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備荒資金の取り崩しは規約違反? [26. 地域医療・経済・財政]

  2,008年4月15日   ebisu-blog#168 
  総閲覧数: 10434/140 days (4月15日0時00分) 

 窓から根室湾を遠望すると野付の方まで氷がたくさん浮いているのが見える。ホッキ貝が砂浜に乗り上げた氷で窒息するかも知れないので心配だという記事が道新に載っていた。もうひとつ、赤平市が財政再生団体指定を避けるために、備荒資金の取り崩し要請をしているという記事が載った。なんとしても1億円足りないのだそうだ。

 備荒資金については、「北海道市町村備荒資金規約」に定めがある。備荒資金とは、災害による減収補填や応急復旧事業費に充てるための積立金である。
  しっかりした会社や個人商店には備荒積立をしているところがある。農業や漁業は自然が相手だから、そうした部門をもつ個人や企業は備荒資金を積み立てるべきだろう。自然災害が生じたときに、数ヶ月間の難局を乗り切るために必要な資金である。
 北海道は火山噴火や地震が多い。自然災害が起きて甚大な被害がでたときに積み立てられた備荒資金が取り崩される。

 赤平市が財政再生団体指定を避けるためにこの資金の取り崩しを要請したという。地方自治体の財政赤字は人災である。だから、備荒資金取り崩しの対象ではない筈だが、なぜか取り崩す方向で動いている。
 根室沖あるいは釧路沖地震、十勝沖地震など巨大地震はいつ起きてもおかしくない。有珠山の噴火も然りである。いざというときに備荒資金がないと困った事態が予測される。一度、認めると次に同じケースが出てきたら認めざるをえまい。だから、一件の例外も認めてはいけない。常に先のことを考えて行動すべきである。当座のために原則を崩すことがあってはならない。
  どうしても必要というなら、正々堂々と「北海道市町村財政再建団体転落救済資金」規約を作り、積立を始めるとよい。
 再建団体指定ということは破産状態だから、投下された資金の満額返済は無理である。1割程度しか回収できないのが企業実務の現実だ。夕張市だけでも300億円近い債務があった。夕張を例に取るまでもなく、途中で救済したところで借金が膨らむだけで、自助努力で再建できるはずがない。実際には借金の総額すら破たん処理が始まるまでわからないのが実情で、外圧による財政破綻という事態を迎えるまで財政赤字は解消できない。

 国の借金840兆円は夕張市や赤平市よりもなお性質が悪い。プライマリーバランスを声高に叫ぶ小泉元首相ですら、借金を増やしてしまった。自助努力での財政再建は国政レベルでも不可能といわざるを得ない。
 10年を経ずして国債残高は1200兆円を超し、現状の水準での年金が支払い不能の事態に陥る。それが財政再建の「外圧」となるだろう。市町村単位ではなく、国家財政の破綻処理である。夕張市よりずっと事態は悪い。日本経済への影響も大きすぎる。
 夕張を「お手本」に考えると、国家公務員や地方公務員の半数がリストラにあう。残った職員も給与は30%カット、外国為替は300円/€(ユーロ)を超えるだろう。円の価値は現在の半分以下になる。一時的には三分の一にまで落ち込むだろう。日本経済は壊滅的な打撃を被る可能性が大きい。
 はたして国民の叡智を結集してこうした事態を回避できるのだろうか?はっきりいえることは破綻処理を早く始めればはじめるほど、借金は小さくて済むという事実である。破綻処理開始が長引けば長引くほど借金総額は膨らむ。

 赤平市には気の毒だが、自分で何とかするしかない。財政再生団体に指定される前に、自ら破綻処理を始めるしかないではないか。職員給与の30%カットはすでにした。次に採るべき施策は賞与のカットである。民間会社が赤字になったらボーナスはでない。公務員だけが例外であると主張するなら別だが、民間並みに考えればそこまで踏み込むべきだ。
 気の毒とは思うが、放漫財政を実施してきた市当局関係者及び財政監視を怠ってきた市民が自己責任をとるべきで、彼らの責任を回避するために自然災害に備えて積み立てた資金を取り崩すべきではないと私は思うが、冷たすぎるだろうか。
 たしかに冷たいだろうな。4分の一くらい氷が浮かんだ根室湾を眺めながらぶるっと身震いした。夕張や赤平は、わが町の数年先を歩いているだけかもしれない。

  *赤平市の給与30%削減については、2月22日付のブログ『給与30%削減合意』に書いた。
  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/archive/c55757-2
 


市立病院の看護師不足が深刻化(北海道新聞より) [26. 地域医療・経済・財政]

  2,008年4月13日   ebisu-blog#167 
  総閲覧数: 10323/138 days (4月13日0時00分) 

 南風だろうか、太平洋から根室半島に吹き寄せる風が強い潮香を運んでくる。子供の頃の遠足で、砂浜でオニギリを食べながら吸い込んだ磯の匂いを思い起こさせる。

 市立病院の看護師不足が深刻だという。20代の看護師の退職が相次ぎ、一昨年は16人、昨年度は15人が退職した。2年間で31名(約30%)の退職は異常事態といえるが、病院の先行きが見えないことが若い看護師が退職する原因になっていると道新が報じている。

 夕張市のように民間の診療所となれば、市職員としてはいったん解雇となり、退職金や年金に大きな影響が出る。転職するなら早いほうが有利であると考えたとしてもしかたのないことだろう。根室に住む全員が強固な郷土愛を持ち合わせているわけではないし、郷土を愛してはいても仕方のない個人的事情を抱えている場合もある。

 病院経営に対する不信感が根底にあれば、残念なことだが今後も若い看護師の退職は続くだろう。診療体制の崩壊を防ぐ唯一の対策は病院経営を健全化することだ
 11億円もの赤字を3年間垂れ流し続けて、経営に不安をもたない職員はおそらく少ない。それなのにほとんど効果のない医師増員に奔走するのみで、経営改善努力を怠ってきたツケが廻ってきたことを知るべきである。
 具体的な将来ビジョンをもたず、経営改善もなされない現状にあきれて、病院の現状を知っている若い看護師さんたちが2年も前から沈む船から降り出したのだろう。道新の記事は市立病院の内部崩壊を見る思いがする。
 こんなことは書きたくないのだがあえて書く。人柄を批判しているのではない。それぞれ好人物かもしれない。私は見当違いの現状認識を批判するのみである。看護部長と病院事務局のコメントが載っているので、そこをよく読んで欲しい。若い看護師さんたちと認識のギャップがあまりにも大きいと感じるのは私だけだろうか。将来に失望し、あきれて職場を去る気持ちがわたしにはよくわかる。
 関係者は厳しい現状から逃げるのをやめて、稼動している144ベッドに合わせて縮小均衡策含む現実的な将来ビジョンを数ヶ月でまとめて公表し、粛々と実行すべきだ。そうすれば若い看護師さんたちもついてくる。

 4月12日 北海道新聞朝刊 根室地域版より転載

  市立根室病院
 看護師不足が深刻化
  都市部で求人急増
   本年度採用まだ2人
【根室】市立根室病院で本年度、看護師不足が深刻化している。2007年度中に15人が退職したのに対し、08年度で採用できたのはわずか2人。06年4月の診療報酬改定で、退職している都市部の看護師獲得合戦の影響が大きい。同病院にとって、医師だけでなく、看護師の確保も重要な問題になりそうだ。(仁科裕章)

 現場の作業に影響も
 同病院の看護師は現在、正職員95人。入院患者10人に看護師一人を配置する「10対1」の基準を維持している。だが、看護師不足に伴い、3人体制だった内科病棟の深夜勤務が4月から、2人体制に縮小。仕事量が増加するなど看護の現場に影響が出始めている。
 06年の診療報酬改定では、看護師を手厚く配備した病院の診療報酬を加算する措置が導入。「7対1」の最高基準を目指し、道内では札幌を中心に看護師の求人が急増、好条件での引抜が激化した。
 ただ、市立病院は医師不足による入院患者数の減少に伴い、06年度に4病棟のうち1病棟55床を休止。残る病棟に看護師を振り分けたため、手厚く配置でき、診療報酬改定の影響は小さかった。
 しかし、医師不足で病院の先行きが見えない不安から、20代の看護師の離職が相次ぎ、06年度は16人が退職。07年度は7人を採用したが、医師が確保されるにつれ、入院患者も増え、看護師不足が表面化した
 離職した看護師は専門的な勉強をするため、札幌などの病院に移るケースも多かったという。逆に市立根室病院は公立病院だけに患者のクレームが多い点など、業務負担の大きさが嫌われているようだ。
 山田美智子看護部長は「新人看護師が経験をつめ、教育が受けられる魅力的な病院にしなければ。看護学校を訪問し、就職を要請していきたい」という。同病院事務局も「医師を確保すれば、とうぜん、それに見合った看護師の数が必要になる。医師だけでなく、看護師も大切にしなければならない」と危機感をあらわにしている


ゴボウの漬物とガソリン税 [A8. つれづれなるままに…]

  2,008年4月13日   ebisu-blog#166 
  総閲覧数: 10242/138 days (4月13日0時00分) 

 歯舞昆布しょうゆで漬けた北日本フード社製の漬物を食べてみた。まあまあかな。
 最近の漬物に共通していえることだが、調味料や添加物が多すぎないだろうか。素材の味がほとんどなくなってしまうほど使うのは考え物だ。
 北海道産の素材にこだわり、漬けるしょうゆまで厳選するなら、添加物を半分程度に押さえて、もっと素材の味を引き立たせる工夫があっても好い。ゴボウ本来の味と昆布しょうゆの味が勝ったゴボウの漬物を食べてみたい。
 札幌の会社である北日本フードは、もっともっと北海道素材の良さを引き立たせるような漬物を開発・発売してくれるに違いない。

 《暫定ガソリン税期限切れ》
 2日ほど前に市内のGSでガソリンを入れた。ハイオクで139円/ℓだった。ずいぶん安くなった。道内の他の地域や、道外はどうなのだろう。5月になったら戻るのだろうか。
 ガソリン税に関するリズムの乗った意見を見つけた。
     http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2008/01/post_f6b4.html

 ガソリン税を戻すなら、高速道路の建設ではなく、840兆円も積みあがった国債残高を減らすのに使ってもらいたい。税収の20年分を越す借金の山、老人が増えるとともに長期的には個人所得税が逓減してゆくだろうから、35兆円程度しか税収がないものと考えて国債残高を減らす計画を建ててもらいたい。
 家計に引き直せば、800万円の年収で2億円余の借金があるようなものだ。何度も自己破産できるような借金の山だ。
 次世代のためにも借金の山を減らす義務がわれわれにはある。健全性を考慮すれば年収の3.5倍程度、100兆円まで国債残高を減らしたいものだ。税金の無駄遣い、天下り、特殊法人の解散、官民年金格差の解消などやるべきことはある。それでも間に合わないだろう。
 サブプライムローンは債務者が必ず自己破産する詐欺のような融資であり、なんでそんな融資に引っかかるのかと不思議だった。借りて3年後には、毎月15万返済が40~50万円にも跳ね上がるので、返せるわけがない。米国の低所得者は計算ができないのではないだろうかとも考えた。日本では考えられない住宅融資である。看板は住宅ローンで、金利実態から見ると消費者ローンである。
 しかし、日本の借金の山(840兆円の国債残高)を眺めると、米国のサブプライムローンを笑えない。 


小学校統廃合(別海町) [87.根室の話題]

  2,008年4月12日   ebisu-blog#165 
  総閲覧数: 10179/137 days (4月12日0時00分) 

 ついに最低気温がプラスに転じた。今日は一日中雨模様だった。小雨が屋根を叩いている。雨音を聞いていると心が和む。

 高校の実力テストの結果が出た。数学は一人だけケアレスミスがなく満点だった。問題をみたが、計算が大半で、2次関数の問題も、基本的な問題だった。入試問題よりは易しい、都立高校の入試問題で80点れるレベルなら満点だろう。道立高校入試問題が簡単すぎるので、お迎えテストは、少し難易度を上げて、上位成績者の実力がどの程度か見るべきだろう。入試合格者が対象の問題は、入試問題よりも難しくて当然のはずだが、逆だった。何のためのテストなのか私にはその目的がさっぱり理解できない。

 別海で美原小学校が閉校し、中原別小学校に統合されるという記事が道新朝刊に載っている。美原連合町内会が閉校に同意したとある。豊原小学校も閉校が決まっており、3校体制から中春別小学校1校に統合される。

 「美原小は児童数の減少から、町教委が06年に出した学校の適正配置計画で統廃合の対象となった。地域内には反対の声も強かったことから、同町内会は07年、PTAや保育園父母会などによる統合検討委員会を設置。検討委で協議を重ね、3月に「08年度の閉校に合意する」との答申を得ていた。」(4月11日20面)

 町教委が自分の仕事を丸投げしないで、自ら適正配置計画を作ったようだ。先を読んで具体的な政策を作り、自ら実行に移す。
 どんな仕事でも自らの職責を全うするためには相当の覚悟が要る。統廃合案を自ら作り、合意を得る努力をする。問題に直面して、恐れず、ひるまず、やるべきと信じたら地域住民に状況をきちんと説明して、政策を実行に移す。真っ当なやり方を押し通す。
 地域住民の理解と合意を得て統廃合を進めた別海町の教育委員会はしっかりした人材に恵まれているようだ。さて、わが町、根室市の教育委員会はどうなのだろう。やっているのだろうが、春が来たというのに市街化地域3校の統廃合はまだ聞こえてこない。
 

 


"お迎えテスト"の日 [87.根室の話題]

  2,008年4月10日   ebisu-blog#164 
  総閲覧数: 10083/136 days (4月10日23時25分) 

 このところ毎朝霧が出ている。100㍍先がよくみえないので濃霧といってよいだろう。昼過ぎになって霧が晴れても国後は見えない。
 日照時間が一番短かった頃に比べて3時間以上長くなったので、22時になっても気温は0.6度までしか下がっていない。最低気温は零度前後だ。
 道路わきに除雪して積み上げられた雪山も大半が消え、高さが1㍍以下になった。これから数日、雪の予報がでているが、季節はどんどん春に向かって進んでいる。

 中学校の新入生は今日「お迎えテスト(数学・国語・社会・理科)」の洗礼を受けた。小学校と違って学年順位がわかる。明日からテストが返って来るので、自分の現在の順位をしっかり確認して、何番上げるか今後の目標に使うと良い。
 中2の生徒の授業があったので、英語と数学の問題の解説をした。春休みに一生懸命に勉強していた生徒はできていたが、努力をしてなかった生徒は正解が少ない。当たり前といえば当たり前の結果である。
 中1の女の子が面白いことを言っていた。普段スカートをはいたことがないので、スカート姿で行くのが嫌だという。足がスースして寒いのだそうだ。そういえば、スカート姿の小学生は少ない。中学生になって慣れないスカートをはかなければならない。制服だからしようがないのだが、なんとも気の毒である。

 高校生も今日、実力テスト(数学・英語)があった。数学が満点とれたかどうか。自信のある生徒はいるようだが、ケアレスミスということがあるので、蓋を開けてみないとわからない。だだ、問題は難しくなかったようだ。結果報告を楽しみにしている。

 みんなお疲れ様、今夜は満点とれた夢を見てください。そしていつか正夢になるように・・・


歯舞昆布醤油で漬物 [87.根室の話題]

  2,008年4月10日   ebisu-blog#163 
  総閲覧数: 9989/135 days (4月10日0時05分) 

 こんどは北日本フーズとの提携である。歯舞漁協は元気のある組合だ。一度軌道に乗ったら、商品開発も販路も次々と広がって行く。1年また1年と年月を重ねるうちに発売以来18年が過ぎ、伝統と化していく。根室の経済も棄てたものではない、商品開発の盛んな漁協もある。しっかり次の時代の芽が育ちつつあることは嬉しい限りだ。
 北日本フードは同社製のキムチを時々食べるのでお馴染みのメーカだ。昨日買ってきた「かくてき」も北日本フードだった。この次はダイコンとゴボウの醤油漬けを探してみよう。
 そういえば、漬物が食べられなかった生徒がいた。個人指導で10年ほど教えた生徒だ。ピクルスは食べられるのに、日本の漬物はどれもだめだった。太い指をした手先の器用な生徒だった。外科医になったのか内科医なのか、どんな医者になったのだろう。ブログを見る偶然があったら、北日本フードのダイコンとゴボウの醤油漬は試してみてくれ。20年以上も昔になってしまったが、僻地医療の現状を授業の合間に話すことがあったから、根室というキーワードだけで君は気がつくだろう。

 「はぼまい昆布しょうゆ」で今度は漬物
      ダイコン、ゴボウ全道で売り出し

【根室】漬物販売の北日本フード(札幌)が、歯舞漁協が販売する「はぼまい昆布しょうゆ」を使った大根とゴボウのしょうゆ漬け2種類を、今月から道内各地の大手スーパーなどで売り出した。
 北海道ブランドを活用した商品開発を企画した同社が、道内各地のしょうゆを比べた結果、「道内では、はぼまい昆布しょうゆの甘い味が好まれる」と判断した。ダイコンは二分の一本、ゴボウは80㌘入りで、ともに300前後で販売している。
同社は今後、ハクサイやキュウリのしょうゆ漬けも発売する計画で、夏以降、本州で開かれる北海道フェアなどでも販売する。
 はぼまい昆布しょうゆは歯舞漁協が1990年に発売し、昨年、特許庁の地域ブランド認定制度で、商標登録が認められた。
 利用商品の開発はこれで3例目となり、同漁協の松永紀雄専務は「昆布しょうゆの良さを認めていただき、ありがたい」と話している。(幸坂浩)

石臼で挽いた珈琲 [A8. つれづれなるままに…]

  2,008年4月9日   ebisu-blog#162 
  総閲覧数: 9884/134 days (4月9日0時00分) 

 北海道新聞を見ていたら、「有珠の溶岩でコーヒーミル」という記事が目にとまった。有珠(ウス)の溶岩で゙石ウスという駄洒落、伊達の石材メーカ社長の浪越さんは遊び心のある人のようだ。「石臼だと豆をひく際にコーヒーの雑味となる皮を取り除けるほか、石の熱伝導率が低いためコーヒーの風味を損なわない」とある、本当だろうか?そう思った読者が多いだろう。

 昔話にお付き合いいただきたい、15年ほど前の話である。福島県郡山市の駅から歩いて20分ほどのところにスナックがあった。今でもあるかもしれない。「ランチが美味しい、マスターが蕎麦打ちが趣味で石臼で挽いた蕎麦を打ってくれる」という。メニューに蕎麦はない。連れてってくれた人が常連だった。店は2階だが、建物横に小屋をもっていた。電動モータのついた石臼と作業台を置いているらしい。蕎麦を打つ人は、趣味が高じて、良い道具をそろえ他人に食べさせたくなるという。「どうだ、俺の打つ蕎麦は絶品だろう」、腕が上がれば打った蕎麦の味が違ってくるから、はっきりわかる、だからのめり込む。何事も腕前が上がるというのは気持ちの良いものである。うまい蕎麦を打つために自分の石臼で挽いた粉を使う。挽いてから時間が経ってしまっては風味が損なわれる。

 極細の蕎麦がでてきた。一口ずつ笊に小分けして盛り付けてある。石臼で挽いたばかりの蕎麦粉を使い、打ちたて、茹でたてだから、早く戴かないと罰が当りそうだ。じゅるじゅるっと音を立てて軽く口の中で噛み、香りを鼻に抜いて楽しみ、喉に流し込む。笊の上から盛り付けられた蕎麦が次々と消えてゆく。
 茹で時間はたったの9秒である。さっとお湯を通すだけだが、それ以上茹でるとのびて味が落ちる。細面にするには延ばしが難しいし、均一に断つのもかなりな技倆を要することだろう。スナックはやめて蕎麦屋にしたほうが好いようなものだが、好きな蕎麦は常連客にしか出したくないらしい。蕎麦打ちにはそういう変わった数寄者が多いとは連れて行ってくれた人の弁である。

 蕎麦を食べながら、実は珈琲の方がもっとうまいと言い出した。「だけど滅多に淹れてはくれないんだ。飲みたいだろう?」、不安げな顔で私を見る。
 石臼で挽いた珈琲を前から一度飲んでみたいとは思っていた。お茶が好きで自宅に茶室を作った人が、茶室に石臼の珈琲ミルを置いている、そのような話も聞かされていたからだ。
 マスターが布をかぶせて隅においていた小型の花崗岩製の石臼をだしてきた。え、淹れてくれるの、そう思ったとたんにどんな味だろうと想像が始まった。
 コーヒー豆を少しずつ入れながら石臼を手でゆっくり回すと、店内に珈琲の香りがじんわりと漂い始める。この瞬間、飲むときに勝る香りがする。
 挽き終わって、刷毛で石目に詰まっている珈琲も丁寧に集める。
 そうして淹れた珈琲が目の前に置かれた。ドリップだったかサイフォンだったかは覚えていない。味の印象が強すぎたせいだろう。
 コーヒー豆にこんな味が眠っているのかと思うほど経験のない味だった。美しい味としか言いようがない。水ももちろん特別なものだったはずだ。滅多に手に入らない特別な豆を使ったのだろう、どのような豆なのか教えて欲しいと思った。

 1960年代の終わりごろ、珈琲が好きでサイフォンで淹れてよく飲んだ。単品の品質の良い豆を使っても、代表的なブレンドであるブラジルベースの4・3・2・1でもよく失敗した。滅多に美味しいコーヒが淹れられない、1年ほど熱中したが技術が上がらないので諦めてドリップ方式に変えた。サイフォンを使うと同じ豆でも淹れ方で味がぜんぜん違う。あの頃は高級な豆、ブルーマウンテンのハイマウンテンものでも今ほどは高くはなかった。

 聞いてみた。これほど美しい味の珈琲ってどんな豆を使ったのだろう。飲んだことのない、よほど高級な豆を使ったのだろう。仕入れルートも気になっていた。
 マスターの返事はそっけなかった。
「普通のブレンド豆ですよ」
「え、こんな味の珈琲は飲んだことがない」と絶句している私を見て、
「石臼で挽いたからでしょう」と笑顔が返ってきた。

 連れて行ってくれた人は凝り性で、石材店に注文してコーヒー専用の花崗岩でできた石臼を造らせていた。擦り合わせ部分の刻みは何度か違ったパターンで試したという。その石臼をここのマスターにも勧めた。
 蕎麦の場合も珈琲の場合も、石臼には材料が本来もっている味を引き出す霊力のようなものが備わっているように思える。
 美味しいコーヒーが飲みたかったら、高い豆を求めてもあまり意味がない。その高級な珈琲がもっている力を挽き出す石臼を使わなければ、珈琲カスと一緒に一番極上の部分を棄てることになる。
 手で豆を少しずつ入れながら、ゆっくり石臼を廻すのは手間隙がかかる。コーヒー豆に「美味しくなるんだよ」と囁いているかのようだ。
 あの時以来、石臼で挽いた珈琲を飲んだことがない。


 4月8日北海道新聞より転載

 有珠の溶岩でコーヒーミル
【伊達】北海道洞爺湖サミットの7月開催を記念して、浪越石材(伊達市)が洞爺湖に隣接する有珠山の溶岩(安山岩)を囲うし、「石臼コーヒーミル」を開発した。9日にはじまる大阪・阪急デパートの物産展で公開する。
 同社は2006年に花崗岩の石臼コーヒーミルを開発し、職人が手作りで受注生産している。安山岩製もサイズは高さ11センチ、横最大17センチ、重さ5㌔でほぼ同じ。
 石臼だと豆を挽く際にコーヒーの雑味となる皮を取り除けるほか、石の熱伝導率が低いためコーヒーの風味を損なわないという。
 花崗岩製に比べて安山岩はやや加工しやすいものの、注文を受けてから2週間ほど製作日数がかかる。1ミリ単位の制度が要求されるだけに、1台3万5千円とやや値が張るが、「豆を挽きながら香りをかぐと癒されますよ」(浪越準一社長)とPRに努めている。


18兆円の損失発生(国会での財務大臣発言) [A4. 経済学ノート]

  2,008年4月8日   ebisu-blog#161 
  総閲覧数: 9754/133 days (4月8日0時00分) 

 日常取引で発生する為替変動差損益は為替損失あるいは為替差益という勘定科目で処理し、決算取引は「その他有価証券評価損益」勘定あるいは「外貨換算損益」勘定で処理する。このような外貨換算会計は日商簿記1級の出題範囲に含まれており、単なる簿記技術だけでなく、経済のメカニズムについてもある程度の理解を必要とする。
 簿記1級を学ぶ諸君へ、国家財政と外貨換算会計に関わる経済の仕組みを具体例を挙げて説明しておきたい。

 外国為替特別会計は大半が米国債で運用されており、その残高は約1兆ドルある。諸外国と違って日本ではリスク管理がまったくされておらず、ドル相場の変動リスクに曝されている。

 国会中継(予算委員会)を見ていたら11時12分(4月7日)に民主党の国会議員の「埋蔵金」に関する質問に応えて、額賀財務大臣が「外為特別会計積立金の20兆円は18兆円の評価損でほとんどなくなる」と発言した。さらりとした言い方だった。臨機応変な質問を期待したが、18兆円もの巨額損失がでたと財務大臣が答えているのに、質問者はその原因も責任も追及しなかった。
 外為特別会計でドル急落による巨額評価損発生の可能性はブログで何度か採り上げた。最近では、4月4日#157『春の雪仏』で17兆円の評価損が3月末に発生しただろうと書いている。該当箇所を太字にしておいた。

 なぜ、このような巨額損失がでたのだろうかという問に答えることは、防ぐことができなかったのだろうかという疑問に答えることでもある。輸出産業や銀行が過去30年にわたり超過利潤をあげられた原因や、犠牲にしたものも明らかになる。
 
 直接の原因はリスク分散しなかったことによる。$一辺倒の運用は日本だけの特異現象である。各国はリスク分散するために、いろいろな通貨で運用しているルーブルやユーロあるいは元などに分散運用していれば、逆に50兆円以上の評価益を出せただろう。先を見て仕事をしないからチャンスを逃し、巨額損失を被ることになる。

 ではなぜリスク分散しなかったのだろうか?
 できなかったのである。ニクソンショック前から、日本は$一辺倒の運用をしてきた。なぜ100兆円も米国債だけで運用して来たのか。
 ドルを買い支えて円安を作り出すためである。日銀のドル買い介入によって、円安が演出され、輸出産業と銀行が超過利潤をあげ続けてきた。輸出産業保護と銀行保護が日本の一貫した政策であった。シナリオを書いて演出してきたのは財務省である。
 たとえば、ゼロ金利政策で預金金利を低く抑え、集めた預金で米国債を買うことで、大手都市銀行は5%近い日米金利差を利用してイージーに利益を上げている。20兆円米国債を買えばだまって1兆円儲かるのである。小学生でもできるイージーな運用で濡れ手に粟の利益を手に入れている。日銀の継続的なドル買い介入によって円安が保証されなければ、ありえない運用だ。

 何を犠牲にして輸出産業と銀行の超過利潤が守られたのか?預金金利を低く抑えることによってである。国内金利を低くして2%以上の日米金利差を30年以上にわたって維持してきたのである。企業や個人の預金金利が輸出産業や銀行の超過利益に付け替えられた

 なぜ国内金利を低く抑えたのか。公共事業へお金をばら撒くために赤字財政を一貫して執ってきた。そのために大量の国債発行が必要になり、金利を低く抑える必要があったのである。その結果、国債発行残高は839兆円(2,007年12月末)である。
 金利が米国並みの5%になったら金利支払いだけで42兆円である。税収全部を国債の金利支払いに振り向けなければならない事態が起きる。プライマリーバランスの確保など絵空事である。だから、異常なゼロ金利政策を続けなければならないのだ。財務省が日銀総裁ポストに固執するのはここにその理由がある日銀がゼロ金利政策をやめて、金利水準を国際相場に近づけた途端に、財政が破綻するのである。欧州並みに3%にしただけでも、年間25兆円が金利支払いで消える。コンスタントに使える税収は40~50兆円しかないのだが、その半分が金利支払いで消えてしまう。財務省出身者で日銀総裁を抑え、、ゼロ金利政策をとり続けさせて国家財政の破綻を回避せざるをえないのである。夕張市と同じ構図がここにある。夕張市では地元信金や大手銀行(みずほ銀行)が破綻規模を拡大したが、国家財政の破綻規模を拡大しているのは財務省と日銀である。

 財務官僚が先を見て仕事をしていないからこういうことになる。省益を守ることに拘泥して、国の行く末を考えない小役人(キャリアー官僚)に任せ続けた結果、政策選択の余地がなくなっているのである。夕張市どころの話しではない、日本が明日にも破綻しかねない状況である。財務省は増税政策かハイパーインフレを起こして解消することしか考えていないのだろう。
 お米10kg当り10万円の時代の到来である。3000万円の貯金が150万円に減価するハイパーインフレが、もうそこまで来ていると覚悟しなければならない。長期的に見れば、円の対ドル相場は一時60円を超えて暴騰した後、ユーロに対して暴落するだろう。円の対ユーロ相場は現在161円付近にある。
 自己責任ということが言われるが、主権在民である。わたしたちが財政の監視を怠り、批判をしなかったツケがまもなく廻ってくる。現実的で具体的な回避策は創れるのだろうか?厳しいが、智慧を絞れば実行可能な回避策がありうる。 


#160 成長期の中毒症と生活習慣病 2,008年4月7日  [B2. トピックス]

  2,008年4月7日   ebisu-blog#160 
  総閲覧数: 9652/132 days (4月7日0時00分) 

 (本稿は3月28日#150「ゲーム脳化症候群」の続編である)

 授業をしながら生徒を観察して気のつくことがある。まったく復習してこない生徒が少なからずいる。自宅で勉強するという生活習慣が欠落している。小学生ではなく、中学生の話しである。
 小学校で、自宅での学習習慣を確立できなかった子供は、中学生になってもなかなか自宅での学習習慣を身につけることができない。「自宅学習しないという習慣」を6年間育ててしまったからだろう。中学生になってから学習習慣をつけようと思ってもなかなか難しい。1年以上かかってしまう。二人に一人はついに学習習慣が身につかずに高校生となる。こういう中学生の成績は下位20~30%を低迷する。

 小学校低学年でお母さんかお父さんが一緒に勉強して遊んであげる。たとえば、計算問題を書いて渡し、正解だったら花丸をつけて褒めてやる。漢字の問題を出して遊んでやる。これも書けたら褒めてやる。そういう風にして、自宅学習習慣が低学年で身についた子供は、中学生になっても自ら勉強する。

 低学年での学習習慣が中学生になって成績をわけることになる。だから親は低学年のうちに自分の子供の学習習慣付けに関与すべきだ。

 とくに成長期の生活習慣は脳のニューラルネットワーク(神経線維)の発達に影響が大きいのではないだろうか。身体が成長するだけでなく、知能も急激に発達する。この時期に適当な負荷を脳にかけることで知能の成長に差がでる。適当な負荷とは何も勉強だけではない。将棋でもいいし、他の遊びでも良い、脳に適度な負荷がかかる、頭脳を使う遊びなら何でも良い。個人的な経験だが、ビリヤードのようなイメージを操作する遊びが脳のニューラルネットワークの発達に強い影響があるように感じる。

 コンピュータゲームがなぜ問題なのか。二つの点から問題を指摘しておきたい。ひとつは中毒性が強い。パチンコも専用のコンピュータゲーム機といえる。強い光と音にさらされることが脳に変化を起こさせるのではないだろうか。ベータエンドルフィンがでるという説もある。脳内麻薬であるこの物質が脳内で産生されるから、強い習慣性が生まれるという説だ。
 もうひとつは習慣性が引き起こす問題である。長時間、コンピュータゲームをし続けることで、他のことをやる時間がなくなってしまう。学校や塾で学習したことを復習する時間すらなくなってしまうことが成績に影響する。成長期にそのような習慣がついてしまうことで、前頭前野が未発達のまま大人になる。
 コンピュータゲームをやっている間は前頭前野が活動を低下させている。これが日大文理学部体育学科の森昭雄教授が注目したところだ。かれは「ゲーム脳」という言葉でそれを表現し、β波が著しく低下した状態と主張している。
 わたしが言うのは少し違う。脳波の状態がどうだろうとそんなことはどうでもよい。知能の成長期には充分な学習が必要で、適当な負荷は知能の発達にとっていわば栄養みたいな役割を果たすのだろうと思う。PCゲームを長時間やると健全な学習習慣がなくなってしまう。そこに問題が生じる。
 コンピュータゲームやインターネットを長時間し続けることを繰り返していると自宅での学習時間は確実に減少する。成長期の数年間をそういう状態で過ごしたら、前頭前野は未発達のまま固定化してしまうのではないだろうか。つまり切れやすい、思考力の弱い大人に育ってしまう。嫌なことを我慢するというのも生きて行くために必要な能力だが、前頭前野をあまり使わずに成長期を過ごしてしまったら、我慢のできない大人になる。スポーツも勉強も仕事も、何事を学ぶにも、苦しい時期は必ずある。喜びはそうした時期を乗り越えたところにしかない。

 成長期にある中学生に長時間PCゲームやインターネットをやらせてはいけない。携帯メールも1日に200を越える生徒が多くなってきている。これも同じ理由で要注意だ。もっとも、「了解」、「わかった」など短い文を打つだけで済ませている生徒もいる。長時間やっていなければ問題ない。私塾教師から見ると、健全な学習習慣がPCゲームやインターネット、携帯メールなどによって崩れていなければ大丈夫である。長時間そういうことに費やして健全な学習習慣が崩れているとか、あるいは学習習慣がない場合は、親がストップするしかない。これらは生活習慣病といってよいから、生活習慣を変えることが適切な治療である。
 成長期にはこうした習慣が脳の発達にまで影響することを考慮に入れておくべきだ。切れやすいことに加えて、思考能力やコミュニケーション能力の劣化も副作用に数えられるが、こういう副作用群は社会人になってから大きくなり、人生を変えてしまう。 


「旅館大野屋」が破産(北海道新聞より転載) [87.根室の話題]

  2,008年4月6日   ebisu-blog#159 
  総閲覧数: 9557/131 days (4月6日0時30分) 

 気温は零度丁度、道路は乾き、両脇に積み上げられた雪から滲みだした水がアスファルトを所々黒く染めている。朝夕ガスがかかるようになった。

 春の観光シーズンに入り、ゴールデンウィークのホテル業界は忙しいだろうなと、日増しに嵩を減じてゆく春の雪をみながら思う。
 観光バスが毎日数台の頻度で東根室駅を訪れている。観光客はバスで来て、記念写真を撮り、通過するのみである。滞在型観光をどうしたら増やせるかというのが観光協会の数年来のテーマだ。
 残念なニュースが流れた。昨日のブログに「はぐれ刑事純情派」で根室がロケ地になっていたと書いたが、大野屋さんが舞台になり女将も番組に出演していた。その大野屋さんが自己破産申請をしたと今朝の新聞に載った。
 大きな宿泊施設がない根室で、大野屋旅館がなくなるのは打撃だ。釧路の同業者が触手を伸ばしているとか言う噂も耳にしたことがあったが、交渉は不調だったのだろう。
 本館は増築だから旅館全体の内部の構造はあまりよろしくはない。古い部分に高低差のある狭い廊下がうねうね走る。
 温泉はないが、それでも地元で獲れた活きの良い水産物を美味しく調理して出せれば、リピーターは増やせるだろう。鍵は料理にありそうだ。もし根室のいずれかの業者が手を挙げるとすれば、板場をきちんと仕切れるところだろう。観光客の受け入ればかりでなく、クラス会で使うとか、法事で利用するとか、地元になくては困る旅館である。
 競売価格次第で営業再開の可能性はあるので、続報に注目したい。

 地元の金融機関が増築資金を融資しているから、そこが担保として抑えているのだろうが、競売で買い手がつかないと丸損である。地価の公示価格も前年比9%下がっている。地元経済の衰微を考えると5千万円でも売れればよいほうかもしれない。いずれにしろ増築資金を貸し付けた金融機関にとっては厳しい内容である。民間企業への貸し付けに甘さがあれば、貸手もこのように自己責任を問われ、融資資金のほとんどが回収できない。
 この例と対比して考えておきたいのは、地方自治体への金融機関の野放図な融資である。夕張の例に見るように、地方自治体への融資は金融機関にとってはまったくリスクのない「ご馳走」であることがわかる。道内の市町村が破綻しても北海道庁が全額立替返済してくれるからだ。破綻のあと残された市民と市役所が、国や道の指導の下、借金を全額返済することになる。だから、民間金融機関からの融資を増やしてはいけない。市民は監視すべきだ。
 
 以下、4月5日、北海道新聞朝刊より

 「旅館大野屋」が破産

 負債7億円
 団体客減り経営悪化
【根室】根室市常盤町の老舗旅館「旅館大野屋」(大山美栄子社長、資本金千万円)が4日までに、釧路地裁根室支部に自己破産を申請し、破産手続きの開始決定を受けた。民間信用調査機関帝国データバンク釧路支店によると、負債総額は約7億円。
 同旅館は1951年に創業。93年に7億円を投じて本館を新築し、客室34室、収容人数140人。団体客や宴会客の確保に力を入れ、97年3月期には売上高3億円を計上した。
 しかし、旅行の少人数化で団体客が減り、本館新築の投資も重荷となり、経営が悪化。2,007年3月期には売上高が1億7千万円に落ち込んだ。
 今年1月7日から休業したが、再建の見通しが立たなかった。5月30日に債権者集会を釧路地裁根室支部で開く。
 建物は再建の大半を持つ金融機関が、抵当権を行使し競売にかける。
市内には多人数を受け入れることができるホテル・旅館が少ないため、夏の観光、北方領土視察時期を前にした同旅館の閉鎖は影響が大きい。山本哲弘根室市商店連合会長は「だれか引継ぎ、営業を再開してほしい」と話している。(仁科裕章)