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#4622 根室の中学生の進路と学力問題:高校進学で流出 Oct. 2, 2021 [65.a 成績上位層にかかわる問題]

 9/18の北海道新聞に面白い記事が載ったので紹介します。
 毎年中学卒業生の20-30%が釧路などの外部へ進学しているので、根室高校が大幅に定員割れしています。せっかく空いているのだから、「根室の子どもたちは根室で育てたい」と根室高校教諭が述べているのは、もっともな話です。そこで、市内の中学校の先生8名にお集まりいただいて根室高校側の受け入れ態勢の説明をしたとあります。
 歴史的な使命を終えた事務情報科を廃止すれば、ちょうどいいくらいだから、1学級減らすという手だってありますが、そうはしたくないようですね。でも、時間の問題でそうなりますよ。人口推計データによれば4年後の2025年には中学校は1学160名ほどになってしまいますから、市外へ流出がゼロになっても一クラス減らさざるを得なくなります。9年後の2030年には2クラス減で間に合ってしまいそうです。あっという間に9年たちます。五年ごとの人口推計データをご覧ください。

<10-14歳の人口> カッコ内は1学年の人数:地域別年齢別人口推計データより
 2025年 806人(161)
 2030年 684 (137)
 2035年 557 (111)
 2040年 477 (95)
 2045年 402 (80)

 この人口推計データを見ると、2050年に根室に高校があるのかなと心配になります。ネットの授業では生徒がかわいそうです。人間関係を作るのがむずかしい。30年なんて案外早いものですよ。いまからどうするのか議論しておく必要がありませんか?長期のビジョンをもち、長期目標を立てて、長期戦略で目標を現実のものに替えていく、そういう仕事をやらなければなりません。根室の教育長はそういうビジョンをお持ちでしょうか?根室市長はそういうスパンで市政を考えておいででしょうか?

 根室高校側でアンケートをとったら、根室高校の特設クラスがの意味がよく解らないという中学生が6割もいて、広報・宣伝する必要を感じたと記事に書いてあります。
 根室高校は普通科に特設コースのクラスが一つあります。特別でもなんでもなくて、10年前の根室高校普通科の平均的な学力のクラスにすぎません。今年までは300点満点だから、150点得点できたら、特設コースのクラスに入ることができています。実際にはそれよりだいぶ低いようです。2004年だったかな、普通科が珍しく定員オーバーして150点で3人不合格、事務情報科へ回されていました。普通科120人の内、元の根室高校普通科の学力の生徒は40人いないということです。これでは特設クラスの意味が解るはずがありません。16年前の根室高校普通科の生徒の平均的な学力よりも少し低いのですからね。逆に、特設クラス以外の2クラスが「特別」かもしれません。16年前には根室高校には合格できないレベルの学力層です。高校統合した結果、何が起きたかというと、元の根室高校の学力レベルの生徒が特設クラス一つだけになって、残りの普通科2クラスの生徒の学力が根室西高化したということです。教える先生たちは学力差の大きさにびっくりしたことでしょう。塾側から見ていると、3年間はなすすべナシという感じがしていました。新し試みをやる先生が出てきていますから、それが組織として継続されることを願っています。

 20-30%なんて、そんなに外部流出しているかな、実感とギャップがあるので、2020年の根室市内の中学生と高校生のデータをチェックしてみます。新聞に載っているデータでも感覚的にヘンだと感じたらチェックしましょう。
 市内の中学生総数は610人、根室高校在校生は493人だから、おおよそ80.8%が根室高校へ進学しています。だから、おおよそ20%が外部へ進学と考えられます。年度別の実際の数値でも大きな差はないでしょうから、流出が20-30%というのは数字が過大であると判断します。過去5年間には例外的に30%の年があったのでしょうか?あっても例外ですね、平均値では20%です。

 流出しているのは理由があります。例えば根室高校野球部。現在の3年生には数人しかいません。野球が大好きな生徒のほとんどが野球ができる根室市外の強豪校へ進学してしまいました。わたしが教えていた生徒でも3人が根室高校以外へ進学しています。根室高校野球部の生徒は羅臼高などと合同チームを組まないと、地区大会すら出場できません。女子バレー部も現在5人かな。試合形式での練習すらできません。基礎トレばっかり、楽しくないと思います。だから高校バレーをしたい生徒は外部の高校へ進学する。
 そういうわけで20%約40人の外部への進学者のほとんどが部活が理由でしょうね

 今年、わたしの知っている限りで高学力層は2名が札幌の高校へ進学しています。進学先は光星高校ステラコース札幌市立旭丘高校です。ステラコースというのは東大と国公立大医学部受験の専用コースとして設定されていますから、道立札幌南高校と同レベルの偏差値、つまり道内最難関の高校です。根室から合格できる学力の生徒は毎年1-3名程度ですから、札幌の有名進学校へ合格できる学力の生徒は流出を問題にするときには無視していい人数ですでも、高学力の生徒が少なくなるのは根室高校の進学実績には大きな影響があります。両親の教育方針など、いろいろ事情があって数人は根室に残ります。高学力層の根室の中学生にとって、釧路湖陵へ進学するという選択肢がほとんどなくなったように感じます。釧路湖陵普通科の学力が低下しているので、理数科でなければ難関大学への進学はできないからです。理数科の偏差値なら同程度の札幌の進学校の方がいい。難関大学への進学者数は札幌市内の進学校に比べて釧路湖陵は圧倒的に少ない。帯広柏陽に比べてもずっと少ない。もう、釧路湖陵への選択肢は根室の中学生にはないのではないか。

 根室高校は公立大学への進学にこだわった進路指導をしているようですが、生徒の平均的な学力は高校統合以来落ちているから、その中身が劣化しています。当たり前だね。今年は小樽商大はゼロでした。札幌市立は一人が学校推薦、一人が一般入試合格だった。一般合格、立派だね。まだそういう生徒がいることがうれしい。

 今年の進路実績から国公立大への進学者数をピックアップしてみます。(あいうえお順)
 (カッコ内は偏差値 2つ目のカッコ内の数字はベネッセの偏差値)

 旭川医大医学部  1(65)(70)
 釧路公立大    2(45)(47)
 札幌市立大    2(52)(57)看護学部
 名寄市立大    1(50)(54)
 公立函館未来大  1(45)(53)
 室蘭工大     3(42)(51)
 芸術文化観光専門職大学 1
 合計11名

 芸術文化観光専門職大学は今年できた大学で偏差値不明。
 
 国公立大と言っても、偏差値45以下が6割を占めています。ベネッセ偏差値で見ると、47と51の大学で5名ですから、半数です。これなら東京の普通の私大の方が偏差値が高いのです。首都圏の私大は偏差値がアップしているので、ハードルが高くなって、根室高校から一般入試では合格できなくなっています。今年は3人しか進学していません。20年前は40-50人くらいいました。
 大学進学実績の推移を20年の長期間にわたって眺めたら、その衰退ぶりは目を覆うばかりです。データを取り上げるときには、激減しているパートも一緒に俎板にあげるべきでしょう。正直であれ。

 データから言いうることは、流出する生徒数を減らすには、部活の人数を増やすことでしょうね。しかし、生徒数が1学年160人の小規模校では到底無理です。団体競技の部活を揃えることは不可能ではないでしょうか?地域別・年齢別人口推計データによれば、生徒数は5年単位で15-25名の範囲で減少していきます。

 卒業生徒数は166名、そのうち大学進学者数は48名ですが、国公立大へは11名、首都圏と青森県の八戸学院大で4名、残りの33名は道内の私大への進学です。ボーダーフリーと言われている大学への進学が増えてはいませんかね?20年間で進学できる大学のレベルが劣化したことがわかります。残念ながら、根室高校生の学力低下はまだとまっていません。

 道内の私大ランキングによれば、偏差値50以上の大学は6校のみ。
 *道内の私大偏差値ランキング 

<根室から難関大学へ進学する方法>
 今年、根室高校から旭川医大医学部へ現役合格者がでた。小中高と根室で育った生徒が根室高校から国公立大医学部へ進学したのは初めてではなかったか。
 長期教育戦略とその都度のデータは弊ブログに残してあるので利用してもらいたい。
 この生徒は小5の1月から塾通いした。難易度の高い問題集を使用して1年前倒しで学習。何とか間に合った。本音を言うと4年生からやらないと間に合わないが、生徒が優秀だったから何とかなった。(笑)
 国語と数学と英語は塾で何とかしたが、化学と物理は学力の高い生徒2人の提案に応じて担当の先生が2か月ほど週1で放課後補習をしてくれた。こういう協力体制と適切な進学指導があれば、毎年、北大総合理系レベル以上の大学への現役合格者が数名出せるだろう
 現在、光洋中の3年生には7名ほど学力の高い生徒がいます。他の学校にも1-2名いるでしょうね。この学力層は札幌の進学校へ進学すればほとんどが北大以上の大学へ現役合格できる可能性があります。しかし、根室高校からでは全員討ち死にでしょう、一浪せざるを得ません。そういう授業レベル、のろい進捗速度の授業になっています。生徒の学力が低下しているから、どうしようもないのかもしれません。
 でも、そういう現状を改善しようとチャレンジを始めた先生もいます。難易度の高い問題を取り上げて、ネットに解説をアップしてくれている数学の先生がお一人います。特設コースの生徒がそれを使って勉強しています。好い試みですね。数Ⅱや数Bの受験レベルの問題を、こうして2年生のときから採り上げて解説してくれると、数人の生徒には確実に効果があります。昨年までは受験レベルの難易度の問題は3年生にならないと授業で採り上げられませんでした。先生お一人お一人の工夫が、大きな改善につながります。

 勉強の仕方を指導するだけで、中学生の高学力層の学力は短期間で飛躍的に伸びます。学力テストで400点の生徒が3か月で450点まで伸びることは、学習の仕方を変えただけで可能なんです。わたしは実績データが背後にあって語っています。生徒が本来持っている力を解放してやるだけで、学年5位からいきなり1位に躍り出す、もったいないね、実際には毎年そういう生徒が何人もいるんです。それなのに教える側が高学力層の生徒の指導の仕方がわからない。やり方を変えると短期間で頭がよくなってしまいます。よくなってしまった頭でさらに勉強するから、以前とはまるで結果が違ってくるのです。

 学習量は集中力と基礎技能のスピード、そして時間の関数です。だから、読み・書き・計算の基礎技能が高くて、集中力が大きい生徒は、普通の生徒が10時間かかるところを1時間でクリアできます。そういう学力の生徒たちが、毎日4時間、土日は8時間勉強したら、圧倒的に学力が高くなるのはあたりまえです。学習量が10倍になっていますから。そういう段階に到達すると低速の授業なんて聞いてられなくなる。ぬるい授業を聞いているのは時間の無駄、問題集で独習したほうがいい。難易度の低い問題をいくらやっても頭はよくならぬ。
 旭川医大へ現役合格した生徒は中学生のときから難易度の高い問題集で、コンパクトな解説を読んで、独習&予習スタイルで勉強してきました。学校の授業時間中も塾用の難易度の高い問題集で「自習」し続けました。だから、先生たちと軋轢が大きかった。根室高校から現役合格を目標にしていたので、小学校の終わりからそういうスタイルに切り換えました、軋轢覚悟で、しかたないですね。宿題は学力テスト学年5位以内の生徒は免除でいいと思います。根室高校ならベネッセ模試で学年5位以内の生徒には宿題免除の特権を与えましょうよ。そういう生徒を難易度の低い問題につきあわせる必要はありません。自分で目標を立てて、難易度の高い問題集にチャレンジしているので、邪魔しないのが一番よいのです。学習に自主性を求めているのに、生徒の自主的な学習の邪魔をするのはおかしくありませんか?
 ようするに高学力層の独習を邪魔しないこと、それが一番大切です。脳力に見合った授業は学力差の大きい集団ではできっこないのだから、静かに問題集を説いているのを黙って認めてやるぐらいの大人の度量をもってもらいたい
 教えている先生の学生時代よりもトップレベルの生徒は学力が高い。高学力の生徒は先生の学力を測って、対応している。ふだん言っていることと真逆な理不尽なことを要求したら、たまには牙をむいて抵抗しますよ。

 5名くらいの優秀な生徒に高速授業での放課後補習をして、都会の進学校並みの環境を用意するのが、根室高校側のまっとうな受験対策でしょうね。放課後補習は自由参加にしたらいい。2年間で受験科目を終了するような密度の高い授業について来れるのはせいぜい5名ですから、それでいい。7時間授業にして、7時間目は希望者のみとしたらいい

 学力の高い生徒はまだ毎年数名は根室高校へ来てくれている。せめて、3名くらいは毎年北大以上の難易度の大学へ合格させてやりましょうよ
 具体的な仕組み作りを急ごう。先生たち一人一人の問題ではなくて、学校のマネジメントの問題ですから、学校長の力量が問われています。根室高校だけではありませんよ。中学校や小学校長も同じです。地域の高学力の生徒たちの学力を存分に伸ばしてやるには、高校だけではできるはずがないことは誰にだってわかります。小学校が一番大事かもしれません
 それとお母さんたちの教育が大切です。家庭で育まれるものが多いのですから。小学校低学年からゲームやスマホをやりたい放題、読書習慣はゼロ、そんな子供が中学生になったら、語彙力はない、読書力も、思考する力も小さいまま。脳が未発達なまま中学生になってしまうんです。そういう中学生が2-3割くらいいますよ。こうした生徒は暗記モノがとっても苦手です。教えてことも10分もすると忘れて同じ間違いを繰り返します。根気よく繰り返し教えて、脳の記憶エリアを広げるトレーニングからやらないといけない。とっても手間のかかる仕事です。誰かが手を貸してやらないと、そのまま落ちこぼれていきます。年齢相応に脳が発達していればなんともないことが、中学生になってからでは時機を失しているので、とんでもない手間がかかります。30%の低学力層の内、救えるのは手間暇を惜しみなくかけてもだいたい半数です。わからない授業を中高と6年間聞き続けることになります。勉強が楽しくない、かわいそうです。少し脱線しましたので、本論へ戻ります。

 国公立大へ10名合格したって、中身が問題です。いまでは東京の普通の私大の方が偏差値が高い。首都圏の大学への進学者数は1割に激減しているのですから。データをしっかり見て生徒の学力改善に努力してください。もちろんわたしも、小さな私塾を通じて努力します。

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