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#4136 Sapiens : page 11 Nov. 30, 2019 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

 そろそろペースを上げてもいいころかなと、頭から読み下していくトレーニングをまぜてみたら、金曜日の授業ではノルマを達成できた。1回の授業で1頁、このペースで大丈夫だ。意味の塊を意識して対話形式の授業を半分くらいやってみた。他の生徒もいるので、かかりっきりにはなれぬから、ところどころという具合だ。
 <11.1>は頁と段落番号を表す、同じ段落で二つ目が出てきたら、枝番-1を追加する。前頁から持ち越している段落は<11.0>というように段落番号に0をつける。

<11.1> It takes a tribe to raise a human.  Evolution thus favoured those capable of forming strong social ties. In addition, since humans are born underdeveloped, they can be educated and socialized to a far greater extent than any other animal.  Most mammals emerge from the womb like glazed earthenware emerging from a kiln -- any attempt at remoulding will only scratch or break them. Humans emerge from the womb like molten glass from a furnace. They can be spun, streched and shaped with surpraising dgree of freedom. This is why today we can educate our children to become Christian or Buddhist, capitalist or sodialist, warlike or peace-loving.

(1) It takes a tribe to raise a human.
  <to raise a human> takes a tribe. (子育ては部族を必要とする)
 母親は子どもを産んだ後、餌をとりに行けない。子どもを放って餌をとりに行くと、子どもは捕食者の餌食になる。だから、周りにいる者たちの助けが必要なのだ。この文章では「takes」の訳が問題になった。「とる」では意味をなさぬ。takeの原義は「手を触れること」にある。ジーニアス4版の当該項目には「Ⅳ 必要とする」がある。「時間がかかる」ではよくお目にかかるがあれと同じこと。
● It takes 3 minutes from here to the Seikomart.
 時間がかかる=時間を必要とする

(2) Evolution thus favoured those capable of forming strong social ties.

  favouredの訳がちょっとやっかい、日本語にしづらい
。断りがない限り辞書はジーニアス4版を使う。「に賛成する、好意を示す」では文意に合わぬ。「④ <天候・状況などが>…に好都合(有利)に働く、促進する」がピッタリだ。簡単な単語ほど、辞書をよく読むべし。
「進化はこのように強い社会的絆を形成する能力に有利にはたらいた」

(3) In addition, since humans are born underdeveloped, they can be educated and socialized to a far greater extent than any other animal. 

 sinceは現在完了形で使われる場合が教科書にたくさん載るが、高校教科書では、理由を表す接続詞で数回ぐらいしか出てこない。「~以来」ではなく、「~だから」と訳そう。underdevelopedは「開発途上国」などでおなじみだ。ここでは「まだ未熟、未発達」という意味だ。他人として発展途上でもある。「未熟なままでうまれる」と言ったら、生徒は未発達のほうが訳語としていいという。たしかに「未熟な」は「未熟児」を連想させるから、「未発達なままで生まれる」でもよい。
 ”to a far greater extent”は修飾語を外すと簡単になる。”to an extent”「ある程度」である、それに程度の副詞句の"far greater"がついているから、「はるかにおおきく」という意味。
「そのうえ、人間は未発達なままで生まれてくるので、他の動物よりもずっと教育できるし、社会的生活に適応させうる」

(4) Most mammals emerge from the womb like glazed earthenware emerging from a kiln -- any attempt at remoulding will only scratch or break them. Humans emerge from the womb like molten glass from a furnace.


 このあたりから面白くなってきます。意味の塊ごとにスラッシュを入れてみます。
Most mammals emerge from the womb/ like glazed earthenware emerging from kiln /-- any attempt at remoulding will only scratch or break them. Humans emerge from the womb/ like molten glass from a furnace.

 スラッシュをあまり入れすぎると、こんどはそれを統合して意味の整合性を産み出すのに四苦八苦なんてことになるので、慣れるにしたがってなるべく大きくしましょう。頭から読み下します。
①哺乳類のほとんどが子宮から出てきます
②釉薬(うわぐすり)をかけた陶器が窯から出てくるように
③作り直そうとしたら、ひっかき傷がつくだけか、壊してしまうことになる
④人間は子宮から出てきます
⑤溶解炉から出てくる溶けたガラスのように

 onlyがどこまでかかるのかが議論になりました。生徒の意見はscratchとbreakの両方にかかっているというもの。
any attempt at remoulding will only scratch them.
any attempt at remoulding will only break them.
any attempt at remoulding will break them.

 themは"most mammals"を受けていますが、なるほど②と③両方の読みが可能ですね。さて、ハラリはどう考えたのでしょう?「作り直そうとしたらひっかき傷をつけるだけ、あるいは、力を入れすぎて壊してしまう」なのか、「作り直そうとしたらひっかき傷をつけるだけ、あるいは、力を加えすぎて壊してしまうだけ」。どちらを英訳しても同じ英文になりますね。同じ語なら、後続する方は省略するのが作文の作法ですから。
 生徒とするこういう対話が愉快なんです。

 emergeは水の中からあるいは暗闇の中から現れるというのが基本イメージです。子宮の羊水の中に浮かんでいる胎児が出てくるというイメージにemergeはピッタリの動詞です。陶器を焼く窯はkiln、ガラスの溶解炉はfurnaceです。せっかくハラリが語彙を使い分けているので、訳文も気を使いましょう。(笑)
 スラッシュを入れて、頭から読み下していくと楽でしょ?読む速度が3倍くらいにアップします。慣れてくるとスラッシュを入れなくても、意味の塊が瞬時にわかるようになります。音読トレーニングを、こうした意味の塊に意識を置いてやると、意味を伴った英語として聞こえてきます。リエゾンやどういう部分で音が消失するのかなどもよくわかるようになります。

(5) They can be spun, streched and shaped with surpraising dgree of freedom.

 spunはspinの過去分詞、そしてstreched、shapedと続きます。ハラリは頭の中にガラス職人の仕事場を思い浮かべています
。それがわかれば和訳は簡単です。人間はガラスのように溶融炉から出てくるのですから、そのあと見事な形にするために、棒の先についたガラスの塊が垂れてしまわないようにクルクルと棒を回しspinながら、引っ張りstrech、成型shapeするのです。どんな形にも自在になります。
「人間は溶融炉から出されたばかりの溶けたガラスのように、クルクルと回されながら延ばされ、驚くほど自在に成型されます。他の動物たちとは違って、ヒトは溶融炉(子宮)から出た後でどのような人間にもその後の教育次第でなれるんです。」

 まだ、いくつか楽しいところがありますので、暇を見つけてアップしたいですね。授業ではこのようにして11ページの半分と、12ページが全部消化できました。次の授業は13頁からです。
 12月の授業は3週できる予定です、年内は18頁までやるつもりです。

 翻訳者の柴田さんの訳文を転載します。プロの技をご覧ください。
人間が子どもを育てるには、仲間が力を合わせなければならないのだ。したがって、進化は強い絆を結べるものを優遇した。そのうえ、人間は未熟な状態で生まれてくるので、他のどんな動物にも望めないほど、教育し、社会生活に順応させることができる。ほとんどの哺乳類は、釉薬をかけた陶器が窯から出てくるように子宮から出てくるので、作り直そうとすれば傷ついたり、壊れたりしてしまう。ところが人間は、溶融したガラスが炉から出てくるように子宮から出てくるので、驚く程自由にに曲げたり延ばしたりして成型できる。だから今日、わたしたちは子どもをキリスト教徒にも仏教徒にもできるし、資本主義者にも社会主義者にもしたてられるし、戦争を好むようにも平和を愛するようにも育てられる。」p.22


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