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#4677 高校入試英語対策:札幌光星高校 Dec. 22, 2021 [65.a 成績上位層にかかわる問題]

 札幌光星高校の2020年度と2021年度の入試問題をざっと見た。国語が難易度の高い論説文だった。レジリエンスという比較的新しい語彙が使われている。高校現代国語Bの評論文レベルのテクストである。北海道立高校や東京都立高校入試問題とは比較にならぬ。
 数学の問題の難易度はそれほど高くないようだが、問題量が多いので、速度が要求される。高校入試段階である程度の解答速度がない者をフィルタにかけることができそうだ。
 英語の問題はリスニングなし、長文問題だけである。迷子になって海岸近くに住み着いてしまったシャチ(orca)と人間のかかわりがテーマだった。観光に利用する人間、距離が使づきすぎると事故も起きかねない。シャチは肉食で集団で鯨を追いかけて餌にするような4-7mの身体をもつ海では最強の肉食哺乳類である。
 社会と理科は中身を見なかったが、国語や英語に匹敵するような難易度の問題かもしれない。
 英語は2020年度よりも2021年度の方が難易度が高くなっていた。高校側が試行錯誤をしているように見えた。
 
 札幌光星高校は東大と国公立大学医学部受験者専用のステラコースを開設した。そういうレベルの高校生が道内にどれほどいるのか私は知らない。1学年でせいぜい20人程度ではないかと思う。そういう生徒を選抜したいので、入試問題の難易度を試行錯誤しているのではないか。それが問題の難易度が「揺れている」原因なのかも。
 通常の入試問題では受験対策をしっかりやればクリアできるが、国語の問題から判断して、難易度の高い語彙を使った論説文を普段から読みなれていないと、高得点が獲れない。つまり、語彙力レベルの高い本を普段から読んでいるような「余力のある生徒」が欲しいということ。狙いがはっきりしている。(笑)
 数学の問題からは、複合問題を手際よく解いてしまう「速度」を高校入学前に身に着けておけということ。高校では難易度の高い問題を1.5倍速の「高速授業」でやるので、そこまでクリアしていないと、東大や国公立大医学部の2次試験を高得点で突破できないと考えているように見える。あくまでも、問題をざっと見た私の個人的な感想である。
 2021年の英語は環境問題がテーマだった。東京都立の長文問題はワード数が多いのだが、会話文主体だから、札幌光星高校の入試対策にはならない。論説文の長文なら、そうした問題を大学入試問題からピックアップした方がいいので、根室高校3年生が使っている”Cutting Edge 2020”から問題をピックアップすることにした。月曜日(12/20)に生徒にやらせてみた。英検準2級に最近合格しているので、なんとかチャレンジできるぎりぎりの範囲にある。正解は半分程度だった。この生徒は最近の学力テストでは英語は80点を超えている。
 問題をやり終わって採点してから、一緒に音読しながら、英語の語順のままスラッシュリーディングしながら読解していく。時々解説が必要だ。

   Recently, researchers from the Union of Concerned Scientists in the U.S. released a report on how cosumer behavioe affects the envionment. Their study showed that meat consumption is one of the main ways that humans can damage the environment, second ony to the use of motor vicles.

   So, how can a simple tihing like eating meat have a negative effect on the environment? The most important impact of meat production is through the use of water and land. Two thousand five hundred gallons of water are needed to produce one poound of of beef, whereas only twenty gallons of water are needed to produce one pound of wheat.

 poundは日本語表記は「ポンド」だが発音は「パウンド」であることに注意。

 冒頭の文は問題提起の部分なので、どのような問題を扱うのか述べるから、話の焦点を絞るのに重要な部分になる。概して最初の段落が難易度が高い。どのようなトピックかわかれば第2段落以降はスラスラ読めるだろう。

 やたらと長い主語の文が出てくる。こんなに長い主語は中学英語教科書には出てこないので、中学生の段階で英語は高校3年生教科書レベルはクリアして受験に臨めというのが「高校側の言い分」のように聞こえてきてしまう。
 3つ程度、このレベルの長文問題をこなしたら、長い主語には慣れる、それくらいの能力でないと受験しても無駄。中3で英検2級合格レベルの生徒が欲しいということだ。

 the Union of Concerned Scientistにまごついていた。concernは「関心がある、心配する」で基本単語だ。「心配している学者の組合/集まり」ということだが、何を心配しているかはここだけではわからない。こういう時は読み進めばいいだけ、そのうちに「心配している」内容が出てくる。「scientests concern something」、somethingを頭の中に置いて読み進むと、目的語で何が心配なのかわかる。「消費者行動がどのように環境に影響するか」ということ。fromは「出身」と訳してはいけません、from the Union of Concerned Scientestですから、Unionと相性のいい日本語を探すと「団体加盟の研究者」がいいでしょう。イメージがわいたら、辞書の訳語にこだわる必要はありません、自分がふだん使っている語彙から適語を選びましょう。
 第1段落の2番目は、構文が理解できないと、second以下のところが意味不明になる。案の定、K君はここでストップした。英検中2級ではこういう文は読みなれていないのだろう。2級の高校生はすんなり読めていた。

 大西泰斗先生の解説だと、「説明ルール:説明は後ろに置く」である。「この研究はthat節以下を明らかにしている」とやって、その説明を続く節が具体的に述べるということ。「食肉の消費が主要な理由の一つである」と書いて、そのあとにまた説明ルールが適用される。関係代名詞節で主要な理由を説明している。「人間が環境にダメージを与える」主要な理由の一つが食肉の消費である。そのあとも、人間が環境にダメージを与えるということの説明になっている。second only to Aは「Aに次いで2番目」であるが、そんな熟語は知らなくても基底文に分解できれば正確な理解が可能である。motor viecleは「自動車」だから、「自動車に次いで」ということ。

 生成文法で解説すると、作文の仕方までわかる。
 ①meat consumption is one of the main ways that humans can damage the envionment.
 ②(meat consumption is) second only to the use of motor viecles.
 
 そもそも、one of the main waysとなっているから、3個は「主要な理由」があると考えよう。すると順位が気になる。secondがなくても、環境負荷が大きいのは食肉生産よりも自動車であることは常識である。だから、環境負荷問題を考えるときに、自動車が最大であると知っていたら、食肉生産がそれに次いで環境負荷が大きいというのは簡単に理解できる。ふだんから環境問題を取り上げた新聞記事やネットのまともな記事を読んで豊かな常識を育もう。受験問題しかやらないようではアウトですよ。旭川医大へ現役で合格した生徒は、良質のものを選り15冊、音読トレーニングをした。時事問題も授業の合間に議論してました。数学の問題解きながら、雑談に応じれるんです。そういう授業を7年間もしていたので、脳が並列処理にすっかり慣れてましたね。最後のほうでは福沢諭吉著『福翁自伝』や物理学者の山本義隆著『近代日本150年—科学技術総力戦体制の破綻』を採り上げています。作品を読みながら、対話を重ねたわけですが、生徒の学力に合わせて、学年がアップするごとに内容が充実し、高校生になったころには大学のゼミレベルの議論となりました。道内の大学ではそうしたレベルのゼミはおそらくないでしょう。その生徒は入試小論文300点満点で295点で合格していますから、おそらく小論文は最高得点でしょうね。
 本題に戻ります。生成文法から分析すると、主語が同じだから、後の方の節の主語が省略されただけ。こういう論説文を読みなれると、頭の中で自動的に基底文に分解がなされて意味理解がすっとできるようになる。大西泰斗先生のイメージでとらえる英語はとっても役に立つが、論説文を読むときは生成文法の知識もあった方がいい。
(高校はたった3年間で卒業だ。大学は4年、そのあとは大学院だ。海外の大学の方がこの生徒の進路には合っている。宇宙を研究対象とする科学者になりたいと言っている。つまりは物理学者になりたいということ。)
 第2段落は数字を換算しながら、想像力を膨らませて、イメージをしっかりつかめ!「書き手が脳裏に描いたイメージを読み手が脳裏に正確に再現するのが読解」であるから、計算能力はもちろん必要とされる。単位の換算である。

 1ポンド=454g(バターは半ポンドでしたが、現在は200gと150gになっています)
 1ガロン=3.8リットル(米国ではガソリンはガロン単位で販売されています)
 1エーカー=0.4ヘクタール(面積単位acreは3段落目に出てきます)

  第2段落以降は平易な文章ですから、ブログ上では解説しません。
 1月22日の試験までに、Cutting Edge 2020の問題18題の内、半分程度一緒に読んで解説したら、この生徒のレベルなら論説文の読解になれるだろうから英語は高得点を獲れる。
 数学も問題なしだ。国語と社会と理科がなかなかたいへんだろう。理科は計算分野を中心に見直しを続けている。社会科は新聞やそういう題材の本を読んだりしていないので、難易度の高い入試問題では高得点は無理だろう。受験問題を解いているだけでは合格できない。1/22は国語と英語のみ、それで合否判定して、2月の本試験でステラコースの生徒が選抜されるようだ。

 あと1か月でどこまで迫れるか、もう時間がいくらもない。

(根室から、ステラコースに昨年1人合格しているようだ。数研2級数研準2級と英検2級英検3級を中3で取得したと噂に聞いた。塾へは通っていない。根室管内で数学と英語をそういうレベルで教えられるお母さんは一人だけだろう。稀な組み合わせである。凄いね! こういう子どもの学力問題に関心の強い人が一人は根室市議になってもらいたい、極東の町根室にも人材はいますが、なかなか表には出てきてくれません。)

<余談:冠詞類>
 冠詞類は日本語にはない機能なので、学校の授業ではそこに焦点を当ててなされることがほとんどない。しかし文意を正確に把握するには冠詞類の理解は不可欠なので、定冠詞、不定冠詞、無冠詞、単数・複数の区別にも注意して読んでほしい。指示代名詞は元の単語で訳す癖をつけよう。
 


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