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備荒資金の取り崩しは規約違反? [26. 地域医療・経済・財政]

  2,008年4月15日   ebisu-blog#168 
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 窓から根室湾を遠望すると野付の方まで氷がたくさん浮いているのが見える。ホッキ貝が砂浜に乗り上げた氷で窒息するかも知れないので心配だという記事が道新に載っていた。もうひとつ、赤平市が財政再生団体指定を避けるために、備荒資金の取り崩し要請をしているという記事が載った。なんとしても1億円足りないのだそうだ。

 備荒資金については、「北海道市町村備荒資金規約」に定めがある。備荒資金とは、災害による減収補填や応急復旧事業費に充てるための積立金である。
  しっかりした会社や個人商店には備荒積立をしているところがある。農業や漁業は自然が相手だから、そうした部門をもつ個人や企業は備荒資金を積み立てるべきだろう。自然災害が生じたときに、数ヶ月間の難局を乗り切るために必要な資金である。
 北海道は火山噴火や地震が多い。自然災害が起きて甚大な被害がでたときに積み立てられた備荒資金が取り崩される。

 赤平市が財政再生団体指定を避けるためにこの資金の取り崩しを要請したという。地方自治体の財政赤字は人災である。だから、備荒資金取り崩しの対象ではない筈だが、なぜか取り崩す方向で動いている。
 根室沖あるいは釧路沖地震、十勝沖地震など巨大地震はいつ起きてもおかしくない。有珠山の噴火も然りである。いざというときに備荒資金がないと困った事態が予測される。一度、認めると次に同じケースが出てきたら認めざるをえまい。だから、一件の例外も認めてはいけない。常に先のことを考えて行動すべきである。当座のために原則を崩すことがあってはならない。
  どうしても必要というなら、正々堂々と「北海道市町村財政再建団体転落救済資金」規約を作り、積立を始めるとよい。
 再建団体指定ということは破産状態だから、投下された資金の満額返済は無理である。1割程度しか回収できないのが企業実務の現実だ。夕張市だけでも300億円近い債務があった。夕張を例に取るまでもなく、途中で救済したところで借金が膨らむだけで、自助努力で再建できるはずがない。実際には借金の総額すら破たん処理が始まるまでわからないのが実情で、外圧による財政破綻という事態を迎えるまで財政赤字は解消できない。

 国の借金840兆円は夕張市や赤平市よりもなお性質が悪い。プライマリーバランスを声高に叫ぶ小泉元首相ですら、借金を増やしてしまった。自助努力での財政再建は国政レベルでも不可能といわざるを得ない。
 10年を経ずして国債残高は1200兆円を超し、現状の水準での年金が支払い不能の事態に陥る。それが財政再建の「外圧」となるだろう。市町村単位ではなく、国家財政の破綻処理である。夕張市よりずっと事態は悪い。日本経済への影響も大きすぎる。
 夕張を「お手本」に考えると、国家公務員や地方公務員の半数がリストラにあう。残った職員も給与は30%カット、外国為替は300円/€(ユーロ)を超えるだろう。円の価値は現在の半分以下になる。一時的には三分の一にまで落ち込むだろう。日本経済は壊滅的な打撃を被る可能性が大きい。
 はたして国民の叡智を結集してこうした事態を回避できるのだろうか?はっきりいえることは破綻処理を早く始めればはじめるほど、借金は小さくて済むという事実である。破綻処理開始が長引けば長引くほど借金総額は膨らむ。

 赤平市には気の毒だが、自分で何とかするしかない。財政再生団体に指定される前に、自ら破綻処理を始めるしかないではないか。職員給与の30%カットはすでにした。次に採るべき施策は賞与のカットである。民間会社が赤字になったらボーナスはでない。公務員だけが例外であると主張するなら別だが、民間並みに考えればそこまで踏み込むべきだ。
 気の毒とは思うが、放漫財政を実施してきた市当局関係者及び財政監視を怠ってきた市民が自己責任をとるべきで、彼らの責任を回避するために自然災害に備えて積み立てた資金を取り崩すべきではないと私は思うが、冷たすぎるだろうか。
 たしかに冷たいだろうな。4分の一くらい氷が浮かんだ根室湾を眺めながらぶるっと身震いした。夕張や赤平は、わが町の数年先を歩いているだけかもしれない。

  *赤平市の給与30%削減については、2月22日付のブログ『給与30%削減合意』に書いた。
  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/archive/c55757-2