#2806 高校数学面白い問題 :小中学校の先生たちへ Sep. 14, 2014 [47. 語彙力と「読み・書き・そろばん」]
#2805で中3学力テスト総合Aの作図問題をとりあげたので、続けて高校数学の問題をとりあげる。
数日前に文系高3の生徒から学校でもらったプリント問題の中から生徒から質問があったちょっと変ったタイプの問題を紹介したい。記憶で書いているので、問題文は大筋こう言うものであったと了解いただきたい。
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1~504までの自然数で、504と互いに素な数の個数を求めよ、またそれらの数の和を求めよ。
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個数は問題ないだろう。504を素因数分解(504=2^3*3^2*7)して504の約数を場合分けして、2と3と7の倍数それぞれを計算して集合を使って2と3の公倍数の個数を引き、2と7の公倍数の個数を引き、3と7の公倍数の個数をさらに引いてから、2と3と7の公倍数の個数を加える。それらの合計を求めた後でそれを504から引けばいいだけ。
場合分けはシンプルだから、あとは計算速度の問題だ。それぞれの個数を書いておく。
2の倍数 252個
3の倍数 168個
7の倍数 72個
合計 492個
6の倍数 84個
14の倍数 36個
21の倍数 24個
合計 144個
42の倍数 12個
504-(492-144+12)=504-360=144
答えは144個
************
(集合が苦手でピント来ない人は、注を書いておくのでそちらを参照してください。高校1年生でもわかるように書いておきます。)
2番目の問題は「それらの数の和」。答えの欄は42×aとなっていて、aを求めよという出題である。プリントではaの部分は四角になっていた。
わざわざ42という因数が提示されているから、これが答えを導くキーであると考えてよい。
階差数列になっているのかと思って数字を並べてみたら、階差が一定にならない。
1, 5, 11, 13, 17, 19, 23, 25, 29, 31, 37, 41, 43, 47, 53, 55, 59, 61, 65, 67,...
階差をとっても規則性がないので、42で区切って1~41までを合計すると252となり、252=42*6であることがわかる。42以降を折り返して並べてみたら規則性が見つかった。
① 1, 5, 11, 13, 17, 19, 23, 25, 29, 31, 37, 41
② 43, 47, 53, 55, 59, 61, 65, 67,... ,83
③ 85, 89, 95, 97, 101,...
第1列の和は42*6
第2列の和は第1列にそれぞれ42を加えた数字になっているので、
42*1*12+42*6。
第3列の和は第1列にそれぞれ42*2を加えた数字になっているので、
42*2*12+42*6
同様にして第12列まであるから、1列から12列までの合計は、
42*12{(0+1+2+3+4+5+6+7+8+9+10+11)+6}
=42*12*(66+6)
=42*12*72
=42*864
答えは864
*********
504と互いに素となる数の中には25、55、65, 85等のように素数でないものが混じっているので、ポイントはこれを落とさないように並べることと、第一列目の和をすばやく計算できることだ。
高校数学は中学校に比べて単純な四則計算を高速で正確にやる必要がある。計算速度の遅い者は数字の並びからその特性を見抜くにも時間がかかる。計算精度を落とさずにどれだけ計算速度を大きくできるかが重要ポイントなのである。
(ダントツに学年トップを取りたければ、商工会議所の珠算能力検定試験1級をとるくらいの計算技倆をもっていたい。60年ほど前に根室からはじめて東大に現役合格した高校生はわずか高校1年間のトレーニングで日商珠算能力検定1級合格を果たしている。小学生に英語なんかやらせる暇があったら、男の子は珠算を2年間ほど習わせておいた方がずっとよいとebisuは思う。)
第1列目をきちんと並べられたら、第2列目はそれに42を加えることでチェックできる。
第3列目は同様に第1列に82を加えて計算すればいい。
このタイプの問題が初見の生徒は時間内に解くのは無理だろう。
中学校の数学の先生たち、生徒に計算問題をたくさんやらせてもらいたい。小学校の先生たちも生徒にさまざまなタイプの四則演算問題をたくさん課してもらいたい。トレーニング量をたくさん積ませると、高校生になってから数学の成績が伸びる。計算速度が大きければ家庭学習で難易度の高い問題集にチャレンジできる時間的余裕が生まれる。
高校数学は基礎計算能力の高さがものをいう世界。平均的な計算速度では試験時間内にセンター試験レベルの問題を全部解けない。計算速度でも上位10%以内にいるべし。
*<注-1>
2の倍数の集合の個数をAとし、3の倍数の集合の個数をB、そして7の倍数の個数の集合をCとし、全体集合の数をUとすると、求める504と互いに素な数の集合Xは、
X=U-A∪B∪C
A∪B∪C=A+B+C-(A∪B+A∪C+B∪C-A∩B∩C)
A∪B=84
A∪C=36
B∪C=24
A∩B∩C=12
U=504
A=252
B=168
C=72
A∪B∪C= 252+168+72-(84+36+24-12)=360
X=U-A∪B∪C=504-360=144
<余談-1:「拡張」とトレーニングの大切さ>
これらは三つの集合の要素の数の基本中の基本だから、しっかり覚えておこう。三つの要素までわかれば、後はいくらでも拡張可能となる、だから、大事なんだ。
掛け算も小学校でようやく3桁同士の掛け算をやるように変った。3桁×2桁までだと3桁×3桁へ拡張できない生徒が半分以上出てしまっているのが現実だ。
3桁×3桁の掛け算ができないという副作用は高校数学をやるときに出るから、小学校の先生たちは学習指導要領にしたがって、3桁×2桁の掛け算までしかやらない副作用をみる機会がない、だからその弊害に気がつかぬ。「ゆとり教育」が終わって昨年からようやく標準的な問題集に3桁×3桁の掛け算が載るようになったことはよろこばしい変化だ。
小学校の先生たち、3桁×3桁の掛け算を最低30題は生徒にやらせてもらいたい。願わくば一ヶ月間毎日15題すつやらせて、300題やらせてもらいたい。そして高校生になったときにこのトレーニングが成績向上に大きく寄与することを強調してほしい。基礎計算能力の高さが高校生になってから数学の成績向上の原動力となる。
<余談-2:高校統廃合後の数学の授業について>
2017年度に根室西高校の入試がなくなる。根室西高校では集合や確率を含む数Aを2年次にやっている。統合後の根室高校普通科はいままでどおり数Aは1年次の必修科目とするだろう。このままでは40人ほど落第することになる。
心配なのは授業内容が成績下位層の生徒にあわせて低下することだ。先生たちは「わかりやすい授業」をしたがる傾向にある。成績下位層の生徒に標準的な内容をきちんと教えるには放課後補習を徹底してトコトン教えないといけない。これは成績中位層の生徒の5~10倍も手間のかかる話である。そういう手間をかける覚悟がないから、中学校の先生たちは放課後補習をしたがらない。実に根気がいるのである。お一人だけそういう努力を一年間続けてくれた先生がいることは承知している。他にも散発的にやってくれた先生もいる。ふるさとに戻って塾をはじめて12年間、生徒を通じてさまざまな情報がもたらされる、ありがたいことだ。塾生を通じた先生たちとコミュニケーションが楽しい。
小学校の先生たちも中学校の先生たちも成績下位層の生徒たちに放課後補習を繰り返して手間をかけてやれ、そうすればこれから起きるであろう根室高校の先生たちの苦労は三分の一になる。根室西高校の数学の先生たちは今年も小中学校の先生たちが手抜きした分のフォローに汗を流しているのだろう。数学について言えば、根室西高校の生徒は根室高校普通科の生徒の半分も消化できないで卒業してしまう。1年間は小中学校の復習に、毛の生えた程度の数Ⅰの基本問題で終了だ。数Aは2年に回さざるを得ない。
ここまで書けばもう充分にお分かりいただけるだろう。統廃合後の学力維持は高校だけの問題ではないのだから、小中高の数学の先生たちが集まって根室の子供たちの数学の学力を向上させるには各々何をすべきか具体的な問題をトコトン話し合ってもらいたい。
*#2647 問題消化速度1対35の衝撃(1):学習量=速度×集中力強度×時間 Apr.18, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-17-1
#2649 問題消化速度1対35の衝撃(2):学習量=速度×集中力強度×時間 Apr.18, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-19
<別解>9/15追記
これなら計算力は要らぬ、頭のシャープさがあれば充分だ。最速の解法、ペトロナスさんがコメント欄にシンプルな解法を書き込んでくれたので紹介する。初見でこの解法に気がついた人は数学のセンスがいい。
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整数論、暗号理論の専門書に掲載されているオイラーのφ関数を背景にした問題ですね。
中学入試で時々出題されていて、中学受験を目指す小学校高学年の児童さんは後半の互いに素の和は
1,5, 11, 13, 17, 19, 23, 25, 29, 31, 37, 41,・・・
503,499,493,491,485,481,479,475,473,467,463、・・
と504と互いに素の数をaとすると504-aも504と互いに素の数になることを利用して、上下を足し、個数をかけて2で割る方法を使って求めます。
504x144÷2=36288
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縦に書いたほうがわかりやすいだろう。
1+503=504
5+499=504
11+493=504
13+491=504
・・・
499+5=504
503+1=504
オイラーの応用だと気がつけば、最短・最速。
最初の問題で項数が144と出ているので、ここに気がついたら実に簡単な問題となってしまう。
36288÷42=864・・・答え
シャープだな、こういう先生に一度数学を習ってみたかった。
#2673 子どもの言語能力パワー・アップのために May 11, 2014 [47. 語彙力と「読み・書き・そろばん」]
学力低下の奥深くに言語能力の低下という問題があるらしいことを前回#2672で述べた。父親がゲームやパソコンに嵌っていると、男の子の場合だが、幼児期にコミュニケーションの時間が著しく減少し、言語発達にブレーキがかかってしまう可能性のあることに言及した。
【幼児期および小学生の時期の言語能力発達阻害のメカニズム】
ここから先も当たり前すぎる推論のオンパレードである。
理屈は簡単である。
①父親がゲームに嵌っていると、子どもがゲームに嵌ってもブレーキをかける家族がいない。
②ゲームに嵌った父親は本を読まない者が多い。子どもが本を読まなくてもほったらかしになる。
③絵本や児童書のレベルまではお母さんが付き合ってくれるが、そこから大人の本への橋渡しがなされない。
④こうして子どもは年齢相応の本をまったく読まず、漫画の本だけになってしまうから、「日本語語彙を拡張する旬の時期」を失ってしまう。
語彙が爆発的に拡張する時期は10代の8年間くらいではないだろうか?それを空振りしたらその後の爆発的な拡張はほとんど不可能だろう。
【機器の高性能化と中毒患者の増大懸念】
ゲームはオンラインとなり、機能が高度化して画像もますますきれいになっていくからゲームに嵌る若者が増え続け、そしていつか父親となる。恐いことだが、子どもたちの言語能力低下は始まったばかりかもしれない。いま現在で10%くらいだろうが、何も手が打たれなければ20年後には20%のお父さんたちがそういう状態になりかねない。
高性能化することで、こうしたゲームツールへの依存性が強まりこそすれ、弱くなることはない。ゲーム機、スマホ、これから出現する超高性能機器にはおそらく人間の精神構造形成に強い副作用がある。
親は自分の子どもに簡単にこれらの高額機器を買い与え、使用に制限をしないから、一部の子どもたちには精神の健全な発達を阻害する凶器と化する可能性を感じる。いや、それは現実に凶器と化しているが、まだ比率が小さいだけだ。パチンコと同様に心療内科領域で取り上げられ、大きな社会問題化するのはこれからだろう。
【言語能力(=基礎学力)が高い子どもはつくれる】
言語能力低下の原因を裏返すと、言語能力アップの方法が見えてくる。
基礎学力には四つの柱がある、「読み・書き・そろばん(計算)・話す」である。この四つの能力をしっかり育てたら、学力の高い子どもになるということ。お父さんとお母さん、わが子を高学力の子どもに育てよう。
第一番目の方法は子どもを大人の中に入れて会話に参加させるということ。大人の会話が飛び交う中に子どもを置くと、同じ歳の子ども同士の会話とは語彙数が違った会話になる。
店の主人と会話ができるようなレストランや寿司店、居酒屋などへ子どもを連れて行くというのもい。そうしている人を知っている、でも、なかなかできないから、一般的な方法とはいいがたい。
わたしは家がビリヤード店をやっていたので、小学生のときから毎日店を手伝っていた。最初は遊びだった。まだ子どもが大人と対等にビリヤードをするのを大人が歓迎してくれた。いろんな職業のお客さんがいるから、ビリヤードが大好きで大人の会話の渦の中に毎日2~3時間ほど身をおくことになった。だが、これも一般的ではない、特殊な例外だ。
二番目の方法は興味のある文章を読むこと。店を手伝うことと併行して小学4年生から北海道新聞の社説と卓上四季、そして1面の政治経済記事を読み始めたのがよかった。昔の新聞はルビが振ってあったので国語辞典を引きながら読んだ。これが日本語語彙の迅速な拡張に役立った。
そうした基礎の上に中学時代にSF小説の濫読期を通過した、もちろん新聞は継続して読んでいたが、小学5年生以降は新聞の文章では辞書を引く必要が無くなっていた。その結果、高校生になったときには経済学、哲学、会計学、原価計算などの専門書が読めるくらい語彙力が豊かになっていた。もちろん漫画の本も毎週3冊週刊誌を買って読んだ。すぐれた漫画の本はたくさんあるから、漫画の本が悪いわけではなく、「漫画の本しか読まない」のがいけない。
回りに語彙が豊かな大人がいて、その大人と話す機会があれば子どもの語彙力や話す能力は高くなる。筋道がしっかりした話ができるようになる。
そして年齢相応かちょっと背伸びした本をたくさん読めば、会話で使う語彙以外の書き言葉の語彙が爆発的に増える。
【出版業界へのお願い】
ルビを振ってある本が少ないことが、子どもたちを読書から遠ざけている。出版社は小学4年生を想定してルビを振ってほしい。そういう本に業界で共通規格や認証機構を作って「ルビ・マーク」をつけて販売してもらいたい。
【語彙数の目安】
日常会話で使う語彙数はせいぜい500~2000くらいなものだろう。日本人なら2~5万くらいの語彙数はあったほうがいい。仕事できちんとしたコミュニケーションをしたり、仕事で読まなければならない専門書を読むためにはそれぐらいの語彙が理解できた方がいい。
語彙の拡張のほとんどは読書で獲得されるものだから、「読む・書く・話す」の三つの能力の土台を堅固にするには本を読むこと以外にはない。
基礎学力は「読み・書き・そろばん」だから、このうち二つは本を大量に読むことで身につけることができる。「読み・書き・そろばん」能力の高い子どもは、高校生になってからも成績のノビシロが大きいというのは、塾の先生たちの共通した意見だろう。
【良質なテクストの集積である日本文学の歴史を知っておこう】
高校生になったら、日本文学史に眼を通した方がいい。
昭和28年に出版された岩波講座『文学』8巻がスライド式書棚の奥にしまってある。18歳のときに神田か高田馬場の古本屋街を歩き回って購入した。ヒマになったら読むつもりで買い求めたのだが、まだほとんど読んでいない。戦後の物資不足を繁栄してこのころの出版物の紙質は粗悪だが、抜き読みした限りではナカミは紙質に比べたら格段によい。プロレタリア文学の流れが強かった時代だから、そうした影響が収載されている論文の随所に色濃く出ている。排他的なプロレタリア文学観と対峙しなければならなかった当時の事情はわかるが、いまからみるとそのあたりの議論がウザイ、しかしそれも時代の雰囲気として受容するしかない。源氏物語などは貴族社会の恋愛物語だから、プロレタリア文学観からすると唾棄すべき価値の低いものということになるが、それは狭い了見である。人間の生き方の選択の問題、男と女の違い、日本人が千四百年もかかって創りあげ受け継いできた価値観がそれぞれの作品の中に凝集されている。それらが価値の低いものだというのは優れたものをたくさん含んでいる伝統や文化の否定だ。昨年、林望の『謹訳 源氏物語』10巻をところどころ原典と対照しながら読んだので『文学6』所収の「源氏物語」論(秋山虔)は作品鑑賞の視野を広げてくれる。古典文学作品を他の文学作品との比較あるいは関連付けて読むというのも、楽しみの一つである。
いまこうした『文学講座』を編むとしたらずいぶん違ったものになるのだろう。
文学作品は古典と近代に分かれて扱われている。
『文学4 国民の文学(一)近代篇(1)』
『文学5 国民の文学(ニ)近代篇(2)』
『文学6 国民の文学(三)古典篇』
amazonで検索してみたら2003年に別の執筆陣で十巻本で岩波講座「文学」が出版されていた。
受験参考書程度の日本文学史で充分だから1冊買い求めることを勧めたい。amazonで検索したらたくさん出てくるが、できれば本屋で実物を確かめてから気に入ったものを買ったほうがいい。
*#2672 急激な学力低下はなぜ起きているのか?:ある假説 May 10, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09
#2062 読書力を鍛えよ:高校を卒業した後一番必要な能力 Aug. 22, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-22
#1667 琴奨菊と中島敦『名人伝』 : 大関昇進おめでとう Sep. 29, 2011
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-09-29
#1601 中学生の国語力の惨状 July 28, 2011
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-07-28
#1541 疑問文と否定文の区別がつかぬ・・・ Jun. 5, 2011
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-06-05
日本語の語彙力の重要性(3):平均的な中2の実情 #994 Apr.11, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-04-11
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ルビが振ってある斉藤孝の音読破シリーズは6冊あるので、小学生のうちに子どもの本棚にそろえよう。
他にポプラ社の「百年小説」、講談社「青い鳥文庫」というのがあるようだ。
*ポプラ社「百年小説」⇒お薦め! 6600円
http://www.poplarbeech.com/sp_pickup/hyakunen/
講談社「青い鳥文庫」
http://shop.kodansha.jp/bc/aoitori/index_main.html
#2672 急激な学力低下はなぜ起きているのか?:ある假説 May 10, 2014 [47. 語彙力と「読み・書き・そろばん」]
これから述べることはひとつの假説である。医学的に証明されたものではないが、いくつかの観測事実に基く推論でもある。児童・生徒のいる家庭の10%にこれから話すようなことがあれば、いま起きている現実がたいへんよくわかる。この問題については、別の角度からもう一つ書くつもりだ。言語習得能力、とくに「話す・読む」のトレーニング量の問題に焦点を当て、どう育てれば「読み・書き・そろばん(計算)・話す」能力を伸ばせるのか、ヒントになれば幸いである。
根室の市街化地域の3中学校の学力がこの6年間ほど落ち続けている。そろそろリバウンドがありそうなものだが、10年単位ではっきり学力劣化が起きていることは否めない。とくに五科目得点80%超の高学力層が四分の一に激減し、低学力層の肥大化が起きている。
文協学力テスト(中3)で五科目合計平均点が6年間で50点も下がったB中学校の例を弊ブログで取り上げた。
*#2606 根室の中学校の過去6年間の学力低下を検証する Feb. 28, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-02-27-1
なぜB中学校でこのような激しい学力低下が起きたのかについても、その直接的な原因を書いた。数人の生徒が授業中に騒ぐので先生の声がときどき聞こえなくなるようなことがはじまってから、急激に学力が下がっていった。現象としてはそういうことがあったことは事実だ。しかし、それは現象であり、深層にはもっと大きな変化が隠れているのではないか。
一部の先生たちの授業技倆や学力にも問題があるし、他にも健全な学習習慣の育成を阻害する過度なブカツ、「文武両道」を言わぬ先生たちの姿勢、放課後補習を徹底しないことなどさまざまなことが原因として考えられるのだが、今回は低学力層(下位20%)に言葉の問題を抱える生徒が増えたことに焦点を絞って考えてみたい。
(C中学校では、校長先生や一部の部活指導の先生たちが「文武両道」に舵を切った。生徒の気合も入ってきているから、どういうことになるか楽しみである。)
中学3年生でも小学4年生程度の日本語語彙能力しかない生徒が20%ほども存在している。成績下位層の生徒に語彙力テストをして確認した結果を弊ブログで紹介した。小学4年生程度の簡単な語彙力テストで30から52点しかとれない。
はっきり口をあけて物が言えない生徒、口を動かさずに腹話術のような喋り方をする男子生徒がいるが、話に脈絡も欠落しているから、同級生にも言いたいことがなかなか伝わらない。
そういう生徒は語彙力が不足しているだけではなく、日本語の運用能力が未発達にみえる。どこかの段階で発達が停まってしまったように感じる。自分の意思を言葉で伝えられないとか、筋道だった話ができないケースが増えているのである。
こういうレベルの言語能力だと数学の文章題ができるわけがない。もちろん国語テストの問題文を読むにも時間がかかりすぎ間に合わない。頭の中では「てにをは」を間違えて読んでいたり、読めない漢字がでてくるから文意も精確に理解できない。時間をかけて一生懸命にやっても、言語能力が低いので消化できる問題量が著しく少なくなる。標準的な能力の生徒が30分で10やるとすると、2くらいしかできないから、2時間勉強しても普通の生徒が30分間勉強した量しかやれない。基礎計算問題に限るとその差は30対1に拡大する。
ゲーム時間の長い男子生徒に1ヶ月間ゲームをしないように指示することがある。生活リズムをきちんとしないと家庭学習習慣を育めないからだが、そうしたときに生徒から、「お父さんの方がやってるよ」という声を聞くようになったのは10年ほど前からだったが、最近5年くらいはその割合が増えた。それとなく授業中の雑談の中で確認している。
父親がゲームに夢中になっていると、子ども(男の子)に話しかける時間が短くなるのではないだろうか。子どもは父親とのコミュニケーションによって言語能力の発達を育む機会を奪われてしまう。0歳から3歳くらいまでの時期にスポイルされると言語の運用能力に何か決定的な瑕(キズ)ができてしまうのではないか。
読み・書きの他に「話す」に問題が出てしまう。同級生と話しているときでも、何を言っているのか意味が伝わらないケースはかなり重症だ。仲間内では話が通じても中3になっても語彙力が小学4・5年生レベルだと、授業内容を理解できない。先生が話す漢字熟語を適切な字に頭の中で変換できないから、違った意味に理解するか、まったく理解できなくなる。その単語だけならいいが、文脈全体をとらえることができないから、話された内容を理解できない。授業はまるで外国語とにたようなことになる。わからないから集中力が格段に低下し、授業中に落ち着きがなくなる。
こういう生徒は高校に入っても学力はなかなか上がらない。言語能力「読む・書く・話す」に問題がある場合は学力を上げるのは実に厄介なことになる。
「読む・書く・話す」能力の発達を促すためにニムオロ塾では週に20分ほど中学生に音読トレーニングをしている。中1には斉藤孝『読書力』(岩波新書)、中2には藤原正彦『国家の品格』、中3には世阿弥著・林望現代語訳『風姿花伝』をテクストに使っている。
言語能力に何らかの問題のある生徒を対象に始めた日本語音読トレーニングは、いま全生徒に実施している。併行して出てくる漢字の書き取りをやったり、家でも音読トレーニングをやってくれると効果が大きい。やり始めて10年目になるが、学校でやっている「音読指導のない朝読書」は、成績下位層どころか生徒の半分には効果がほとんどないと断言できる。言語能力に問題のある生徒は読めていない、眺めているだけだ。朝読書はトレーニングにならない。教師がいっしょに読んでやらないと読めない漢字は読めるようにならないし、読み方のスキルも上がらない。ほうっておいても大丈夫なのはせいぜい上位30%だろう。学校で教育の放棄ともいえることが堂々と何の反省もなく毎日行われているのはとても不思議なことにみえる。仕事から逃げているとしか見えない。概して小中学校の先生たちは高校の先生たちとは違って手間のかかる仕事から逃げる傾向がある。成績下位層の生徒に補習を繰り返している塾側からみるとそう見える。高校は進学講習と称して放課後補習が半ば常態化している。
民間企業の観点からも一言書いておく。業務忠実義務というのが大概の会社の業務規程にはある。自分の仕事を忠実にやらないともちろん業務規定違反で責任を問われ、懲戒解雇処分の対象になる。
成績不良の生徒たちをほうっておいてはいけない、先生たちには放課後個別補習を毎日繰り返しても救う義務がある。義務教育卒業の最低学力を保障するのがプロの仕事ではないのか?意地でもやり遂げるべきだ。
言語能力に問題を抱える生徒に共通しているのは、ほとんど本を読まないということ。子どもたちは身体が大きくなるだけではない、精神も発達しているのだが、年齢相応の本を読むことで精神の発達が促されるという側面のあることは無視できない。そこがすっぽり抜け落ちてしまうのである。
言語能力の発達と、精神的な成長を促すために、中学校で文庫本を50冊程度、高校でさらに50冊と新書版の本を30冊くらいは読ませたい。そのためには幼児期の言語能力の健全な発達がないといけない。言語能力が未発達なままにとどまっている子どもが児童書レベル以上の内容の本を読むことはほとんど不可能、いくら読めといっても、読めるわけがない。一緒に本を読んでやるとか、音読トレーニングを毎日繰り返す必要がある。こういう子供たちが「自然に」児童書以上のレベルの本を読むことはほとんどありえないことのように思える。
最近二年間でスマホが中高生にすっかり浸透してしまった。スマホ中毒といえる症状を呈している生徒が増えている。Lineでチャット形式で毎日何時間も費やしている。生徒に訊いてみたら、昨夜は4時間Lineで話しをしていたという。Lineを使うと通話料金がかからないので、話しを切れない、ついつい長くなる。3時まで話していたという。当然、授業中に居眠りが出る、でもやめられない。心療内科医の診断と治療をうけなければならないレベルとebisuは判断する。まぎれもない中毒症状と生活習慣病症状を呈している。
この子たちが大人になって子どもを産んだら、子どもをあやさずに右手で何時間もチャットしているのではないか?
父親がゲームやスマホに嵌り、母親もそうなったら、こどもの言語能力に著しい劣化が生じることを予測しておかなくてはならない。
学力テスト結果表に載っている点数ごとの階層分布を見ていると、仕事の指示が理解できない若者が現段階で20%くらい発生しそうである。現在のスマホの使われ方を見るとこの比率は30年後には2倍になるのではないか?良質な労働力の供給が半減するから、日本経済を揺るがす大問題に発展する可能性が大きい。
言語能力が著しく劣る生徒たちは社会人として仕事ができない、その結果親に寄生して生活するしかなくなる。根室にそういう大人が急増するということだ。地元企業は人材確保に困難を来たし、つぶれていく。ずっと寄生し続けられるわけではないから、両親が定年退職したらそのあとの生活はどうするのだろう?
子どもの将来にかかわるから、お父さんたち、ゲーム中毒から抜け出しなさい。根室の子どもたちの学力がこの6年間で急激に下がったのは、ゲーム世代がお父さんになり始めたこととどうやら関係がありそう。
そうだとしたら、子どもたちの学力低下は、お父さんたちの劣化を反映しているということになる。ゲームはオンラインゲームへと進化を遂げてますますリアルな画面で機能の高度化が進むから、「中毒患者」は増え続けるだろう。そこへお母さんたちの「スマホ中毒」が加わったら、子どもたちの日本語能力はどういうことになるのか、火を見るよりも明らかだ。
団塊世代の頃に五段階評価で1だったものは、1クラス60人で3人(5%)だっただろうが、このままだと近い招来30~40%くらいの割合になる。
幼児期の言語能力獲得は親と言語を介した接触が基本である。そして「読む・書く・話す」能力は、幼少期に親が積極的にかかわるのと、かかわらないのとでは雲泥の差が生じてしまうことを知っておこう。
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-10
#2655 語彙力が学力を決める:Hirosukeさんの論を紹介 Apr. 22, 2014 [47. 語彙力と「読み・書き・そろばん」]
お母さんたち、自分の子どもの国語の能力をチェックしてもらいたい。小学生のうちに本を読む習慣を育んでおかないとだめだ。成績下位15%の生徒は語彙力不足で人の話しが理解できず、コミュニケーション障害を抱えているものが半数以上いる。
Hirosukeさんのブログ
「こんな僕の英語教育考(序)」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2008-12-27
「こんな僕の英語教育考(0)」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2006-07-15-1
「こんな僕の英語教育考(1)」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2009-01-08
「こんな僕の英語教育考(2)」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2006-12-16-1
「こんな僕の英語教育考(3)」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2006-12-17
「こんな僕の英語教育考(4)」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2006-12-17-1
「こんな僕の英語教育考(5)」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2009-01-11
「こんな僕の英語教育考(6)」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2009-01-18
「こんな僕の英語教育考(7)」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2009-01-19
「こんな僕の英語教育考(8)⇒【児童英語インストラクターs】のための「【次代】を担う【英語本s】」」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2012-03-21
「こんな僕の英語教育考(9)」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2006-07-21
「こんな僕の英語教育考(10)」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2006-07-09#more
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<弊ブログ記事>
#2632 好きな本もっていっていいよ :蔵書の処分 Apr. 2, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-02
#2621 中3学力下位層の読み書き能力:大谷翔平「文武両道」 Mar. 18, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-03-18
#2620 道立高校入試合格発表(根室) Mar. 17, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-03-17
#2602 イジメと「改心」:ボキャ貧は先生たちにも及んでいる Feb. 23, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-02-23
#2167 中学生の生活時間の使い方と基礎学力 Dec. 30, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-31
#2111 成績下位層 中2の国語力は小4以下の現実 Nov. 1, 2011
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-10-31
#2621 中3学力下位層の読み書き能力:大谷翔平「文武両道」 Mar. 18, 2014 [47. 語彙力と「読み・書き・そろばん」]
(1) 大きぼ工事
(2) かんこう旅行
(3) 大そうじ
(4) ひなん訓練
(5) ながめる
中3でこれが書けない生徒がどれくらいいるかという話をしよう。
B中学校の四月の学力テストを具体例にとって説明するので、2013年度のB中学校の生徒の学力を評価することから解説したい。
B中学校 | 3年生 | 2007年 | ① | |||
国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | 合計 | |
4月学テ | 33.2 | 34.9 | 22.9 | 27.8 | 32.4 | 151.2 |
8月学テ | 37.4 | 40.4 | 23.6 | 34.8 | 31.7 | 167.9 |
総合B | 38.9 | 29.2 | 23.5 | 26.9 | 32.0 | 150.5 |
総合C | 37.4 | 40.4 | 23.6 | 34.8 | 31.7 | 167.9 |
模試 | 37.3 | 25.6 | 24.8 | 25.2 | 29.3 | 142.2 |
合計 | 184.2 | 170.5 | 118.4 | 149.5 | 157.1 | 779.7 |
平均 | 36.8 | 34.1 | 23.7 | 29.9 | 31.4 | 155.9 |
成績下位20%は18/83で、点数は119点(8/27の学テデータによる) | ||||||
B中学校 | 3年生 | 2013年 | ② | |||
国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | 合計 | |
4月学テ | 25.5 | 17 | 19.3 | 16.9 | 22.0 | 100.7 |
総合A | 26.7 | 24.6 | 17.8 | 25.6 | 15.9 | 110.6 |
総合B | 33.7 | 17.5 | 17.7 | 24.2 | 15.9 | 109.0 |
総合C | 27.5 | 22.7 | 16.2 | 18.4 | 18.0 | 102.8 |
模試 | 27.3 | 18.8 | 17.5 | 22.0 | 21.2 | 106.8 |
合計 | 140.7 | 100.6 | 88.5 | 107.1 | 93.0 | 529.9 |
平均 | 28.1 | 20.1 | 17.7 | 21.4 | 18.6 | 106.0 |
③=②-① | ||||||
国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | 合計 | |
4月学テ | -7.7 | -17.9 | -3.6 | -10.9 | -10.4 | -50.5 |
総合A | -10.7 | -15.8 | -5.8 | -9.2 | -15.8 | -57.3 |
総合B | -5.2 | -11.7 | -5.8 | -2.7 | -16.1 | -41.5 |
総合C | -9.9 | -17.7 | -7.4 | -16.4 | -13.7 | -65.1 |
模試 | -10 | -6.8 | -7.3 | -3.2 | -8.1 | -35.4 |
合計 | -43.5 | -69.9 | -29.9 | -42.4 | -64.1 | -249.8 |
平均 | -8.7 | -14.0 | -6.0 | -8.5 | -12.8 | -50.0 |
(1) 2007年度の五科目合計(300点満点)年間平均値は155.9あったが、2013年度は106.0で50点下がった。科目別に見ると、二桁下がった科目は社会と英語だ、両方の科目ともに日本語語彙力に関連が強い科目だから、生徒の日本語語彙力に問題があることを示唆している。
しかし、教え方にも問題ありと考えるべきだろう。こういう風に、学力テストデータを学校別・科目別に公表すると年度ごと・学校別・科目別に問題点がはっきりする。だから、せっかくやった全国学力テストも学校別・科目別に公表すべきなんだ。具体的で適切な工夫をやれば学力テストの点数くらい翌年には改善できるし、その結果もデータが公表されれば確認できる。努力して成果を上げている先生とそうではない先生が鮮明になるが、それでいいではないか?都合が悪いのは学力向上へ向けて学校を管理できない校長や教頭、そして本業である授業の手を抜いている先生たちだけだ。生徒の学力を上げようと努力し、成果を上げている先生たちは大歓迎だろう。保護者たちがデータを見て、「先生、ありがとう」って言うよ。データがわからなければ褒めようがない。
(2) 国語の年間平均点は同じ期間に36.8から28.1(60点満点)へ8.7点下がった。
(3) 2013年の四月国語学力テストデータを「億点通知票」の科目別度数分布表から数字を拾ってブレイクダウンしてみると、
18点以下(得点3割以下)⇒22人/76人(28.9%)
さらにブレイクダウンすると、
12点以下⇒6人
13~18点⇒16人
わたしの推定だが、この層の生徒の半数以上が五題の問題全問不正解となるだろう。おおよそB中学校の3年生の15%が五大全問不正解だろう。
数年前まで学力が一番高かったB中学校では三人に一人弱(28%)が「読み・書き」の基礎的能力に問題を抱えている。この比率を使うと、根室市内の高校新入生のうち、読み書き能力が小4レベルである生徒の合計は次のようになる。
240人×28%=67人
A校とC校はこれほど比率が大きくないだろうが、語彙力不足から高校の授業を受けてもチンプンカンプンの生徒数は高校新入生に50~67人いると思われる。最近では根室高校にも1学年20~30人くらいこうした語彙力レベルの生徒が入学していると考えられる。6年前にはゼロだった。
そのまま大人になったら、会社の上司の仕事上の指示が理解できないだろうから、正規雇用の職に就くのは困難だ。非正規雇用の年収は正規雇用のおよそ三分の一だから、経済的な自立は著しく困難で、親に寄生して生活するしかない。
あと5年もしたら日本の労働市場は若年層が不足し売り手市場に変るから、地元企業は経済的に自立できずに根室に残っている低学力層を雇用せざるをえなくなり、企業体力が急速に失われていく。現在2.8万人の人口が2040年には1.8万人になるが、地元企業の半数以上がなくなっているのではないか?
どうしてこんなに日本語語彙力が貧弱になったのか、原因はいくつか考えられる。
1. 本や新聞を読まない⇒読む習慣のない中学生が増えている
2. 読む本のレベルが低い⇒レベルを上げないと語彙が増えない
3. 漢字の書き取りトレーニング量が不足している
過度なブカツで家庭学習習慣が育めていないとか、ゲームやスマホやテレビに流れて読書の時間がとれないとか、理由はいくらでも挙げられるだろう。
解決策はきわめて単純だ、ようするに、本を読み、国語辞書と漢和辞典を引いて意味や用例を調べ、漢字の書き取りトレーニングを毎日少しずつ続けることだ。読む本のレベルも毎年上げていこう。日本語語彙力を強化するにはこうしたたゆまぬ努力が必要だ。ブカツの基礎トレーニングと一緒だよ。
高校生になったら、嫌でもやるべきことはやれ、できなければそれ相応の人生を送ることになる。学力はいまもむかしも世間を渡っていくときの強力な武器である。
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【余談】
中2の学力上位層の生徒に同じ問題をやらせてみたら、2題しかできなかった。ブカツに熱心で読書時間がないからだろう。部活指導の先生たち、土日連続でやらせてはいけないよ。そんな先生は教員失格だ。長期的に見ると学力に大きく影響している。健全な生活習慣と学習習慣を育み、週に一日くらいは本をじっくり読ませよう。
各学校に、北海道教育委員会から大谷翔平君のポスター「文武両道」が配布されているから、じっくりみたらいい。見当たらなかったら、校長先生にポスター掲示をなぜしないのか聞いてみよう。
トレーニングで頭を使わないやつは一流のアスリートにはなれない。
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<7/8追記>
B中学校3年生は2014年四月の学力テストは五科目平均点が139.7点にアップしている。210点超が9人(16.4%)いるから、この生徒たちが平均点アップに寄与している。90点以下の成績下位層は15人(27.3%)である。五科目合計点90点以下の成績下位層が占める割合にはほとんど変化がない。「読み・書き・そろばん(計算)」技能に問題ありの生徒たちは「底だまり」してしまっているようだ。
B中学 | 3年生 | 2014年 | ||||
国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | 合計 | |
4月学テ | 30.6 | 25.1 | 26.9 | 25.3 | 31.8 | 139.7 |
#2620 道立高校入試合格発表(根室) Mar. 17, 2014 [47. 語彙力と「読み・書き・そろばん」]
3/17、10時に道立高校の入試合格発表があった。根高の合格発表掲示板へネットはすぐにつながったが、こんなことははじめてだ。昨年まではアクセスが殺到してしばらくつながらなかった。
根室高校は普通科・商業科・事務情報科の三科とも定員割れだったが、それでも心配な生徒がいた。ドキドキハラハラしながら三度、8名の生徒の受験番号を確認した。
全員根室高校に合格していた、ほっとしている。
開塾してから12年目だが、合格者の平均点はいままでで一番低いのではないかと思う。自己採点の結果では、ニムオロ塾では商業科を受験した生徒が230点台(300点満点)で一番得点が高い。
市街化地域の3校で学年トップをとったことのある生徒でも210点台(普通科受験)がいるから成績上位層が薄くなっていることは否めない。大学受験に影響するだろう。入試問題の難易度が昨年から著しく下がっているので、230点付近が全国模試の偏差値50とみておいて概ね間違いがないだろう。市街化地域の3校の学年トップクラスでも普通科の全国平均の偏差値50に達しない学校がでてきている。根室高校の先生たちも生徒の学力低下にたいへんご苦労があるのではないか。
合格書類といっしょに「宿題冊子」を渡されるから、全部自力で解くべし。入学式の翌日に例年「お迎えテスト」が行われており、普通科の諸君はその点数で数学の4段階の習熟度別クラス分けがなされるから、しっかり勉強しておけ。
普通科で15%くらい、商業科と事務情報科で20%くらいの生徒が高校の授業を消化するには日本語語彙力が足りないから、漢検問題集を買ってきて2週間で1冊まるごと消化しろ。授業で先生たちが使う漢字熟語が適切に頭の中で再現できないと意味が理解できない。つい最近チェックしたら、全部書けない生徒がいた。
大きぼ工事
かんこう旅行
大そうじ
ひなん訓練
ながめる
「かんこう」は「こう」が「光」であることが案外思いつかない。「そうじ」の「じ」も読みから類推のしにくい漢字だ。「じ」という読みは「掃除」だけだろう、ふつうは「じょ」と読むから読みから漢字が類推しにくい。
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除:…字の本義は祓除の意味で、余がその祝儀に用いる呪器であることは除・途・叙など、余に従う字の形義によってそれを知ることができる。
白川静『字統』449ページ
ようするに、除は清めるとか余計なものを除くという意味だ。字の本義と読みを知るためにはふだんから漢和辞典を引く習慣をもつとよい。高校生の3年間は毎日漢和辞典を引いて広大な漢字の世界を歩いてみよう。
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全部できなかったら小学4年生以下の語彙力だから漢検4級の問題集を、二つ以上できなかった生徒は漢検3級の問題集を買ってきて2週間でやりきるべし。授業で語彙解説なんてほとんどするわけがないから、漢字のトレーニングをやらないと、高校のすべての科目の授業が理解できずにどんどんおいていかれるよ。
「備えあれば憂いなし」
渡された宿題の冊子は、学力が低いと自覚があったら、正解できなかった問題にチェックマークをつけて、何度も繰り返しやれ。わからないところはニムオロ塾へもっておいで。他の塾へ通っている人はそこで聞くとよい。塾に通っていない人は、塾へ通っているトモダチに訊いたらいい。
高校生の時間の流れは速い、おそらく中学校時代の2倍の速さで流れてしまうから、一時(いっとき)も無駄にするな。
2008年の総務省の調査データによれば、正規雇用の職に定着できるのは高卒の三人に一人、大卒では二人に一人、専門学校はその間に位置している。じつに厳しい競争がまっている。正規雇用と非正規雇用の給与格差はおおよそ「3対1」だ。高校生からは努力に努力を重ねるしかない、科目の好き嫌いを言ってはならない、やらなければならない科目はとにかくやれ、努力しろ。やっているうちにわかってくる、わかってくれば楽しくなる。途中でやめるやつは永遠に勉強の楽しみを知らないで終わる。
数人の塾生は三年間なかなか成長できず苦労があったが、最後の二ヶ月で成長の手応えを感じた。
こころからお祝いを言う。
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漢和辞典を紹介しておく。わたしは角川書店の『漢和中辞典』と平凡社の『字統』『常用字解』を利用している。
日本語の語彙力の重要性 #990 Apr.7,2010 [47. 語彙力と「読み・書き・そろばん」]
【なんでかな?】
小学生のときに英語を習っていた生徒が中学になって入塾してくる場合があるが、日本語の語彙が極端に少ない場合や日本語の音読に問題がある場合が多いので、ずーっと気になっていた。
読みながら、他の地域にはない根室に固有な教育問題について一緒に考えてもらいたい。違う考えがあればコメント欄へ書き込んでくれれば、採り上げたい。根室の子供たちの学力を上げるためにいろんな意見や試行錯誤があってよい。
【「読み・書き・そろばん(計算)」の重要性】
6時半まで3時間もの部活で健全な家庭学習習慣を育めない中学生が多いことと合わせて、小学生に英語を勉強させる比率が高いので、「相乗効果」が働き、学力が相対的に低下してしまうのではないかとわたしは疑っている。根室管内の子どもたちの学力が全道14支庁管内で最低なのは原因がいくつか重なっているからだろう。家庭のシツケ、学校教育のあり方、地域の特殊な学習傾向(小学生の英語学習が盛ん)などが複合要因として挙げられるだろう。
東京の子どもたちと比較すると根室の際立った特徴が明らかになる。東京の小学生はおおよそ三人に一人は中学受験をするから、有名市立中学を受験する小学生に英語の勉強をしている暇はない。学力の高い子どもたちは国語と算数に全力を投入して、さらに学力を高めている。
教育の基本は今も昔も「読み・書き・そろばん(計算)」である。小学生から英語を取り入れることで、日本語の語彙力と算数能力が東京と根室の小学生では雲泥の開きができてしまっているのではないだろうか。
小学生の学校外での勉強時間は限られている。その大半を英語に費やしたら日本語の語彙力や計算能力がどうなるかは明白だろう。未成熟に終わることになる。
【小学生は日本語の語彙力を伸ばすことを優先せよ】
結論から言えば、小学校で英語をやる必要はまったくないとわたしは思っている。小学生の時期は母語である日本語の仕込みの時期だから、日本語の本をたくさん読み、理解でき使える語彙を飛躍的に増やすべきだ。この時期を逃すと語彙の飛躍的な増大はむずかしくなる。
身長にたとえればいいのだろうか?身長は伸びる時期があり、その時期を過ぎたら伸びない。母語の語彙も飛躍的に伸びるのは3歳までと、小学生高学年から中学、高校までではないだろうか。その期間に蓄えた語彙を武器に社会人として戦っていくことになる。
【根室の子どもたちの語彙力が貧弱なのはなぜか】
小学校で英語を習っていた成績中程度の生徒の中に、日本語の語彙が極端に少ない者をみかける。たとえば、中1年の2学期に「ケイヨウシはメイシをシュウショク」すると言ったとしよう。「ケイヨウシって何?」「メイシって何?」「シュウショクって何?」である。斉藤孝『読書力』を読ませると1ページに10から多いときには20も読めない漢字がある。もちろん、小学校で英語を習わなくても、本をほとんど読まない子どもは、中学1年生ではこのような「日本人離れ」した貧弱な語彙力しかない。こういう生徒は国語が50点もいかないし、数学も文章題がほとんどできない。できる生徒だって、限られた勉強時間を相当程度英語に取られて、本を読む時間が少なくなる。社会人になってから、語彙力不足は決定的な副作用を現すことになるが、それは後述する。
では、小学生が英語を学ぶメリットは何か?適確にトレーニングすれば発音がよくなることと、早く英検2級程度まで合格できることだろう。しかし、高卒程度といわれる英検2級を合格できるのは10%いるだろうか?
【語彙力のある子どもは後になるほど学力が伸びる】
これに対して成績トップクラスの生徒は、小学校で本をよく読み、語彙力を豊かにするから、数学の文章題も、理科も社会も国語も英語もバランスよくできる。そして中学から英語をはじめても高校2年で英検2級に合格できる。英語が苦手の生徒でも高2で準2級は合格しているから、データを見る限り小学校から英語をやる意味はほとんどないといっていいだろう。国語も社会も理科も数学も教科書は日本語で書かれている。日本語能力がすべての教科の基礎である。この基礎能力の高い者ほど後になっても学力が伸びる。
【専門分野のない語学力は仕事につながらない】
わたしの周りで仕事で英語が堪能だった者はほとんどが理系出身者である。特定の専門分野がなければタダの英会話ができても何か専門分野の仕事ができるわけではない。特定の専門分野に秀でることができなければ英語を使った高度な仕事などないのが社会の現実である。
(昔はスチワーデス、いまはキャビンアテンダントというらしいが、いまやCAは不安定な派遣労働でしかない。お勧めできる職業ではなくなった。)
【仕事のできる男(女)は文書能力が高い】
他方、社会人となって必要になるのはわかりやすい文書作成技術だ。会社の規模が大きくなるほど重要案件は稟議書等の社内協議がなされるので、自分の考えを言葉で、しかも文書で表現しなければならない。語彙力の貧弱な、論旨の明瞭でない文書は冒頭を読んだだけでボツである。
規模の大きい会社なでは課長職はそこそこの文書が書けなければ仕事にならないし、役員にいたっては適確な論点でわかりやすい文書を書けなければ仕事の指示やプロジェクト管理もできない。大事な仕事は稟議で動き、「稟議書」は文書である。いかにわかりやすい稟議書を書けるかは仕事の成否に直結する。こういうときに小中高生時代に培った語彙力が物を言う。
【語彙の仕込みは小・中・高の時代にやれ】
文書は豊かな語彙がなければ書けないものだ。女子高生の携帯メールを想像してもらえばいい。普段、読んだり書いたりしていない言葉は使えない。第2言語はけっして母語以上にはならない。母語の能力の低い者は結局外国語もものにならない。わたしの経験では仕事で使う語彙の80%以上は高校卒業までに蓄積したものだ。
【語彙力は社会人の武器】
成績がトップクラスなら、小学生から英語をはじめても、日本語の本も並行してたくさん読める子どもが稀にいる。だが、多くは英語に時間を取られて本を読む時間をなくしたり、算数の勉強時間が減る。副作用が中高生になってから出てしまう。ほんとうは社会人になってからの副作用が大きいのだが、親たちは気がついていない。日本語の語彙が少なければ社会人として有力な武器の一つがないに等しい。
【高校卒業までを考えると早期に英語を学習する効果はほとんどない】
英語を小学校からやっても、高校で英検2級がせいぜいである。準1級はほとんどいない。100人習って1人の割合もないだろう。周りを見てみればいい。
その一方で、中学生になってから英語をはじめても、トップクラスの生徒は高校2年で英検2級に合格している。それで十分である。それ以上は何か専門分野に興味が出たときに、原書を読み漁れば、語学力は飛躍的に伸びる。切実なニーズが生まれたときが勉強のチャンスだ。時間を忘れてしばらくの間は毎日10時間前後ものめりこむ。集中力が高まり時間の感覚はなくなる。
【日本語の語彙力を育てるためのメルクマール】
日本は欧米の植民地になったことがないから、日常生活で英語を使う必然性がない。英語は単なる道具であるが、必然性のないものをやるのはほとんど意味がない。
1.小学生のうちは良書をたくさん読め。中学生になったら文庫百冊を読め。
2.高校生になったら新書版の本を読み漁れ、そして興味のある分野の古典といわれる書籍を数冊読んでみろ。
3.大学生や大人になってもレベルの高い本を読み続け、興味のある分野の本は大学時代にぜひ原書に挑戦してもらいたい。問題意識が先鋭になるにつれて、原書でなければ確認し得ないことが出てくるものだ。
【私の場合は・・・】
私の場合はマルクス、リカード、スミスだった。とくにマルクスは日本語と英語とドイツ語と時にフランス語原文を比較検討する必要があった。そして、時代の最先端で仕事をすれば、必然的に専門分野の最新情報を英語などの外国語で確認する必要がでてくる。強いニーズや高い目標に支えられてこそ必要な語学力は伸びる。人によりざまざまな動機がありうるだろう。
英語は母語である日本語の次に有力な武器となる。1980年代前半に二つの統合システム開発にタッチしたが、あのころは半分は英語の専門書で学ぶ必要があった。会計とコンピュータの複合分野を担いうる学者が日本にはいなかったから、この分野の翻訳書はなかった。その事情は今でもほとんど変わっていない。会計情報システムに関する優良な本があるが、翻訳が出ない。この分野の翻訳は10年前にわたしがやるべき仕事であったのかもしれない。NTサーバーに関する本も翻訳が遅かったので、待ちきれずに出る都度、片っ端から読んだ。人工知能に関する本やチョムスキーの著作もこの時期に読んだ。生成文法のオリジナルを知りたかったからか、自動翻訳への興味からだったかわからない。好奇心の赴くままに読む本と分野は自然に広がっていくものだ。
2年間ほど試薬の開発に係る仕事もしたので、これも関連情報を得たり勉強のためにNatureやScience、Oncologyなど会社の図書室にそろっている30種類前後の雑誌に目を通す時期があった。医学事典のステッドマンにも載っていない専門用語については、"Molecular Biology of The Cell”で確認して仕事していた。1990年前後のことである。
仕事をすれば必然的にインプットは増える。仕事の関係がないことでもインプットを増やせばそれに関連する仕事が舞い込む。現実社会はさまざまな分野がクロスオーバーしたところで仕事が発生しているが、人間のほうがそういう現実に対応できていない。だから、複数の分野に専門知識や技術を有する者にはおいしい仕事がいくらでもまっている。担える者が他に見つからないからだ。話しが脱線した。
読書はすぐれた著者との対話でもある。斉藤孝が『読書力』(岩波新書)の中で語っているように、著者と正座して対面して教えを受けている自分をイメージして読むのもいい。
次は英米2カ国へ留学経験のある藤原雅彦の英語教育論を『日本人の矜持』から紹介したい。以前のブログで『国家の品格』から彼の英語教育論を紹介したことがあるので、そのアドレスを下に書いておく。クリックすれば当該記事にジャンプする。
Meiko Aikoku Blog 「語彙力の差」
http://blog.livedoor.jp/meiko_aikoku_blog/archives/51535139.html
*英語教育論:数学者藤原正彦『国家の品格より抜粋 #753 Oct. 8, 2009
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-10-08