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#2447 仮定法とは何か(2): 概念規定と基本型 Oct.13, 2013 [80.英語談義 (コメント欄から)]

 第2回は、①'Cobuild English Grammar'のsubjunctiveの説明と英語の問題集②'Grammar In Use' を材料に接続法と「仮定法」に線引きを試みます。一つではなんですから、Leechの③"A communicative Grmmar of English"も俎上に上げます。

 いまわたしの頭の中に、「假定法とは何か」という問が立てられています。假定法とはこれこれであると、概念を定義できれば満足できそうです。基本型はすでに'Boys be ambitious.'で見たように動詞の原型を使うことにあります。

 ①の索引をみるとsubjunctiveには四つの項目ナンバーが割り当てられています。基本は'7-40'(324㌻)にあります。
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7-40 When someone makes a suggestion about what someone else, not their hearer, should do, you report it by using a 'that'-clause. This clause often contains a modal, usually 'should'.(誰かが(話者ではない)他の誰かになすべきことを提案をする場合に、that節を使って伝える。このthat節はしばしば叙述の法の助動詞―通常はshould-を含む)

  He proposes that the Government should hold an inquiry.
  (政府が調査すべきだと彼が提案した)
  It was definite enough for a doctor to advise that she should have treatment.
  (彼女が治療を受けるべきだと医者が言うのはあたりまえだった)

  Note that this structure can also be used to report a suggestion about what the hearer should do. Consider the example; 'Her father had suggested that she ought to see a doctor'; her father might have suggested it directly to her.
 (ここで留意すべきは、この構造は聞き手が何をなすべきかということについて一つの示唆を伝えられるということ。具体例を挙げると、'娘は医者の診察を受けたほうがいいと父が勧めた';父は娘に直接それを(医者の診察を受けるべきだと)勧めたのかもしれない。)
  If you do not use a modal, the result is more formal.
 (法の助動詞を使わなければ、結果はもっとフォーマルになる)
  Someone suggested that they break into small groups.
 (分かれて小集団になろうと誰かが勧めた)

 Note that when you leave out the modal, the verb in the reported clause still has the form it would have if the modal were present. This use of the base form is sometimes called subjunctive.(留意すべき点は、法の助動詞を外すと、被伝達節の中の動詞は、法の助動詞があればあったであろう基本形のままである。この基本形の利用がいわゆる亜型接続法である

 It was his doctor who advised that he change his job.*
 (仕事を替えたほうがいいと勧めたのは主治医だった)
 I suggested that he bring them all up to the house.
 (彼がそれを全部家に上げるべきだと提案した)
 He urges that the restrictions be lifted.
 (その制限は解除されたと彼が断言した)

 Here is a list of reporting verbs which can be followed by 'that'-clause containing a modal or subjunctive.
(リストに挙げた伝達動詞は、法の助動詞あるいは亜型接続法を含むthat節が後続しうる)

  advise   agree  ask  beg  command  decree  demand
  direct  insist  intend  order  plead  pray  prefer
  propose  recommend  request  rule  stipulate
  suggest  urge 

 Note that 'advise' , 'ask', 'beg', 'command', 'order', and 'urge' can also be used with an object and a 'to'-infenitive, and 'agree', 'pray', and 'suggest' can also be used with 'that'-clauses without modal.
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 並べられたリストにある21個の動詞群の場合に、that節でshouldを使うが、subjunctiveはshouldを外した形だという説明です。わたしは順序が気になる性質でして、こういう説明だと基本はshouldであり、shouldが抜けた特殊ケースがsubjunctiveであるという説明順序になっています。
 一般 ⇒ 特殊

 形の上から見るとそういうことが言えるようです。しかし、基本はむしろsubjunctiveのほうで、shouldのほうが、基本から派生した表現ではないかという気がするのです。現実空間と反現実の仮想空間に橋を渡してつなげているのがsubjunctiveの機能です、わかりやすいでしょう。
 これを話者の心的状態を表す助動詞を使って同じ意味を表現するとしたら、shouldが最適になります。「当然~すべきだ=まだしていない」、「当然~すべきだった=しなかった」という二つの文が関連をもって「接続」されます。
 わたしはsubjunctive(亜型接続法)を演繹的な方法で説明しようとしています。それには出発点を措定しなくてはいけませんが、それが三人称で'基本形'を使う表現形式であると仮定します。そうすると圧倒的に多いshouldの用例と他の法の助動詞を使った用例が演繹的に説明可能になります。かように概念相互の関係を比較検討すると、subjunctiveの出発点に何を措定すれば統一的な説明ができるのかがわかります。subjunctiveの機能を相反する現実空間と仮想空間をつなぐものととらえ、出発点に三人称・動詞の基本型をすえることで、shouldだけでなく他の助動詞を用いた反実仮想の用例がすんなり定義できます。

 いま、「同じ意味」と書きました、これ案外重要です。同じ意味のものを同じ概念と考える立場からは意味が同じでその表現型が違うということになります。他にも同じ意味で異なる表現型のものがあれば、同じ概念に包摂できます。
 たとえば、subjunctiveを「反実仮想」という概念範疇にある表現ととらえると、ずいぶんと間口が広がります。
 説明を繰り返すと、現実にはありえないこと、あるいは過去の現実とは反対のことを想像して言うときは、言うこととそれとは逆のいまのありさま=現実、あるいは過去にあった出来事が頭の中に浮かんでいます。その二つが関連をもってつながれているというのがsubjunctiveの正体です(ドイツ語ではconjunctive)。すなわち、反実仮想。

 順序が気になると言いましたが、shouldを基本形に措定すると、その脱落から本来のsubjunctiveは説明がつきますが、「反実仮想」は他の(心的状態を表現する)叙法の助動詞(could、would、might)も使用可能ですから、そちらの説明が出来なくなります。shouldはシェアーが圧倒的に多いだけで、反実仮想という点からは他の助動詞と同列なのです。

 動詞の基本形を使うのが本来のsubjunctiveと定義すると、そこから類似の意味、類似の反実仮想のセットが想定できる文章はすべてsubjunctiveに含めて考えることができます。if-Clauseは両方セットでそろった表現形式でsubjunctiveの特殊な形態と定義できます。
 

 ここまでがわたしの現在地点でのsubjunctive(亜型接続法)の結論です。案ずるより産むが易し、きれいに整理できたようなので、みなさんのご批判を仰ぎたいと思います。

 あと3点の検討が残っています。
 基本的な概念定義が終わったので、もう半ばどうでもいい問題ですが、問題集'Use In English'でsubjunctiveとif-Clauseがどのような章立てになっているのか、そして高校英文法教科書ではどのような説明になっているのかということです。あ、ひとつ忘れてました、Leechの③"A communicative Grmmar of English"を、これはどうしようかな、必要なさそうな気もしますので、書きながら考えます。
 三つ目はsubjunctive moodに関する国文法学者の説明を紹介したいと思います。なんと後志のおじさんと同じ意見の国文法学者を発見しました。50年も前にsubjunctiveは「反実仮想」で日本語では反実仮想の助動詞「ましかば...まし」がそうだと解説しています。こんなこと国文学者でなければなかなか気づきませんよ、後志のおじさんの直感に脱帽です。
 後志のおじさんがsubjunctiveは反実仮想だ何度もというので、手元にある数冊の国文法関係の本を調べていて、あっと、驚きました、いたんですね、同じ見解の学者が。日本語にはsubjunctive専用の助動詞があった。

 後志のおじさんは英文法と日本古典文法を比較して眺められる知識の幅の広さをもっています、そこから斬新な問題意識がうまれる。Hirosukeさんはいままでまったく耳にしたことのない視点を呈示して解説してくれます、合格先生は英文法でも国文法でも智慧袋の中からなんでも自在に取り出してみせてくれます、物事を幅広く見られるというのは面白いでしょう?
 高校生と大学生に伝えたい、一生懸命に勉強しなさい、そうすればたくさん疑問が湧くから、好奇心の赴くままに本を読みなさい。さまざまな分野の情報を脳にインプットしておくと、それらが脳の中で自然に混ざり合って発酵し、次第に熟成して美味しいお酒になるのです。

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【予定変更】13日午後7時追記
 Michael Swan "Practical English Usage"(Third Edition)に載っているsubjunctiveの解説を次回取り上げたい。



 コメント欄が英語雑談喫茶店と化している、本欄よりそっちのほうがずっと面白いよ、ちょっと覗いてみたら?

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*#2423 'IAEA members give grief over leaks' Sep. 28, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-09-29

 #2435 "#2423の一文解説" Oct.4, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-04-1

 #2443 仮定法ってなんだろう?(1):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-09-1

 #2444 仮定法ってなんだろう?(2):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-10-1

 #2445 仮定法ってなんだろう?(3):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-10-2

 #2446 仮定法とは何か(1) : Boys be ambitious. Oct. 11, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-11

 #2447 仮定法とは何か(2): 概念規定と基本型 Oct.13, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-12

 #2449 假定法とは何か(3): Swanの説明 Oct. 14, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-13-1

 #2452 仮定法とは何か(4):国文法学者の見解 Oct. 16, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-16

 #2453 仮定法とは何か(5) : 国文学者の見解ー2  Oct. 17, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-16-1



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#2446 仮定法とは何か(1) : Boys be ambitious. Oct. 11, 2013 [80.英語談義 (コメント欄から)]

  仮定法について、コメント欄で三人の方と議論してきた。その議論の経緯は弊ブログ本欄へアップして紹介した。#2343、#2344、#2345にある。
 三人寄れば文殊の智慧で、わたしは文殊菩薩の化身とおぼしきお三方との議論で、いくつか気がついたことがある。
 三人のうちの一人、「後志のおじさん」はドイツ接続法を根拠に仮定法という得体の知れない深海魚を俎上にのせ包丁を入れて見せてくれた。手には和包丁(反実仮想の助動詞'まし')が握られている。学問をやるにはある種のセンスである直感とものごとを広い視野からみる幅の広い教養が必要なのだが、そういうものを兼ね備えている稀な人のようだ。Hirosukeさんは独自な視点から英語を眺めることのできる人、「カタチ・イミ・キモチ」の三次元座標に棲んでおり、どんな問題もその三次元座標空間に位置づけて解説してみせる、なかなか刺激的。合格先生は「釧路の教育を考える会」の重要メンバーで、物事の冷静な分析にかけては会でナンバーワンの力量の持主である。この三人の文殊様の分身の横に座って仮定法について教えを請うebisuは幸せこの上なし。

 仮定法についてはかねがねヘンだという漠然とした思いがあったが、突き詰めて考えたことはない。ハンドルネーム「後志のおじさん」が鋭い問題提起をしてくれたので、そこを皮切りにいくつか「証拠(=文献)」を挙げながら検討してみたい。
 第一ステップは用語解説とクラーク博士のあの有名な一句が假定法であるや否やの検討。

 ①conjunctive(接続法)
 conは接頭辞で「共に」をあらわすラテン語です。junctiveはjunctionの派生語でしょう。高速道路のジャンクション、「接続」という意味をもっています。tiveは形容詞語尾ですが、この例のように名詞のことがあります。あえて日本語にしたら、「~的な(もの・こと)」という意味でしょう。形容詞のほうを参考事例にあげて起きます。
 sense(感覚)⇒sensitive(敏感に反応する、敏感な)
 compare(比較)⇒comparative(比較による)
 conserve(保存する)⇒consetvative(保守的な)

 conjunctionという単語からは二つの文が接続されているイメージがわきます。一方だけが文として顕在化しても、他方の文が脳裏に浮かび上がる。両方が姿を現す場合も、片方だけが姿を現す場合もアリ。

 ドイツ語の接続法は型がきっちり決まっている。詳しくはこちらをご覧戴きたいのだが、絶版になっている。
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 関口存男著『関口 新ドイツ語大講座<上>』
  「第26講 接続法の形」: 第一式接続法 第二式接続法
  「第27講 接続法の用法(1) 間接話法」
  「第28講 接続法の用法(2) 要求話法」
  「第29講 接続法の用法(3) 約束話法」

 関口存男著『ドイツ接続法の詳細』
--------------------------------------------
 関口存男はドイツ語文法の巨人であるが、フランス語や英語にも堪能である。短い期間、アテネフランセでフランス語も教えたことがあると書いてあったのは『ドイツ語講話』だったか他の本だったか、寄る歳並みには勝てず、記憶が混線しつつあるので、あてにはならない。
 「後志のおじさん」がドイツ語大講座で勉強したとどこかに書いていた。
 団塊世代のわたしが二十代のころに、まだ東京の書店においてあった関口存男先生の本を数冊買いあさり、本棚を飾っている数冊のうちの2冊。
 『~大講座』は上・中・下の三冊。Eさんがやはり『~大講座』を何度も読み返したという。暗記するほど勉強したというのはEさんだったか、「後志のおじさん」だったか、両方だったか、はて、最近のことなのにもうあやしい。このお二人に比べるとドイツ語に入れ込めなかったわたくしの不勉強がはずかしい。
 三好助三郎著『独英比較文法』も役に立ったとメールで知らせてくれたのは間違いなくEさんであると思い出してホット胸をなでるebisu、ボケてはいないぞ。同じ本がわたしの書棚にもある、独英両方一時に勉強できる、しかも比較しながら、一石二鳥を絵に書いたような本。


 ②subjunctive(「仮定法」と辞書には書いてあるが・・・)
 subは「副」「亜型」を表します。地下鉄はsubwayでした。地上の道に対して地下の道(地下鉄)は副次的なものです。ドイツ語のconjunctiveに比べて型が崩れていることを意識したのでしょう、ちょっと遠慮した感じのあるsubjunctive、「亜型接続法」とでも訳せばよかったのでしょう。仮定法という日本語を充ててしまいました(『ジーニアス4版』には「仮定法」となっています)。
 仮定は気持ちが悪いので假定と書きますが、假定は「もし~なら、...だ」というのが日本語の感覚です。しかしsubjunctiveにそういう意味はありません。
 日本語で「假定法」と命名されて独り歩きすることになったようです。あなたも「假定」という漢字からイメージに浮かぶのは「もし~ならば、...だ」でしょう?これが素直な日本人の感覚です。ところがSubjunctiveを三つに分解して一つ一つ見ていっても、「假定」という意味はどこにもありません。名前にはそれなりの意味があります、あなたのお名前がそうであるように。

 'COLLINS COUBILD Advanced Learner's English Dictionary'より
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 Subjunctive
   In English, a clause expressing a wish or suggetion can be put in the subjunctive, or in the subjunctive mood, by using the baseform of a verb or 'were'.
   Examples are 'He asked that they be removed' and 'I wish I were somewhere else'.
   These strucdtures are formal.

 英語においては、願望や提案を表現する節は亜型接続法に分類され、動詞の基本形または'were'を用いる

*mood:《言語学》(叙)法◆述べることに対する話者の心的態度を表す動詞(句)の形で、英語には事実を表す直説法(indicative mood)、命令を表す命令法(imperative mood)、起こりそうもないことを表す仮定法(subjunctive mood)の3種類がある。(ウィキペディアより)
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 面白いものを見つけました、小西甚一著『国文法のちかみち』(洛陽社、1959年初版、2,007年改訂41版)の中に、反実仮想の助動詞の「ましかば...まし」の項目のタイトルが「[へ]仮想(subjunctive mood)」219ページとなっていました。
 「假定法」ではなく「仮想」という日本語を充てています。反実仮想の助動詞「ましかば...まし」はsubjunctiveそのもの、3回目で引用してみたいと思います。(10月12日追記)
------------------------------------------

 典型的な事例を最初に挙げます(コメント欄で「後志のおじさん」と議論しました)。
 札幌農学校のクラーク博士は8ヶ月赴任して別れを告げる時に馬上から次のように言いました。
 (1)Boys, be ambitious.(少年よ大志を抱け)
  (2)Boys be ambitios.(少年よ野心的であれ)

  わたしはこの文を見て、クラーク博士が馬上からマジメで勤勉な若い学生に向かって、「勤勉なだけではダメだ、世俗的な栄誉、地位や経済的成功を求めよ、それが神の意思にかなっているのだから、学生達よ野心的であれ」そう言っているシーンが脳裏に浮かびました。そのせいでBoysの後ろについているカンマを見落としました。鋭い「後志のおじさんは」そこを見逃してくれませんでしたね。「カンマがあるよ、命令文だよ」とやんわり指摘してくれました、もっと優しい言葉でね。クラーク博士はそんなに尊大で偉そうな人柄だったのかなと気になり、ネットで検索。
 どのような別れのシーンであったかはウィキペディアに載っています。馬上から一言例の台詞を吐いて、さっと走り去ったのです。クラーク博士、超ーかっこいいね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%AF#.E5.B0.91.E5.B9.B4.E3.82.88.E3.80.81.E5.A4.A7.E5.BF.97.E3.82.92.E6.8A.B1.E3.81.91

 ところが文献に残っている文にはカンマがつけられています、誰がつけたのか、もちろん、感動を持って惜別の辞を聴き、書きとめた人でしょう。(1)にはカンマが挿入されており、書きとめた人の主観と解釈が入っています。命令文と理解したのでしょう。書きとめた人に接続法の知識があったかどうか不明です。
 カンマなしでも立派な英文です。(2)は典型的な接続法subjunctive(亜型接続法)の文で、動詞が基本形になっています。高校英文法の範囲ではこれは「仮定法」に入るのでしょうか、後で検討してみたいと思います。
 普通の高校英文法参考書はどうも説明の方向が逆になっているようです。ifClauseから説明をはじめて、亜型接続法本来の用法を例外扱いしています、あとで詳しい説明をすることになりますから、しばしお待ちください。

 実際、この文の後にambitiousとはどういうことかという説明が続きますが、これは書きとめた人の創作でしょう。クラーク博士はピューリタンでしたから、お金を儲けることや立身出世を追い求めることは、神の意にかなうことなのですが、そうしたことを否定した言葉が続いています。ですから、後の文を創作した人は二重に間違えているとわたしは考えます。あの当時ですから、無理もないことと思います。「反実仮想の助動詞」という国文法での言い方70年ほど後のことになります。でも、間違いでしょう。それがebisuの理解。ですが、命令文にも読めるという点は否定しません。
 おそらく読み手の心の状態に関わることなのでしょう。二様に読める、そのことがうれしい。

“Boys, be ambitious! Be ambitious not for money or for selfish aggrandizement, not for that evanescent thing which men call fame. Be ambitious for the attainment of all that a man ought to be.”

 ドイツ語やフランス語の知識のない人が、そしてピューリタンについても知識のない人が、言葉を付け足したというのがわたしの推測です。

 ピューリタンとお金儲け(世俗的な仕事)の関係について興味のある人はマックスウェーバーの『プロティスタンティズムの倫理と資本主義の精神』をお読みください、岩波文庫版で出ています。安い、投資効果大です。わたしはずいぶん昔に眼を通したような気がします。学生時代に母校の助教授でこの分野の専門家がいましたが、残念ながら40代で亡くなりました。授業の後で生意気な学生の議論に何度か付き合ってくれました、いい先生でした。田舎、いや僻地根室の小学校でも中学校でも高校でもいい先生数人に教えていただきました。大学でも何人かの先生に親しく教えを請いました。そういうことが積み重なって自分のいまがあります。

 高校の先生たちはこの文を説明するときには、命令文と接続法の二通りの解釈のあることを生徒に説明してもらいたいと思います。で、願わくば、クラーク博士の脳裏にあったのは亜型接続法の文であったと、時空を超えてその場に立ち会った思いで生徒に感動を伝えてほしいのです。もう一度声に出してみてください。
 Boys be ambitious.

 頭がよくて勤勉な生徒達に、まじめに勉強するだけではダメです、もっと「野心的であれ」と檄を飛ばしたのだと考えたい。わたしはこの文を読むたびにそういうシーンが脳裏に浮かびます。1877年5月に発せられたこの言葉は時空を超えていまも道産子に投げかけられています。根室っ子も含めて道産子は素朴なだけでいまもちっとも野心的ではないのです。野心的であることを忘れ、広い大地に住んでいるにも関わらず、オープンマインドを忘れ、心は閉鎖的、136年後に存在している道産子がクラーク博士をがっかりさせたくはないですね。

(クラーク博士は米国に戻り心臓病で8年後の1886年3月9日59歳で亡くなっています。養生大学の企画失敗、作った会社の倒産とあまりよい晩年ではなかったようです。)

 第2回は、'Cobuild English Grammar'のsubjunctiveの説明と英語の問題集'Grammar In Use' を材料に接続法と「仮定法」に線引きを試みますが、はたしてうまくいくのかどうか。わからぬことはめくらヘビにおじずでやってみるのみ。 

*#2423 'IAEA members give grief over leaks' Sep. 28, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-09-29

 #2435 "#2423の一文解説" Oct.4, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-04-1

 #2443 仮定法ってなんだろう?(1):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-09-1

 #2444 仮定法ってなんだろう?(2):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-10-1

 #2445 仮定法ってなんだろう?(3):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-10-2

 #2446 仮定法とは何か(1) : Boys be ambitious. Oct. 11, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-11

 #2447 仮定法とは何か(2): 概念規定と基本型 Oct.13, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-12

 #2449 假定法とは何か(3): Swanの説明 Oct. 14, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-13-1

 #2452 仮定法とは何か(4):国文法学者の見解 Oct. 16, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-16

 #2453 仮定法とは何か(5) : 国文学者の見解ー2  Oct. 17, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-16-1





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プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)

  • 作者: マックス ヴェーバー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1989/01/17
  • メディア: 文庫



【注】(10月13日追記)

北大図書館のオフィシャルサイトより
http://www.lib.hokudai.ac.jp/collections/clark/boys-be-ambitious/
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“Boys, be ambitious!”について

 この数年「Boys be ambitiousに続く言葉について知りたい」という問合わせが多くなった。調べてみると,高校や中学の教科書の中にも次のような言葉をのせたものがあるようである。

 “Boys, be ambitious! Be ambitious not for money or for selfish aggrandizement, not for that evanescent thing which men call fame. Be ambitious for the attainment of all that a man ought to be.”

 この言葉がこのように広まったのは,昭和39.3.16の朝日新聞「天声人語」欄によるものと思われる。「天声人語」はその出典として稲富栄次郎著「明 治初期教育思想の研究」(昭19)をあげ,さらに次のような訳文を添えている。「青年よ大志をもて。それは金銭や我欲のためにではなく,また人呼んで名声 という空しいもののためであってはならない。人間として当然そなえていなければならぬあらゆることを成しとげるために大志をもて」

 ここてはクラーク博士の「大志」の内容は,富や名誉を否定して内面の価値を重んじる倫理的なものとなっている。これは“Boys be ambitious in God”として,神への指向を強調した人々の解釈と通ずるものである。

 しかし,この言葉がクラーク博士のものであることを認めるには,いくつかの無理がありそうである。まず,“Boys, be ambitious!”は帰国に際し島松まで見送った学生たちに向って馬上から最後に一声のべられたもので(第一期生大島正健博士の著書による),その時 の状況からみてこれは「さようなら」に代る別れの言葉であったと思われる。
次にクラー ク博士は決して富や名誉を卑しんでいなかったことである。例えば農学校の開校式の演説でも,学生たちに向って「相応の資産と不朽の名声と且又最高の栄誉と 責任を有する地位」に到達することをよびかけている。即ち日本が因襲的な身分社会から脱却した現在では,努力によっては国家の有為な人材となることを妨げ るものは何もないことをのべ,学生たちの青年らしい野心(lofty ambition)を期待したのである。このためにとくに勤勉と節制の必要を説いているが,ここには「神の恩寵」を確信して世俗的な職業に励むピューリタ ンの精神がよくあらわれている。
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#2445 仮定法ってなんだろう?(3):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 [80.英語談義 (コメント欄から)]

 波をちゃぷちゃぷかきわけて仮定法論議はどこへ行く♪
 どこへいくのかわかんないよ。(笑)
 でもきっと面白いことになりそうな予感あり。

 #31~46

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#31

Hirosukeさんのおっしゃる通り、shouldの省略だとI have taken ……―――――――
ただ、ebisuさんのあげた例から、shouldの働き「は」なんぢゃ?と考えてみると、shallで「は」ないから、仮定法でしょ?というのもありか、とも。――――
いずれにしても、実際に理解できるならネーミング「は」、便宜的でもいいだろうと思います―――――
だいたい、ebisuさん「が」おっしゃたように「仮定」法なんて名付け方が、trickyかつトリックみたいで私自身「が」本当に苦しみましたからね。―――――
日本人なんだから、「ましかば…まし」を英語でいうと?って、古文とのコラボレーション授業で片付けるべきだと思っているのです。5時間もやれば、大学進学を目指す生徒なら理解「は」充分できると思うのですが。
by 後志のおじさん (2013-10-08 00:23)
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#32

>提案や願望を表現する節は
>仮定法(接続法)では動詞の原型かwereを用いる。

>'He asked that they be removed'
                ↑
昭和56年発行のチャート式(by オックスフォード大講師の慶大教授)によりますと、
------------------------------------------
米ではshouldを用いないで動詞の原形を
用いることがしばしばある。
------------------------------------------

かつてのイギリスやEU圏では、
should を入れるのが一般的だったんですね。

「アメリカでも古い人はshould を入れる。」
とも受け取れます。

イギリスにせよアメリカにせよ、
完全な土着ネイティブより移民の方が多く、
色んな英語が飛び交っているのも、
省略が正式用法となる一因でしょう。

言葉の乱れと変遷が速過ぎて、
最大限に公約数を取らざるを得ないからです。

by Hirosuke (2013-10-08 00:24)
=============================
#33

Hirosukeさん、前のコメントを消したから、私の「が」宙に浮いてしまいました。――――様々な言語の人が交わると、言語「は」簡略化していくのですよね。でも古い部分が残っていたりして。前者の例―Me is on business in Japan.I not speak Japan. Speak you English?(実際に私が言葉を交わしたピディンです。)
―――後者の例「したっけ、あしたこえばいいよ。」(高校生でもまだまれに北海道後志で話者のいる日本語)したっけのけは、けり。こえのこは、古文のカ行変格活用「来」の未然形。autumnとfallみたいでしょ?―――言葉の乱れとみるか、変形とみるか、視点「は」様々ですね。
by 後志のおじさん (2013-10-08 00:51) 
=============================
#34

後志のおじさん

すみません、
証拠【が】必要だと思って書き直しました。

大きく趣旨【は】変わっていないのですが、
コメント欄の流れ【が】分断されちゃいましたね。

当地(栃木県)の古い人【は】、
「したっけれ、・・・」と言います。

by Hirosuke (2013-10-08 07:42) 
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#35

説明が足りなかったようです。

わたしが本欄で挙げたのは次の一文でした。
> Tokyo should have sought out a solution~
>は「should+現在完了」で過去を追想しながら心の奥にしまってあるキモチを表現できる形式である。

これを高校英文法の範囲では用例の説明がないので仮定法ではないとしました。
Subjunctiveとはshouldを使わずにthat clauseに動詞の原型を置く用法です。動詞の原型がshouldの意味を含みます。よりフォーマルな言い方。
COUBILD English Grammarの'7-40'に説明があります。

ところが、'7-82'で間接話法のthat節で使われるshouldがsubjunctiveだと、いくつも文例を挙げて示しています。
長くなりそうなのでこれもあとで本欄で説明します。

國學院大學で先生をしている友人のEさんが、仮定法に関するわたし達の議論を読んでメールでこんなコメントしてくれました。

-------------------------------
God save the Kingこそドイツ語の接続法に相当するという話は昔、この部分を読んでなるほどと思った記憶があります。

たとえば、クラーク博士のBoys be Ambitious ! もこれを読むまでは

Boys, be ambitious ! だろうと思っていましたが、<接続法としても読めるのだ!>とこじつけることもできるわけです。

---------------------------------------

Boys, be ambitious !は学生に向かっていっているのですから、命令文ではなく、「かくあれ!」という意味でしょうね。これはsubjunctiv mood(接続法)の典型的例にみえます。
高校で英語を教えている先生たちはまさか、これを「命令文」だなんて教えていないでしょうね。

Eさんの専門は哲学ですが、最初に出会った頃はギリシア哲学の諸概念を理解するためにギリシア語の勉強をしていました。なかなかすごい奴がいると思ったものです。同世代なので、関口存男の『ドイツ語大講座』を繰り返し読んで勉強しています。
いまは國學院大學の先生をしています。

by ebisu (2013-10-08 10:17)
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#36

◆中・高・大の皆さん◆

この話題、ちゃんと着いて来れてる?(笑)
え、本当?
そりゃスゴイ。
そんなキミは僕の学生時代より大人だな。
あの頃の僕【だった】ら、何も理解できなかったよ。
          ↑
      「今は違うけど。」

       
YAMATO高校♪合唱部 『わが◆マイルストーン』2

by Hirosuke (2013-10-08 12:54)
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#37

Boys,be ambitious!なら、「少年たちよ、大志を抱け。」Boys be ambitious!なら、「少年たちが、志を持たんことを。」ですか。カンマの有無で、意味が変わります。―――――仮定法なんて日本語名、どんなセンスの人がつけたのでしょうかね?これでは、ifがあれば全て仮定法と思ってしまいかねませんし、私も高校生のころは、混乱していました。ネーミングに理解を難しくする原因あり!
by 後志のおじさん (2013-10-08 14:22) 
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#38

>ネーミングに理解を難しくする原因あり!
    ↓
だから僕は【文法用語】を捨てて、
【カタチ・イミ・キモチ】で教えてます!!!!!!!

by Hirosuke (2013-10-08 14:34)
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#39

Hirosukeさん「へ」
とは言うものの、主語とか三単現のSとか関係代名詞とか、使役とか、ある程度 のtermは、共有しておいた方が、話がはやくすすめられるのも確かです。でも仮定法はあまり深入りしないほうが、よさそうですね。―――――ラジオ英会話の遠山先生も15年ほど前の英会話入門の時代には「仮定法」という言葉だけは、使っていましたが、最近は全く使わなくなりました。共通理解を前提にできないからだと思います。私も説明する時は、termは「仮定法」だけは使いますが、そこから先は立ち入らないようにしています。
by NO NAME (2013-10-08 17:37)
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#40

カンマを見落としていましたね。
でも、これって、8ヶ月間札幌農学校にいたクラーク・スミスが馬上から学生に別れを告げたときの言葉ですから、カンマのない表記もありえます。
カンマを加えたこと自体が、書き記した人の解釈とも言えます。

クラーク博士の本音はどうだったのでしょう。

'God save the King.'とは違って「少年」神はではありませんから、「少年よ野心的であれ!」くらいの日本語が適当でしょう。

札幌農学校の学生達は純朴で勤勉だった、しかし、野心的ではなかったので、それを慮って馬上から一言「野心的であれ」と発したと解釈したい。

札幌農学校については、黒田清隆がこの学校に校則は要らぬ、ただ'Be gentleman'(紳士たれ)と言ってますが、これはsubjunctiveという理解だからこその訳だと思いますがいかが?
by ebisu (2013-10-08 22:19)
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#41

Hirosukeさんへ

>ネーミングに理解を難しくする原因あり!

この点はその通りだと思います。
subjunctiveは接続法と素直に訳せばよかったのです。仮定法なんて日本語を充ててしまったので、その日本語が独り歩きして、現在のような姿になったのでしょう。

数学にも似たような事例があります。irrational numberをに無理数という言葉を充ててしまいました。中3の生徒は初めて「無理数」という語を見たときにはナカミの判断がつきません。
ir・ration・al⇒否定・理性・形容詞語尾
こういう受け取り方をしたので、無理数という日本語を充ててしまった。完全な誤訳です。
ir・ratio・nal⇒否定・比・形容詞語尾
「比で表すことのできる」という意味だったのです。整数比で表せない数のことだった。"非分数"というような日本語を充てれば理解が簡単でした。

方向違いの「仮定法」が広まってしまったのは受験問題に使いやすかったからかもしれませんね。
世の中にはドイツ語やフランス語の接続法の知識のない人のほうが圧倒的に多いので、「仮定法」に違和感がなかったのでしょう。

じつはわたくしは1990年前後にGrammar In Useをやってみて、subjunctiveの扱いが「仮定法」とはまったく違うので不思議に思っていました。ようやく謎が解けた思いです。

文献を示して整理して"subjunctiveといわゆる「仮定法」"、今週中にアップしたいと思います。
by ebisu (2013-10-08 22:54)
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#42

NO NAMEとなっていますが、たぶん後志のおじさんがハンドルネームを書き忘れたのでしょう。

>ラジオ英会話の遠山先生も15年ほど前の英会話入門の時代には「仮定法」という言葉だけは、使っていましたが、最近は全く使わなくなりました。共通理解を前提にできないからだと思います。私も説明する時は、termは「仮定法」だけは使いますが、そこから先は立ち入らないようにしています。

仰るとおり深入りしないほうがいいですね、高校英文法の範囲を越えていますから、大学の英文科の学生が学ぶべばいい。

でもこれだけ議論を重ねたのですから、本欄で一度整理はしてみます。

by ebisu (2013-10-08 22:59)
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#43

僕が使う文法用語は【動詞】と【前置詞】だけです。

主語
⇒「は」とか「が」とか

三単現
⇒he, she, it の(e)s

関係代名詞
⇒カタチを図解で説明。
●●格とかも使いません。
自分で図解できるように練習させる。
関係副詞も全く同じ図になることを強調。

残念ながら、
文字や言葉では伝わらないんですよ、
この手法は。

by Hirosuke (2013-10-08 23:45) 
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#44

ご指摘の通り、NO NAME は私のコメントです。(入れたはずだったのですが。)―――Boys be ambitious.ですが、学生に顔を向けての言葉なら、,あり、「大きな夢を持ってしっかりやれ!」との激励の言葉。天を仰いで、なら、,なし「ここにいる若者をはじめとして、若者がみな、志を高く持って貰いたいものだ。」との願い。そんな場面が浮かびます。――――――整理するのは大変な作業になると思いますが、ドイツ観念論的な感じがするebisuさんですから、精緻なものになるだろうと楽しみにしています。(アバウトな私には無理です)――――Hirosukeさんへ。私の場合、仕事が、原稿なので、限られた字数でまとめるとなると、どうしても使わざるを得ないのです。相手が目の前にいるなら、あまり用語は使わないで文の先頭からイメージのリンクをとらせてあげるのですが。
by 後志のおじさん (2013-10-09 09:35) 
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#45

カンマありとカンマなし、馬上から学生に向かって惜別の辞をのべたクラークがどう考えて発話したのかは、どちらにも読めるということでいいのでしょう。

キモチは両方だったのかもしれません。
高校の先生は両用の読み方ができることを生徒に説明してほしいと思います。とくに北海道の高校ではぜひそうしてもらいたい。

【Eさんの直感intuitionのすごさ】
Eさん、いい感覚している。10月5日午前中に届いたメールを大学生諸君の向学心を喚起するためにオープンしたい。メールは適宜ブログで取り上げてもいいと了解があるが、本欄へアップするときには、通知するようにしている。
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本日のコメントにありましたが、God save the Kingこそドイツ語の接続法に相当するという話は昔、この部分を読んでなるほどと思った記憶があります。
たとえば、クラーク博士のBoys be Ambitious ! もこれを読むまではBoys, be ambitious ! だろうと思っていましたが、<接続法としても読めるのだ!>とこじつけることもできるわけです。

高校時代、教師がよく「ボーイズ・ビー・アンビシャス!」と平板に読むのをそれはおかしい、ボーイズで一旦切らなければ英語にならないと質問したらムニャムニャ言って適当に逃げてしまいましたが、関口存男の本を読んだとき、もし高校の英語教師がドイツ語の接続法を知っていたら、堂々とカッコよく高校生を説得できて尊敬の的になっただろうにと笑ったことがありました。

英語およびイギリスというのはヨーロッパの僻地であった時代が長く、言語も英語として独立してからまだ300年強しかたっていません。
その成立過程では大陸の諸民族間の複雑な関係が必要なかったので英語に残っていたドイツ語臭さをかなり省略して、<不文憲法>の精神で必要に応じて簡便化しながら現在に至ったのだと思います。

面白いことにデンマーク語は文法は英語、発音はドイツ語のズーズー弁と思っていれば、当らずといえども遠からずです。

いずれにしても基本は時制ですが、英語の時制についての感覚をつかむにはとりあえずの入門書としてアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』原題はAnd there were none を学生に原書で読めと勧めています。

いずれにしても基本は時制ですが、英語の時制についての感覚をつかむにはとりあえずの入門書としてアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』原題はAnd there were none を学生に原書で読めと勧めています。

これはある島に閉じ込められた登場人物10人が全員死んでしまうのですが、さて、犯人は何番目に死んだ人間かを推理させるミステリーです。
私は昔、赤坂東急ホテルでアルバイトしていたときに宿泊客が捨てて行ったペーパーバックを貰って読んだのですが、構成は映画のシナリオ風、文章は単文の積み重ねなので、大学2年の英語力でも辞書なしで読めました。

ところが、時制と前置詞についての感覚が曖昧だと犯人は見当がつきません。もちろん、私の推理は大外れでしたが、それでも通常の英語文法でいう時制、つまり、現在形、過去形、未来形、それぞれの完了形の関係はどうなっているのか、どう使われるのかがじつによくわかりました。
歴史関連の原書を翻訳するうえで、これほど役に立った本はなかったですね。
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『百%の真善美』
『明治廿五年九月のほととぎす』
『漫言翁 福沢諭吉』
Eさんは独自な視点でいい本を書いています。

【文法用語の使用についてのebisuの意見】
わたしは成績下位層の生徒と成績上位層の生徒では使い分けをしています。
成績上位層の生徒には文法用語、哲学用語、経済学用語、医学用語、etc、なんでもありです。
成績下位層の生徒への説明にはその都度語彙説明をつけるか、面倒な場合は文法用語の使用を避けます。

わたしはいろんな分野の専門家と一緒に仕事をしていたので、相手の専門分野については、本を読み、専門用語でコミュニケーションしていました。異分野の専門家と専門用語を使ってコミュニケーションするのはたいへん効率がいいのです。そして誤解が少ない。極端な場合には、3時間のミーティングが10分ですみます。

【いわゆる假定法について】
conjunctive⇒subjunctive⇒「假定法」

面白いことになりそうな気がします、せっかくいただいた斬新なる問題提起、行きがかり上、浅学非才を省みず突き進むのみ。さて、できるのかな?(笑)
by ebisu (2013-10-09 11:06) 
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#46

>私の場合、仕事が、原稿なので、
>限られた字数でまとめるとなると、
>どうしても使わざるを得ないのです。
   ↓
僕も元・取説ライターですから、
字数や紙面の都合から、
専門用語を使わざるを得ない事情は、
十分に理解しているつもりです。

読者に知識がある事を期待できるなら、
用語は積極的に使われるべきでしょう。

ところが残念な事に、
真に解説が必要な学生は、
用語そのものに挫折しています。

つまり、
せっかくの解説が、
学生の頭と心と入っていかない。

大西泰斗先生のネイティブシリーズは、
「学生の低俗な知識レベルに合わせる」
といった卑近なものではなく、
従来からの紙媒体にも拘らず、
従来の学界の趨勢に真っ向から対立して、
文法用語を排した【イメージ】解説を成功させました。

そういう革命的で異端児的な仕事をしたいものだと、
元・英文テクニカルライターは企んでいます。

by Hirosuke (2013-10-09 12:25)
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*#2423 'IAEA members give grief over leaks' Sep. 28, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-09-29

 #2435 "#2423の一文解説" Oct.4, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-04-1



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#2444 仮定法ってなんだろう?(2):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 [80.英語談義 (コメント欄から)]

 波をちゃぷちゃぷかきわけて仮定法論議はどこへ行く♪
 行き先?
 知りませんよ、だから楽しいんじゃありませんか。

 #16~30

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#16

仮定法については議論のあることを本欄のほうへ書き加えておきました。

数日中に、この議論をそのままこの記事とは別にして本欄へ転載します。

後志のおじさん、合格先生、Hirosukeさん、みなさんのご意見ご協力に感謝申し上げます。
by ebisu (2013-10-05 14:52)
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#17

>これって、
>大西泰斗先生のネイティブシリーズの
>動詞編に載っているのですか?
   ↓
使役についてはYes、完了についてはNoです。

目から鱗が落ちて、
文法用語を捨ててから、
色々と拡大解釈できるようになった結果です。

by Hirosuke (2013-10-05 18:49) 
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#18

>英文を読む時、
>文を隠して一語ずつスクロールして読む。
   ↓
◆英語は右へ右への一方通行である。◆

生徒にやらせると、
生徒の読み方やイメージが確認できて面白いです。

by Hirosuke (2013-10-05 18:59) 
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#19

うーん、色眼鏡を落とすためには得たものを捨てなきゃならないのか。
それができる人は強い。
長年時間をかけて積み上げたものを全部捨てるのは常人にはできない。

一回り以上下でしたが、一人そういう人がいました。
30代で転職して、その後その会社が上場し40代で役員になっています。

ひょっとしてHirosukeさん、超人的に強い人なのかも、自分で気がついていない?
by ebisu (2013-10-05 22:16) 
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#20

やはり、英文法の文献にあたると、仮定法の明確な定義はなかなか難しいようですね。私の場合、ドイツ語の接続法第2式=仮定法と決め込んでから、何も困ることがなくなったので、「反実仮想+そこから派生する距離感+丁寧感」と、長年思い込んでいました。―――――日本で売られている英語の文法本って、元々はネイティブ向けのものを日本語に翻訳しただけ、というのが実態のようで、ネイティブにとっては、当たり前過ぎることや議論の分かれることにはあまり触れていない。日本語でも、「学校に」と「学校へ」の違いって区別不能ですよね。仮定法にはそんなグレーゾーンがあるのでしょう。――――ましてや、経験主義的で過去にこだわる上アバウトな英国人ですから、きっと「語形がだいたい過去形だから、仮定法過去。その前だから過去完了。どっちでもない奴は、まあ順番からいって現在。」こんな決め方で名前を付けておいて、「長年、これでやってきていて大きな不都合はない。理論的整合性を求めて名称を変えると無用な混乱を起こす。」とでも思っているのだろうと勝手に思っております。―――――外国人学習者のために、自国語を研究するのではないですから、外国人として分かりやすくするかどうかは、我々日本人の側の問題だと思います。―――――私の投げた一石に、ebisuさんはじめ、Hirosukeさん様、合格先生、石を投げ込んでもらって楽しいやりとりをさせて頂けました。文字を綴る中自分の頭の中が整理された部分も感じています。もっと入ってくれる方が増えると楽しいですね。機会を下さったebisuさんに(へ?だったら文法的にどう説明します?)感謝です。
by 後志のおじさん (2013-10-05 22:56)
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#21

【後志のおじさん】さん

あの・・・、
【Hirosukeさん様】ってのは・・・、
どうか今後は・・・。

ダンケシェーン

by Hirosuke (2013-10-06 01:17) 
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#22

 「後志のおじさん」さんへ

 コメントありがとうございます。お礼に国文法の方で。
 助詞の「へ」は方向や対象を示す。「に」は、比較的用途が広く、場所・時間・対象・原因・目的・結果・並立を示します。どちらも格助詞です。
 基本的には、どちらも対象を表しますので、その用途の場合はどちらを使ってもいい、ということになります。
 言葉の性格としては、場所について使う場合、英語に例えると「へ」はforに近く、「に」はtoに近いという感覚でいてください。
 と言いながら、現実的なハッキリとした線引きはないので、例えばコメントの冒頭に書く「〇〇さんへ」では「へ」を使いますが、英語だと「to 〇〇」になったりしますので、あくまで参考程度にしかなりません。
by 合格先生 (2013-10-06 03:56)
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#23

 もう少し「へ」と「に」の違いを具体的に言うと、「あてもなく、南へ向かった(目的がはっきりせず南の方向に向かって行った)」とは言いますが、「あてもなく南に向かった(目的がはっきりしていないので、「に」は通常使わない)」と言うと、実は、日本語としてはあまりいい表現ではないんです。

 ただ、最近では、目的をハッキリさせないために「方(ほう)」を入れる表現が増えていて、日本語の乱れとして扱われている「~の方になります」という若者が増えている、と考えてください。
by 合格先生 (2013-10-06 04:14)
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#24

「後志のおじさん」さんへ

>機会を下さったebisuさんに(へ?だったら文法的にどう説明します?)感謝です

問題提起が上手ですね。(笑)
この用例では違いを感じないので、感じないといけないのかな、朝起きてすっきりした頭でもう一度読めばなにか差異が目につくかもと、寝てしまいました。
さて、なんだったけともう一度見たら、早起き(夜更かし好き?)の合格先生が文法的な説明をしてくれていました。ありがとうございます。

合格先生の手紙の指摘は面白かったですね。「to+人」ですね。forは使いませんね。
toが着点を含んでいるからでしょう。

コメント欄で'「後志のおじさん」さんへ'と「へ」を選んだのはコメント欄が集いの広場だからのようです。コメント欄の読者を意識しながら、このコメントは「皆さんにも読んでいただきたいのですが、問題提起をしてくれた後志のおじさんへ」向けられたものですという含意を表しているのではないでしょうか。
「後志のおじさんに」とするとコメント欄の読者は関係ないよ、後志のおじさんだけだよ、そう聞こえる気がします。
そう、このケースの場合には手紙の形式の「to」が「に」に当たる。

こういう分析は意識の底、無意識の層を分析するような作業になるのですね。

助詞は意識せずに自然と感じられるものを感覚的に判断して使っているので、
<どうでもいいじゃないか、不都合がなければね>
というのが英国流、
<格助詞「へ」と「に」に概念的定義を与えてみよう>
というのが、ドイツ流。

英国は慣習法で十分、不都合があればその部分だけを修正すればいいだけ、根っこからの見直しなんて必要なし、古いものがなんとなく正しい、という世界。
ドイツはつねに概念とか体系を問題にしたくなる。「接続法の概念規定とはなんぞや」、こんなことは英国人の視野の外でしょうね。

>、「長年、これでやってきていて大きな不都合はない。理論的整合性を求めて名称を変えると無用な混乱を起こす。」とでも思っているのだろうと勝手に思っております。

まったく同感です。

いい天気です、庭でスズメがさえずっています。空気がすこし冷たくなりました。季節をつかさどる神々に感謝。
by ebisu (2013-10-06 08:18)
=============================
#25

◆象は鼻が長い。◆
   ↑   ↑

この一文を巡って「どっちが主語なのか?」と、
日本の国文法学者が今なお論争中だそうです。

言葉はリジッドな数式なんかじゃなく、
ファジーなイメージから想起されているのだから、
そもそも学問的に厳密な定義には無理がある。

もっと有意義な仕事をして欲しいですね、
学者の皆様【に】は。

ここは【へ】は×ですね。
   ↑   ↑
「どっちが主語なのか?」


by Hirosuke (2013-10-06 08:48)
=============================
#26

また、ユニークな見解(「へ」と「に」について)が呈示されそうな気がするのですが・・・違いますか?

ドキドキしながら待っています(笑)
by ebisu (2013-10-06 09:47)
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#27

今日は、朝から畑に出ていて帰って来たら、またすごいことになってますね。(火を着けた本人ですが。)―――――「に」と「へ」ですが、やはり、当てはまらない事例が…学校なら合格先生の文法説明ですっきりですが、「大学へ行く。」だと、今目の前の動作で、「大学に行く。」だと、これから進学するぞ、となりますね。この場合、「へ」は、方向、「に」は、対象と無意識に使い分けていることになりますね。
火種となったebisuさん「に」だと、ebisuさんの解釈もよさそうですし。(私はこの場合は、にが対象でへだと方向になるなと思っていたのです。)いやはや、面白いです。――――Hirosukeさんから出された「象は鼻が長い。」ですが、述語が「長い」なんだから、主語は鼻がしかあり得ないと思いますけど学者の方は、違うのですかね?因みに「は」は、主語をというより、「他とは違っている」ことを表す、「他の者の存在」を暗示するマークと思っています。―――「私は、やりました。」と「私が、やりました。」―――「彼女からは、連絡がなかった。」
(他からはあった。)―――「興味深い、とは言える。」(本心は別のところにある。)等の例「は」いかがでしょうか?
by 後志のおじさん (2013-10-06 17:42)
=============================
#28

「後志のおじさん」さんへ

 「へ」と「に」の違いですが、「大学へ行く」「大学に行く」の場合、「行く」という動詞の意味がちょっと不安定なので、自分はこういう場合、動詞の意味をもう少しハッキリさせて考えることにしています。例えば、

「大学へ進学する」
「大学に進学する」

とすると、ニュアンスとしてどうか、また、これに未然の意味の言葉をつけて
「大学へ進学するつもりだ」
「大学に進学するつもりだ」
他の表現だと
「大学へ進学することが決まった」
「大学に進学することが決まった」

 また、動詞を「ある場所に行く」という意味にして、
「大学へ行ってくる」
「大学に行ってくる」

 そして、これはあくまで自分のイメージですが、「に」の方が「へ」よりも、目的や意志がハッキリしている場合に使う、と判断しています。ですから、自分の感覚では、そのときの目的意識や意志の強さによって「大学へ行く」「大学に行く」の使い分けが生じているだけで、進学する場合でも場所に行くという場合でも、どちらでも使っていると思います。

 「象は鼻が長い」の例については、自分も同意見です。述語は長いですから、「長い」ものは何だ、となると、普通に「鼻」と考えるのが一般的かと。
 助詞の「は」については、おっしゃる通り、用法は「(他者との)区別」「題目」で、分類上は副助詞です。
 たぶん、学者さんは、他者との比較でみた場合、「キリンは短い」「象は長い」と表現できることから、「象は」を主語と見立てることもできる、という発想ではないかと思います。

 ただ、主語については、助詞の関係とは全く別物で、述語に対する動作主などと考えれば済みます。例えば、
「僕も行った」の「僕も」
「雪の降る」の「雪の」
なんていうものもあるので、子供たちには「が」に置き換えて考えなさい、などと言いますが、結局、助詞とは根本的に切り離して考えた方が良いかと思います。
by 合格先生 (2013-10-06 22:12) 
=============================
#29

◆象は鼻が長い。◆を英訳すると・・・
-------------------------------------
直訳:Noses of elephants are long.

意訳:Elephants have long noses.
-------------------------------------

あぁ、どっちも主語だ。。。

by Hirosuke (2013-10-06 23:17)
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*#2423 'IAEA members give grief over leaks' Sep. 28, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-09-29

 #2435 "#2423の一文解説" Oct.4, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-04-1

 #2443 仮定法ってなんだろう?(1):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-09-1

 #2444 仮定法ってなんだろう?(2):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-10-1

 #2445 仮定法ってなんだろう?(3):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-10-2

 #2446 仮定法とはなにか(1) : Boys be ambitious. Oct. 11, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-11


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#2443 仮定法ってなんだろう?(1):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 [80.英語談義 (コメント欄から)]

 #2435のコメント欄に仮定法に関するコメントがたくさん寄せられた。「後志のおじさん」の問題提起ではじまり、順次「Hirosuke」さん、「合格先生」が参加してくれた。ときどき、議論が別の方向に向かっているが、それも楽しい。
 ナンバーをふったら全部で46あるので、三つに分割して本欄へアップする。

#2443: #1~15
#2444: #16~30
#2445: #31~46

 これをアップしたあとで、仮定法について整理してみたいと思っている。知的な遊びだと思って続けて読んでもらいたい。


=============================
#1

仮定法は、あくまで反実仮想で、if節の有無とは関係はないです。――「ひとあらば、」で「ましかば」がなくても仮定法if節になるのと同じです。I wish みたいなものです。――――同様に「君あらまし」だけで帰結節になりますよね。どちらも、事実と反することが前提になっています。条件節と帰結節も独立で使用可能で、リンクする必要はないです。――――事実に反することを前提にするときが、仮定法。単なる「もしも」なら直説法(この言葉、関口存男先生の造語だそうです。接続法という文法用語も先生の造語でドイツに逆輸入されたそうですよ。)と理解しています。ちなみに、仮定法現在は、動詞は原形を用い、「かくあれかし」を表す、ちょっと古めかしい表現のようです。
by 後志のおじさん (2013-10-05 00:24)
=============================
#2

反実仮想が仮定法の本質で、ある用例が仮定法であるかないかの区別を反実仮想の置くとすると、if節がなくても仮定法という結論になりますね。
わたしも気になって、『if仮定法の使い方がすべてわかる本』(中野幾雄著)を読み直してみたのですが、if節のないのはwishのみ。
反現実仮想を仮定法と定義すると、例に挙げた文も立派な仮定法、その主張には肯けます。
ドイツ語の関口存男先生に軍配を挙げたいですね。
英語の専門家で誰か他に同じ立場の人がいるでしょうか?ちなみに中野幾雄氏は学者ではありません。

英語参考書の古典的著作である江川泰一郎『英文法解説』でも、仮定法過去と仮定法現在はwishを除き、文例はすべてif節を伴っています。

>――「ひとあらば、」で「ましかば」がなくても仮定法if節になるのと同じです。
>I wish みたいなものです。――――
同様に「君あらまし」だけで帰結節になりますよね。どちらも、事実と反することが前提になっています。

じつは、わたしも最初は、わたしの挙げた文例が仮定法だと解説を書いたのですが、念のためにとおもって手元の英文法関係の本をあたったら、if節つきの文例ばかりで「あらら…」と、書き直したのです。(笑)

古い本ですが三好助三郎『独英比較文法』には
「英語では副文の定動詞がwere, bad, could, shouldの場合はifが省略せられることがあるが、ドイツ語の場合に比べてはるかにすくなく、また口語ではifを用いた構文のほうが好まれる 」P274 第27章非現実話法より

新聞に載っていたのは口語ではないのですから、副文単独での文と考えていい。
とにかく、手元の高校英語参考書を何冊かめくってみてそういう用例の説明がないので、should have soughtを仮定法と書くのをためらった(?)わけです。
高校レベルの英語参考書で「should+現在完了」の型を仮定法として解説している本はほとんどないのではないでしょうか。
もちろん、反実仮想が仮定法の本質で、if節を伴わないものも仮定法に含めるというドイツ語の接続法に焦点を当てた説明は納得できます。
用例から語るのではなく、仮定法の概念を定義して、用例を整理する、すっきりしています。

ここまで書いてきて、本文を書き直す気になりました。
本文に注を入れて説明しておきましょう。
今夜の作業になります。

by ebisu (2013-10-05 01:44)
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#3

ひとつ問題がありそうです。
仮定法を反現実仮想と定義すると、英語の仮定法現在は仮定法には分類できなくなります。
関口先生は接続法と言っています。仮定法現在は関口先生の用語では直説法です。
どういう注記を入れたらいいのか、あるいは書き直しをどうやったらいいのか少し考えます。
おそらく、割り切りの問題だろうと思います。
仮定法という用語と接続法と直説法は分類基準が異なるような感じがあります。
英文法書は基本的にif節を伴うものを仮定法と定義しているのではないでしょうか?
関口存男の接続法で整理したら、現在の高校英文法書は仮定法の分類を改めなければならなくなりそうです。
面白いですね、もう少し議論させてください。
仮定法現在はどう扱いますか?
by ebisu (2013-10-05 02:04)
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#4

 英語のお話し、楽しく読ませてもらっています。自分の浅薄な英語力が、これを読んでいるだけで、すごく高まっていくような気持ちです。ありがとうございます。

 そこで、自分の浅い知識でお話しするのは、ひょっとしたら的外れかも知れませんが、自分は「反現実」は仮定法ではなく、過去形にある、と考えています。
 例えば、I lived in Kushiro. と言った場合、誰もが「今は釧路に住んでいない」と想定するわけで、そこでwouldやshouldが登場するということになるんだと解釈しています。

 例えば、日本語でも「私は痩せるつもりだ」を「私は痩せるつもりだった」と過去形に言い換えれば、それは、結局「痩せることができなかった」という解釈になるのと同じ、と思っているのですが。
by 合格先生 (2013-10-05 05:42) 
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#5

合格先生に同意。

She was beautiful.
⇒彼女は美しかった。
⇒今は違う。

このように【過去形】は、
【現在のキモチ】を内包しているのです。

さらに言えば、
【現在形】の真意は、
「昨日も今日も明日も・・・」なのであり、
ちっとも【現在】じゃありません。

文法用語は要りません。

by Hirosuke (2013-10-05 07:44)
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#6

ebisuさん―――――if it rains tomrrowなら、ifがついていても、直説法。It rain tomrrow!なら(まずこんな言い方はしないけど)仮定法現在ってところでしょうか。――――――最近の高校生向文法本では、反実仮想を前提とした解説が多いようです。ifに着目すると整合が取れなくなるからでしょうね。

また、会話文では、I could do that.(やろうと思えば)「できるけど…。」なんて普通の表現です。また、I would like toは、I want to よりwouldの仮定法的な響きで、「非現実、そこから生じる距離感さらにその上にのっかった丁寧感」のある表現です。I wouldで、音を止めて見たときの残像が語のイメージとでも言えますか。
by 後志のおじさん (2013-10-05 08:09)
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#7

合格先生へ―――――
私も同様に聞いたり読んだりしています。「時制が突然前に倒れたら非現実」――――――
ただ、I lived inだけでは、過去と紛れるから、気持ちの持ちようとあわせて、could should、would+liveとするのだろうと。――――――
ラジオ英会話の遠山先生も、仮定法とは決して言わず、「過去形の過去に引き戻す強い力」と言う表現をよくしています。これですっきり理解できます。
(過去形のこの感覚がしっかりしていると、完了形との使い分けもしっかりしますし)――――――――――
別に、仮定法という言葉は使わなくても、反実仮想は時制が一つ前で、いいと思います。けれど、今学んでいる高校生は、仮定法と言う言葉にまみれているわけで、説明のためには多少使わざるを得ないのではないかと…(この文の文末、仮定法っぽくなりました)
by 後志のおじさん (2013-10-05 08:33) 
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#8

おはようございます。
早起きですね、合格先生。

>自分は「反現実」は仮定法ではなく、過去形にある、と考えています。
>例えば、I lived in Kushiro. と言った場合、誰もが「今は釧路に住んでいない」と想定するわけで、そこでwouldやshouldが登場するということになるんだと解釈しています。

分かりやすい説明です。普通の過去形が反実仮想、「釧路に住んでいた=いまは他のところに住んでいる」。過去形はしばしばそうした含意で使われていますね。
現実からの距離感が過去形の本質、そう大西泰斗先生も説明しています。だから丁寧表現にも使われる。認知論からの英文法解説は納得性が高い。
私たちはどこかで生徒に説明するときの生徒の納得性が高いか低いかという基準でものごとや概念を無意識に判断しています。

>例えば、日本語でも「私は痩せるつもりだ」を「私は痩せるつもりだった」と過去形に言い換えれば、それは、結局「痩せることができなかった」という解釈になるのと同じ、と思っているのですが。

その通りだと思います。
by ebisu (2013-10-05 08:37)
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#9

おはようございます、Hirosukeさん。
土曜日でも皆さん起きるのが早い。

>このように【過去形】は、
【現在のキモチ】を内包しているのです。

「カタチ・イミ・キモチ」、Hirosukeさんの思考に慣れてきていますから、よくわかります。

なるべく文法用語を使わない説明も、ようは生徒に分かりやすい方法がよいのでしょう。
だから、私は生徒によって答え方を使い分けています。
文法用語をがんがん使ってもいい生徒には使います。
日本語文法もあやしい生徒もけっこうな割合でいますので、そういう場合は日本語文法の解説を併用するか、文法用語をなるべく使わない。
文法用語に慣れさせる必要はあると思っています。
それぞれの科目にはそれぞれ「専門用語の語彙群」があります。それを使ったほうが便利だからです。英語の文法用語もそれらの仲間の一つだと考えています。

仕事で専門分野が異なる人と話しをするときに、相手の専門分野の用語を使って話しができると、話の要点をついたコンパクトなコミュニケーションが成り立ちます。仕事でずっとそうしてきたので、これはわたしの「性癖」です。

>【現在形】の真意は、
「昨日も今日も明日も・・・」なのであり、
ちっとも【現在】じゃありません。

現在形がけっこうむずかしいし、使える範囲も限定されています。それはどこかで「不変」という感覚で使われるからでしょう。
昨日も今日も明日も変らない。

この2週間ぐらい、Grammar in Useを使い出した高校生がいます。現在進行形と現在形の使い分けの章で悪戦苦闘しています。めんこいですね。
by ebisu (2013-10-05 08:52)
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#10

should+完了形ですが、should、could、mightはすでに過去形。ついでにmustは過去形と現在が同形。だから、shouldの過去だぞと理解すればよろしいかと。
by 後志のおじさん (2013-10-05 09:37)
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#11

後志のおじさんへ

接続法と直説法という概念分類は「仮定法」という分類とはぴったり重ならないようですね。
集合Aと集合Bがある、A∩Bの部分もあるがA-A∩Bの部分が残る。
接続法と直説法は概念としては排反事象ですが、形式は同じ部分とそうでない部分がある。それの辺りを処理するために第二式接続法を定義しています。
仮定法を集合Aとして接続法をBと考えると、A-A∩Bの部分に仮定法現在があります。

>It rain tomrrow!なら(まずこんな言い方はしないけど)仮定法現在ってところでしょうか

面白いですね。『関口新ドイツ語大講座<上>』182ページの「第26講 接続法の形」の冒頭に英国国家からの引用があります、
'God save the king.'(神が国王を守り給わんことを)

「神が国王を守り給う」の意味だったらsaves(直説法)でなければならないとしています。明解でわかりやすい説明です。
英語の接続法はドイツ語のそれに対して「貧弱である」とも解説しています。
接続法が整然としているドイツ語に対して崩れ、一部がほとんど消えてしまった英語、そこに新たな分類=仮定法という用語=範疇が定義される必要を感じます。
要するに、概念云々の議論をせずに、形式だけを見て分類しているのが、高校の英文法参考書だろうと思います。
文法学者が書いているわけではありませんから、読む生徒の理解度に応じた形式分類になった、そう考えて差し支えなさそうです。

>また、I would like toは、I want to よりwouldの仮定法的な響きで、「非現実、そこから生じる距離感さらにその上にのっかった丁寧感」のある表現です。I wouldで、音を止めて見たときの残像が語のイメージとでも言えますか。

この点はまったく異論ありません。合格先生もHirosukeさんも同じですね。

私もちょっと気になったのが、次の論点でした。過去形と仮定法の区別。後志のおじさんのは明解でわかりのよい説明です。

>ただ、I lived inだけでは、過去と紛れるから、気持ちの持ちようとあわせて、could should、would+liveとするのだろうと。――――――ラジオ英会話の遠山先生も、仮定法とは決して言わず、「過去形の過去に引き戻す強い力」と言う表現をよくしています。これですっきり理解できます。

表面的な形式で分類して説明している高校英文法はそれなりに便利さもありますが、少し突っ込むと概念的な説明では統一的に扱うことが出来ません。妥協の産物なのでしょう。だから、関口存男先生の接続法の定義はリジッドすぎて高校英文法参考書では使われないのではないでしょうか。 

>別に、仮定法という言葉は使わなくても、反実仮想は時制が一つ前で、いいと思います。けれど、今学んでいる高校生は、仮定法と言う言葉にまみれているわけで、説明のためには多少使わざるを得ないのではないかと…

いい議論になりました。オープンな場で議論をすると、これを読んだ高校生諸君がドイツ語に興味を抱いてくれるかもしれません。接続法はフランス語にもイタリア語にもロシア語にも共通した概念ですから、どの言語を選択してもぶつかる「壁」のひとつです。

ひとまず本文のほうの解説はそのままにしておきます。仮定法(接続法)には概念に関する議論のあることぐらいは付け足す必要を感じています。

気がついたことがあれば、どんどん書きたしててください。
一生懸命に読みます。
楽しいのです。
もったいないので、そのうちにまとめて本欄にアップします。

後志のおじさん、問題提起ありがとうございます。
合格先生、Hirosukeさん、議論に参加してくれてありがとう。
読んでくれている高校生や大学生、そして社会人の皆さんにも感謝。
by ebisu (2013-10-05 10:20
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#12

後志のおじさんへ

>should+完了形ですが、should、could、mightはすでに過去形。ついでにmustは過去形と現在が同形。だから、shouldの過去だぞと理解すればよろしいかと。

これも高校生には説得力のある説明です。
過去の過去だから大きい過去で「大過去(過去完了)」、助動詞の過去形があるときにはhaveをマーカとして完了形と同型にすることで、大過去をあらわす。
英語の他の言語を勉強すれば英語の見え方が違ってくるのでしょう。
大学生になったら、第二外国語を履修したらいい。

高校文法書は型の説明に終始することが多く、なぜという問いを立てない。
ややこしい話になりかねないから無意識に避けているのでしょうね。

by ebisu (2013-10-05 10:33) 
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#13

>haveをマーカとして
  ↓
◆have=●●を持っている◆
は小学生でも知っています。

しかしながら、
「haveできるのは物(名詞)だけ。」
と思い込んでいる先生がいます。

ネイティブ達は、
「状態(形容詞)だってhaveできる。」
と拡大解釈しています。
----------------------------------------
いわゆる完了形◆have 過分◆
⇒過去という状態を「持っている」
⇒ずっと今も~している
----------------------------------------

さらに拡大解釈されて、
「他の誰かの状況だってhaveできる。」
となった例が・・・
----------------------------------------
いわゆる使役◆have ダレダレ ~スル◆
⇒ダレダレが ~スルという状況を「持っている」
⇒ダレダレに ~シテモラウ
----------------------------------------
by Hirosuke (2013-10-05 12:12)
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#14

おや、まったく別の視点からのご意見ですね。
Hirosuke式解説、いいですね。

>◆have=●●を持っている◆
>「haveできるのは物(名詞)だけ。」
と思い込んでいる先生がいます。

ネイティブ達は、
「状態(形容詞)だってhaveできる。」
と拡大解釈しています。

具体的な事物・空間から、抽象的な空間への拡張はいろんなところで起きますね。
ふだんから意識してみていないと気がつかないで通りすぎてしまいます。
概念の拡張は高校数学で何度も出てくるので、英語でも同じです、慣れてほしいですね。

「状態をhaveする」ところを経て、「他人の状態をhaveする」=「使役用法のhave」にいたる。

一本の線でつないでいく。
これって、大西泰斗先生のネイティブシリーズの動詞編に載っているのですか?
それともオリジナル?
haveは他の本でも説明していますが、はたして使役のhaveは説明があったかな?

昨日も、
I have a dog.
I have a sister.
I have lunch.
I have a lot of money.
・・・
具体的なものばっかりですね。

この次は格調高くやってみようかな。
"I have a dream."
なんてね。
キング牧師の名演説。

中2の生徒だったので使役のhaveは出てきませんでしたが、この次は混ぜてもいいかな。学年トップクラスの生徒には構わずガンガン教えちゃいます。(笑)

by ebisu (2013-10-05 13:02) 
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#15

Hirosukeさん様――――私のhave+名詞+(いろいろ)は、名詞が何かする、している、される、そういったことをする「名詞を持つ」。持つのは、まずhaveの直後の何かで、それに 動作がくっついていきます。――――――文が途中で切られた時の残像のイメージです。――I have him…(彼をhaveする。)―――I have him cook(彼が料理する)→料理してもらう。―――――たまにやるのですが、英文を読む時、文を隠して一語ずつスクロールして読む。自分の読み方やイメージが確認できて面白いです。
by 後志のおじさん (2013-10-05 13:46)
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*#2423 'IAEA members give grief over leaks' Sep. 28, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-09-29

 #2435 "#2423の一文解説" Oct.4, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-04-1

 #2443 仮定法ってなんだろう?(1):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-09-1

 #2444 仮定法ってなんだろう?(2):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-10-1

 #2445 仮定法ってなんだろう?(3):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-10-2

 #2446 仮定法とはなにか(1) : Boys be ambitious. Oct. 11, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-11


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