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#3088 公民・歴史・地理から見た安保法制論議:憲法第九条と自衛隊 July 21, 2015 [20. 歴史]

    <更新情報>
    7/22 朝9時追記 <国防-4:文化交流>


     中学校の社会科は、地理・歴史・公民と分野が分かれているが、問題はこれらの三分野がクロスオーバしているところに存在する。憲法第九条と安保法制の問題はまさしくそういうところにある問題ではないだろうか。中高生の皆さんは分野横断的な問題分析のトレーニングだと思って読んでもらいたい。

    <憲法第九条を素直に読むと・・・>
     まずは公民分野からのアプローチ、小学生になったつもりで憲法第九条を素直に読んでみよう。
    -------------------------------------

1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
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 条文の論旨は明快で、①戦争の放棄、②戦力の不保持、③交戦権の否認の三つの要素から構成されていることは、多くの学者どころか、小学生でも誤解するものがいないくらい、明々白々である。
 「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」となっているから、憲法条文解釈上は日本に軍隊が存在する余地はない。自衛隊は軍隊ではないというのは、大人の屁理屈。

<敗戦処理と憲法第九条:70年前になにがあったのか>
 次は歴史からのアプローチだ。この条文は日本が白人との戦いにおいて負けた結果、戦勝国である最強の白人帝国(米国)が占領政策上天皇制の存続を認めたほうが統治しやすいと判断し、天皇の戦争責任を問わない代わりに世界に例のない第九条の条文をいれて他の国々を黙らせたという当時の事情はあるのだろう。米国は何が何でも、つまり天皇制維持を認めてさえも日本を統治して自分の支配下に組み入れる必要があった。アジアでの日本の力を無視できなかったのである。ほうっておけば、日本はいずれアジア諸国のリーダとなり、白人帝国と衝突することになる可能性が大きいから、米国の国益上、日本の天皇制を利用しつつ、米国文化へ取り込むために日本文化の破壊を目論んだ。
 たとえば文字政策を具体例に挙げたい。昭和21年当用漢字(1850字)が告示され、漢字制限が行われた。これは文人の国語力を下げただけではない、一般国民の国語力も著しく低下させてしまった。序(つい)で米国は日本独自の文化破壊を目的として漢字廃止を画策、CIEによる国語テストを実施した。当時の人口7755万人から、戸籍簿に基づき無作為に17100人を選び16820人について国語力テストが行われた。該当者の年寄りを山の中まで迎えに行って、町役場や村役場につれてきて国語のテストを受けさせるというほど厳格なものだった。結果は予想とは大違い、平均点は78.3点、満点が6.2%、識字率が97.9%だった。
 これだけ厳密な識字力調査は世界に類例がない。漢字や短歌の読み書き能力の高さや識字率の高さに驚いて米軍は漢字廃止政策を取りやめた。こんなに文化程度の高い国とでは次に戦争になったときにはやっかいなことになると思っただろう。
 驚くべきはその後の日本側の調査委員会の対応であった。6.2%の満点を強調せずに、漢字の読み書き能力が足りないという結論を下し、漢字制限へと動くのである。そして国語審議会が中学3年生までに学習すべき漢字を881字に制限してしまう。(大野晋『日本語の教室』(岩波新書)より)
 その後の経緯は明らかだ、文部省と国語審議会が漢字制限をし続け、日本の文化を根底から破壊し続けている。
 進駐軍が漢字を廃止するには日本国民を納得させるために、具体的な調査とデータが必要だったのだろう。世界に類例がないほど国語力のレベルが高いことが分かり、それで米国は漢字廃止をあきらめたのである。データの裏づけのない暴挙(漢字廃止)をしたら、日本人の国民感情を著しく傷つけ、米国への反感が一気に巨大なうねりとなりかねないと読んだのだろう。愚かだったのは日本の歴代の文部官僚と国語審議会のメンバーである。

 憲法第九条は結果として日本が朝鮮戦争に直接巻き込まれることを防いだし、ベトナム戦争でも国内基地の利用を認めることはあっても、直接日本の軍隊が米軍と一緒に戦うことを阻止した効果は認めるべきである。この辺りは現代史。

<地政学上の問題:現下の世界情勢と日本>
 しかし、戦後70年がたち国際情勢が大きく変わった。中国は戦後、モンゴルやチベットを侵略して自分の版図を広げたし、ベトナムにさえも版図拡大のために侵略戦争を仕掛けた。いままた南沙諸島や尖閣列島で力に物を言わせて同じことをしようとしている。日本が消費している原油の90%は中東産である。マラッカ海峡を通り、南沙諸島を経由して石油タンカーで運ばれてくる。外交と防衛は地理的条件に依存しているから、南沙諸島の石油輸送ライン確保は日本にとっても重大な関心を寄せざるを得ない。モンゴルやチベットは強力な軍隊がなかったから、中国の属領にされてしまった。強力な軍隊があれば、侵略されずにすんだ。地理上の相互の国の配置条件からくるところの、外交・防衛問題は地政学の対象である。
 北朝鮮は言を左右にして、拉致した我国の国民を戻さない、そして核弾道ミサイル開発を急いでいる。
 ロシアは200カイリ内サケ・マス流し網漁禁止法案を制定し、北方領土とその周辺の実効支配をさらに強化しようとしている。ヨーロッパが食料品輸出禁止措置をとっているので、ウクライナ情勢が解決するまで、ロシアは農水産物の自国領内での生産増大を図らなければならない。北方四島海域での水産資源の重要性が増大している。
 中国とロシアの領土拡張志向はほとんど病的、そして避けて通れない地政学的な問題があるのだから、日本はロシアと中国と米国を強く意識した防衛体制を築かなければならない。

<国防-1>
 自衛隊は軍隊ではないという方便はもうやめて、憲法上で軍隊の存在を認め、時の政府の拡大解釈の余地を小さくする具体的な規定を盛り込み、必要な法令を詳細に定めるべきではないのか。
 特定秘密法案と並べてみると、安保法制は政府の判断次第で何でもできるように見える。情報の隠蔽は国の未来を危うくする。憲法第九条の改正と必要な法令の整備について、もっと具体的な論議をすべきで、3年間くらい議論をつくして成案をつくればいい。

<アジア対白人帝国との戦いであった大東亜戦争の総括の必要>
 こうした作業をする前に、なぜ日本が戦争に追い込まれたのか、アジア諸国の白人支配にピリオドを打とうとした大東亜戦争とはアジアから見たらなんだったのかについて、総括すべきである。日本はブロック経済で石油供給を断たれた結果戦争に追い込まれた。いままた中東からの原油輸入が途絶えるようなことがあれば、日本はどうするのか、そういう具体的な危機を想定してコンセンサスを醸成する必要がありはしないのか。『戦前日本の石油攻防戦』という本が3年前に出版されている。わたしたちは開戦前の日本経済の危機的状況を知らなさ過ぎる。現実の国際政治はいたって厳しい。

戦前日本の石油攻防戦―1934年石油業法と外国石油会社

戦前日本の石油攻防戦―1934年石油業法と外国石油会社

  • 作者: 橘川 武郎
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2012/05
  • メディア: 単行本


<国防-2:原発廃炉と多核弾道ミサイルの開発配備>
 もうひとつ、国防上看過できない大問題がある。50基の原発である。ここにテロを仕掛けられたり、ミサイル攻撃を受けたら、1箇所だけで原発30個分の放射能汚染が生ずる。このような状況は国防上危ういから、1基を残して20年間で49基を廃炉にして、核武装すべきだ。
 近隣諸国である中国、北朝鮮、ロシアが核爆弾とその運搬手段(ミサイル)をもっており、万が一日本が攻撃されるようなことがあったら、相手を殲滅できるだけの軍隊と武器が必要である。多核弾道ミサイルを開発して、必要な場所に必要な数だけ配備すべきだ。技術も必要なウラン精製用の遠心分離機も、核爆発のシュミレーションをするスーパーコンピュータ「京」も、開発能力を要する人材も必要なものはすべて日本国内にある。ロケットはロケットの精密誘導技術もすでにある。日本は潜在的な多核弾道ミサイル保有国である。
 中国はモンゴルもチベットも侵略して自分の国土とした。ベトナムにさえも軍隊を送り侵略しようとした。日本人は無抵抗で殺され、国土の蹂躙を許すほどお人好しではない、戦う準備は必要だ。どの国でも、日本を侵略しようとしたら、相打ちにできるだけの武力はもつべきだ。日本人は特攻の歴史がある。同じ武器をもって戦ったらどうなるかは戦勝国(国連安全保障常任理事国)が知っている。そういう背景があれば、外交交渉も可能になる。

<国防-3:ビジョン>
 国防上も外交戦略上も、そういう議論をすべき時期に来ているから、日本の国防をどうするかの議論を逃げてはいけない。憲法第九条改正をして、自衛隊を国を守る軍隊と認めよう。
 江戸中期の国防について論じた書に、林子平著『海国兵談』(16巻)がある。海に囲まれた島国の防衛を論じた最初の書である。21世紀に住むわたしたちはどのような『海国兵談』を書くべきか、林子平に問われている。

*林子平『海国兵談』 ウィキペディアより
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E5%9B%BD%E5%85%B5%E8%AB%87

海国兵談 (岩波文庫)

海国兵談 (岩波文庫)

  • 作者: 林 子平
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1939/03/02
  • メディア: 文庫


<<林子平「三国通覧輿地路程全図」>>
 もう5年ほども前になるが、この地図の複製を根室の文学博士(考古学者)のK構さんからいただいた。ロシアと中国が下方に描かれていて、日本列島が弓形にロシアと中国の太平洋進出を阻んでいるように見える地図である。両国から見たら、日本は実にうっとうしい存在であると林子平は言いたかったのだろう。両国が太平洋に進出するためには日本を属国にしなければならない、そういう地政学的な位置に日本がある。

<国防-4:文化交流>
 中国では日本の絵本や漫画やアニメが人気がある。日本人のメンタリティを理解してもらうには、中国語に翻訳された絵本で中国の子どもたちが育つのはいいことだ。絵本は大人が子どもに読み聞かせるから、大人も日本人のメンタリティを理解するようになる。
 アニメや漫画の本についても単なる娯楽ではない質の高い作品が多数存在する。手塚治の『火の鳥』『釈迦』『ブラックジャック』『鉄腕アトム』、千葉てつや『明日のジョー』、梶原一騎・川崎のぼる『巨人の星』、さいとうたかお『ゴルゴ13』、土山しげる『食いしん坊』、あだち充『タッチ』、ジョージ秋山『浮浪雲(はぐれぐも)』、長谷川町子『サザエさん』・・・名作は他にもたくさんある、実に多彩で日本人独特のメンタリティを表現した作品や普遍的な価値を追求したレベルの高い作品が多い。
 相互のメンタリティを理解するのは長期的に中国と日本の関係を考えるときに大事な意味を持つ。何かことが起きたときに、そういう人たちが橋の役割を果たす。最後に頼りになるのは文化交流とそれによって育まれた人の交流であることを忘れたくない。
 中国の文化は文字や漢詩を通じて、千数百年間日本に入っているから、いちいち上げる必要はないだろう。土曜日に隔週登校させて、小学生に漢文素読と日本文学作品の音読をやらせてみたい。国語の学力が著しく上がるだろう。

<安保法制 わたしはこう考える>
 ブログ仲間で、「釧路の教育を考える会」の副会長であるお二人が、安保法制について思うところを書いている。

「議論がかみ合うはずもなし」  ブログ「情熱空間」
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/8059121.html

「第3182回 そもそも論なのです」  ブログ「くしろよろしく」
http://blog.livedoor.jp/gekko946/archives/51794927.html

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*#195「少し過激な北方領土返還論」MIRV(多核弾道ミサイル)開発・組み立て・解体ショー
ロシアをぎゃふんといわせ北方領土を返還させるための具体論
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-06-07

 #465「"Japan sent uranium to U.S. in secret"は北方領土返還運動の好機か?」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-12-30

  #1401「ロシアがフランスから新型軍艦を購入し北方領土へ配備、対抗措置はあるか」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-03-1

 #1892 映画「マーガレット・サッチャー」と北方領土 Apr. 6, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-04-06


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コメント 8

小松 祐輔

防衛に対する備えとしての自衛隊と原子力発電所のあり方について、ほぼほぼその通りと考えます。



実際、時代は敗戦から70年たち、近隣諸国の状況は変化しております。また、前回の大東亜戦争の理由を考えるに、次に巻き込まれる戦争もとても下らない理由で始まる可能性が高い。
いち早く議論を始め、法律で自衛隊を保護することができなければとても危険であると考えます。
原子力発電所

原子力発電所諸問題におきましては、次に変わるエネルギーと効率問題がクリアできるならば、順次変更をすべきであります。しかしながら、現在においては、効率の良い発電方法が見あたらず現時点での廃止は、電力代金の値上げと言う形で家庭経済を直撃するのみならず、中小企業の特に製造業においては甚大な被害を被るあたりは慎重になるべきだと申し上げねばならないかと思う次第であり、廃炉となりますとその処理時間と経費がかかるため20年という期間では難しいかと思われます。また、現在の核戦術において、地上には落とさないという考えが非常に高まっておるところで、それに伴い通常兵器による攻撃に対する防衛を強化すべきかと考えます。それに伴い対核戦術と対通常兵器に対する防衛措置をいち早く導入し、制空権の優勢維持こそがわが国のこれからの防衛計画に絶対必須要件になると考えます。更に、海軍増強と警備の強化はすぐに行い、テロ抑止につとめるべきであります。



核保有に関しましては、少なくとも所持することは必要と考えますが、必要異常に配備していても維持費がかさむばかりでまた、核戦術と抑止論において、使わないことを前提とする兵器は多数の保持の必要性を認めることはないかと思います。ただ、核を開発し配備するアピールにおいては、まず国内の反発分子をどのように押さえるかが当然必要なのと、現在の所謂スパイ分子の捜索、検挙がなければ、件の国などに技術的保護及び保守が難しいと思われます。

ガラパゴスから失礼いたしました。
by 小松 祐輔 (2015-07-30 19:53) 

ebisu

小松祐輔さん

論点1の自衛隊を軍隊と認めることは一致。
論点2の原発は次に変わるエネルギーと効率問題がクリアできれば、廃炉に賛成だが、それは現実的でない。理由は廃炉すれば電力量が上がるから。
論点3の多核弾道ミサイル開発・配備については維持費がかさむことと、スパイによる技術流出が不安だから反対

だいたい、そういうことのようです。
国会議員の皆さんもそういうことをきちんと論じてもらいたい。小松さんのような主張の方もいらっしゃるし、社民党のように軍隊も核も反対とおっしゃる勢力もあります。
具体論で議論することは国民的なコンセンサスを築き上げるために大事です。
国防は国民のコンセンサスが必要です。

二番目の論点にはさらに原発問題とそれ以外の問題に分けることができそうですが、よろしかったら原発問題について少し議論しませんか?

原発の発電コストが安いものだという前提を置かれているようにみえます。わたしには議論の前提条件に問題がありそうな気がします。原発のライフサイクル全体にかかるコストを考えると、途方もなく原発の発電コストは高いというのが、ebisuの主張です。

読む人たちが楽しければいい、議論は平行線でかまわないと思います。
by ebisu (2015-07-30 22:10) 

小松 祐輔

コメント返し、感謝致します。

拙い議論でもよろしければ、是非お受けしたいと思います。

まず必ずしも核兵器配備を反対しているわけではなく、原子力発電所廃棄について反対しているわけではありません。

原子力発電所コストにつきましては、既存の発電施設を財産と考えたうえでの考えで、新たに立てることについては、コスト面で反対しています。
言い直しますと、既にあるのだから、使った方がよいのではないかと考えています。確かに件の所謂東日本大震災におきまして、日本の原子力発電所安全神話は崩れさり、潜在的コストが上昇したことは認めねばなりません。が、かといって既にたててしまったものは、解体に莫大な金額を要する上に、原子力で発電するという構造上、特殊な燃料、資材、とただ廃棄するのにも慎重を要するものが扱われているはずであります。

それらを含めまして、新エネルギー開発運用が認められるまでは、既存のものを動かすべきかと考えます。

また原子力発電所の全面廃棄の反対の旨につきましては、原子力に対する研究及び所謂核兵器運用開発と製造に必要なものであるからであります。
(ジョージワシントン)等米製空母などに搭載されます原子力機関は、通常の原子力発電所に用いられるプルトニウム濃度が桁違いでありまして、またその圧縮行程にはどうしても原子力発電と同じ技術を使用している旨がございます。通常核兵器も無論ですが、起爆させるためには同濃度が極めて重要であります。これは原子力潜水艦など戦略兵器級のものは同様の問題を抱えているようでありまして、また、原子力基礎研究は勿論のこと対策研究に大きく寄与するのは原子力発電所であると考えます。

なので、もし、核と呼ぶ兵器運用と防衛を考えるならばどちらも必要であると考えました。

閑話休題ですが

国会ではこのような議論はないのでしょうか。社民党は、反対するところしか見たことがない不思議な組織だと思ってます。
by 小松 祐輔 (2015-08-01 21:01) 

ebisu

小松さんありがとう。

論点の一つは、すでにあるのだから使うほうが経済的に得ということ。
二つ目は、核兵器の開発製造に必要だから。
三つ目は原潜や空母を原子力エンジンで動かすための技術育成に原発が必要。

第一番目から俎上に載せてみましょう。
稼働時間を長くすればするほど、核燃料廃棄物=高濃度放射性廃棄物が増えます。その維持管理コストは将来世代にとって膨大なコスト負担となるでしょう。万年単位で管理しなければいけませんので、何十回となく、保管施設が地震や津波に見舞われます。原子力災害もライフコストに入れるべきことはおそらく小松さんにも異論がないでしょう。

第二番目については、原発が1基あるいは3基もあれば研究できるでしょう。核弾道ミサイルを5000発以上製造可能な高濃度放射性廃棄物がすでに青森にあります。再処理精製済みのプルトニウムだけで45tあります。全国各地の原発に使用済み燃料が保管されています。これを再処理・精製したらその総量は100tを超えるかもしれません。だからこれ以上原料は必要ありません。全人類を10回絶滅してもお釣りがきます。
(廃炉は百年以上にわたる一大事業ですから、そちらの研究がもっと大事かもしれません)

最後の項目については、数個の小型の原子力エンジンの開発はすでに高濃度のプルトニウムが45tあるので十分です。これ以上原発を動かす理由にはなりません。

議論は平行線でいいのです。
国会でいろんな方面から具体的な論戦をやってほしいのですが、票にならないのかやりません。
あなたと議論することで、いろいろな意見のあることをわたしも知ることができます。

どうぞ反論なさってください。
議論しながら二人で本当のところに迫れたらいいですね。
by ebisu (2015-08-01 22:31) 

小松 祐輔

ありがとうございます。本当のところに迫れるかはわかりませんが、やれるだけ意見を交わせたらよいなと考えています。

まず、原子力発電所の稼働数ですが、最終的には1~3機ほどでよいというのには賛成します。もちろん既存の火力発電以上に手ごろな効率とコストの発電方式があればすぐに飛びついてよいとさえ思っています。ただ、当記事からの氏の意見である20年スパンの点で、炉の解体自体が非常に危険な作業及び放射性物質に代わっているため、物理的に不可能なのではないかという点と、急ぐことでのコストの増加を考え、今ある燃料や、資材があるうちは稼働させてもよいのではないかと考えた次第です。

次に核廃棄物の保管リスクについてですが、ほとんどその通りのことがあると思います。もちろん、そこには核武装した際のリスクにも当てはまることではありますが、いずれにせよ災害は発電、軍備問わず日本に住む以上永久に悩まされる課題であると考えます。
が、ここで問題なのは、現在ある廃棄物は核兵器に転用できてリトルボーイ、ファットマン級程度の核兵器(も作れるか怪しい)しか作れない問題があります。

ご存知かもしれませんが、日本の原子力発電で使用されているの燃料は、ウランです。ウラン235かウラン238かは忘れてしまいましたが、それを青森の濃縮ウラン工場にて濃縮または、米国から濃縮ウランを買い付けて各発電所に届けられるわけです。しかし、ここで重要なのは、発電用なので3%ほどしか濃縮されていない点です。もし、軍事目的で使用するのであれば、100%近くまで濃縮する必要があります。また、軍事目的に使用されるのは、プルトニウム239のほうが多いです。ウランよりも総被害は大きくなりますが、技術的に比較的簡単なためと考えます。プルトニウムは、軍事目的で使用する高濃度ウランを利用する原子炉(黒鉛炉)で自然に生成が可能です。もちろん、日本の原子力発電所でも自然発生してますが、残りかすであるプルトニウムの残存する廃棄物jから取り出すとなると非常に長い時間と高い技術、高価な手順を踏むことになります。
よって、(この発言は、前回の自分の発言の首を絞めかねませんが)現状廃棄物としてとってある(発電過程で発生してしまったプルトニウムや劣化ウラン)の濃度しかり、足らないというよりは使えないものが多いと思います。昔、5000~7000発の長崎級の原子爆弾ができるという記事を読んだことがありますが(おそらく氏の指摘はそこからかと思いますが)現在ある材料的には無理です。もともと、廃棄物は増殖炉もんじゅの計画で再生可能資源としてとってあったもので、実際は20年以上たっても研究が進まないのでただのゴミになっているのが現状です。
あやふやな記憶で申し訳ありませんが、たしか、ウランの半減期が45億年に対し、プルトニウムが2千4百年ほどだったかと思います。ただし、ウランから作るプルトニウムはダイオキシンなどの強い毒性物質も発生させてしまう物質のため、どちらが人道的(?)かはわかりません。が、とにかく今ある廃棄物での軍事利用化するとするならば、劣化ウラン弾程度ではないだろうかと思われます。
一応、理論的には、核弾頭化も可能らしいのですが恐ろしくコストがかかるため、核兵器を作るのであれば一から濃縮したものを使うことを強くおすすめしたいと思います。おそらく、氏の指摘する核兵器を開発すると世界で一番金のかかった核兵器の称号と、世界で唯一再利用燃料から作った核兵器の称号の二冠を達成できるかもしれませんが・・・。

また、核弾頭搭載大陸間弾道ミサイルを長崎級(ファットマン級及びリトルボーイ級)に乗せても、現在では役に立たないかと、直接町に落とすと、威力がせいぜい町一つを吹き飛ばすかそうでないかといった程度の威力なので、爆発の威力が小さすぎるという点、また、現在の核戦術の特にICBMについては、高高度核爆発による(コンプトン効果だったかとおもいますが)EMP攻撃が基本であります。既存の原水爆で半径数千キロがカバーできる範囲でEMPを起こせると同時に、インフラ類の全滅が見込めますので。よって、威力の低い旧型の核兵器をいくら作っておいても、コストに比例して効果はあがらないかと思われます。

高濃度プルトニウムにかんしては、出所が特定できません。一応、我が国には必要なかったものであるとは思いますが、この前の米国が軍用濃縮ウランを返せと言ってくるなどしているようですから、あながちウソと捨てきれない・・・とだけしか申し上げられません。

最後に
まだ20代の若造ですが、精いっぱいお相手を務めさせていただければと存じます。

by 小松 祐輔 (2015-08-02 02:45) 

ebisu

小松さんは20歳代の若者ですか、自動車ならピカピカの新品です。こちらはロートル、廃車寸前のポンコツ車、無理をして並んで走ってみようと思います。(笑)

50基ある原発のうち3基を残して、47基いっせいに廃炉が現実的には無理な作業であることは肯けます。
何基ずつやるのか、どういう順序でやるのかは実務を担当する人たちの仕事の段取りしだいですから、ここで議論しても始まりません。専門家の検討に待ちたいと思います。

〈廃炉作業について〉
廃炉については事故を起こした原子炉については非常に困難な作業になります。チェルノブイリはいまだに廃炉処理できませんし、これから50年先でも不可能です。
事故を起こしていない原子炉の廃炉は比較的容易です。問題は使用済み核燃料の処理です。稼働中の原子炉の横にプールを作って大量に保管しています。それの持って行き所がありません。事故を起こしていない原子炉の廃炉・解体自体は容易なのです。

〈高濃度放射性廃棄物について〉
ずいぶん前になりますが、フランスアレバ社から再処理・精製されたプルトニウム42tが返却されて青森県六ヶ所村に運び込まれました。この記事も弊ブログのどこかで言及しているはずです。
半径2m以内だと数分で致死量になるほど強い放射線を放っています。
これがどういう状態なのかわたしにはわかりません。ガラス固化体だと原爆材料に直接転用が可能なのかどうかすら、わたしにはわからないのです。
濃縮には遠心分離機が必要ですが、日立も東芝も島津製作所も世界最先端性能の遠心分離機を商品として販売しています。ウラン濃縮用遠心分離機を1万台発注すれば、1年以内に納品が可能でしょう。
原料になる、使用済み核燃料は、福島第一原発の4号炉だけでも千本を超えていたはずです。弊ブログのどこかに具体的な数字があるでしょう。だから、原爆材料の濃縮ウランも濃縮プルトニウムも日本は製造できます。原料(使用済み核燃料)はすでに過剰ですから、核武装するためにこれ以上増やす必要がありません。。

高濃度放射性廃棄物は現実には管理不能です。米国の状態を見ればわかります。地震大国の日本は米国よりもずっと条件が悪い。地下水を汚染したら、永久に汚染地下水を利用できなくなります。それは長い時間をかけて地下水流となり、海へ湧出し太平洋を汚染します。日本人が放射能汚染された魚を食べ続けたらどうなりますか?1万年守り続けてきた、日本人の遺伝子が傷だらけになり、文化が継承できなくなります。遺伝子が劣化して人口も激減します。百年後には癌死が激増しているでしょう。

プルトニウムの半減期は2.3万年です。

使用済み核燃料の再処理には非常にコストがかかります。どこかに書いたので、後で調べてみます。
すでに現実にやっています。MOX燃料というのがそれです。再処理後の高濃度ウランやプルトニウムを混ぜて使っています。
だから、青森県六ヶ所村の再処理事業はうまみがあるのです。成功したら、毎年数千億円を超える売上になります。

核ミサイル攻撃の効果を最大にする戦術が存在します。それは各国にある原発や再処理工場、保管施設を標的にすればいい。一箇所攻撃したら、原発30発分の放射能が周辺を汚染します。米国も、ロシアも、中国も日本も、標的だらけです。
他国からの核攻撃に対する一番優れた防衛方法は、国内に存在する原子炉をすべて廃炉することではないでしょうか?
日本を攻撃するなら、核ミサイルすら必要ありません。六ヶ所村の再処理工場に保管されている、使用済み燃料を狙えばいい。やり方にっては、東北と北海道が全滅するかもしれません。小松さんはどちらにお住まいですか?北海道、東日本、西日本、四国、九州、どちらにお住まいでも、原発を狙われたらあなたの住んでいる地域も被害は甚大でしょう。

子どもたちのために、孫のために、未来の日本列島に住む人たちのために、原発を速やかに廃炉したい。わたしには強くそれを願うことしかできません。

過去に弊ブログで扱ったものがあるので、紹介します。
「#2864 Aging nuclear power plants :老朽化する原発 Nov. 10, 2014 」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-11-09-2

「#2340 米国の現実:核廃棄物は管理不能 Jun. 25, 2013」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-25

「#1551 『終わらない悪夢:放射性廃棄物はどこへ』を見た  Jun. 12, 2011」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-06-12-1

by ebisu (2015-08-02 11:03) 

小松祐輔

遅くなり申し訳ありません。家に帰っていないもので...

じらすようで申し訳ありませんがお聞きしたいことがあります。


原発廃棄の方向はともかくとして、ではいま不足分のエネルギーをなにで補うおつもりですか?

短くて申し訳ないですが、そこも含めて論議できたらと思います。
by 小松祐輔 (2015-08-09 20:37) 

ebisu

小松さん

こんばんは、どちらに押すまいか知りませんが、たぶん毎日暑い思いをしているのでしょう。暑中お見舞い申し上げます。

家に帰っていないのですか、仕事さえきちんとしていたらそれはそれで結構なことです。(笑)

>原発廃棄の方向はともかくとして、ではいま不足分のエネルギーをなにで補うおつもりですか?

不足していますか?していないと思いますが、原発が全部とまっていても大停電を起こした都道府県も市町村もひとつもありません。

人口減少時代に入っていますし、家電も省電力化がどんどん進んでいますから、わが国では電力総消費量が増える懸念はないのでしょう。

根室⇒釧路⇒阿寒湖⇒北見⇒小清水町原生花園⇒摩周湖⇒根室と走ってきました。北海道では太陽発電パネルがずいぶん増えたようです。電力会社が電力買い入れに難色を示しているくらいですから、電気は余っているのでしょう。足りなければ、まだ数%にすぎない太陽発電の電力をいくらでも買い入れるでしょう。
こういう動きを見ているだけで、本当のところはわかるものです。

気になるニュースがありました。広島だったか長崎だったか、被爆した人の体の中で、放射生物質がいまだにアルファ波を出していることが確認されました。内部被爆です、あれから70年たっても体の中の放射生物質が放射線を出し続けて、遺伝子を壊し多重癌の原因となっているようです。福島の子どもたちも放射能のチリを吸い込んで内部被爆しているケースがたくさんあるのでしょう。飲み水からも食物からも体の中に入り込む。その人が死んでも放射生物質はなくならずに環境中に残り続けます。

福島第一原発3号炉はMOX燃料ですが、核爆発を起こしてプルトニウムが飛び散っています。数キロ離れたところでプルトニウムの破片が見つかっています。当時の新聞が騒いだことがありました。
日本政府は子どもたちを避難させませんでした。その数は36万人です。親たちは子どもたちの将来が心配でしょう。
不便でいいのです、原発は要らない。

生成済みのプルトニウムの保管量は46tだと最近のニュースが言ってました。原発内に保管している使用済み核燃料の総量は1.7万トンです。
釧路が原発の廃棄処分場の候補に上げられているようですが、市民も市長も反対です。全国の市町村で受け入れるところはないでしょう。
by ebisu (2015-08-09 21:10) 

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