SSブログ

日野皓正クインテットin根室 [87.根室の話題]

  2,008年6月10日   ebisu-blog#198 
  総閲覧数: 16,280/197 days (6月10日12時05分) 

 6月8日根室総合文化会館で日野皓正クインテットのジャズ公演があった。観客数は240人。日野皓正が根室を訪れるのは31年ぶりで、75年に公演していると書いてあるから数回根室でライブをやったことがあるのだろうか。とにかく市の総合文化会館で公演があったと今日の新聞で知った。懐かしいジャズトランペット奏者である。
 1969年頃、新宿紀伊国屋書店本店裏手の一角にピットインというジャズ喫茶があった。横長に3~4列に椅子が並べられた50~70席くらいの細長い場所だった。最前列で聴いているとトランペットの先から熱演する日野皓正のよだれが飛び散る。店内は紫煙でモウモウ。1時間半ほどで演奏が終わり外に出る。外は静寂の世界、シーンという音が聞こえるような錯覚がする。狭い店内で精一杯のボリウムで演奏するから、耳はほとんどツンボ状態。よくあんなにほっぺが膨らむものだと、音よりも風船のごとく膨らむほっぺに現れたプロの技に感心した。
 ジョージ大塚やジョージ川口がドラムを叩いていたが、しばらくして弟の日野元彦が出演するようになった。ステージ右端、入り口近くがドラムスの指定席だ。若くてエキサイティングな元彦のドラムに人気が集まっていた。右手の端にはピアノ、本田竹彦、山下洋輔などがいた。
 しばらくして、ジャズは下火となり、ピットインも消えていった。加藤登紀子、新宿駅構内で歌っていた高橋友也等の数名のフォークソング歌手たち、そして東大安田講堂に立てこもり逮捕された当時の話を一切しない幼馴染、セクト、全共闘ラジカリスト、体育会系右翼などの友人たち、卒業後もしばらくの間活動していた赤軍さらぎ派の友人、学校を退学処分になったゼミの先輩。時代の潮流に飲み込まれながら、ときに冷ややかに外側から眺め時代のエネルギーの行く末を確信していた、あの時代はなんだったのか。
 ポテンシャルの高いエネルギーが無数に集まり、さまざまな形で噴出し、吹き荒れながら自身のエネルギーを放出しつくしたかのように静まっていった時代ではあった。ジャズも全共闘運動も。

 フォークソングとジャズの旋律が脳裏に木霊する。そしてディスクジョッキーのある池袋の喫茶店で流れていたOtis ReddingのDock of the Bayがどこからともなく聞こえてくる。あの時代の終焉を予感したかのように響いてくる。まるでレクイエムのように。
♪♪ Sitting in the morning sun
I'll be sitting when the evening comes
Watching the ships roll in
And I watch 'em roll away again
Sitting on the dock of the bay
Watching the tide roll away
I'm just sitting on the dock of the bay
Wasting time~♪♪
1年の間に2度も不幸と幸運の織り交ざった数奇な運命をたどったアライと学校帰りに通った喫茶店。リクエスト用紙にこの曲名をよく書いた。妙に気のあう奴だった。

 あの時代の懐かしいジャズトランペッターが根室に来たのに、知らなかった。38年ぶりに聴きたかったな。トランペットを吹く皓正の唾が飛んでくるのはごめんだが・・・