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#2331 中学時代に成績上位層(15%)なら高校でトップを狙え Jun. 15, 2013 [62. 授業風景]

【トップを狙え】
 高校の前期中間テストが先週終わり、結果の報告を聞いているが、2年の生徒が数ⅡとB(百点)の両方学年トップだったと笑顔をみせた。トップははじめてだからうれしかったのだろう、素直でいい。
 この生徒は文科系志望である。中学時代は学力テスト総合ABCの数学の成績はいいときで70%だったから、それほどいいほうではないが数学が好きだったとはいえる。
 自分でガンガン予習するタイプではなく、どちらかと言えば、わからないところがあると立ち止まって考え込んでしまうタイプの生徒である。しつこく考えるのは苦手で丸投げの質問をよくする生徒だった。時間をかけるとこういうタイプが案外伸びることがある。数学はセンスがよくないとだめだが、そればかりでもないから教える側は面白い。

 中学時代にとくに人目を引くような目覚しい成績がとれなくても、高校に入学してからじっくり勉強すれば根室高校普通科なら学年1番がとれるようになる、つまり「中の上クラス」なら誰にでも学年1番のチャンスがあるということだ。1番とれないと思ったらとれないが、いつかとってやると思えばなんとかなるものだ。
 厄介なのは一番をとれるはずがないと自分の心にカギをかけている生徒である。そこから引っ張り出さなければならないが、無意識層まで侵食してしまっている思い込みを外すのに1年以上かかる。それがいったん外れてしまえば、自分を閉じ込めていた「檻(オリ)は」消えてしまう。不思議なことだが、思い込んでいるうちはそれは現実に在るのだ。「あいつは特別だから俺はあいつを追い抜けるはずがない」と決め込んでいる者が多い、そうではないぞ!

 もう大丈夫だからこれからは難しめの問題ととことん格闘したらいい。実績が出せたら確固たる自信が生まれる、その自信は次の戦いで大きな力を与えてくれる。不思議なことだが、トップ争いをするのがあたりまえに思えるようになる。
 競争を勝ち抜き自信を得た者たちが切磋琢磨して、成績上位層の点数が底上げになるのが理想だろう。
 
 数B のベクトルはこれからむずかしくなるし、数列が出てくる、数Ⅱはこれから面白くなるので、問題集のレベルを上げて勉強するように伝えた。
 高校時代にがっちり勉強したら柔軟な頭はぐんぐんよくなる。脳みそは筋肉でできているのではないかという気がするよ、君らの脳みそは使えば使うほど発達するからだ。(笑)


(ここまでは昨夜書いて、前回ブログ「ざりがに探偵団」の前フリとして挿入していたが、書き足さねばならないことを思いついたので、別立てにした。)

【生徒の面白い疑問】
 この生徒をγ(ガンマー)君と名づけよう。γ君の質問が1年ほど前から変化し始めた。根本的なところに疑問が湧くようになったのである。最初のうちは自分で考えるのが面倒で先生の私に"丸投げ"、自分で解決しようという姿勢が見られなかったので、教え方を少し替えた。少し説明しては、こちらのほうから質問して事柄の理解に参加させるようにした。「ソクラテスの対話」風の遊びをしていたのかもしれぬ。
 最近の質問を紹介しよう。
「ベクトルの内積がわからない、先生教えて」
 これをわたしは「丸投げ」と呼んでいる。抽象的な質問を具体的な質問に変えるために何が分からないのか説明してご覧と質問内容のブレイクダウンを要求して、何が分からないのかを確認する。
 いくつかやり取りがあって「コサインの式で内積が表示されるのはなぜ?」というところまでブレイク・ダウンがなされる。
 そこで余弦定理をベクトルで表現するとどうなるか、座標平面上の位置ベクトルを定義して説明をはじめる。ここで右辺にコサインの式が出てくる。
 つぎに、ベクトルABをベクトルaと・・・面倒だからベクトル記号の替わりにvを使う、ベクトルaはvaと表示する。vABの長さを|va-vb|で定義してその平方を代数的に展開してみせる。展開式の中にvaとvbの内積が出てくる。余弦定理の式と比べてみたら、内積とコサインの式が一致しないと等式が成り立たないことが理解できる。
「わかったけど、わかりません」
 そこでまた説明をはじめる。
「「数学の拡張」がなされているのだよ」
 余弦定理を平面ベクトル上で定義すると内積がコサインで定義できるということだ。言い換えると余弦定理がベクトルに拡張されたということ。中学校のときに無理数が出てきて実数が定義されただろう。四則演算が有理数から無理数を含む実数全体に拡張された、似たようなことが余弦定理をベクトルで表現することで新たな概念「内積」が定義されるんだ、面白いだろう。そういう風にして君達の扱う数学の世界が広がっていくんだ。内積は外積とセットの概念だが線型代数で出てくるから、そのときまで内積に対する疑問をもち続けたらいい。そのうちに説明するかもしれない。

「先生、もう一つ質問があります、内積の図形的な意味がわかりません」
 座標平面状で位置ベクトルを定義して内積の図形的な意味を解説する。次いでだから正射影の説明もしておく。内積がどういう線分の掛け算になっているのかは理解できたようだが、結局、また元に戻る。
「内積ってなんだろう?」
 螺旋の上昇運動を平面図に移すと円となる、ようやく一回りして出発点に戻ったことになる。しかし、レベルは一段上がっているから、そのうちに見える風景が違うことに気がつくだろう。
 さて、どうやら四則演算の積と内積の関係がわかっていない様子だ。
 この数ヶ月間連続して根本的なところに漠然とした疑問がもてるようになってきたのはうれしい変化である。根元的な問題へ疑問が向かうようになってきたから、数学の感覚がよくなってきている。学問をするためにはこういうことが本当に大事なことなのだ。
 方向と長さを持つベクトルに通常の掛け算が定義できないことを説明した。そこでベクトルの掛け算である内積が出てくる。しかもそれはスカラーとして定義できる・・・
 こうして対話は繰り返される。こういうスタイルで個別指導がしたかった、それで50歳前半でふるさとに戻った。パトリオットのebisuである。
 この辺り(「対話」による授業スタイル)は個別指導の強みだ、生徒の興味にあわせて対話をしながら授業を進められる。授業では同時に数人の質問を捌いている、これはこれで集団指導とはことなる種類の技である。一緒に説明を聞いてライバルの疑問を消化してみることも、いい勉強になるはず。

【対照的なもう一人の生徒δ(デルタ)君の場合】
 彼は入試直前の3ヶ月で5科目総合点が80点ほど伸びた生徒だ。いわゆるセンスがいい生徒だが、自分のそうした資質に気がついていなかった。気付きを起こさせるのもこちらの役割。いったん上がってしまったらしめたもの、そこがベースラインとなってしまうから不思議だ。かれは1年のときの総合成績がクラストップだった。中学校の成績からはちょっと考えられないだろう。当の本人が一番驚いていた。
 δ君は理解が速いのでγ君のような質問が出ない。自分で予習して勉強できるタイプである。中3のときから塾にきていたので、意識してそういう切り替えをさせた。素直なのですんなり受け入れた。やっかいだったのは小学校時代からその生徒よりいい成績の友人がいたこと。郡部の少人数のクラスでは順位が固定化しがちである。「オレはあいつには勝てない」と思い込んでいたのは無理もないことで、勝ったことがなかったのだという。「檻」からだすのに手間がかかった、ほぼ10ヶ月費やした。自分の檻を出たかれは潜在的にもっていた力が出始めているといえる。学校レベルの数学では満足できなくて、センター試験レベルを少し超えた問題集をやらせている。テスト前の一月は2次関数の問題をやっていた。2次関数の概念を深くとらえていないとできない問題が並んでいる。2次関数は2年の三角関数や指数関数、対数関数で複合問題として使われることが多いから、これらのところに入る前にブラッシュアップしておいたほうがいい。特に指示したわけではないが、今月下旬に予定されている模試対策として2次関数の章から問題をやっていた。
 はっきり差があった二人だが、一年の学年末テストの辺りから逆転現象が起きはじめる。成績を競いだしたγとδ、どちらがより大きく飛躍するだろう。塾先生は楽しい。

(6/17追記 δ君は物理を選択しているが99点で学年トップだったと喜んでいた。「数学はγに負けました」と脱帽の体、素直な奴だが模試対策は手を抜いていない。γ君よりも一段上のレベルの問題にチャレンジしてきた。)

【根室高校普通科の偏差値はいくつか?】
 偏差値を並べてみる。

  根室高校普通科 45、商業科と事務情報科 40
  根室西高校 36
  釧路湖陵普通科 56、理数科 67、
  釧路江南 50、

 昨年検索したときには根室高校普通科は42だったが、今年3月の入試は10人定員オーバしていたから偏差値が上がったのだろうか?実際の入学者の学力はこの3年ほど下がり続けている。
 母集団は全道の高校だろうから、全国偏差値はもっと低いことになる。

 話しを分かりやすくするために全道の高校を100校とすると
  根室高校普通科 69位、商業科と事務情報科 84位
  根室西高校普通科 92位
  釧路湖陵普通科 28位、 理数科 4位
  釧路江南 50位

 進研模試で根室高校普通科の数学の平均点は20点台である。釧路湖陵普通科の平均点は知らないが、50点に近いのではないだろうか。

【学校の定期テストと全国模試の問題には難易度に大きな差がある】
 根室高校普通科で進研模試で全国偏差値が50を超える生徒は科目別にみても120人中10人前後だろう。定期テストで学年トップをとれても、それは難易度が低いテストだからで全国模試レベルの問題で高得点が取れるわけではない。マジメにコツコツやれば定期テストでは90点とか百点をとれても、全国模試では70点を超えるのは至難だ。センター試験レベルの問題をやらないと70点を超えることはできない。
 副教材に使っている問題集・通称「3トラ」とはレベルが違う。学校の先生たちも頭の痛いところだろう。根室高校普通科の数学の授業は偏差値40~45くらいのレベルに照準を合わせているようにみえる。偏差値50以上の大学受験には間に合わぬというのが現実。
 最近模試の点数分布を見ていないが、根室高校普通科で進研模試で数学が50点を超える生徒は5人/120人くらいなものだろう。
 全国的に名前の知れた大学は偏差値50以上で、知名度の高いところは大学入試偏差値が55以上である。

【中学校時代に全国レベルを知るべき】
 ふるさとに戻って塾を開いて10年がたったが、生徒達を観察していてつくづく感じることがある。田舎なのだ。根室の生徒達は根室高校普通科へ進学して全国模試を受験するまで全国レベルを知らない。これが大学受験では決定的な差になってしまう。高校2年頃になってから勉強し始めたのでは勝負にならぬ。中学時代に全国レベルを知ったら、中学時代から猛烈な勉強を開始する者たちが出てくるはずだ。
 私たち大人は根室に生まれ育つ子供たちに中学校時代に全国レベルと己の学力の差を自覚させてやる義務がありはしないだろうか?学力の地域格差は現実なのだ。高校を卒業したとたんに生徒達は全国レベルの競争に投げ込まれる。

 北海道の公立中学校の学力テスト問題が簡単すぎることに加えて、結果の偏差値情報がないから、自分の学校のレベルを知ることができない。
 わたしは20代の後半に東京の進学塾で3年ほど教えたことがあるが、当時の東京都の公立中学で実施していた業者テストには東京都の偏差値、学校ごとの偏差値、学校単位の平均偏差値などが個人票に出力されていたので、それが進路指導に有効に使われていた。
 北海道の公立中学が実施している学力テストは全道平均点の集計すらしていない。こんな遅れたデタラメなやりかたでやっているのだから、学校現場に全国レベルを意識した学力の向上なんて先生たちの意識の外だろう。
 偏差値情報がでるような業者テストをやらないとダメだ。

【ガラパゴス系の北海道文協テスト】
 全道の中学校が採用している「北海道文協テスト」は偏差値どころか平均点も計算していない。いまどきこんな時代錯誤な学力テストを恥ずかしげもなく実施しているのだから驚く。
 コンピュータにデータを入力して平均点や偏差値を個人票に出力するのがあたりまえだろう。しかしこうすると、学校別・科目別の情報が学校の外に出ることになる。文科省が全国一斉学力テストデータを公表しないのは組合との摩擦を避けたいからだろう。
 よく考えてみてほしい、何万人も受験しているテストの平均点や偏差値情報がないということはたいへんな時代錯誤ではないだろうか。高校では全国で30万人を超える高校生が進研模試に学校単位で参加している。全国偏差値情報ナシには進路指導ができないからである。

 根室のこどもたちは、高校に入学してから全国模試で自分達のレベルをはじめて知ることになる。だから、学力テストで450点(500点満点)レベルをとっていた学年トップクラスの生徒達は北大受験が可能だと漠然と思い込んでいる。450点超で全国偏差値が50~55くらいであるから、とてもそれまでの勉強方法を続けたのでは北大レベルに届かないから、偏差値65を目標に勉強の仕方を組み立てなおさないといけない。偏差値55以上の有名私大受験でも同じことが言える。
  数学に限った話しだが、根室高校普通科で5%くらいは1,2年のうちにセンター試験レベルの問題集に取り組む生徒がいる。模試の得点から考えて、多い年でも10%を越えることはほとんどないだろう。
 現実を知るのが高校の全国模試なのだが、根高の平均点が20点台であることを知っても、対処方法がわからず問題集「3トラ」と「夢単」の暗記に追われて一年間があっという間にすぎる。センターレベルの問題に2年生のうちにトライする生徒はマレである。

 北海道文協テストが癌である。根室市内の平均点や全道平均点そして偏差値の出力される学力テストに切り換えるべきだという声が中学校の先生からでてこないのが不思議だ。
 先生たちは大学入試のときに全国レベルの模試を受けている。個人結果表にはかならず全国平均点や全国偏差値、校内偏差値、学校の平均偏差値などの数値が並んでいたはず。
 自分の学力の測定や受験にたいへん役に立ったのに、自分が教えている中学生にそれをしてあげないというのは卑怯だ

 市教委や中学校の先生たちはガラ系の北海道文教テスト廃止の声を上げるべきだ、そして偏差値表示のある業者テスト導入を叫ぶべきだ。道教委はそういう動きをバックアップすべきだ。

【一番勉強しやすい季節に遊びが続く不条理】
 もう一つ拙いことがある。前期中間テストが終わる(先週6/7)と、7月初旬の学校祭までパフォーマンスの練習等で放課後がずっと拘束されてしまう。全学年のクラス対抗だから参加しないと「裏切り者」になりかねない、孤立することを恐れるねむろっ子はせっかく定期テストで勉強に弾みがついているのに急ーブレーキがかけてしまうのである。
 1ヶ月間も学校祭の準備に放課後を費やし、それが終わると球技大会、そして7月のお盆と港祭りと花火大会、それらが終わると金比羅さんのお祭りの練習が本格化し、8月9、10、11日の本番だ。9月には蟹祭りとさんま祭りがある。

 結局、根室の高校生たちの大半は、根室の気候が一番いいときに勉強に集中できないのである。こういう流れを断ち切る必要がある。

【対策と効果:集中的な勉強がよい頭をつくる】
 根室高校の学校祭をテスト終了2週間後に設定したらいい。それでできないならクラス対抗のパフォーマンスはやめにする。
 学校祭が終了したら、センターレベルの問題の進学講習会をセットしよう。
 夏休みを挟む数ヶ月間は狂ったように勉強してみたらいい。柔軟な脳は刺激を受けてニューラルネットワークを広げていく。なんてことはない、頭がよくなってしまう、本当の話だ。


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δ君がやっている問題集
 基礎的な概念とその周辺をどれだけ掘り下げてつかんでいるかをチェックするにはいい問題集である。

センター試験突破問題集数学I・A―元センター試験作問委員がズバリ予想する!

センター試験突破問題集数学I・A―元センター試験作問委員がズバリ予想する!

  • 作者: 佐藤 恒雄
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 単行本

数Ⅱ・Bも同じシリーズの問題集が出ているが、学校と同時並行でやりきれるだろうか?夏休みの課題かな。独力で「3トラ」を全部やりきってからでないと無理だろうとは思うが、瓢箪から駒ということもある。生徒には突然の伸びがあるからやってみないと分からぬ。一人一人乗り越えるべき課題が違う。

センター試験突破問題集数学II・B―元センター試験作問委員がズバリ予想する!

センター試験突破問題集数学II・B―元センター試験作問委員がズバリ予想する!

  • 作者: 佐藤 恒雄
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 単行本


この問題集は眼を通していないので、論評しない。出ていることを知らなかったのだが検索したらでてきた。
センター試験で必要とされる力〈数学II・B+I・A〉―元センター試験作問委員がズバリ教える!

センター試験で必要とされる力〈数学II・B+I・A〉―元センター試験作問委員がズバリ教える!

  • 作者: 佐藤 恒雄
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2006/04
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#2314 三角比の問題 生徒からの質問:小平邦彦の数学教育論:  May 29, 2013 [62. 授業風景]

 今夜は11.6度、今年はじめて夜の気温が10度を超えた。庭の千島桜は昨日一厘花びらをつけてから、その数を増している。根室もようやく春だ。

 根高普通科3年生の看護師志望コースで使っている問題集は『新編 数学1Aの重点整理』(正高社)、「問題解答」を含めて96ページ、薄くて使い勝手がいいとは生徒の弁。学校では別冊の『解答解説集』は生徒に渡していない。こちらを見てしまったら力がつかないとの判断なのだろう、その通りだと思う。
 複数の生徒から昨日の授業で7題質問があったうちの一つを紹介して、小平邦彦の数学教育論にまで言及してみたい。

202 半径2の円周上に3点A、B、Cがあって、弧AB:弧BC:弧CA=3:4:5のとき、△ABCの面積を求めよ。

 どうやったらいいのかわからないというので、「円周角が出るだろう、円周を3+4+5=12に分割したのだから」。
 そのあとが分からないというので、問題文をもう一度読むようにいう。
 「半径というのは外接円の半径のことだよ」というと、「あ、正弦定理で辺の長さが出せるんだ」と気がついたので、「やってみたら」と促す。
 ここには問題文の読解力の問題がある。「半径2の円周上に3点A、B、Cがあって」という文を「外接円の半径が2の△ABCがある」と読み替えができるか否かということ、これができないと正弦定理を使う問題だということに気がつかない。もろもろある定義や定理に問題文を読みかえることができるかどうかという能力は国語力と思考力の問題なのだ。

 中学数学に比べて高校数学は問題文の読解能力が倍くらい要求されるのではないだろうか。だから、比較的レベルの高い本を含めてそれまでに積み重ねた読書量が武器となる。本を読んでいない者は国語はもちろん点数が低くなるし、母語の能力が低ければ、英語も伸びが止まってしまう。高校時代に英語の能力が伸びる生徒は国語の能力が高い者に多い。

 大学受験を考えると、根室高校普通科の授業速度は遅すぎる。だから、予習方式で自力で勉強して、センター試験レベルの問題をこなす必要がある。根高普通科ではセンターレベルの問題を扱うのは3年次である。さて、1年次でセンターレベルの問題をやるとして、まずは教科書を予習して理解し、教科書準拠問題集、通称「サントラ」の問題を全部解かなければならない。それを理解した後でないと、センターレベルの複合問題に対処できないだろう。
  数学に限らず、教科書は日本語で書かれているから、日本語の読解力がある程度高くないとどの教科も教科書を予習して理解することができない。日本語の読解力がすべての教科の学習の基礎的な力、根元力となっているのである。
 小学校や中学時代に、児童書から大人の本へと質的に高いレベルの読書へ転換を遂げた者は高校時代に本格的に受験勉強に取り組むと大きく成績を伸ばす者が多いのはあたりまえのことだ。江戸時代から言われている学習の王道、「読み・書き・そろばん」は重要な順序で並んでいることにあらためて気がつく。

 さて、質問した生徒は計算を進めていたがシャーペンが止まっている。どこがわからないのかノートを見ると、弧の長さの比からそれぞれの円周角はきちんと計算されていた。図に角度が書き込まれていた。この作図能力も問題文の読解に重要な役割を果たしている。概略図がポイントを外さずに描けると、問題文に隠されている条件がはっきり読み取れることが多い。
 円周角を出した後に正弦定理で各辺を出そうとしたが、∠Bが75°になっていて対辺のACの長さが出せない。ACが出せなければ面積計算に∠Aも∠Cのsinも使えない。(∠Aは60°、∠Cは45°だから、辺ABと辺BCは簡単に計算できる。)
 さて、どうしたものか、ここで立ち止まって全体を見渡してみる。ACを組み込み余弦定理の公式を使う方法と三角関数の加法定理を使う方法がある。sin75°くらいは答えを憶えてしまっている生徒もいるだろう。加法定理で計算しても1から2分で計算できる。
 小学生や中学生での計算トレーニング不足はできのよい生徒にも起こりがちの現象である。少しやったら理解できたと思い込んで練習量を増やす努力を怠ってしまう、充分だと思い込むのである。ところが、計算トレーニング不足は高校生になってからその副作用が出るから、気がついたときには取り返しがつかない。やはり、計算力を磨くべき旬の時期があるから、そのときに充分な練習量を積むべきである。数学者の小平邦彦がそういうことを繰り返し主張している。

 ACの長さは無理数になると予測できるから、余弦定理を使った二次方程式は計算に手間がかかる。実際に方程式を作ると1次の項の係数が無理数になる。計算力に自信のある生徒は力任せに強引に解いてもいい。しかし、加法定理を使ったほうが計算がずっと簡単になる。
 生徒は余弦定理を使って2次方程式を解きあぐねていた。中学校時代に計算トレーニングが足りなかったようだ。加法定理を使ってsin75°を計算して見せた、あとは簡単だ。

 面積を計算し終わってから問題集の解答を見たら、円周角ではなくて中心角を計算して、中心角の三角形三つに分割する方法が示されていた。各三角形は中心角をなす角とすると、半径が角を挟む辺となっているから、半径を等辺とする二等辺三角形が3個だ。計算はこれが一番簡単で速い。
(だからといって問題パターンごとに解法を覚えるようなことは成績上位層には薦められない。高校数ⅠAと数ⅡBの問題を分析して500パターン以上に分けて解法を覚えるような参考書もあるが、バカバカしくて感心できない。そんな能力をセンター試験が求めるのはナンセンスである。これが作問委員を長年やったことのある人が出しているシリーズ物の数学参考書なのだから、この国の数学教育は危ういと言わざるをえぬ。)

 行き詰って解答を見てしまうと、たいていは最短距離で解く方法が説明されているから、生徒は試行錯誤の機会をなくしてしまう。数学の力は試行錯誤を繰り返すことで身につくものだから、成績上位層の生徒、上位5%くらいの生徒は解答を一切見ないで独力で解き切ったらいい。そうしたほうがはるかに力がつく。試行錯誤をしているうちに知識の整理と体系的関連についての理解が深くなるから、時間がかかっても自力で解くのがベストである。
 平均以下の生徒はそんなことをしても時間の無駄だから、さっさと解答にある解説を読んで、繰り返し書いてみて、解き方を覚えてしまうことを薦めたい。

 将棋の羽生善治が江戸時代の将棋難問100題が載っている『将棋図巧』と『将棋無双』の両方を自力で解ければ、プロ4段の力があるとどこかで言っていた。羽生は一月ぐらいで全問解いたとテレビで言っていたことがあったような気がする。
 何も見ずに、誰にも聞かずに独力で解くことで本物の力がつく。ひっくり返すと、解答の説明を参考にしながら解いたのでは、真の力はつかぬということ。成績上位5%層に属する者はできるだけ問題を自力で解け。1時間でも1週間でも1ヶ月でも考え続ける体験をしておくべきだ。社会人となったときに、そういうトレーニングの積み重ねが絶大な力を与えてくれることに気がつくだろう。たしかな応用力も創造力もしっかり身についている。だけど、アマチュアが自力で江戸時代に作られた「難問題集」を解く必要はまったくないのである。

 さて、小平邦彦の論を『怠け数学者の記』(1986年刊、岩波書店)から引用して、小平が小中高の数学教育をどのようにとらえていたのかを紹介したい。実にまっとうな数学教育論が展開されている。

数学は文字通り数の学問であって、その基礎は何よりもまず数の計算である初等教育において最も大切なことは、子供のときに習得しておかなければ、大人になってからではどうしても覚えられない基礎的学力と、大人になってから習えば簡単に覚えられる技能をはっきり区別して、基礎的学力の訓練に重点を置くことである
 数の計算は子供のときに繰り返し練習して、習得しておかなければ大人になってからではどうしても覚えられないが、数学者が常識として必要な程度の集合論は、大学にはいてから二時間も講義を聴けばすぐに覚えられる。・・・数学的思考力の基礎をなす数の計算とは別な、何か高尚な数学的な考え方があると思うのは数学の本質に関する誤解であろう。」(同書130ページ)

「数学における論理も同様で、われわれ数学者は数学を学んでいるうちに、自然に論理を体得したのであって、数理論理学の専門家を除けば、あらためて論理学を学んだことは一度もない。現行の指導要領によれば高校1年で論理を教えることになっているが、数学者も学んだことのない論理を何故高校生に教えるのか、これまた不可解である。」(同書132ページ)

「数学の初等教育の目的は数学のいろいろな分野の断片的な知識を詰め込むことではなく、数学的思考力数学的感性を養うことにある。このためには範囲を数学の最も基本的な分野に限って、それを徹底的に教えるべきである。小学校では数の計算を、中学校では代数と幾何を、高校では代数、幾何と微分積分の初歩を、自由自在に使いこなせるようになるまで徹底的に教えることができれば、初等教育としては大成功である。」

「確率、統計等の応用分野は必要なときに勉強すれば、大人になってからでも覚えられるものであって、そのときには生半可な入門知識よりも基本的分野の学習で養った強靭な思考力、鋭い感性のほうがはるかに役に立つのである。」(同書132ページ) 



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【余談】
 そろばんは日本の伝統文化である。1960年代後半から電卓が普及し始め、珠算塾が姿を消していった。そうして基礎計算力が落ちた。小学生のときに珠算を習わせることは反復トレーニングの素晴らしいツールだったのである。珠算が衰退するのと入れ替わるように百枡計算トレーニングが流行っていった。どちらがすぐれているかはいうまでもない。計算力をテストすればいい、結果は比較にならぬ。伝統文化のソロバンを見直すべきだ。

 「釧路の教育を考える会」が基礎学力問題を取り上げている理由は小平邦彦と同じだ。「読み・書き・ソロバン(計算)」の重視、繰り返しトレーニングして身につけることの重要性を説く。釧路市の「基礎学力保障条例」もそうした狙いをもって制定された。

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*小平邦彦 ウィキペディアより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E5%B9%B3%E9%82%A6%E5%BD%A6
小平 邦彦(こだいら くにひこ、1915年3月16日 - 1997年7月26日)は、日本の数学者。 東京都出身。

農政官僚だった小平権一の長男として生まれる。旧制松本中学(長野県松本深志高等学校の前身)、東京府立第五中学(東京都立小石川高等学校の前身)、第一高等学校 (旧制)を経て、東京帝国大学理学部数学科および物理学科卒。

20世紀を代表する数学者の一人。数学界のノーベル賞といわれるフィールズ賞1954年に日本人として初めて受賞(調和積分論、二次元代数多様体(代数曲面)の分類などによる)。

1990年代前半まで、東京書籍が発行した算数・数学教科書(新しい算数、新しい数学等)の監修も担当していた。

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*#559フィールズ賞受賞数学者小平邦彦の教育論
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-03-28

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怠け数学者の記 (岩波現代文庫)

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  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/08/17
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#2238 勉強に熱が入りだした中3は学力がうんと伸びる(3):高校入試五科目80点アップはできたか? Mar. 6, 2013 [62. 授業風景]

 昨日(3/5)に道立高校入試があった。今日は面接試験だ。
 試験が終わって、中3が二人来た。
「先生、聞いて、英語が超簡単だった!

 長文問題が1題のみ、例年と出題傾向が変わり、並び替え問題も出たが「チョーカンタン」だったのだそうだ。出題傾向が変わっても動じずに対応できるのはやはり力が上がっているからだ。東京都立の入試問題を5年分みっちりやって量の多い長文問題になれていたから時間が10分ほど余って見直しできたんだと、うんうん、よかった。
 もってきた問題用紙を見ながら正答例を挙げてチェックした。一人は初めて50点を超えたようだ。60点満点で50点を超える科目があると自信になる。英語が大の苦手だったもう一人も予定通り40点付近のようだ。
 二人で黒板に科目ごとの予想点を書いていったら、学力テスト総合ABCの平均点に比べてどちらも80点アップ。9人中2人が80点アップするのははじめてだ。昨年は70点あげて240点とった生徒が一番だったが、今年は二人が80点アップになりそう。
 「糠喜び(ヌカヨロコビ)ということもある、自己採点が終わってみないとわからないぞ」
 「先生、ビデオとってあるから、家に戻って自己採点するね」

 そう言い残して、すぐに帰った。

 この二人は勉強の楽しさ、勉強すればテストの点数が飛躍的に伸びることを実感しているから、春休みも勉強の手を抜かないだろう。
 高校こそが本当の勝負の場であるから、3年間今のペースを加速させながら駆け抜けてほしい。そうすればどんなところで職についても戦い抜ける。
 この2ヵ月半ほどで急速な成長をみせた二人、塾教師はこういう場面に出くわすことができる。

 他の生徒たちも戦い抜けただろうか?
 自己採点結果待ちだ。


*#2220 勉強に熱が入りだした中三は学力がうんと伸びる・・・(2) Feb. 21, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-21-1

 #2219 勉強に熱が入りだした中三生は学力がうんと伸びる Feb. 21, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-21



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【4月15日追記】
 合格発表の日に一人が根室高校の窓口で受験票を提示して自分の点数を確認してきた。どれくらい自分の実力がアップしているのか自己採点結果を確かめたかったからだ。
 この生徒は学力テスト総合ABCの五科目平均点に比べて77点アップで193点だった。英語は45点だったかな。もちろん、五科目合計点も英語の点数も自己最高記録をゲット。英語が大の苦手だったから、中学校の英語の先生はこの生徒の英語の得点は信じられないだろう。
 もう一人も確認してきた。こちらが驚きの結果だった。98点アップの220点で、英語が満点だった。二人ともわずか2.5ヶ月間で急成長したことになる。
 中学生の学力の伸びには毎年驚かされる。もちろんよくやったとほめてやった。 


#2219 勉強に熱が入りだした中三生は学力がうんと伸びる Feb. 21, 2013 [62. 授業風景]

【なぜ推薦が極端に減ったのか?】
 中3の受験生が一人、根室高校商業科に推薦合格したと連絡があった。今年は3校で3人しか推薦がなかった。落とされた人が多かった。例年十数人は推薦合格しているのに何か変わったのだろうか?説明はない。どういう基準で推薦を選考しているのか外部からはわけがわからぬ。アカウンタビリティはないのだろうか?
 (コメント欄でHirosukeさんと原因について推測・議論しているので、みてほしい)

【一生懸命やる生徒はたった2ヵ月で学力を急激に上げる】
 学テ総合ABCの平均点に比べて12月から入試時点までに一生懸命努力したら数英2科目がどれくらいアップするのか、5科目合計がどれくらいアップするのか実例を挙げておくのは来年度の受験生にとって有益な情報となるだろう。

【英語が苦手で数学が得意な生徒P】
 推薦された生徒よりもすこし成績がよいにも関わらず推薦されなかった生徒がいる。長い目で見るとこのP君にとっては推薦に漏れたことが幸いとなるはずだ。
 数学が好きで英語は苦手で、わがままが出て苦手の英語の勉強からずっと逃げていたが、ようやく英語の勉強をやり始めた。やらないと五科目合計点の大幅アップは無理だとわかったからだろう。覚悟を決めて一番前の席に座って数日質問に応えながら英作文トレーニングをしていたら、作文のコツが飲み込め始めた。「進化」速度が速いのでこちらのほうが驚いた。文の構造が理解できたら、英文を読むことにアレルギーがなくなって、文句を言わずに知っている単語から文意を考えるようになった。ホンの1週間の出来事だ。
 英語の勉強の姿勢がわずか1週間くらいの間に大きく変わった。点数は総合ABCの平均点に比べて英語が20点アップしている(2/21に都立入試のH24年の英語問題では48点とったから道立高校換算で約36点さらに5点ほどアップした。これでステップアップのための次の課題が明確になったから、P君はまだ伸びる)。
 好きな数学では、今週、東京都立の入試過去問でついに73点とった。道立高校入試換算で52点だ、先生はうれしいね。難易度が高い問題をやらせると急激に点数がアップする生徒が続出する。
 都立の問題は標準的な問題だが、道立高校の問題が簡単すぎるので、都立で70点(百点満点)とれれば、難易度の低い道立高校入試問題ではほぼ50点(60点満点)とれる。総合学力テストABCの平均点に比べて得意の数学も約20点アップだ。
 P君は苦手の英語と得意の数学で合計45点アップしている。勉強の仕方がわかってきたから他の科目もアップしている。入試時点では総合ABCに比べて五科目合計で70点アップが期待できそうだ。

【数学が苦手で英語が得意な生徒Q】
 このところ毎日のように来て勉強に熱が入っているもう一人の生徒Qは、英語が得意で数学が苦手だ。都立入試英語問題で68点(2/21のH24年度の問題でも68点)とったので道立の入試では50点弱が期待できる。まだ完全とはいえないが英作文問題に正解できるようになったのと、英文の問に対する応えの文をしっかり書けるようになったことが大きい。これが彼にゆるぎない自信を与えた。総合ABCの平均に比べて22点アップだ。急激な成長がうれしい。英語で自信がついたら、Qは苦手の数学もきちんと勉強するようになった。都立入試数学問題で53点を2回続けてとった。これは道立高校入試換算で37点相当である。17点アップしている。もう10点くらい上がる余地がありそうだ。今のところ数英両方で50点アップだ。社会の勉強に熱が入り点数が上がり始めたから、5科目合計点は入試時点で総合ABCの平均点に比べて70~80点アップが期待できる。

【150点とっていれば3ヶ月で学年トップレベルになれる可能性がある】
 個別指導だから教えられる人数に制限があり、1クラスたった9人の3年生だが、学テ総合ABCに比べて五科目合計点が70点アップしそうな生徒が二人いる。三分の二の生徒は総合ABCに比べて30点以上アップする。中学生の脳は柔らかいから、勉強することで頭はよくなってしまう
 昨年は70点アップは一人だけだった。240点オーバーで入試をクリアした生徒だ。
 毎日のように来ているが、こんなに目覚しい成果が出ない生徒も二人いる。でもあきらめる必要はない、12日間、精一杯努力して自分の殻を破ってもらいたい。
 8割は本人のやる気だ、塾先生はそれをサポートできるだけ。面倒を見すぎて、塾依存度を高めることがあってはならぬ。

【具体的な数値目標に向かって努力することが大切】
 あと12日ある、一心不乱にやれば点数は上げられる。科目ごとに目標値を設定して、補強する分野を書き出し、トコトン勉強してみたらいい。そういう経験をした生徒は高校生になってからも学力をさらに上げるだろう。
 中高生のときにある時期を全力で勉強した者は社会人となってからも必要なときに全力で仕事に関する専門知識を吸収できる。中高生のときの勉強スタイルは一生を左右する。今だけの問題ではない。

(B中学校で、都立の入試問題を数学授業でやったと生徒が言っていた。ニムオロ塾では数英の2科目を5年分やる。そして国語が2年分だ。
 苦手の理科を7年分やった生徒や得意の国語を8年分やった生徒がいる。難易度が少し高い問題に取り組むことはいいことだ。)


*#2238 勉強に熱が入りだした中3は学力がうんと伸びる(3):高校入試五科目80点アップはできたか? Mar. 6, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-06

#2220 勉強に熱が入りだした中三は学力がうんと伸びる・・・(2) Feb. 21, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-21-1

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#2205 東京都立入試過去問をやらせる:抽象度の高い作文問題あり Feb. 11, 2013 [62. 授業風景]

  年が明けてから毎日来て勉強している三年生が二人いるが、学力テスト総合A・B・Cの平均点に比べて、最後の学テで五科目合計点が40~50点上がっている。夢中になって勉強し始めると成績はぐんぐん上がる。塾長は生徒の急激な成長を信じてやればいい。

 
最近一週間ほど一人が不得意の理科を克服するために、東京都立の過去問を6年分解いていた。そして分からなかった箇所の復習をしているから、理科だけでさらに20点点数が上がるだろう。昨年のチャンピオンデータは学テ総合A・B・Cに比べて70点アップ、240点台だった。
 個別指導だから1クラスは8~10人まで。

 国語の得意な生徒が、
「先生、都立の国語の過去問やりたい」
「やってみるか、むずかしいぞ、一度都立の過去問が道立高校入試に出題されたことがある。設問はやさしく改作されていた」

 この生徒は都立も国語過去問を8年分をやった。都立入試の国語は200語でまとめる作文問題が出題されるのだが、ある年度だけ文意が読み取れずに、頓珍漢な作文をしていた。作文問題は私が点数をつけることにしている。

「文意がつかめていないようだね」
「今度だけはなに言ってるか分からなかった」
「なるほど、そういうことか、抽象度の高いテクストを読むのが苦手のようだから、読む本のレベルを上げないとこういう問題には対処できないね」
「先生、どんな本を読めばいい?」

 横の本棚にあったもののなかから、デカルト『方法序説』と数学者岡潔の著作をだして見せたら、読み始めた。中3に薦めたのはこれで三人目だ。北海道教育大札幌校に進学した生徒と高校を卒業して家業の漁師を継いだ生徒である。
 ほかに初学者向けの哲学書『ソフィーの世界』や市倉宏祐先生の『現代フランス思想への誘い』と『ハイデッカーとサルトルと詩人たち』、和辻哲郎『古寺巡礼』『風土』などが教室においてある。
 この生徒は『ソフィーの世界』は読んでいるはず。『古寺巡礼』は読みやすい本だから中3にも読めるだろう、しかし、『風土』や市倉先生の著作はまだ無理だ。硬い学術書が読めるようになればうれしい。『風土』が読めるレベルの読書力がつけば、ほとんどの教養書は読みこなせるだろう。

 抽象度の高い本は読み慣れないと読みこなせない。意識して抽象度の高い分野へと足を踏み入れる時期がある。私の場合は案外早く来た。それが訪れたのは高校2年生だった。哲学書や経済学書を独力で読み漁り始めた時期である。

 生徒が同じように抽象度の高い分野へ足を踏み入れるお手伝いをするのは塾先生としては喜びである。

 ニムオロ塾では、三色ボールペンで線を引きながら週に1回音読トレーニングを実施している。中1に斉藤孝『読書力』、中2に藤原正彦『国家の品格』、中3に林望現代語訳・世阿弥著『風姿花伝』である。
 それでも、東京都立の問題には歯が立たないものが混じっている。

 東京都立の入試問題の難易度は標準的だと思うが、道立高校に比べると難易度が高いとは言える。都内の有名私立高校の問題は都立の問題よりもずっと難易度の高いものが多い。
 道立高校入試で50点(60点満点)取れる生徒が、都立の入試問題だと70点(百点満点)くらいしかとれない。だから、負荷を大きくした「筋力トレーニング問題」として入試直前には使い勝手がいい。8年分もみっちりやれば、自分の弱い箇所はチェックできるし、そこだけ繰り返しやることで弱点の克服が短期間でできる。

 毎日のように来て勉強している生徒は入試のときには五科目合計点で、学テ総合A・B・Cの平均点に比べて+70点を今年もクリアするだろう。
 せっかくオープンしてあげても、来ない生徒もいる。もったいないな、実力をしっかり築くことができるのだが・・・
 3時半から7時までの時間帯で席が空いている限り中3は来て勉強していいことにしている。とにかく、来て勉強する生徒はトコトン面倒見るつもりだ。真剣になったときは集中力が上がり予測を超えた力のアップをみることになる。
 塾先生は楽しい。

(念のために書いておく。入試の得点をあげるために抽象度の高い本を読む必要はない。たまたまある年度だけ抽象的なテクストが本文に使われていただけで、例外である。しかし、3年たったら抽象度の高い本を読んでいる生徒は力がぐんとついているだろうな。そして社会人となって3年もしたら、他の人とはずいぶん差がついているだろう。30代を迎えることには圧倒的な差になっている。経験的にそう言いうる。確かなインプットを十年以上継続した社会人の文章は、読むものが見ればはっきりわかる。良質のインプットを大量にしないと、良質のアウトプットはむずかしい。そんなことができるのは特別に文才に恵まれたもののみである。私たち凡人はひたすら良質のインプットを行い、己の技倆を磨くのみ。)

方法序説 (岩波文庫)

方法序説 (岩波文庫)

  • 作者: デカルト
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1997/07/16
  • メディア: 文庫
岡潔/胡蘭成 (新学社近代浪漫派文庫)

岡潔/胡蘭成 (新学社近代浪漫派文庫)

  • 作者: 岡 潔
  • 出版社/メーカー: 新学社
  • 発売日: 2004/11
  • メディア: 文庫
読書力 (岩波新書)

読書力 (岩波新書)

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2002/09/20
  • メディア: 新書
国家の品格 (新潮新書)

国家の品格 (新潮新書)

  • 作者: 藤原 正彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11
  • メディア: 新書
すらすら読める風姿花伝

すらすら読める風姿花伝

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/12/13
  • メディア: 単行本
ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙

ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙

  • 作者: ヨースタイン ゴルデル
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 1995/06
  • メディア: 単行本
現代フランス思想への誘い―アンチ・オイディプスのかなたへ

現代フランス思想への誘い―アンチ・オイディプスのかなたへ

  • 作者: 市倉 宏祐
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1986/04/30
  • メディア: 単行本
ハイデガーとサルトルと詩人たち (NHKブックス)

ハイデガーとサルトルと詩人たち (NHKブックス)

  • 作者: 市倉 宏祐
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 1997/10
  • メディア: 単行本
古寺巡礼 (岩波文庫)

古寺巡礼 (岩波文庫)

  • 作者: 和辻 哲郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1979/03/16
  • メディア: 文庫
風土―人間学的考察 (岩波文庫)

風土―人間学的考察 (岩波文庫)

  • 作者: 和辻 哲郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1979/05/16
  • メディア: 文庫

#2195 中3学力テスト結果&インフルエンザ Jan. 31, 2013 [62. 授業風景]

 A中学校で30日テストが行われた。学力テスト総合ABCのなかで一番高い得点だったものと比べて、全員最高得点をたたき出している。一番高得点をたたき出した一人を除き30点以上アップしている。

 冬休みに入って5日連続の冬季特訓をしたあと、スィッチが入りそのまま毎日塾へ来て勉強している生徒が数人いる。まだ一月あるからもっと点数は上げられる。昨年は70点アップが最高だった。

 だから、どのくらい実力アップしたかを計測するために、例年通り1月下旬の学力テストを実施してほしいのである。
 ギリギリだった者たちは悠々と合格圏内に入り、サボった者たちはボーダライン上をさまよう。そういう競争があったほうがいい。

 一番進度が速いB中では「円」の章が終わり、「標本調査」にはいる。英語も10章がほぼ終わりだ。C中学校も早い。1年間、授業速度のことを何度も採りあげてきたが、各学校は進捗管理に力を入れてくれているようだ。放課後補習も常設は一つもないが、テスト前などはやるのがあたりまえになりつつある。
 歓迎すべき変化だ。先生たちに努力に敬意を払いたい。授業の進捗管理はけっこう努力がいるものなのだ。プロフェッショナルとは教科書全部を一月前にやりきり、そのうえ生徒の学力を上げうるものをいう。目指せ授業のプロフェッショナル。

 インフルエンザが流行っているから、中3はひくなら早いほうがいい。各学校で学級閉鎖が広がっている。

 ちなみに、インフルエンザは防げない。SARS騒ぎのときに、成田で旅客機内で赤外線探知装置で発熱者を隔離したが、不顕感染者がすり抜けて各地に拡大した。そうしてみると、学級閉鎖は医学的にはほとんど意味がないともいえる。もちろん、閉鎖したほうが「爆発感染」を防げるという意見もある。どっちが正しいかなんて質問しないこと、暇な人はネットで調べて自分の頭で考えてみたら?
 結果をコメント欄へ書き込んでくれたらうれしいな。

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#2166 リズムで憶える不規則変化動詞:ブログ「LMN」研究所 Dec. 30, 2012 [62. 授業風景]

 塾生には中学校で出てくる65個の不規則動詞変化表を3パターン(カタカナ表記・現在形のみ・解答)渡してあるが、忘れている人が多かったので、昨日また渡しました。

 Hirosukeさんのブログ「LMN研究所」に「リズムで憶える不規則変化動詞」のURLが載っているので紹介します。
 中3年生は正月休みに自分ので見て、で発音を聞いて、で真似して、で何度も書いて復習しておこう。できれば短文例を一つの動詞に三つくらいずつ、ついでに記憶できたらいいね。三つ完全にできるようになったら、五つ、十と増やしてみたらいい。意味を浮かべながら早口でつぶやいてみると、いつのまにか自分の記憶の引き出しに使える動詞と短文例集がたくさん詰まっている。
 65動詞×3短文例≒200文例 ⇒ 65動詞×5短文例=325文例
 高校生になっても30個も追加すれば全部だ。不規則動詞は使われている頻度が高いから早く憶えた方が得だよ。
 ⇒ 90動詞×10短文例=900文例

 大事なことをいい忘れるところだった。文例は自分で集めるんだよ。
 教科書からでも参考書からでも塾で使っている問題集でもいい、とにかく自分で調べて書くことが大事だ。普通のノートかルーズリーフを用意して、1ページに一つの動詞を割り当て、文例の追加書き込みができるようにしたらいい。
 文例集は意味や使う場面を思い浮かべながらしょっちゅう音読してみるんだ。トレーニングしただけ英語の成績は上がってしまう。凧々上がれ♪天まで高く♪

 パソコンの使える人はワードで並べて編集してもいいし、エクセルに入れて並び替えをできるようにしてもいい。類似変化の動詞には分類番号を振っておくとデータをその分類番号でソート(整列)すると必要に応じてグループ分けできる。
 たとえば、分類番号・動詞・文例整列番号・文例
 というように並べてデータをつくっておくと便利だ。文型の区別のつく人は文型番号を最後に振っておくといい。
 作業自体を楽しめばいい。使い方でわからないことがあったら、訊(き)きにオイデ、もちろん学校の先生に聞いてもほとんどの先生は教えてくれるだろう。

 そしてHirosukeさんの不規則動詞に関する解説はとってもありがたいから、心してしっかり読むべし。

*「【英語】「不規則変化」は「音声リズム」が効果的!」(LMN研究所)
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08?comment_success=2012-12-30T01:31:43&time=1356798703


クリックすると音声が出るから、大きな声で真似しよう。そのうちに文字を見ただけで音が頭の中に浮かぶようになる、さあ、トレーニングだ。

リズムで憶える不規則変化動詞                                                                              提供: Linkage Club



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#2152 期末テスト 中2が健闘 五科目合計点で平均58.8点アップ Dec. 6, 2012 [62. 授業風景]

 塾で教えていて一番手間がかかりむずかしいのが低学力層(下位20%)の生徒の指導である。一番楽なのが高学力層の指導。エネルギーが2倍必要になる。
 低学力層の生徒には共通項がある。姿勢が悪い(100%)、目上の者に対する口の利きを知らない(80%)、ガマンができない(100%)、セルフコントロールが利かない(100%)、宿題を出してもやってこない(80%)、そして生活習慣が崩れてしまっている(90%)
 姿勢が悪いのは集中力に大きく影響していることに案外気がついていない。小学生低学年のうちに家庭で勉強の姿勢のシツケをきっちりしておいたほうがいい。中学生になってから「正常」に戻すのは大仕事である。もちろん、本人もたいへんだ。数分ごとに塾長から「脚を机の下に入れろ、背中をまっすぐにしろ」と檄が飛ぶ。

 生活時間の話しをしよう。ブカツを6時半までやって、家に着くと7時。「腹減った」で晩御飯、食べたら疲れが出てきてついテレビやゲーム、勉強をする気力はない。そうこうするうちに10時、疲れが出て風呂に入ってしばしまったりして就寝。ゲームやメールで夜更かしする生徒も多い。12時過ぎまで2割くらいの生徒が起きている。そういう生徒は翌日の授業中に居眠りしている。こうして悪しき生活習慣がしっかり見についてしまう。
 土日も練習、2部練あるいは試合で地方へ出かける。これでは勉強する時間がない。生活習慣のうちに、家で独力で勉強するという時間がほとんどない生徒が2割はいる。
 中2になったら毎日2時間は予習・復習をやるべきだ。よほど退職のある生徒でないと、毎日ブカツを6時半までやったら勉強する習慣は身につかない。体育系だと10人中4人くらいしかブカツに入っている生徒は勉強していないだろう。
 こんな状況で、普通の能力の生徒が勉強についていけるわけがないから、成績下位層が膨らんできている。中3生の30%が学力テスト総合Cで30%未満の得点となっている

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 参考までに、11月実施の三年生の学力テスト総合Cの結果を貼り付けておく。成績下位層は五科目300点満点で得点90点以下であるが、約3割いる。

212年11月学力テスト総合C
 上位層  中位 下位層(底辺層)
210点超209~91点90点以人数60点以下
人数  %人数  %人数  %合計人数
光洋11.16371.62427.38889.1
柏陵中811.04257.52331.5731317.8
啓雲中35.93262.71631.451611.8
3校合計125.713764.66329.72122712.7



---------------------------------------------------

 3校のうちで、上位層と下位層に2極分解が激しいのは柏陵中学校である。中位層が「やせている」から、まもなく上位層が減りだすのだろう。こういうことは、学校別・科目別のデータだけではなく、階層別データが公開されなければ比較分析できない。柏陵中学校は他の2校とはあきらかに異なる様相を見せている。対策も違って当然だろう。17.8%の学力底辺層を徹底的に底上げすることだ。時間が捲き戻せるなら1年生のうちに手を打ちたかった。何もしなかった結果が現在の姿である。この層の生徒たちの将来が心配だ。基礎学力に欠陥を抱えているから、このまま放置すると大半が就職できずに将来フリーターになりかねない。

 高校入試が内申点重視で、成績に自信のない生徒たちは自己防衛からブカツをやるようになってしまった。猫も杓子もブカツ、勉強したくない生徒はブカツをすることで勉強から逃げている。ブカツは5時半までに制限しよう。家に帰って食事までは勉強を義務付けよう。そうすれば、家庭学習習慣を躾けられる。
 団塊世代のわたし達のころはブカツに属している生徒は割合から見ると現在の3分の1以下だから、低学力層も半分以下だっただろう。
 低学力層の肥大化は過度なブカツが健全な学習習慣を疎外することから生じているといえる。ブカツを制限しないといけない段階にとっくに来ているのだから、学校と教育行政は日曜日に一般市民の参加を求めて公開でこうした問題を正面切って継続議論して具体的な対策を出すべきだ
 毎年効果を確かめて具体策をより効果の高いものにしていくために、学力テストの点数で客観的な効果を確認するのは当然のこと。数値情報にもとづくPDCAサイクルは民間ではどこでも用いられている普通の管理手法である。上場会社はすべて決算数値を公開している。学力テスト情報を隠蔽したがる勢力はよほど都合の悪いことがあるのだろう。

 いろいろと問題を抱えているクラスが中2だが、基礎学力がなければコンビニのアルバイトにも使ってもらえないし、高校卒業後の就職だってほとんど難しいことがかれらにもわかってきた。
 友達同士で日本語の会話は成り立っても、本に出てくる言葉は理解出来ないものが多い。中学受験用の語彙力テストの基本編ですら50点以下という現実を突きつけられて最近目を覚ましつつある。
 自分達が基礎学力という点で大きな問題を抱えているという自覚が出てきて、勉強しなければいけないという気持ちが芽生えてきているのだが、相変わらず音読テキスト『国家の品格』を読んでこないし、読んだテキストから漢字を拾って書き取りトレーニングを指示しているにも関わらず、やってこない。頭でやらなければいけないことは理解できているが、小学校からの7年半の積み重ねで悪しき生活習慣に染まって身体が反応してくれない。
 習慣というのは恐ろしいもので、そう簡単に変えられるものではない。しばらく戦いが続く。やってこなけりゃ何度でも説教。それでもやらなければ、1時間早くこらせて無理やりやらせないとならない。ブカツをやっているから1時間早く来るためには飯抜きになる。来なけりゃクビだ、そろそろそういう段階に来ている。
 なにをおいてもやらなければならないことは、他のことを後回しにして最優先できちんとやる。それをしつけるのも塾の役割となりつつあるのか。

 10年間塾で教えて生徒達を見ていると、生徒の質があきらかに変わってきていることに愕然とする。なにもしないと「劣化」が進むような段階を迎えているのだろう。教育関係者がそういう子どもたちの大きな変化に気がついていないのではないだろうか?
だからこそ、学力テスト情報を公開して、しっかり議論して必要な対策を打つべきなのだ。学校単独でなんとかできるわけがないから、地域社会の応援を受け入れるべきだ。

 お父さんお母さんたち、小学校1・2年で家庭学習習慣をそして4年生頃から読書習慣をつけないと、あなたのお子さんはかなり高い確率で中学生になったときに、主要五科目の点数が百点満点で30点以下になるよ。それくらいは親の義務と思って家庭でしっかりシツケよう。鉛筆のもち方、姿勢の悪さにその時点で気がつけば手遅れにならずにすむ。親が直してあげればいい。
 授業参観のときにお母さんたち、後ろからよく見るといい。姿勢の悪い生徒は成績も悪いからすぐに識別がつく。

 問題は確かに多いし大きいが、このクラスも悪いことばかりではない。
 今回はほんとうに驚いた。9月に入塾して来た生徒が数学のクラスが「基礎」から「標準」にアップし、そして期末テストで70点を超えることができた。つられて2名が一緒にクラス・アップ、一人はいま先生の教え方の違いに戸惑い文字通り"アップアップ"してもがいている。

 授業中は相変わらず私語がおさまらない、セルフコントロールができない。それでも塾長の目線に気がついて自分で私語をとめる回数が増えてきた。3分おきに注意が飛ぶが、クラスの雰囲気は変わり始めた。
 雰囲気が変わり始めた途端に期末テストの点数が中間テストに比べて全員アップしたのはできすぎ?ここは素直に受け取ろう、「結果」は正直なものだ。
 一人は感染性の下痢で休んでいるので1科目だけ点数が確認できない。もうひとり確認できてない生徒がいるが、ほか6人は中間テストに比べて五科目合計点が平均で58.8点のアップだ。
 19~78点の間で、一人だけ19点アップで残りの生徒は45点以上アップしていた。休んいる生徒一人は100点以上アップしているはず。

 中2の2学期期末テストは勉強していると数学の点数がとりやすいので、よい実績をたたき出し、生徒に自信をつけさせるチャンスなのだ。生徒達は期待以上にがんばったといえる。
 塾長は欲張りだから、もう一段50点アップを期待している。二段ロケットだ。ここまで来れば、必ずできる。一度実績が出ると自信がつくからいままでとは違ってくる。
 いまのペースで3月までがんばり抜け、そうすれば何もかもが変る、チャンスだ!


 生徒からこういう話が出た。
「先生、就職するんなら根室西高校のほうが有利なんだって」
「誰に聞いたの?」
「学校の先生だよ」

 今日の新聞に根室の高卒の就職状況が載っているので、次のテーマとしたい。実際にそんなことがあるのだろうか?


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*#2152 期末テスト 中2が健闘 五科目合計点で平均58.8点アップ Dec. 6, 2012 
  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-06

 #2143 データと分析(5) 学力テスト総合Cから根高普通科への合格基準点を推計してみる Nov. 29, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-28

 #2142 データと分析(4) 全国学力・学習調査 根室管内版を読む Nov. 28, 2012
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-27-1

 #2140 データと分析(3) 論より証拠 学力テスト情報公開のメリット Nov. 26, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-26

 #2138 データと分析(2) 語彙力がないままの学力向上はない Nov. 25, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-25

 #2134 データと分析(1) 学力テスト総合C 学校別・科目別平均点 :学力低下と人口減少のダブルパンチ Nov. 21, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-20

 #432 教師全員で補習して生徒の学力を上げた中学校
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-12-07-1



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#2145 めんこい生徒たち Dec. 1, 2012 [62. 授業風景]

 今朝はマイナス1度、すっかり冬だ。いつのまにか、庭のもみじもはまなすも桜も葉っぱが落ちて寒々としている。

 市街化地域の3中学校の期末テストが終わった。B校が一番早く、金曜日に三年生全科目が返却された。
 生徒から電話が入った。
「先生、数学ヤバイ」
「え、点数取れなかったのか?」
「いや、よかった、82点だよ」
「ほう、そりゃたいしたもんだ、やればできると言ったが、予定よりもいいな、それで英語は?」
声が小さくなり、
「こっちはほんとうにやばかった・・点」
「ばかもの、看護師になるには国語と数学と英語だ、そんな点数で看護学校は入れるわけがない」
「わかってる」
「じゃあ、そろそろ言うとおりやるか」
「はい、やります、勉強します」

 ニムオロ塾ではテスト前は好きな科目をやらせている。私は生徒達の質問を捌くだけだ。わがままな生徒はきらいな科目はやらない。この生徒は社会と理科が大好きだ。しかし、社会にも理科にも得意分野と不得意分野があり、典型的な「偏食タイプ」だ。きらいな地理は昨年3年生の土曜日5ヶ月特訓に参加を許可したら、喜んで来ていた。
 わがままな生徒は偏食のまま放置することがある。こういう生徒は自覚が生まれるまで強制的にやらせてもイヤイヤやるだけだから、ヘンな癖がつくだけで、無理をさせても大して伸びない。高校卒業までの6年間で考えると、自覚をまってやるのが一番効果が大きい。
 この生徒は社会と理科が90点前後だから、ほうっておいても心配いらぬ。数学と英語が60点付近だと五科目合計点はまぐれで400点を越すことはあっても、それはまぐれで本人も自覚している。待っていると、他の生徒との競争心が働き、400点を常時超えたくなるときが来る。そういうときがチャンスだ。間髪いれず押す。430点くらいに簡単に行ってしまう。
 塾先生は生徒がどういう性格で、心がどういう状態にあるのかを読んで、ちょいと後押しするだけ。自分でやる気になるのが一番、そのあとは簡単、受け入れ態勢ができているから素直なものだ。高校生や時に大学生レベルの内容を説明してもきちんと理解してついてくるから、英語も数学もほどなく90点前後とれるようになる。

 これも昨日の話しだ、1年生の授業で、生徒から、
「先生、書き換え問題黒板に書いてくれますか?」
「よし、やるか」
教科書「プログラム8」の文章をピックアップして、解説しながら変換を指示する。そして類似文例の日本語を書いて英訳させる。英語の語順を覚えてもらうのが狙いだ。不思議と学校の授業では語順を説明しない。語学学校で使う英語問題集は"word order"の章がたいていある。繰り返し説明して覚えさせる。
「先生、そういう問題でなく並び替えの問題だして」
「並び替えなら、毎日教科書を音読するだけでできるようになる、指示通り一日9回読んでいるか?」
「・・・」
「やっぱりな、読まないとできるようにならないぞ、しかし、黒板に書いている問題をやれば英語の語順がわかり、日本語の語順と対比がつくから、主語が何か、動詞が何か目的語や補語が何かを探すだけでいい。そして場所を表す句や時間を表す句をどんどん覚えていけば、並び替えなんて誰にでも百点とれるようになるんだ、まかせとけ」
問題書いたり、解説しながら叱責が飛ぶ。
「こら、○○、先生が説明しているときに後ろ向いて私語するな」
「△△、姿勢が悪い、背中伸ばして勉強しろ」

「学校で勉強のできる生徒を後ろから見てみろ、背中が伸びていて姿勢がぐらつかないから。反対にできない生徒は姿勢が悪くしょっちゅうぐらつくから集中力が育たない、いい姿勢というのは成績を左右するからとっても大事なんだぞ、そういうところをおろそかにするな」
授業しながら、檄を飛ばす。

 学校から帰ってきたら3回、食事の後で3回、寝る前に3回、習っている単元や前のところを音読するように指示しているが、実際にやれるのはメッタにいない。ブカツが忙しくてやる暇がないのだそうだ。6時過ぎにブカツが終わって家に帰ると食事、そのあとはしばらくまったりしてテレビやゲーム。疲れがでてきて気力なし。勉強せずに12時前後に寝るというのが普通のパターン。
 これでは勉強する時間がない。ブカツを5時半までにすれば、家に帰って食事まで1時間勉強しろといえる。ブカツの疲労も少ないから集中力も持続できる。食事前に勉強した生徒の多くは、その後も1時間は勉強ができる。こうして勉強時間を組み込んだ生活習慣が身につく。
 B校の生徒二人にやっているうちに、C校の生徒が、
「先生、そこ私たちやっていない、この次ぎやるから予習になる。わたしも一緒にやっていい?」
「もちろんいいよ、予習、いいね」
 気がつくと全員一緒にやっていた。どんどん変換の難易度を上げて行く。作問しながら生徒に答えを聞いて黒板に書く。どこが間違っているかを説明する。間違える箇所について文法的な説明を押し広げていく。暗記すべき事項をホワイトボードに並べる。
「これは暗記だ!無理やり覚えろ、記憶力のいい者は5回、普通の者は10回早口で言ってみろ」
・・・
「え、先生、もうこんな時間、今日時間すぎるの速い!」
「問題集は家でやって来いよ、分からないところは印をつけてもって来い、説明するから」
「はーい」
生徒の要求に応じて、臨機応変にやるのも楽しい。ようするに、形はどうあれきちんと教えればいいのだ。塾にはいろんなタイプの生徒が集まってくる。 

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#2136 根室に初雪 : 成長をじっと待つ  Nov.23, 2012 [62. 授業風景]

  祭日の朝だから静かだなと思いつつ、いつものように朝6時過ぎに目覚めてベッドの中でまどろみながらNHKラジオを聴く。ブラインドを上げたら雪が降っている。静かなのは祭日のせいもあるが、雪も音を消すのだということに気がつく。道路はアスファルトが濡れて真っ黒だが、庭は2cmの積雪あり。今冬初めての雪だ。釧路は数日前に雪が降った。
 21日に近所のガソリンスタンドで冬タイヤへ取り替えたので、足回りは大丈夫だ。運転しているとタイヤのやわらかさの違いを感じる。

 勤労感謝の日である。来週に中学校の期末テスト、再来週は高校の後期中間テストがあるから、塾長は今日も忙しい。やる気のなかった2年生男子5人がやる気モードに変わった、昨日も3人がテスト前の補習に来ていた。一昨日の授業は生徒達の学習熱意が伝わってきた、手応えのある授業は生徒も先生も楽しい。一時はどうしようもないと思いながら、こういう日の来るのを信じて待つ、ここいら辺りが山登りでいうと5合目だ。あいつらは今日も補習にやってくる、学習しなければ将来に差し支えるという自覚が生まれた。人に言われてやる勉強とは違う、危機感を感じて自分の意志で自発的に勉強に打ち込めるようになり始めている。
 ヒントをあげて正解できると「あ、わかった!先生、ちょーたのしい!」と喜びを隠さない。楽しいことがわかればやる気は出る、そこまでのちょっとの辛抱がいままではできなかった。
 小学生時代に家庭学習習慣を躾けそこなうと、ここまで来るのに2年間かかるから、塾長はじっと辛抱して春の訪れをただ待つのみ、成長したな。

 私塾経営的には授業に集中できず私語が多い生徒はクビにしたほうがいい。そうでないと同じクラスのできる生徒に迷惑がかかるし、やめてしまうケースもでる。塾はじまって以来の成績下位層の多いクラスを前にして何度かそうしようと思うことがあったが、踏みとどまった。迷ったときには「原点回帰(原理原則に戻る)」、ふるさとに戻ってなんのために私塾を開いたのかその都度自分に問う。予習習慣がつき成績を上げた生徒はやめても心配がないが、成績下位層の生徒たちは個別指導してやらないと、内容が分からない。おそらくは他の塾へ移っても続かず、自信を失って勉学をあきらめてしまう。学校はなかなか恒常的な放課後補習体制を組まない。成績のよい生徒と成績の悪い生徒の混成クラスは個別指導が適しているが、ベテランの私でも12人が限度だから、その一歩手間の10人にクラス人数を制限している。
 縁があってニムオロ塾へ来たのだからなにがなんでも基礎学力はつけてやる、塾長にとっても成績下位層の生徒とまみえるときは真剣勝負なのである。手間をかければかけるほど生徒がメンコクなるのも事実。辛抱の先には花が咲くと信じ抜く、気がつくとこちらのほうが生徒に鍛えられている。この学年ではないが、やめた生徒が独力でがんばり抜いて学力テスト総合Cで学年1番になった。自立して勉強をやりぬく力をつけるのがニムオロ塾の役割である。勉強とブカツを両立させた理想型、中学3年間ではじめての学年トップを祝福したい。

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【追記】
 3cmの積雪。雪をかいだが、水を含んでとっても重かった。