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#4636 給与アップと経済成長のジレンマ Oct. 23, 2021 [8. 時事評論]

経済成長で賃上げをしようというのはアベノミクスのトリクルダウンの論理と同じに見える。何年やっても達成できなかったのは何か理由があるからではないのか?

 株式の時価評価額で世界でベスト50位に、日本の銀行が何社もランクインしていたのは1980年代だった。いまや全部がランク外となっている。企業の資金需要が銀行借り入れから株式市場へ移行してしまったからだ。銀行は今や青息吐息で、人員削減に励んでいる。やみくもに合併を繰り返したために、システムが複雑になってトラブルが続出している。わかっている人がいないのだろう。銀行業界崩壊の兆しの一つだ。世間並みの給与の支払えない業種へ転落していくのだろう。

 上場企業のほとんどが、この30年間正規雇用社員を減らして、非正規雇用を増やし、人件費をカットすることで、何とか利益を上げてきていた。全員を正規雇用にしたら黒字の出せる一部上場企業は1割以下になるだろう。
 1984年に、わたしはリクルート社の中途採用斡旋を利用して臨床検査最大手のSRLへ転職した。リクルート社に保管してあったSRLのファイルには過去5年間の決算の概要が記入されていた。売上高経常利益率12%、売上高成長率は年率120-130%だった。数年たって、準社員に社員の給料を支払ったらどうなるか計算してみたら、利益がすっ飛ぶことが分かった。当時のSRLは成長率の高い代表的な高収益企業だった。そんな企業は東証1部上場企業には1割もあるだろうか。SRLもよかったのは創業社長の藤田さんとその次の近藤さんが社長だった時までだろう。売上高で業界2位だったBMLに負けだしている、ずいぶん差があったのに。

 非正規雇用を正規雇用にしたら、赤字転落する企業が東証1部上場企業ですら、9割に達するだろう。
 これはどういうことか?一部上場企業の経営者たちが、この30年間、まっとうな経営改革や新たな事業分野の開拓ができず、非正規雇用を増やすことで、労働分配率を下げ、利益を捻出してきたからだ。つまり、一部上場企業の経営者の大半は無能だということ。この30年間で、日本の大企業はすっかり弱体化してしまった。
 高学歴の者が高いマネジメント能力をもっているわけではないのはあたりまえだが、社員の人件費を削って取締役の報酬はこの30年間で2倍以上にアップしている。日本の経営者は強欲で無能になったということだ。
 電通やパソナはオリンピックがらみで濡れ手で粟のごとく仕事をかっさらって、巨額の利益を上げた。経営能力がないから、そういう近道反応をする。パソナは竹中平蔵氏が会長に収まっている。政府のさまざまな委員会のメンバーとなって利益誘導に余念がない。企業経営者に経営能力がないと、儲けるためにはこういうズルくて阿漕な方法しかなくなるのだよ。
 日本人は「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」というビジネス倫理を受け継いできたが、そうではない企業がどんどん増えている気がする。

 株式が時価評価になって、同じ企業グループ内や銀行を中心にしたグループ内で株式の持ち合いができなくなった。だから、株での含み資産はとっくになくなった。以前は業績が悪化したら、持ち合い株の一部を放出するだけで、損失の穴埋めができ、1年でも2年でもやっていけた。そういう「安全装置」はもうない。経営能力のない経営者がトップの座に座っている企業はじつに危ういのである。その最たる業種が銀行業だろう。

 衆議院議員選挙で経済成長を声高に叫ぶ候補者がいたら、眉に唾つけて聞くがいい。状況は30年前とはまるで違っているのだ。経済成長がないから、分配を増やすこともできぬ。分配を増やせば、一部上場企業の大半が赤字転落するだろう。
 アベノミクス3本の矢は次の三つであった。岸田新総理も引き継いでいる。
1.金融緩和
2.財政出動
3.成長戦略

 1と2はバカでもできるが、3だけは別だ。8年間かかって一歩も前に進めなかった。菅氏へ総理大臣が変わってもそうだったし、岸田氏へバトンタッチされても同じことだ。30年前とは流れが衰退へと変わってしまった。
 経済成長できないのは東証一部上場企業の経営者の大半が無能だからだ。非正規雇用を増やして人件費を抑え、自分たちの報酬は2倍以上に引き上げた、そんなイージなことを30年間もやっていたら、もう足腰立たぬくらいマネジメント能力が衰えるのはモノの道理だ。そうなっている。
 大きな流れは、日本経済は30年前から衰退に入っているということ。経済成長はこれから30年間はありえないと思った方がいい。経済成長がありえない前提で、そして高齢化と人口減少を前提に経済・財政政策を考えることだ。きついことはきついと言えばいい。叡智を絞ればそういうきつい条件の中でも、せめて損害は小さくできるだろう。

 財政破綻したら、どうなるかは戦後の財政破綻が歴史的に証明している。
 1946年2月6日に大蔵省から預金封鎖が公表された。ついで、預金に財産税が課せられ、新円へ切り換えが行われた。
 日本政府が経済破綻しても、日本国が滅びるわけではない、国民がそれまで積み上げてきた財産が失われるだけだ。1世代辛抱すれば、またやり直せる。しかし戦後の貧乏な時代を経験していない世代が、そういう辛坊ができるとは思わない。
 今預金封鎖が公表されたら、預金の何割かが没収されるだけではない。もっている株へも不動産へも課税がなされる。1300兆円もの歴代政府の借金が国民の預貯金や保有株や不動産へ課税することで贖われる。
 住基コードの普及やとっくの昔に実施されてしまっている株式のデジタル管理はそのための準備でもある。不動産登記もデジタル化が進行しつつある。戦後すぐに起きた財政破綻の時よりも政府は簡単に国民へ課税して、財産を没収することができる。正直な矢野財務事務次官が危機感を持つわけだ。

 子どもたちや孫への負担となるバラまきはもうやめてもらいたい、そんなことまでした楽したいとは思わぬ。

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#4451 新型コロナ対策それいけドンドン:財政破綻・財産税課税への道 Jan. 6, 2021



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#4635 竜王戦:豊島竜王対藤井三冠 Oct. 23, 2021 [5.2 好奇心]

 abemaTVで仁和寺で開かれている竜王戦2局目をみていた。玉を囲わぬ相掛り戦。こんな将棋を指したらドキドキハラハラだ。藤井三冠はこういう切るか切られるか紙一重の将棋を楽しめるように見えた。ドキドキワクワクしながら指しているのではないか。時間の使い方が格段に上手になったと数人の棋士が評していた。タイトル戦を戦いながら、時間の使い方でも進化しているのだそうだ。
 豊島竜王の序盤の差し回しも、工夫があってみたことのない形だったが、それに臨機応変に対応していく藤井三冠、強いな。
 1時半から5時ころの豊島竜王の投了までじっくり楽しんだ。

 これで、藤井三冠の2連勝だ。7番勝負だから、次はどのような将棋になるのだろう。

 仁和寺は真言宗御室派の総本山である。


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