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#160 成長期の中毒症と生活習慣病 2,008年4月7日  [B2. トピックス]

  2,008年4月7日   ebisu-blog#160 
  総閲覧数: 9652/132 days (4月7日0時00分) 

 (本稿は3月28日#150「ゲーム脳化症候群」の続編である)

 授業をしながら生徒を観察して気のつくことがある。まったく復習してこない生徒が少なからずいる。自宅で勉強するという生活習慣が欠落している。小学生ではなく、中学生の話しである。
 小学校で、自宅での学習習慣を確立できなかった子供は、中学生になってもなかなか自宅での学習習慣を身につけることができない。「自宅学習しないという習慣」を6年間育ててしまったからだろう。中学生になってから学習習慣をつけようと思ってもなかなか難しい。1年以上かかってしまう。二人に一人はついに学習習慣が身につかずに高校生となる。こういう中学生の成績は下位20~30%を低迷する。

 小学校低学年でお母さんかお父さんが一緒に勉強して遊んであげる。たとえば、計算問題を書いて渡し、正解だったら花丸をつけて褒めてやる。漢字の問題を出して遊んでやる。これも書けたら褒めてやる。そういう風にして、自宅学習習慣が低学年で身についた子供は、中学生になっても自ら勉強する。

 低学年での学習習慣が中学生になって成績をわけることになる。だから親は低学年のうちに自分の子供の学習習慣付けに関与すべきだ。

 とくに成長期の生活習慣は脳のニューラルネットワーク(神経線維)の発達に影響が大きいのではないだろうか。身体が成長するだけでなく、知能も急激に発達する。この時期に適当な負荷を脳にかけることで知能の成長に差がでる。適当な負荷とは何も勉強だけではない。将棋でもいいし、他の遊びでも良い、脳に適度な負荷がかかる、頭脳を使う遊びなら何でも良い。個人的な経験だが、ビリヤードのようなイメージを操作する遊びが脳のニューラルネットワークの発達に強い影響があるように感じる。

 コンピュータゲームがなぜ問題なのか。二つの点から問題を指摘しておきたい。ひとつは中毒性が強い。パチンコも専用のコンピュータゲーム機といえる。強い光と音にさらされることが脳に変化を起こさせるのではないだろうか。ベータエンドルフィンがでるという説もある。脳内麻薬であるこの物質が脳内で産生されるから、強い習慣性が生まれるという説だ。
 もうひとつは習慣性が引き起こす問題である。長時間、コンピュータゲームをし続けることで、他のことをやる時間がなくなってしまう。学校や塾で学習したことを復習する時間すらなくなってしまうことが成績に影響する。成長期にそのような習慣がついてしまうことで、前頭前野が未発達のまま大人になる。
 コンピュータゲームをやっている間は前頭前野が活動を低下させている。これが日大文理学部体育学科の森昭雄教授が注目したところだ。かれは「ゲーム脳」という言葉でそれを表現し、β波が著しく低下した状態と主張している。
 わたしが言うのは少し違う。脳波の状態がどうだろうとそんなことはどうでもよい。知能の成長期には充分な学習が必要で、適当な負荷は知能の発達にとっていわば栄養みたいな役割を果たすのだろうと思う。PCゲームを長時間やると健全な学習習慣がなくなってしまう。そこに問題が生じる。
 コンピュータゲームやインターネットを長時間し続けることを繰り返していると自宅での学習時間は確実に減少する。成長期の数年間をそういう状態で過ごしたら、前頭前野は未発達のまま固定化してしまうのではないだろうか。つまり切れやすい、思考力の弱い大人に育ってしまう。嫌なことを我慢するというのも生きて行くために必要な能力だが、前頭前野をあまり使わずに成長期を過ごしてしまったら、我慢のできない大人になる。スポーツも勉強も仕事も、何事を学ぶにも、苦しい時期は必ずある。喜びはそうした時期を乗り越えたところにしかない。

 成長期にある中学生に長時間PCゲームやインターネットをやらせてはいけない。携帯メールも1日に200を越える生徒が多くなってきている。これも同じ理由で要注意だ。もっとも、「了解」、「わかった」など短い文を打つだけで済ませている生徒もいる。長時間やっていなければ問題ない。私塾教師から見ると、健全な学習習慣がPCゲームやインターネット、携帯メールなどによって崩れていなければ大丈夫である。長時間そういうことに費やして健全な学習習慣が崩れているとか、あるいは学習習慣がない場合は、親がストップするしかない。これらは生活習慣病といってよいから、生活習慣を変えることが適切な治療である。
 成長期にはこうした習慣が脳の発達にまで影響することを考慮に入れておくべきだ。切れやすいことに加えて、思考能力やコミュニケーション能力の劣化も副作用に数えられるが、こういう副作用群は社会人になってから大きくなり、人生を変えてしまう。 


「旅館大野屋」が破産(北海道新聞より転載) [87.根室の話題]

  2,008年4月6日   ebisu-blog#159 
  総閲覧数: 9557/131 days (4月6日0時30分) 

 気温は零度丁度、道路は乾き、両脇に積み上げられた雪から滲みだした水がアスファルトを所々黒く染めている。朝夕ガスがかかるようになった。

 春の観光シーズンに入り、ゴールデンウィークのホテル業界は忙しいだろうなと、日増しに嵩を減じてゆく春の雪をみながら思う。
 観光バスが毎日数台の頻度で東根室駅を訪れている。観光客はバスで来て、記念写真を撮り、通過するのみである。滞在型観光をどうしたら増やせるかというのが観光協会の数年来のテーマだ。
 残念なニュースが流れた。昨日のブログに「はぐれ刑事純情派」で根室がロケ地になっていたと書いたが、大野屋さんが舞台になり女将も番組に出演していた。その大野屋さんが自己破産申請をしたと今朝の新聞に載った。
 大きな宿泊施設がない根室で、大野屋旅館がなくなるのは打撃だ。釧路の同業者が触手を伸ばしているとか言う噂も耳にしたことがあったが、交渉は不調だったのだろう。
 本館は増築だから旅館全体の内部の構造はあまりよろしくはない。古い部分に高低差のある狭い廊下がうねうね走る。
 温泉はないが、それでも地元で獲れた活きの良い水産物を美味しく調理して出せれば、リピーターは増やせるだろう。鍵は料理にありそうだ。もし根室のいずれかの業者が手を挙げるとすれば、板場をきちんと仕切れるところだろう。観光客の受け入ればかりでなく、クラス会で使うとか、法事で利用するとか、地元になくては困る旅館である。
 競売価格次第で営業再開の可能性はあるので、続報に注目したい。

 地元の金融機関が増築資金を融資しているから、そこが担保として抑えているのだろうが、競売で買い手がつかないと丸損である。地価の公示価格も前年比9%下がっている。地元経済の衰微を考えると5千万円でも売れればよいほうかもしれない。いずれにしろ増築資金を貸し付けた金融機関にとっては厳しい内容である。民間企業への貸し付けに甘さがあれば、貸手もこのように自己責任を問われ、融資資金のほとんどが回収できない。
 この例と対比して考えておきたいのは、地方自治体への金融機関の野放図な融資である。夕張の例に見るように、地方自治体への融資は金融機関にとってはまったくリスクのない「ご馳走」であることがわかる。道内の市町村が破綻しても北海道庁が全額立替返済してくれるからだ。破綻のあと残された市民と市役所が、国や道の指導の下、借金を全額返済することになる。だから、民間金融機関からの融資を増やしてはいけない。市民は監視すべきだ。
 
 以下、4月5日、北海道新聞朝刊より

 「旅館大野屋」が破産

 負債7億円
 団体客減り経営悪化
【根室】根室市常盤町の老舗旅館「旅館大野屋」(大山美栄子社長、資本金千万円)が4日までに、釧路地裁根室支部に自己破産を申請し、破産手続きの開始決定を受けた。民間信用調査機関帝国データバンク釧路支店によると、負債総額は約7億円。
 同旅館は1951年に創業。93年に7億円を投じて本館を新築し、客室34室、収容人数140人。団体客や宴会客の確保に力を入れ、97年3月期には売上高3億円を計上した。
 しかし、旅行の少人数化で団体客が減り、本館新築の投資も重荷となり、経営が悪化。2,007年3月期には売上高が1億7千万円に落ち込んだ。
 今年1月7日から休業したが、再建の見通しが立たなかった。5月30日に債権者集会を釧路地裁根室支部で開く。
 建物は再建の大半を持つ金融機関が、抵当権を行使し競売にかける。
市内には多人数を受け入れることができるホテル・旅館が少ないため、夏の観光、北方領土視察時期を前にした同旅館の閉鎖は影響が大きい。山本哲弘根室市商店連合会長は「だれか引継ぎ、営業を再開してほしい」と話している。(仁科裕章)