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#4114 Sapiens:9,10 page Oct, 25, 2019 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

 質問は3つあったが、最初のふたつだけ紹介しておく。残りの一つはこの後の文章で、文脈が読めなければ訳せないシビアな個所だった。ハラリの文章は優秀な高校生でも、論理力が飛びぬけていても、論理展開を追いながら読むのは、なかなか骨の折れる作業のようだ。

<9.3>  The fact is that a jumbo brain is a jumbo drain on the body.  It's not easy to carry around, especially when encased inside a massive skull.  It's even harder to fuel. In homosapiens, the brain   accounts for about 2-3 per cent of total body weight, but it somtimes 25 per cent of body's energe when the body is at rest. 
By comparison, the brains of other apes require only 8 per cent of rest-time energy.  Archaic humans paid for thei large brains in two ways.  Firstly, they spent more time in search of food.   Scondly, their muscles atorophied.  Like a goverment diverting money from defence to education, humans diverted energy from biceps to neurons.  It's hardly a foregone conclusion that this is a good strategy for survival on the savannah.  A chimpanzee can't win an argument with a Homo sapiens, but the ape can rip the man apart like a rag doll.


 質問があったのは上記の文の中の次の部分である。
(1) Like a goverment diverting money from defence to education, humans diverted energy from biceps to neurons.

 この文は意味が分からないと言っていた。
「政府がお金を国防費を削って教育費に投ずるというように、人類は上腕二頭筋に費やすエネルギーを減らして、ニューロンへ回したのである」
 予算を防衛費を削って、文部省の予算を増やしたようなものさと言ったら、「なーんだ、そういうことですか」
でOK. divertは「そらす」という意味だが、「Aを削ってBを増やす」と訳すと具体的でわかりやすくなる。ハラリはわざわざあまりなじみのないdivertという動詞を使って、難解な言い回しをしたのだから、ここを簡単な日本語に書き換えるのは気がひける。原文の味を殺さぬためには、ふさわしい語彙を選ばなければならない。翻訳者はそういうところできっと苦労しているのである。根室高校の先輩である翻訳の達人、柳瀬尚紀さんはそういう人だった。

(2)It's hardly a foregone conclusion that this is a good strategy for survival on the savannah. 

 thatとthisがつながって出てきただけで、びっくりしたのではないだろうか。'that this' なんて句は高校教科書には出てこない。そしてあまりなじみのないhardlyの訳にも戸惑っていた。英検2級のできのよい高校2年生でも疑問がわいて当然の文章である。
 構文は「it…that」構文だから、難しくない。thisが指示するものがつかみにくかったのだろう。例によって、デカルト『方法序説』四つの科学の方法の2番目、「問題をよりよくとくために、必要なだけの小部分に分割すること」、を利用しよう。
a) It's= that this is a good strategy for survival on the savannah
b) It's is hardly a foregone coclusion

  hardlyは否定辞である
。『英語基本形容詞・副詞辞典』より
----------------------------------------
hardly: 
概説:この語は「事柄や行為がある基準に達しない」という中核的意味をもち、一般に「ほとんど…ない」という意で用いられる。基準に達しないところから「とても…とは言えない」のように話しての強い感情のこもった否定が表されることも多い。この場合、しばしば皮肉の意を帯びる。「骨折って」の意で用いるのは現在ではまれ。「きびしく」の意は英国語法。

5.S be hardly C 〔述語修飾〕S〈人など〉がほとんどCではない。;SがほとんどCとは言えない。
 I am hardly strong enough to lift this heavy box.(ぼくにはこの重い箱を持ち上げるほどの力はとてもない)
He is hardly the type to do such a thing.
(かれはとてもそんなことをするような人ではない)

------------------------------------------

 foregone 決着済みの、

 thisは’ Archaic humans paid for their large brains in two ways’を指している。

a) 人類が大脳を巨大化させて二つの代償を支払ったことは、サバンナで生き残るためには好い戦略である。
b) それは決着済みの結論とはとても言えない。

「古代の人類が大脳を巨大化させて二つの代償を支払ったことが、サバンナで生き残るための戦略としてよいものであったかどうかに、白黒がついているとはとても言えない」

 柴田さんの訳もかいておく。
これがサバンナでの優れた生き残り戦略かどうかは大いに疑問だ






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#4113 学力崩壊の実態:学力テスト総合B途中集計 Oct. 25, 2019 [71.データに基づく教育論議]

 学力テスト総合Bのデータが12校分集まったので、管内別にアップする。釧路管内の上位5校のデータがまだ集まっていないので、釧路管内の平均値は最終的には140点前後となるだろう。

注:「合計A」は五科目の単純平均値、「合計B」は得点通知票記載の五科目合計平均点である。


<根室管内>
  合計A 合計B 国語 社会 数学 理科 英語
別海中央中 127.2 124.3 30.9 34.3 17.2 23.1 21.7
広陵中 118.9 119.5 29.8 26.9 16.4 24.4 21.4
柏陵中 109.0 108.8 31.1 24.9 13.3 18.9 20.8
中標津中 107.1 107.1 32.2 23.5 14.5 20.4 16.5
啓雲中 106.6 106.5 27.9 24.4 14.4 20.9 19.0
平均値 113.8 113.2 30.4 26.8 15.2 21.5 19.9


<釧路管内>
  合計A 合計B 国語 社会 数学 理科 英語
景雲中 137.0 136.7 31.6 29.6 19.3 30.5 26.0
美原中 134.4 134.4 32.2 31.3 18.4 29.6 22.9
大楽毛中 132.4 132.4 33.0 28.3 19.5 27.7 23.9
鳥取西中 129.6 129.5 33.5 25.9 19.5 26.7 24.0
富原中 127.9 127.9 32.6 27.4 15.5 24.9 27.5
青陵中 125.6 125.5 31.6 27.5 16.6 26.6 23.3
共栄中 123.9 123.9 31.8 26.6 17.7 24.1 23.7
平均値 130.1 130.0 32.3 28.1 18.1 27.2 24.5

 根室管内と釧路管内で、五科目合計点に17点の差がある。釧路管内は上位5校のデータがまだ入手できていないので、最終的には五科目合計点が140点付近、釧路・根室の管内平均点差は25点ほどになると思われる。

 五科目合計点の最下位は啓雲中、下位3校を啓雲中・中標津中・柏陵中の根室管内勢が占めた。これら3校に共通しているのは数学が15点以下ということ。釧路管内は18.1点、根室管内の平均は15.2点、2.9点の差がある。根室管内でも、別海中央中の五科目合計点は127.2点と高い。
 もう一つ特徴的なのは、英語の点数である。根室管内の平均は19.9点、釧路管内は24.5点、4.6点差がある。根室は釧路に比べて幼児英語教育の盛んな地域だが、英語の学力という点ではプラスに寄与しているようには見えない。

 柏陵中(63名)と啓雲中(42名)は合わせて、105名が学力テスト総合Bを受験しているが、そのうち5点(60点満点)以下は37名(=25+12)、35.2%を占めている。三人に一人の割合で5点以下である。根室高校の高校入試は裁量問題だから、「大問1」の簡単な計算問題20点ほどが出題されないから、これらの生徒が根室高校普通科を受験すれば入試数学は零点である。20点以下は83人(=50+33)、79.0%である。約8割の生徒が高校普通科の標準的な難易度の数学教科書で学ぶことは不可能である。そういう事情を背景に、現在の高2の生徒たちから、数Ⅱが選択科目となってしまった。高校統廃合後の一年間の指導の実態を踏まえて、根室高校の数学担当の先生たちが、必修科目だった数Ⅱを選択科目にせざるを得なくなったのだろう。学力下位層はさらに肥大化しているから、数Ⅱを選択できる生徒は激減することになる。最低でも30点以上なければ標準的な難易度の数Ⅱの授業は無理だ。2校で14人(=6+8)、13.3%しかいない。2年次の選択科目の数Bは数年前に必修科目としたことがあったが、普通科110人の生徒の15%と仮定しても、16人くらいしか受講学力のある生徒がいない。
 進研模試数学で50点(100点満点)獲れたら学年5番目で全国偏差値60、進研模試偏差値50前後で学年順位16番くらいだろう。公立高校普通科の全国平均点くらいが学力テスト30点以上の層へ食い込めるということになる。そういう生徒は15%しかいない。 

 英語は20点以下が69人(=42+27)、65.7%、おおよそ三人に二人が20点以下である。
 基本科目で一番大事なのは国語であるが、20点以下は30人(=18+12)、28.6%を占めている。四人に一人強は教科書を読んで理解できない、つまり、予習できない学力層である。語彙力不足で授業内容も理解できないだろう。日本人なのだから、国語の点数が30点以下の生徒が59人(=33+26)もいるのは驚きだ。学力の基礎は「読み・書き・そろばん(計算)」だが、大事な「読み・書き」に問題を抱えている生徒が半数を超えている。
 五科目合計点が80点以下は42人(=27+15)、40.0%を占める。この学力層の生徒たちは将来正規雇用の職に就くのがはなはだしく困難と思わざるを得ない。そのほとんどが非正規雇用で職を転々とせざるをえない。外国人の単純労働者と職を競うことになり低収入にあえぐ。

<対策>
 「読み・書き・そろばん(計算)」は学力の基礎をなしている。小学校低学年では国語授業に週9時間割り当てられており、先生たちは何をしたらよいのかと時間を持て余し気味だと聞く。『論語』の素読の1時間、夏目漱石『坊ちゃん』や太宰治や中島敦の小説などに1時間、短歌と俳句に1時間、合計週3時間を音読トレーニングに使ってもらいたい。ただ読むだけでいい。テクストにはルビが振ってあるものを選べば、小学1年生でも大丈夫だ。俳句と短歌は視写させて「小倉百人一首」からはじめたらいい。これを3年間続けたら、「読み・書き」の基礎がしっかり造れる。
 斉藤孝の音読破シリーズ6冊がお勧めである。この本はルビが振ってあるから、小学生低学年でも読める。音読トレーニングを通じて、日本人が大切にしてきた倫理観や仕事観がなんであるのか知ることができる。そこが一番肝心なところだ

 中標津町教委と根室市教委さん、子どもたちの学力低下は食い止めることができる。人材枯渇による地域経崩壊も防げる。地域の未来は子どもたちの教育にかかっている。 


<大人の責任>
 根室のそして根室管内の子どもたちの学力低下を放置しておいてはいけない。これはこの地域に住むわたしたち大人の責任である。

<地域連携の必要性>
 根室高校では進研模試を実施している。2年生になると任意の受験になる。WinStepという問題集がベネッセから出ている。進研模試対策用問題集で、何に3回実施されるのに合わせて3回分の薄い問題集が科目別にある。1冊400円だったかな、本屋で頼んだら、とれないという。学校経由でないと買えないようになっている。3年生が質問した問題は難易度が高い良問だった。塾でも使いたいが、現状では手に入れられない。根室に住む子どもたちの学力を上げるためにも、こういう問題集が買えるように根室高校のほうで協力してもらえたらありがたい。地域の学力崩壊を食い止めるために、そして学力を伸ばそうと頑張っている生徒たちのために、高校と私塾がこうした面での協力体制をつくることが必要と思う。

 20校程度のデータが集まると思うが、あと2週間くらいお待ちいただきたい。


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#4112 英語が苦手の高2生のための短期特訓10th:最終回 Oct.23, 2019 [78-1Vivid 3短期特訓補習]

<更新情報>
10/23 朝8:35 デカルトに関する追記

 毎週水曜日に2時間、合計10回短期特訓補習授業をやってきた。最終回の今日はLesson8'Water: The Biggest Problem in the Century' を1ページ半やった。5-10回音読、すべてのセンテンスと節の文型を確認しつつ、読解を坦々とやる。今日は冠詞に焦点を当てた。
 たとえば、’The Biggest Problem’と’the Century’はなぜ定冠詞がついているのか。’Water’はなぜ無冠詞なのか、’all the water on the planet’ のwaterにはなぜ定冠詞がついているのかなど。単数無冠詞、不定冠詞、定冠詞、複数無冠詞、複数定冠詞が使い分けられたら、高校レベルを超えている。授業では無冠詞には空集合の数学記号「Ф」を用いている。数学の大好きな生徒たちだから、なじみのある記号が食いつきやすい。(笑)

 たとえば、次のような例文を挙げて、意味や使われる場面の違いを解説した。
a1) She goes to school by bike. 
a2)  My mother went to the school yesterday.

b1)   He has been in hospital for a month.
b2)   He goes to hospital.
b3)   He went to the hospital last week.

 長い文が出てきた、英語が苦手の生徒は長文が苦手で、なかでも長いセンテンスは見ただけでアレルギー症状を起こす。それもとりさらねばならぬ。この章の2番目の文がちょうど都合がよかった。

 You may think it quite natural that a waiter brings you a glass of water when you sit at a table in a restaurant in Japan.

 デカルトは、複雑な問題に遭遇したら、「問題をよりよくとくために、必要なだけの小部分に分割すること」とその著『方法序説』の中で、科学の方法「四つの規則」の2番目で述べている。数学でも英語でも応用できる至言である。やってみよう。
You may think+O
it quite natural that a waiter brings you a glass of water
when you sit at a table in a restaurant in Japan

 こういう風に三つに分けてしまうと、それぞれ簡単な文となる。
 ①のOとはObject(目的語)である。その目的語が②の節構造になっているだけ。thatを挿入して黒板に書いて見せたら、何人かが「それならわかる、なんでthat入れてくれないの?」、そんなに親切な文ばかりやったのでは、新聞英語はいつまでたっても高根の花になる。
 ②は受験英語の「it…that」構文というやつで第Ⅱ文型だ。itはthat以下であるあるから置き換えたらいい。「that以下は極めて自然なことだ」と言ってるだけ。
 ③のwhenで導かれる節は第Ⅰ文型、時を表す副詞句、たとえば、this morningやyesterdayと同じ役割だ。英語は語順が決まっていて、時の副詞句は文末にくるのが基本で、それ以外の位置に来ていたら、強調である。したがって、「日本のレストランでは席に着くと…」というだけ。長いセンテンスも三つに分解してしまえば簡単になる。
 数学が好きな生徒たちのために、大中小括弧で括って関係を明瞭にすると次のようになる。

 You may think [it quite natural (that a waiter brings you a glass of water)][when you sit at a           table in a restaurant in Japan].

 次のように、スラッシュを二か所に入れただけで意味がとりやすくなる。
 You may think / it quite natural that a waiter brings you a glass of water / when you sit at a table in a restaurant in Japan.

   第Ⅲ文型 「S+V+O+Place(=∅)+Time」のplaceに関する句が空集合になっている例である。
(日本のレストランでは、席につくとウエイターがコップに入った水をもって来るのが極めて当たり前のことにように思える)

 ジャパンタイムズの記事にはもっともっと長くて複雑な構文が出てくる。長くて複雑な構造の文が出てきたら、やってみせたように番号をつけて箇条書にしてしまうか、文の節構造ごとにスラッシュを入れたらいい。そのとたんに、ずいぶん簡単に見えてしまうだろう。

 はじめて仮定法の文が出てきたので、仮定法過去と仮定法過去完了の解説をして、1題、英作文してもらった。
 If oil were to run out tomorrow, we would be able to survive.  But if it were not for water, we wouldn't.  
(石油が明日枯渇してしまっても、わたしたちは生き延びられるが、水がなければ生きられない)
  アンダーライン部は成句である。
英作文問題:「太陽がなければ、何も生きられない」、「太陽」は無冠詞か、不定冠詞aか、それとも定冠詞theをつけるのか、よく考えること。

 生徒:if it were not the sun, anything can't live.

 惜しい!80点だ。can'tがcouldn'tになれば正解だった。わたしたちが住む太陽系には太陽が一つだけだから、the sunが正しい。
 昨日、並べ替えの問題をやっていた生徒が、正答率4%の問題に正解できたと喜んでいた。動詞にshowを使う問題で、授与動詞4文型は「動詞+人+もの」の語順が基本となんども説明していたから、身についたようだ。いままでできなかった問題が正解できてうれしい、それを繰り返すことで、楽しみながら成績がアップしていく。勉強はいやいややっても身につかないが、楽しみながらやる者は大きく成長する。だから、いままでできなかったレベルの難問に正解できたら、その都度大いに喜んだらいい。

 
これを知る者はこれを好む者に如(し)かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如(し)かず。


 ところで、ベネッセのスタディサポート・テストがあったのだが、受講していた5人は全員前回よりも英語の正答率がアップしていた、わたしはとってもうれしい。
 進研模試数学が5人とも学年10番以内だが、英語が苦手で、英語の偏差値が38-48であった。来週、進研模試があるが、まだそれほど点数は伸びないだろう。2月の模試までには、英作文トレーニングを3回やるつもりだ。それが終了すれば、さらに15点アップする。
 何も言わなくても、最近は5人とも英語の教科書を開いていたり、それぞれいろんな問題集やプリントに取り組んでいる。勉強しているから質問も出る。こちらは、質問に応えるだけでいい。「英語も勉強しろ」と言わなくてよくなった。(笑)
 2月の進研模試では、数学の偏差値よりも英語の偏差値のほうがよくなる生徒が出ると思う。

 国数英の3科目とも上がった生徒が三科目合計点で学年5位に上がってきた。2月はこの生徒の目標は学年3位だ。先週聞いた志望大学が変わるだろう、もちろんランクアップとなる。
 他の4人も三科目合計点で学年10番以内に入ってきてほしい。
 半年後には英語が苦手だった5人のうち3人は英語の偏差値が60を超えているだろう、そうなったらとっても愉快だ。(笑)

 学年トップの生徒には、この特訓は不要で、’Sapiens’を読んでいる。授業の様子はカテゴリー「44-2 Sapiens」にまとめてあるから、偏差値80超を目指す人は利用したらいい。二次試験対策にもなるし、大学院入試の準備にもなる。
 この生徒は英検2級を受験したが1次試験はバンド+7で通過、2次試験(面接)も問題なしだ。英検2級クリアが条件になっている大学医学部があるので、クリアしておきたいということだった。
 481頁あるハラリの’Sapiens’邦題『サピエンス全史』を読み終わるころには、準1級に手が届く。準1級の問題集を並行してやっておけば、語彙力も問題がなくなる。Sapiens一冊だけで、高校3年の教科書のおよそ26年分の分量があるから、すごい分量だ。大学受験勉強でこんなことをやる生徒は全国にもほとんどいない。(笑)

 学力に応じた個別指導をすれば生徒は勝手に成長するのである。


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#4111 枯れゆく秋のアジサイ Oct. 22, 2019 [A8. つれづれなるままに…]

 極東の町根室に咲くアジサイは気温が5度に下がってもまだがんばっている。咲き始めたのは7月下旬だ。3か月、枯れたまままだ花弁が落ちない。立ち枯れているアジサイは盛りのときとは違った趣があっていいものだ。咲き始めたことはあんなにきれいだったと思い出して感慨にふけるのもいい。

10/22撮影 散り萎(しお)れたる…
極東の町のアジサイはなかなか散らない(笑)
SSCN3154.JPG

7/29撮影 まだ染まり切らぬ初々しいアジサイ
SSCN2954.JPG

8/11撮影 花は盛りに見るべきものかは…
  でも、盛りの花はうつくしいね。今を盛りと色まで活き活きしている。
SSCN2960.JPG
徒然草第137段
----------------------------------------
 花は盛りに、月は隈(くま)なきをのみ、見るものかは。雨に対(むか)ひて月を恋ひ、垂れこめて春の行衛(ゆくへ)知らぬも、なほ、あはれに情(なさけ)深し。咲きぬべきほどの梢、散り萎(しを)れたる庭などこそ、見所多けれ。歌の詞書(ことばがき)にも、「花見にまかれりけるに、早く散り過ぎにければ」とも、「障(さは)る事ありてまからで」なども書けるは、「花を見て」と言へるに劣れる事かは。花の散り、月の傾(かたぶ)くを慕ふ習ひはさる事なれど、殊にかたくななる人ぞ、「この枝、かの枝散りにけり。今は見所なし」などは言ふめる。
 万
(よろづ)の事も、始め・終りこそをかしけれ。男女(をとこをんな)の情(なさけ)も、ひとへに逢ひ見るをば言ふものかは。逢はで止(や)みにし憂さを思ひ、あだなる契(ちぎ)りをかこち、長き夜(よ)を独り明(あか)し、遠き雲井を思ひやり、浅茅(あさぢ)が宿に昔を偲ぶこそ、色好むとは言はめ。望月の隈(くま)なきを千里(ちさと)の外(ほか)まで眺めたるよりも、暁近くなりて待ち出でたるが、いと心深う青みたるやうにて、深き山の杉の梢に見えたる、木(こ)の間(ま)の影、うちしぐれたる村雲隠れのほど、またなくあはれなり。椎柴(しひしば)白樫(しらかし)などの、濡れたるやうなる葉の上にきらめきたるこそ、身に沁(し)みて、心あらん友もがなと、都恋しう覚ゆれ。
 すべて、月・花をば、さのみ目にて見るものかは。春は家を立ち去らでも、月の夜
(よ)は閨(ねや)のうちながらも思へるこそ、いとたのもしうをかしけれ。よき人は、ひとへに好(す)けるさまにも見えず、興ずるさまも等閑(なほざり)なり。片田舎の人こそ、色こく、万(よろづ)はもて興ずれ。花の本(もと)には、ねぢより、立ち寄り、あからめもせずまもりて、酒飲み、連歌して、果(はて)は、大きなる枝、心なく折り取りぬ。泉には手足さし浸(ひた)して、雪には下(お)り立ちて跡つけなど、万(よろづ)の物、よそながら見ることなし。
 さやうの人の祭見しさま、いと珍らかなりき。「見事いと遲し。そのほどは桟敷
(さじき)不用なり」とて、奥なる屋(や)にて、酒飲み、物食ひ、囲碁、双六(すぐろく)など遊びて、桟敷には人を置きたれば、「渡り候ふ」と言ふ時に、おのおの肝(きも)(つぶ)るゝやうに争ひ走り上(のぼ)りて、落ちぬべきまで簾(すだれ)張り出でて、押し合ひつゝ、一事(ひとこと)も見洩(もら)さじとまぼりて、「とあり、かゝり」と物毎に言ひて、渡り過ぎぬれば、「また渡らんまで」と言ひて下(お)りぬ。たゞ、物をのみ見んとするなるべし。都の人のゆゝしげなるは、睡(ねぶ)りて、いとも見ず。若く末々(すゑずゑ)なるは、宮仕へに立ち居(ゐ)人の後(うしろ)に侍(さうら)ふは、様(さま)あしくもおよびかゝらず、わりなく見んとする人もなし。
 何となく葵
(あふひ)懸け渡してなまめかしきに、明けはなれぬほど、忍びて寄する車どものゆかしきを、それか、かれかなど思ひ寄すれば、牛飼(うしかひ)下部(しもべ)などの見知れるもあり。をかしくも、きらきらしくも、さまざまに行き交(か)ふ、見るもつれづれならず。暮るゝほどには、立て並べつる車ども、所なく並(な)みゐつる人も、いづかたへか行きつらん、程なく稀(まれ)に成りて、車どものらうがはしさも済(す)みぬれば、簾・畳も取り払ひ、目の前にさびしげになりゆくこそ、世の例(ためし)も思ひ知られて、あはれなれ。大路(おほち)見たるこそ、祭見たるにてはあれ。
 かの桟敷の前をこゝら行(ゆ)き交
(か)ふ人の、見知れるがあまたあるにて、知りぬ、世の人数(かず)もさのみは多からぬにこそ。この人皆失(う)せなん後(のち)、我が身死ぬべきに定まりたりとも、ほどなく待ちつけぬべし。大きなる器(うつはもの)に水を入れて、細き穴をあ明(あ)けたらんに、滴(したゞ)ること少(すくな)しといふとも、怠る間(ま)なく洩りゆかば、やがて尽きぬべし。都の中(うち)に多き人、死なざる日はあるべからず。一日(ひとひ)に一人・二人のみならんや。鳥部野(とりべの)舟岡(ふなをか)、さらぬ野山にも、送る数多かる日はあれど、送らぬ日はなし。されば、棺(ひつぎ)を鬻(ひさ)く者、作りてうち置くほどなし。若きにもよらず、強きにもよらず、思ひ懸けぬは死期(しご)なり。今日(けふ)まで遁(のが)れ来にけるは、ありがたき不思議なり。暫(しば)しも世をのどかには思ひなんや。継子立(ままこだて)といふものを双六(すぐろく)の石にて作りて、立て並べたるほどは、取られん事いづれの石とも知らねども、数へ当てて一つを取りぬれば、その外は遁(のが)れぬと見れど、またまた数ふれば、彼是(かれこれ)間抜(まぬ)き行くほどに、いづれも遁れざるに似たり。兵(つはもの)の、軍(いくさ)に出づるは、死に近きことを知りて、家をも忘れ、身をも忘る。世を背(そむ)ける草の庵(いほり)には、閑(しづ)かに水石(すゐせき)を翫
(もてあそ)びて、これを余所(よそ)に聞くと思へるは、いとはかなし。閑(しづ)かなる山の奥、無常の敵(かたき)(きほ)ひ来(きた)らざらんや。その、死に臨(のぞ)める事、軍(いくさ)の陣に進めるに同じ。
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#4110 根室市庁舎新築はいま必要か?:人口推計値から考える Oct. 22, 2019 [24. 根室の旧弊・悪弊を取り除くために・・・]

 社会保障人口問題研究所の最新の根室市の人口推計値は以下のようになっている。2013年の推計よりも2040年が2702人少ない。国の研究機関だが、推計値の信頼性は大丈夫かな?
 五年たって、当初推計値よりも、根室の人口の減り方が加速しているということ。根室市の人口減対策は効果がないどころか、逆効果になっているということ。市の政策は現実のデータできちんと検証してもらいたい。人口減対策は市役所のどの部が担当しているのか?
*#2269 衝撃!根室市の人口推計値 :とまらぬ人口減少 Apr. 21, 2013
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2013-04-2
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*根室市の人口減少対策(市役所ホームページより)

*https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/lifeinfo/shinitsuite/shisei/5/keikaku_torikumi/2782.html

2015年 26917
2020年 24461
2025年 22005
2030年 19610
2035年 17330
2040年 15190
2045年 13210

弊ブログ#4033より
----------------------------------------------
 現市庁舎が建てられた1973年の人口は44,856人です。建物はつくってしまえば耐用年数は50年、来年つくったとしても2070年まで建て替えがありません。2070年には根室の人口は1万人未満です。現在と同じ面積で建て替えようとしていますが、ほんとうにそんなに広い市庁舎がいるのですか?
----------------------------------------------

 現在の市庁舎は人口が4万人を超えていた時に造られたものだ。それと同規模あるいはもっと大きな建物を予定しているようだが、本当に必要なのだろうか。21年後の2040年には根室市の人口は15190人である。現市庁舎が建てられてときの1/3だ。
 小学校を統廃合して、耐震改修されている北斗小学校を改修して20年間使えばいい。そして20年後に人口サイズに合った市庁舎を建設すべきと思うがどうだろう?

(北海道14支庁管内最低、根室管内で根室の市街化地域の3校が最低レベルという状況を打開するには、根室市内の小学校と中学校をそれぞれ1校に統合すれば、なんとかなりそうです。小学校には算数専任教員を10人配置できます。中学校にも10人配置できます。具体案の詳細は「#4130 根室市の子どもたちの学力アップの具体的な方法:「学力向上特区申請」 Nov. 23, 2019」にあります。)
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-22

 今日(10/22)4時から、市総合文化会館で教育講演会が行われる鶴羽佳子さんという人が「子どもの自立と地域課題を解決できる対話力とは」というタイトルで話をする。

 市庁舎の建て替えも「地域課題」の一つである。わたしたち市民はこの問題について一度でも、市長と対話しただろうか?市民対象にオープンな対話集会が一度でももたれただろうか?市長は重要課題について、オープンな場で市民への説明責任はないのか?

 市長にもわたしたち市民にも地域課題を解決するための対話力がはたしてあるのだろうか?市長の諮問委員会方式(各種委員会は10-12人の委員のうち公募は2人のみ)で閉鎖的な市政に終始している根室は対話力をもてるのか?

*#4107 教育講演会10/22・4時から市総合文化会館:鶴羽佳子 Oct. 19, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-10-19

 
北方領土問題、市立病院巨額赤字問題、加速する人口減少、釧路根室管内で根室の就学生の学力は最低である、そして高校統廃合でさらに低学力化が加速している、こういうようにいくつもの重要な地域課題を抱えている石垣根室市長こそこの講演会を聴くべきではないのか?
  今日の北海道新聞には、穂香の7.1㎞の複線化道路工事の開通式が載っていた。工事費は200億円を超えている。道路が混雑しているわけでもないのに、わずか7.1㎞の複線化工事に200億円を超えるお金が投じられている。その必要性について、市長はオープンな場で一度でも市民の意見を聞いただろうか?
 いままでのところ、根室は地域課題解決のための対話力は限りなくゼロに近い
 百年河清をまたずとも、いずれよくなる。何がきっかけになるかは天のみぞ知る、すべては天にお任せ。(笑)

**#4033 根室市役所を新築してはいけない理由 July 12, 20
19
https://nim
uorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-07-11-1

 #3891 根室市庁舎建て替え:市民アンケート Dec. 30, 2018
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2018-12-30


 
#3875 根室市役所新庁舎は北斗小学校を利用したらいかが? Dec. 8, 2018
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2018-12-08-1




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#4109 Sapiens: p.9 Oct. 19, 2019 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

<最終更新情報>
10/20 朝6時20分itの用法解説追記 10時15分<余談:平井呈一>を追記 
10/21 朝8時20分 itの用法、江川泰一郎『改訂三版・英文法解説』からの引用追記


 話がつながっているので、読者の便利のために前回の文を再掲する。
<9.1> Mommals weighting sixty kilograms have an average brain size of 200 cubic centimetres.  The earliest men and women, 2.5 million years ago, had brains of about 600 cubic centimetres.  Modern Sapiens sport a brain were  averaging 1,200-1,400 cubic centimetres. Neanderthal brains were even bigger.  
  That evolution should select for larger brains may seem to us like, well, a no-brainer. 

 ここまで、前回とりあげた。ここからが、今回取り上げる文。

<9.2>  We are so enamoured of our high intelligence that we assume that when it comes to cerebral power, more must be better.

 辞書を引いてしばらく考えていたが、構文がつかめないという。なんてことはない、受験英語でお馴染みの「so…that」構文である。「…」の部分が長いだけ。そしてthatが二つ、whenが一つ、どうやら複雑な節構造になっている。従属節が3個ある文は高校英語教科書には載っていない。3つに分解してみる。デカルト『方法序説』「四つの規則」、「第二」より問題をよりよくとくために必要なだけの小部分に分割すること」の応用だ。
a) We are so enamoured of our high intelligence that we assume that
b) when it comes to cerebral power
c) more(=(larger brains) ) must be better

  bの文に使われている [come to] の訳にこまっていた。これは成句である、用例を知らないと訳せない。ジーニアス4版を引いても、適当な用例が見つからなかった。生徒の質問にはトコトン付き合わなければならない。わからなければ、わからぬと言い、そして調べる誠実さが教える側には必要だと思う。生徒からの質問は、内容によっては自身の勉強の機会でもあるから、ありがたいことなのだ。勉強の楽しさはこういう探索をすることにも見出せる、面白いのである。丁寧に『英語基本動詞辞典』のcomeの項を読んでいく。こういう専門辞書を丁寧に読むことは、これを作った小西友七さんの膨大な知識の一部をわが身に吸収することを意味している。それが積み重なっていくことで、思考にゆっくりと変化が訪れる。
------------------------------------------
NB30 「O<人[物・事]ということになると」の意で 'when it comes to O'  《Oは名詞・動名詞》の成句表現がある。:Joe is not good in sports, but when it comes to arithmetic he's the best in the class.--Makkai  ジョーはスポーツは不得意だが、算数となるとクラスで一番だ / I get nervous when it comes to tolking to Mr. Johns.--Clark  ジョーンズ氏と話す段になると神経質になる 
------------------------------------------
 役に立つ辞書です。英語が好きな生徒諸君は、正月のお小遣いで購入したらいい。「基本動詞」「形容詞・副詞」「名詞」の三種類が出ている。『英語基本動詞辞典』はcomeの用法解説に9頁を費やしている。

 toは「到達」を表すので、whenが付加されると、「それが算数のところまで来ると」⇒「算数となると」、こういうことだろうか。
 この節で主語となっている it は、<[漠然と状況・事情を示して]■決まり文句に多く、日本語に訳さない>。ジーニアス4版には用例として、次の文が載っている。
-------------------------------------------
 It's your turn. あなたの番です /  How's it going.ご機嫌(景気)はいかが? /  I made it.間に合った。やったぞ /  It happens.よくあることだよ /  Forget it.(そのことは)もういいよ / Can it.うるさい  / Hold it. とまれ / Get it? わかった(=I got it.) 
-------------------------------------------

 英語が苦手な高2の生徒5名相手にやっている英語短期特訓補習授業#4105の(11)で 'It's your turn.'をとりあげている。https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-10-17
 高校生がもっている受験英文法書にはどうなっているのか調べてみた。江川泰一郎『改訂三版・英文法解説』の代名詞の章「36. 状況のit」「(1)主語となる例」の4文例目(p.48)にピッタリ('come to'も含まれている)のものが載っていたので紹介する。

-------------------------------------------
When it comes to making things, Mike is the cleverest person I know.
(何か物を作るとなると、マイクほど器用な人を知らない)
-------------------------------------------
 '状況のit'の文例として、成句の'come to'を絡めたものを選ぶところに江川先生のセンスの良さがでている。驚き桃の木山椒の木です。


a) わたしたちは自分の高い知能に酔いしれているので、that以下のことを前提に考えている
b) 大脳のパワーとなると
c) より大きい脳のほうがいいに決まっている

 that節が2回出てきて、あとのほうはthat whenとなっているし、最後の節は主語が省略されているので、頭がくらくらして、真っ白けになったのだろう。「…」が短ければ、「so…that」構文を見落とすはずがない。大きな脳をもっていても、時に麻痺してしまう。(笑)
 わたしも成句表現の勉強になった。だから、教えるということは勉強するということと同義である。
 論理を追って読んでいれば、「more=larger brains」であることはだれでも気がつく。英語は同じ語を続けて使わないから、比較級を含む名詞句はこの場合のようにmoreで言い換えたら読み手にわかる、初めて見たね。ハラリは読み手にその程度の読解力のあることを前提に、この本を書いている。
「わたしたちは自分の高い知能に酔いしれているので、脳となると、大きい方がいいに決まっていると考えている」

「わたしたちは自分の高い知能に酔いしれているので、脳については、大きいに越したことはないはずだと思い込んでいる」柴田訳
 柴田訳でもitは訳出されていない、決まり文句のitだから、ジーニアスの説明通りの処理をしている。
 ここでも訳文の言葉の節約の跡がみられる。「脳がより大きい」⇒「大きい」。

 assumeには「仮定する、前提する、妥当である」などの訳語があるが、「思い込んでいる」とさらりと片付けたところが巧い。
 こうして丹念に見て行くと、プロの技は参考になる。わたしたちは訳文を短縮する必要がないのだから、ハラリが脳にイメージしたものを、誤解なく伝えるわかりやすい訳文をこころがけたらいい。でも、本音を言うと、永井荷風の『断腸亭日常』のような、短くて切れる日本語で書いてみたいものだ。彼の弟子の平井呈一の翻訳は切れる日本語、臨場感のある日本語翻訳として最高水準を見せてくれている。ラフカディオ・ハーンの作品で鬼気迫るものがある。遠藤利國著『明治二十五年九月のほととぎす』(未知谷刊)に採録されているので、「余談」のところで追記・引用しておく。



<9.3>  But if that were the case, the feline family would also have produced cats who could do calculus and frogs would by now have launched their own space programme. Why are giant brains so rare in the animal kingdom?

 ここは構文がつかめなかったのではなく、論理的整合性がとれなくなってしまっての質問だった。話の筋が見えなくなっただけ。仮定法過去の文だから、もうちょっとで独力で読めただろう。
 the case: 真相、事実、ほんとう   feline:ネコ科の  calculus:微分積分

a) But if that were the case,
b) the feline family would also have produced cats who could do calculus
c) and frogs would by now have launched their own space programme


  ここまで切り離したら、仮定法を勉強し終わった高校2年生にはそれほど難しくない。
a) しかし、それが本当のことだとしたら、
b) ネコ科は微積分のできる家猫を産み出しただろうし、
c) カエルはいままでに自らの手でつくった宇宙計画を発進させているだろう

 指示詞のthatは「進化がより大きな脳を選んだということ」を受けている。

「だが、もしそれが正しければ、ネコ科でも微分や積分のできる動物が誕生していただろう。」柴田訳
 文字の節約のためだろうか、柴田訳にはカエルが宇宙計画をスタートさせる話はカットされている。

 Why are giant brains so rare in the animal kingdom?
 「なぜ巨大な脳は動物界ではそんなにも稀なのか?」
 
「ホモ属だけがこれほど大きな思考装置をもつに至ったのはなぜなのか?」柴田訳
 翻訳のプロの意地だね、ここは原文が類推できるような甘い日本文にはしないという、柴田さんの意地を感じました。

 これで解説終わりです。O君、すっきりしたかな?
 Z会のテストで出てくる長文が、語彙は教科書の3倍くらい、構文も複雑なものが多いので、理解できなところが出てくると言っていたが、次第に読み慣れてくる。

<余談:平井呈一の名訳>
#2550 文脈把握問題(1):『風とともに去りぬ 三』から Jan. 1, 2014
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2014-01-01


 では、どういう翻訳がいいのかということになるが、具体例を一つ挙げておきたい。
 たとえば、ラフカディオ・ハーンの著作の翻訳者である平井呈一の翻訳物に比べたら、日本語の使い方の巧みさは到底かなうものではない。それは日本文学に対する造詣の深さの差と作文修行の差だろう。平井は荷風の直弟子である。あることで荷風の逆鱗に触れ、破門になり、郷里へ戻って翻訳を始めた。
 平井の訳は登場人物の息遣いがはっきりわかる緊張感のあるものになっている。遠藤利國著『明治廿五年九月のほととぎす』のラフカディオ・ハーンの章に転載された『日本雑記』の平井の訳(131~135㌻)を読めばその腕のすごさと日本語のセンスのよさがわかる。こういう名訳が絶版になり消えていくのはもったいない。翻訳のお手本として残したいものだ。

==========================

 ハーンは明治二十七年に熊本を去り、二十九年四月には漱石が松山中学から五高に転任するが、この頃の熊本には十五年ほど前の西南戦争の記憶がまだ生々しく残っていたらしい。ハーンは1901(明治三十四)年に Japanese Miscellany (邦題『日本雑記』あるいは『日本雑録』を出版したが、そのなかに「橋の上」という題で、炎暑の厳しい夏のある日、熊本市内を流れる白川にかかる古い橋の上で平七老人という出入りの俥屋から聞いたという、次のような話しを記している。

 「二十二年前」と平七が額を拭きながらいった。「いえ、二十三年前に―わしはここに立って、町の焼けるのを見とりました」
 「夜かね?」とわたくしは尋ねた。
 「いえ」と老人はいった。「昼過ぎでござんした。―雨のしょぼしょぼ降る日で。・・・・戦の最中で、町はカジで焼けとってね」
 「だれがいくさをしていましてか?」
 「お城の兵隊が薩摩の衆といくさをしとりました。わしらはみな弾丸(たま)よけに地べたに穴を掘って、その中に坐っとりました。薩摩の衆が山の上に大筒を据えたのを、お城の兵隊がそいつを目がけて、わしらの頭越しにドカン、ドカン打ちましてな。町じゅうが焼けました」
 「でも、あなたどうしてここへ来ましたか?」
 「逃げてまいりました。この橋のとこまで駆けてまいったのです。―ひとりでな。ここから三里ばかり離れたところに、兄貴の農家があったんで、こっちはそこへ行こうと思って。ところが、ここで止められましてな」
 「だれが止めましたか?」
 「薩摩の衆です。―なんという人だったか分かりません。橋までくると、百姓が三人いましてな。―こっちは百姓だと思いました。―それが欄干によりかかって、大きな笠をかぶって、蓑を着て、わらじをはいとりますから、わしは丁寧に声をかけると、なかのひとりがふりかえって、『ここに止まってろ!』といって、あとは何もいいません。あとの二人もなにもいいません。それで、こりゃあ百姓じゃないとわかったんで、わしは恐くなりましてな」
 「どうして百姓じゃないことが分かったのですか?」
 「三人とも、蓑の下に長い刀(やつ)を―えらく長い刀をかくしとりますんで。ずいぶんと上背のある男たちで、橋の欄干によりかかって、じっと川を見おろしとりました。わしはそのそばに立って、―ちょうどそこの、左へ三本目の柱のところへ立って、同じようにわしも川を眺めておりました。動けばバッサリ殺(や)られることは知れとります。だれもものをいいません。だいぶ長いことそうやってらんかんによりかかっとりました」
 「どのくらい?」
 「さあ、しかとは分かりませんが、―だいぶ長かったに違いござんせん。町がどんどん燃えとるのを、わしは見とりました。そうしとる間、三人ともわしにものも言わんし、こっちを見もせんし、ただじっと水を眺めとる。すると馬の音が聞こえてきました。見ると、騎兵の将校がひとり、あたりに目をくばりながら、早足でこっちへやってきました。・・・・」
 「町から?」
「さいで。―あのそれ、うしろの裏道を通りましてな。・・・・三人の男は大きな編笠の下から、騎兵のくるのをじっとうかがっとりましたが、首は動かさずに、川を眺めているふりをしとる。ところが、馬が橋へかかったとたんに、三人はいきなりふり向いて、躍りかかりました。ひとりが轡(くつわ)をつかむ、ひとりは将校の腕をにぎる、三人目が首をバッサリ。―いやもう、目にもとまらぬうちに。・・・・」
 「将校の首をかね?」
 「はい。キャアともスウともいわんうちに、はやバッサリで。・・・・あんな早業は見たことござんせん。三人ともひとことも申しません」
 「それから?」
 「それから三人して死骸を橋の上の欄干から川へ投げ込みました。そして、ひとりが馬をいやというほど殴りますと、馬はつっ走りました。・・・・」
 「町の方へ戻ったのか?」
 「いいえ、馬のやつは向こうの在の方へ追いやられましたんで。・・・・切った首は川へ捨てずに、その薩摩の衆のひとりが蓑の下に持っとりましたよ。・・・・それからまた三人して、先ほどと同じように欄干へもたれて、川を見ております。わしはもう膝がガクガク震えて。顔を見るのも恐くて、―わしは川をのぞいとった。・・・・しばらくするとまた馬の音が聞こえました。わしはもう、胸がドキドキして、心持が悪うなってきて。―ひょいと顔をあげてみると、またひとり騎馬兵が道をパカパカ駆けてきよった。橋にかかるまで、三人とも身じろぎもしない。と、かかったとたんに、首はバッサリ。そしてさっきと同じように、死骸を川へ投げ込んで、馬を追っぱらう。そんなふうにして三人斬ったね。やがてサムライは橋を立ち去っていきよった。」
 「あなたもいっしょに行きましたか?」
 「いえ。―やつら、三人目を斬るとすぐ出かけたですよ。―首を三つさげて。わしのことなんか目もくれなかったね。わしは、その衆がずっと遠くへ行っちまうまで、動くのが恐くて、橋の上にすくんでおりました。それから燃える町の方へ駆けもどったが、いや駆けた、駆けた!町へはいったら、薩摩勢は退却中だという話しを聞きました。それからまもなく、東京から軍隊がやってきよって、それでわしらも仕事にありついて、兵隊にわらじを運んだね」
 「橋の上で殺されるのをあなたが見た人たちは、何という人?」
 「わからないね」
 「たずねてみようともしなかったの?」
 「へえ」 平七はまた額をふきながら、「いくさがすんでよっぽどたつまで、わしはそのことはぷつりともいわなかったからね」
 「どうしてね?」
 平七は、ちょっと意外だという顔をして、気の毒だといわんばかりににっこり笑いながら答えた。―
 「そんなことを言っちゃ悪いものね。―恩知らずになりますもの」
 わたくしは、真っ向から一本やられたような気がした。
 われわれはふたたび行をつづけた。

==========================

 やはり、文学作品は日本文学を志し、ある程度の修業を積んだ者がやるに限る。平井は永井荷風の直弟子で、師匠から破門された異端児である。ご覧の通り、腕は確かだ。




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#4108 学力崩壊のメカニズム:学力テスト総合B柏陵中学校 Oct. 19, 2019 [71.データに基づく教育論議]

 学力テスト総合Aは9月実施、柏陵中学校は釧路根室管内で入手できた18中学校では最下位だった。
*#4099 学力テスト総合A18校科目別データ Oct. 11, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-10-11


 10月に実施された学力テスト総合Bの結果データは次のようになっている。
柏陵中 5教科 国語 社会 数学 理科 英語
総合A 107.3 36.6 23.0 15.8 17.6 15.8
総合B 108.8 31.1 24.9 13.3 18.9 20.8
B-A 1.5 -5.5 1.9 -2.5 1.3 5.0

 国語と数学が前回よりも下がっているが、これは両科目の問題の難易度が総合Aよりも高かったためだろう。高いと言っても、道内の公立中学校で実施されている学力テストは、問題の難易度が低い。

 各科目60点満点、五科目合計点は300点が満点である。
 国語は20点以下が65人中18名で、27.7%を占めている。四人に一人が20点以下だということ、この得点層は、授業を聴いても内容理解に支障が生じている学力層である。語彙力不足で、先生が使う語彙を頭の中で適切な漢字に変換できない。「形容詞は名詞をシュウショクする」と先生が言っても、「就職?」どこへ?ってな反応になる。適切な漢字に脳内で自動変換できなければ、意味は伝わらない。
 この層は本を読まない生徒層と重なっている。小学校低学年では週に9時間国語の時間が配当されている。先生たちは時間が多すぎて持て余し気味だと聞く。ぜひ、毎週3時間、ルビの振ってある良質の日本語の作品の音読トレーニングに充当していただきたい。ルビが振ってあれば、斉藤孝『音読破シリーズ・坊ちゃん』でも古典の朗読でもいい。『論語』でも『往生要集』の中からピックアップしてもよし、中島敦の重厚な語彙がふんだんに出てくる作品でもいい。意味は分からなくていいのである。ようするに、正確に速く読めたらいい。文学作品なら、声音を使い分けてやってみるのもいい、言葉が体になじんでくる、そして知っている語彙数が数倍に増える。

<学力崩壊のメカニズム>
 数学が13点というのは2002年に東京から戻ってきて、11月に小さな私塾を開いてから、2度目に見た平均点だ。2017年に啓雲中学校の学力テスト総合Bの数学の平均点が13.3だった、弊ブログ#3630に書いてある。同じ年(2017年)の学力テスト総合Cの数学の平均点は10.9点、これがこの十数年間で最低記録だろう。今回の柏陵中学校の13.3点はおそらく釧路根室管内の18校中最低。まだ、5校しか集まっていないので、集まり次第アップする。
 5点以下が25人、38.5%もいる。三人に一人は5点以下ということ。入試は裁量問題だから、得点源で20点ほど配点されている「大問1」は出題されないから、5点以下の生徒たちは全員0点となる。20点以下は50人いて、76.9%を占める。定員割れで根室高校へは全入だから、生徒たちは来春から高校1年生だ。20点以下では、普通科の標準的な難易度の教科書は理解できない。四人に3人は数学の授業についていけない。だから、今年の2年生から、数Ⅱは選択科目になっている。来年は数Ⅱと数Bを選択する人数がさらに減りそうだ。点数の低い生徒へ数Ⅱを選択しないように「科目選択指導」を強めている。どうやら根室高校の数学担当の先生たちは匙(さじ)を投げたのだ。この学力低下と数Ⅱ選択科目化は何を意味するのだろう?根室高校普通科の生徒の半分以上がかつての根室西高校と同等かそれ以下となるということだ。廃校になった根室西高校では、数Ⅱ授業は必修科目でやっていたのではないか。根室高校では1年生の選択科目である数Aを2年生でやっていた。根室高校普通科卒業生の半数は2年後から、数学に関しては根室西高校生の学力以下ということになるだろう。選択科目となって新登場するのは「ベーシック数学」だそうだ。生徒たちの話では、中学数学の復習程度の内容だという。先生たちがそう説明しているのだろう。根室高校では、いま来年度の科目選択調整をしている。
 数Bを選択する数学力を仮に学力テスト35点以上とすると、65人中3人しかいない。根室市内全体でも15人前後だろう。35-40点はゼロ人、41-45点が2人、45-50点が一人である。50点以上がいない。50点以上がいないのがあたりまえになってきた。

 五科目合計点の学年トップは261-280点の間に一人、次が221-240点の階層に1人、201-220点の階層が4人いる。201点以上の得点は6人である。成績上位層が枯渇しつつある。五科目合計点が80点以下は27人、41.5%を占めている。60点以下に絞ると18人、27.7%である。四人に一人強が60点以下。
 こんなに成績下位層が膨らんでしまったのは、根室西高校が廃校になって3年がたち、成績下位層の生徒たちが「全入」であることを知ってしまったこと、そして根室高校で落第がないことを中学生が学習してしまったからだろう。学習意欲のない生徒が4割を超えてしまった。高校統廃合のしかたを間違えるととんでもない学力低下を引き起こしてしまう。わたしが古里に戻ってし私塾を開いてから16年たつが、この学校の一番よい時の五科目合計平均点は160点台であったいま100-110点の間であえいでいるように見える。昨年は100点を切ったことが数回あった

 学力の基礎をなすのは「読み・書き・そろばん(計算)」だから、国語と数学の得点が低いことは、それも釧路・根室管内で最低レベルということは由々しい問題である

 英語だけは問題の難易度が前回よりも下がったようで、5点アップしている。中標津広陵中は3.3点アップ、釧路市美原中は3.7アップ。18校平均値はこんなにアップしないだろうから、英語の地域間格差は少し縮んだらしい。それでも20点以下は31人、47.7%を占めている。英語が苦手の生徒には有効な対策が打たれていない。それは根室高校へ進学してからも変わらない。わたしは、英語が苦手な高校2年生5人に、毎週水曜日2時間の特訓補習授業を10回やっている、9回目が今週終わった。アレルギーはとれたようだ。英語の勉強を進んでするようになったから、いずれ効果は出てくるだろう。学校で同じことを放課後補習でやってくれたら、たくさんの英語が苦手の生徒たちを救える。小さな私塾が面倒みられる生徒数はたかが知れている。

 釧路で社会保険労務士事務所を運営し、明光義塾の教室5つを釧路と中標津で展開し、1年ほど前から「夕緋」という社名でイチゴ栽培事業を始めているM木さんは、五科目合計点が80点以下では、まともな職に就けないだろうと言っている。わたしも同じ意見である。理由は明快、上司の指示が理解できない、必要な資格がとれないからで、それではいくら人手不足になっても正規社員として雇われるのはむずかしい。非正規雇用で職を転々とせざるを得なくなる。子どもたちの将来にとっても、低学力化のこれほどの進行は脅威になる。非正規雇用から正規雇用に這いあがれなくなる。もちろん、地域の子どもたちの学力が下がると、そこから人材を採用している地元企業の体力も弱る、弱るだけならいいが、人材難からつぶれるところも多くなる。

 根室の大人のみなさん、子どもたちの低学力化の進行にもっと関心をもってもらいたい。
 教育講演会が二つ行われるので、ぜひ出かけてください。生徒たちも行って、大人の意見を聴いてみたらいい。

 #3630 学力テスト総合B:学力向上をどうやるか Oct.23, 2017
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2017-10-21-1


*#4107 教育講演会10/22・4時から市総合文化会館:鶴羽佳子 Oct. 19, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-10-19


**#4097 教育講演会開催10/28案内:大越拓也 Oct.8, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-10-08



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#4107 教育講演会10/22・4時から市総合文化会館:鶴羽佳子 Oct. 19, 2019 [55. さまざまな視点から教育を考える]

 標記講演会が根室西ロータリークラブ(平賀禎彦会長)主催で開催されます。講演タイトルと日時と場所は次の通りです。
●「子どもの自立と地域課題を解決できる対話力とは
●日時:10月22日火曜日 午後4時から
●場所:市総合文化会館


 鶴羽佳子さんは、北海道教育委員会・委員、フリーアナウンサー、札幌国際大学講師です。講師は美人ですから教育問題に関心のない人も出かけて、現役のフリーアナウンサーの話術に酔いしれてください。(笑)
 教育は子どもたちと根室の未来に大きな影響があります。この講演会で鶴羽さんは「地域課題を解決できる対話力」をテーマに挙げています。

 昨日、柏陵中学校の学力テストBの結果票を見ました。この学校はかつては根室の市街化地域の3校では一番生徒の学力の高かった学校でした。柏陵中学校の生徒たちの学力テストの結果データをみると、根室の教育の荒廃ぶりがわかります。五科目合計点の平均値が(300点満点)が108.8点、国語31.1点(各科目60点満点)、社会24.9点、数学13.3点、理科18.9点、英語20.8点でした。
 五科目合計点が80点以下は65人中27人、41.5%を占めています。
 数学がこんなに低いのは、わたしが根室へ戻って2002年11月に小さな塾を開いてから、初めてです。受験した65人の生徒の中で25人が5点以下です。38.5%を占めています。生徒3人に一人が5点以下です。成績上位層は根室から出ていき、ほとんど戻りません。根室を支える主力は成績中位そして下位層の生徒たちです。その平均値が著しく下がってしまっています。
 五科目合計点が80点以下の生徒は、就職できても上司の話が理解できないでしょう。学校の授業はもちろん理解できません。できないから80点以下なのです。高校生になっても予習ができません。教科書を読んで理解できないからです。国語の点数が20点以下の層が18人います、27.6%です。四人に一人が高校生になって教科書を読んでも理解できない、もちろん中学3年生のいまもできません。このような学力では、将来「地域課題を解決できる対話力」なんてもてるはずがありません。
 根室高校では来年から普通科2年生が数Ⅱ科目が選択制になります。このことは根室高校普通科の1/3がかつてあった根室西高校以下の学力レベルになることを意味しています
 子どもたちの学力は低下し続けて、深刻な状況です。大人たちは大丈夫かでしょうか?市立病院建て替え問題、毎年17億円の市立病院経営赤字問題、明治公園開発問題、市庁舎建て替え問題、そして教育問題、弊ブログで13年間4100本の記事をアップしてきましたが、じつに閉鎖的、根室の大人たちから対話力消滅がしてしまったかのような寂しい感じがしています。つねに閉鎖的な「市長の諮問委員会方式」での重大事の決定、ほとんどの市民が参加できません。公募するのは十数人の委員のうち2人のみ。結論ありきの誘導委員会、こんなことを続けているから、優秀な若者が根室の町に希望を失い、あきれてしまって根室に戻ってきません
 根室高校を卒業したら、首都圏の大学へ進学して、十年以上仕事をしてから視野を広げてもどってくる根室っ子がいて、地元でずっと生活している根室っ子たちと協力しないと、視野が狭すぎて地域課題の発見も課題解決もできません。対話力を失っているのは子どもたちだけではありませんよ、根室で実権を握っている50代60代の大人たちがまさしくそういう状態です
 ぜひ鶴羽佳子さんの講演を聴いて、教育問題に関心を高めてください。自分たちの町は自分たちでなんとかするしかないのです
 柏陵中学校の学力テスト総合Bの結果は、別途項を改めて取り上げます。



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#4106 Sapiens: p.8 The Cost of Thinking Oct. 18, 2019 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]


Mommals weighting sixty kilograms have an average brain size of 200 cubic centimetres.  The earliest men and women, 2.5 million years ago, had brains of about 600 cubic centimetres.  Modern Sapiens sport a brain were  averaging 1,200-1,400 cubic centimetres. Neanderthal brains were even bigger.  
  That evolution should select for larger brains may seem to us like, well, a no-brainer. 

 体重60㎏の哺乳類の平均的な脳の容積は200㏄、250万年前の人類は600㏄、これらに対して現生人類はⅠ200-1400ccもの巨大な脳をもっているのである。このデータには驚きだ。そしてネアンデルタールのほうがわたしたち現生人類よりも大きいのである。体格もよかった。ネアンデルタールは絶滅したのではなくて、わたしたちの中に溶けてしまったのかもしれない。日本人にはネアンデルタールのDNAが多く混ざっていることが化石のDNA解析でわかっている。
 sportが動詞で使われているが、これは辞書引かないと意味が分からないから、引いた。文脈からも意味の判断のつかない単語に出くわしたら、素直に辞書に訊く。目的語を伴っているから他動詞の項を見よう。
 sport:vt …をみせびらかす (ジーニアス4版) 
 sport: to wear or be decorated with something 
  …(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
 なるほど、何かで着飾って見せびらかすということなんだ。
 脳をひけらかすホモ・サピエンスの脳は平均で1200-1400ccあった。10万年前に6種のヒト属が地球上に暮らしていた時から、わたしたちと同じ脳容積を有していたのである。ネアンデルタールはそれより少し大きい、身体も脳も大きかったようだが、性質が平和的でおとなしかったのかもしれない。だから、ホモサピエンスに絶滅させられたのかも。でも、そんなことはSapiensには書かれていない。
 生徒から質問の出たのは一箇所だけ。一番最後の文である。


 こういうときは飾りを全部外してしまうとわかりやすい文になる。
  That evolution should select for larger brains may seem like a no-brainer. 
            S            V
 飾りの句を外した文を黒板に書いたら、生徒から、「[to us] がどうして飾りの句だとわかるのですか?」という質問があった。「経験の差だよ」と言っては身もふたもない。辞書の用例を見たらだれにでも判断がつく、[seem to be] [seem to do]  [seem like a 名詞句]はあっても[seem to us] はない。マドンナの名曲「Like a virgin」を知ってたらOKだ、知らない?そうか。
 では、ユーチューブのURLを紹介しておこう。2009年の収録、あのころはまだ若いね、世界一のセクシー・シンガーだった。
*https://www.youtube.com/watch?v=s__rX_WL100
 
マドンナ役にピッタリの女子高生がいても、学校祭のパフォーマンスでこの曲はけっしてやらないように、先生たちが卒倒する。(笑) 
 ジーニアスには「It seems like a good idea.それはいい考えのようだ」が載っている。そのまんまの用例だ。それよりは「She seems like a virgin.」「He seems like a cherry boy. 」のほうが覚えやすいだろう。(笑)

 主語が長いから、itで置き換えて、助動詞mayも取り払ってもっと簡単にすると、
 It seems like a no-brainer. (それは「脳なし」のようなもの=だれにでもわかることのようだ)

 ほら、そっくりになった、とっても簡単。


 高校英文法に戻って補足解説しよう。主語がthat節構造になっている。
 if evolution should select for larger brains のifがとれてthat節になったのではないか。should select のshouldは仮定法過去、条件節で用いられるshouldで、ほとんど可能性のないことを表す。進化が意志をもってより大きな脳を選択するわけはないので、shouldを使ったのだろう。[to us] は付加語で、「現生人類であるわたしたちはパスカルの言うように「考える葦」、そのわたしたちにとっては」くらいな意味合い。[,well,] も付け足しで、「えーっと」「うーんとね」という話を切り出すときに使う間投詞だろう。「どんなものかというと、えーっと、「脳なし人間」、要するに脳がなくてもわかるほど単純なことなんだな」ってな具合です。

 「(ありえないことですが、)進化がより大きな脳を選択しているということは、われわれ現生人類にとっては、自明のことのように思えます」


 no-brainer:(考える必要もないほど)明白なもの。(ジーニアス4版)
 something that very simple to do or understand (Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
 if...should: Michael Swan 'Practical English Usage' p.237, No.261-1

 翻訳文は、原文と同等程度の量に収めたいというのが出版する側の事情だ。原文の2倍もあるようなわかりやすい翻訳にすると紙代や印刷代も2倍になる。売れないということ。売れる価格帯を想定して、翻訳文の量が決まり、翻訳者に注文が出る。21世紀の出版事情、なかなかたいへんなのだ。そういう目で、翻訳者である柴田氏の訳文をお読みいただきたい。訳文を短縮するために、[to us] も [,well,]も端折っています。(笑)

「進化が大きな脳を選択するというのは、わざわざ脳を働かせなくてもわかることに思えるかもしれない。」柴田訳
  That evolution should select for larger brains may seem to us like, well, a no-brainer.


 こうして原文と並べ、長さを比較してみたら翻訳者の苦労がわかろうというもの。進化は大脳の大きさにこだわるようなものではないことを前提に置きながら、ハラリは現生人類の脳が大きいという事実を述べている。この訳文では進化が大きな大脳を選択しているかのようになっている。こうして意味がまるで違っているのを承知で仕事しなくっちゃいけない、プロってたいへんだな。


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わたしは版を継いで、かれこれもう40年間このスワンのこの本とお付き合いしていますが、また新しい版がでたようです。3版は'fully revised'でしたが、今回も全面改訂のようです。110頁増えて、768頁になっています。書かれている英文はとっても平易で読みやすいので、英語が好きな高校生と大学生そして社会人にお勧めします。わたしの示したページ数は第3版のものですので、悪しからずご容赦ください。
Practical English Usage, 4th edition: (Paperback with online access): Michael Swan's guide to problems in English

Practical English Usage, 4th edition: (Paperback with online access): Michael Swan's guide to problems in English

  • 作者: Michael Swan
  • 出版社/メーカー: Oxford University Press
  • 発売日: 2017/01/05
  • メディア: ペーパーバック

これも改訂版、4版です。わたしの持っているのはこれよりも古い「new edition」、引きやすくて便利です。ページ数は一緒です。書かれている英文はわたしにもわかる平易なものです。wellの用法はこの辞書と次にあげる辞書で確認しました。
Collins Cobuild English Usage: B1-C2

Collins Cobuild English Usage: B1-C2

  • 作者: Collins Uk
  • 出版社/メーカー: Collins Cobuild
  • 発売日: 2019/12/01
  • メディア: ペーパーバック







    この辞書と次の辞書は、翻訳家の柳瀬尚紀(根室高校の先輩)さんから、弊ブログ投稿欄で教えていただきました。英語に不案内なわたしはとっても重宝してます、宝物です。高校生や大学生には不要な辞書です。名辞典ですが、買い手が少ないので再版も増刷もされないでしょう。このシリーズで名詞辞典があることをいま検索していて知りました。
英語基本形容詞・副詞辞典

英語基本形容詞・副詞辞典

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 研究社出版
  • 発売日: 1989/04/01
  • メディア: 単行本
英語基本動詞辞典

英語基本動詞辞典

  • 作者: 小西 友七
  • 出版社/メーカー: 研究社出版
  • 発売日: 1985/06
  • メディア: 単行本

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#4105 英語が苦手の高2生のための短期特訓9th Oct. 17, 2019 [78-1Vivid 3短期特訓補習]

 早いもので、英語が苦手の高校2年生のための10回の特訓も来週で終わりである。毎週水曜日、2時間の補習授業を飽きもせずによくがんばった。来週こそは辞書を引いて予習してきてもらいたい。(笑)
 釧路の病院へ通院して休んだ生徒が一人いるので、少し丁寧に書いておく。

 使用しているテクストは、3年生用のVividⅢ、Lesson4、part3と4である。先週やったところpart2の受動態が関係があるのでそちらの解説からはじめたい。

(1) The cellphone recycling program at the zoos is run by Eco-Cell, a company that designs a program of encourageing organizations to collect old electronic products.


 普通なら、次のように能動態で書いたほうが主語が重くなくていいから、そう書くべきだが、なぜ受動態を使って書いているのか考えてもらいたい。
  Eco-Cell runs the cellphone recycling program at the Zoos.

 Eco-Cellという会社の説明を続く文でしたいから、受動態を選んだのである。このほうがつなぎのよいことは能動文を先頭に置いてみたら、一目瞭然である。
 一般に受動態は、動作の主体に興味がないか、あえて言う必要がない場合に用いられるが、そのほかに文の前後関係から、この場合のようにつなぎが自然になる場合に採用される。江川泰一郎『改訂三版・英文法解説』にしっかり載っていたので驚いた。高校英文法解説書でもこういうことに言及しているものがある。英作文上、必要な知識であることは言うまでもない。

 この文に続く、次の文も、同じ理由で受動態が選択された。
(2) The collected phones are sold to refurbishing companies.
  Then these companies resell the phones in developing markets, such as Africa and Latin America.


 すべての文、そしてすべての節構造は文型を生徒たちに問う。3番目に挙げる文の文型はまぎらわしい。

(3) Eco-Cell sets up a collection point at the front gates of the zoos, and invites people to bring their old cellphones.

  [set up]は句動詞だから、これはⅢ文型である。[a collection point]が目的語になっている。前置詞句ではない。

 さて昨日の授業は、part3からである。

(4) And there is still another serious problem: the illegal miners kill animals, including gorillas, for food.

  [there is ~]は新情報の提示である。「別の問題がある」と述べて、具体的に[:]以下で補足説明している。

 その次の文のthat節の文型を生徒たちに訊いてみた。
(5)  It is said that  the conflict, the illegal mining, and the growing "bush-meat trade" have all led to a dramatic decline in the eastern lowland gorilla population.


 正解者なしだった。主語がやたら長いのである。[the conflict]は第2段落に書いてあった[the civil war内戦]の言い換えである。key wordはこの語のように、言い換えるのがあたりまえの作法だ。haveの前までが主語である。
 populationは「人口」とは訳さないでもらいたい。ゴリラなのだから「生息数」がふさわしい。「生息数」よりも「棲息数」を選びたい。生きている数ではなくて棲んでいる数と思うからだ。微妙にニュアンスが違う。
 次の文も文型を間違えやすい。
(6) The cellphone recycling program at zoos is effective because many people visit there.

  主節は2文型で誰も間違えないが、because以下の従属節は間違えやすい。there=at zoos と取ったらアウトである。there=zoosなのだ。だから、ここは3文型。
 I visit my aunt every summer. 
 I went to Kusiro last week. I bought some cloths there.

  「go+to+行先」であるのに対して「visit+目的語(行くところ)」である。visitは他動詞なのである。

(7)  Acutually, there is something more about the program.

 新情報提供の「there is ~」の肯定文だが、次のような文もある。

 Tell me if there is anyone who can speaks Spanish well.
  (だれかスペイン語を上手に話せる人がいたら教えて)

  anyは開いている、この文例では「誰でも構わないから、スペイン語上手に話せる人いたら教えて」
 この文例でsomeoneを使うと、「誰かいるでしょ、スペイン語上手に話せる人教えて」というニュアンスになる。
 「肯定文ではsome、疑問文ではany」というのは中学校まで。ニュアンスの違いをしっかり押さえよう。
 

 この文のあとに倒置文が出ている。

(8) "The objective is coservation education," says Sharon Dewar, a spokesperson for the San Diego Zoo, one of the Zoos carrying out this program.


 Sharon Dewar に関する補足説明を付け加えたいので、倒置している。文のつなぎへの配慮である。受動態の文例で示したことと同じである。
 「one of the Zoos carrying out this program」は直前の[the San Diego Zoo]の補足説明。

(9) Many people have old cellphones at home, and they don't know what to do with them.

 生徒たちはこの文が訳しにくかったようだ。中学生のときに習った「疑問詞+to不定詞」は覚えていた。
 I don't know what to do.(何をしていいのかわからない)
       〃            where to go.
       〃            when to go.
       〃            how to do.

 (家に古い携帯電話をそのまま家に置いている人多いいが、それをどう処分してよいのかわかっていない)

 知っていることと、使えることには距離があるから、さっそく埋める努力をしてもらいたい。

(10) Dewar says that the users should know this: cellphones contain dangerous elements, so they mustn't be thrown into a landfill.


 elementsは辞書を引かせた。「要素」と誰かが言った。もう少し考えてもらいたい。ここでは「元素」なのだ。theyは直前の「dangerous elements」と「cellphones」の両方の可能性があるが、わたしたちが捨てるのはcellphonesである。面白いのは、捨てるというのを、英語でも「投げるthrow」という語を使うということ。北海道弁と一緒だ。(笑)

(11) Now it's your turn to take action.  Cellphone campanies have also started programs to collect old phones, so it is easy to have yours recycled.


  「it's your turn:あなたの番です」は決まり文句だから、とっさに出るように30回口ずさんで覚えてしまおう。ここで大事なのは使役のhave。使役は「Oに~させる、Oに~してもらう」、受け身・被害は「Oを~される」(同書P.200、284)
 I had my bicycle repaired/stolen.  ⇒ My bicycle was repaired/stolen.


<受動態の文の補足>
 受動態の文はすべて1文型であったが、実際には3文型のものもあるので、簡単に説明しておく。
 4文型動詞の場合には受動態が3文型になることがある。
1.My aunt gave me this watch. (叔母がこの時計を私にくれました)
   (a) This watch was given to me by my aunt. Ⅰ文型
   (b) I was given this watch by my aunt. Ⅲ文型


2. She bought Jill a new sweater. (シルに新しいセータを買ってやった)
   (a) A new sweater was bought for Jill. Ⅰ文型
   (b) Jill was bought a new sweater.  Ⅲ文型

      …同書p.267 

 
 なお、Ⅴ文型の文は受動態にするとⅡ文型になるから、やって確認してみたらいい。


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