#5219 日銀は実質債務超過している:為替介入は無益 Apr. 26, 2024 [95.増え続ける国債残高]
日銀法では国債については時価評価しなくていいことになっていますが、国際会計基準では金融機関と言えども保有債券の実質評価損の計上が義務付けられています。国債金利が購入した時よりも上昇すれば、国債の評価額(=現在価値)は低下します。
国際的な金融筋が日銀を見る時には、日銀保有国債を時価評価して実質的な評価損を計算して確認するのはあたりまえのことです。
さて、日銀保有国債はこのところの長期金利上昇でどの程度の実質評価損を抱えているのか計算してみましょう。ピッタリの情報がないときは、その近傍のデータで代用します。
●3月末の日銀保有国債残高は585兆円と公表されています。
●日銀保有国債の平均利回りが不明なので仮に0.3%とします。
2016~2021年8月まではほぼゼロ%ですから、この仮定された金利平均値は実際の値よりもり高めと考えていいでしょう。(2016年1月~2022年2月までの6年1か月間は0.2%以下)
●保有国債の平均未償還期間を7年と仮定します。
●昨日の10年の長期金利は0.89%、これは実際の値(4/25)です。
これらの数字を前提にして、実質評価損の計算をしてみます。
585兆円×(1+0.003×7年)=597.2兆円
597.2兆円÷(1+0.0089×7年)=562.2兆円...日銀保有国債の現在価値
562.2兆円-585兆円=-22.7兆円...実質評価損
日銀は保有国債で22.7兆円の実質評価損を抱え込んでいることになります。日銀の純資産額は4.9超円ですからすでに17.8兆円の債務超過です。
(単利計算しましたが、複利計算だともうすこし評価額が下がります。
597.2兆円÷(1+0.0089)^7=561.3兆円
561.3-585=-23.6兆円 )
日銀が保有国債残高を増やしていくのに比例して、80円/ドルからついに156円/ドルまで円安が進みました。
これは国際金融筋が、日銀が実質債務超過状態にあることを認識して、円への信認が崩れた結果のことだという仮説を弊ブログで何度か主張してきました。
この仮説が真なら、財務省が為替介入をしても効果がありません。すぐに円安に戻ります。19兆円しか介入資金がないので、4回の介入は不可能なのです。それ以上やるとなると財務省は保有している米国財務省証券を売却処分しなければならない。財務省が保有している米国財務省証券を市場で大量に売却すればドルは暴落しますから、円高になります。しかし、それは米国と協議しなければいけない。政治的には戦後79年経ってもいまだに植民地状態ですから、政府は米国財務省証券売却について米政府と協議すらできないでしょう。
日銀が保有国債を債券市場で売却するには金利を2~3%へあげないと買い手がつきませんが、そうすると新規国債分から政府の国債利払い費が急激に増大します。数年で予算が組めなくなります。サラ金で借金している多重債務者と何ら変わるところがありません。借金を返すために、また借金を繰り返し、年々借金の額が増えて行っている状態です。とっくに手遅れです。
政府財政破綻が現実のものになります。
借金の元本が1円も返済できず、毎年借入残高が増大している企業に、お金を貸し続ける銀行はないでしょう。破綻処理するのがあたりまえです。政府財政はもう何十年もそういう状態なのです。とくに、第2次安倍政権(2012年12月)以降は国債の増発と日銀引き受け増大がひどくなりました。アベノミクス三本の矢のひとつであった異次元の低金利、ゼロ金利、それに続くマイナス金利で、金利上昇による国債増発にブレーキを掛けるという「歯止め」がなくなりました。
だから、日銀植田総裁が何を発表しようが、日銀が保有国債を市場で売却可能になるほど長期金利を上げることができないのです。それは政府財政破綻の引き金を引くことになりますから。
でもいずれそういうときが来ます。それがいつかは誰にもわかりませんが、ある日突然にやってきます。もう打つ手がありませんから。マイナンバー制度は財政破綻に備えて、国民の預金と保有株式に課税するための準備でもあります。すでに環境は整っています。1946年2月の大蔵省による突然の預金封鎖が、再現されることになるのでしょう。あの時も突然でした。預金が下せない!
さて、新しい経済社会の創造のためにあたらしい経済学が必要です。
*#5207 歴史的順序と論理的順序:『資本論』の論理的破綻と新しい経済モデルについて Apr. 8, 2024 [A2. マルクスと数学]
<余談-1:日米金利差について>
1978~1984年1月まで、産業用・軍事用エレクトロニクス専門輸入専門商社で仕事していました。仕事柄、為替動向は毎日モニターしていました。当時の日米金利差は、おおむね2%でした。だから、為替予約と仕入レートを連動させることで、つねに為替差益を確保できました。金利裁定取引が働くので、6か月先の為替予約レートは常に金利差の分だけ、差益が出ました。
昨日の米国の10年物長期金利は4.647%、日本のそれは0.890%ですから、日米金利差は3.757%です。2%の日米金利差に6年間見慣れたわたしには、現在の金利差がとても異常に見えます。
政府や日銀が政策的に長期金利をいじくりまわすのは、亡国の遊戯だと肝に銘じるべきでしょう。債券市場で無制限に日銀が国債を買いまくるとか長期金利を人為的にゼロ金利に長期間してしまうことは、人体になぞらえたら、自律神経系をずたずたにしてしまうとか、不良品のmRNAワクチンで免疫スステムを破壊することになったのです。国債市場は金利による自動調節機能を失い、戦時財政と同様になっていたのです。
小泉政権時の竹中平蔵氏、安倍政権を支えたマクロ経済学の東大名誉教授浜田宏一内閣参与、罪が深い。もちろん、政権を奪取しても、こういう問題に目を向けることのできなかった民主党政権も。
二十数年にわたって、騙され続けた国民にも問題ありです。もう少し政治や経済に関心を持ち、政治家やいい加減な経済学者たちの言説に騙されぬように利口になりましょう。
<余談-2:日銀総資産と為替レートの相関関係は?>
日銀保有国債残高と対ドル為替相場で線形回帰分析をしてみたいのだが、日銀保有国債残高の推移データが見つからないので、12月末の日銀総資産推移データと各年度の平均為替レートデータでHP-35sを使って線形回帰分析をしてみたら、相関係数は0.720でしたから、日銀総資産と対ドル為替相場の間には強い正の相関があるということになります。強い正の相関関係だけではなく、日銀の保有国債残高が増えることで円安が進むという仮説が正しければ、保有国債を市場で売却しなければ、円安は収まらないのです。
ところで、線形回帰式をデータ推計に使うときは相関係数が0.9を超えていないと使い物にならないというのが45年前に経営分析や損益シミュレーションをしていた時の経験智です。だから、統計学上は強い正の相関関係があっても、相関係数が0.9以下では実務上のデータ推計には使い物にならない程度の相関係数と判断します。
縦軸左側は日銀総資産で単位は千億円です。
このグラフを見ると、2021年から為替が円安の傾きが急になっていることがわかります。傾きが変化したということですから、この13データによる直線の式よりも実際のデータが上の方に出ることを示唆しています。市場はどう反応するのでしょう?
<余談-3:日銀植田総裁記者会見の影響>
4/26午後の記者会見で、国債買い入れ続行と円安が物価に与えている影響は大きくないと発言しました。それを受けて10年物国債の金利は0.925へ跳ね上がり、為替は158.19円/$へとさらに円安が進んでいます。日銀は打つ手がありません。
金利が上昇するたびに、日銀は債務超過額を増大させることになります。植田総裁は震えているでしょう。
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国際的な金融筋が日銀を見る時には、日銀保有国債を時価評価して実質的な評価損を計算して確認するのはあたりまえのことです。
さて、日銀保有国債はこのところの長期金利上昇でどの程度の実質評価損を抱えているのか計算してみましょう。ピッタリの情報がないときは、その近傍のデータで代用します。
●3月末の日銀保有国債残高は585兆円と公表されています。
●日銀保有国債の平均利回りが不明なので仮に0.3%とします。
2016~2021年8月まではほぼゼロ%ですから、この仮定された金利平均値は実際の値よりもり高めと考えていいでしょう。(2016年1月~2022年2月までの6年1か月間は0.2%以下)
●保有国債の平均未償還期間を7年と仮定します。
●昨日の10年の長期金利は0.89%、これは実際の値(4/25)です。
これらの数字を前提にして、実質評価損の計算をしてみます。
585兆円×(1+0.003×7年)=597.2兆円
597.2兆円÷(1+0.0089×7年)=562.2兆円...日銀保有国債の現在価値
562.2兆円-585兆円=-22.7兆円...実質評価損
日銀は保有国債で22.7兆円の実質評価損を抱え込んでいることになります。日銀の純資産額は4.9超円ですからすでに17.8兆円の債務超過です。
(単利計算しましたが、複利計算だともうすこし評価額が下がります。
597.2兆円÷(1+0.0089)^7=561.3兆円
561.3-585=-23.6兆円 )
日銀が保有国債残高を増やしていくのに比例して、80円/ドルからついに156円/ドルまで円安が進みました。
これは国際金融筋が、日銀が実質債務超過状態にあることを認識して、円への信認が崩れた結果のことだという仮説を弊ブログで何度か主張してきました。
この仮説が真なら、財務省が為替介入をしても効果がありません。すぐに円安に戻ります。19兆円しか介入資金がないので、4回の介入は不可能なのです。それ以上やるとなると財務省は保有している米国財務省証券を売却処分しなければならない。財務省が保有している米国財務省証券を市場で大量に売却すればドルは暴落しますから、円高になります。しかし、それは米国と協議しなければいけない。政治的には戦後79年経ってもいまだに植民地状態ですから、政府は米国財務省証券売却について米政府と協議すらできないでしょう。
日銀が保有国債を債券市場で売却するには金利を2~3%へあげないと買い手がつきませんが、そうすると新規国債分から政府の国債利払い費が急激に増大します。数年で予算が組めなくなります。サラ金で借金している多重債務者と何ら変わるところがありません。借金を返すために、また借金を繰り返し、年々借金の額が増えて行っている状態です。とっくに手遅れです。
政府財政破綻が現実のものになります。
借金の元本が1円も返済できず、毎年借入残高が増大している企業に、お金を貸し続ける銀行はないでしょう。破綻処理するのがあたりまえです。政府財政はもう何十年もそういう状態なのです。とくに、第2次安倍政権(2012年12月)以降は国債の増発と日銀引き受け増大がひどくなりました。アベノミクス三本の矢のひとつであった異次元の低金利、ゼロ金利、それに続くマイナス金利で、金利上昇による国債増発にブレーキを掛けるという「歯止め」がなくなりました。
だから、日銀植田総裁が何を発表しようが、日銀が保有国債を市場で売却可能になるほど長期金利を上げることができないのです。それは政府財政破綻の引き金を引くことになりますから。
でもいずれそういうときが来ます。それがいつかは誰にもわかりませんが、ある日突然にやってきます。もう打つ手がありませんから。マイナンバー制度は財政破綻に備えて、国民の預金と保有株式に課税するための準備でもあります。すでに環境は整っています。1946年2月の大蔵省による突然の預金封鎖が、再現されることになるのでしょう。あの時も突然でした。預金が下せない!
さて、新しい経済社会の創造のためにあたらしい経済学が必要です。
*#5207 歴史的順序と論理的順序:『資本論』の論理的破綻と新しい経済モデルについて Apr. 8, 2024 [A2. マルクスと数学]
<余談-1:日米金利差について>
1978~1984年1月まで、産業用・軍事用エレクトロニクス専門輸入専門商社で仕事していました。仕事柄、為替動向は毎日モニターしていました。当時の日米金利差は、おおむね2%でした。だから、為替予約と仕入レートを連動させることで、つねに為替差益を確保できました。金利裁定取引が働くので、6か月先の為替予約レートは常に金利差の分だけ、差益が出ました。
昨日の米国の10年物長期金利は4.647%、日本のそれは0.890%ですから、日米金利差は3.757%です。2%の日米金利差に6年間見慣れたわたしには、現在の金利差がとても異常に見えます。
政府や日銀が政策的に長期金利をいじくりまわすのは、亡国の遊戯だと肝に銘じるべきでしょう。債券市場で無制限に日銀が国債を買いまくるとか長期金利を人為的にゼロ金利に長期間してしまうことは、人体になぞらえたら、自律神経系をずたずたにしてしまうとか、不良品のmRNAワクチンで免疫スステムを破壊することになったのです。国債市場は金利による自動調節機能を失い、戦時財政と同様になっていたのです。
小泉政権時の竹中平蔵氏、安倍政権を支えたマクロ経済学の東大名誉教授浜田宏一内閣参与、罪が深い。もちろん、政権を奪取しても、こういう問題に目を向けることのできなかった民主党政権も。
二十数年にわたって、騙され続けた国民にも問題ありです。もう少し政治や経済に関心を持ち、政治家やいい加減な経済学者たちの言説に騙されぬように利口になりましょう。
<余談-2:日銀総資産と為替レートの相関関係は?>
日銀保有国債残高と対ドル為替相場で線形回帰分析をしてみたいのだが、日銀保有国債残高の推移データが見つからないので、12月末の日銀総資産推移データと各年度の平均為替レートデータでHP-35sを使って線形回帰分析をしてみたら、相関係数は0.720でしたから、日銀総資産と対ドル為替相場の間には強い正の相関があるということになります。強い正の相関関係だけではなく、日銀の保有国債残高が増えることで円安が進むという仮説が正しければ、保有国債を市場で売却しなければ、円安は収まらないのです。
ところで、線形回帰式をデータ推計に使うときは相関係数が0.9を超えていないと使い物にならないというのが45年前に経営分析や損益シミュレーションをしていた時の経験智です。だから、統計学上は強い正の相関関係があっても、相関係数が0.9以下では実務上のデータ推計には使い物にならない程度の相関係数と判断します。
縦軸左側は日銀総資産で単位は千億円です。
このグラフを見ると、2021年から為替が円安の傾きが急になっていることがわかります。傾きが変化したということですから、この13データによる直線の式よりも実際のデータが上の方に出ることを示唆しています。市場はどう反応するのでしょう?
<余談-3:日銀植田総裁記者会見の影響>
4/26午後の記者会見で、国債買い入れ続行と円安が物価に与えている影響は大きくないと発言しました。それを受けて10年物国債の金利は0.925へ跳ね上がり、為替は158.19円/$へとさらに円安が進んでいます。日銀は打つ手がありません。
金利が上昇するたびに、日銀は債務超過額を増大させることになります。植田総裁は震えているでしょう。
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