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#4522 高校英語教科書Vivid音源:朗読音源を無償提供できないか? Mar. 31, 2021 [49.1 英語音読トレーニング]

 中学生と高校生に英語を教えていて、苦手の生徒が多いことに驚く。小学校で英語教室に通っていた生徒たちの中にもそういう生徒が少なくない。次のような論理式が成り立っている。(「⇒」は「ならば」と呼んでください)
 ①「スムーズに英語の教科書を読めない ⇒ 英語が苦手」
 スムーズに読めないから、読まない。読まないから覚えられない。

 ②「英語が得意 ⇒ スムーズに教科書が読める」

 英語が得意な生徒は英語の音読もスムーズにできる。とっても残念なことだが、スムーズに読めて発音のよい生徒にも、英語が苦手な生徒はいるのである。そういう生徒は音読しているだけで、意味と音がつながっていないのである。頭を使わない音読トレーニングをしているのである。
 毎日、語順を意識しながら音読トレーニングを積めば徐々に英語の語順に脳が慣れて切り変わっていく。語順や意味を意識しないではいくら読んでも効果は小さい。

 ここからが本論である。教科書出版会社が教科書の音源をホームページ上でリリースしてもらいたい。教科書出版会社の社会的な責任の範囲だと思う。根室高校では第一学習社のVividを採択している。

 残念ながら、世の中には発音の悪い先生はいるし、そういう先生に中1のときに当たれば、カタカナ発音の癖がついてしまう。cやseeがsheと同じ「シー」になってしまう。thの発音も日本語の「サ」。
 学校の授業では音読トレーニング時間がほとんどとれていない様子。授業の最初に10分間ほど音読トレーニングをやってくれたら、教科書が読めないなんて生徒はほとんどいなくなるだろう。何年も生徒を通して学校の授業を観察しているが無理のようだ。そういう学校は全国にたくさんあるに違いない。

 教科書の音源を無料でリリースしてくれたら、全国の中高生が同じ音源でトレーニングできる。
 簡単なことだから、文科省の方でもそういう要請を教科書会社にしてもらいたい。

 タブレットを使って英語授業をやっている学校があると聞いている。タブレットには英語の教科書や副読本や問題集が入っていて、音読も画面に文が表示されながら、それを読み上げてくれるし、AB間リピートや、3あるいは10秒巻き戻しが可能らしい。そういう教材で勉強している学校と教科書本文の朗読音源すら提供されない環境で勉強している大多数の生徒がいる。理不尽だと思うが、どこからもそうした声が上がらないのはどういうわけ?
 教科書本文の音源をサーバー上にもって、生徒が自由に利用できる実践例が載っている文書がありました。学校 
*高校生におけるタブレットを活用した英語授業の実践 (jst.go.jp)

 もっと良い方法があります。
 クラウド上にシステムと音源をもてば、全国の中高生が一斉に利用できます。文科省でクラウド上にシステムを作って、そのシステムに合うような仕様・形式で教科書会社に音源を提供させて、そのシステムに音源データをぶら下げるだけでいい。AB間リピートやクイックリピート機能(3秒と5秒と10秒)をつけてあげたらいい。システム要件は簡単です。全国の中高生が一斉に利用できます。

<余談:発音矯正はとっても時間がかかります>
 英語の成績の悪い生徒は、個別に発音矯正レッスンをしている。数時間でクリアできる生徒もいるし、発音矯正とスムーズに読めるようになるまで20時間もかけなければ治らない生徒もいる。カタカナ発音の癖がついてしまうと治療にはたいへんに手間がかかる。中学校でそういう癖がついた生徒を、高校の先生が直してくれるなんて言うことは、まず考えられない。音読指導や発音指導の時間がとっても少ないからだ。
 そういう事情の中学校や高校は全国至る所にあるだろう。教科書の朗読音源が無料で提供されれば、カタカナ発音の生徒を激減させうるのではないか。英語の学力をアップさせたかったら、文科省はそれくらいのことはやってもらいたい。
 すぐにやれるのだから、教科書会社がその社会的責任において自らやってほしい。


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#4521 中学英語教科書Sunshineの音源CD Mar. 31, 2021 [49.1 英語音読トレーニング]

  根室管内では中学校の英語教科書はSunshineと使っている。調べたらCDが教科書出版社から販売されている。
*音声CDサンプル:平成28年度版教科書:英語:中学校:開隆堂出版株式会社 (kairyudo.co.jp)

 amazonで検索すると『教科書ガイドCD』教科書ガイドの利用はお勧めしたくないが、これはCDのみの別売で2750円なので、これを購入して3年間音読トレーニングを積んでほしい。mp3ファイルだろうから、パソコンやスマホにダウンロードできる。
 毎日10-20分音読トレーニングを積めば、英語の定期テストは90点獲れますよ。教育投資としては安い。本屋へ注文するときに、音源CDのみ、教科書ガイドは不要」と言って地元の本屋さんから注文してください。CDのみで十分です。辞書引くのも中学生の内に習慣にしてください。

1年サンシャイン教科書ガイドCD (<CD>)

1年サンシャイン教科書ガイドCD (<CD>)

  • 出版社/メーカー: 開隆館出版販売
  • 発売日: 2016/02/01
  • メディア: 単行本
2年サンシャイン教科書ガイドCD (<CD>)

2年サンシャイン教科書ガイドCD (<CD>)

  • 出版社/メーカー: 開隆館出版販売
  • 発売日: 2016/02/01
  • メディア: 単行本
3年サンシャイン教科書ガイドCD (<CD>)

3年サンシャイン教科書ガイドCD (<CD>)

  • 出版社/メーカー: 開隆館出版販売
  • 発売日: 2016/02/01
  • メディア: 単行本

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#4520 渋谷道玄坂・ムルギー:老舗カレー専門店 Mar. 31, 2021 [A8. つれづれなるままに…]

 とってあるテレビ番組のビデオを見てほしいと女房殿。みたら、渋谷のムルギーが映っていた。その先にある喫茶店ライオンが目的地のようだった。クラッシック音楽の喫茶店で、創業100年を超すお店。ここは一度も行ったことがなかった。
 ムルギーは中が薄暗く窓が小さい。外側も内側もレトロなお店で、お年寄りの夫婦がやっていた。メニューは一つだけ、もちろんカレーである。ゆで卵を薄切りにしてのっけてあるだけ。スパイスが独特で、どこにもない香りで、初めていったときに女房殿はお腹の具合が悪くなったほど強烈なパンチの利いたカレーだった。そのあと一人でたまに通ったが、やけに癖になるスパイスだった。しばらくするとっ猛烈に食べたくなる。
 ムルギーのカレーは50年ほど前に義兄が連れていってくれたのが最初で、それからしばらく通った。最初に行ったときにやっていたおじいさんとおばあさんはいつのころからか、世代交代していた。

 テレビに映っているムルギーは窓が大きいし、ビルになっていた。それで女房殿が「こんな店だった?」と疑問がわいたのだ。私の記憶では、昔は2階建ての小さなお店だった。あの地区はほとんどビルに建て替わった。道玄坂の途中で右折し、ストリップ劇場が右側にあり、突き当りを左折するとムルギーだった。左折する角のお家は昔は雑貨屋さんだった。渋谷駅前も50年前とはまるでちがっている。でも懐かしいハチ公前。
 動画のURLを貼り付けておくので、カレー好きの方だけこっそりご覧ください。

カレー王子 渋谷 ムルギー - Bing video

面倒な方には写真を載せておきます。
*ぐるなび - ムルギーのムルギーカレーの口コミ詳細 (gnavi.co.jp)
ムルギーカレー

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#4519 I‘ve never seen anything move like that before.  Mar. 31, 2021 [49-4 英作文トレーニング]

 昨年1月14日から英作文の問題と解説集を作成して、その中から20%ほどを選んで、e-mailで英作文トレーニング用に配信している。4965題の問題と解説はA4判で680頁になっている。
 NHKラジオ英会話の英文と大西泰斗先生の解説をそのままタイピングして利用している。文体が好みに合わないので、気になる箇所は随時書き換え、語彙解説で不足しているところは英英辞典2冊から語彙の定義や用例を引いて貼り付けている。高校生には英英辞典に慣れてもらいたいからだ。全員電子辞書をもっているようだが、英英辞典も中にあるのに、利用している生徒がほとんどいないので、慣れることには意味がある。
 英作文問題をやるやらないは生徒の自由である。やって来れば、大西先生の解説だけではとても足りないから、3倍くらいの分量の解説をすることになる。とくに冠詞の使いかたは数か月間具体的な事例でやってはじめて自在になる。結構手間がかかるものです。(笑)
 1年3か月やってきて、初めて「おや?」と思うような文にでくわしたので、メモしておきます。
 『ラジオ英会話四月』p.29に次の文がありました。
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 I‘ve never seen anything move like that before.


 この文を会話で反射的に言うことができたとしたら、十分英語上級者です。ポイントはまずI’ve never seen ~ の現在完了形。現在完了形(have+過去分詞)は「(今に)迫ってくる」イメージ(意味の中核)をもち、それが「経験を表す使い方につながっています。経験は過去の体験を現在に「引き付けて」語ることだからです。次のポイントは動詞see(見える)がつくる「目的語説明型」(来月以降のレッスンで詳しく説明します)。anythingmove like that(あんなふうに動く)の間に「=(イコール)」あるいは「主語・述語」の関係があります。「anythingmove like thatするのを見る」という意味となります。


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  いま目の前で起きていることだから原形不定詞になる理由はない、進行相でいい。普通はanything (that is) movingと書くだろう。

 p.27には次の文がある。生成変形文法では「主格の関係代名詞+be動詞」は消去変形の対象になるので、(that is)はカッコで示した。
  I live in an apartment overlooking a beautiful lake not far from Boston.
 この、an apartment overlookinganything movingは生成文法から見ると同じ変形規則に従うことになるので、moveは誤用なのだ。分詞形容詞が後置されて前の名詞を修飾する例は中3の英語の教科書でも関係代名詞が出てくる直前にいくつも文例が紹介されている。


 教科書「Sunshine3」のプログラム6から文例を拾っておく。教科書では「現在分詞の後置修飾」と書かれているが、ひとつ過去分詞の後置修飾の例文③が混ざっている。これらは関係代名詞の次に導入すべき説明である。①~⑥まで「主格の関係代名詞+be動詞」消去変形がなされている。


① I mean the man reading newspaper.
② The cat walking around the garden is mine.
③ That the temple built by Ashikaga Yoshimitsu in 1397.
④ The boy sitting on the chair is my brother.
⑤ The girl writing a letter is Junko.
⑥ Look at the boys dancing on the stage.


 要するに、分詞句が後置されるのは、それが目的語や前置詞句を含んでいるからで、それがなければ通常の形容詞と同じように前置される。


 さて、以前から気になっていたことがある。それは修辞上の都合で縮約変形されるケースがあるということ。大学受験参考書である江川泰一郎著『英文法解説』(2003年改訂第3版)「Ⅱ分詞」p.341に次の文が載っていた。


 Anyone wishing (=who wishes) to leave early may do so.(早退を希望するものは早退してよい)


 この文例が示すところは、主格の関係代名詞節なら動詞を分詞に書き換えることで、関係代名詞節を分詞句に縮約できるということ。①~⑥までの文と表面構造は同じだが基底構造は異なる文であることがわかる。


 江川先生のこの説明を頭に置いて、先にあげた次の例文をもう一度よく見てみよう。
I live in an apartment overlooking a beautiful lake not far from Boston.
 この文は関係節に書き換えると次のようになる。
I live in an apartment which overlooks a beautiful lake not far from Boston.
 この文は三つの単文から合成されている。
⑦ I Iive in an apartment.
⑧ It overlooks a beautiful lake.
⑨ The lake is not far from Boston.
 基底構造は⑦⑧⑨の三つの文である。節構造を句構造に書き換えるために、overlooksoverlookingになったのであるから、表層構造は①~⑥の文と一緒でも基底構造は異なっている。


 大西泰斗先生の『NHKラジオ英会話』で初めて違和感のあった文だったので、わたしの意見を書いた。大西先生のことだから、わたしにはわからない合理的な理由があるのかもしれないから、判断は読者のみなさんにゆだねたい。

 わかりました。知覚動詞であることを見落としてましたね。(笑)
 I‘ve never seen anything move like that before. 

  動詞がseeなので、目的語の後の補語がtoなし不定詞、原形になるんです。それだけのことでした。Swan"Practical English Usage" p.222より。
 hear、see、watch、noticeなどの知覚動詞は「目的語+動詞原形」あるいは「目的語+動詞-ing形」をとる。
  I saw her cross the street.
    I saw her crossing the street.
 日本語に訳したときに訳文に違いはないが、ニュアンスは異なる。動詞-ing形のほうが女性が目の前の道路を横断しているように感じます。
 だから、引用した文も、次のように書くことができます。
 I‘ve never seen anything moving like that before. 

 知覚動詞であってもそれに続くのは原形不定詞だけではないのです、現在分詞もありうるということ。書き手がどういいうイメージを脳裏に浮かべたかで、原形不定詞か現在分詞かが決まります。英語って面白いね。
    以上

<2022年5月19日追記>
 英作文は12000題、A4判で1420頁になっています。3月末で作成を終了し、いま2月分の原稿の校正作業中です。数日で終わる予定です。そのあと、3月分の原稿校正作業で全部が終了です。週に2回配信しているので、3.5年分の配信ストックになります。ニムオロ塾の大学受験生のためと思って始めましたが、わたしの勉強になりました。メール配信英作文に付き合ってくれている生徒たちに感謝です。一人じゃ続かなかった。


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#4518 中学新入生の数学:同時に二つのことを処理するのは... Mar. 29, 2021 [52. 数学]

 根室の市街化地域の中学校の新入生で分数や少数の四則演算がきちんとできる生徒は半分に満たない。
 成績上位10%層は別として、中学生になって塾通いを始める生徒には、
①最初の数時間は計算問題をやらせる。
 少数や分数計算の仕組みが理解できているか、速度は十分か、そのあたりのチェックからしている。なんとか少数や分数の計算問題がこなせるようになったら、2番目のステップは
②「正負の数」の予習」である

 マイナスの数は中1で導入される。数の概念が拡張されるのでしっかり教えておきたい。さまざまな概念の拡張が中高の数学では重要な位置を占めている。数の概念だけに限定すれば、中1で負の数、中3で無理数が導入されて、数は実数に拡張される。高2で虚数が導入され数の概念は複素数まで拡張される。複素数の世界では指数関数が三角関数で表せるという摩訶不思議なことが起きる。数の拡張の最初のステップが中1の数学なのだ。

最初は加算、次に減算とやらせてみる。
 (+2)+(-1)=
 (-3)+(-5)=
 (-2)-(-4)=
 
 こういう計算を100~200題やらせて慣れたかどうか判断、慣れたら、正負両方の数を使って少数や分数の混合算へと進む。

 7x(-2.4)=
 -2/3x(-6)=
 1/4 -(-2/3)^2 ÷4=
 1-2.4=
 3.9x(-0.3)=
 3.9÷(-0.3)=

 計算問題としては「複合問題」になっている。正負の数の計算と少数分数の計算の2分野という意味で、複合問題なのである。
 6年生の少数や分数の計算ができるようになり、正負の整数計算は符号ミスをしなくなったのに、これら両方の要素が混ざると途端に計算規則が頭の中から飛んでしまう。この段階で少数や分数の計算問題ができなくなったり、符号ミスが多発する生徒が3割くらいいるということ。二つのことをしばらくの間は同時に処理できないのである。そういう生徒たちには1000題くらいは計算問題を解かせて、慣れさせないといけないのだが、計算に不慣れな生徒のほとんどが200題くらいの計算問題をやっただけで計算トレーニングが不徹底なまま中2となり、中3になり、定員割れした根室高校へ全員が入学しているのが現実である。根室高校ではもちろんこういうレベルまでさかのぼって教えることはない。根室西高校ではそうしていたから、計算が不慣れな生徒たちには救われる道が残されていた。

 こういう計算トレーニングが不足している生徒たちは、高校生になっても計算問題に頭を使わなければならないから、文章題の複雑な問題をやれるわけがない。

 どういうことか具体的に説明したい。高校受験も大学受験も、大問のところに文章(解くために必要な条件)が書かれていて、問1、問2、問3と並んでいる問題形式が多いが、問1の問題を解くときに、前段で述べられている大問の条件をすっかり忘れている生徒が根室高校普通科ではおよそ半数はいる。読んだばかりの文が次の問1の文章を読んだとたんに頭から消えている。何かに集中したとたんに、その直前までの文章が頭から消えてしまう。記憶の保持の問題である。記憶を保持できる容量が小さいのだ。
 成績の良い生徒は、しばらく記憶を保持できるから、大問の条件と問題1の条件を同時に頭の中に並べで考えることができる。だから速い。そして、大筋の解法の道筋をつけたら、それに従って計算を進めていく。計算段階では脳はほとんど使っていないから、問題の条件を記憶して置けるので、問題文の条件を突合しながら、計算を進めることができる。計算には脳をほとんど使わないので、道筋からそれると違和感が働く。

 言いたいことは、計算に脳を使っている生徒は数学ができるはようにはならぬということ。計算は手が勝手にやればいい、そうできるように、小学校高学年と中学校での計算トレーニングの徹底がとてつもなく重要だということ。スマホのタイマー機能を使い、10分単位の計算トレーニングを繰り返して数千題やるべきだ

 団塊世代は小学校で珠算塾へ通っている生徒が、根室で1/3くらいいた。例えば、商工会議所珠算能力検定なら、3級で乗除算は少数の問題が混ざっている。乗算・除算がそれぞれ20問、10分間で計算する。見取算が10題合計50題の計算を週に6回やれば、1年間では「50題×52週×6日=15600題」にもなる。2級から暗算10問が入る。3年間トレーニングしたら50000題は計算トレーニングをこなしてしまう。このレベルになると、四則演算に頭を使わなくて済むから、複雑な文章題を解くのにとっても有利になる。計算に投入する脳のエリアを他のことのために解放できるからだ。
 こんなにしなくても小学生や中学生の時に数千問題は計算トレーニングしたほうがいい。珠算の例で言えば、採点時間を除けば、1回50題で30分である。その後で、脳を使うような複雑な問題をやればいい。
 ストップウォッチで時間を測ってやると、集中力が高くなる。面白いのはこうしたトレーニングを毎日続けると意識的に集中力をコントロールできるようになるのである。集中力のスィッチ回路ができてしまう。

 集中力をアップするには、日本語の本を高速音読するのもいいし、英語の教科書を高速音読してもいい。10分間で十分だ。たったそれだけで、脳は覚醒するようになる。
 自分の脳のスペック(仕様)は自分がデザインできるし、デザインした通りにもっていくのはそれに適したトレーニングを毎日30分間、数年間続けたらいい。どんなことでも毎日30分間3年間は修行時間が必要だ。3年分で547.5時間ということになる。ハイスペックな脳は一度できあがると、使っていれば錆びつくことがないし、少しずつ性能が上がっていく。

 昨年1月から、NHKラジオ英会話を利用して、そのままタイピングして、1/4ほどをピックアップし、英作文教材としてe-mail配信して利用している。生徒がやって来て質問があると、書いてあることの3倍くらいの説明になる。すでに4800題を超えた。3年間で10000題の問題と解説をすることになる。A4判にプリントアウトしたら680頁になっている。1頁辺り900文字ほどの量だ。
 英作文も単純なトレーニングを積み上げたらいいだけ。毎日10分間の音読と英作文問題トレーニングを中高で1万題こなしたら、英検準1級に合格するのはそれほど難しくない。
 要するにやり方は部活と同じで、よいトレーニングメニューで中高6年間修業できたら、まったく別世界が待っている。



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#4517 教育政策におけるグローバリズムとリージョナリズム考 Mar. 26, 2021  [55. さまざまな視点から教育を考える]

<更新年月日>3/27午前10:21 大きな問題は目指すべき国家観や目指すべき具体的な経済社会のビジョンがないこと&「糸の切れた凧」について

 地域主義(regionalism)という考えが世に現れたのは1970年代である。グローバリズムや中央集権に対立する概念として提示された。
 玉野井芳郎『地域主義』学陽書房(1978年刊)の第一章に増田四郎先生(西洋経済史・元一橋大学学長)の「1.地域主義の展開」p.21-39が載っている。この前年に院生3人で相談して大学院の特別講義を増田先生にお願いしたが、その時に先生が選んだテクストがリスト『経済学の国民的体系』だった。ドイツがどのように国民国家を形成したのか、その国民国家成立過程を分析した書である。増田先生はこの本をリージョナリズムという文脈で読んでいたのだと思う。雑談のときにリージョナリズムがなんどか話題に出てはいた。増田さんから本の出ることは聞いていた、だから、玉野井さんが編集したこの本が出たときにすぐに買ったのだ。


 面白いと思ったのは、アーサー・ケストラーの『ホロン革命』である。ホロン(全体子)という概念の提示である。人体にたとえると「人体という全体を構成する要素(部分)である細胞も、各々全体としての構造、機能をもっており、ホロンであると言える」ということ。部分も全体の構造をもつのだ。これを視覚的に表現したのがマンデルブロ集合(Mandelbrot set)である。



Mandelbrot_sets_by_FractScope.jpg


 他にもいくつか載っているのでご覧いただきたい。これは複素数列の漸化式で表せる。
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次の漸化式

で定義される複素数列 {zn}nN∪{0} が n → ∞ の極限無限大発散しないという条件を満たす複素数 c 全体が作る集合がマンデルブロ集合である[1]

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 わたしがこの図に興味をもったのはJames Gleick"CHAOS" (1987年) p.114-115を手にしたときである。じつにわかりやすい図だなと感じた。譬喩にも利用できる。
 私の提唱する「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」&「職人を中心とした経済社会」の視覚化イメージとして使いたい。言葉だけで説明するのは経済学者に対してすらとってもむずかしい。(笑)
 しかし、この集合はだれにでも理解できる。 この図のどこを拡大しても次々に無限に同じパターンの図が現れる。微小な中に元の全体が無限に繰り返されているから漸化式で表せるのである。

 日本が目指すべきは、世界規模での中央集権=グローバリズムではなく、地域分権を可能ならしめる地域主義である。それは、工場労働=苦役という公理に基づく演繹体系であるマルクス『資本論』へのアンチテーゼでもある。職人仕事を体系の公理に据えると、まったく別の経済学と経済社会が展望できる。
(経済学体系の演繹的構造に関する分析はとっくに済ませてあるから、公理の変更によって新しい経済学を建設可能なことが証明されている。経済学体系の演繹的構造について論究した経済学者は世界中を見渡しても他にはいない。自然数の演繹モデルなんて言ってもなんのことかちんぷんかんぷんの経済学者ばかりだ。30年後を考えても無理だろうね、経済学者に数理論理学の素養をもった人材やユークリッド『原論』の研究者がいないからだ。微分積分や線形代数しかやっていないようでは理論経済学の土俵には上がれない。)

 グローバリズムはGAFAのような超巨大企業があらゆる産業をその支配下に置き、経済格差を拡大していく。
 グローバリズムのアンチテーゼは、分権主義、地域主義である。「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」と職人仕事を中心に据えた経済社会を創り上げることで、グローバリズムは阻止できる。日本は21世紀を経済社会の転換点ととらえるときに、大きな役割が果たせる位置にいる。数百年間「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」という倫理でビジネスをやってきた企業がたくさんある。創業200年を超える会社の65%が日本に集中している。1340社あるが、浮利を追わず信用を第一に商売をしてきたからだ。寺社建設の企業である株式会社金剛組が世界最古の企業である。創業578年だから今年1443周年を迎える。

 何が問題かというと、どのような経済社会を目指すのかというビジョンがないことだ。教育政策はそうしたビジョンを実現するための長期的戦略に基づいて立案されるべきものだからである。めざす経済社会という具体的なビジョンを欠いて教育政策を立案すれば、結果はどこへ飛んでいくのかわからぬということになる。これは文科省というよりも政治の責任だろう。国会でどのような経済社会を目指すのか、議論すべきなのだが、そうした議論がまったくない。ここまで書くと、日銀のゼロ金利政策を勧めた浜田宏一内閣参与や私的利益のために経済政策を利用した竹中平蔵なんて経済学者がいかにダメか、ダメな理由がわかるだろう。竹中平蔵と菅義偉総理は同じ穴の狢といえよう。両方ともに国家観がなく、私的利益しか眼中にない点で共通している。優秀な文部官僚にはお気の毒だが、国家観や目標とすべき経済社会のビジョンを欠いた教育政策は糸の切れた凧のようなもの。
 そのビジョンを欠いた教育政策の飛んでいく先について思うところを書いておく。

 いま、日本の文教行政はグローバリズムに舵を切りつつある。小学校では英語が正規の科目となるし、中学校の英語は小学校の英語教育の変更を受けてレベルがアップするようだ。韓国に比べてTOEICなどのスコアが低いので、追いつき追い越せということなのだろう。滑稽だ。GAFAのような巨大企業へ就職することが理想となる。それはGAFAを人材面で強化することになりかねない。
 現実を見ると、国語の能力が著しく落ちた。スマホの普及で子どもたちの読書習慣は絶滅の危機にある。語彙能力が落ちれば、細かいニュアンスが日本語で伝えられなくなる。小学校で英語が教科として組み入れられる。国語能力はますます落ちていくだろう、それは国力衰退の素だ。
 国際的なビジネスの場で通用する英語能力は英検なら1級、TOEICなら900点超である。それですら5年以上もトレーニングを積まないと、日本語で表現するようなニュアンスのコミュニケーションはできない。そして英語だけの単機能人間の活躍する場はとっても小さい。
 そんなことが(マルチ能力=専門能力+語学力)可能になる人材はどれほどいるのか?必要なのは人口の1%未満である。いまそのような人材は人口の0.1%もいないだろう。


 仮に国際的な場でビジネスをしたり外交交渉のできる人間が人口の1%必要だとしよう。1億2300万人の1%は1230万人、根室市なら250人も英検1級以上の人材が居ることになる。生徒数10000人の大学なら100人そういうレベルの生徒が学んでいることになる。偏差値60の大学に限ってもそんな要件を満たせる大学がいまいくつあります?偏差値50以下の大学ではゼロでしょう。
 そのような人材を育成するのに、小学校で教科に英語の導入が本当に必要だろうか?中学1年生から基本動詞の過去分詞形の学習が必要だろうか?
 全員が高度な英語運用能力を身につける必要もないし、人間の能力という点からみても幻想です、肝心の足元が見えてない議論です。みんなが英語が得意になるわけがない、ハードルを上げてしまうのでこの制度変更で英語が嫌いになる生徒が確実に増えます。必要なのは1%以下ですから、一部の生徒だけでいいのです。だから、義務教育でこんなに英語に力を入れる必要はありません。大学入試で選抜するためなら、英検2級で十分でしょ。英語で自在にコミュニケーションできる人材を育てたいなら、英検準1級取得を課したコースを国公立大につくったらよろしい。そういう生徒には授業はオールイングリッシュとすればいい。旧帝大と偏差値の高い私大へそういう選択コースを設けるだけで十分目的が果たせます。採算が合うなら(つまり集団授業ができるほど生徒が集められるなら)私大でもそういうコースを設置する大学が続々と出てきます。ほとんどの学生は英語はほどほど、専門分野の知識をしっかり培ったらいい。国力の礎はそちらの方です。

 実は大きな問題がもう一つあります国際的なビジネスの場で必要なのは英語でのコミュニケーションよりもビジネスの能力そのものです。つまり、その人の持つ専門能力が問われます「英検1級合格してます英語が喋れます」でGAFAは雇いませんよ。笑われますよ。文科省は大きな勘違いをしていませんか?インド工科大学へGAFAの求人が殺到しています、それは厳しい競争を勝ち抜いて、大学でさらに専門分野を極めた学生が多いから、つまり専門能力に秀でている学生が世界一多いからです。外交の場なら、英語でのコミュニケーションよりは外交問題の分析能力と対応策の立案能力、そしてそれを実現する胆力と論理的な反駁能力が重視されるでしょう。わたしは産業エレクトロニクス専門輸入商社や業界ナンバーワンの臨床検査会社に勤務してきましたが、英語ができるだけの人はいいように使われるだけ、出世コースには乗れませんし仕事の専門能力やマネジメント能力の面で弱点を抱えている人が多かった。民間企業ではマルチ能力の人材がもう40年も前から求められています3~5分野を自在に歩けるような仕事人は希少人材です絶対的に不足しているのはそういう人材です。現行の教育制度がそういう人材を育てるのに適していないからですよ理系だ文系だなんて区分はビジネスの尖端分野ではとっくに垣根が消滅しています。「教育村」の中だけで議論していると、こういう社会のニーズ変化に気がつかないことはありませんか?

 根室の市街化地域の中学校で考えると半数は英語で落ちこぼれています。「落ちこぼれ」をどう定義するかにもよりますが、実際には6-9割の生徒が落ちこぼれています。市街化地域にある根室市立啓雲中学校の2月3日の学力テストで、1年生の英語のテストを「得点通知票」で見ると、英語が81点以上は27人中3人だけです。簡単な問題のテストですから60点以下の18人(66.6%)はすでに落ちこぼれていると判断していいでしょう。
 それよりもっと大きな問題は国語の平均点が41.0点であること。半数の生徒が知的な大人と会話が成り立たない、あるいは先生が授業で使う語彙を頭の中で適切な漢字に変換できない、つまり授業が理解できない語彙力レベルです。国語はすべての科目の土台をなしています。今どの科目に深刻な問題が生じているかはこの学力テストデータだけでもわかるし、国立情報学研究所の新井紀子氏の研究でも同じ問題が指摘されています。
 大半の生徒が小学校で英語アレルギーとなり中高で苦労することになります。小学校時代に英語の塾へ通った者生徒たちの中で、モノにできたのは1-2割くらいなものすっかりアレルギーになった子どもたちのなんと多いことだろう。それを元に戻すにはたいへんな努力がいるのが現実。
 ニムオロ塾で今春卒業した高3の生徒8人の内、英語が得意だった生徒は国立旭川医大に現役合格した1人のみ。男子4人と女子一人はすっかりアレルギー症状を起こしてました。残りの女子3名にも英語が得意な生徒はいませんでした。小学校時代に英語塾へ通ったことのあるのは5名いました。アレルギーの生徒たち5名には2年生のときと3年生の秋に、2時間合計16回ほど長文読解トレーニングをしてようやく受験に間に合わせています。12月になって「先生、簡単な長文ならだいぶ解るようになりました」と過去問解いている生徒から反応があってほっとしました。
 今般の小中学校のカリキュラム変更と大学入試制度変更(6教科30科目からプログラミングを加えて7教科21科目へ)後は、もっと厳しい現実が待っています。
 地方の低学力層は切り捨てになるでしょう。
 学力格差が広がり、低学力層が肥大化します。その低学力層を受け入れる企業はあまり国内に残っていません。工場の多くはもう40年以上も前から海外移転してます。低学力層が増えるのに、それを受け入れる企業が国内にはほとんどありません。社会不安を助長します。健全な経済社会や安定した社会に寄与するのは教育政策の重要な目標の一つです。

 日本の教育政策が目標とすべきは、グローバリズムを後押しすることではなく、分権と地域主義と「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」の両立が可能な経済社会の建設のために必要な人材を創り出すことにあります。あらゆる産業が揃っている日本しか、そういうことがやれる国はなさそうに見えます。
 日本は新しいタイプの経済社会の見本を創って見せることで、21世紀の人類に大きな貢献ができます。少し遠くまで見つめて考えませんか?

*4516 学力テストの五科目合計平均点167.4点/500点満点

*#2386『学力危機 教育で地域を守れ北海道』:本の紹介 Aug.29, 2013


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学力危機 北海道 教育で地域を守れ

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 3/28朝のNHKラジを番組を聴いていたら、中村敦彦『日本が壊れる前に』を材料に著者本人へインタビューをしていた。
 いまや普通の主婦や女子大生が風俗で働いているという。そしてコロナ禍でその1/3が仕事がないそうだ。なぜ、女子大生が昼は学校へ行き、夜は風俗で仕事しているのか、お金がないからだ。
 非正規雇用で平均賃金をもらっている人ですら、風俗やらないと食べていけない状況だと著者の中村氏は述べていた。こんな経済社会でいいはずがない。「コロナ禍で貧困が可視化」したという。
 貸付金方式の奨学金や大学の乱立、そして進学率のアップも関係があるだろう。機会があったら、この本を採り上げてみたい。

日本が壊れる前に――「貧困」の現場から見えるネオリベの構造

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#4516 日本が目指すべき教育改革:学テ五科目合計平均値167.4点/500点満点 Mar. 25, 2021 [71.データに基づく教育論議]

<最終更新情報>3/25午後7時半 <教育政策が目指すべきはグローバリズムではない>追記

 啓雲中学校1年生の2月学力テスト得点通知票を見て平均点の低さに驚いた。五科目合計の平均点が167.4点だった。2018年の2月の学力テストで柏陵中の2年生が164.3点だったがそれ以来である。
科目別にみると数学の19.2点がひどい。


学年 実施年月日 国語 社会 数学 理科 英語 合計
1 2003/11/11 47.3 50.3 51.7 62.6 63.5 275.4
2 2005/2/3 58.2 48.0 36.7 50.8 45.6 239.3
1 2020/11/11 53.1 49.2 27.4 26.8 43.6 200.1
1 2021/2/5 41.0 36.7 19.2 35.1 35.4 167.4

 2003年の1年生は275.4点だから同じ11月で比べても18年間で75点も下がっている。
 数学の得点分布を見ると、
 20点以下 11人
 21-40点   5人
 41-60点   7人
 61-100点 5人
 
 テストを受験したのは28人(57.1%)であるが、この階層は分数や少数の四則計算すら怪しい。中学校では授業でそんなことは教えないから、落ちこぼれたままになる。そういう学力でも全員が根室高校へ入学できるから、学力の低い生徒はますます勉強しなくなる。この学年は昨年11月の学力テストで五科目合計平均値が200.1点であるが、勉強をあきらめた生徒が増えたのではなく、たまたまテスト問題の難易度が高かったために平均点が下がったと思いたい。だが、数学が27.4点から19.2点に下がったところから判断して、方程式の文章題や図形、そして統計の問題という思考力が必要な分野が多くなっているから、もう授業にはついていけない生徒が半数以上いる、それで平均点が下がったと考えた方が妥当だ。
 国語の平均点が41.0点であるのは危険信号だ。大人の語彙を用いた日本語が通じない生徒が半数以上いるだろう。もちろん授業も理解できない。頭の中で適切な漢字へ変換ができないからだ。

 2020年の3年生対象の学力テスト総合Aの釧路根室管内15校の平均点のデータがあるのでそれをご覧いただきたい。根室の市街化地域の3校は集められたデータで最下位グループを構成している。
 光洋中学校のデータがないが、年度によって偏差はあるが、3校は似たり寄ったり、団栗の背比べ。
 2018年は18校のデータがある。

<教育政策が目指すべきはグローバリズムか?>
 こういう中で、文科省は2025年度の大学共通テストから6教科30科目から7教科21科目へ変更し、プログラミングが増える。プログラミングを教えることのできる教員が揃えられるのだろうか?大学ですら少ない、そして足りているとは思えない。小中高へタブレットや端末を配布したが、学校サーバーの管理技術者がいまですらいない。机上の空論で政策決定をしてはいないだろうか?
 英語は小学校から正規の教科に四月からなる。中1から動詞の過去分詞形まで習うようになるらしい。英語アレルギーが増えることになりそうだ。教育制度改革によって学力格差はさらに拡大する。半数以上が落ちこぼれるだろうが、そういう低学力層が働けるような単純作業はシステム化やシステムと機械化の融合で仕事がなくなったし、海外へ工場が移転してしまって久しい。これからも知的労働の一部がAI支援によって削り取られていく。教育改革で大量の低学力層を産み出し、彼らが就くべき単純労働がますます減少する社会になる。社会不安が増大し、人口が減少するということだ。
 すべての学力の基礎部分である日本語の読解力や運用スキルがスマホが普及する中で劣化している。そういうところはほったらかしで、グローバリズムに悪乗りする形で「教育改革」が押し進められ、制度が目まぐるしく変わっていく。文科省は一体どのような経済社会の建設を目標に教育制度改革をやろうとしているのか?
 わたしの眼には、グローバリズムを追認し、それに必要な人材をやっきになって供給しようとしているように見える。GAFAとその支配下の企業群に優良な人材を供給するために教育制度改革をするようなことになってしまいかねない。「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」を輸出し、農業や水産業、そして工業の生産システムを世界中の開発途上の国々へ輸出すべきではないのか。それでグローバリズムは止められる。
 そう考えると、現在の教育政策は真逆だろう?
 日本の国家戦略目標はグローバリズムに加担することではない、それを打破するところにある。グローバリズムは一部の勝者と99%の敗者を生むシステムだ。経済格差の拡大と、GAFAなどの巨大企業へ第1次産業も第2次産業も支配される経済社会の到来を意味する。ブラックホールが周りの物質を呑み込んでいくように。いま止めないと止めるのが困難になる。巨大なことはそれ自体が悪だ。どちらの側につくのか日本が判断を求められている。
(グローバリズムに対立する概念としてはリージョナリズム(地域主義)がある、別項でその概念を検討してみるつもりだ。国民国家とリージョナリズム、中央集権とリージョナリズム、いくつか異なる場面でリージョナリズムが語られてきた。)

<釧路と根室市議のコンタクト>
 昨日、釧路市議の大越拓也さんが根室に来ている。数検の関係者を伴なって、根室市議や教育関係者とミーティングしたようだ。
 釧路は西ロータリークラブが数検受験料を負担して、地域の子どもたちに数検受験を薦めている。数年間支援活動をやっている。当初は学校を借りて試験会場にしてボランティアが支えていた。根室はふるさと納税で資金が潤沢だ。数検につぎ込むお金は微々たるもの。

--------------------------------
仕事とは別に一人の住民として社会貢献活動に取り組んでいる公務員をたたえる「地域に飛び出す公務員アウォード2013」に釧路市の大越拓也さん(37)が選ばれた。全国でわずか4人、道内からはただ一人の受賞となる。地域の大人たちが子どもを見守りながら育てる「てらこや」の活動が高く評価された。
--------------------------------

 ところで啓雲中学校は4月から光洋中学校へ統合される。根室の市街化地域は2校になる。柏陵中が1学年50人以下だから、数年後には1校体制になるだろう。そこへ向けて準備をすべきだ。

 続編は#4517です。

#4517 教育政策におけるグローバリズムとリージョナリズム考 Mar. 26, 2021



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#4515 ユルリ島七つ岩とゴメ:春が来た Mar. 23, 2021 [A8-1 短歌・俳句・川柳もどき]

<最新更新情報> 3/25朝8:50<学力低下への危惧:底が抜けた?>追記

 浜松(根室市落石)の浜辺に春が来た。クルーズでエトピリカやケイマフリが見られるのでところです。
 ユルリ島の七つ岩を後ろに、白波のたつ浜辺でゴメ(カゴメ)が飛んで遊んでいます。風が強いと楽しいのでしょうね、おもうようには飛べませんから、低く飛ぶと強風で海へ叩き落されるのもいます。こんな日は浜辺に打ち寄せる波の音が数キロ先まで響きます。多摩川の鉄橋を電車が通るときに出す音によく似ています。時化てる日は桂木海岸に打ち寄せる波の音が1.5㎞ほど離れた家まで低周波の地鳴りのような音になって聞こえてくるんです。

 時化(しけ)の日は 海は高波 空にゴメ
   群れて遊んで 浜辺やかまし

   昆布採る 浜に白波 立つ春は 
   空舞うゴメも 風に流され

 荒海の 寄せる波音 囂々(ごうごう)
  鴎(かもめ)群れ遊ぶ 落石(おちいし:地名)の浜


 氷融け 風に舞い発(た)つ 浜のゴメ 

 今朝は2度くらいですから風は冷たくまだ寒い。根室へ車で来たら、落石や浜松まで足を延ばして、のんびりとユルリ島とモユルリ島を眺めてください。
 ゴメは時化でも浜辺で遊んでいるが、根室っ子は外遊びしなくなって久しい。ごろごろしてスマホ片手にお菓子食べてると、肥満になるぞ!運動能力も落ちている。たまには外で走って遊べ。缶蹴りなんて楽しいぞ。

 落石の女性写真家さんの許可をいただいたので、写真をアップします。浜辺の暮らしを写真にするのがとってもお上手です。
 これは、縮小版です。オリジナルはFBの「根室人」グループの投稿の中にあります。会員限定の閲覧になっていますので、オリジナルをご覧いただけないのが残念。会員申請すればOKです。

 正面がユルリ島、右端のごつごつした岩が七つ岩です。(3/22撮影)

森康子163491138_825463978368646_2304188775349605154_os.jpg


 落石海岸の砂浜はすぐそばに30-40mの高さの崖があって、人の頭より小さいくらいの落石が転がっている。それを見たときに「おちいし」という地名の由来がわかったような気がした。

<余談:浜松>
 東京生活を35年で切り上げて根室へ戻って来て小さな私塾を開いて2年後くらいのことだった。
 「先生、土曜日に浜松行ってきた」
 「おう、浜松か、ずいぶん遠く旅行したな、うなぎパイ食べたか?」
 「???」生徒が怪訝な顔してた。
 落石に浜松地区があるのを、根室っ子のはずの私が知らなかった。浜松漁港は高台から30-40mほど下ったところにある。崖のような急坂と海の間は100mもあるだろうか。細長い漁港である。
 35年間東京暮らしだったわたしは、「浜松」といえば、静岡県浜松市、浜名湖とウナギで有名なところしか思い浮かばなかった。東京台東区竜泉に住んでいた先輩が横浜戸塚区へ引っ越し、そのあとご実家の自転車屋さんが浜名湖の近くに移転して、自転車&オートバイやさんになり、そこを訪れたことがあった。だから、すっかり「浜松=静岡県浜松市&浜名湖&ウナギ」という方程式が頭の中にできていたのだ。阿呆!
 昆布森は高校の同級生K浜さんが昆布森小学校の校長先生の娘さんだったので知っていたが、落石と昆布森漁港の間に浜松漁港と浜松地区があるとは知らなかった。浜松の公園には摩周湖の伏流水を引いた農業用水の水の蛇口がある。美味しい水だ。厚床まで32㎞、納沙布岬まで22kmだから土日に車で根室市内の端から始ま出気軽に出かけられる、東京オリンピックの年昭和39年ころはサラリーマン家庭で車を所有している家はほとんどなかったが、いまは高齢者を除いてそれぞれの世帯が車を所有している。昭和30年代終わり、東京オリンピック(1964年)の頃に比べたら、市民の平均的な生活レベルや所有しているもののレベルが違う。その一方で、無尽蔵に思えた蟹の資源は沿岸でわずかに獲れるだけ、サンマも激減、資源はこの60年間の乱獲で、見る影もない。
 60年後の姿はどうなるのだろう?わたしたちは60年後を見据えて、しっかりした手を打っておかなければならない。そのためにも、町の未来のために、子どもたちの教育がますます重要性を増している。

<学力低下への危惧:底が抜けた?>
 数日前に啓雲中学校1年生の2月5日実施学力テストの得点通知票を見て愕然とした。五科目合計の平均点が167.4点である。500点満点です。いままで市街化地域の3校で何度か190点台だったのを見たことはあったが、こんなに低いのは初めてです。数学の平均点は19.2点、百点満点でこの点数です。28人中11人が20点以下です。
 何が起きているのか、おそらく釧路市と根室管内の市街化地域の中学校では最下位です。以前から、根室の市街化地域の3校は釧路市と根室管内の学力テストの五科目合計点の平均値が最下位グループでした。それが底が抜けたようになってしまいました。
 この問題は別稿でとりあげます。根室の町の未来に重大な影響がありますので。これは根室市の教育政策の問題であるとともに、保護者の問題でもあります。要するに根室に住み暮らしている大人たちの教育への無関心が、こういう現実を生んでいるということです。


*ユルリ島の美しい映像
ユルリ島 ウェブサイト (okadaatsushi.com)
YURURI ISLAND #3 - YouTube
YURURI ISLAND #4 - YouTube

誰も入れない幻の島。鳥・花・馬が共生するユルリ島を守りたい!(田嶋 靖照 2018/07/02 公開) - クラウドファンディング READYFOR (レディーフォー)

【HTBセレクションズ】ユルリ島と、残された馬 - YouTube

【旅エイター・1145】★ドローン空撮『ユルリ島の馬たち』北海道根室市・一人旅 - YouTube

*ユルリ島
ユルリ島 - Wikipedia

*モユルリ島
モユルリ島 - Wikipedia

*落石の朝日食堂 お客さんのコメントが愉快
『地元感満々の食堂』by auuu : 朝日食堂 - 落石/定食・食堂 [食べログ] (tabelog.com)



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#4514 根室高校2年生快挙:積分の章終わった! Mar. 22, 2021 [65.a 成績上位層にかかわる問題]

 昨年の2年生は特設コースの数学授業速度が遅くて積分の章にまったく手が付けられずに終了。
 今年の2年生は速かった、「速度違反」で切符を切りたくなるようなと言ったらいいだろうか。消化できる生徒がいるのかと、塾でフォローしながらハラハラ、心配になった。消化不良を起こしてあきらめた生徒がでたのはしかたがない。信じられないだろうが普通科で数Ⅱは選択科目になってしまっている。廃校になった根室西高校は数Ⅱが選択科目だった。根室西高校との統廃合4年目で、根室高校普通科全体がそういうレベルになってしまったということ。

 担当のS先生はプリントを配って予習させていたが、2月からネットでの動画による解説を始めた。QRコードを発行して生徒たちが見れるようにしている。
 配布しているプリントは予習問題だが、共通テストや模試過去問レベルの難易度の問題である。3年生の「発展数学」で採り上げるレベルの問題だが、3年前の3年生で「問3」の問題に手を付けられる生徒は、塾に来ていたH君のみ。質問が多かったのであるとき「こんな難易度の問題みんなやって来てるの?」と聞いたら、「やっているのはわたしだけ」と答えた。「問3」は難関大学進学希望者以外はあまり必要がないレベルだったから無理ない。数Ⅲ履修者には必要。数Ⅲと「発展数学数ⅠAⅡB」は両方履修できるのかな?

 S先生が教えている生徒はスマホで動画の解説を見ていた。画面が小さく見づらい。学校が配布したHP社製のPCを生徒がもってきたので、スマホから動画リストをe-mailで転送させてみたら、PCでを開けた。スマホではぼやけてしまう小さな文字がくっきり見える。スクロールせずとも全画面が見れ、大きいからとっても見やすい。数学は全体が一瞥できると様子がよくわかる。虫眼鏡で拡大するような見方をすると視野から外れた部分が同時に確認できなくなる。こんなにクリアに表示できるのはこのHP社製のディスプレイの性能がいいからだろう。SSDだからバッテリーは10時間以上持ちそうだ。逆折にして机の上に置いて勉強していた。途中2か所で質問があった。一つは先週教えたのと同じ2次方程式の解と係数の関係を用いたもの。あとは問題文に書いているのを見落として、「どうしてこんな式が出てくるのか?」と思案投げ首。(笑)
 問題文に書いてあるよと言ったら、「ほんとうだ」と大笑い。

 これでパソコンが強力な武器にかわる。学校で使い方をおしえたほうがいい。グラフソフトのGRAPESも無料だから、生徒全員のパソコンにインストールしたらいかが?

 半年早く難易度の高い問題にチャレンジできるようになった。模試の「問3」レベルの問題はネットに動画をアップして解説してあげたら、上位8人くらいは何とか食らいついて来れます。青チャートレベルの問題です。


 わたしは英作文問題を生徒に配信してます。昨年1月14日から始めた英作文問題はすでに640回4800題、A4判で651頁になりました。生徒にはこんなに送ってません。1/4ほどです。個別に配信できるので、学力に合わせてグループ分けしてます。

 難易度の高い問題プリントを配り、動画をアップして解説をし予習させたら、成績上位層の8人くらいは消化できますね。いままで塾でやるか、自力で青チャートレベルの問題を消化するしかなかった生徒たち数名が、救われます。消化不良起こしてましたから。
 S先生の解説動画を見てわからない箇所は、塾でフォローします。学校と塾が協力すれば、成績上位層の生徒の学力を田舎の進学校並みに伸ばせそうです。
 田舎の進学校ってどこだって?釧路なら湖陵、帯広なら柏葉、北見なら北見北斗です。3校とも偏差値60超です、根室高校は43-47。でもやり方次第ですよ。成績上位層はちゃんと育ててやりましょう。それが私を含めて根室の大人たちの責任です。

 国語と英語と選択3科目が次の課題かな。一つ一つ解決したらいい。




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#4513 ファイザー社製ワクチン個別接種は無理筋:知らざるを知らずと為す...   Mar. 21, 2021 [35.1 COVID-19]

 集団接種予定だったファイザー社製のワクチンが日本医師会中川俊男会長と河野太郎行政改革担当大臣の間で決まったという。ファイザー社製のワクチンはディープフリーザーで‐75度保管、衝撃や揺れに弱いので配送が通常の薬品卸ルートでは無理なのである。今頃になってなんでこんなに大きな方針変更がなされるのか、無神経にもほどがある。

 病歴を知っている掛かりつけ医の判断での接種が患者にとっては一番安心である、そこはいい、モノの道理である。
 副作用情報が錯綜して、専門家ですら意見が分かれているワクチン接種を普通の国民がその安全性を的確に判断できると思うのは幻想である。掛かりつけ医だって判断に迷うだろう。

 通常配送ルートを利用することで困るのは、保管温度が-75度であることと揺れや衝撃に弱いこと、そしてロット管理や配送時の温度記録を追跡できるようにすることだ。揺れや衝撃に弱いというのが一番問題かもしれない。他の試薬と混載して載せるわけにはいかない。ファイザー社製ワクチンの品質を保証するには車も人も別便で対応するしかないが、そんな人的・設備の余裕なんてあるわけがない。月次で損益を管理しているから、薬品問屋の各支店や営業所はギリギリのところでやりくりしている。

 薬品卸は常温、冷蔵、冷凍の3種類の薬品を配送している。冷凍と言ってもせいぜい-10から-20度の範囲でそんな商品は滅多にない。ディープフリーザー保管の薬品などほとんど扱ったことがないし、ディープフリーザーの設備もない。SRLでは年間100億円くらいも検査試薬を購入していたが、保管用冷蔵室とフリーザーはあったが-80度仕様のディープフリーザーはSRL八王子ラボ購買課にはなかった。検査室には-80度のディープフリーザーが八王子ラボには50台以上あると思う。1988年ころのことだが、研究部に-150度の日立製のディープフリーザがあった。市販品ではこれが最高性能のディープフリーザである。当時は薬品卸3社と取引があった。1社は大手薬品卸である。わたしは2年半購買課で仕事していた。担当は検査機器と購入協議書受付・審査、固定資産管理、購買システムに関わる一切の業務、そして検査試薬の価格交渉プロジェクト担当。薬品問屋と交渉してもムリなので、取引のある全製薬メーカーと直接交渉していた。検査試薬担当3名も横で仕事していたので自然に業務内容がわかる。全検査部検査室に仕事の打ち合わせ等で立ち入るので、購買課も含めて八王子ラボの全監査部、検査室がどのような設備や検査機器をもっているかも熟知していた。入社してその年に固定資産台帳の記載に不備がたくさん見つかったので、八王子ラボ固定資産全部を八王子ラボ側の担当者を同行して棚卸を実施、台帳の記載を直した。フランキ、フランキー、孵卵器、恒温槽はどれも同じものを指していた。本社で固定資産購入協議書の担当者は機械のことがわからない、もちろん見てもいなかった。固定資産の分類コード表を作成して固定資産管理システムを作り直した。冷凍庫は温度帯で分類した。本社は西新宿、ラボは八王子だから購入協議書担当者が実物を確認するのは無理だった。だから、記載ミスがたくさんあったのである。実地棚卸も規程がなかったので、手順を決めてそれも作った。検査機器の一部はメーカーと検査機器の共同開発もしていた。ここもやること満載、面白い部署だった。
(つぎの、学術開発本部は検査試薬の共同開発の標準化や検査項目コードの標準化、沖縄米軍から要求のあった出生前検査トリプルマーカの導入プロジェクトをマネジメントし、続いて慶応大学病院との出生前診断検査基準値に関する産学協同プロジェクトを担当したのでもっと面白かった。2年弱で「卒業」し、新しくできた関係会社管理部では赤字の臨床検査子会社の黒字化や、SRLグループ企業全社の経営分析と他の臨床検査会社の買収や資本提携を担当したので、ますます楽しくなった。臨床検査業界ナンバーワン、大きな会社は面白い仕事がいくらでもある。)

 ワクチン接種したにもかかわらずCOVID-19に罹患した患者が出たら、配送中のワクチン事故を考えなければならない、同じロット、同じ配送ルートを使ってワクチンを届け、個別接種をした患者を追跡、対処しなければならない。かかりつけ医の方でも在庫管理をして、バイアルごとにどの患者に打ったのか記録を残さなければならない。
 集団接種が前提だったから、そんな用意はないだろう。個別接種の受け入れ態勢を考えるとファイザー社製ワクチンは「不良品」である。ワクチンの仕様も碌に読まず、メーカと契約の話をしたのは厚生省のどの部局だ?実務知識のない者たちが寄り集まって杜撰な仕事の結果がこの体たらくである。

 日本医薬品卸業連合会は突然の方針変更に厚生省に抗議している。今更押し付けられても、ワクチンの配送に責任が持てないからだ。当然だろう。

 実務を知らないトップ同士で物事を決めることの危うさがここにも現出している。薬品卸の実務に疎い日本医師会長と河野大臣、暴走である。河野大臣は薬品に関してもワクチン接種を担当できるに十分な専門知識やマネジメント力があるとは思えない。おまけに独断的な性格の強い人だ。

 「子曰、由誨汝知之乎、知之為知之、不知為不知、是知也」 『論語』為政より
 「知らざるを知らずと為す是知るなり


 知っていることと知らないことを、はっきり区別し、知らないのに知ったかぶりをしてはいけないと戒めた言葉。真に「知る」とは知らないということを認めるということである。孔子がやや独断的な性格の弟子の子路を諭した言葉。三省堂『中国故事成語辞典』358頁

 ソクラテスの「無知の知」に同じ。


<記事の引用先>
医師会の「ごり押し」で現場は混乱…ワクチン個別接種が“危険な賭け”である理由

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揺れや衝撃にも弱いファイザー社製ワクチン

 ワクチン課題を担う河野太郎行政改革相は、3月12日の記者会見で5月中には約2150万人分(1瓶当たり6回接種で計算)を確保する見通しだと述べた。だが、どの自治体に、いつ、どれくらいの量が送られるのかは依然として不透明だ。

 1バイアル当たりの接種回数も、6回が5回に変更され、6回分を確保できる特殊な注射器を探して右往左往する。ワクチンを生理食塩水で希釈するためのシリンジ(注射器の筒)が不足していると分かったのも、つい最近だ。

 そもそも米国ファイザー社製のワクチンは、扱いが難しい。マイナス75℃前後で各自治体が設置する、超低温冷凍庫のディープフリーザーに運ばれて、そこで保管される。厚生労働省は当初、体育館などの大型施設での集団接種を考えていた。温度管理だけでなく揺れや衝撃にも弱いファイザー社製ワクチンを移送するのは、最小限にとどめたいからだ。

 1月27日、日医の中川会長が記者会見でこうぶち上げた。

「住民への接種は、普段の健康状態を把握しているかかりつけ医で安心して受けられることが重要」

小分け移送のデメリット

 つまり、集団接種と並行して個別接種を柱の一つに加えるよう提言したのだ。となれば、小分けして診療所に移送する手段が必要になる。ワクチンは摂氏2~8℃を保つ保冷ボックスで移送し、5日以内に使い切らなければならない。

 確かにかかりつけ医で接種できれば、患者ごとのアレルギー体質や病歴などを把握しているから安心につながる。

 だが、デメリットも少なくない。小分けの際には、どのロットのワクチンを、いつ、どこの診療所に、どれほどの量を送るのかなど管理手続きが煩雑になる。なにより小分けするほど、貴重なワクチンに無駄が生じる。また、診療所での接種を実施すれば、集団接種を担う医師や看護師の確保にも困難をきたす。

 ところが、中川会長の会見以降、事態は一気に動き出す。

政府への根回しはできていた

 記者会見5日前の1月22日、中川会長は河野行革相と面談して「個別接種」を申し合わせているという。政府への根回しはできていたのだ。そして会見2日後の29日、それまで大量の小分け移送に後ろ向きだった厚労省が、突然、動き出す。個別接種を中心とした「練馬区モデル」を「先進的な取組事例」として自治体に紹介したのだ。いわば個別接種を奨励したに等しい。

 それを知った自治体から、医薬品卸に問い合わせが殺到した。医薬品卸とは、実は医療においては重要な役割を担っている。製薬会社に代わって医薬品を医療機関に届けるだけではなく、薬の説明や、それに付随する医師の要望に応える医薬品供給のプロ集団だ。

 2月2日には、その医薬品卸を束ねる日本医薬品卸売業連合会(卸連)の渡辺秀一会長が、日医の中川会長に呼び出された。個別接種のための小分け配送に協力を求められた。

成功するかどうかは“賭け”

 だが、ファイザー社製のワクチンに関しては「携わることはない」と厚労省から何度も説明を受けていた医薬品卸は、戸惑う。医師会からの要請は意気に感じるが、いきなり配送せよと言われても情報が足りない。医師会や厚労省、製薬会社の狭間で立場の弱い医薬品卸だが、異例ともいえる文書を厚労省に送付する。

 突然の方針変更で「現場は大変混乱している」との抗議だ。

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