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#4238 火事場泥棒の議論:9月新学期への移行議論 April 30, 2020 [8. 時事評論]

 グローバル基準に合わせて、新学期を九月にすべきだという人たちの声が大きくなっている。武漢コロナ感染症騒ぎで、世の中ひっくり返っているときに、そんなことを議論している暇があるのか?
 安倍政権は教育制度改革に関しては「過激派」あるいは「急進派」のようだわたしは健全な保守主義を標榜しているから、変化は遅いくらい、ゆっくりでいい。平時に議論を尽くして理解とコンセンサスを醸成してからまな板に載せるべきと思う

 なんどもそういう意見が出てきては消えていった。議論するならこの騒ぎが終わってからしたらいい。
 慌てるとろくなことがない。

 九月にしたら、企業の異動辞令も9月1日付なんてことになる。子どもの学校入学の時期に異動辞令日を合わせるというのが人情というモノだろう。まさか、卒業半年前に親の赴任地へ転校?かわいそうすぎます。そして真夏の暑い盛りに全国いたるところで引っ越しである。これでは引っ越し業者がたまったものではあるまい。
 受験シーズンは7月、首都圏は梅雨の真っ盛り。ムシムシと蒸し暑い、冬なら働く頭も梅雨の蒸し暑さで働かぬ。とくに極東の町から首都圏の大学受験は「人生初体験の苦行」となる。
 恩恵を受けるのは海外留学する生徒たち。高校では1%もいないだろう。大学でも2%いるだろうか?つまり、ほとんどの中高生や大学生には九月新学期のメリットがない。
 新入社員は9月1日付で入社ということになる。真夏の暑さが残暑に変わるころを新年度とするのはいかにも日本の気候や風土に合わぬ。グローバルスタンダードに合わせるというのはそういうことだ。日本の文化や伝統的な価値観、風習、慣行をバッサリと切り捨てるということ。そのうちに日本語を廃止して英語を母語にしろなんてめちゃくちゃな議論が出てきそうだ。実際に戦後そういう議論が文科省で盛んになされたことがある。

<頓挫したGHQの国語教育改革>
  GHQのCIEという機関が漢字表記をやめさせてかなとローマ字表記を導入しようとしたことがあった。CIEは昭和22年に費用を日本政府に出させて「日本人の読み書き調査」を実施した。無作為抽出で全国の16歳―64歳までの国民が選ばれテストを受けてます。山奥の農村で炭焼きをしているお婆さんのところへも調査員が出かけてテストを実施。一字も書けなかったお婆さんは「涙を流して、「申し訳ありません。これから心を入れ替えて勉強しますから、どうか勘弁してください」と言って謝ったということです」(大野晋著『日本語の教室』岩波新書 p.154)。当時の人口は7755万人、機械的に無作為抽出されたのは17,100人でした。実際には16,820人について行われました。4.4%が満点、平均点は78.3点、識字率は97.9%でした。CIEのメンバーは結果に問題文の一部が紹介した本に載っています。びっくりしてひっくり返ったでしょう。いま同じ問題を高校生にやらせたら平均点が50点行かないでしょう、それほど難易度の高い問題だった。結果が予想とまるで違ったことに驚いたGHQはすぐに案を取り下げた。GHQは識字率の高さと国語力の高さにおいて当時の日本が世界一だったことに気がついたのだ。
 グローバルスタンダードだと専門家たち(当時の教育刷新審議会委員)が騒ぎ、ローマ字に変更しなくてよかった。日本人の半数以上が日本語で書かれた小説すら読めない、そんな状態が想像できますか?
 ハングル文字に切り換えてしまった韓国は国民の大半が漢文で書かれた自国の古典文学を読めない。歴史を無視してしまう国民性は古典文学とのつながりが切れたことが影響しているのではないか。かれらは百年以上前に書かれた自国の歴史書はもとより、文学作品すら読めない。歴史からも伝統的な価値観からも断絶してしまっている。
*https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1318255.htm

 九月新学期への移行をするとしたらどこまで影響が及ぶのか、人間一人の頭では到底見通すことはできないから、さまざまな立場の人間が意見を表明して、影響を一つ一つ具体的に評価すべきだ。丁寧にやれということ。

<成功したグローバル基準導入のもたらしたもの>
 グローバルスタンダードに合わせるという議論でもう一つ思い出したことがある。米国の『年次改革要望書』に屈してグローバルスタンダードを導入してえらいことになった会計基準変更について述べておきたい。
 米国の要求に屈して株式の評価基準をグローバルスタンダード=米国基準の時価評価に変更した結果どうなったか?日本の上場企業の株式持ち合いは消滅、いまや一部上場企業の4割が外国企業や外人保有だ。評価基準を変えただけで日本株は値崩れを起こし、海の外へ大量に流出した。結果に驚いてから慨嘆しても手遅れ。経営者の報酬は平均しても3倍以上になり、雇用の4割が非正規となり、実質賃金は低下している。浅智慧で唐突に制度を変更してはならぬ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/年次改革要望書

<日本人の伝統的倫理に反するやり方>
 日本人が伝統的に受け継いできた倫理観がある。商売なら「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」という商道徳、商人や経営者が守るべきものだ。会津の什の掟には十箇条くらいあったと思うがその中に「卑怯なことはいけませぬ」「弱い者いじめはけませぬ」とある。薩摩の郷中にも似たような条がある。日本では泥棒にも守るべき倫理が伝わる。火事場泥棒はしてはいけないということ。阪神淡路大震災のときにも2011年の東北巨大地震津波のときにも熊本自身のときにも、「火事場泥棒」が横行した。カルロス・ゴーンのような自分さえよければいいという経営者も増えている。自分の報酬を法外に上げて、非正規雇用を増やして恥じない経営者が増えている。どの分野をみても数百年も伝え守ってきた倫理観を失いつつある者が増えている。残念なことだ。
 子どもの教育に悪いから、コロナ感染症で世の中がひっくり返っているときに、九月新学期への移行なんて制度改革をまな板に載せる、火事場泥棒のような議論はやめたほうがいい。議論するなら、武漢コロナ感染症騒ぎが鎮まってから、それがまっとうな人間の判断というもの。
 九月新学期に変更なんてにわかに言いだした人たちの人品骨柄をよくみたらいい。胡散臭いのがまじっていないか?アフリカ大陸の大学を卒業したと自著には書き、公言もしているが、やさしいエジプト語会話も理解できないのにどうやってエジプト大学を卒業したのかもわからぬ輩、学歴詐称の疑いの晴れぬ東京都知事殿もそのお仲間の一人だと聞いてゲンナリ。


*https://news.yahoo.co.jp/articles/42c62cdac2ed5af33e58199e7d9b7972dbfee795?fbclid=IwAR1v83lzR7A1AW-6MMqCJh9SPipalYswiNx0ihz-OnmyyBcNupxz3LjUoRI

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https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2015-07-21


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