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信用金庫の課題(道内6信金が赤字(北海道新聞)) [A8. つれづれなるままに…]

  2,008年6月21日   ebisu-blog#209 
  総閲覧数: 17,654/207 days (6月21日0時30分) 

 道内24信金中、6信金が赤字だという記事が6月19日の北海道新聞朝刊に載った。
 道内6信金が赤字
   中小企業倒産増響く
 道内24信金の2008年3月期決算で、6信金が経常赤字となったことが18日、分かった。赤字信金の数としては02年3月期以来6年ぶりの低い水準。米国のサブプライムローン問題に端を発した金融市場の混乱や、景況低迷による中小企業倒産の増加が信金の経営を直撃した格好だ。
 経常赤字となったのは函館、日高、伊達、江差、紋別、渡島の6信金。すでに決算を発表している函館信金は、6億4千7百万円の経常損失、9億1千万円の純損失を計上し、2年連続の赤字決算。日高信金は経常損失4億7千3百万円、純損失2億4千7百万円だった。残りの4信金も25日までに決算を発表する。・・・
  さらに、公共工事削減、原材料価格の高騰などを受け、融資先企業の経営状況も悪化。東京商工リサーチ北海道支社によると、07年度の道内倒産(私的整理含む)は610件と4年ぶりに600件を突破し、主な融資先である中小企業倒産の多さも響いたようだ。

 北海道経済が疲弊しているので、中小企業倒産が多い。原料価格の高騰が信金融資先企業の業績を悪化させている。
  そうした厳しい環境の中で、大地みらい信金は13億円の経常利益だ。収益力は群を抜いているし自己資本比率も20%を超えている。Fitch Ratingsの格付けは星三つ“★★★”、最高格付けである。立派なものだ。
 不安要素はふたつ。余剰資金運用の95%が国債と地方債、公社債でなされている。長期金利が高くなれば巨額の評価損が出るリスクを抱えている。堅実な運用が裏目に出るシナリオが考えられる。この場合は他の金融機関も同様の影響を受けるので大地みらいに限ったことではない。銀行の倒産が続出するので、影響が大きすぎて日銀は長期金利を国際水準に引き上げられない。
 もう一つは、不良債権額が76億円?(ホームページを見ると平成18年度の「金融再生法開示(不良)債権額」は67億円である。平成19年度末は確認できない*)と前年に比べて9億円も膨らんだことにある。未処理不良債権額が増えていることは不安材料である。今後の不良債権の処理の仕方如何で業績はぶれることがあるかもしれない。13億程度の利益では不良債権を一掃するのに何年もかかる。利益は3億円程度にして10億円不良債権を償却すべきではなかったのか?信用金庫法や金融再生法は最低基準である。収益力が高いのだからそれを超えて経営を健全化しても良いだろう。最低基準に従った意欲のない決算に見える
 東証1部上場企業なら監査報告書に限定意見がつくし、その前に外部監査人から決算のやり直しを求められるだろう。信用金庫法その他に準拠した適法な処理なのだろうが、わたしには理解できない。大手都市銀行は数年前に公的資金を注入して巨額の不良債権を償却した。信金の不良債権処理の基準が分からない。不特定多数から株式市場を通じて出資金を集めているわけではないから、それほど厳しい監査基準は必要ないのだろう。上場会社とは監査基準が違うようだ。
 私のいた会社では国内の品質管理基準はもとより、世界最高と言われる品質管理基準を導入していた。そのような厳しい品質管理基準を導入する必要は国内法上はない。しかし、顧客満足度を上げるためや社員の士気を鼓舞するため、他社との差別化のため、会社の業績向上や経営安定化のために、そして株主のために必要な政策であったと確信している。
  要は経営者がどのような意識をもって企業経営をするかである。経営トップの意識が低ければ、最低基準で満足し、その企業の大きな発展は望めないだろう。高い水準での顧客満足と健全な経営を求めてやまないトップの意識が企業の未来を変えるのだと思う。
 
 *不良債権の内の過半を占める延滞債権に対しては保全率100%である。しかしながら保全率が100%であるから安全だということにはならない。連帯保証があれば保全率100%となるし、不動産担保がついていても保全率は100%となるだろう。市内の不動産は著しく値下がりしている。連帯保証も連鎖して自己破産すれば債権の保全にはならない。それでも信用金庫法や金融再生法に照らしてみれば、適正な処理がなされていることは間違いがない。

 さて、北海道信用金庫協会の役員改選が行われたようである。大地みらい信金の北村信人理事長が会長に就任したというニュースが流れた。お祝い申し上げたい。

 道内の信金の四分の一が経常赤字に陥っている。経常損失を計上した信金は経営健全化のために粛々と不良債権の償却を進めたのかもしれない。それにしても収益力が低下していることは道内のほとんどの信用金庫に共通した現象だろう。
 信金は地域密着型の金融を看板に掲げている。金融機関としての信金の地位は銀行よりも低い。道内企業の業績がよくないのだから、地域密着型金融機関である信金の業績が全体としてみれば悪くなるのは当然かもしれない。しかし、6信金は経常赤字、18信金は経常黒字である。同じ信金でも業績に優劣はある。
 いままでの「地域密着型金融」営業の延長線上に業績回復は見えてこないが、よくみると信金は宝の山に座っているとも言える。根室を見ても頑張れば株式公開できるかもしれない企業がある。道内全地域を点検すれば30~50社くらいはあるのではないだろうか。地場企業を店頭公開させることは地元金融機関として信金の重要な役割の一つとなるだろう
 取引先企業の店頭公開をお手伝いし、メインバンクとしてその企業の株式を保有すれば、上場による株価値上がりで、大きな利益を手にすることができる。上場支援業務は大手都市銀行ならどこでもやっている。
 北洋銀行に限って言えば株式上場のお手伝いは苦手なようだ。相互銀行から地銀となったので、営業姿勢は相互銀行時の特性を引きずって殻を破れていない。つまり看板は「銀行」だが中身はいまだに「相互銀行」なのだろう。ここに信金にとって大きなビジネスチャンスがある。北洋銀行を飛び越してしまうことだ。早い者勝ちである。取引先企業の株式上場支援業務は安定した利益源となりうる。北洋銀行も負けるな。競争しあって地場産業を上場企業へ育ててほしい。

 問題は信金に株式上場の支援業務の経験がないことだ。地域経済に貢献しようと思うなら、上場準備業務のスキルのある人材を雇用して、この方面の人材を育成し、経験を積むべきだ。個別の信金で無理なら、協会でプロジェクトチームを作って、有力な地場企業に話を持ち込んで試行してみればいい
 北海道信用金庫協会会長職に就任した北村信人氏に北海道24信金の経営体質改善へのリーダシップを期待したい