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#5214 小中高生と本の語彙の六段階難易度別クラス分け April 19, 2024 [47.1 読み]

<更新情報>4/20朝7時 文系・理系のマルチ分野の仕事に関する追記

 出てくる語彙レベルとルビの有無やルビの範囲によって、世の中に出ている本の難易度を分類してみます。
 基本は五段階ですが、枠内に収まらぬものは第六段階としましょう。

 ①総ルビの本
 ②常用漢字の範囲内の本
 ③常用漢字+αの本:普通の大人が読めるレベルの語彙で書かれたもの
  新書版の本は専門書への橋渡しのものが多いのでその類はこのクラスです。経済学史の内田義彦先生の本は岩波新書であっても、④に入れます。思索が深いのと、元々の原稿を1/3にそぎ落としているからです。
 ④難解なもの、普通の日本文学の古典:各種の専門書
 ⑤内容がむずかしいもの
  『資本論』『経済学批判要綱』『国富論』『道徳感情の理論』など
 ⑥理解するためにいまではレアな周辺知識や修行を必要とするもの
  『源氏物語』『正法眼蔵』の類

 本好きな小学5年生がいて、昨年は200ページ前後のルビの多いものを200冊ほど読んでいました。上の分類では①レベルです。年が明けてからは、夏川草介のシリーズを読み始めました。医者の書いているものですから、医療の専門用語が頻繁に出てきます。分類③に該当します。ルビは少ないのです。語彙の読み飛ばしは内容理解を浅くするのと、せっかく語彙拡張の契機を生かせないので、もったいないのです。それで、夏川草介の本『スピノザの診察室』を購入してあげて、「読めない漢字や、読めても確認したい漢字を丸で囲んでおいで」と伝えました。喜んでやっています。ルビを振りながら、漢字の意味解説をしたら、深く読めることが実感としてわかり、書いてある内容が深く理解できてうれしいようです。
 5年生や6年生で習う漢字の大半は読めてましたが、常用漢字の範囲を超える単語や固有名詞を中心に、1ページに複数の単語が読めてませんでした。たとえば、京都の「先斗町」が出てきますが、ルビがありません。こういう固有名詞で特有の読み方をするものはルビを振ってもらいたい。「声音(こわね)」も「常用外」の「読み方ですからルビが欲しい。
 最近は宮田珠己『いい感じの石ころを拾いに』を読み始めてます。これは語彙レベルが②です。
 夏川草介はペンネームから推して、夏目漱石をもじったものです。当て推量に聞いてみたら、「そうだ」との返事、漱石の作品の話題が本の中で採りあげられているそうです。清少納言の『枕草子』も話題に出てきますが、どちらも一部を読んでいるので特別に興味が湧いたようです。子どもの好奇心がどの方向へどのように走っていくのか、大人にはわかりませんから、自由にほったらかしたらいいのです。勝手に見つけた糸を手繰って濫読し始めます。面白かったらその作家のシリーズを全冊読むなんてことになります。実際に夏川草介の本は図書館から借りてきて片っ端から読んでいます。本は買ってあげたほうがいいですね。図書館から借りた本にルビを振るわけにはいきませんから。シリーズの中から1冊購入してルビを振れば効果が大きいですよ。一人の作家が使う語彙はそれほど多くありませんので。とくに現代作家は概して語彙力が貧弱です。

 北海道新聞の記者の方と話す機会があり、記事にルビを振ってほしいとお願いしたことがありますが、「どの程度の漢字にルビを振ればいいのかわからない」と仰っていました。なるほどなって思いました。団塊世代のわたしは75歳になりましたが、小学四年生(1958年)から北海道新聞社説と「卓上四季」というコラムを読み始めました。母親に「読んでみたら?」と言われたのと好奇心からです。当時の新聞は鉛の印字棒を木の枠の中に植字して印刷する方式だったのでルビが振ってありました。夏目漱石が明治時代に新聞い連載した小説は当て字だらけですが適切にルビが振ってありました。だからたくさんの庶民が読めました。
 コンピュータ写植になってから、DTP(DeskTop Publishing)では二十年間ほどルビが振れないという状況が続きましたが、現在は高性能のなっているので、ルビの制限はコンピュータの性能やソフトにはありませんが、肝心の新聞記者の方たちですら、適切なルビの運用に困難を感じているのですから、現代作家のほとんども同列の方が多いのです。
 日本語音読リストの最後に上げた著者の山本義隆の本の語彙は別格です。彼は智の職人で、物理学者には思えないほど使う語彙も洗練されています。当然ランクは④になります。このレベルの文章を書ける物理学者はいま日本には彼以外にはいないでしょう。高校物理の参考書も書いていますが、端から微分積分を使って解説しているので、教科書とはまるで違います。数学と物理学の好きな高校生にはおススメです。知の巨人と申し上げていい。彼は東大大学院生だった時に全共闘議長に祭り上げられて、東大に教員で残る道がなくなりました。日本人で最初のノーベル物理学賞受賞者の湯川秀樹が「将来ノーベル賞が取れる若者」と絶賛していました。科学史や翻訳書など、著作がたくさんあるので、興味のある若い人はぜひ読んでください。

 話はときどき脱線していますが、そんなわけで、小中学生が児童書から大人の語彙の本へ、②から③への移行期に適切な本が少ないのです。わたしはその間にある壁を小4の時にルビのふってある新聞記事を読み耽ることで乗り越えました。その後の学力の基礎は新聞のお陰なのです。3か月も国語辞書を引けば、新聞に出てくる語彙レベルは小学生でも消化できます。「卓上四季」⇒「社説」⇒「政治経済欄」と読み進むうちに語彙の爆発的な拡張が起きました。それで中学生では学校の図書室のSF小説を濫読、世界文学全集の中からも数冊読んでいます。一番厚かったのはパールバックの『大地』でした。高校生になったら、公認会計士2次試験参考書で学習するようになりました。当時は7科目で経済学が入っていたので、近代経済学と双璧をなすマルクス経済学も『資本論』にチャレンジ、ヘーゲルの『小論理学』も読みました。使われている語彙は読めるので、国語辞典を引けばいいだけ、それもごくわずかで済むほど語彙力が大きく育っていたのです。

 「読み・書き・ソロバン(計算)」、と昔から言いますが、これは学力を支える基本スキルで、優先順位も表したものです。読めない漢字は書けません。読める漢字の一部分が書けるだけです。そのあとに計算スキルがついてきます。これも珠算をやれば「超人的な計算力」を手中にできますから、小学生低学年で1~2年間ほど習わせてあげたら、強靭な計算力で高校数学がずっと楽になるでしょう。微分積分計算はもちろんのこと複素数の計算でもその威力を発揮します。

 日本語のあらゆる分野の専門用語は基本漢字で作られています。だから、基本漢字の意味さえ理解したらその専門用語の意味のだいたいのところは理解できます。たとえば、白血球は赤血球と対比すればよくわかります。赤い色はしていないのです。白い色もしていません(笑) 英語ではleukocyteと言います。この綴りを初めてみて理解できる米国人はいませんよ。white blood cellなら理解できるでしょうが、英語の専門用語はラテン語やギリシア語の接頭辞・語幹・接尾辞でできています。leukoは白を意味するラテン語で、cyteは球を意味します。だから、「白・球」という組み合わせでできています。漢字熟語に似ているでしょう?日本人なら小学四年生でも「白」と「球」の漢字の意味が理解できます。
 ついでに言うと、白血病はleukemiaと言います。leukeという綴りを見たらどうやら白に関係があることは理解できます。miaはおそらくラテン語で病気に関連する意味の語です。『ステッドマン医学大辞典』を引くとacromia(色素欠乏症)やviremia(ウィルス血症)が出てきます。これら病名は日本語表記なら高校生でもおおよその見当がつくでしょう。
 つまり、日本語は「専門外の専門書」を読むときに、英語を使っている国の人たちよりも百倍有利だということです。基本漢字というだけでなく、表意文字ですから意味がよくわかります。

 わたしの専門は経済学ですが、システム工学、プログラミング、複式簿記理論、会計学、管理会計学、原価計算論などの専門家でもあります。管理会計学、経営戦略、経営分析学、医学、理化学測定機や臨床検査機器の分野などの専門書を仕事に使いながら読んできましたから、これらの分野でもプロです。また、趣味の分野で(生成文法)言語学、仏教、ヨガ、経絡に関する本も読み漁りました。日本語の専門用語が基本漢字でできているメリットを存分に享受してきたのです。ありがたいことです。日本語のもつ「表意文字」と「専門用語が基本漢字で作られている」という2つの特異な性格を考えると、マルチ分野の専門知識と経験を持った人材がもっと出てきていいのにそうはなっていません。高校で文系・理系コースに分けてしまうのが大きな障害になっています。仕事の世界には文系・理系で割り切れない部分、それらが統合された複雑系の問題が広がっています。

 たとえば、1990年頃にやった仕事、慶応大学病院の産婦人科のドクターと出生前診断検査トリプルマーカ―の日本人基準値を制定する産学協同プロジェクトは、医師と試薬を無償提供してくれる製薬メーカーと、学術協力ということで検査を無償で担当するSRLと多変量解析をする研究部の古川さんという人たちが一つにまとまらなけらばできない仕事でした。それらの関係者とコミュニケーションしてそれぞれが好い仕事をするためには、それぞれの専門用語でコミュニケーションとマネジメントが必要でした。分野の異なる専門家をマネジメントするには、こちらもそれ相応の専門領域のエキスパートであらねば、信頼関係が産まれません。
 臨床検査項目コードの日本標準コードは、全国の病院やクリニック、病院システムで導入されています。とても便利なコードです。世界中で日本だけが標準コードを制定し、そのコードで実際にコンピュータシステムが動いています。1986年から5年かけて出来上がったこの臨床検査項目コードの日本標準制定には、臨床検査大手六社のシステム部門と学術部門の専門家、そして臨床病理学会の項目コード委員会・委員長の櫻林郁之助教授という、産学共同プロジェクトが必要でした。システムと学術はそれぞれ別の部門です、そして臨床検査項目コードの日本標準や世界標準を作るという提案は、それらの異質な分野の人たちを産学協同プロジェクトに参加することで大きな仕事をしてもらうということなのです。異質の分野の専門家を一つの産学協同プロジェクトにまとめ上げるというのは、マネジメントです。システム工学、3000項目を超える臨床検査に関する専門的な知識、そしてそれらを一つの目標へ向けて統合するマネジメントが必要でした。BML社のシステム部長が新たなラボの建設に合わせて、業界の臨床検査項目コードを制定しようと、大手六社に呼びかけを行ったのが、この産学協同プロジェクトの発端でした。2回目の会合にSRLからシステム課長の栗原さんと購買課員のわたしが出席しました。私が提案して創業社長の了解をもらっていた「臨床診断システム開発と事業化案」で栗原さんと一緒にNTTデータ津新事業本部と数回ミーティングをしていたので、一緒に会議へ出てみないかと相談がありました。業界で臨床検査項目コードを制定しても、病院側が使うはずがありませんから、SRL顧問の櫻林郁之助自治医大助教授(当時)が日本臨床病理学会の項目コード検討委員会・委員長をしていき詰まっているので、引っ張り出そう。臨床化学部第3課の免疫電気泳動の顧問だから、臨床化学部長の川尻さんも連れて行こうということになりました。第2回の大手六社のミーティングで、わたしから、臨床病理学会との産学共同プロジェクトにして、日本標準コード制定作業部会へ発展的ん位解消しようと云うと、全員賛成でした。3回目の会議に櫻林先生をお連れしました。そこで、システム部門と学術部門からそれぞれ2名参加してもらうことに決めました。5回目くらいまで出席して、産学共同プロジェクトがしっかり軌道に乗るのを見届けて、わたしは離脱してます。1990年に学術開発本部スタッフ課長職になったので、一回だけ出席してます。91年に臨床病理学会から標準検査項目コードが公表されています。SRLがコード管理事務局になっています。
 このように大きな仕事に文系・理系の区別はありません。基盤技術あるいは基礎的なスキルはシステム工学と統計学でした。検査項目コードが統一されていなければ、それらに関する統計データすら収集することができません。AIにディープラーニングさせるにはこうしたインフラの整備が不可欠なのです。AIだけ研究していてもできない仕事です。基盤インフラの整備が必要になってきます。医療の分野へのAI導入ではこの基盤的なインフラ、標準臨床検査項目コードを30年以上前から運用している日本が圧倒的に有利かもしれませんね。91年の公表から、世界中の国の医療関係者が関心を寄せています。いずれ臨床検査項目コードの世界標準が制定される日が来ますが、日本標準コードがそのたたき台(基盤)となります。「臨床診断支援エキスパート・システム開発及び事業化案」には10個のプロジェクトがありました。コンピュータの処理速度と通信速度がシステムの要求基準を満たすのは30年先になるというのが、NTT通信事業本部との会議の結論でした。それで、開発を中止してます。創業社長の藤田さんから200億円の予算承認をもらっていました。200億円使い果たしたら、増資してお金を集める算段をしてました。数兆円規模の事業を想定していました。あれから20年でコンピュータの性能と通信速度はエキスパートシステムの要件をクリアしてます。見誤りました。画像通信が要件の中にありましたので。(笑)

 1978年から1984年1月まで勤務していた産業用エレクトロニクス輸入商社では経営戦略、経営改革、経営分析、システム開発などを担当していました。入社して1週間後にはオーナー社長関周さん提案の5つの社内プロジェクトを担っていました。長期経営計画委員会、収益見通し分析委員会、電算化推進員会、為替対策委員会、資金投資委員会の5つ。常務の加藤さんが委員長だった利益重点営業委員会だけはメンバーではありませんでしたが、円定価システムというシステム開発を伴なうものだったので、営業業務デザインの変更と円定価システム開発実務をすることになった東京営業所長の遠藤課長からの協力要請で一緒に仕事しました。技術部も営業部門も優秀な人たちとのネットワークは仕事を通じてふだんから培ったものです。もちろん、お酒もとことん付き合いました。(笑)
 長期計画は5年の長期計画と3年の実行計画、そして単年度経営計画(予算)で成り立っています。経営計画スケジュールの裏付けがなければ長期計画は絵に描いた餅になりますから、具体的な経営計画をPERTチャートでスケジューリングします。円定価制度の導入は、四半期ごとに為替変動に対応して定価表改訂システムを運用することで可能になりました。為替対策委員会と電算化推進委員会、収益見通し分析委員会、長期経営計画委員会の課題が、仕入システムや受注残管理システム、納期管理システムの開発で、それらが受注レート⇒仕入レート⇒決済レートと連動することで問題の解決が可能になりました。経営上の困難な改革は、複合分野のスキルを要求しますから、文系・理系の区別はありません。これらの具体的なシステム改革や、実務の仕組みを通して、営業業務の生産性を2倍にアップする計画の立案や、為替対策を含んたシステム開発と輸入仕入れ業務の新しい実務デザインと電算化、それらを取り込んで損益シミュレーションと資金のシミュレーションをすることが可能になります。過去5年分のその会社の経営分析データをつくり、それを元に新たな経営計画事案=システム開発計画を策定して、損益(経営成績)や資金(財務構造の改善)をシミュレーションします。5分野25ゲージのレーダーチャートにはそれぞれ標準偏差が設定してあって、総合偏差値で経営状態を表せるようになっていました。経営分析と経営改革のための経営数値シミュレーションモデル開発をしたのです。
 これらのシステムをつくるのに、当時はパソコンはまだオモチャでしたから、数値計算プログラミングをしていました。いわゆる理系の仕事ですね。HP-67とHP-97の400頁ほどの英文マニュアルを2冊、1週間で読み切ってすぐにプログラミング。そして半年後には経理業務に使っていたオフコンの言語COOLもマスターしました。数字12個(オペコード3ケタ、オペランド3ケタ×3個)でできている面白いプログラミング言語でしたが、統計計算にはまったく不向きでした。指数計算(指数が分数のものを含む)のオペコードがありません。やろうと思えば、関数ライブラリーを自前で作るしかありません。そんなことをするくらいなら、数値計算ができる汎用小型機を使えばいいだけでした。コンパイル言語のオフコンを仕入れ業務と為替管理と受注残管理のシステム開発時に導入してもらいました。マイクロ波計測器器をはじめとするさまざまな理科学機器が取扱商品でした。時間周波数標準機や質量分析器や液体シンチレーションカウンターも扱ってました。欧米50社の総代理店ですから、毎月1社は新商品の説明にエンジニアが派遣されてきます。英語での説明ですが、その説明会に6年間欠かさず出席していたので、「門前の小僧習わぬ経を読む」状態が産まれました。何しろ世界中のトップメーカの最先端の機器ですから聞いていて面白いのです。ディテクターと制御とデータ処理用のコンピュータそしてインターフェイスでこれらの機器が構成されていました。ディテクトする周波数が異なるだけで、それにコンピュータがつながっているだけですから、原理の理解はそれほど難しくありません。営業はすべて理系大卒、技術部門も出席していたので、それらの部門の人たちとコミュニケーションが普通のことになっていました。まさか臨床検査会社のSRLへ転職してそれらのスキルがそのまま使えるなんて予想もしていません。ただ一生懸命に新しい技術を英語の専門書を含めて、専門書を読み漁りながら、実務で使っていました。文系・理系の区別なんて意識はありませんでした。オービックの芹沢さん、日本電気情報システムの高島さん、それぞれその会社でトップクラスのSEと仕事したお陰で、彼等のスキルをコピーできました。芹沢さんは消息を知っています。オービックの開発担当役員になっていました。優秀な技術屋さんでした。
 メインバンクへ来期の業績見通しと、資金見通しを伝えるにも、取扱商品と新商品の情報はとっても大切なのです。それなしには、損益シミュレーションはできません。1年後に決算書が出てきますから、具体的な経営改革の裏付けのないいい加減なシミュレーションは通用しないのです。経営分析には加工したデータの解釈から思い込みを排除しなければなりません。結果がすぐに追いかけてきて25ゲージのレーダーチャートと総合偏差値で検証するシビアな世界です。
  産業用エレクトロニクス専門輸入商社を退職して、臨床検査業界ナンバーワンのSRLへ転職して経理部配属、その1か月後には、株式上場のための経営統合システム開発を担当してました。予算規模は10倍、当時国内で最大規模の汎用大型機を使ったシステム開発でした。業界初です。お手本がないので、パッケージシステムを開発するような仕事でした。スキルさえしっかりしていたら、転職しても給与はついてきます。専門書を読むだけでなく、すぐに実務で使ってみることで、スキルが磨かれます。専門書を読んで理解できるのはせいぜい20%です。それでも仕事を担うためには今までとは異質な分野の専門書を読む努力は不可欠です。

 50年ほど前から、そうした文系と理系が入り混じった解決困難な問題が増えています。コンピュータシステムがあらゆる分野に浸透してしまえば、システムエンジニアリングは文系理系の統合分野の基礎的な技術になってしまいます。統計学も同じ類です。日本には統計学に特化した学部も学科もありません。コンピュータシステムに関する学問、システム工学の分野も統計学ももはや文系と理系の両方の基盤的な領域にこの50年間で変わってしまったのです。そういうことに文科省や大学も気がついてません。だからそうした領域で必要になっている人材を「教育機関」という村で育成できていないのです。社会のニーズと合わない。変わるべきでしょう?

<出版関係の方への提案とお願い>
 常用漢字以外のものは原則ルビを振ってもらいたい。固有名詞で読み方が特異なものも3度だけルビを振ってもらいたい。小説は小学5年生以上で出てくる漢字にルビを振ってくれたら、読者層が増えます。
 中学校や高校で朝読書をしている学校が多いですが、生徒は読めない漢字は読み飛ばしていますから、いくら読んでも語彙力が強化できないし、意味も深くはつかめません。じつにもったいない状況になっています。そんなことがわかったのは、20年間生徒たちに日本語音読トレーニングをしたからです。成績下位30%以下の生徒は斉藤孝『読書力』ですが、1ページの数か所読めない漢字が出てきますから、「読み飛ばし」ています。本が好きなのに、ちっとも語彙力強化ができないというジレンマは、出版に関係する大人たちが意識を切り替えれば、環境を変えてやることのできる解決可能な問題です。

<日本語音読トレーニングで実際に利用した本のランク分け>
 話を語彙力強化へ戻します。52歳の時に仕事をやめて古里へ戻って小さな私塾(一クラス7名までの個別指導塾)を20年間やっていましたが、そこで日本語音読トレーニングで使用した本のリストをアップして、青色で五段階レベルのどれに当たるのかやってみます。
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〈日本語音読リスト〉…
*#3726 
日本語音読トレーニングのススメ:低下する学力に抗して Apr. 18,2018
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-04-18-1

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<7. 国語力アップのための音読トレーニング >
 中2のトップクラスのある生徒の国語力を上げるために、いままで音読指導をしてきた。読んだ本のリストを書き出してみると、
○『声に出して読みたい日本語』 
○『声に出して読みたい日本語②』 
○『声に出して読みたい日本語③』 
○『坊ちゃん』夏目漱石 斉藤孝の音読破シリーズ
○『羅生門』芥川龍之介 音読破シリーズ
○『走れメロス』太宰治 音読破シリーズ
○『銀河鉄道の夜』宮沢賢治 音読破シリーズ
 『五重塔』幸田露伴 音読破シリーズ
 『山月記』中島敦 音読破シリーズ
●『読書力』斉藤孝 
●『国家の品格』藤原正彦 
●『すらすら読める風姿花伝・原文対訳』世阿弥著・林望現代語訳 
●『日本人は何を考えてきたのか』斉藤孝 

『語彙力こそが教養である』斉藤孝 
●『日本人の誇り』藤原正彦(数学者) 

◎『福翁自伝』福沢諭吉 
◎『近代日本150年 科学技術総力戦体制の破綻』山本義隆(物理学者) 

(○印は、ふつうの学力の小学生と中学生の一部の音読トレーニング教材として使用していた。●印の本はふつうの学力の中学生の音読トレーニング教材として授業で使用した実績がある。◎は大学生でも語彙力上級者レベルにふさわしいテクストである。平均的な語彙力の大学生には手が届かぬ。
 音読トレーニング授業はボランティアで実施、ずっと強制だったが、2年前から希望者のみに限定している。本気でやる気にならないと効果が小さいので、お互いに時間の無駄。)

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 件(くだん)の生徒が音読指導で読んだ本のリストです。本の中身についても問題に気がつく都度、議論を重ねてきました。大学の良質のゼミ並みの内容をもってました。北大ではこういうレベルの学部のゼミはおそらくないでしょうね。
 わたしは学部では哲学の市倉宏祐先生のゼミに、大学院では3人で西洋経済史の増田四郎先生(元一橋大学学長)の授業を受ける機会に恵まれました。どちらもその分野では当時日本でナンバーワンの先生です。
 この生徒はやっているうちに慣れてきて、高校生になってからはそういう大学の学部ではトップレベルのゼミでやるような議論ができた特別な生徒です。
 だから、ご褒美に最後の本は西田幾多郎『善の精神』にしようかと考えていました。医学部に進学したら、哲学書なんてカタい本は読む機会がないだろうと思ったからです。でもやめました。興味がそっちへそれたら、思索にふけることになるのでとても時間を食います。好奇心が強いから危ない。(笑)
 それで、山本義隆『近代日本150年 科学技術総力戦体制の破綻』を取り上げました。π中間子理論で日本人初のノーベル物理学賞受賞者の湯川秀樹がもっともノーベル賞に近いと評した優秀な学生でした。この本は語彙が難解な本です。大学院生のときに全共闘議長に担がれた彼は、東大へ残れませんでしたね。時代の流れです。岩波新書のこの本を1冊読むだけで、知の巨人、本を書く職人としての彼の力量がはっきりと読み取れます。若い時に本物の知識人とまみえることは大事なことです。だからこの本を選びました。とてもカタい、めちゃカタい。(笑)


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