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#4123 根室の中3の数学・学力の現状とその波紋 Nov. 14, 2019 [71.データに基づく教育論議]

<最終更新情報>
11/16朝9時 

 #4122「学力テスト総合B学校別比較データ:釧路管内8校と根室管内6校」で根室の中3の学力がどの程度か触れた。北海道14支庁管内で根室管内が最低で、さらにその根室管内で根室市の中学校が最底辺に位置していることがわかった。釧路根室管内では別海中央中を除く根室管内の中学校が最底辺を構成しているから、中標津町・羅臼町・標津町・根室市は共通の問題を抱えていそうである。別海町を含めた1市4町の首長は根室管内で「学力アップ合同チーム」をスタートさせるべきだと書いた。教育が劣化すれば、根室管内はそれぞれが急激に衰退の道をたどることは火を見るよりも明らかだろう。
 根室の2中学校の学力テスト総合Bの数学の得点分布データの下のほうを紹介する。

        <階層別数学得点分布表>
  10点以下 15点以下 U10% U15% 人数
柏陵 33 41 50.8% 63.1% 65
啓雲 19 26 45.2% 61.9% 42
合計 52 67 48.6% 62.6% 107
根室 104 133 48.6% 62.6% 213



 根室市の中3の人数データは次のサイトから平成30年度の中2の人数が令和元年の中3の人数に該当するので、そこから拾った。
*http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/ksk/chosa/gakkou-i/2018gakkou-i.htm

 背景色が青の部分は、2校の得点階層別割合のほうから、根室市内全体の得点分布人数を逆算した。

 北海道教育委員会のほうのデータでは柏陵は73人、啓雲は51人となっているから、学力テスト総合Bの数学の未受験者が柏陵8人、啓雲9人いたことになる。2人くらいなら転校ということも考えられるが、これは未受験、あるいは不登校と考えたほうがいいのだろう。特別学級の生徒が受験していないのかもしれない。不登校と特別学級の人数がそんなに多いのか?
 「U10%」というのは「10点以下の得点層」を百分率で表示している。「U15%」も同様である。

 2校合計で52人(48.6%)が10点以下、67人(62.6%)が15点以下である。生徒の3人に2人が百点満点換算値で25点以下というのが根室の中学生の現状の学力である。
 学力テストは「標準問題」であり、実際に根室高校が実施しているのは「学校裁量問題」で難易度が少し高い。その学校裁量問題ですら東京都立高校の問題と比べると難易度は低い。

 さて、15点以下の生徒は裁量問題入試で何点獲れるだろう?
 
今年3月の入試問題を例にとると、「大問1」の「問1」が簡単な因数分解問題、「問2」は作図問題、それ以降は文章題であるから、得点可能なのは「大問1」の「問1」、配点は3点である。標準問題は計算問題と作図問題であり、21点配点されている。学力テストは標準問題であり、15点以下の生徒はほとんどが「大問1」で得点しており、「大問2」以降の文章題は手を付けていない。
 学校裁量問題には標準問題の「大問1」がないから、そのまま入試を迎えたら、133人が3点以下になるということ。それぞれの大問の「問1」は簡単な問題だから、そこを集中的にやれば10点くらいは133人のうちの3人に1人はとれるようになると仮定しよう。すると、入試本番で裁量問題で3点以下は89人ということになる。根室高校以外への進学者数を20人、商業科と事務情報科に45人とする、そのうちの10人くらいは数学ができるから、普通科受験者120のうちの54人(45%)が学校裁量問題数学で3点以下ということ。この学力層には数Ⅱ履修は無理だと言わざるを得ない数ⅠAですら標準的な難易度の教科書で教えることはとても無理こういう学力レベルの生徒が、数学が苦手のまま3年間放置され続けているのである
 数学が得意だと言える45点以上は2校で1人、50点以上はゼロである。30点以上は11人(6+5)のみ、10.2%しかいない。「成績上位層の枯渇化現象」とはこういうことを言う。

 根室高校は昨年度から数Ⅱを選択科目にした。今年は選択者を昨年より絞り込んでいる様子。つい一月前に生徒と面談して学力の低い生徒に数Ⅱを選択しないように先生たちが強く勧めた背景にはこういう中学生の学力低下がある
 1年生の数学は学力別に5段階編成である。最上位がガンマクラス
 ●「ガンマ1
 ●「ガンマ2
特設コースのクラス、A組の35人が該当している。その下に、
 ●「ベータ1
 ●「ベータ2
 ●「アルファ1
 ●「アルファ2
という6クラスの学力別クラス編成になっている。

 アルファ・クラスは学力から判断して数Ⅱの履修は無理と判断しているのだろう。悲しいことだがわたしもそう思う。週に3時間放課後補習すれば救えるだろうが、部活とバッティングするから、実施がむずかしい。部活していない生徒だけでも救ってやれないものか。教えるのに手間はかかるし、根気がいる、たいへんな仕事になる。アルファクラスには、あきらめきって勉強する気のない生徒が3割くらい含まれているだろう。現状は「ベーシック数学」を選択させて、切り捨てゴメン。数Ⅱをやらないことで以前の根室西高校よりも学習内容が貧弱になる。基礎部分だけでも数Ⅱをやったほうがいい。
 数Bが選択科目に戻ってしまっているが、2クラスのうち下のほうのクラスでは数列の章の数学的帰納法を端折ってしまった。現代数学の証明法として、高校数学の証明問題では最重要であるはずなのに、端折る、どういうつもりだろう?
 高校統廃合が学力データを無視して普通科選択制にしたので、試行錯誤が3年間続いた。そして現実的でかつ不可解なところへ落ち着こうとしている。「普通科科目選択制」この方式での統廃合は以前の2校体制に比べて、生徒の学力の劣化を加速している
 
 根室高校普通科で数Ⅱが選択科目になったことはない。高校普通科卒業して数Ⅱを学んでいないなんて、採用する企業側から見たら詐欺同然である。根室高校普通科は根室ではブランドだったが、そうではなくなったということ。15年前の根室高校普通科の学力の生徒は普通科120人中30人ほどしかいない。そう、特設コースの35人の中にもこぼれる学力の者がいるということ。15年前の根室高校普通科卒の学力と同等の生徒を採用したい企業は特設コースに在籍した生徒から選ぶということになるだろう。

 数学の学力低下と語彙力の低下の同時進行は、一部の生徒に脳の発達障害を引き起こしつつあるのではないか?
 
小学校低学年で国語が週に9時間配当されているのに、音読授業を一切していないから、語彙力が増えないだけでなく、本をスラスラ読めない児童書(乳歯レベル)から、大人の本(永久歯レベル)への橋渡しが家庭でも学校教育でもなされていないことと、新聞や本のほとんどにルビがついていないことが、子どもたちを本から遠ざける原因になっています。そしてスマホやゲームへの熱中で本を読まなくなっているから、ますます本を読みこなすスキルが育たない。中学生になって授業で「形容詞は名詞をしゅうしょくする」と国語や英語の先生が授業中に説明したとしよう。生徒の何割かは「就職」の字を思い浮かべて意味がさっぱり分からないということになる。「修飾」という漢字が脳内に即座に思い浮かばなければ意味がつかめない。その前後の説明も文脈上意味不明となる。語彙力が乏しいと中学校の授業も高校の授業も理解できない。

 語彙力が貧弱なことによる読解力の著しい低下と数学の文章題の読解ができないことはどこかでつながっている。「読み・書き・そろばん」の読みの段階に瑕(キズ)があれば、「書き」もアウトだ。
 語彙力は3歳くらいで爆発的に伸びた後、小学生低学年でも高学年でもトレーニングの場さえ与えてやればいくらでも豊かになる。ここいら辺りで決定的な語彙力格差がついてしまう。豊かな語彙をもって中学生になった生徒は、放っておいても文章読解スキルが高いので、興味をもった分野の本はすらすら読めるし、数学の文章題だって容易にその意味するところが読み取れる
 小中でそういう機会のなかった生徒は、語彙が増える旬の時期を逃すことになり、脳は言葉で考えるから、脳の健全な発達が阻害されることになる。
 小中高で語彙力を増やさなかった生徒たちは、社会人になって本をたくさん読むようになるなんてことは、奇跡に近い。仕事に必要な専門書も、資格取得に必要な専門書も読んでも意味が分からぬということになる
 語彙は旬の時期に増やすのがいい語彙力の豊かな者はその豊かな袋から言葉を取り出して、より深く考えることができる

 小学生低学年でルビ付きのテクストの音読トレーニングをすべきだ。江戸時代の寺子屋では論語の素読を5歳から始めた。先生が一文ずつ読むと生徒が真似て続けて一斉に読む。ルビが振ってある斉藤孝の音読破シリーズ6冊がテクストとしていい。ぜひ、小学校で採り上げて、国語の時間に音読トレーニングしてもらいたい。
 市教委はこのシリーズ6冊を、根室市内の小学生の子どもたちへ配布してもらいたい。中学生へも配布してもれえたら、なおありがたい。

 ニムオロ塾では希望者にだけ週1回音読トレーニングをしている。

*#4122 学力テスト総合B学校別比較データ:釧路管内8校と根室管内6校
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-13

<どんなにひどいかこのグラフを見てください>
 小学校6年生と中学3年生を比べてみてください。中学3年間でひどく学力が落ちるのが根室管内の特徴です。
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