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#4135 成績の伸び方の違いはどこから?:8月入塾の生徒二人 Nov. 29, 2019 [63. チャレンジ(教育)]

 8月に中3の生徒と高1の生徒がそれぞれ入塾しました。中3の生徒は部活に熱心で、家庭学習習慣がほとんどなしでした。「20分勉強すると集中が切れる」と言ってましたが、塾にはちゃんと来ます、とってもまじめな生徒です。部活を「卒業」したので、通塾時間の制約はありません、成績をあげないと根室高校普通科には入れないと心配してました。高校1年生のほうは特設コースのAクラスですが、数学の点数が低くて、このままでは2年時ではAクラスから脱落するので慌ててきました。中3までは他の塾へ通っていたそうです。

 ニムオロ塾では、やる気のある生徒には最初の3か月間、毎日来ることを許可しています。来るか来ないかは生徒の選択です、強制しません、自然法爾(じねんほうに)ということかもしれませんね。親がいくら勉強しろと言ったって、わたしが社会人になったときに困るからと経験を交えて語ったとしても、勉強しない者はしないし、する気のある者は言われなくたってします。勉強は自発的にやるもので、塾は勉強の仕方を教え、そして背中を押すだけというのがわたしの考え方。勉強するチャンスはあげられます、この二人にも「やる気があるなら毎日来ていいよと」認めました。自然法爾がどう働くのか楽しみでした。8~11月まで中3の生徒が42日/26日、週2回が通常の授業日数ですから、累計で26回の標準授業日数のところを42回出席していることになります。全部来たら52回ですから、ときどき休んで息抜き、それでいいから、なにもいいません。自分で調整すればいいことです。高1の生徒は43/25でした。よく頑張っています。11月になってからはどちらも11回ですから、週3回にペース・ダウンしてます。二人とも同級生の塾生の紹介で来た生徒です。3年前から折り込み広告による宣伝はやめてます。


 塾へ来て、一生懸命に勉強はしていますが、中3の生徒はなかなか成績が上がってきません、個別指導なのに質問も少ない。この1か月ほどで、わたしのほうは生徒を観察してきて、どのあたりに問題があるのかわかってきました。どのあたりからわからないのか、教えるわたしのほうもつかまなければならない。信頼関係がまだ小さいうちは、踏み込めません。相性の特別に良い生徒は初対面からどんどん攻めて行けるし、生徒も質問をガンガン投げてきますが、そういうのは例外に属します。おたがいに距離の取り方を探っています。とっても人見知りの生徒がたまにいます。ノートをのぞき込んだら「いや、見ないで」とノートを閉じて叱られたことが一度ありました。その生徒は慣れるのに半年かかりました、一番手ごわい相手でしたね。わたしは生徒の書いた計算式や計算過程、英文をときどき見る必要があるのです。「ミコト」という名前の生徒でした、懐かしい。お陰様で、その後に数人「人見知り」の強い生徒と出遭っていますが、察知できるようになり、距離の置き方と時間をかけて距離を詰めることがスムーズになりました。「ミコト」さんに感謝です。(笑)
 この中3の生徒は3か月必要だったということ、人間相手だから相手次第で時間のかかりかたが違うのです。とっても真面目だということがわかりました。部活で基本トレーニングをちゃんと積んだ人です。だから、勉強のほうにもそれを使えたらいいだけ。いまはまだどのように使えばいいかがわかっていない。

 一昨日は2018年度の入試過去問からこんな質問が出てます。
 「折り目の線ってなんですか?」
 「どういう問題ですか?」
 質問の意図を確認するために問題を見ました。
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問2:右の図の四角形ABCDにおいて、辺ABとBCとが重なるように折ってときにできる折り目の線と辺ADとの交点をPとします。点Pと定規とコンパスを使って作図しなさい。
 ただし、点を示す記号Pをかき入れ、作図に用いた線は消さないこと。
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 20㎝ほどの紙切れに、問題に載っている不等辺四角形と同じような四角形を書いて折って見せました。それを開いて、「この線が折り目の線です」、そういう説明をしました。
 「わかった」
 笑顔がありました。
 しばらくしてからもう一つ質問がありました。
 「素数って何ですか?」
 「1と自分自身以外に約数のない数、つまり割る数のない数です、ただし1は素数ではありません」
 定義を述べただけでは理解できませんから、1~50までの素数を黒板に書いていきます。3以降は奇数だけですから、奇数を書き並べて、その中から素数でない数に斜線を引いていきます。
 「では、この紙に50-100までの自然数の内で素数だけを書いてください」
 5分くらいすると書き終わってます。51、81、87、あともうひとつなにか数字を書き間違えてました。「わかったこと」と「できること」は違います。間違えた数字4つのうち、3つは3の倍数でした。九九がスムーズでない可能性があります。「逆九九」を教えない小学校の先生が増えてます。「掛け算九九」トレーニング不足のまま中学生になると、問題が次第に大きくなります。「逆九九」をトレーニングしなかった生徒は大半が割り算が苦手になっています。商を建てるのに倍以上の時間がかかるのです。割り算の混じった計算問題も苦手になってしまいます。基礎部分になればなるほど、徹底した反復トレーニングが必要です。小学2年生でしたね、九九を習うのは。ところで、81は九九にあります。51と87は九九にはありませんが、割り算を暗算でしなかったということ。3で割ってみようという勘が働いていません。珠算塾に通ったことのある生徒は、これらの二桁の数字をみただけで3の倍数だと気がつきます。2の倍数は偶数ですから奇数ではない、3の倍数も素数ではありませんから、指示なしに自分で奇数を3で割って3の倍数を全部消せる生徒は、短期間で成績が急伸します。この生徒には基礎部分から時間を掛けなければいけないということが、ここからもわかります。対話しながらあるいはたまにはノートをのぞき込んで観察していると、いろんなサインの出ていることに気がつきます。そのあたりは個別指導のとっても面白いところで、わたしも教えながら、生徒からそういう情報を受け取り、学んでいます、そして教え方を工夫する。生徒と遊んでいるんです。(笑)遊びは場を和やかにしますから、この生徒は笑うことが多い。授業中にやり取りするたびによく笑ってます。
 一つ一つ、ときに中1の既習項目についても質問があるところは丁寧に教えていけばいいだけです。手間はとってもかかりますが、手数を惜しんではいけません。こうやって、やり取りしているうちに、生徒のほうはどういう風に質問を投げたらいいのか、わたしのほうはどのあたりから説明したらいいのか、「学んでいく」ことになります。理解が進むにつれて、説明範囲は小さくなります。考える余地を残さなければいけないからです。
 トップクラスの生徒への説明はまったく様子が違います。予習中心ですから、学年制限なし、中学生に高校で習うことや、大学で習うことを教えたってかまわない、好奇心をくすぐる解説をしています。

 この生徒は中3になってから、6回のテストで国語が学年平均点を超えたのは2回だけですから、日本語語彙と読解力に問題があります。斉藤孝『読書力』で毎週木曜日4時10分くらいから40分間ほど音読トレーニングしてます。先週実施された定期テストでは、前回定期テストに比べて五科目合計点で40点ほどアップしてますが、平均点も26点ほど上がっているようなので、学年順位に大きな違いはないでしょう。
 計算は基礎から、そして語彙力を増やさないと数学の文章の読解にも支障をきたしているので、一朝一夕には成績が上がりません。高校1年生になったら、半年間は部活をしないで毎日まっすぐに塾へ来る約束をしてます。それくらい手間がかかります。中学3年間部活に熱心で勉強をおろそかにしているとこういうことになります。先生たちは文武両道を口を酸っぱくして生徒に言い続けてもらいたい。生徒一人一人の人生がかかっています。
 この3か月で(42-26)×1.5時間=24時間個別補習授業をしています、それくらい手間をかけます。成績がおおよそ学年下位1/3の層は独力では勉強できません。周りにいる友達や大人が教えてやればなんとかなります。困っている人がいたら、助けたいというのは自然なこころです。助けようと、助けまいと、どちらも人の心のあるがままです。わたしは、己のやりうる小さな範囲でやれることをやるだけ。

 高1の生徒は「勉強しているんだけど成績が上がらない」と焦ってました。この生徒は最初から相性がいいことがピンときました。ノリがいいのです。話を聞いたら毎日12時ころまで勉強しているのですが、成績が落ち始めてどこまで落ちていくのかわからないと不安がってました。でも、最初から質問が多かった。教科書準拠の問題集や学校で毎週宿題に出されるプリントの問題はほとんどが「わかりません!」でした、何をどのように質問をしたらいいのかなんて遠慮が初めからないのです。わからないと思ったら、あきらめて片っ端から質問します。こちらも説明にてんてこ舞い(笑)、でも食らいついてきました。この2週間ほど、目だって質問が減り、夢中で問題解いていることが増えました。わかってきたから独力でやれる問題が増えた様子。
 成績の推移は次のようになっています。
●7月の進研模試:国数英56位 数学46位
●10月のスタディ・サポート:国数英33位、数学32位
●10月下旬進研模試:国数英13位、数学5位
 普通科学年総数119名中の順位です。
 「46位⇒32位⇒13位」と学年順位は目覚ましくアップしていますが、しばらくアップダウンが続き、それから10番以内に入ることになるでしょう。いまの13位をキープするには数学が不調だった時に英語でカバーできなかればできないことです。国語はにわかには上がりません。それまでの読書量がものをいいますから。国語はとっても時間がかかります。
 短期間で数学がめざましくあっぷしたので教えているほうがびっくりです、数学は64点だったそうです。偏差値が60超えちゃいました。全国偏差値65だと全国レベルで上位7%です。よくやったと褒めました。

 たとえば、授業中にこんな対話してます。
 生徒:「これわかんない、むり」
 先生:「それいはけませんよ、こころが自分のつぶやきを聞いて学習しています、「わかりそうとか、あとちょっと、なんとかなりそう、ここが我慢のしどころ、ねばるぞ」とどれでもいいからつぶやいてください、こころが聞いて自動的にそういう方向へもっていってくれます」
 生徒:「ふーん」(半信半疑の様子)
 先生:「5分考えて、わからないときは質問投げたらいい、いつもわかるようになってるでしょ(笑)」

 このごろ勉強しているのが楽しいのだと思います。成果が出たし、少し自信も戻ってきたようで、モノも言わずに夢中でやってることが多くなりました。独力で問題が解けるというのは愉しいことなのです。この段階になったら、学校や家で勉強してきて、わからないところだけ塾で質問したらいい。11月は週3回に回数が減っていますが、自然なことです。
 国語がとっても苦手ですから、1月から日本語テクストを使った音読指導をします。次は英語の学力を数学と同じレベルに上げるのが目標です。週1くらいの頻度で、早い時間に来れたときだけ、教科書を使って英語の音読主体の授業を40分くらいやるつもりです。他の1年生にも来てほしいのですが、本気でやる気が起きていなければ生徒には有難迷惑になるだけですから勧めません。(苦笑) いま英文法問題集を1冊やらせているので、それが冬休みに終わります。終わったら、印のついている問題だけ2回やってもらいます。半年続けたら、英語の成績が劇的に変わります。
 自力で勉強できるところまでもっていったら、あとは本人の努力でいい。

 根室の中高生で、勉強で躓いている人はすくなくありません。でも、これくらい手間をかけてあげたら3人のうち2人は何とかなります。そして5人に一人は例にあげた高校生のように成績が急伸します。
 学校で放課後個別補習でこんなに時間と手間をかけるのはなかなかできません。一度こじれたら、たいへんなんです。4か月たんたんと24時間の補習授業があってのことですから、中学校でやっているように、年に合計して2週間くらいの放課後補習ではほとんど救い出すことができません、文武両道をくどいくらい生徒に言い聞かせて、学習障害を起こさせないような配慮をお願いしたい。「文武両道、大切にしよう」と一声かけてくれるだけでいい。
 部活動の前に数学の問題集(2年生と3年生用の自作プリント、2年生は1次関数と連立方程式の文章題、3年生は2次関数と計算問題だったかな)をやらせる先生が現れたようです。やってくれるな、ありがとうございます。

 成績が急伸する生徒の特長を書いておきますね。
①いまのままだと成績がやばいと焦り始めた
②3か月間惜しみない努力ができる⇒塾へちゃんと来て、家でも勉強する
③わからないところを見つけて質問する


 以上の3項目だけです。学習意欲は③に現れます。親に言われたから仕方なく塾に来るとか、友達が行ってるから自分も行くというようなケースは成績が上がりません。強い学習意志がないからです。①に気がついた生徒はもうレールに載っています。後はきっかけがあればいいだけ、独力で勉強できないほど基礎的部分に穴が開いていたら、学校の放課後補習に参加するとか放課後先生に質問する、あるいは友人や知人に聞いて自分がいいと思う塾を選んで、お母さんやお父さんの相談してOKがもらえたら門をたたくと好い。通わせてくれる親には感謝の心をもってください。心の底から「ありがとうございます」とつぶやいてみます。心の中で何かが動きます。

 もし、中学生になっても家庭学習習慣がなかったら、一種の「学習障害」と言っていいと思います「治療」に半年から1年かかります。放っておいて治るものではありません、9年間家庭学習習慣がないというのは、それぐらいたいへんなことになっていることを知ってください日本語・語彙不足を補い、日本語の文章の音読・読解トレーニングからやらなければなりません
 根室の中学生の4割は、独力で教科書を読んで予習できないレベルの日本語読解力です。実際に予習している中学生は1割以下でしょう。復習主体の生徒がほとんどです。だから、高校へ行ってさらに躓きます。予習もしないで授業を受けているのですからね、標準的な難易度の問題を授業でやったら生徒の7割が理解できませんよ。だから基本問題だけの授業が増えています。数学の一番下のアルファ・クラスがまさしくそうなっています。ベータ・クラスもβ2のほうは標準的な難易度の問題はパスしてます。数学担当の先生たちはそうせざるを得ないのでしょう
 中学校の定期テストの難易度がどうなっているのか、学力テストの平均点と定期テストの平均点を比べることでチェックして、別稿でご覧にいれます。甘すぎです、定期テストの難易度の低さにあぜんとするでしょう。これでは高校で標準的な難易度の定期テストをやったら、普通科の生徒の半数以上が赤点になります。

 小学校低学年で毎週9時間国語授業に配当がなされていますが、このうちの2時間を音読トレーニングに充ててくれたら、状況は劇的に改善できます。全国学力テストの平均正答率が全国平均を超えるでしょう。校長先生の裁量でできませんか?


*#4130 根室市の子どもたちの学力アップの具体的な方法:「学力向上特区申請」 Nov. 23, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-22





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