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#2673 子どもの言語能力パワー・アップのために  May 11, 2014 [47. 語彙力と「読み・書き・そろばん」]

  学力低下の奥深くに言語能力の低下という問題があるらしいことを前回#2672で述べた。父親がゲームやパソコンに嵌っていると、男の子の場合だが、幼児期にコミュニケーションの時間が著しく減少し、言語発達にブレーキがかかってしまう可能性のあることに言及した。

【幼児期および小学生の時期の言語能力発達阻害のメカニズム】
 ここから先も当たり前すぎる推論のオンパレードである。
 理屈は簡単である。
 ①父親がゲームに嵌っていると、子どもがゲームに嵌ってもブレーキをかける家族がいない。
 ②ゲームに嵌った父親は本を読まない者が多い。子どもが本を読まなくてもほったらかしになる。
 ③絵本や児童書のレベルまではお母さんが付き合ってくれるが、そこから大人の本への橋渡しがなされない。
 ④こうして子どもは年齢相応の本をまったく読まず、漫画の本だけになってしまうから、「日本語語彙を拡張する旬の時期」を失ってしまう。

 語彙が爆発的に拡張する時期は10代の8年間くらいではないだろうか?それを空振りしたらその後の爆発的な拡張はほとんど不可能だろう。

【機器の高性能化と中毒患者の増大懸念】
 ゲームはオンラインとなり、機能が高度化して画像もますますきれいになっていくからゲームに嵌る若者が増え続け、そしていつか父親となる。恐いことだが、子どもたちの言語能力低下は始まったばかりかもしれない。いま現在で10%くらいだろうが、何も手が打たれなければ20年後には20%のお父さんたちがそういう状態になりかねない。
 高性能化することで、こうしたゲームツールへの依存性が強まりこそすれ、弱くなることはない。ゲーム機、スマホ、これから出現する超高性能機器にはおそらく人間の精神構造形成に強い副作用がある。
 親は自分の子どもに簡単にこれらの高額機器を買い与え、使用に制限をしないから、一部の子どもたちには精神の健全な発達を阻害する凶器と化する可能性を感じる。いや、それは現実に凶器と化しているが、まだ比率が小さいだけだ。パチンコと同様に心療内科領域で取り上げられ、大きな社会問題化するのはこれからだろう。

【言語能力(=基礎学力)が高い子どもはつくれる】
 言語能力低下の原因を裏返すと、言語能力アップの方法が見えてくる。
 基礎学力には四つの柱がある、「読み・書き・そろばん(計算)・話す」である。この四つの能力をしっかり育てたら、学力の高い子どもになるということ。お父さんとお母さん、わが子を高学力の子どもに育てよう。

 第一番目の方法は子どもを大人の中に入れて会話に参加させるということ。大人の会話が飛び交う中に子どもを置くと、同じ歳の子ども同士の会話とは語彙数が違った会話になる。
 店の主人と会話ができるようなレストランや寿司店、居酒屋などへ子どもを連れて行くというのもい。そうしている人を知っている、でも、なかなかできないから、一般的な方法とはいいがたい。
 わたしは家がビリヤード店をやっていたので、小学生のときから毎日店を手伝っていた。最初は遊びだった。まだ子どもが大人と対等にビリヤードをするのを大人が歓迎してくれた。いろんな職業のお客さんがいるから、ビリヤードが大好きで大人の会話の渦の中に毎日2~3時間ほど身をおくことになった。だが、これも一般的ではない、特殊な例外だ。

 二番目の方法は興味のある文章を読むこと。店を手伝うことと併行して小学4年生から北海道新聞の社説と卓上四季、そして1面の政治経済記事を読み始めたのがよかった。昔の新聞はルビが振ってあったので国語辞典を引きながら読んだ。これが日本語語彙の迅速な拡張に役立った。
 そうした基礎の上に中学時代にSF小説の濫読期を通過した、もちろん新聞は継続して読んでいたが、小学5年生以降は新聞の文章では辞書を引く必要が無くなっていた。その結果、高校生になったときには経済学、哲学、会計学、原価計算などの専門書が読めるくらい語彙力が豊かになっていた。もちろん漫画の本も毎週3冊週刊誌を買って読んだ。すぐれた漫画の本はたくさんあるから、漫画の本が悪いわけではなく、「漫画の本しか読まない」のがいけない

 回りに語彙が豊かな大人がいて、その大人と話す機会があれば子どもの語彙力や話す能力は高くなる。筋道がしっかりした話ができるようになる。
 そして年齢相応かちょっと背伸びした本をたくさん読めば、会話で使う語彙以外の書き言葉の語彙が爆発的に増える


【出版業界へのお願い】
 ルビを振ってある本が少ないことが、子どもたちを読書から遠ざけている。出版社は小学4年生を想定してルビを振ってほしい。そういう本に業界で共通規格や認証機構を作って「ルビ・マーク」をつけて販売してもらいたい。

【語彙数の目安】
 日常会話で使う語彙数はせいぜい500~2000くらいなものだろう。日本人なら2~5万くらいの語彙数はあったほうがいい。仕事できちんとしたコミュニケーションをしたり、仕事で読まなければならない専門書を読むためにはそれぐらいの語彙が理解できた方がいい。
 語彙の拡張のほとんどは読書で獲得されるものだから、「読む・書く・話す」の三つの能力の土台を堅固にするには本を読むこと以外にはない
 基礎学力は「読み・書き・そろばん」だから、このうち二つは本を大量に読むことで身につけることができる。「読み・書き・そろばん」能力の高い子どもは、高校生になってからも成績のノビシロが大きいというのは、塾の先生たちの共通した意見だろう

【良質なテクストの集積である日本文学の歴史を知っておこう】
 高校生になったら、日本文学史に眼を通した方がいい。
 昭和28年に出版された岩波講座『文学』8巻がスライド式書棚の奥にしまってある。18歳のときに神田か高田馬場の古本屋街を歩き回って購入した。ヒマになったら読むつもりで買い求めたのだが、まだほとんど読んでいない。戦後の物資不足を繁栄してこのころの出版物の紙質は粗悪だが、抜き読みした限りではナカミは紙質に比べたら格段によい。プロレタリア文学の流れが強かった時代だから、そうした影響が収載されている論文の随所に色濃く出ている。排他的なプロレタリア文学観と対峙しなければならなかった当時の事情はわかるが、いまからみるとそのあたりの議論がウザイ、しかしそれも時代の雰囲気として受容するしかない。源氏物語などは貴族社会の恋愛物語だから、プロレタリア文学観からすると唾棄すべき価値の低いものということになるが、それは狭い了見である。人間の生き方の選択の問題、男と女の違い、日本人が千四百年もかかって創りあげ受け継いできた価値観がそれぞれの作品の中に凝集されている。それらが価値の低いものだというのは優れたものをたくさん含んでいる伝統や文化の否定だ。昨年、林望の『謹訳 源氏物語』10巻をところどころ原典と対照しながら読んだので『文学6』所収の「源氏物語」論(秋山虔)は作品鑑賞の視野を広げてくれる。古典文学作品を他の文学作品との比較あるいは関連付けて読むというのも、楽しみの一つである。
 いまこうした『文学講座』を編むとしたらずいぶん違ったものになるのだろう。

 文学作品は古典と近代に分かれて扱われている。
『文学4 国民の文学(一)近代篇(1)』
『文学5 国民の文学(ニ)近代篇(2)』
『文学6 国民の文学(三)古典篇』

 amazonで検索してみたら2003年に別の執筆陣で十巻本で岩波講座「文学」が出版されていた。

 受験参考書程度の日本文学史で充分だから1冊買い求めることを勧めたい。amazonで検索したらたくさん出てくるが、できれば本屋で実物を確かめてから気に入ったものを買ったほうがいい。


*#2672 急激な学力低下はなぜ起きているのか?:ある假説 May 10, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09

 #2062 読書力を鍛えよ:高校を卒業した後一番必要な能力 Aug. 22, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-22

 #1667 琴奨菊と中島敦『名人伝』 : 大関昇進おめでとう Sep. 29, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-09-29

 #1601 中学生の国語力の惨状 July 28, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-07-28

 #1541 疑問文と否定文の区別がつかぬ・・・ Jun. 5, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-06-05

 日本語の語彙力の重要性(3):平均的な中2の実情 #994 Apr.11, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-04-11


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 ルビが振ってある斉藤孝の音読破シリーズは6冊あるので、小学生のうちに子どもの本棚にそろえよう。
 他にポプラ社の「百年小説」、講談社「青い鳥文庫」というのがあるようだ。

*ポプラ社「百年小説」⇒お薦め! 6600円
http://www.poplarbeech.com/sp_pickup/hyakunen/

 講談社「青い鳥文庫」
http://shop.kodansha.jp/bc/aoitori/index_main.html

 

斎藤孝の音読破〈1〉坊っちゃん (齋藤孝の音読破 1)

斎藤孝の音読破〈1〉坊っちゃん (齋藤孝の音読破 1)

  • 作者: 夏目 漱石
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2004/06
  • メディア: 単行本

斎藤孝の音読破〈3〉銀河鉄道の夜 (齋藤孝の音読破 3)

斎藤孝の音読破〈3〉銀河鉄道の夜 (齋藤孝の音読破 3)

  • 作者: 宮沢 賢治
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2004/11
  • メディア: 単行本

斎藤孝の音読破〈2〉走れメロス (齋藤孝の音読破 2)

斎藤孝の音読破〈2〉走れメロス (齋藤孝の音読破 2)

  • 作者: 太宰 治
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2004/10
  • メディア: 単行本

羅生門―齋藤孝の音読破〈6〉 (齋藤孝の音読破 6)

羅生門―齋藤孝の音読破〈6〉 (齋藤孝の音読破 6)

  • 作者: 芥川 龍之介
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 単行本

斎藤孝の音読破〈5〉山月記 (齋藤孝の音読破 5)

斎藤孝の音読破〈5〉山月記 (齋藤孝の音読破 5)

  • 作者: 中島 敦
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2005/04
  • メディア: 単行本

斎藤孝の音読破〈4〉五重塔 (齋藤孝の音読破 4)

斎藤孝の音読破〈4〉五重塔 (齋藤孝の音読破 4)

  • 作者: 幸田 露伴
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2005/03
  • メディア: 単行本





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