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#4128 釧路と根室管内の子どもたちの学力はなぜ低いのか? Nov. 20, 2019 [71.データに基づく教育論議]

 全国学力テストのデータを見ると、根室管内は小学6年生は国語11番、算数最下位の14番中学3年生は14支庁管内で飛び離れて最下位に位置している。
 釧路管内は小学校国語で3番目、算数では5番目なのに、中3国語で13番、数学で12番と著しく「落下」している。十勝管内と比べると、小学校では釧路のほうがダントツに好いのだが、中学3年生は十勝を仰ぎ見ることになる。この表は、道教委作成のものに釧路の友人のM木さんが赤丸をつけてくれたものだ。十勝管内と釧路管内の子どもたちが、小学6年では釧路のほうがいいのに、中3になると逆転してしまう、その有様がグラフだとこんなにはっきりわかる。数字だけ見ているのとは印象がまるで違う。
写真の説明はありません。
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 フィンランドは人口550万人、義務教育と後期中等教育に携わる教員の数は66000人である。人口は北海道と同じだ。北海道の小中学校の教員数を検索してみたが、データがなかった。数を比較してみたかった。それにしても北海道と福井県だけが教員数のデータがないのはなぜ?僻地校が多いから全国平均よりはずっと教員数が多いに違いない。根室市内で30人学級のところはいくつあるだろう、ほとんどが30人以下である。
 道教委のデータは次のようになっている。表にまとめてみた。
*http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/ksk/chosa/gakkou-i/2018gakkou-i.htm

  教員数 生徒数 生/教
小学校 19,014 241,748 12.7
中学校 11,304 122,758 10.9
高校全日制 6,983 83,930 12.0
高校定時制 433 2,377 5.5
合計 37,734 450,813 11.9

 都道府県別小学校の教員一人当たり生徒数は北海道が39位。
*https://ecitizen.jp/Ssds/Indicators/_E0510301
 北海道の教員一人当たり生徒数は47都道府県中41番目である。
*https://retu27.com/prefecture_ranking.html?fid=152#i-2

 根室市の小学生は8校生徒数1051人、校長と教諭合計で105人ですから、教諭一人当たり小学生徒数は10.0人。中学校は7校615人、校長と教諭で合計86人ですから、教諭一人当たり中学生徒数は7.2人。どちらも全国平均よりも25%程度少ない。学級数は小学校72、中学校41ですから、小学校のクラス当たり平均生徒数は14.6人、中学生は15.0人です。世の中30人学級にしろだなんて騒いでいますが、根室はその半分です。小中学校を統廃合したら、教員人数は7割で十分です。つまり、余剰分を学力強化に回せるということ。北海道教育庁と話し合う材料にできると思います。
*北海道教育庁根室教育局のホームページより
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/nky/R1_nemuro-kyoikuz.pdf

 私立を含めて40,000人だとすると、おおよそフィンランドの6割の体制である。フィンランドは学卒ではなくて、大学院修士課程卒をこれだけ養成しているのだから、国が教育に力を入れているのがどれほどか理解できる。日本は学校の授業へのコンピュータの導入もとっくに後進国になってしまった。たとえばタブレット端末を授業で毎日使っている学校は道内にはほとんどないのではないか。機器や通信設備のメンテナンスができて、プログラミングのできる専任教員の配置が必要だが、そういう体制を作ると今から取り組んでも人材の育成に20年以上かかるだろう。

 フィンランドの後期中等教育とは高等学校と職業学校を指すもののようだ。高校から大学へは直接いけない。高校⇒職業学校⇒大学あるいはポリテクニク(高等職業専門学校)というコースになっている。
 教員の資格は教育関係の修士号取得者となっているから、教員の質は高いようだ。フィンランドはPISAでは数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーで最上位を占めていたことがあるが、近年は三つとも最上位から脱落している。フィンランドで低学力層が増えているのはなぜだろう。教員の質が高いだけではダメかな、なにか他にも要素がありそうだ。
*フィンランド教員数・資格要件
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/023/siryo/attach/1378640.htm
**https://ja.wikipedia.org/wiki/OECD生徒の学習到達度調査
***https://www.huffingtonpost.jp/satoshi-endo/japan-pisa_b_14095374.html

 地域の未来を担う子どもたちが高い学力を身に着けるには、高い学力の教員が必要だという命題が真だとしよう。
  教員の学力が高い(P)⇒ 生徒の学力が高い(Q)
  (教員の学力が高ければ、生徒の学力は高い)

 高校1年の数学「命題と論証」で、Pは仮定Qは結論PならばQは命題だと習う。この命題がだとしよう。この命題の対偶は「nonQ⇒ nonP」である。命題「P⇒Q」が真なら、その対偶ということになる。
  生徒の学力が低い(nonQ) ⇒ 教員の学力が低い(nonP)
  
(生徒の学力が低ければ、教員の学力は低い)

 全国学力テストで、北海道は全国平均以下の地域である。その北海道14支庁管内で根室の中3は国語も数学も最下位、英語は13位だが最下位の宗谷管内とほとんど一緒、正答率46.8(宗谷管内)と46.9(根室管内)だ。
 ふだんの学力テストの結果から、根室管内で根室市内が中標津町や別海町よりも低いことがわかる。
*#4099 学力テスト総合A18校科目別データ Oct. 11, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-10-11


 根室の中学校の先生たちは北海道教育大釧路分校出身者の比率が高い。地元だから当然だろう。札幌出身者で釧路管内や根室管内の僻地校で勤務したいなんて学生がいたらめずらしい。だから、政令指定都市の学校採用試験に受からない人たちが、集まることになる。中にはそうではない人もいるがごく少数だろう。郡部校に勤務してトイレが水洗でないことに驚いたという話を、二人の人から聞いたことがある。根室高校だって水洗になってどれほどたつのか。FM根室で対談した根高の進路指導室の先生が赴任した当時水洗でなくて困ったと言っていた。奥さんが都会生まれで水洗トイレしか使ったことがなければ、ぽっちゃんトイレと聞いただけで亭主の赴任に反対するだろう。教員を確保するためにはこういうことにも気を使わないといけない時代なのである。ただ来てほしいでは人材を確保できない。都会よりも快適な住宅を用意して当たり前なのだ。都会よりも快適な生活がおくれることがはっきりしていたら、採用試験への応募は増え、採用された教員のレベルも上がる。
 過去には縁故採用も多かったと聞く。なにもしなければ僻地には他では合格できない学力レベルの人たちが多く集まる。受け入れる側にも努力が必要なのである。

 教員の出身校別のデータは釧路管内と根室管内の自治体の教育委員会がもっていると思う、わたしには具体的な数字がどうなっているのかわからぬ。
 北海道教育大は全国の都道府県の教育大で最下位グループ。その北海道教育大には札幌分校、旭川分校、函館分校、岩見沢分校、釧路分校がある。函館と岩見沢はすでに教員養成をしていないらしい。教員は「計画養成」するような仕組みになっているから、函館と岩見沢はもうその必要がないということだろうか。
 入試偏差値の序列は、
  釧路分校<旭川分校<札幌分校
 中学校の数学と英語の管内別正答率を見たら、この通りの序列になっている、怖いね
  釧路管内<上川管内<石狩管内
 旭川は旭川医大があることが大きい。31年度の進路実績を見ると、現役生で16人、過年度卒で5人合格している。看護学部は現役9人だ。地元にあるからこそ、これだけの人数が進学できる。中学生の学力の底上げに貢献しているだろう。

 釧路分校出身者でも優秀な先生はいる。中学理科の先生でお一人優秀な先生を知っている。どの大学も上位3%は優秀な学生がいるだが、平均的な学力レベルは入試偏差値に現れているのではないだろうか

 全国学力テストの結果は根室管内の中3の正答率が北海道14支庁管内で最下位であることを示している。グラフで見たように、極端に離れている。
 どうやら、対偶は真であるようだ。つまり、全国学力テストで根室管内の子どもたちの平均正答率が低いということは、先生たちの学力が低いということだ。授業力と年間授業計画を計画通りに運ぶマネジメント能力を一度点検すべきだろう。

 下位グループを見ると根室、宗谷、オホーツク、日高管内で構成されている。これら管内に共通するのは教育への関心が低いこと、オホーツク管内を除いて大学がないこと。中3をみると根室管内がかけ離れて最下位にいることがわかる。

 処方箋ははっきりしている。教育への関心を高めること、そして優秀な教員を採用することが問題解決の道だろう。市議会で学力に関する議論が盛んになされるようでなくてはいけない。経済諸団体内部でも地域の子どもたちの学力が話題にならなくてはいけない。地域の未来は、それを担う子どもたちの教育にかかっている。

 学力差がはっきりしているのだから、長期的には釧路分校出身者の割合を下げることも考えたほうがいい。小中学校の統廃合をすれば、長期的に調整が可能だろう。だが、道教育大釧路出身者の割合を減らしても、その隙間を埋めるのは、他では合格の難しい学力の教員志望者ということになるだろう。花咲線も釧網線もそのうちになくなるだろうから、ますます僻地化が進む。なんとしても子どもたちの学力低下を食い止めなくてはならない。

 あきらめる必要はない、北海道の平均正答率を超えるぐらいのことはそうむずかしいことではない、現有教員で十分にやれる問題はやり方である。釧路の友人のM木さんがFB上で次のような具体的な提案をしてくれている。

①基本問題しかやらない授業をあらため、難易度の高い問題も授業で採り上げる
②定期テストの問題の難易度が低すぎるから、標準的なレベルに改める
③過度なプリント授業を廃止する
④授業の進捗管理を徹底する
⑤「すっ飛ばし」をやらない

 これら五項目を徹底するだけで北海道平均正答率は超えられる。放課後の個別補習をしなければ救えないから、根室管内の先生たちが、学力向上に取り組もうとしたら、大変な労力が必要になる。自分たちが教えている生徒の学力をなにがなんでも上げてやるという「覚悟」のほどが試される。部活制限についても保護者と向き合わなければ、低学力の生徒たちを集めて放課後補習なんてできはしない。上にはみ出した生徒と下にはみ出してしまった生徒たちには学校外での教育(私塾)も関係してくる。子どもたちの学力アップには地域の協力が必要だということ。
 「中小企業はオヤジ(社長)次第」というが、学校は規模が小さく小企業だ。だから、校長のマネジメント次第でなんとでもなる。学力アップ・マネジメントができる人を校長にしたらいい。マネジメントのできない人が校長になったら子どもたちが犠牲になる。
 7~8割の生徒が根室から離れて都会で暮らすことになる。低学力だと都会に出てもつける職業が制限され、非正規雇用が多くなる。都会で非正規雇用、年収150-200万前後では暮らせない。現状を放置すると、都会へ出て行った根室っ子のうち、3人に2人がそういうことになりかねない。ほうっておいていいわけないでしょ。
 
 

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