#5221 毎日繰り返す行動⇒習慣化⇒思考様式の形成:人間の不思議 Apr. 29, 2024 [65.a 成績上位層にかかわる問題]
悪いことを繰り返せば、それが習慣となります。人が見てないからズルしてもいい、見ているときだけちゃんとやろう、そんなことが習慣になってしまえばなかなか変えられません。それが十年続けばもう性格になってしまいます。「あいつは人が見てないとズルするやつだ、そういう性格なんだ」、見る人は見ているのです。自分が一番よくわかっているでしょう。こういう悪習慣も習慣ですから、本人が自覚できてもなかなか変えることができない、性格になってしまえば単なる習慣ではないのですから、ますます変えがたいものになります、人生に碌な影響がありませんから怖いことです。
ところで勉強スタイルがその人の思考習慣を形づくり、いつしか思考の鋳型になることに同意できる人は少なくないと思います。
どういうことか少し具体的に説明してみたいと思います。
難関大学を目指そうとすると、小4くらいから受験勉強をスタートするケースがほとんどでしょう。もちろん効率を重視します。数学なら先取学習でたくさんの解法を覚えてしまうのが効率的です。
数学の学習スタイルは大きく二つに分けることができそうです。効率重視でどんどん解法を覚えてしまうという学習スタイルをタイプA。予習方式で答えを見ないで、時にはウンウンうなりながら1時間でも1日でも考え続け、2日目になってもわからなければ解答を見る、というような自力学習スタイルをタイプBとしましょう。
わからないときにはその章のコンパクトな解説に戻って考える続けることができる、そして概念が呑み込めないと前に進めないという傾向のあるのがタイプBです。
わからなければ解答を参照して効率的に解法を覚えてしまって前に進んで、あとから概念の整理をしようかなというのがタイプAの特徴です。
それぞれメリットとデメリットがあります。実は学習塾を初めて2年後くらいに同じ学年に典型的なタイプAとタイプBの生徒がいました。中学校で男子の中でトップと2番目の成績の生徒でした。それぞれ異なった学習スタイルだったので、興味津々でしっかり観察しました。スタイルは高校卒業するまで変わらなかったようです。
小4から高校3年までこうした学習法を9年間続けたら、その学習法を支える思考習慣がその人の「思考の鋳型」となります。
タイプAは正解を見るとか教えてもらえばいいだけですから、「正解を見て覚える」「教えてもらう」という依存型の思考習慣を9年間育むことになります。
タイプBは「わからなければ基本に戻って自力で考える」という思考習慣を9年かけて磨き抜きます。自力で解決ができなかったわずかな問題だけを質問します。中学、高校と学年が進むほど質問が少なくなる傾向があります。経験の積み重ねで、自力で問題を解決できる範囲が広くなるからでしょう。よほどできる生徒でないとタイプBの生徒が難関大学へ進学することは不可能かもしれません。
効率重視のタイプAの方が、大学受験だけを考えたら圧倒的に有利なのです。
では、社会人になったときはどうでしょう?
タイプAは前例踏襲型の仕事が向いていますね、公務員がぴったりです。東大法学部卒業生にキャリア官僚を目指すものが多いのは理由のあることなのでしょう。それまで育んだ「思考の鋳型」にぴったりです。
民間企業の仕事には前例のないものが多いのです。だからタイプAは職位ががるにつれて挫折するケースが多くなります。「難問にぶつかると基本へ戻って自力で考え続ける」タイプBはうってつけです。大学受験までの9年間、そして大学へ進学してからも、同じ思考スタイルで考え・学習するからです。社会人になっても「思考の鋳型」を変更する必要はありません。鋳型を変えるにはいままでのものを叩き壊して、一から造りなおすしかありません。
誤解のないように念を押しておきますが、中高一貫の進学校にもそして難関大卒にも3%ぐらいはタイプBがいます。
「思考の鋳型」が受験勉強の9年間で、すっかりできあがってしまうと、それは習慣の集積ですから、無意識です。だから、ほとんどの人が変えられません。人間の思考は機械のスイッチと違ってオン・オフできないのです。タイプAからタイプBへは簡単には変えれれません。変えようとしたら、受験勉強に費やした時間以上かかるでしょう。
わたしは、数人規模の紳士服の小さな製造卸の会社に3年間、200人規模の産業用エレクトロニクス輸入専門商社に6年間、4000人規模の臨床検査会社に16年間、300ベッド弱の療養型病院に1.5年間、外食産業の企業の上場準備の仕事を1.5年間しました。
いわゆる難関大卒(東大理Ⅲ、京大、一ツ橋大、慶応大医学部など、20~30人ほど)の人たちとも一緒に仕事しましたが、頭脳が柔軟でタイプBの人は一人か二人でした。おそらく東大出身者でも3%くらいでしょう。この比率は難関大学ではないほうが多そうです。たいした受験勉強してない人が少なくないからです、効率重視の勉強スタイルを築き上げる必要がなかった人たちです。
大学へ入学してから毎日8~12時間、同じスタイル(タイプB)で猛烈に勉強してます。公認会計士2次試験に3年次で合格する人や、そのまま大学院へ進学して大学に残る人たちにそういうタイプがいました。母校の教授になって週に2度東大へ講師でマーケティングの授業を持っていたTさんもそういうタイプでした。彼は院生の時代に毎日十数時間、研究に没頭してました。
普通のスタミナの人があまり研究に没頭しすぎると精神を病みますので注意しましょう。自律神経系が興奮したまま、暴走するからです。不眠状態が訪れたら数日休んで身体を動かし頭をクールダウンしましょう。
母親の介護のこともあって、2002年11月に古里へ戻って、20年間小さな学習塾を営みました。あるとき国立大学医学部志望の生徒が小5の1月に入塾してきましたが、弱点になっている国語は教えず、読解力の段階に応じて17冊選んで日本語音読トレーニングをしました。読解力を大学のトップレベルのゼミの学生と同等レベルに引き上げるためです。「読み・書き・そろばん」といいますが、これは優先順位も表しています。「読み」のスキルが一番大切なのです。すべての教科が日本語で書かれていますから、読んで正確に意味がつかめなければいけません。読んでわかってしまえば、小学校や中学校で学ぶ必要がなくなります。暇をつくって別のことを学んだらいい。とくに人とのコミュニケーション・スキルを磨くことが重要です。学校行事に参加してクラスをまとめ上げる仕事をしてみるなんてこと、あるいはブカツや生徒会活動で何かを変える仕事をしてみる。思春期に経験しなければつかめないことがたくさんあります。切磋琢磨する中で自然にリーダーが産まれます。周りが認める人間が出てきます。
国立大医学部志望のこの生徒は偏差値45の根室高校から道東・道北推薦枠で現役トップで合格しています。二次試験の小論文テストで300点満点で295点をたたき出しました。17冊の日本語音読トレーニングは、ときどき書いてある内容について質問や対話があります。著者の意見、対立する考え方、そして自分の意見を比較検討することをよくやっていました。中3あたりからは大学のゼミレベルでした。よくできる生徒でしたね。「友人に教えてくれと頼まれたら決して断ってはならない、親身に教えること、それは人のためではなく自分のために必ずなります」「(クラス対抗)の学校行事には率先して参加すること」を求めました。よくやっていました。数学は札幌の進学校へ行った生徒にもPCとスマホを利用して教えてました。(笑)
(昨年、血液の癌で逝った根室高校最後の総番長のヒロシもそうして350人の同期が認めたリーダーの一人でした。リーダーというのはなろうとして成れるものではなさそうです。あいつの周りには人が好く集まりまました。周りの人間がリーダーと認めるのです。自然の成り行きで決まります。人間にかわいげがありましたね、好い同級生・友人でした。東京の大学への進学を誘ったのは仲のよかったあいつでした。あいつがいなければわたしは東京へは出てきませんでした。担任から勧められた学校推薦で、日銀釧路支店へ就職したかもしれません。独学で公認会計士二次試験を受験するつもりで高2のときから勉強してましたので、高校3年の12月まで大学進学の意志はありませんでした。小学生の時から家業のビリヤード店で遊んでいましたし、店番を毎日数時間手伝っていました。高校卒業までずっとそうしてました。中学生の時から、公認会計士二次試験に合格してから故郷を出ていこうと、漠然と思っていました。)
さて、まとめです。単純な事実ですよ。毎日繰り返すことは習慣となります。無意識にやっている習慣はいつか人格や性格に一部になってしまいます。
毎日やっている学習スタイルが思考習慣を形成します。9年間かけて築いた思考習慣は「思考の鋳型」となって、人格の一部を形成してしまいますから、大学生になったからとか社会人になったからといって都合よく切り換えられるものではありません。
効率の良い学習スタイルはそれなりの思考の鋳型(タイプA)を育んでしまいます。効率の悪い学習スタイルはタイプBの思考の鋳型に結実します。
どのような学習スタイルを選択するかは個人の好みや目標とするものによるでしょうが、日本の民間企業に不足している人材はタイプBです。
<余談-1:マルクス経済学者などのタイプ分け>
『人新世の資本論』の著者の斉藤幸平氏は典型的なタイプAに見えます。マルクスの膨大な遺稿をドイツ留学して読んだ研究者です。マルクスの遺稿をよく勉強してます。でも答えが遺稿の中にないとしたらどうでしょう?『資本論第一巻初版』を読んで、なぜ第二巻が出せなかったのか、そうした重要な事実からその理由を考えなければならないのです。遺稿をいくら読んでも正解は書いてありません。都合が悪いところは書き残さなかった、マルクスは論理の破綻に気づいてしまったのです。それが資本論第二巻を出せなかった理由です。斉藤氏の著作は受験勉強スタイルの延長線上にあるように見えます。
#5015 斎藤幸平氏の大きな勘違いはなぜ生じたのか? Jul. 14, 2023
古い人では宇野弘蔵氏がタイプBではないかと思います。三段階論という彼の方法論のはマルクスにはありません。わたしの知る限り、そのシューレ(宇野学派)でタイプBだったのは「過剰富裕化論」を提唱された馬場宏二先生です。他の大勢の宇野シューレの経済学者のみなさんはタイプAに見えます。宇野先生の学説をベースにとってもよく学習されていました。効率の良い受験勉強スタイルの延長線上の経済学者たちのようです。
経済学者ではありませんが、友人の遠藤利國はタイプBに分類します。彼の著作はどれも面白い。哲学勉強するのに、ギリシア語から勉強し直していました。とても大きな迂回でした、あの当時もいまもそんな院生はとっても珍しかったのです。効率をかなぐり捨ててました。彼にとってはそれが一番効率的だったのでしょうね。それが彼の著作を面白いものにしています。哲学者が書いた正岡子規論や福沢諭吉論、大学生や社会人は一度読んでみたらいい。
大数学者の岡潔先生も典型的なタイプBの人でした。旧制中学受験で躓いたことがあったかな。旧制中学時代に自力で難解な数学書を読んでいますね。思いつくと棒で地面に数式を書き出し、何時間もそのまま没頭しているなんてことの多かった人です。数学研究に没頭する準備として、禅の修行や俳句の研究に没頭します。彼にとってはそれが必要なことだったからです。ある時夢を見て、二人の修行僧に抱えられて道元の前に連れていかれ、灌頂を受けたと語っています。それからは道元の『正法眼蔵』に書かれていることが手に取るように理解できると。わたしはあの本の内容がさっぱり理解できません。でも、初期仏教経典群を読むことで、釈迦の言っていることは理解できます。
中国経由の経典群は表意文字である漢字に翻訳されたことで、漢字のもつ意味が混じって、衆生には理解しがたいものに化けてしまいました。化ける前の、釈迦が衆生に説かれたものにもっとも近い南伝の初期仏教経典群は繰り返しと比喩の多い実に理解しやすいものになっています。道元は南伝の初期仏教経典群『阿含経経典』を知りませんでした。
*#5207 歴史的順序と論理的順序:『資本論』の論理的破綻と新しい経済モデルについて Apr. 8, 2024 [A2. マルクスと数学]
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他に古代ギリシア関係の翻訳書が多いようです。
増谷文雄訳の阿含経典群は全部で6冊あります。繰り返し読みました。釈迦の透明な知性に触れることができます。
#5220 声音の使い分けと感情移入 Apr. 28, 2024 [49.1 英語音読トレーニング]
今週(月~日曜日)は声音を使い分けてみました。テクストはデイビット・エヴァンスさんと秋乃ローザさんのお二人が音読しています。じつに臨場感のあるすばらしい朗読です。男性のパートは少し声を低く、女性のパートは高い声で音読してみました。そうしたら意外な効果がありました。同調音読するときに感情移入がすう―ッとできるんです。ひとつ例を挙げますね。
Jeannie : Good morning, Dr. Stein. How are you feeling today?
Dr. Stein : Good morning, Jeannie! I feel great.
Jeannie : That’s good to hear. Are you hungry? I have brought you breakfast.
Dr. Stein : Did you make that breakfast yourself.
Jeannie : Yes, buttered toast and eggs, sunny-side up. Are they to your liking?
Dr. Stein : Oh, Jeanine, yes, they are! I think I’m going to cry.
Jeannie : Don’t cry, Doctor. Aren’t you happy?
Dr. Stein : Yes, I‘m so happy I want to cry.
Jeannie : Humans cry when they are happy?
Dr. Stein : We do indeed.
怪我で入院したドクター・スタインのところへ、アンドロイドのジーニーがトーストと目玉焼きを持ってくるんです。アンドロイドに心がないはずなのですが、怪我をして入院したスタインのところへ博士が好きな料理を作って持ってきます。博士は感動して泣きそうになります。ジーニーは心配して、「幸せではないのですか?」と尋ねます。博士は「とっても幸せなんだ、だから泣きたいんです」。ジーニーは「人間は幸せな場合にも泣くのですか?」と訊きます。博士は「もちろん」と答えています。
博士はアンドロイドのジーニーの生みの親なのです。ジーニーは人間になりたいと思っています。
声音を真似して読んでいるうちに、こちらも泣きそうになりました。言い方を真似しているうちに博士の気持ちが伝わってきたからです。
寿命のあるアンドロイドと人間の物語、1982年公開の映画「ブレードランナー」を思い出しました。ハリソン・フォードが主演でした。新宿か渋谷の映画館で封切を見て、2年後に池袋の映画館で再上映されているのを教えてくれた人がいて、すぐに見に行きました。テレビでもやっていました。続編がありましたね。あれも最後のシーンがすばらしかった。続々編が最終回でしたね。
音読後感がなんだかホンワカ。
しばらく、声音を使い分けて音読を愉しみたいと思います。
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#5219 日銀は実質債務超過している:為替介入は無益 Apr. 26, 2024 [95.増え続ける国債残高]
国際的な金融筋が日銀を見る時には、日銀保有国債を時価評価して実質的な評価損を計算して確認するのはあたりまえのことです。
さて、日銀保有国債はこのところの長期金利上昇でどの程度の実質評価損を抱えているのか計算してみましょう。ピッタリの情報がないときは、その近傍のデータで代用します。
●3月末の日銀保有国債残高は585兆円と公表されています。
●日銀保有国債の平均利回りが不明なので仮に0.3%とします。
2016~2021年8月まではほぼゼロ%ですから、この仮定された金利平均値は実際の値よりもり高めと考えていいでしょう。(2016年1月~2022年2月までの6年1か月間は0.2%以下)
●保有国債の平均未償還期間を7年と仮定します。
●昨日の10年の長期金利は0.89%、これは実際の値(4/25)です。
これらの数字を前提にして、実質評価損の計算をしてみます。
585兆円×(1+0.003×7年)=597.2兆円
597.2兆円÷(1+0.0089×7年)=562.2兆円...日銀保有国債の現在価値
562.2兆円-585兆円=-22.7兆円...実質評価損
日銀は保有国債で22.7兆円の実質評価損を抱え込んでいることになります。日銀の純資産額は4.9超円ですからすでに17.8兆円の債務超過です。
(単利計算しましたが、複利計算だともうすこし評価額が下がります。
597.2兆円÷(1+0.0089)^7=561.3兆円
561.3-585=-23.6兆円 )
日銀が保有国債残高を増やしていくのに比例して、80円/ドルからついに156円/ドルまで円安が進みました。
これは国際金融筋が、日銀が実質債務超過状態にあることを認識して、円への信認が崩れた結果のことだという仮説を弊ブログで何度か主張してきました。
この仮説が真なら、財務省が為替介入をしても効果がありません。すぐに円安に戻ります。19兆円しか介入資金がないので、4回の介入は不可能なのです。それ以上やるとなると財務省は保有している米国財務省証券を売却処分しなければならない。財務省が保有している米国財務省証券を市場で大量に売却すればドルは暴落しますから、円高になります。しかし、それは米国と協議しなければいけない。政治的には戦後79年経ってもいまだに植民地状態ですから、政府は米国財務省証券売却について米政府と協議すらできないでしょう。
日銀が保有国債を債券市場で売却するには金利を2~3%へあげないと買い手がつきませんが、そうすると新規国債分から政府の国債利払い費が急激に増大します。数年で予算が組めなくなります。サラ金で借金している多重債務者と何ら変わるところがありません。借金を返すために、また借金を繰り返し、年々借金の額が増えて行っている状態です。とっくに手遅れです。
政府財政破綻が現実のものになります。
借金の元本が1円も返済できず、毎年借入残高が増大している企業に、お金を貸し続ける銀行はないでしょう。破綻処理するのがあたりまえです。政府財政はもう何十年もそういう状態なのです。とくに、第2次安倍政権(2012年12月)以降は国債の増発と日銀引き受け増大がひどくなりました。アベノミクス三本の矢のひとつであった異次元の低金利、ゼロ金利、それに続くマイナス金利で、金利上昇による国債増発にブレーキを掛けるという「歯止め」がなくなりました。
だから、日銀植田総裁が何を発表しようが、日銀が保有国債を市場で売却可能になるほど長期金利を上げることができないのです。それは政府財政破綻の引き金を引くことになりますから。
でもいずれそういうときが来ます。それがいつかは誰にもわかりませんが、ある日突然にやってきます。もう打つ手がありませんから。マイナンバー制度は財政破綻に備えて、国民の預金と保有株式に課税するための準備でもあります。すでに環境は整っています。1946年2月の大蔵省による突然の預金封鎖が、再現されることになるのでしょう。あの時も突然でした。預金が下せない!
さて、新しい経済社会の創造のためにあたらしい経済学が必要です。
*#5207 歴史的順序と論理的順序:『資本論』の論理的破綻と新しい経済モデルについて Apr. 8, 2024 [A2. マルクスと数学]
<余談-1:日米金利差について>
1978~1984年1月まで、産業用・軍事用エレクトロニクス専門輸入専門商社で仕事していました。仕事柄、為替動向は毎日モニターしていました。当時の日米金利差は、おおむね2%でした。だから、為替予約と仕入レートを連動させることで、つねに為替差益を確保できました。金利裁定取引が働くので、6か月先の為替予約レートは常に金利差の分だけ、差益が出ました。
昨日の米国の10年物長期金利は4.647%、日本のそれは0.890%ですから、日米金利差は3.757%です。2%の日米金利差に6年間見慣れたわたしには、現在の金利差がとても異常に見えます。
政府や日銀が政策的に長期金利をいじくりまわすのは、亡国の遊戯だと肝に銘じるべきでしょう。債券市場で無制限に日銀が国債を買いまくるとか長期金利を人為的にゼロ金利に長期間してしまうことは、人体になぞらえたら、自律神経系をずたずたにしてしまうとか、不良品のmRNAワクチンで免疫スステムを破壊することになったのです。国債市場は金利による自動調節機能を失い、戦時財政と同様になっていたのです。
小泉政権時の竹中平蔵氏、安倍政権を支えたマクロ経済学の東大名誉教授浜田宏一内閣参与、罪が深い。もちろん、政権を奪取しても、こういう問題に目を向けることのできなかった民主党政権も。
二十数年にわたって、騙され続けた国民にも問題ありです。もう少し政治や経済に関心を持ち、政治家やいい加減な経済学者たちの言説に騙されぬように利口になりましょう。
<余談-2:日銀総資産と為替レートの相関関係は?>
日銀保有国債残高と対ドル為替相場で線形回帰分析をしてみたいのだが、日銀保有国債残高の推移データが見つからないので、12月末の日銀総資産推移データと各年度の平均為替レートデータでHP-35sを使って線形回帰分析をしてみたら、相関係数は0.720でしたから、日銀総資産と対ドル為替相場の間には強い正の相関があるということになります。強い正の相関関係だけではなく、日銀の保有国債残高が増えることで円安が進むという仮説が正しければ、保有国債を市場で売却しなければ、円安は収まらないのです。
ところで、線形回帰式をデータ推計に使うときは相関係数が0.9を超えていないと使い物にならないというのが45年前に経営分析や損益シミュレーションをしていた時の経験智です。だから、統計学上は強い正の相関関係があっても、相関係数が0.9以下では実務上のデータ推計には使い物にならない程度の相関係数と判断します。
縦軸左側は日銀総資産で単位は千億円です。
このグラフを見ると、2021年から為替が円安の傾きが急になっていることがわかります。傾きが変化したということですから、この13データによる直線の式よりも実際のデータが上の方に出ることを示唆しています。市場はどう反応するのでしょう?
<余談-3:日銀植田総裁記者会見の影響>
4/26午後の記者会見で、国債買い入れ続行と円安が物価に与えている影響は大きくないと発言しました。それを受けて10年物国債の金利は0.925へ跳ね上がり、為替は158.19円/$へとさらに円安が進んでいます。日銀は打つ手がありません。
金利が上昇するたびに、日銀は債務超過額を増大させることになります。植田総裁は震えているでしょう。
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#5218 高速音読トレーニングの目標値:210 words/分 Apr. 25, 2024 [49.1 英語音読トレーニング]
でも、プロのナレータの朗読技術の凄さは速度にはありません。登場人物で声音を使い分けるとか、間を置いて臨場感のある読み方をするとか、感情を込めたり抜いたり、シーンに応じて緩急を意識して使い分けるとか、そういう高度な領域を自在に行き来しています。あれはとてもコピーできません。
NHKラジオ英会話のナレーション(デイビット・エバンスさんと秋乃ローザさんの二人)も例外ではありません。ナレーションのプロらしいかなり高度な技が使われています。
同調音読をして速度は問題なくなっても、今度はそうしたナレーションの技術をコピーできていないことがよくわかって、音読トレーニングを始めた当初よりもさらに距離が遠くなった感じすらしています。ようするにプロの朗読技術のすごさをちっともわかっていなかったのです。音読トレーニングの進捗に伴って、新しい課題がはっきりしてきました。
まあ、とりあえず、凡夫は速度に焦点を当てて修行を愉しみます。成果が確信できる修業は「無心の遊び」と変わるところがありません(笑)
初めのうちは速度を上げようと意識してやりますが、やっているうちに210(words/分)という目標すら忘れて音読に没頭しています。そういう状態に慣れてくると精神の緊張も雲散霧消ということになります。
NHKラジオ英会話は120(words/分)ですから、1.8倍速で音読できたらクリアです。じつは1.8倍速はもう達成してましたが、これは現在のわたしのレベルでは神経を集中してやらないといけないので、不整脈や心房細動の引き金になった気がして、やめてます。早口で読めるのと、同調音読はだいぶ違います。がんばれば、早口でなんとか読めるだけです。毎日、1時間ほど遊びを重ねるうちに速度は自然にアップしていきます。
今週のトレーニングは、こんな具合です。
通常は144(words/分)でゆったり音読をはじめて、156(words/分)へアップ、50回の半ばほどから180(words/分)へと順次、ギアを上げてトレーニングしています。最後の10回は130(words/分)へ落として音読とシャドーイングして終わりです。
210(words/分)は日本語の「早口言葉」のトレーニングと一緒ですから、トレーニングを続けたら誰にでもやれる目標値です。このスピードで心拍数が上がらずに音読できたら、映画のリスニングは早口シーンでも大丈夫です。
(今日見たNHK衛星放送の映画「ケイン号の反乱」は台詞がゆっくりで、頻用表現の多いものだったので、リスニングしやすかった。この映画はハンフリー・ボガードが主演しており、周りも名優が何人も出演しています。ケイン号艦長として赴任してきた少佐クイーグ役のハンフリーボガード、こんな名演技を見せてくれる渋みのある俳優が激減しましたね。ピュリッツアー賞受賞小説の映画化で1954年制作です。日本の若い俳優さんたちに演技のお手本としても見てもらいたい映画です。)
英語の音でやらないと意味ないので、口の動きと舌の動かし方がなかなかたいへんです。単語の出だしの子音の強さも今週はとくに意識してます。だから、日本語の早口言葉よりもかなりしんどい(笑)
塾生のみなさんと「日本語音読トレーニング」授業のときに「準備運動」としてたまにやった早口言葉を思い出しています。いい笑顔してたな。
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#5217 英作文問題作成の進捗と音読トレーニング Apr. 24, 2024 [49-4 英作文トレーニング]
食事してからすぐにタイピングを始めると、やはり消化不良を起こしました。胃がありません、腸への血流が減るようです。朝食後1時間ほどは、ゆったりしていた方がよさそうです。今朝はドライマンゴーを入れた自家製ヨーグルトを8時過ぎに食べました。やはり6時ころに大匙2杯ほど食べておいた方が胆汁液の関係で小腸の調子が好いのです。5~6時に目覚めたときにヨーグルトを大匙2杯、8時過ぎに焼き芋を2㎝厚にカットしたものを電子レンジで温めて食べる、昔のエンジンの暖機運転のようなものです。胃を全適した人はお試しください。効果が大きい。
大西泰斗先生の新年度の講座は、小・中学生でもやれそうですね。英会話と英作文とリスニングが三位一体となっています。音読中心です。定型句をどれだけたくさん音読して身体に覚え込ませるかが勝負どころです。大西泰斗先生ご推奨のこのやり方で、リスニングも英作文も飛躍的に改善できますね。
わたしはこのところ、毎週テクスト本文をそれぞれ95回音読しています。体調のこともあり、あまり精神の集中を伴なうトレーニングは避けています。
たとえば、216words/分の高速同調音読世ようなトレーニングや、180words/分のシャドーイングのような類。
今週は同調音読中心にやっています。今日は、
①1~8回⇒120words/分 1.0倍速 同調音読
②9~15回⇒144words/分 1.2倍速 同調音読
③16~22回⇒156words/分 1.3倍速 同調音読
④23~28回⇒168words/分 1.4倍速 同調音読
⑤28~40回⇒180words/分 1.5倍速 同調音読
⑥41~50回⇒156words/分 1.3倍速 同調音読&シャドーイング
このくらいの速度だと負荷が小さく、精神の集中がそれほどいりません、音読に慣れたからでしょうね。昨年10月半ばころから、NHKラジオ英会話本文を、累計で8380回読みました。口がよく回るのと、耳がよくなっていくので、とっても楽しい!
ああ、英作文問題と解説をemailで送る日だ。十余名の元塾生へこれから送信します。週2回です。
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#5216 オムロン上腕血圧計HCR-7201 Apr. 22, 2024 [36. 健康]
脈拍が出るのと不整脈もわかると謳ってあったのでついでにわたしも使ってみました。
11:55に測定したら、
血圧101-68、脈拍57/分
血圧は消化器内科医に測定してもらうといつも上が120台です。極東の町で3か月ごとの定期検診のときには下が50台、上は90~100でした。スキルス胃癌の手術から16年間、一度も120になったことがありませんでした。主治医の消化器内科医岡田先生も看護師長のおくさんも、付き合いが長かったので、わたしはよほどリラックスしていたのでしょう。(笑)
測定のときにすこし緊張しているのかもしれませんね。ふだんは消化器内科医のドクターですが、循環器の主治医が測定しても上は120を超えてました。
やはり脈拍は正常、ふだんはこんなものです。高速音読トレーニングをすると90~100/分ぐらいに上がっていました。
「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」
ギアを急激に上げてはいけないようです。
何事も年齢と相談しながら...ですね。(笑)
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#5215 心房細動の原因と思われること Apr. 22, 2024 [36. 健康]
3月になってから、シャドーイングは分速180ワードまでアップしてました。高速音読は分速216ワード、早口言葉のトレーニングですが、途中でちょっとでも引っかかるとアウトです。だから精神の集中が必要でした。
精神の緊張が必要のない速度まで落とせば、不整脈や心房細動が消えるという仮説を立てて、実証実験してます。先週からは音読もシャドーイングも144ワード/分に落としてやっています。今週は20回目から156ワード/分で高速同調音読、26回目から同じ速度でシャドーイングという風にちょっとだけスピードアップしてます。
NHKラジオ英会話の速度は120ワード/分ですから、1.2倍速(144ワード/分)でならゆったりやれます。「はじめちょろちょろ中ぱっぱ」、御釜でご飯を炊く要領です(笑)
心房細動を抑える薬と血液凝固を妨げる線溶系の薬剤を3/29から飲み続けています。最初の3日間は午前中下痢が続いたので、薬が合わないので困りました。胃を全適しているし胆嚢もないので午前中は体調が悪く、下痢しやすいのですが、3日間続くのでは、体重減少を招きしだいに体力を失います。
身体の内部を観察してみました。朝起きぬけにリンパ摩擦をするときにお腹の中央当たりの奥の方に軽い痛みがあるのがわかります。ひょっとして、就寝時に胆管から胆汁液が出続けることで、胆管と小腸をつないだ部分が炎症を起こしているのではないかと考え、朝5~6時ころに目覚めたときに、ドライマンゴー入りのヨーグルトを大匙2杯食べまた一眠り、7:40分に起きて8時ころに、焼き芋を2㎝厚くらいに切って食べてみました。朝食は9時15分頃です。一週間目です。
お腹の中央の軽い痛みが消えるとともに、午前中の下痢症状がなくなりました。固めの健康な色の便が出ているので仮説はどうやら当たっていたようです。
脈の乱れを整える薬剤は「フレカイニド酢酸塩錠50mg」は体に合わないので、先週から朝の服用量を半分にしてます。刃の薄い鋏でカットして残った半量は透明なケースに保管して翌日飲んでいます。刃が薄くないと小さな錠剤ですからきれいにカットできません。厚い刃でカットして潰してしまうと粉になるのでいけません。心房細動がなければ必要のないお薬ですので、もう少し様子を見て、データを取り、循環器の主治医に薬の服用の仕方について相談してみます。
午前中の下痢がなくなったので、このところわずかずつ体重が増えています。その日の体重と7日間移動平均値をモニターしています。
今朝の体重は58.9㎏、体脂肪率は20.3、骨格筋率34.2、BMI値20.0
4つのデータは、いずれも今年最高値をマークしています。
2週間ほど前からザバスプロティンを牛乳に溶かして毎日飲んでいます。これも効いているようです。koderaさんに数年前に教えてもらいましたが、あまりおいしくないので継続してませんでした。最近は重宝しています。koderaさんに感謝!
ひとつ気になることがあります。ALPが基準値よりも高い、なにか病気が隠れているかもしれません。2020年ころにも基準値をはみ出しています。関係は不明ですが、このころに2度目の尿管結石症状がありました。
*#4200 アルカリフォスファターゼ(ALP)少し高め Mar. 9, 2020
**ALPが高くなる病気
便利がいいね、インターネットで検索するとすぐにヒットします。胆汁液の出の異常によるもの、骨の病気に関するものの2種類のようです。胆嚢はスキルス胃癌と一緒に切除したので、四六時中流れています。胆管がもし閉塞を起こせば、たちまち便の色が白っぽくなるのでそれとわかりますから、これは病名のリストから外していい。ドクターの意見を聞いてみよう。
この記事の中に心筋梗塞の話が出てきます。循環器内科には「カテーテル班」「不整脈班」「それらではない班」の三つに分類されるようです。
#5214 小中高生と本の語彙の六段階難易度別クラス分け April 19, 2024 [47.1 読み]
出てくる語彙レベルとルビの有無やルビの範囲によって、世の中に出ている本の難易度を分類してみます。
基本は五段階ですが、枠内に収まらぬものは第六段階としましょう。
①総ルビの本
②常用漢字の範囲内の本
③常用漢字+αの本:普通の大人が読めるレベルの語彙で書かれたもの:
新書版の本は専門書への橋渡しのものが多いのでその類はこのクラスです。経済学史の内田義彦先生の本は岩波新書であっても、④に入れます。思索が深いのと、元々の原稿を1/3にそぎ落としているからです。
④難解なもの、普通の日本文学の古典:各種の専門書
⑤内容がむずかしいもの:
『資本論』『経済学批判要綱』『国富論』『道徳感情の理論』など
⑥理解するためにいまではレアな周辺知識や修行を必要とするもの:
『源氏物語』『正法眼蔵』の類
本好きな小学5年生がいて、昨年は200ページ前後のルビの多いものを200冊ほど読んでいました。上の分類では①レベルです。年が明けてからは、夏川草介のシリーズを読み始めました。医者の書いているものですから、医療の専門用語が頻繁に出てきます。分類③に該当します。ルビは少ないのです。語彙の読み飛ばしは内容理解を浅くするのと、せっかく語彙拡張の契機を生かせないので、もったいないのです。それで、夏川草介の本『スピノザの診察室』を購入してあげて、「読めない漢字や、読めても確認したい漢字を丸で囲んでおいで」と伝えました。喜んでやっています。ルビを振りながら、漢字の意味解説をしたら、深く読めることが実感としてわかり、書いてある内容が深く理解できてうれしいようです。
5年生や6年生で習う漢字の大半は読めてましたが、常用漢字の範囲を超える単語や固有名詞を中心に、1ページに複数の単語が読めてませんでした。たとえば、京都の「先斗町」が出てきますが、ルビがありません。こういう固有名詞で特有の読み方をするものはルビを振ってもらいたい。「声音(こわね)」も「常用外」の「読み方ですからルビが欲しい。
最近は宮田珠己『いい感じの石ころを拾いに』を読み始めてます。これは語彙レベルが②です。
夏川草介はペンネームから推して、夏目漱石をもじったものです。当て推量に聞いてみたら、「そうだ」との返事、漱石の作品の話題が本の中で採りあげられているそうです。清少納言の『枕草子』も話題に出てきますが、どちらも一部を読んでいるので特別に興味が湧いたようです。子どもの好奇心がどの方向へどのように走っていくのか、大人にはわかりませんから、自由にほったらかしたらいいのです。勝手に見つけた糸を手繰って濫読し始めます。面白かったらその作家のシリーズを全冊読むなんてことになります。実際に夏川草介の本は図書館から借りてきて片っ端から読んでいます。本は買ってあげたほうがいいですね。図書館から借りた本にルビを振るわけにはいきませんから。シリーズの中から1冊購入してルビを振れば効果が大きいですよ。一人の作家が使う語彙はそれほど多くありませんので。とくに現代作家は概して語彙力が貧弱です。
北海道新聞の記者の方と話す機会があり、記事にルビを振ってほしいとお願いしたことがありますが、「どの程度の漢字にルビを振ればいいのかわからない」と仰っていました。なるほどなって思いました。団塊世代のわたしは75歳になりましたが、小学四年生(1958年)から北海道新聞社説と「卓上四季」というコラムを読み始めました。母親に「読んでみたら?」と言われたのと好奇心からです。当時の新聞は鉛の印字棒を木の枠の中に植字して印刷する方式だったのでルビが振ってありました。夏目漱石が明治時代に新聞い連載した小説は当て字だらけですが適切にルビが振ってありました。だからたくさんの庶民が読めました。
コンピュータ写植になってから、DTP(DeskTop Publishing)では二十年間ほどルビが振れないという状況が続きましたが、現在は高性能のなっているので、ルビの制限はコンピュータの性能やソフトにはありませんが、肝心の新聞記者の方たちですら、適切なルビの運用に困難を感じているのですから、現代作家のほとんども同列の方が多いのです。
日本語音読リストの最後に上げた著者の山本義隆の本の語彙は別格です。彼は智の職人で、物理学者には思えないほど使う語彙も洗練されています。当然ランクは④になります。このレベルの文章を書ける物理学者はいま日本には彼以外にはいないでしょう。高校物理の参考書も書いていますが、端から微分積分を使って解説しているので、教科書とはまるで違います。数学と物理学の好きな高校生にはおススメです。知の巨人と申し上げていい。彼は東大大学院生だった時に全共闘議長に祭り上げられて、東大に教員で残る道がなくなりました。日本人で最初のノーベル物理学賞受賞者の湯川秀樹が「将来ノーベル賞が取れる若者」と絶賛していました。科学史や翻訳書など、著作がたくさんあるので、興味のある若い人はぜひ読んでください。
話はときどき脱線していますが、そんなわけで、小中学生が児童書から大人の語彙の本へ、②から③への移行期に適切な本が少ないのです。わたしはその間にある壁を小4の時にルビのふってある新聞記事を読み耽ることで乗り越えました。その後の学力の基礎は新聞のお陰なのです。3か月も国語辞書を引けば、新聞に出てくる語彙レベルは小学生でも消化できます。「卓上四季」⇒「社説」⇒「政治経済欄」と読み進むうちに語彙の爆発的な拡張が起きました。それで中学生では学校の図書室のSF小説を濫読、世界文学全集の中からも数冊読んでいます。一番厚かったのはパールバックの『大地』でした。高校生になったら、公認会計士2次試験参考書で学習するようになりました。当時は7科目で経済学が入っていたので、近代経済学と双璧をなすマルクス経済学も『資本論』にチャレンジ、ヘーゲルの『小論理学』も読みました。使われている語彙は読めるので、国語辞典を引けばいいだけ、それもごくわずかで済むほど語彙力が大きく育っていたのです。
「読み・書き・ソロバン(計算)」、と昔から言いますが、これは学力を支える基本スキルで、優先順位も表したものです。読めない漢字は書けません。読める漢字の一部分が書けるだけです。そのあとに計算スキルがついてきます。これも珠算をやれば「超人的な計算力」を手中にできますから、小学生低学年で1~2年間ほど習わせてあげたら、強靭な計算力で高校数学がずっと楽になるでしょう。微分積分計算はもちろんのこと複素数の計算でもその威力を発揮します。
日本語のあらゆる分野の専門用語は基本漢字で作られています。だから、基本漢字の意味さえ理解したらその専門用語の意味のだいたいのところは理解できます。たとえば、白血球は赤血球と対比すればよくわかります。赤い色はしていないのです。白い色もしていません(笑) 英語ではleukocyteと言います。この綴りを初めてみて理解できる米国人はいませんよ。white blood cellなら理解できるでしょうが、英語の専門用語はラテン語やギリシア語の接頭辞・語幹・接尾辞でできています。leukoは白を意味するラテン語で、cyteは球を意味します。だから、「白・球」という組み合わせでできています。漢字熟語に似ているでしょう?日本人なら小学四年生でも「白」と「球」の漢字の意味が理解できます。
ついでに言うと、白血病はleukemiaと言います。leukeという綴りを見たらどうやら白に関係があることは理解できます。miaはおそらくラテン語で病気に関連する意味の語です。『ステッドマン医学大辞典』を引くとacromia(色素欠乏症)やviremia(ウィルス血症)が出てきます。これら病名は日本語表記なら高校生でもおおよその見当がつくでしょう。
つまり、日本語は「専門外の専門書」を読むときに、英語を使っている国の人たちよりも百倍有利だということです。基本漢字というだけでなく、表意文字ですから意味がよくわかります。
わたしの専門は経済学ですが、システム工学、プログラミング、複式簿記理論、会計学、管理会計学、原価計算論などの専門家でもあります。管理会計学、経営戦略、経営分析学、医学、理化学測定機や臨床検査機器の分野などの専門書を仕事に使いながら読んできましたから、これらの分野でもプロです。また、趣味の分野で(生成文法)言語学、仏教、ヨガ、経絡に関する本も読み漁りました。日本語の専門用語が基本漢字でできているメリットを存分に享受してきたのです。ありがたいことです。日本語のもつ「表意文字」と「専門用語が基本漢字で作られている」という2つの特異な性格を考えると、マルチ分野の専門知識と経験を持った人材がもっと出てきていいのにそうはなっていません。高校で文系・理系コースに分けてしまうのが大きな障害になっています。仕事の世界には文系・理系で割り切れない部分、それらが統合された複雑系の問題が広がっています。
たとえば、1990年頃にやった仕事、慶応大学病院の産婦人科のドクターと出生前診断検査トリプルマーカ―の日本人基準値を制定する産学協同プロジェクトは、医師と試薬を無償提供してくれる製薬メーカーと、学術協力ということで検査を無償で担当するSRLと多変量解析をする研究部の古川さんという人たちが一つにまとまらなけらばできない仕事でした。それらの関係者とコミュニケーションしてそれぞれが好い仕事をするためには、それぞれの専門用語でコミュニケーションとマネジメントが必要でした。分野の異なる専門家をマネジメントするには、こちらもそれ相応の専門領域のエキスパートであらねば、信頼関係が産まれません。
臨床検査項目コードの日本標準コードは、全国の病院やクリニック、病院システムで導入されています。とても便利なコードです。世界中で日本だけが標準コードを制定し、そのコードで実際にコンピュータシステムが動いています。1986年から5年かけて出来上がったこの臨床検査項目コードの日本標準制定には、臨床検査大手六社のシステム部門と学術部門の専門家、そして臨床病理学会の項目コード委員会・委員長の櫻林郁之助教授という、産学共同プロジェクトが必要でした。システムと学術はそれぞれ別の部門です、そして臨床検査項目コードの日本標準や世界標準を作るという提案は、それらの異質な分野の人たちを産学協同プロジェクトに参加することで大きな仕事をしてもらうということなのです。異質の分野の専門家を一つの産学協同プロジェクトにまとめ上げるというのは、マネジメントです。システム工学、3000項目を超える臨床検査に関する専門的な知識、そしてそれらを一つの目標へ向けて統合するマネジメントが必要でした。BML社のシステム部長が新たなラボの建設に合わせて、業界の臨床検査項目コードを制定しようと、大手六社に呼びかけを行ったのが、この産学協同プロジェクトの発端でした。2回目の会合にSRLからシステム課長の栗原さんと購買課員のわたしが出席しました。私が提案して創業社長の了解をもらっていた「臨床診断システム開発と事業化案」で栗原さんと一緒にNTTデータ津新事業本部と数回ミーティングをしていたので、一緒に会議へ出てみないかと相談がありました。業界で臨床検査項目コードを制定しても、病院側が使うはずがありませんから、SRL顧問の櫻林郁之助自治医大助教授(当時)が日本臨床病理学会の項目コード検討委員会・委員長をしていき詰まっているので、引っ張り出そう。臨床化学部第3課の免疫電気泳動の顧問だから、臨床化学部長の川尻さんも連れて行こうということになりました。第2回の大手六社のミーティングで、わたしから、臨床病理学会との産学共同プロジェクトにして、日本標準コード制定作業部会へ発展的ん位解消しようと云うと、全員賛成でした。3回目の会議に櫻林先生をお連れしました。そこで、システム部門と学術部門からそれぞれ2名参加してもらうことに決めました。5回目くらいまで出席して、産学共同プロジェクトがしっかり軌道に乗るのを見届けて、わたしは離脱してます。1990年に学術開発本部スタッフ課長職になったので、一回だけ出席してます。91年に臨床病理学会から標準検査項目コードが公表されています。SRLがコード管理事務局になっています。
このように大きな仕事に文系・理系の区別はありません。基盤技術あるいは基礎的なスキルはシステム工学と統計学でした。検査項目コードが統一されていなければ、それらに関する統計データすら収集することができません。AIにディープラーニングさせるにはこうしたインフラの整備が不可欠なのです。AIだけ研究していてもできない仕事です。基盤インフラの整備が必要になってきます。医療の分野へのAI導入ではこの基盤的なインフラ、標準臨床検査項目コードを30年以上前から運用している日本が圧倒的に有利かもしれませんね。91年の公表から、世界中の国の医療関係者が関心を寄せています。いずれ臨床検査項目コードの世界標準が制定される日が来ますが、日本標準コードがそのたたき台(基盤)となります。「臨床診断支援エキスパート・システム開発及び事業化案」には10個のプロジェクトがありました。コンピュータの処理速度と通信速度がシステムの要求基準を満たすのは30年先になるというのが、NTT通信事業本部との会議の結論でした。それで、開発を中止してます。創業社長の藤田さんから200億円の予算承認をもらっていました。200億円使い果たしたら、増資してお金を集める算段をしてました。数兆円規模の事業を想定していました。あれから20年でコンピュータの性能と通信速度はエキスパートシステムの要件をクリアしてます。見誤りました。画像通信が要件の中にありましたので。(笑)
1978年から1984年1月まで勤務していた産業用エレクトロニクス輸入商社では経営戦略、経営改革、経営分析、システム開発などを担当していました。入社して1週間後にはオーナー社長関周さん提案の5つの社内プロジェクトを担っていました。長期経営計画委員会、収益見通し分析委員会、電算化推進員会、為替対策委員会、資金投資委員会の5つ。常務の加藤さんが委員長だった利益重点営業委員会だけはメンバーではありませんでしたが、円定価システムというシステム開発を伴なうものだったので、営業業務デザインの変更と円定価システム開発実務をすることになった東京営業所長の遠藤課長からの協力要請で一緒に仕事しました。技術部も営業部門も優秀な人たちとのネットワークは仕事を通じてふだんから培ったものです。もちろん、お酒もとことん付き合いました。(笑)
長期計画は5年の長期計画と3年の実行計画、そして単年度経営計画(予算)で成り立っています。経営計画スケジュールの裏付けがなければ長期計画は絵に描いた餅になりますから、具体的な経営計画をPERTチャートでスケジューリングします。円定価制度の導入は、四半期ごとに為替変動に対応して定価表改訂システムを運用することで可能になりました。為替対策委員会と電算化推進委員会、収益見通し分析委員会、長期経営計画委員会の課題が、仕入システムや受注残管理システム、納期管理システムの開発で、それらが受注レート⇒仕入レート⇒決済レートと連動することで問題の解決が可能になりました。経営上の困難な改革は、複合分野のスキルを要求しますから、文系・理系の区別はありません。これらの具体的なシステム改革や、実務の仕組みを通して、営業業務の生産性を2倍にアップする計画の立案や、為替対策を含んたシステム開発と輸入仕入れ業務の新しい実務デザインと電算化、それらを取り込んで損益シミュレーションと資金のシミュレーションをすることが可能になります。過去5年分のその会社の経営分析データをつくり、それを元に新たな経営計画事案=システム開発計画を策定して、損益(経営成績)や資金(財務構造の改善)をシミュレーションします。5分野25ゲージのレーダーチャートにはそれぞれ標準偏差が設定してあって、総合偏差値で経営状態を表せるようになっていました。経営分析と経営改革のための経営数値シミュレーションモデル開発をしたのです。
これらのシステムをつくるのに、当時はパソコンはまだオモチャでしたから、数値計算プログラミングをしていました。いわゆる理系の仕事ですね。HP-67とHP-97の400頁ほどの英文マニュアルを2冊、1週間で読み切ってすぐにプログラミング。そして半年後には経理業務に使っていたオフコンの言語COOLもマスターしました。数字12個(オペコード3ケタ、オペランド3ケタ×3個)でできている面白いプログラミング言語でしたが、統計計算にはまったく不向きでした。指数計算(指数が分数のものを含む)のオペコードがありません。やろうと思えば、関数ライブラリーを自前で作るしかありません。そんなことをするくらいなら、数値計算ができる汎用小型機を使えばいいだけでした。コンパイル言語のオフコンを仕入れ業務と為替管理と受注残管理のシステム開発時に導入してもらいました。マイクロ波計測器器をはじめとするさまざまな理科学機器が取扱商品でした。時間周波数標準機や質量分析器や液体シンチレーションカウンターも扱ってました。欧米50社の総代理店ですから、毎月1社は新商品の説明にエンジニアが派遣されてきます。英語での説明ですが、その説明会に6年間欠かさず出席していたので、「門前の小僧習わぬ経を読む」状態が産まれました。何しろ世界中のトップメーカの最先端の機器ですから聞いていて面白いのです。ディテクターと制御とデータ処理用のコンピュータそしてインターフェイスでこれらの機器が構成されていました。ディテクトする周波数が異なるだけで、それにコンピュータがつながっているだけですから、原理の理解はそれほど難しくありません。営業はすべて理系大卒、技術部門も出席していたので、それらの部門の人たちとコミュニケーションが普通のことになっていました。まさか臨床検査会社のSRLへ転職してそれらのスキルがそのまま使えるなんて予想もしていません。ただ一生懸命に新しい技術を英語の専門書を含めて、専門書を読み漁りながら、実務で使っていました。文系・理系の区別なんて意識はありませんでした。オービックの芹沢さん、日本電気情報システムの高島さん、それぞれその会社でトップクラスのSEと仕事したお陰で、彼等のスキルをコピーできました。芹沢さんは消息を知っています。オービックの開発担当役員になっていました。優秀な技術屋さんでした。
メインバンクへ来期の業績見通しと、資金見通しを伝えるにも、取扱商品と新商品の情報はとっても大切なのです。それなしには、損益シミュレーションはできません。1年後に決算書が出てきますから、具体的な経営改革の裏付けのないいい加減なシミュレーションは通用しないのです。経営分析には加工したデータの解釈から思い込みを排除しなければなりません。結果がすぐに追いかけてきて25ゲージのレーダーチャートと総合偏差値で検証するシビアな世界です。
産業用エレクトロニクス専門輸入商社を退職して、臨床検査業界ナンバーワンのSRLへ転職して経理部配属、その1か月後には、株式上場のための経営統合システム開発を担当してました。予算規模は10倍、当時国内で最大規模の汎用大型機を使ったシステム開発でした。業界初です。お手本がないので、パッケージシステムを開発するような仕事でした。スキルさえしっかりしていたら、転職しても給与はついてきます。専門書を読むだけでなく、すぐに実務で使ってみることで、スキルが磨かれます。専門書を読んで理解できるのはせいぜい20%です。それでも仕事を担うためには今までとは異質な分野の専門書を読む努力は不可欠です。
50年ほど前から、そうした文系と理系が入り混じった解決困難な問題が増えています。コンピュータシステムがあらゆる分野に浸透してしまえば、システムエンジニアリングは文系理系の統合分野の基礎的な技術になってしまいます。統計学も同じ類です。日本には統計学に特化した学部も学科もありません。コンピュータシステムに関する学問、システム工学の分野も統計学ももはや文系と理系の両方の基盤的な領域にこの50年間で変わってしまったのです。そういうことに文科省や大学も気がついてません。だからそうした領域で必要になっている人材を「教育機関」という村で育成できていないのです。社会のニーズと合わない。変わるべきでしょう?
<出版関係の方への提案とお願い>
常用漢字以外のものは原則ルビを振ってもらいたい。固有名詞で読み方が特異なものも3度だけルビを振ってもらいたい。小説は小学5年生以上で出てくる漢字にルビを振ってくれたら、読者層が増えます。
中学校や高校で朝読書をしている学校が多いですが、生徒は読めない漢字は読み飛ばしていますから、いくら読んでも語彙力が強化できないし、意味も深くはつかめません。じつにもったいない状況になっています。そんなことがわかったのは、20年間生徒たちに日本語音読トレーニングをしたからです。成績下位30%以下の生徒は斉藤孝『読書力』ですが、1ページの数か所読めない漢字が出てきますから、「読み飛ばし」ています。本が好きなのに、ちっとも語彙力強化ができないというジレンマは、出版に関係する大人たちが意識を切り替えれば、環境を変えてやることのできる解決可能な問題です。
<日本語音読トレーニングで実際に利用した本のランク分け>
話を語彙力強化へ戻します。52歳の時に仕事をやめて古里へ戻って小さな私塾(一クラス7名までの個別指導塾)を20年間やっていましたが、そこで日本語音読トレーニングで使用した本のリストをアップして、青色で五段階レベルのどれに当たるのかやってみます。
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*#3726 日本語音読トレーニングのススメ:低下する学力に抗して Apr. 18,2018
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-04-18-1
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<7. 国語力アップのための音読トレーニング >
中2のトップクラスのある生徒の国語力を上げるために、いままで音読指導をしてきた。読んだ本のリストを書き出してみると、
○『声に出して読みたい日本語』 ②
○『声に出して読みたい日本語②』 ②
○『声に出して読みたい日本語③』 ②
○『坊ちゃん』夏目漱石 斉藤孝の音読破シリーズ③
○『羅生門』芥川龍之介 音読破シリーズ③
○『走れメロス』太宰治 音読破シリーズ③
○『銀河鉄道の夜』宮沢賢治 音読破シリーズ③
『五重塔』幸田露伴 音読破シリーズ③
『山月記』中島敦 音読破シリーズ④
●『読書力』斉藤孝 ③
●『国家の品格』藤原正彦 ③
●『すらすら読める風姿花伝・原文対訳』世阿弥著・林望現代語訳 ③
●『日本人は何を考えてきたのか』斉藤孝 ④
●『語彙力こそが教養である』斉藤孝 ③
●『日本人の誇り』藤原正彦(数学者) ③
◎『福翁自伝』福沢諭吉 ④
◎『近代日本150年 科学技術総力戦体制の破綻』山本義隆(物理学者) ④
(○印は、ふつうの学力の小学生と中学生の一部の音読トレーニング教材として使用していた。●印の本はふつうの学力の中学生の音読トレーニング教材として授業で使用した実績がある。◎は大学生でも語彙力上級者レベルにふさわしいテクストである。平均的な語彙力の大学生には手が届かぬ。
音読トレーニング授業はボランティアで実施、ずっと強制だったが、2年前から希望者のみに限定している。本気でやる気にならないと効果が小さいので、お互いに時間の無駄。)
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件(くだん)の生徒が音読指導で読んだ本のリストです。本の中身についても問題に気がつく都度、議論を重ねてきました。大学の良質のゼミ並みの内容をもってました。北大ではこういうレベルの学部のゼミはおそらくないでしょうね。
わたしは学部では哲学の市倉宏祐先生のゼミに、大学院では3人で西洋経済史の増田四郎先生(元一橋大学学長)の授業を受ける機会に恵まれました。どちらもその分野では当時日本でナンバーワンの先生です。
この生徒はやっているうちに慣れてきて、高校生になってからはそういう大学の学部ではトップレベルのゼミでやるような議論ができた特別な生徒です。
だから、ご褒美に最後の本は西田幾多郎『善の精神』にしようかと考えていました。医学部に進学したら、哲学書なんてカタい本は読む機会がないだろうと思ったからです。でもやめました。興味がそっちへそれたら、思索にふけることになるのでとても時間を食います。好奇心が強いから危ない。(笑)
それで、山本義隆『近代日本150年 科学技術総力戦体制の破綻』を取り上げました。π中間子理論で日本人初のノーベル物理学賞受賞者の湯川秀樹がもっともノーベル賞に近いと評した優秀な学生でした。この本は語彙が難解な本です。大学院生のときに全共闘議長に担がれた彼は、東大へ残れませんでしたね。時代の流れです。岩波新書のこの本を1冊読むだけで、知の巨人、本を書く職人としての彼の力量がはっきりと読み取れます。若い時に本物の知識人とまみえることは大事なことです。だからこの本を選びました。とてもカタい、めちゃカタい。(笑)
#5213 英語音読トレーニングの副次効果:耳がよくなる! Apr. 17, 2024 [49.1 英語音読トレーニング]
今朝NHKラジオ「基礎英語Ⅱ」と「中高生のための英語」を聞いてみました。シャドーウイングもすんなりできるし、意味もそのまま頭の中に入ってきます。ゆっくり、そして一音一音はっきり聞こえてくるんです。「中高生のための英語」では先生の発音が一音一音明瞭でリズムが心地よいのがよくわかります。スキルが違う。
シャドーイングだけでなくリテンション(一文を一時記憶して再生する、リプロダクションということもあります)も難なくできていました。
高速音読の副次効果で一番大きいものはリスニング力のアップですよ。たとえば、180words/minの高速音読ができれば、同じスピードの台詞は聞き取れます。残る課題はは語彙力だけです。日常会話レベルの映画の台詞は聞き取れますが、企業もの、軍隊もの、法律がらみのストーリーなどは、そちらの語彙力がないと、単語は聞き取れても、意味が頭にすんなり入って来ません。
驚いたのは、映画を見ているときに、NHKラジを英会話で出てきたフレーズがどんどん増えていることです。丸ごと覚えてしまっているので、その部分は「脊髄反射」的に理解できます。(笑) 頭使わなくていいのです。考える必要なしなのです。パッとわかっちゃいます。
これらの事実から、定型表現や頻用表現を丸ごと覚えてしまえば、リスニングがずっと楽になるということが言えそうです。NHKラジオ英会話の本文はそういう文章が頻繁に出てきます。百回読めば、頭の片隅にちょこっと残ります。無理して覚えずとも、百回音読してみる、それで好いのです。
NHKラジオ講座には英語だけでもいろいろありますが、いくつもやる必要はなさそうです。自分に向いたもの、好きなものを選んで、テクスト本文を週に各々100回読めばいい。「中高生のための英語」だって好いし、「ビジネス英会話」だって好い。大事なことは同じものを百回繰り返すことです。英語のリズムと文章が身体に沁みこんでいきます。頭で理解するのではなくて、目と口と舌と耳、つまり身体の感覚器官を使って覚え込んでしまいます。
2月1日からペースアップして、月~木までの文を50回読みます。金曜日は復習回なので、それぞれを15回読んでいます。そして金曜日の問題文を2種類20回ずつ金土日の三日間読みますから、
「4日×50回+15回×4×3日+2×20回×3日=500回/週」
このペースなら、月に2000回ですから、半年で10,000回を越えます。
30回に落とし、金土日曜日はお休みしたら、
「4日×30回=120回/週、480回/月」
10,000回をクリアするのに2年かかります。この間ぐらいでチャレンジしたらいいでしょう。
50回/日はちょっとハードです。大きな声でやるとわたしの場合は喉がつぶれました。喉に異常を感じたら、声量を絞って、口パクでやります。口の動きや舌の動きは大きな声でやるときよりも大げさにやっています。映画を見ていると俳優さんの口の動きが大きい、そして出だしの子音がとっても強いのです。日本語の3~5倍くらいに感じます。NHKラジオ英会話よりももっともっと激しいのです。
さあ、中高生のみなさん、そして大学生や社会人のみなさん、「10,000回音読トレーニング」にチャレンジしてみませんか?
コストパフォーマンスはとっても悪いようですが、1年間で映画「ミセス・ダウト」のようなやさしい台詞の洋画を字幕なしでも理解できるようにはなりそうです。いまは字幕参考にしてます。しかし字幕を見てしまうと、台詞に集中できません。ジレンマです。どこかで字幕を見るのをやめる時が来るのでしょう。
<余談-1:量の目安>
NHKラジオ英会話を利用して音読トレーニングを始めてから半年がたちました。読んだテクストのワード数は、
1回平均が80ワードとすると、
80語×週4回×4週×6か月=7680ワード
高校3年生の英語教科書の1年半分程度ですので、量としては少ないです。
アガサ・クリスティの"AND THEN THERE WERE NONE"が平均して1ページ240語だから、
7680÷240=32ページ
分量としてはとっても少ないので、英語で書かれた小説の朗読CDでトレーニングして定型表現や頻用表現を増やす必要がありそうですね。英文小説を10冊くらい読んだほうがよさそうです。いまは暇だからそういうこともやれます。
19歳の時に司馬遼太郎の『竜馬がいく』6冊を5月の連休に読み耽って、これではいけないと、小説を読むのを10年間ほどやめたことがありました。もっと他に読むべき本があったからです。週刊エコノミストや岩波書店の月刊誌『思想』、現代思潮社の『現代思想』なども2年間ほど読みましたが、時間がもったいないのでそれらも大学3年の時にはやめています。
若い時にしか読みえない難易度の高い本を選んで読み漁っていました。
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#5212 映画ミセスダウトで英語音読効果のチェック Apr. 16, 2024 [49.1 英語音読トレーニング]
NHK衛星放送でロビン・ウィリアムス映画「ミセスダウト」を見ました。ホームドラマのコメディですから、会話中心でストーリーが展開します。使われている語彙は簡単なものがほとんどです。高校1年生の教科書程度ですから、音読トレーニングしていれば聞き取れます。
こういう語彙レベルの映画なら、ほとんど聞き取れるようになってます。台詞を楽しみながら映画を見てました。
両親が離婚する家庭が描かれています。お母さんはインテリアデザイナーとしてバリバリ働いています。お父さんは失業中ですから、裁判の調停で親権はお母さんへ。姉と弟と一番下が妹。
調停で週に一度だけお父さんい合えます。子どもたち三人はお父さんが大好きなのです。
二度目の調停で、お父さんに会うときはスーパーバイザーの監視付ということになります。これでは家族団らんの雰囲気はつくれませんね。それからいろいろあって、お父さんが家に訪ねてきます。お母さんが、「出かけていいのよ、もう監視はいらないの」というと一番下の子が"Just us?(わたしたちだけで?)"て訊くんです。
簡単なフレーズで、心にしみる表現が満載です。
どうやら、NHKラジオ英会話を利用して音読トレーニングを7500回繰り返せば、日常会話程度ならノーマルスピードの英語を聞き取れるようになるということのようです。
これは一つの目安です。言語の習得に個人差があるのはあたりまえですから、5000回でクリアできる人もいるでしょうし、9000回かかる人もいるに違いありません。でもNHKラジオ英会話の音読を10,000回やればほとんどの人がクリアできるのではないかといま考えています。
映画「ファーム」のような弁護士の業務が採り上げられているようなものは、ビジネスで用いられる語彙や、法律法語を少し知っていないと、単語は聞き取れても、意味として頭に入ってこないということ。さまざまなジャンルの映画を英語のままで台詞を楽しむためには、語彙力の拡張の必要がありますね。
この手の学習法は苦手なんだけれど、本棚にあるvocabulary強化関係の本をどれかやってみようかな。
<余談-1:ロビン・ウィリアムスの死について>
ロビン・ウィリアムスは天才的な俳優ですが、努力の人でもあります。自殺が報じられた時はショックでした。鬱病ではなく、レビー小体型の認知症を患っていたそうです。演技ができなくなるのが辛かったのかもしれませんね。
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これはドリルです。問題演習がびっしり載っています。三つの本では一番難易度が高い。
Random House Webster's Build Your Power Vocabulary
- 作者: Random House
- 出版社/メーカー: Random House Reference
- 発売日: 1998/07/01
- メディア: ペーパーバック
この本はラテン語やギリシア語の接頭辞、語幹、接尾辞から英語の単語をグルーピングして解説し、練習問題をつけています。
Merriam-Webster's Vocabulary Builder, Kindle Edition (English Edition)
- 作者: Merriam-Webster
- 出版社/メーカー: Merriam-Webster
- 発売日: 2010/04/22
- メディア: Kindle版
この本もラテン語やギリシア語の接頭辞、語幹、接尾辞から単語の意味の奥行を教えてくれる辞書です。