#2443 仮定法ってなんだろう?(1):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 [80.英語談義 (コメント欄から)]
#2435のコメント欄に仮定法に関するコメントがたくさん寄せられた。「後志のおじさん」の問題提起ではじまり、順次「Hirosuke」さん、「合格先生」が参加してくれた。ときどき、議論が別の方向に向かっているが、それも楽しい。
ナンバーをふったら全部で46あるので、三つに分割して本欄へアップする。
#2443: #1~15
#2444: #16~30
#2445: #31~46
これをアップしたあとで、仮定法について整理してみたいと思っている。知的な遊びだと思って続けて読んでもらいたい。
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#1
仮定法は、あくまで反実仮想で、if節の有無とは関係はないです。――「ひとあらば、」で「ましかば」がなくても仮定法if節になるのと同じです。I wish みたいなものです。――――同様に「君あらまし」だけで帰結節になりますよね。どちらも、事実と反することが前提になっています。条件節と帰結節も独立で使用可能で、リンクする必要はないです。――――事実に反することを前提にするときが、仮定法。単なる「もしも」なら直説法(この言葉、関口存男先生の造語だそうです。接続法という文法用語も先生の造語でドイツに逆輸入されたそうですよ。)と理解しています。ちなみに、仮定法現在は、動詞は原形を用い、「かくあれかし」を表す、ちょっと古めかしい表現のようです。
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#2
反実仮想が仮定法の本質で、ある用例が仮定法であるかないかの区別を反実仮想の置くとすると、if節がなくても仮定法という結論になりますね。
わたしも気になって、『if仮定法の使い方がすべてわかる本』(中野幾雄著)を読み直してみたのですが、if節のないのはwishのみ。
反現実仮想を仮定法と定義すると、例に挙げた文も立派な仮定法、その主張には肯けます。
ドイツ語の関口存男先生に軍配を挙げたいですね。
英語の専門家で誰か他に同じ立場の人がいるでしょうか?ちなみに中野幾雄氏は学者ではありません。
英語参考書の古典的著作である江川泰一郎『英文法解説』でも、仮定法過去と仮定法現在はwishを除き、文例はすべてif節を伴っています。
>――「ひとあらば、」で「ましかば」がなくても仮定法if節になるのと同じです。
>I wish みたいなものです。――――
同様に「君あらまし」だけで帰結節になりますよね。どちらも、事実と反することが前提になっています。
じつは、わたしも最初は、わたしの挙げた文例が仮定法だと解説を書いたのですが、念のためにとおもって手元の英文法関係の本をあたったら、if節つきの文例ばかりで「あらら…」と、書き直したのです。(笑)
古い本ですが三好助三郎『独英比較文法』には
「英語では副文の定動詞がwere, bad, could, shouldの場合はifが省略せられることがあるが、ドイツ語の場合に比べてはるかにすくなく、また口語ではifを用いた構文のほうが好まれる 」P274 第27章非現実話法より
新聞に載っていたのは口語ではないのですから、副文単独での文と考えていい。
とにかく、手元の高校英語参考書を何冊かめくってみてそういう用例の説明がないので、should have soughtを仮定法と書くのをためらった(?)わけです。
高校レベルの英語参考書で「should+現在完了」の型を仮定法として解説している本はほとんどないのではないでしょうか。
もちろん、反実仮想が仮定法の本質で、if節を伴わないものも仮定法に含めるというドイツ語の接続法に焦点を当てた説明は納得できます。
用例から語るのではなく、仮定法の概念を定義して、用例を整理する、すっきりしています。
ここまで書いてきて、本文を書き直す気になりました。
本文に注を入れて説明しておきましょう。
今夜の作業になります。
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#3
ひとつ問題がありそうです。
仮定法を反現実仮想と定義すると、英語の仮定法現在は仮定法には分類できなくなります。
関口先生は接続法と言っています。仮定法現在は関口先生の用語では直説法です。
どういう注記を入れたらいいのか、あるいは書き直しをどうやったらいいのか少し考えます。
おそらく、割り切りの問題だろうと思います。
仮定法という用語と接続法と直説法は分類基準が異なるような感じがあります。
英文法書は基本的にif節を伴うものを仮定法と定義しているのではないでしょうか?
関口存男の接続法で整理したら、現在の高校英文法書は仮定法の分類を改めなければならなくなりそうです。
面白いですね、もう少し議論させてください。
仮定法現在はどう扱いますか?
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#4
英語のお話し、楽しく読ませてもらっています。自分の浅薄な英語力が、これを読んでいるだけで、すごく高まっていくような気持ちです。ありがとうございます。
そこで、自分の浅い知識でお話しするのは、ひょっとしたら的外れかも知れませんが、自分は「反現実」は仮定法ではなく、過去形にある、と考えています。
例えば、I lived in Kushiro. と言った場合、誰もが「今は釧路に住んでいない」と想定するわけで、そこでwouldやshouldが登場するということになるんだと解釈しています。
例えば、日本語でも「私は痩せるつもりだ」を「私は痩せるつもりだった」と過去形に言い換えれば、それは、結局「痩せることができなかった」という解釈になるのと同じ、と思っているのですが。
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#5
合格先生に同意。
She was beautiful.
⇒彼女は美しかった。
⇒今は違う。
このように【過去形】は、
【現在のキモチ】を内包しているのです。
さらに言えば、
【現在形】の真意は、
「昨日も今日も明日も・・・」なのであり、
ちっとも【現在】じゃありません。
文法用語は要りません。
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#6
ebisuさん―――――if it rains tomrrowなら、ifがついていても、直説法。It rain tomrrow!なら(まずこんな言い方はしないけど)仮定法現在ってところでしょうか。――――――最近の高校生向文法本では、反実仮想を前提とした解説が多いようです。ifに着目すると整合が取れなくなるからでしょうね。
また、会話文では、I could do that.(やろうと思えば)「できるけど…。」なんて普通の表現です。また、I would like toは、I want to よりwouldの仮定法的な響きで、「非現実、そこから生じる距離感さらにその上にのっかった丁寧感」のある表現です。I wouldで、音を止めて見たときの残像が語のイメージとでも言えますか。
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#7
合格先生へ―――――
私も同様に聞いたり読んだりしています。「時制が突然前に倒れたら非現実」――――――
ただ、I lived inだけでは、過去と紛れるから、気持ちの持ちようとあわせて、could should、would+liveとするのだろうと。――――――
ラジオ英会話の遠山先生も、仮定法とは決して言わず、「過去形の過去に引き戻す強い力」と言う表現をよくしています。これですっきり理解できます。
(過去形のこの感覚がしっかりしていると、完了形との使い分けもしっかりしますし)――――――――――
別に、仮定法という言葉は使わなくても、反実仮想は時制が一つ前で、いいと思います。けれど、今学んでいる高校生は、仮定法と言う言葉にまみれているわけで、説明のためには多少使わざるを得ないのではないかと…(この文の文末、仮定法っぽくなりました)
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#8
おはようございます。
早起きですね、合格先生。
>自分は「反現実」は仮定法ではなく、過去形にある、と考えています。
>例えば、I lived in Kushiro. と言った場合、誰もが「今は釧路に住んでいない」と想定するわけで、そこでwouldやshouldが登場するということになるんだと解釈しています。
分かりやすい説明です。普通の過去形が反実仮想、「釧路に住んでいた=いまは他のところに住んでいる」。過去形はしばしばそうした含意で使われていますね。
現実からの距離感が過去形の本質、そう大西泰斗先生も説明しています。だから丁寧表現にも使われる。認知論からの英文法解説は納得性が高い。
私たちはどこかで生徒に説明するときの生徒の納得性が高いか低いかという基準でものごとや概念を無意識に判断しています。
>例えば、日本語でも「私は痩せるつもりだ」を「私は痩せるつもりだった」と過去形に言い換えれば、それは、結局「痩せることができなかった」という解釈になるのと同じ、と思っているのですが。
その通りだと思います。
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#9
おはようございます、Hirosukeさん。
土曜日でも皆さん起きるのが早い。
>このように【過去形】は、
【現在のキモチ】を内包しているのです。
「カタチ・イミ・キモチ」、Hirosukeさんの思考に慣れてきていますから、よくわかります。
なるべく文法用語を使わない説明も、ようは生徒に分かりやすい方法がよいのでしょう。
だから、私は生徒によって答え方を使い分けています。
文法用語をがんがん使ってもいい生徒には使います。
日本語文法もあやしい生徒もけっこうな割合でいますので、そういう場合は日本語文法の解説を併用するか、文法用語をなるべく使わない。
文法用語に慣れさせる必要はあると思っています。
それぞれの科目にはそれぞれ「専門用語の語彙群」があります。それを使ったほうが便利だからです。英語の文法用語もそれらの仲間の一つだと考えています。
仕事で専門分野が異なる人と話しをするときに、相手の専門分野の用語を使って話しができると、話の要点をついたコンパクトなコミュニケーションが成り立ちます。仕事でずっとそうしてきたので、これはわたしの「性癖」です。
>【現在形】の真意は、
「昨日も今日も明日も・・・」なのであり、
ちっとも【現在】じゃありません。
現在形がけっこうむずかしいし、使える範囲も限定されています。それはどこかで「不変」という感覚で使われるからでしょう。
昨日も今日も明日も変らない。
この2週間ぐらい、Grammar in Useを使い出した高校生がいます。現在進行形と現在形の使い分けの章で悪戦苦闘しています。めんこいですね。
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#10
should+完了形ですが、should、could、mightはすでに過去形。ついでにmustは過去形と現在が同形。だから、shouldの過去だぞと理解すればよろしいかと。
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#11
後志のおじさんへ
接続法と直説法という概念分類は「仮定法」という分類とはぴったり重ならないようですね。
集合Aと集合Bがある、A∩Bの部分もあるがA-A∩Bの部分が残る。
接続法と直説法は概念としては排反事象ですが、形式は同じ部分とそうでない部分がある。それの辺りを処理するために第二式接続法を定義しています。
仮定法を集合Aとして接続法をBと考えると、A-A∩Bの部分に仮定法現在があります。
>It rain tomrrow!なら(まずこんな言い方はしないけど)仮定法現在ってところでしょうか
面白いですね。『関口新ドイツ語大講座<上>』182ページの「第26講 接続法の形」の冒頭に英国国家からの引用があります、
'God save the king.'(神が国王を守り給わんことを)
「神が国王を守り給う」の意味だったらsaves(直説法)でなければならないとしています。明解でわかりやすい説明です。
英語の接続法はドイツ語のそれに対して「貧弱である」とも解説しています。
接続法が整然としているドイツ語に対して崩れ、一部がほとんど消えてしまった英語、そこに新たな分類=仮定法という用語=範疇が定義される必要を感じます。
要するに、概念云々の議論をせずに、形式だけを見て分類しているのが、高校の英文法参考書だろうと思います。
文法学者が書いているわけではありませんから、読む生徒の理解度に応じた形式分類になった、そう考えて差し支えなさそうです。
>また、I would like toは、I want to よりwouldの仮定法的な響きで、「非現実、そこから生じる距離感さらにその上にのっかった丁寧感」のある表現です。I wouldで、音を止めて見たときの残像が語のイメージとでも言えますか。
この点はまったく異論ありません。合格先生もHirosukeさんも同じですね。
私もちょっと気になったのが、次の論点でした。過去形と仮定法の区別。後志のおじさんのは明解でわかりのよい説明です。
>ただ、I lived inだけでは、過去と紛れるから、気持ちの持ちようとあわせて、could should、would+liveとするのだろうと。――――――ラジオ英会話の遠山先生も、仮定法とは決して言わず、「過去形の過去に引き戻す強い力」と言う表現をよくしています。これですっきり理解できます。
表面的な形式で分類して説明している高校英文法はそれなりに便利さもありますが、少し突っ込むと概念的な説明では統一的に扱うことが出来ません。妥協の産物なのでしょう。だから、関口存男先生の接続法の定義はリジッドすぎて高校英文法参考書では使われないのではないでしょうか。
>別に、仮定法という言葉は使わなくても、反実仮想は時制が一つ前で、いいと思います。けれど、今学んでいる高校生は、仮定法と言う言葉にまみれているわけで、説明のためには多少使わざるを得ないのではないかと…
いい議論になりました。オープンな場で議論をすると、これを読んだ高校生諸君がドイツ語に興味を抱いてくれるかもしれません。接続法はフランス語にもイタリア語にもロシア語にも共通した概念ですから、どの言語を選択してもぶつかる「壁」のひとつです。
ひとまず本文のほうの解説はそのままにしておきます。仮定法(接続法)には概念に関する議論のあることぐらいは付け足す必要を感じています。
気がついたことがあれば、どんどん書きたしててください。
一生懸命に読みます。
楽しいのです。
もったいないので、そのうちにまとめて本欄にアップします。
後志のおじさん、問題提起ありがとうございます。
合格先生、Hirosukeさん、議論に参加してくれてありがとう。
読んでくれている高校生や大学生、そして社会人の皆さんにも感謝。
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#12
後志のおじさんへ
>should+完了形ですが、should、could、mightはすでに過去形。ついでにmustは過去形と現在が同形。だから、shouldの過去だぞと理解すればよろしいかと。
これも高校生には説得力のある説明です。
過去の過去だから大きい過去で「大過去(過去完了)」、助動詞の過去形があるときにはhaveをマーカとして完了形と同型にすることで、大過去をあらわす。
英語の他の言語を勉強すれば英語の見え方が違ってくるのでしょう。
大学生になったら、第二外国語を履修したらいい。
高校文法書は型の説明に終始することが多く、なぜという問いを立てない。
ややこしい話になりかねないから無意識に避けているのでしょうね。
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#13
>haveをマーカとして
↓
◆have=●●を持っている◆
は小学生でも知っています。
しかしながら、
「haveできるのは物(名詞)だけ。」
と思い込んでいる先生がいます。
ネイティブ達は、
「状態(形容詞)だってhaveできる。」
と拡大解釈しています。
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いわゆる完了形◆have 過分◆
⇒過去という状態を「持っている」
⇒ずっと今も~している
----------------------------------------
さらに拡大解釈されて、
「他の誰かの状況だってhaveできる。」
となった例が・・・
----------------------------------------
いわゆる使役◆have ダレダレ ~スル◆
⇒ダレダレが ~スルという状況を「持っている」
⇒ダレダレに ~シテモラウ
----------------------------------------
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#14
おや、まったく別の視点からのご意見ですね。
Hirosuke式解説、いいですね。
>◆have=●●を持っている◆
>「haveできるのは物(名詞)だけ。」
と思い込んでいる先生がいます。
ネイティブ達は、
「状態(形容詞)だってhaveできる。」
と拡大解釈しています。
具体的な事物・空間から、抽象的な空間への拡張はいろんなところで起きますね。
ふだんから意識してみていないと気がつかないで通りすぎてしまいます。
概念の拡張は高校数学で何度も出てくるので、英語でも同じです、慣れてほしいですね。
「状態をhaveする」ところを経て、「他人の状態をhaveする」=「使役用法のhave」にいたる。
一本の線でつないでいく。
これって、大西泰斗先生のネイティブシリーズの動詞編に載っているのですか?
それともオリジナル?
haveは他の本でも説明していますが、はたして使役のhaveは説明があったかな?
昨日も、
I have a dog.
I have a sister.
I have lunch.
I have a lot of money.
・・・
具体的なものばっかりですね。
この次は格調高くやってみようかな。
"I have a dream."
なんてね。
キング牧師の名演説。
中2の生徒だったので使役のhaveは出てきませんでしたが、この次は混ぜてもいいかな。学年トップクラスの生徒には構わずガンガン教えちゃいます。(笑)
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#15
Hirosukeさん様――――私のhave+名詞+(いろいろ)は、名詞が何かする、している、される、そういったことをする「名詞を持つ」。持つのは、まずhaveの直後の何かで、それに 動作がくっついていきます。――――――文が途中で切られた時の残像のイメージです。――I have him…(彼をhaveする。)―――I have him cook(彼が料理する)→料理してもらう。―――――たまにやるのですが、英文を読む時、文を隠して一語ずつスクロールして読む。自分の読み方やイメージが確認できて面白いです。
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*#2423 'IAEA members give grief over leaks' Sep. 28, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-09-29
#2435 "#2423の一文解説" Oct.4, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-04-1
#2443 仮定法ってなんだろう?(1):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-09-1
#2444 仮定法ってなんだろう?(2):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-10-1
#2445 仮定法ってなんだろう?(3):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-10-2
#2446 仮定法とはなにか(1) : Boys be ambitious. Oct. 11, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-11
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