過ぎたが、繰り返し、この地から上場企業を生み出すことが地域経済の閉塞状況を打破するために必要だと説いてきた。それぞれステージと業種の異なる3社の株式上場に社員として仕事でかかわった経験からの言である。

 釧路と根室の企業はこれから人材確保で苦労することになる。都会の標準とはまるでかけ離れた閉鎖的な経営の会社が多いからだ。優良な会社になっていい人材を採用するには、地元企業が自ら経営改革をしなければならない。そうしたときに上場基準をクリアすることが一つの基準となるだろう。
 いつまでも閉鎖的で、社長一族だけがおいしい思いをしているような企業は人材確保ができなくなって行き詰まる。だから、生き残るためには経営改革が必須の時代になってきた、少子高齢化が釧路と根室の企業に経営改革を迫ることになる。道内のほかの地域だって同じだ。
 だから、オープン経営へ舵を切れなんてもう言う必要がなくなった。舵を切らない企業は優良な人材確保ができずに勝手に沈んでしまう。経営改革できた会社が永続する。凡庸な経営者ではやっていけない冬の時代へ季節が変わりつつある。

 実際の上場準備作業に入るにはメインバンクには当然話がいく、話を聞いて具体的な段取りを説明することができなければ、メインバンクを変えなければならない。段取りの概要説明を聞いたら、幹事証券会社を決める、幹事証券から担当者が派遣されてきて、プロジェクトが立ち上がり、上場要件に合わせて社内の制度改革がスタートする。地元金融機関は証券会社とお付き合いしていたほうがいい。
 地元金融機関の役割が大きく変化するのではないだろうか。いままでやったことがない株式上場アシストという営業戦略がビジネスの柱になり、ビジネスチャンスがうまれるということ。既存顧客の株式公開を手伝うことで、株式上場を果たして事業をスケールアップしてくれたら、優良な新規顧客の開拓の十倍の効果がある。
 取引先企業の株式上場を支援し、増資と借入をバランスよくやってもらえば、預金獲得と融資の両方でビジネスが拡大できる。株式上場をすれば、その企業は数十億円のお金を手にできる。個人の預金獲得ではたかが知れているが、法人相手の大型の預金獲得ができる。大手都市銀行のやっていた営業戦略である。

 株式上場と言っても、特別なことをするわけではない。会社決算を社員へ公表する、内部統制を明確にする、品質管理部門を工場から独立した本社直轄部門とする、社内諸規程を整備する、予算制度を整備しその精度を上げる、そういう経営の仕組みづくりで基本的なことを徹底的にやるだけ

 地域経済の大きな変化は1社が株式上場したそのあとに起きる。上場する企業だけではおさまらない、規模の小さい企業でも上場企業並みのオープン経営に切り換えられたら、都会へ進学した若者たちが、地元の優良企業へ就職したくて戻ってくる。地元に上場企業があれば、それを自分の目で見て経営スタイルの真似もできる。真似ているうちにいつかそれは本物へと変わる。上場企業が地元に一社出現すれば、それは富士山のようなもので、すそ野にそういう可能性をもった小さな会社の群れができるということ。地域経済の活性化にとてつもない大きな影響が及ぶことになる。教育への関心も自然に高くなる。市民の意識が根っこのところから変わるからだ。

 わたしのいた会社SRLでは、東証一部上場したとたんに社員募集への応募が1万人に跳ね上がった。その年の採用はたったの20人だった。会社の知名度も信用度も飛躍的に上がり、とくに人材募集に関しては事情を劇的に変えてしまう

 12年前に根室の経営者たちに先見の明があり、時代の変化の兆しに気がついて取り組んでいたら、もう根室で上場企業が姿を現していただろうオーナは数十億円の自社株をもち、従業員持ち株会で、従業員たちの持ち株も高い評価額になる、そういう企業を根室市民が自分の目で見ていただろう。残念ながら、オール根室のメンバーは補助金や「ふるさと納税」が大好きで、自助努力が嫌い。楽をして経営改革を怠っていたらろくなことにならない。閉鎖的な経営に閉じこもり、頑迷固陋、時代の先が読めなければ、時代の変化についていけない時が来る。
 先を見る目があれば自滅する前に経営改革できる。地元に上場企業がないので自分の目で見たことがない。20年ほど前の時点でもSRLでは古い社員なら管理職でなくても5000万円ぐらい自社株を保有している人がざらにいた。多い人で課長職で3億円というのがいた。
 時代の先を見る目があったら、未来を手元へ手繰り寄せることができる。目がなければ、30年かかってしまうか間に合わずに自滅していく。

 my company から our company へいずれ、この地にも上場企業は誕生する、それはそういうニーズが優良な人材確保という一点から大きくなっているからだ釧路・根室管内で上場企業が出現すれば、経営改革しない閉鎖的な企業へにとっては弔いの鐘となるだろう。優良な人材は地元の上場企業へと流れる、この流れはとても強いから、ほかの企業はますます人材確保が厳しいものになる。
 上場企業の本社が釧路あるいは根室にあれば、上場企業の社員がどういうものが実例を日常生活で見聞きすることになる。年収、退職金制度、予算制度やボーナスの違いも目の当たりにする。小学生だってそういう企業に勤める家の子と付き合いが始まる。目の接触が始まる。実際に自分の目でみたら考えや意識が変わるだろう。実例が一つ二つと増えていけばいい。上場企業の出現によって地域社会構成メンバーの意識が根底から変わる


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#3192 先例から学ばぬ地元企業の未来はどうなるのか Nov. 29, 2015  [11. 中小企業家育成コラム]

【起】
 11月22日の北海道新聞に「生かせ海の幸 ④外国人実習生 その後」という記事が載っていました、ご覧ください。

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生かせ海の宝
 4 外国人実習生その後
     母国で日本のPR役に
dd.hokkaido-np.co.jp/cont/tsunagaru-asia/2-0033184.html

10月下旬、秋サケ漁が最盛期を迎えた根室市。水産加工会社カネヒロの工場で、サケ切り身加工や包装に黙々と取り組む女性たちがいた。ベトナムからやって来た外国人技能実習生だ。作業員約110人のうち彼女らは20人。同社社長で根室水産協会会長 ... は「彼女たちがいなかったら根室の水産加工業は成り立たない」と語る。...
================

【承】
 この記事を読み思い出したことがあります。
 ずいぶん昔、団塊世代のebisuが小学生のころの話です。根室の町は昭和30年代に全盛期を迎えていました。そのころタラバガニがとりすぎて、水産加工場で処理できず、冷凍設備もないので海へ投棄していた時代でした。足を伸ばして持ち上げると1.5mもあるような巨大なタラバガニがたくさん混じっていました。いま買おうと思ったらどれくらいするのでしょうね、3万円はくだらないでしょう、そういうタラバガニを年に10回は食べられたのです、その茹でたてのおいしいこと。獲れすぎると処理しきれず従業員の皆さんが食べるために持ち帰るか棄てていたのです。大きなものだと関節一つ分の棒肉は30cmほどの長さがありました。子ども心に当時は水産資源が無限にあるような気がしていたものです。高度経済成長の波というのは人間の感覚を狂わせてしまうようです。穏やかな成長の中でなければ正常な心は機能しなくなるのではないでしょうか。
 根室には北海道最大の水産加工会社、日本合同缶詰株式会社がありましたが、それが昭和50年代に倒産します。直接のきっかけは富良野に出した野菜缶詰工場・事業の失敗ですが、その前から経営破綻の兆候が出ていました。
 本社はイエスマンばかりで忍び寄る危機に鈍感でしたが、現場は敏感でした。昭和30年代中ころから工場に女工さんが集まらなくなり始めたのです。
 4工場に女工さんと男工さん合わせて800人ほどが働いていました。地元のお母さんたち、青森や道南からそして根室管内の各地からの中卒の出稼ぎ女工さんたちであふれていました。琴平神社のお祭りには、男工さんの金棒のシャンシャンという音がぴたっと揃って実に見事なものでした。あれは腕力がなければできない技です。女工さんたちの行列も華やかでした。町には活気が溢れていましたが、そこが頂点だったのです。
 昭和30年代中ごろになると、道内各地にさまざまな工場ができ、まず女工さんが集まらなくなりました。本社と工場現場に溝ができて、愛想をつかして工場運営の扇の要の役割を果たしていた男工さんたちがぱらぱらとやめて道内の他の地域へ去っていきました。女工さんが集まらなくなっているのに経営改革をまったくしようとしない本社にあきれて、仕事に希望がもてなくなったのです。そのころは女工さんたちは土間に2段ベッドの宿舎に寝泊りしていました。そういう居住環境の改善すら現場の意見が通らない有様でしたから、道内のほかの業種で女工さんの寮が充実していけば、そちらへ就職するのは当然です。
 道内のほかの工場と処遇に格差が広がったら、人は集まらない。集まらなくなればやっていけなくなるのはモノの道理です。モノの道理がわからない人が根室の地元企業経営者に多いことは今も50年前も変わらない。モノの通りは、周りの雰囲気に呑まれていたら頭の中から飛んでいってしまいます、基礎学力と広い教養を武器にして地に足つけてじっくり考えてみないとわからないものです

【転】
 もうずいぶん前から根室の水産加工場には中国人の技能実習生がたくさん入っていました。わたしが古里に戻ってきた2002年の11月にはすでにスーパーで集団で買い物をする中国人が普通の風景になっていました。ところがそれが変わり始めました。根室市長がベトナム秋刀魚輸出で旗を振り、それに迎合した水産加工業数社がベトナム人を雇い始めたのです。中国人の減少は中国国内の賃金が上昇し、日本の水産加工場への出稼ぎの魅力が相対的に薄れたこともあるでしょう。その隙間を埋めるようにベトナム人が増えました。
 こうして根室の一部の水産加工業者は経営改革の絶好のチャンスを失ったのです。
 人手が足りないというのは経営改革をしないと破綻に追い込まれるというシグナルで、改善のチャンスだったのです。そういう大事なときに市長がベトナムへの秋刀魚輸出という旗を振ってしまいました、実にまずいタイミングでした。中国人もベトナム人も、滞在2~3年の技能実習生です、ベテラン女工さんたちの技能はいったいだれが受け継ぐのでしょう?
 根室の水産加工場は60-70歳代のおばちゃんたちの技能で品質管理が維持されています。そういう人たちが、退職し始めています。30年、40年と同じ仕事を続けてきたから、その技能は半端なものではありません。魚を真空パック詰めするときに、形が不ぞろいだったりすると、ベテランのおばちゃんたちは瞬時に判断して、入れ替えます、そういう目配りができます。各生産工程でさまざまな品質管理上の技能があると聞きました。ところが水産加工場には60歳代以上のベテランのおばちゃんたちから技能を受け継ぐ20歳代、30歳代の若い人がほとんどいません。水産加工場には技能を受け継ぐしっかりした若い人がほしい。
 工場に地元の若い人が就職しなければ、そうした技能が引き継げません。年齢を考えると地元の若い人たちに長年培った技能を引き継げる期間はあと10年余にすぎません。そうした貴重な十年をベトナム人の技能実習に費やせば、十年後に会社がどうなるかは想像がつきませんか?
 将来、品質管理技能のかなりの部分が失われ、品質が落ちます。消費者は品質に敏感ですから、売れなくなるとか、品質低下に応じて値段を下げなければならなくなります。資源量が減少することを考えると、水産加工業者にとって、品質低下は致命傷になるでしょう。
 水産資源量の減少を予測して、根室は付加価値の高い高度な加工技術の開発をしなければなりません。11月15日に開催された「教育シンポジウム北海道」でJA浜中農協の石橋組合長は「地方の農業にこそ大企業に勝る優秀な職員が必要」だと仰っていましたが、根室の水産加工業にも同じことが言えませんか?

【結】
 技能伝承が可能な期間は長く見積もっても十数年しかありません。
 ここからは新聞記事が取り上げていた会社の話ではなく、一般論ですから、思い当たる企業が多いでしょう。
 同族経営で役員のほとんどが自分の家族、そして従業員の処遇を省みない、それでは地元の高校を卒業した若い人たちが就職したがるはずもありません。
 経営改革は当たり前のことを、当たり前にやるだけですが、それが痛い。やれば生き残るチャンスが大きくなりますが、当面の痛みがなかなか我慢できない、そんなありさまでは「わがままっ子」と同じレベルです。

 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」+「従業員よし」

 給与規程や退職金規程、経理規程を整備してその通りに運用します。あの会社の社長は公私混同をしないちゃんとした人物だと周りの人たちが認めます。
 事業分野のどこに重点を置いて伸ばしていくのか長期計画やビジョンを従業員に語ってほしいと思います。
 長期目標を達成するために予算制度を導入して決算を従業員や取引先に公表しましょう。業績がよければボーナスを弾むと約束し、予算達成のときの配分予定額を従業員へ周知徹底します。従業員のことをちゃんと考えている正直な会社だということを経営者が行動で示します。
 毎年度末には社員全員に今退職したら退職金がいくら支給されるのか文書で通知すればなおすばらしい。狭い地域ですから「あそこはいい会社だ」とすぐに評判になります。勤める親だって自分の子どもを就職させたくなります。
 それくらいのことができなくてどうします、優秀な人材を確保したかったら、それくらいの企業努力は当然です。経営改革のやり方のわからない地元企業経営者はebisuをお訪ねください、教えてさしあげます。
 ebisuは株式上場に3回立ち会った企業経営の専門家でもあります。こんな経験をした人間は北海道では一人だけでしょう、この経験智は根室の未来を切り拓く武器になりえます、古里のためにほしいという人だけにお分けします。(笑)

 ebisuの目から見たら従業員が20人以上いるのに、決算すら公表していない企業は論外です。そういう閉鎖的な企業には少子高齢化の加速する根室ではもう若い優秀な人を集めることができないでしょう

 従業員の処遇改善努力と同時に経営改善努力をすれば人は集まりますから、経営のしっかりした優良企業は外国人労働者を雇う必要がありません
 経営改革をやらずに低賃金の外国人で間に合わせようなんて安易なことを考えていると、日本合同缶詰株式会社の二の舞になりますよ。わたしには安い労働力としてベトナム人の技能実習生を受け入れている水産加工会社が日本合同缶詰と同じ運命を辿りつつあるように見えます。

 市政に関与しすぎると安価な労働力としてベトナム人雇用などという判断ミスが起きます、先を見ない聞くも愚かな話です。そういうことをちゃんとわかっていて、市政から距離を置いているまともな水産加工会社もあることを付け加えておきます。


 閉鎖的で経営改革努力をしない地元企業に若くて優秀な人は集まりませんから、その未来は危うい。この地で生き残りたかったら、経営改革は必須条件です。若い優秀な人たちが競って就職したくなるような地元企業が増えてほしいと願っています。夢と希望をつなぐことのできる仕事を提供できる優良企業がふるさとに増えれば、人口減少はとめられるのです。

 異論、反論は、コメント欄へどうぞ m(_ _)m



―余談―
《パトリオティズムのススメ》
 パトリオットとは古里を愛し祖国を愛する者という意味です。パトリオティズムは偏狭なナショナリズムとは違います。地元経済界にパトリオットが「増殖」してほしいと願っています。
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*#1029 『現代語訳 帝国主義』幸徳秋水著・遠藤利國訳 May 16, 2010
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-05-16

#1030 nationalism とpatriotism :遠藤利國訳・幸徳秋水『帝国主義』May 17, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-05-17

【抜粋】
 前回のブログ*で遠藤利國訳・幸徳秋水著『帝国主義』を採り上げたが、そこにナショナリズムとパトリオティズムは異なる概念であると書いた。
 数学者藤原正彦のナショナリズムとパトリオティズムの二つの用語の使い分けについて『国家の品格』から該当箇所を引用して補足しておく。

「愛国心」ではなく「祖国愛」を
 私はいつぞや、アメリカ人の外交官に「お前はナショナリストか」と訊いたことがあります。そうしたら、「オー・ノー」と否定されました。そこまではよかった。
 ところが「パトリオットか」と訊いてしまった。そしたら「もちろんだ」といって今度は怒り始めた。自分が生まれ育った祖国の文化、伝統、自然、情緒をこよなく愛することは、当たり前中の当たり前である。外交官でありながら、そんな質問をされたことを侮辱ととったのです。明治になってから作られたであろう愛国心という言葉には、初めから「ナショナリズム」(国益主義)と「パトリオティズム」(祖国愛)の両方が流れ込んでいました。明治以降、この二つのもの、美と醜とをないまぜにした「愛国心」が、国を混乱に導いてしまったような気がします。言語イコール思考なのです。
 この二つを峻別しなかったため、戦後はGHQの旗振りのもと、戦争の元凶としてもろとも捨てられてしまいました。わが国が現在、直面する苦境の多くは、祖国愛の欠如に起因するといっても過言ではありません。・・・ 私は愛国心という言葉は、意識的に使いません。手垢にまみれているからです。そのかわりに「祖国愛」という言葉を使い、それを広めようと思っています。言葉なくして情緒はないのです。(藤原正彦著『国家の品格』114ページ)

  『国家の品格』が260万部も売れているのは単なる流行だけではなく、しっかりした論が展開されているからだろう。 

 手元にある辞書2冊をみると定義は次のようになっている
Nationalism: 2 a great or too great love of your own country
Patriotism: When you love your own country and are proud of it
     (Cambridge Advanced Learners Dictionary)

Nationalism: 2 the belief that your nation is better than other nations
Patriotism: strong feelings of love, respect, and duty towards your country
     (Macmillan English Dictionary)

 ナショナリズムはtoo great love of your own country(度を越した祖国愛)だったり、他国を省みない排他的なニュアンスがあるが、パトリオティズムにはそういう負のイメージはなく、生まれ育ったホームタウンへの素朴な郷愁や誇りにすぎないしかしそれも程度問題で、容易に排他的愛国主義(ジンゴイズム)へと転化しかねない危うさももっている。
 Patriotism can turn into jingoism and intolerance very quickly. 


 現代語への書き換えを担当した遠藤さんは、1975年当時早大大学院で哲学専攻し、ヴィトゲンシュタインを読む傍ら、ギリシア語やラテン語を勉強していた。私は彼のそういう姿勢にいい意味であきれてしまった。流行を追うと同時に流行から離れて長大な迂回生産をはじめていたのだ。西洋哲学の諸概念を検討するにはラテン語やギリシア語をやらなければ、深いところで疑義がどうしても出てしまう。正直な遠藤さんは、いい加減なところで自分をごまかしお茶を濁すことができなかったのだろう。あの当時のわたしの目には異色の人物に映っていた。

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#3067 ロシア200カイリ内サケ・マス流し網漁:先手必勝 Jun. 25, 2015 [11. 中小企業家育成コラム]

<更新情報>
6/26 10:50 追記
6/27 10:10 「水産資源減少に備える提言ができなかった地元経済諸団体」、他追記
6/27 15時 「村抜け」のススメ 追記
6/27 16:45 「反骨精神と改革意欲のあるリーダを推し立てて・・・」 追記
6/28 8:45 シーズン終わりの羅臼沖ジャミサンマの大量捕獲は翌年の漁にどれくらいの影響があるのか? 追記  
(物置の寒暖計は5度をさしていた、超さむい!ここ数日、どんどん気温が低下していく、どうなっているの?)
6/30 8:50 番頭を育て、自分と同等以上の報酬を支払え


 この問題はすでに3回取り上げている。根室市政は漁業会社や水産加工会社のほうしか視野にないようで、雇われ漁師や水産加工場で働く人たちのことが考慮されていない。長谷川市長も市民の10%に満たぬ根室「村」の住人たちも、この期に及んでも「村」の利害しか考えられないらしい。「オール根室村」の村民の皆さんの中には自分の損得をこえてふるさとのために一肌脱ごうという人が必ずいる。子どもや孫のために、それぞれの団体を牛耳っているふがいないリーダたちを見限ってさっさと「村」抜けするか、反骨精神と改革意欲のあるリーダを推し立てて反旗を翻したらよい。ふるさと根室の未来が懸かっている。

 こういう問題が起きると、政府にお定まりの補助金要請を繰り返すだけではいかにも能がない。来年は全面禁漁が確定だと漁業関係者たちが嘆いている。「考えてもしようがない」とあきらめ顔の漁船員がテレビのインタビューに応えていた。来年は来年の風が吹く、状況に応じてどうするか決める、いまから決めようがないというのが本音だろう。息子に後を継がせられないと考える漁業会社のオーナも出始めている。
 これが根室の情けない現状である。だが、あきらめる必要はない、ピンチはチャンスだ、オーナーも漁船員もみんなで具体的な対応戦略を考えよう。

 根室の漁業は北の海の水産資源を食い荒らしてきた、羅臼と歯舞の事例をすでに挙げた(#3056)ので再説しないが、50年たっても変わらない。
 かてて加えて根室市政もまた十年あるいは二十年先を見て仕事をしてこなかった。根室の未来を慮(おもんぱか)り乱獲防止を根室管内の各漁協に働きかけたり、意見具申したことがない。お互いに、都合の悪いことは言わないように、閉鎖的な根室「村」を維持し、そうして未来の選択を誤った。10%に満たぬ、「オール根室村」がいつまでも市政を壟断していると根室の町の未来はお先真っ暗だ。
 水産業を主力としていながら、地元経済諸団体も一つとして漁協に乱獲禁止や資源管理の重要性を説いたところがない。水産業で成り立っている町だから、だれも漁業者にモノが言えぬ。
 水産業が崩れたら、地元経済の基盤が崩れ、あらゆる業種に深刻な影響があることが明々白々でありながら、水産資源が小さくなったときへ向けての備えについて具体的な提言がなされたことはない。歴代の市長も経済諸団体も市議会も、各漁協に対してふるさとの未来を考えてきついことを言うべきだった。人材の枯渇と「村」の存在がそのような建設的な提言への大きな障害であり続けたのである。そうした状況の中で水産資源はこの50年間減り続けた、最初がカニだった。

 昭和30年代には北海道最大の水産加工会社、(株)日本合同缶詰傘下の4工場ですらも処理しきれない量のカニの水揚げがあり、海へ棄てても、漁を休まなかった。カニの仲買で食べている人たちも多かった。いまから見れば乱獲によって貴重なカニ資源を食いつぶすおろかな行為だったのだが、当時の根室ではそれがいいことのように受け止められていた。欲に目がくらみ資源管理の智慧がなかった。根室人の金銭欲とロシア人の金銭欲が北の海のカニ資源を食いつぶしたのである。昭和30年代終わりから40年代は越境してやる密漁は毎年莫大なお金(100億円前後?)を生み、船外機を3基もつけた高速密漁艇の乗組員は「特攻隊」と称していた。その結果この60年間で領海内のカニ資源は激減し、特攻隊も姿を消した。
 それに加えて、近年ではロシア側の漁具が充実してロシア人によるロシア領海内のカニとウニの密漁が増えた。密漁して根室花咲港に運んでくれば、莫大なお金を生んだ。ロシア人の密猟者は密漁でもうけたお金で根室で漁具を調達していた。ロシアと日本の関係者にはじつに美味しい話、持ちつ持たれつだったのである。こうして今度はロシア領海内のカニとウニが激減した。まずはじめに北方海域の日本領海内のカニ資源が激減し、次いでロシア領海内のカニ資源が激減したのである。
 わたしは欲に目がくらんで資源を食いつぶすことに加担した個々の関係者を非難しているのではない、根室の漁業がそうした枠組みや構造の上に成り立っていたということが言いたいのである。それはいまもあるから、そうした構造を壊し、根室の町に別な枠組みを作らなければ未来が展望できないとと言いたいのである

 根室の未来にとっては水産資源管理が死活問題なのに、ロシア(官)と根室(民)の間で、水産資源管理について話し合いのテーブルすらない。こういうことこそ市政が関わるべきである。根室市政は肝心なことをせずに、ベトナムへのサンマ輸出に熱心だった。水産業界の一部がそれに追随したのだが、大局がみえない者たちだけだろう。「いままで市役所が言い出すことにろくなことはなかった」からと距離を置いた賢明な業者もいる。
 カニの後はサケ・マス、そしていま羅臼でホッケが激減しつつある。
 サンマの未来は大丈夫か?漁期の終盤に羅臼沖でのジャミサンマの捕獲は量を制限すべきではないのか?シーズン終わりになって、なぜ羅臼沖にジャミサンマが大量にいるのか、羅臼沖で大量にジャミサンマを捕獲することが翌年の漁にどれほどの影響があるのかなどまったくわかっていない。根室管内の漁協にはそうした資源管理上必要なサンマの生態系調査に関する問題意識すらない。このようなありさまを続けていて根室の水産業の未来があるのだろうか?
  根室市内だけみていたのではダメで、根室市政は根室管内のリーダとして発言し、行動しなければならないのだが、根室管内4町に背を向けている。ゴミの広域処理の問題でも、町役場・市役所職員採用一括選考でも協力姿勢の片鱗もなく4町に背を向け続けている。これでは根室管内ですらリーダシップがとれない、器が小さすぎないか?

 根室管内の漁師たちと北方領土のロシア人たちの欲と欲がからみ、これでは水産資源がもつはずがない、次々に枯渇していくのは当然である。欲望の自己規制ができなければ、水産資源で食べていける次の世代は半減する。

 今日(6/25)の北海道新聞根室地域版の記事にはホッケの資源が激減したことが報じられている。
 羅臼のホッケは2005年、2009年、2010年には8000トン弱の水揚げがあったが、昨年(2014年)はわずかに966㌧である。今年はいまのところ昨年の6割減で、羅臼漁協に記録が残る1961年以来最悪の不漁を記録しそうである。新聞記事によれば羅臼では干したホッケが1枚1200円もしている。羅臼の美味しいホッケはすでに庶民の口に入る魚ではなくなった。次はサンマかもしれない。

 乱獲ということもあるだろうが、海水の表面水温の変化も関係があるだろう。頭を使って水産資源の状態を監視し、頭を使って欲望を自制して漁をしないと適切な資源管理ができない。
 タダとってくればいい略奪産業の時代はとっくに終わっているのである。欲望の自制と水産資源管理に旗を振るリーダが根室管内の漁業組合には一人もいなかったということ。人材の劣化こそが漁業の町の資源枯渇の真の原因とは言えないだろうか。そろそろこういうところに焦点を当てて、人材育成をしないといけないのではないのかね。

 サケ・マス流し網漁の漁期は6月と7月の2ヶ月間である。金額が高いから主力の商品でもある。根室水産物の柱はカニ、サケ・マス、サンマ。カニがとっくに乱獲で漁獲量が減少し、主力商品から外れてしまった。そこへサケ・マスの打撃である。まずは漁期の分析だ。

 サケ・マス 6~7月
 サンマ   8~11月中旬

 この二つの魚種で雇われ漁師は5.5ヶ月間稼ぐことができる。昔は半年船に乗れば、後の半年は陸に上がって遊んで暮らせたが、水産資源が年々細ってしまった現在ではとても暮らしていけないから、多くが出稼ぎにでる。
 ロシア200カイリ内のサケ・マス流し網漁が来年から全面禁漁になれば、サンマの3.5か月分しか稼ぎがなくなるから、通年雇用先を見つけた者から船を下り、家族と共に移住を決意することになる。
 前回試算したが中型船の出漁禁止だけで280家族程度がその条件に当てはまる。全面禁漁になれば、450家族ほどが根室を出て移住を検討せざるをえなくなる。
 水産業が主力の町だから水産加工場で働いている人たちも多い。雇われ漁師の数の数倍いるから、連鎖反応が起きる。

 塾に通えなくなる生徒も出るし、進学をあきらめざるを得ない生徒も出る。家業を継ぐことをあきらめる船主の長男も。

 泣き言ばかり言っても始まらぬ。このまま地元企業が次々につぶれてもらっては困る。来年から禁漁になることを前提に戦略を練るべきだ。禁漁になるのはカムチャッカ沖の北洋だけではない。国後島の西側と択捉島の東側の漁場も禁漁になる。サケ・マスだけではすまないだろう。問題点を挙げてみる。
 
■ 6~7月の北洋サケ・マス漁がなくなる穴埋めをどうやるか
■ サケ・マスで売上の30%がなくなるとしたら、どういう工夫をしてその穴埋めをするか
■ 船員や水産加工場の雇用維持はどうやるか
■ ベテランが大量にやめた後の品質維持をどのようにやるのか

 お先真っ暗ではないよ、ハッキリしているのは工夫をしない漁業会社や水産加工会社だけが淘汰されていくということだ。頭を使って長期経営戦略を練り、しっかりそれを実現できる会社だけが生き残る、ピンチはチャンスだ
 補助金なんてもらっても一事のことだ。地元企業の経営者は補助金に頼らなくてもなんとかできるような工夫をしよう

 息子がいたら、大消費地の東京の大学に進学させたらよい、道内ではダメだ。大消費地の首都圏を四年かけて自分の目で見て来い。夏休みや冬休みは魚に関係のある業種でバイトをさせよう。あらゆる機会を捉えて大消費地の東京に「人のネットワーク」を築け。
(道内でも北大水産学部ならいい、後を継ぐ子どもを北大水産学部か東京の大学に進学させよう)

<「利己心はすべての過失と不幸の源泉である」・・・ことわざ>
 根室に何が必要か、何が不足しているのかは少し頭を使えばすぐにわかるし、そのラインをたどっていけばしぶとく生き残る道も見つかる。必要なものを手に入れるには、頭を使わなければダメだ。企業経営能力のない2代目、3代目でもやれた時代は終わったということ。しっかりした能力のある者が事業を継承しない地元企業はつぶれていく。優れた人材を「番頭」として使い、自分と同等以上の報酬で処遇できたらその企業は永く栄えるだろう
 自分の家族だけを大事にして、従業員の幸せを省みない経営者とその企業は人材が集まらずに淘汰される。
 この難局にどう対処するのか、具体的なビジョンを従業員に語り、そこに向けて従業員を引っ張っていこう。
 いま足りないのは高度な加工技術、販売チャンネル、大消費地の人脈、そしてこれらの仕事を担うに足る智慧と人材である

 根室の町の人口は減っていい。大幅に減れば、水産資源を大事にすれば人口2万人以下の町なら、みんながそこそこの所得を維持して食べていける
 大幅な人口縮小を前提に町の将来ビジョンを創れ、先手必勝。

<今日6/26出漁>
 新聞報道によれば、ロシアからの許可証が届き、今朝北洋サケ・マス流し網漁の船が港を出た。小型船のみの出漁で、中型船は出漁取りやめ。
 ここ数日、異常低温で最高気温が10度に達しない。最低気温も5~7度。北洋の海には寒い風が吹いている。いい漁がありますように。


*#3056 ロシア200カイリ内サケ・マス流し網漁禁止:閉鎖的な漁協と市政 Jun. 6, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-06-06

 #3058 サケ・マス流し網漁禁止法案ロシア下院通過 Jun. 11, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-06-11

 #3060 ロシア200カイリ内サケ・マス流し網漁 1962トンで妥結 Jun. 12, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-06-12

 #3067 ロシア200カイリ内サケ・マス流し網漁:先手必勝 Jun. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-06-25


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*#195「少し過激な北方領土返還論」MIRV(多核弾道ミサイル)開発・組み立て・解体ショー
ロシアをぎゃふんといわせ北方領土を返還させるための具体論
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-06-07


 #1892 映画「マーガレット・サッチャー」と北方領土 Apr. 6, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-04-06

 #2050 竹島と北方領土 :韓国大統領の竹島上陸にどう対抗する?  Aug. 10, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-10-2

 #2053 マーガレット・サッチャーと領土問題(2) : 北方領土・竹島・尖閣列島 Aug. 14, 2012
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-14

 #2054 マーガレット・サッチャーと領土問題(3) : Aug.16, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-16

 #2095 おろかな領土紛争:白人支配終焉のチャンス
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-28

  #2097 中国や韓国と如何に付き合うべきか
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-29

 #2050 竹島と北方領土 :韓国大統領の竹島上陸にどう対抗する?  Aug. 10, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-10-2

 #2053 マーガレット・サッチャーと領土問題(2) : 北方領土・竹島・尖閣列島 Aug. 14, 2012
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-14

 #2054 マーガレット・サッチャーと領土問題(3) : Aug.16, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-16

 #2095 おろかな領土紛争:白人支配終焉のチャンス
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-28

  #2097 中国や韓国と如何に付き合うべきか
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-29


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*#2935 『資本論』と経済学(1):「目次」 Jan. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-25

 
 #2974 『資本論』と経済学(28):「注ー6」と主要文献リスト Feb. 14, 2015  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-13-1

 #3015 人工知能の開発が人類滅亡をもたらすホーキング博士(資本論と経済学-補遺1) Apr. 2, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02


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#2970 根室市の人口減少対策 Feb.11, 2015 [11. 中小企業家育成コラム]


 昭和40年代は若者の流出数が最大になった、そして流入が減少し始めた時期にあたる。その傾向はいまだにやまない。「広報ねむろ2月号」の裏表紙に2015年1月1日現在の根室市の人口が載っている。

 28,050人(-499 前年同月比)

 根室の人口減少数は加速している。昨日の北海道新聞23面に総務省が公表した2014年の人口移動報告の釧根管内版が載っていた。根室市の転入数は795人、転出数は1143人で、差し引き-348人で、釧路市のー941人に次いでいる。三番目は中標津町の-115人(転入1093、転出1208)である。

 このデータからみると、根室は転入が少なく、転出が多い町だ。なぜそうなるかははっきりしている。町に若者の職が少ないからで、根室の地元企業の経営努力と経営能力が足りないということに尽きる。
 経営能力の基本は基礎学力である。地元に残る者たちの教育をおろそかにしてきた根室の姿が浮かび上がる、それは今も変わっていない。地元企業経営者の経営改善に関する勉強会がいくつあるだろうか?学ぼうとする姿勢がなければよくならぬ。
 根室市政は地元企業のいくつかと癒着しているから、お互いに批判はしない。改善は現状を否定するところからはじまるから、批判のないところに改善・改革の芽は育たぬ。市と取引の大きい地元企業の有力者が市の諮問委員会の委員長をやるようでは、小さな小さな村と化してしまう。村の利害を優先して動くと、改革の芽がでてこない。

 地元で若者に十分な職がなければ、地元企業に魅力がなければ、勤務条件が悪ければ、若者たちは流出する。若者の絶対数が減少すれば、少子化は避けようがない。根室の少子化は出生率の問題ではなく、出生数の減少が問題なのだ。地元企業経営者が若者に夢を語り、それを共に実現する努力をして、成果配分を語れなければ、人口減少はとまらない。

 これも同じ日の道新根室地域版に載った記事である、見出しは

 「出会い、結婚、子育て支援 滋賀少子化対策一元化」

 根室市はあらたに少子化対策推進室(仮称)を設置するという。根室振興局が「道内でも珍しい試みではないか」とコメントしている。

 企業というのはさまざまなチャンネルで人々や他の企業とつながっており、公共財でもあるから、私物化してはいけない。自分のことだけ考えてはいけない、社員や従業員の幸福も、わがことのように考えるべきである。そういう企業に優秀な若者は集まる。

 地元企業の経営改善という根本には触れず、子育て支援の強化で人口減少が下げ止まるならこんな簡単なことはない。


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#2840 いい会社を創ろう:地域活性化の決め手  Oct.16, 2014 [11. 中小企業家育成コラム]

 10月15日10分間の番組、NHKビジネス展望から「日本で一番大切にしたい会社大賞」(法政大学大学院坂本光司教授)を紹介する。

 「日本で一番大切にしたい会社とは5人の人を大切にする会社である。その5人の人とは、
1.社員と社員を支える家族
2.外注さん、仕入先、協力会社の人とその家族
3.お客様
4.地域に住んでいる方で社会的に弱い人、たとえば障害者や高齢者
5.出資してくれた株主

 トヨタ自動車は二番目の条項に抵触するから、この基準に照らしたらいい会社とは言えない。高収益の大企業でこの条件をクリアできるのはほんとうに数が少ない。この二十年間で役員報酬を2倍に上げて、社員給与を据え置いているような会社もダメ会社。まず社員の給与を上げてからそれ以下の比率で役員給与を上げよう。優先順位を間違えている会社が世の中には多い。

 この賞には応募条件が五項目ある。
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過去5年以上にわたって、以下の5つの条件に該当していることとします。

(1) 人員整理、会社都合による解雇をしていないこと(東日本大震災等の自然災害の場合を除く)
(2) 下請企業、仕入先企業へのコストダウンを強制していないこと
(3) 障害者雇用率は法定雇用率以上であること(常勤雇用50人以上の場合)
(4) 黒字経営(経常利益)であること(一過性の赤字を除く)
(5) 重大な労働災害がないこと(東日本大震災等の自然災害の場合を除く)
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 黒字経営を続けるには非凡な経営力が必要だ。リストラして人件費を削り利益をあげるような会社もダメ会社だから、そうはならないように経営努力しよう。

 審査基準は5人をほんとうに大切にしているか否かの25項目、その中からいくつか紹介したい。
■社員の残業時間が10時間以内
■会社の経営情報をすべて社員に公開していること
■全社員が66歳まで働くチャンスがあるかどうか
■仕入先の支払は現金でやっているか
■障害者の雇用比率(2%以上)や正社員の雇用比率
■給料は普通以上に支払っているか

 対象企業は大企業部門と中小企業部門に分かれており、経済産業大臣賞、中小企業庁長官賞などさまざまな賞がある。
 3.11東北大震災・福島第一原発事故以来、応募が増えてきている。すでに4回賞が贈られている。自薦・他薦、条件に合えばどちらでもよい。「あの会社は社員を大事にしているいい会社だから賞をあげてほしい」と他薦が増えている。

□ 企業の目的は人を幸せにすること
□ 人を大切にしている企業ほど業績が安定し、業容が拡大している

 メンタルヘルス不調者が増えているのは、企業の経営の仕方に問題があるからで、人を大切にすれば社員の精神的な安定も得られる。
 ここまでが坂本光司教授の解説である、坂本教授の専門は経営学。

 26年後、2040年に根室の人口は1.8万人を割っている。今までどおりの経営を続けたら、根室の地元企業の半数以上が消滅し、人口減少は加速してしまうだろう。
 地域に社員とその家族を大切にする企業が増えたらその町は活性化し、人口減少を止められる
 根室の地元経営者の皆さん、勉強会を開いていい会社を創りふるさとに貢献しませんか?
 いろんな事を知り、吸収して現実に応用するには、基礎学力が不可欠、自分の頭で考える力も強くなくてはならぬ。地元に残る者たちほど一生懸命に勉強してもらいたい
 まず大人たち(とくに地元経営者)から始めよ、そして背中で子どもたちに範を示せ
 このニムオロの町の活性化や人口減少を食い止めることは、ここに住む私たちの責任だ。自分達の町は自分たちが変えよう


*「日本で一番大切にしたい会社大賞」応募要領およびホームページ
http://www.taisetu-taisyo.com/



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#2825 地元企業はこうやって生き残れ Oct. 3, 2014 [11. 中小企業家育成コラム]

 中国進出企業の業績が二極分解しているという。内陸部に工場がつくられ始めて沿海部の都市へ労働力の供給がへり、毎年賃金が10~20%アップしている。労働者の確保ができなくなっているというのである。業績を伸ばしている企業経営の要点はたった二つだ。
①高付加価値商品開発力がある
②労働者の意欲や能力を高める仕組みをもっている

 どういうことかというと、中国や東南アジア諸国の製品の品質が上がってきて、価格競争では勝てなくなったので、高付加価値商品開発力のない企業の業績が悪化し始めている。
 高付加価値商品開発力は労働者の意欲や能力を高めてこそ、初めて実現できる。
 そのためにどうしているかというと、
①従業員に決算情報を公開する
②ボーナス配分を明言する(例えば経常利益の三分の一)
③5S運動を徹底する
④小集団活動を組織し、改善提案をあげさせる

 中国進出企業ですらこういう経営の自己改革をやらなければ生き延びられない時代なのである。日本の中小企業家同友会全国協議会も従業員とその家族を大事にする経営へ舵を切ることが、生産年齢人口が急速に縮小する中で、良質の労働力を確保して生き残る唯一の道だと喧伝し始めている。
 退職金規程や経理規程、人事規程などをつくり、オープン経営へと舵を切れば人口が1.8万人を割る2040年になっても地元企業の多くが生き残れるだろう。舵を切れなければこの町の人口減はさらに加速する。地元の若者に安定した職が提供できなければ町の衰退が加速するのはあたりまえのことだ。

  念のために書いておくが、上記の事がらは必要条件であって、十分条件ではない。
 市政と癒着するような経営をしている民間企業、は内緒ごとが多く閉鎖的な経営スタイルになりがちだ。職員のコネ採用が大手を振ってまかり通るような閉鎖的な市役所では町にも市役所にも未来がない、放漫財政が祟っていつか夕張市のように財政破綻、大リストラになる。舵を切るならいまの内だ、手遅れにならぬように早いほうがいい。
 根室の中小企業家同友会や商工会議所は組織として舵を切るのか切らないのか、議論を積み重ねてはっきり決めたらいい。いまのままの経営スタイルでは約半数の地元企業が2040年には消えてなくなっている。衰退が支配する未来を選ぶのか、希望の光のある未来を選ぶのか、子供たちや孫たちのことをよく考え、自分の損得はひとまず脇においてしっかり考えよう。


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<参考:5S運動>ウィキペディアより
http://ja.wikipedia.org/wiki/5S

名前は、5項目のローマ字での頭文字がいずれもSとなっている事に由来する。5Sに基づいた業務管理を5S管理5S活動などと呼ぶ。

整理(せいり、Seiri)
いらないものを捨てる
整頓(せいとん、Seiton)
決められた物を決められた場所に置き、いつでも取り出せる状態にしておく
清掃(せいそう、Seisou)
常に掃除をして、職場を清潔に保つ
清潔(せいけつ、Seiketsu)
3S(上の整理・整頓・清掃)を維持する
躾(しつけ、Shitsuke)
決められたルール・手順を正しく守る習慣をつける

5S自体による効果は職場環境の美化、従業員のモラル向上などが挙げられる。5Sの徹底により得られる間接的な効果として、業務の効率化、不具合流出の未然防止、職場の安全性向上などが挙げられる。これは、整理整頓により職場をよく見るようになり、問題点などの顕在化が進むためであるとされる。
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<余談:優良な会社とダメ会社>
 ebisuは1978年から5年間勤務した産業用・軍事用エレクトロニクスの輸入商社で経営改革をした。売上高粗利益率を10~20%あげ、為替管理と業績をコントロールする仕組みを作り出して利益構造を変え、その利益を源泉に財務体質を変えた、そうしながら予算で利益配分まで決めた。内部留保と株主と社員で等分に分配することにしたのである。オーナ社長が中途入社2年目の社員の提案を呑んでくれた。
 粗利益のコントロールシステムは営業課長のEさんの力が大きかった。円定価制度と名づけ、複雑な価格設定の仕組みを「外貨決済および為替管理システム」と組み合わせてシステム化した。この会社は後に店頭公開を果たし、業績不振で数年前に同業他社へ吸収合併された。
 初代の社長はスタンフォード大学出、三井合同で戦後財閥解体の実務を担い、整理後職を辞して創業者が同級生だったヒューレッド・パッカード社の日本総代理店を始めた。二代目は慶応大学大学院経済学研究科卒だった。わからないものだ、会社を潰したのは東大出の三代目。私がいたころは学生だったから三代目とは顔を合わせたこともない。二代目に鍛えてもらったのだから、10年くらい三代目を支えて恩返しすべきだったのかもしれぬ。いろいろ事情があったとはいえ、その後の顛末を知るにつけ申し訳ない気がする。
 私が入社した頃は二代目社長が40代後半、三代目はたぶん中学3年生だった。それまでのビジネスモデルでは為替相場の変動に業績が左右され、赤字と黒字の間を行き来していた。青息吐息の状態で、経理課長は毎月の資金繰りに苦労していた。
 入社直後6つの経営改善テーマごとに役員中心のプロジェクトが編成された。そのうちの5つ(長期計画委員会、経営分析委員会、為替管理委員会、電算処理委員会、もうひとつは納期管理委員会(?)だったかな、記憶が怪しい)は私が実務を担当し、役員がそれに意見を述べるという形だった。利益重点営業委員会のみ担当外。二代目は私が入社する前からこの具体的なテーマでプロジェクトを編成する計画があったのだろう、そんなところへタイミングよく飛び込んだわけ。新聞募集、入社試験なし、昔はこのようにいい加減なもの。
 週に3日は終電で帰っていた。1回は営業部門や技術部門の同僚・先輩たちと飲み会。29~34歳まで、よく仕事をしよく飲んだ。仕事が楽しかった。本社があったのは日本橋小網町で、最寄駅は地下鉄人形町駅。周辺の小路には小粋な老舗が多かった。日本橋丸善まで徒歩10分くらい、洋書がそろっていたので仕事の合間に2時間くらいよく覗いた。システム関係や管理会計関係は日本で出版されたものでは時代遅れで間に合わなくなっていた。
 経営分析は月次・四半期・半期・年次で部門別予算実績対比資料と5年間の自社の決算データから5つのデメンションの25項目のレーダチャートを作成していた。標準偏差データを使い、理想値を組み合わせたものだ。2回だけ電卓でやったが、計算だけで丸1日以上かかる。入社1ヶ月したら、社長は米国出張のお土産に科学技術計算用のプログラマブル・キャリュキュレータHP67を買ってくれた。これで計算は30分ですむようになった。計算プログラムを組んだのである。データを入力してメモリーをチェック、あとはプログラム任せ。さらに2ヶ月したら、プリンタのついた卓上型のHP-97を買ってくれた。これは当時22万円もする高価なものだった。計算に時間を費やすほどばかばかしいことはない、こういうツールを使いこなすことで、他の仕事の時間が生み出せる。300ページほどもあるマニュアルが2冊、英文だった。幸いなことにHP社のマニュアルは実にわかりやすい英文で書かれているから、1週間で読みきった。最初に覚えたプログラミング言語だった。仕事で使うからすぐに慣れてしまう。これの経験があったから、1年後にはオフコンのCOOLというダイレクトアドレッシングのプログラミング言語を習得し、ついでPROGRESというコンパイラー言語でのプログラミングを習得した。併行して業務改善のために実務フローをデザインして、それぞれ独立の業務システム開発をやり、経営管理と統合システム開発の二つに仕事が絞られた。
 「覚えた技術は仕事で使って磨きをかけろ」

 中途入社したばかりのebisuにほとんどが役員ばかりの委員会でよくこれだけの仕事を二代目社長が任せてくれたと思う。社長も大学院で経済学を専攻したことがあったので馬が合った、二代目でなければ学者の道を歩んだのかもしれない。
 破格の仕事の任せ方だったが入社の経緯も関係したかもしれない。じつはある有名企業の社長面接が終わって子会社の経営を担当するかニューヨーク支店勤務かその会社で検討中だった。その前の会社が紳士服の製造卸の小企業で、社長面接した会社はそのファッション関係の企業で本社は青山にあった。紳士服と婦人服というジャンルの違いはあったが、同じファッション関係で仕事の手順の大まかなところはわかっていたから、まったく異なる分野の企業で勝負したいという冒険心が心の底にあったのだろう。
 書類を出していたこの輸入商社に電話で断ったら、総務・経理担当役員が「断っていいからとにかくおいで、社長にあわせるから」と言われた。会社にいって技術部門をみせてもらったら、世界最先端の産業用や軍事用のエレクトロニクス製品がゴロゴロしていた。社長室に通され、ニコニコ笑顔の社長に説得されて気が変わってしまった。当時の従業員数は200名ほどの中小企業だった。営業は国立高専出の一人を除き全員理系大卒、面白い会社にみえた。良質の(困難な)仕事が山のようにあってこそ能力は伸びるもの。あのころはチャレンジャーだった。
 円定価システム、納期管理システム、為替管理システムなど利益管理用のツールを次々に開発し、それを利用して利益を増大させると同時に業績を安定させ、財務体質を改善した。ボーナスを増やすと同時に内部留保を増やして、自己資本比率を飛躍的に上げた。同族会社でオーナの他に役員が株をそれぞれすこしずつ持っていた。そういう会社でもなんとかなるものだ。
 1984年に国内最大手の臨床検査会社に上場準備要員として転職して、統合システムを担当した。そのごいくつかの部門を経験してから子会社や関係会社の経営にタッチした。最後がテイジンとの治験合弁会社だった。どの会社の利益構造も大きく変えた。ふだんから勉強していないと仕事もチャンスは来ない。チャンスは困難な仕事と常にセットだ。ほとんど不可能と思える課題を見つけてチャレンジすればいい。若けりゃできないことはない、失敗から学んだっていい。チャレンジャーが数人いる会社は業績が大きく伸びるものだ。経営者が自分の懐勘定ばかりしている会社にチャレンジャーは集まらぬ。人を集めるにはオープンマインドとオープン経営が必要だ。
 会社の業績は経営者の能力次第であると思っている。業績不振の会社は経営者の能力がないと判断してよい。社員をリストラする会社の経営者の経営能力も疑っていい。業績を改善できたら質のよい社員を増やさないといけないからだ。そういう必要がない会社はペケ・マークがついていると判断していい。社員がしょっちゅう辞める会社もペケだ、そういう会社は常時人材の募集をしているからすぐにわかる。
 能力の高い若い社員に仕事を任せるチャレンジャブルな経営者が根室の地元企業に増えてもらいたい。やり方がわからなければebisuが教えてあげる。中小企業でも経営改革は上場準備作業とあまりかわらない。謙虚な中小企業経営者が根室に何人かいることを期待したい。

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#2744 社会人を創るという中小企業の役割 :立教大学経済学部教授山口義行 July 22, 2014 [11. 中小企業家育成コラム]

 山口教授は実例研究を積み重ねている学者であると同時に、スモールサンという中小企業サポートネットワークを主催している。フィールドワークの好きな学者のようだ。経済学的諸概念の関係とその体系化に焦点を絞って若い頃に研究をしていた私とはまったくアプローチが違う。抽象的な思考ではなく、事例研究や個別的事実の積み重ねで見えてくるものがある。演繹法に対して事例研究の積み重ねによる帰納法とでもいうとわかりやすいだろうか。大学院時代に増田四郎先生(経済学史・一ツ橋大学元学長)の学風に触れて、個別的事実の膨大な集積から物を言うアプローチのあることを学んだ。あのころ(1970年代後半に)書かれた著作に『地域主義』というのがあった。地域経済がダメになれば日本経済はもたない、地域の活性化に焦点を当てたものだった、一時は多数の経済学者が参加するうねりとなっていた。心配した通りの現実がいま起きている。院生三人で特別講義をお願いしたら増田先生がとりあげたテクストはリスト『経済学の国民的体系』だった。山口教授の事例研究は面白いものが多い。
 人は仕事をもって働くことで一人前の社会人となるのだが、中小企業がそういう社会人を育てる場となっている事例を、7月21日のNHKラジオ番組ビジネス展望でとりあげた。
*山口義行(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E7%BE%A9%E8%A1%8C

 とりあげられた会社は、愛知県にあるトラックのカスタム部品製造メーカで年商1億円、従業員数・数名だったが、現在は年商13億円従業員数30名の会社になっている。
 山口教授の中小企業サポートネットワークに社長の近藤さんが参加してきた。山口教授は年商の5%を使って新しいことに挑戦してみたらと伝えた。近藤社長は隣接事業のトラック中古販売業に乗り出し、その後業容が拡大していった。

 近藤社長は高校中退で単車を転がしてやんちゃしていた時期があった。中学⇒高校⇒大学⇒社会人というコースを踏み外した人は少なくないのではないか。この社長はそういう若者達と真正面から向き合い、仕事を通じて一人前の社会人に育て上げている。こう書くと簡単なように聞こえるかもしれないが、そうではない。

 社長が若い頃やんちゃをしていたことは回りの者たちが知っている。ハローワークに不良っぽい若者が来ると係りの人が、「近藤さん、面倒見てくれないか」と電話してくる。全部面倒見ているのだという。
 勉強嫌いで九九すら満足でない子もいるが、仕事を通じて三角関数までマスターするのだそうだ。部品取り付けに三角関数が必要になると山口教授は言っていたが、測定器を使うのに三角関数の知識がないとまずいのか、それとも直接測ることのできない部分を三角比をつかって計算するのか実務がよくわからない。とにかく、九九すら怪しい子達を受け入れ、三角関数を理解して仕事で使えるところまで「面倒見ている」ようだ。

<指導の要点は4つ>
①技術の進歩と仕事の進歩をあわせる
 技術が進んだら、それに応じた仕事を与える
 さらに技術が進んだら、それに応じた仕事を与える
②こういうことを繰り返すことで仕事に達成感を味わい、自信を深めていく
③ある段階に達すると、自ら進んでやるようになる
 新たな技術や仕事に挑戦してみたいと自分から言うようになる
④こういう過程を経て、ほとんどの若者達がかなりの技術水準に到達する

 技術が上がると仕事の難易度がそれに応じたものになるというのは、いろいろなな習い事と同じだ。
 例えば珠算、級があがると上がった級に応じて問題はむずかしくなる。それをクリアすると実力がはっきり上がっていくのが実感できる。書道だって、日本舞踊だって、ピアノだって、詩吟だってなんだってそういうものだろう。大工の仕事の覚え方にもよく似ている。職人仕事はみなそうしたものだ。腕が上がるといいものをやらせてさらに腕を磨かせる。難易度が次第に上がっていくとあるところからは自分で考えないと上達できないところへ至ってしまう。難易度の高い仕事をこなしていくことで、いろいろ工夫して腕を上げるが、そういう過程で職人としての物の見方や考え方がしっかり育っていくのだろう。横浜で一緒に仕事してお世話になった70歳過ぎの大工の棟梁は腕がいいだけでなくものごとの考え方がしっかりしていた。5人弟子入りして「(職人として)一人前」になったのは自分一人だけだったと修行時代の厳しさを実例を挙げてはなしてくれた。辛抱力のない者は途中で逃げ出し「半端職人」になってしまう。仕事だけではない、考え方も半端になるようだ。徒弟制度は厳しい修行を耐えて育ってくるものを選別する制度であり、優秀な職人を育てる仕組みでもある。だがそれでは、思春期に挫折したことのある若者を育てられない。ほとんどみんなが修行に耐え切れずに飛び出してしまう。
 山口教授の話しを聴きながら、この社長ただものではないとebisuは感じた。

<社長と若い人たちのコミュニケーション>
 誰にもほめてもらったことのない若者達だということが重要だ。社会に認めてもらったことがないからきちっとホメる。
 今日どうだったと毎日訊く、そして聴いた話の中からほめる材料を探してホメる、それが社長の日課。
 この点は学校だって塾だって似たようなもの。いい質問が出たら褒める、いい点が取れたら褒める、解き方が冴えていたら褒める、難問題が正解できたら褒める・・・

<指導>
 型にはめない、型にはめると嫌がって反発するか逃げ出す。会社に入ってすぐに仕事が面白いなんてことはないから、しばらく様子を見る。
 たとえば、毎日クラブへ出かける若者が居たとする。社長はこう言う。
 「おまえ、お姉ちゃんが大好きなんだろう?呑みに行くのにお金要るだろう?」
 「もっと早く稼げるようになったほうがいいよね」
 という風に指導するというのだ、見事なものだ。相手の行動を否定したりお説教するのではなく、視野を広げてやる、そこがコツだという。自分が今夢中になって夜遊びしていることと仕事がお金というものを通じてどのようにつながっているのかがわかれば、仕事に本気で身が入る嫁さんもらい、子どもができたら、家族に関心が広がるそして社会へ視野が広がっていくようになるそれが社会人ができあがっていくプロセスだと社長が言う

<社会人を育てる上で一番大事なこと>
 教材は自分自身、「自分も中卒で一時期は道を踏み外したが、会社を経営してそれなりに暮らしているのだから、おまえたちだったらもっとやれるはずだ」ときちっと伝えていく。
 近藤社長は山口教授の勉強会にもよく出てきて実に勉強熱心である。従業員に訊いて見ると「社長は頭のよい人です」という答えが返ってくる。自分で学んだことを、噛み砕いて従業員へ伝える努力もしている。
 人を育てる力とは社長自らが学ぶ力が源であるとは山口教授の結論。
 背中で示すことが若者を育てる一番のポイント


 根室では札幌に支店を4つ出店し、東京丸の内のキッテビルにさらに支店をだした回転寿司の「花まる」の社長が、ある時期に京セラ創業者の稲盛氏の塾へ参加して勉強している。根室から単身でよく飛び込んだものだ、その時点ですごい。井の中の蛙では大きくなれぬから、学びに飛び出す。

 根室の地元企業家にこうした社長が増えたら、戻ってくる若者が増えるのではないか?

 「根室再興」は学ぶ姿勢をもてる地元企業家が何人出るかにかかっているようにみえる。どんどん飛び出して、学んで、従業員に夢を語り、働き甲斐のあるいい会社につくりかえたらいかが?傲慢で従業員の幸せを考えない企業主が経営する会社は人口が急激に縮小している根室では、じきに淘汰されてしまう。視野を広げなければ負ける、時間との戦いだね。
 学ぶというのは、自分の不足を素直な心で認めることだから勇気がいる

*#749 フィールズ賞受賞数学者小平邦彦と藤原正彦の教育論  Oct. 4, 2009 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-10-04



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#2567 根室産シカ肉:エゾシカ専門食肉加工会社「ユック」 Jan. 20. 2014 [11. 中小企業家育成コラム]

 1月19日の北海道新聞一面に標記の記事が載っていた。紙面の3分の1ほどの大きな扱いである。
 市内の西尾建設がシカ肉加工処理の別会社「ユック」を立ち上げ、新規事業として取り組んでいる。海霧を含んだ草を食べているのでミネラル分が多い良質の肉である。処理さえきちんとしたらブランド化は可能だが、取り組む人がいなかった。
 5年前に、モンサンミッシェルの羊肉のことを弊ブログで取り上げたことがある。海霧の多いモンサンミッシェルの草を食べて育てた羊はフランス料理の高給食材として人気が高い。根室も半年ぐらいはオホーツク海と太平洋の両方から海霧が発生してミネラル分をたっぶり運んでくるから、そこで飼育した羊や牛はブランド化可能だ。シカ肉に目をつけたところが素晴らしい。

 考えているのとやるのとはぜんぜん違う。立ち上げ当初は苦労が多かったようだ、何もないところからブランド化を目指してやるのだから苦労はあたりまえ。親会社もろとも倒産するかもしれないリスクを背負ってがんばりぬくところに企業家精神が育つ。
 東京丸の内のキッテビルに出店した回転寿司のはなまるの清水社長といい、この西尾祐司社長といい、根室にもしっかりした企業家がいる。

 こういう事業は民間会社がリスクを犯して立ち上げてこそがんばりぬける。対照的なのはベトナムサンマ輸出である。市が主導してやるような事業はハナからダメだ。及び腰で、自分でリスクをとらず、市の予算におんぶにだっこでは、うまくいくはずがない。水産加工業者の中でも見識の高い経営者は参加していないよ、地元の一部の企業家にはそれくらいの判断力はある。

 アベノミクスの三本目の矢である「成長路線」は民間企業の問題だ。政府がやれるのは規制緩和ぐらいなもので、積極的にリスク・テイクする企業家群が育ってこないことには絵に描いたもちに終わる。
 
 新規事業には大きなリスクがあるからその立ち上げには覚悟がいるが、その覚悟があるからいくつかの失敗を繰り返しながらそこから学び成功事例が出てくる。「失敗は成功の栄養素」くらいのキモチでチャレンジしないことには成功はおぼつかないということだろう。何があろうとも自分のリスクでやりぬく覚悟をもつことの大切さを、根室の地元企業家たちは「ユック」の事例から学んでほしい。

 根室市の予算に寄生している地元企業経営者はリスクが恐くて及び腰になる。寄生したままでは根室市が財政的な問題を生じたときに共倒れとなる。

 市内の中学校や高校はこういう地元企業家を呼んで生徒に話しを聞かせたらいい。社員に夢を語り具体的な行動を起こせる企業家は強い、そういう企業家からは学ぶべきものがある。


  1月19日北海道新聞朝刊、いい記事だ。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/topic/516120.html
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北海道・根室産シカ肉、東京・大阪で好評 海霧スパイス?、食べる草にミネラル豊富

(01/19 06:25、01/20 10:03 更新)

 

 【根室】根室産のエゾシカ肉が東京や大阪の高級ホテルで人気を集めている。提供するのは根室市内唯一のエゾシカ専門の食肉加工会社「ユック」(西尾裕司社長)。海霧に含まれるミネラル分たっぷりの草を食べることで、肉質がフランス料理に合うなど、高く評価されているからだ。

 西尾社長(51)がユックを創業したのは2005年秋。道の補助も活用して加工工場を建設した。創業当初を振り返り、西尾社長は「ノウハウもないし販路もない。周りからは笑われ、建設会社ごと駄目になるのではないかと何度も思った」。

 根室管内1市4町ではエゾシカによる食害や交通事故が深刻で、「厄介もの」のイメージが強い。根室振興局のまとめによると、12年度の農林被害額は9億3100万円と過去最高を記録。被害は根室市だけでも1億6300万円に上る。

 しかしユックは根室産にこだわり、シーズンの10月~翌1月はハンターからの受け入れのほか、囲いわなで捕獲したシカを中心に生肉で出荷。夏場は冬に捕獲したシカを根室市内の養鹿(ようろく)場で飼育する。

 ユックの肉の卸値は最高級のロースで1キロ4500円で、他社より2~3割高め。初年度は4・7トンの出荷にとどまったが、食品衛生管理の国際規格「HACCP(ハサップ)」を取得していることなどが評判を呼び、「食の安全」を求める専門業者を中心に需要が拡大した。出荷量は09年度以降、右肩上がりで推移している。(根室支局 笠原悠里)<北海道新聞1月19日朝刊掲載>

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有限会社ユック ホームページ
http://www3.ocn.ne.jp/~yukku/char.html


 根室産食肉ブランド化に関する弊ブログ記事
*道内人口急減 知恵絞り地域守らねば(道新・社説)
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-04-17

【抜粋引用】
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 雇用創出については地方自治体ができることは限られているので、過大な期待はできない。原料供給基地としての地位に140年間甘んじてきたが、加工を盛んにして販路を押さえることが、北海道の雇用を増やすことにつながる。
 高品質を誇る北海道ブランドの加工製品群を育てるためにはどうすればよいのだろうか。
 たとえば、歯舞漁業協同組合が開発した商品群にその萌芽をみることはできないだろうか?漁業協同組合が製品開発の拠点になりえないだろうか?農業高校は酪農加工製品開発の重要な拠点にはなりえないだろうか?
 手造りの魚の燻製、原料を厳選した高級チーズ、モンサンミッシェルのようにミネラル分の多い牧草で育てた羊など、テーマを絞って検討すれば10年くらいで具体的な成果が得られそうなものもある。わたしにはアイデアがないが、根室人の叡智を結集して10年間手間隙をかければ、高品質の地域ブランド商品がいくつか開発できる可能性があるだろう。問題は人材である。とりあえず情熱の塊のような人が欲しい。そして確かな技術をもった人も
 漁業と農業が広域で手を組む。たとえば、漁業の根室、漁業と酪農の別海、酪農の中標津、これら三つの地域が手を組めば、全国に通用する地域ブランドが確立できるのではないだろうか。
 北海道の人口減をとめるためには、センター(札幌)が繁栄するのではなく、ペリフェリ(札幌から遠く離れた地域)が自立して繁栄することが必要条件である。
                                                 備えあれば憂いなし

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#2384 雇用をめぐる権利と義務の関係 (ブログ「情熱空間」より転載) Aug. 27, 2013 [11. 中小企業家育成コラム]

 企業の上場準備は諸規程類の見直しから始まる。就業規則や給与・退職金規程などの人事関連規程類、予算規程、経理規程類、組織分掌・権限関する規程など企業規模の応じてさまざまな規程が作られる。

 雇用問題について権利と義務は表裏の関係にあることをブログ「情熱空間」が具体的事例を通して丁寧に説いているので転載して紹介する。
 人に関する制度やルールは社会保険労務士の仕事分野であり、ZAPPERさんは社労士でもある。どういう就業規則を採用するかで、いろいろなトラブルが避けることもできる。
 事例に挙げられた具体的な問題はありがちなことだ。きっと役に立つから高校生や地元企業主もぜひ読んでもらいたい。上場準備を3回経験した私も勉強になったくらいだからお薦めする。
 2回分を一括して転載。

http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/6742005.html
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/6743236.html
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2013年08月27日

雇用の現場は「性悪説」か?(上)

5分の残業に対して、残業代(割増賃金)を支払わなければならないか?

答えはイエスです。仮に毎日5分残業をして、その月の所定労働日数が24日だった場合、残業時間計2時間(120分)分の割増賃金の支払い義務が生じることになります。よく、1日30分未満の残業を切り捨てとしている会社がありますが、それは違法(労働基準法違反)です。ただし、1ヶ月の残業(60分未満)の端数処理について、30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げるのは合法です。

さて質問です。あなたは会社に対して、その5分の残業について割増賃金の支払いを求めるでしょうか? 社会保険労務士の仕事をしていて直面することが多い問題に、実はこうしたものがあります。

事例その一。大学生のアルバイトを雇ったところ、業務終了後の手仕舞い作業に関しての、日々の5分・10分の残業代を請求され困っている。もっともこの部分、会社側にも認識が甘い部分があると言えます。そうした問題が起こり得ることを想定し、残業を許可制にする等の策を講じておく余地があるからです。(具体的には、そうしたリスクを想定して、その対応策を織り込んだ企業防衛型の就業規則や各種規程を事前に整備しておくことで、およそ考えられる多くのリスクを回避できます)

事例その二。社員に有給休暇(年次有給休暇)の取得を申し出られ、業務に支障が出て困っている。これにも色々な対処法がありますが、それはここでは書かないでおきます。使用者は、年次有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければなりません。(これを「時季指定権」と言います)がしかし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季にこれを与えることができます。(これを「時季変更権」と言います)有給休暇取得届を文書で提出させるなどして「時季変更権」によるハードルを盛り込んでおくべきでしょう。

事例その三。出社時・退社時に制服に(制服から)着替える時間。その時間は残業であるとして残業代を請求された。 実はこのケース、判例においても同様のケースが見られる(
三菱重工長崎造船所事件、最高裁平成12.3.9判決)のですが、完全ではないにせよ、就業規則等において予防策を講じておくことは可能ですし、制服に着替える場所を、会社の更衣室でも自宅でも各従業員の自由にしてあれば、場所的拘束性がないため、着替えの時間は原則として労働時間になりません。

さて、こうした労働問題ですが、一昔前までであれば「労使関係の象徴」つまりは企業側と労働組合の対立により表面化したものが多かったわけですが 、現在では「個別労働関係紛争」が増えていて、そのための
個別労働関係紛争処理システムの整備がなされています。たしかに、サービス残業が常態化している企業があったり、人を単にコマとしか捉えていないような、いわゆるブラック企業もあるわけですが、それを差し引いてもなお、理不尽としか言いようのない労働者の申し立てが増えています。

自主退職しておきながら、その退職の理由はどうあれ、とにかくこの「私」が傷ついた 。この「私」が傷ついたのだから「補償(謝罪)」しろ。職務専念義務もへったくれあったものではありません。まるで小学生の喧嘩さながらに、やれ「謝れ」だの、やれ「謝罪しろ」だのと…。そして非常に残念なことに、特に若い世代でそうした(義務の履行はさておく形での)「権利の主張」が目立ってきています。そして時には、その親も我が子の理不尽な言い分に便乗してきては、一緒に騒ぎ立て…。

事例その四。入社した社員に態度の悪さを指摘したところ、二・三日出社して、以後は出社しなくなり連絡も取れなくなった。やっと本人と連絡が取れて、そして解雇を言い渡すも、反対に労働基準監督署を利用して解雇予告手当を請求された。これ、本人は14日を過ぎるのを待っていたんですね。~試用期間が始まって14日以内の者を解雇する場合に限って、解雇予告手続きは不要~ 労働基準法のこの規定を悪用したんですね。だから、15日目になって会社からかかってきた電話に出た。まさに知能犯。でも、その知恵は仕事に活かすべきなのに…。

雇用の現場では、もはや《性善説》ではなく《性悪説》が前提なのか…。そう思うこともしばしばです。義務の履行はどうあれ、自己の権利の主張だけは絶対に譲らない。その姿、何と浅ましいことか…。権利!権利!権利!己を省みることはしない。義務の履行などどうでもいい。権利!権利!権利!あるのはただ、権利の主張のみ。 この国の行く末が、本当に心配になってしまいます。(続く)

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雇用の現場は「性悪説」か?(下)

(続き)しかしこうした労働問題は、悲しいかな、現在の公教育のある部分と妙に符合するように思えて仕方がありません。人権教育。もちろん、それを全否定するものではありませんが、子どもに「権利」ばかりを教えて、肝心の「義務」に関しては実にお座なりになってしまっている。そうした印象を拭えないのです。

雇用契約は、双務・有償契約。つまりは双方の「権利」と「義務」が合わさったもので、そこに対価が生じるものです。もっとも、「使用者>労働者」という歴然たる力関係に配慮して圧倒的に労働者に有利になるよう、各法律で規定がなされているわけですが、しかしその大前提には《職務専念義務》というものが存在します。誠実にその業務を遂行すること。その対価として賃金請求権が発生する。前者は義務、後者は権利でありますが、権利と義務はまさしくセット。しかし子ども達には、なかなかそれが伝わらない。なぜなら、「権利・義務」という概念が希薄だから。

「権利」と「義務」は常にセット。子ども達にはそれこそを教えなければなりません。ところが学校現場は、構造的にそれに向いていないわけなんですよね。第一に、公務員には雇用契約が及ばないこと(公務員は、職業や職種ではなく地位をさすから)、第二に、それゆえに民間の労使の感覚に疎いこと。第三に、どこぞの教職員組合の存在が感覚の麻痺を後押ししていること。だからどうしても、「義務」を伝えることが苦手で疎かになってしまうのでしょう。(「権利・義務」という概念が希薄だから、自治労や日教組・北教組は暴走を続けるのでしょう)

しかしながら、企業側から言わせたならば、「学校教育の場においてこそ、権利・義務をしっかり教えて欲しい」となります。親が家庭が力を失い、また、それに呼応するかのように学校も力を失いつつあります。勤労の美徳、規範意識といったものが影を潜めつつあります。非正規労働者の増加が社会問題になって久しいですが、一方では労働力の質の劣化が進んでいて、そこには基礎学力問題と「義務」の認識の欠如、規範意識の形骸化が横たわっていることを感じています。

いわゆるキャリア教育ですが、何をさておいても子ども達に伝えなければならないのは、勤労の「権利・義務」の概念でしょう。「権利」と「義務」は常にセット。だからこそ、自らの仕事に打ち込む姿は崇高であって、勤労の美徳、規範意識というものが導かれるものでしょうから。

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#2359 地元企業への就職:"御社は決算を従業員へ公開してますか?" July 20, 2013 [11. 中小企業家育成コラム]

 根室では高卒の就職戦線がはじまったようだ。地元企業へ就職希望の高校生諸君、就職説明会の折には大きな声で堂々と質問したらいい。

 "わたしは一生懸命に働き、業績をよくします、結果がどうなったのかを毎年知りたいのですが、御社は従業員へ決算公開していますか?"

 従業員へ決算も公開できないような企業はダメ企業と判断していい。予算制度のない企業も危ない。予算制度の導入と決算の公開はセットになっている。
 決算を公開していない同族経営は、その企業の未来を明るくするために、決算公開に踏み切るべきだ。

 いくら儲かって、従業員へのボーナスへいくら分配したのかはっきり分かるような説明があってしかるべきで、それが予算制度の導入と決算公開である。
 業績が悪いときには何が原因で損失が出たのか予算と決算の数字を比較してはっきり理由を説明し、次年度へどういう取り組みをするのかを決めなければならない。具体的な方針を練り、経営者と社員が一丸とならないと、赤字から黒字への転換はなかなかむずかしい。
  あなたが野球部に属しているとしたら、試合で何点とって勝ったのか、あるいは何点とって負けたのかを知らずに、次の戦いに備えることができるだろうか?サッカーだって、バレーボールだってバスケットボールだって、同じことだ。企業経営もそうだろう?

 中小企業ではしばしば経営者が恣意的なお金の使い方をする。会社と個人の財布をきちんと分けていないような会社は危うい。だから経理規程があってきちんと守られているかも大事なポイントである。企業選びはしっかりやれ。
 退職金規程があるかないかも確かめておいたほうがいい。47年勤めたらいくら退職金が出るのか、規程があるかないかは重要なポイントである。社長の考え次第で退職金の金額が決まるのでは、安心して働けない。
 わたしの勤務していた会社は毎年度末に退職金規程に基いて計算した退職金額を全社員に通知していた。

 社会保障・人口問題研究所の地域別人口推計によれば、2040年の根室の人口は1.8万人である、27年後にあなたたち高校3年生は45歳になる。そのときに根室の地元企業の半数近くが倒産してなくなっているだろう。28歳で結婚したとして、30歳で子供ができれば子供はちょうど高校へ入学する歳である。3年早く25歳で結婚したら、長子(長男あるいは長女)が高校を卒業して専門学校あるいは大学へ進学する時期に当たる。そんなときに勤めている企業が倒産したらどうなる?

 長期的に見れば従業員に決算の公開もできないような軟弱な企業が生き残れる可能性は限りなくゼロに近い。従業員が本気で仕事に取り組まないと、人口縮小の時代に企業の生き残りは難しい。人口が減るのは根室だけではない。札幌も東京も急激に人口が減少し、高齢化が加速する。
 若い労働力が不足するから、十数年後にはいまよりもずっと楽に就職できる時代がくるだろう。しかし、そのときに君達は中年になっており、長期にわたる売上減少から倒産企業も増え、転職はむずかしい。

 就職説明会はこれからあなた達が運命を共にする大事な会社を選ぶ大事な大事な機会だから、臆せず堂々と質問しよう。それが地元経営者の意識を変え、地元企業の経営を健全なものにする

 根室管内の子どもたちの学力が全道最低レベルであることが全国一斉学力テストで明らかだが、地元企業の経営実態はそれ以下だ。基礎学力のしっかりした経営者が素直な心でやる気になれば、経営改善はいくらでもできる。そういう経営者のいる企業を選べ。中小企業はオヤジ(経営者)次第だから、会社説明会にオヤジが出てこない企業はそれだけでペケだ。企業説明会のスケジュールは早くから決まっているから、スケジュール調整をして経営者が出てくるのはあたりまえ。
 就職説明会で「給与」がどうのこうの、「業務内容」がどうのこうのばかり言い、「夢」を語れない経営者のいる企業には未来がない。2040年に生き残っている根室の企業は半分だから、社員へ夢を語り、その夢を実現できる経営力をもった心根のまっすぐな経営者を選べ
 地元企業の経営者諸君、従業員へ夢を語り、その夢を実現できる企業家になろう。そのために学ぶべきことはいくらでもある。




 7月18日北海道新聞根室地域版の記事より
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地元企業への就職アピール

 根室 
高3生に説明会

【根室】来年3月に高校を卒業予定で就職を希望している生徒を対象にした地元企業説明会が17日、市総合文化会館で開かれた。
 市と根室商工会議所、中小企業家同友会根室支部の共催で、地元定着を図ろうと毎年行っている。根室高から60人、根室西高から26人が参加した。
 本年度は市内の水産加工業や金融機関など9社・事業所がブースを設けた。企業の担当者が業務内容や勤務体系、給与などについて説明。「失敗しても注意を受け入れる素直な心が大切」「元気で働くことが一番」など就職全般に関するアドバイスも送られ、生徒達は真剣な表情で耳を傾けていた。
 求人票は既に1日に公開されており、9月1日以降に願書を受け付け、同月16日から就職試験が始まる。(笠原悠里)
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【余談】

 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」

 自分さえよければいいという企業は長続きしない。浮利を追う企業、オーナーが手前勝手な経営をする企業、市へ寄生する企業は長続きしない。経営者がいいフリコキの企業も長続きしないだろう。「井の中の蛙」を決め込んで、非常識な経営者が根室には多い、だから町が衰退する。町の改革は地元企業の経営改革からはじめよう。

 日本には200年以上の歴史を誇る企業が2万社を超える。世界にある200年以上の歴史をもつ会社の6割は日本にある。それは日本人の伝統的な商道徳が世界一質のよいものだったからだ。自分さえもうかりゃ何をしてもいいという考えが支配している中国にはたった7社しかないそうだ。

 根室で歴史の長い企業は「北の勝」の碓氷勝三郎商店、今年は創業123年だったかな。根室高校と根室西高合同で、企業経営について講演会を開いたらどうだろう、すぐれた経営者の話しを聞く機会はそうはないが、当主は講師の役を引き受けてくれるかな?
 根室の企業では歴史は浅いが札幌に5店舗、その後東京丸の内のキッテビルに出店した回転寿司の「はなまる」も挙げておきたい。
 根室に戻ってきて11年目だが、東京生活35年、業種の異なる複数の企業の本社中枢部門で働いた経験のあるebisuが推奨できる根室の企業である。この二つが群を抜いていることは論をまたないが、きっと他にもいくつかある、人口2.8万人の町にたった二つのわけがない。知らないだけで10企業はあるのかもしれない。


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