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#4263 根室市の予算:公的会計そのままの公表では市民は一人も理解できない June 3, 2020 [26. 地域医療・経済・財政]

 「#4262 市立根室病院決算情報」の続編である。広報ねむろ6月号の「根室市の財政状況」の2頁と3頁のタイトルは「令和元年下期予算執行状況」となっており、予算額296億円の内訳が表になっている。
*https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2020-06-02

 午前中に財政課へ電話で問い合わせたら、これは当初予算と補正予算を合算したものだと説明があった。令和元年度の当初予算を市役所ホームページで見ると176億円であるから、296-176=120億円の補正予算が組まれたということのようだ。
 上場企業でこんなに粗悪な精度の予算はあり得ないし、もしあったとしたら、財務担当取締役は責任を問われるが、根室市に限らず公的会計はこういうところがルーズなようだ。「足りなけりゃ、補正を組めばいいんだ」、そういう意識がありはしないか?当初予算の精度を高めることが予算編成の王道だろう。

 さて、どうしてこんなことになるのかさらに質問を重ねてみた。296億円の中で一番大きい歳入項目は「その他」の76億円であるふるさと納税がこの中に入っているようなので、金額を訊いてみた。当初予算は6億円、実際には66億円になっている。当初予算の10倍だから、予算実績差異がふるさと納税分だけで60億円も出ている。前年実績値は予算編成の際に考慮すべきだが、それすら考慮されていない前年実績値は49億円であるから、前年実績値の12%しか予算に組み入れていなかったということになる。6億円はどういう根拠で組まれたのだろう?そんな予算案でも市議会を素通りしているようだから、びっくりだ。

 民間企業の予算編成や予算管理と対比してみたい。民間企業と言っても規模の大きい上場企業が念頭にある。市役所の予算規模が290億円だとすれば、大企業の予算規模に匹敵する。その規模の企業なら予算誤差はおおむね±3%以内だ。それくらいシビアな予算編成をしている。そして、予算実績の対比表を毎月作成して、四半期ごとにまとめた表を作成する年次でも同じだ。当初予算の中には予備費も含まれているから、特定の部署や特定の費目で予算増額が必要なときは、所定の手続きを経て、予備費からの振り替えが行われている。予備費総額は当初予算で決められているから、それを超えての予算増額は経理担当役員の権限外で、取締役会での決議が普通だろう。予算実績対比は当初予算との対比が原則である。そうしないと予算管理、つまり差異分析ができなくなる。

 決算スケジュールについても触れておかねばならない。決算は〆後2か月で作成・公表しなければならないから、上場企業は2か月後に決算発表をして、3か月以内に株主総会を開催して決算承認をすることになる。だから、3月末日決算なら、5月末には決算公表というスケジュールが民間企業のスタンダード。9月ではいくらなんでも遅すぎます。まさか手作業でやっているわけではあるまい。システムをきちんと整備すればやれますよ。やっていない民間企業はゼロですから。

 ついでだから歳出の部のどこにふるさと納税に関わる支出が含まれているか訊ねた。ベテランだからすぐに答えが返ってきた。
 すでに故人であるが、角さんが財政課係長だった時に、市立根室病院の決算書類の見方について質問に伺ったことがあった。親切に質問に応えてくれた。今回は電話だったが、十数年たっても、人は違えど対応は同じ。丁寧です。
 さて、ふるさと納税がどこに入っているかだが、金額から推して「その他」しかありえない。ふるさと納税が66億円、最大項目の「その他」76億円に含まれていることは表を見ただけでわかる。
 金額で見るとふるさと納税66億円を超える歳入項目はないのだから、独立項目にすべきだろう。欄が足りなけりゃ十分の一以下の金額にすぎない「諸収入」4.2億円や「使用料・手数料」4.1億円をカットしたらいい。
 ではふるさと納税に対応する返礼品等に係る支出はどこに含まれているのだろう。最大歳出項目の総務費107億円に含まれている返礼品が29億円その他の諸経費と合わせて35億円だという。ネット業者への手数料や送料、東京新宿での感謝祭などのイベント費用が含まれているのだろう。返礼品比率は29億円/66億円=43.9%(還元率)、諸経費込みだと35億円/66億円=53.0%である。

 ふるさと納税に関しては収入66億円、支出35億円、差し引き31億円が純益である。内訳項目の中で、金額が最大なのだから他の収入や支出に含ませないで、「市民へのお知らせ」が目的なら、独立表示すべきだろう。そうしていないから、歳出や歳入の内訳表があっても妙に膨らんでおり何が何だかわからない。

 「基金の状況」という表がある。財政調整基金は8.1億円、ふるさと応援基金が12.4億円、ふるさと応援・子ども未来基金他6件が34.9億円、合計38基金92.7億円あるが、四百年に一度の巨大地震と津波のリスクが高まっているのに、災害復興準備金がない。これでは巨大地震と20mを超える津波が起きたときに自前復興できないということ。災害対策は事前の準備が大事、根室市の予算についてのお知らせの中にはそういう項目が見当たらなかった。ふるさと納税の中から災害復興準備金を百億円積み立てておけば、次の世代も安心できるだろう。

 電話に出て親切にお答えいただいた方に、市民へのお知らせなのだから、病院事業会計については企業会計基準で公表すべきだし、予算と実績についても当初予算と実績の比較表を公表すべきと伝えた。財政課長に伝えてくれるだろう。
 厳しいように聞こえるかもしれないが、予算精度を高める努力をして、補正予算を小さくすべきで、特別なことがない限り10%を超えるような補正予算があってはいけない。当初予算編成がルーズなことと裏腹の関係だ。
 一つ例を挙げると、前年度のふるさと納税が49億円あったのに、令和元年度のふるさと納税予算が6億円だなんて予算編成はありえない話だが、根室市役所の予算編成はそうなっている。そして実際のふるさと納税額は予算の10倍の66億円あった。大事な予算なのにこんなに大きな項目すら市議会はチェックできていない。来年度予算はしっかりチェックしてもらいたい。

 広報ねむろ6月号の「財政状況」を見ても、内容を正しく理解できる市民は市役所財政課職員だけ、おそらく民間企業で働いている市民は一人も理解できない。日商簿記1級保持者でも理解できない。これではだれのために広報ねむろで「財政状況」をアナウンスしているかわからない。市役所財政課は市民のために仕事しよう。それには民間企業で働いているあるいは経営している人たちが、根室市の財政状況を内容を正しく理解できるような様式での報告が不可欠である。企業会計基準や民間企業の予算編成や予算管理のスタンダードに学び、ふつうの市民に理解できる資料を作ってもらいたい
 電話に出てくれた二人目のベテラン職員さん、どうもありがとう。わからないことあったら、また電話します。角係長にお会いして質問したのが十年ほど前ですから、この次は十年後かも知れませんね、わたしには脚がないかも。(笑)
 
*根室市の予算概要(推移表あり)
https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/material/files/group/8/R2_yosangaiyou.pdf



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#4262 市立根室病院決算情報 June 3, 2020 [26. 地域医療・経済・財政]

 広報ねむろ6月号が届いた。5ページに市立根室病院の決算情報が載っているので、紹介する。

<公的会計基準>   <企業会計基準>
  単位:億円     億円
収益 48.3   売上 31.1
費用 48.6   費用 48.6
当期損失 -0.3   当期損失 -17.5
一般会計繰出金 17.2      

*「広報ねむろ6月号」
https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/material/files/group/1/kouhou_202006.pdf

 左側が「広報ねむろ6月号」に載っている数値である。これは公的会計基準によるもので、民間人には馴染みのないもの。赤字額は3265万円と出ている。この数字を見たら、根室高校商業科の生徒たちは赤字が3265万円だと勘違いする。市民のほとんどもそう思っているだろう。根室市が嘘をつくはずがないからだ。
 右側は、企業会計基準によるもので、上場企業はもとより、税務申告の際に義務付けられている会計基準である。市立病院事業は令和元年度17億5千万円の当期純損失を計上している。
 どちらがほんとうなのか?

 上場企業が左側の決算書類を提出したら、監査法人は監査報告書に「不適正意見」を付すでしょう。なぜか?企業会計原則では営業収益に損失補填の一般会計繰入金を合算してはいけないからです。こういうのを経営実態を隠すものだから「粉飾決算」といいます。もちろん、公的会計基準では適法です、だから問題なのです。スタンダードが二つあるということ。ダブルスタンダードというのはインチキや不公正と同じ意味です。
double standard: a rule or principle that is applied to some people but others, in a way that is unfair.   ... Macmillan EnglishDicionary for adbanced Learners
(特定の人々にだけ適用され、他の人々には適用されざるルールもしくは基準、それも不公正な方法で)

 公的会計基準は事業の実態を表わさない、いや、隠蔽する。だから、夕張市がそうであったように公的会計では健全であるはずの地方自治体が突然に財政破綻が起きる。巨額の赤字を垂れ流していても、一般会計繰入金があれば赤字でなくなる。毎年巨額の赤字を出しても根室市の財政が揺るがないのは、たまたまふるさと納税制度で潤っているからだろう。ふるさと納税制度がなくなれば、根室市の一般会計から毎年17億円の資金が拠出できなくなる。
(同じことは政府というセクターでも言えます。どれほど赤字を出そうとも、赤字国債を発行して日銀にそれを買い取らせると一般会計上は辻褄が合わせられますが、借金が膨大に膨らみます。だから日銀の独立性や日銀が国債を買い取ることは禁じ手でした。だが、そうした縛りは全部外されてしまいました。何が起きるかは歴史が証明しています。戦後に預金封鎖がありました。新円切り換えが同時に行われ銀行預金や郵便貯金が全部召し上げになったのです。歴史を忘れると、忘れた罰だと、天がもう一度学べとお灸をすえます。歴史から学べなければ、災厄が繰り返すということです。)
 17億円の内訳は10億円ほどが国からの補助金、残り7億円余が根室市の実質負担ですよ。

 中標津町の町立病院も市立根室病院とほぼ同じ規模で、赤字も中標津が1億円くらい少なかった。最近どうなのかは知らない。

 さて、今年度の決算がどうなるかを占ってみたい。新型コロナ感染症で病院の売上が減少しているのは、市内のクリニックだけではない、市立病院も減少している。仮に、4-7月期が1割売上減少すると、
 2.5億円×3か月×0.1=0.75億円

 年間赤字額17億円に比べたら誤差範囲だろう。同じ根室管内の中標津町立病院も似たようなもの。根室管内に新型コロナ感染症が蔓延したら話は別です。
(根室管内に感染症用のベッドは市立根室病院の4ベッドのみです。動線分離が実務上できなければ、全病床を隔離病棟にせざるをえません。一部のフロアのみ隔離病棟にするような設計にはなっていないからです。机上プランでいまからシミュレーションして必要な機材を揃え、手順を決めておけば間に合うかもしれません。実務って段取りをきちんとやれば心配いらないものなんです。言うのは簡単、初めての事態ですからやるのはなかなかたいへんな仕事になります。でも、そこを乗り越えることで人材が育ちます、そう信じています。仮説は諸説あり、真偽のほどはわかりませんが、日本人にはどうやら集団免疫が成立しているとしかいいようのない推移ですから、根室で感染爆発なんて事態は99%ないのだろうと思っています。わたしが思っているだけで確かな根拠はありません。)(この項は6/4朝追記)

 病院建て替え時の経営計画書に載っていた損益試算では、年間赤字額の最大値は12億円ほどで、そこから逓減するようになっていた。だが、赤字額は建て替えてから17億円前後で推移しており、一向に減る気配がない。
 機能を縮小せずに、7億円程度は年間赤字額は減らせるのだよ、そんなに難しくはない。10年間続けられたら、70億円の財源が浮いてくる。

 ふるさと納税制度がなくならぬ限り、市立根室病院がいくら赤字を出そうがカバーできる、根室市の財政は安泰である。
 予算規模は藤原市長時代に145.7億円にまで減らした。そのときの人口は3.3万人だったが、現在2.5万人を切ってしまった。今年(令和2年)の財政規模は191億円で前年度の176億円よりも15億円膨らんでいる。藤原市政時代に比べて人口が8000人減少したのに、予算規模は46億円も増えている。全国の市で人口が25%減少したのに、財政規模が1.3倍になったところは他にないのではないか?
*根室市の予算額の推移
https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/material/files/group/8/R2_yosangaiyou.pdf

 公的会計基準はダブルスタンダードで、経営の実態を大隠すものだ。市民には正直な報告が望ましい。「広報ねむろ」へ載せるのは、企業会計基準に則った様式でやってもらいたい。正直にやれば、実態がわかる。実態がわかれば、関係者は真剣に考え、適切な対策をとるだろう。年間7億円ほどなら診療内容の縮小をせずに赤字額を減らせるのである。赤字が大きくなった理由も解決法も弊ブログで何度か触れている、担当責任者がやればいいだけ。
 
 四百年に一度の根室沖巨大地震がいつ起きても不思議ではない。市の借金は全部返して、災害復興資金を百億円ほど積み立ててあったら、根室市民は安心だ。
 北関東を震源とする地震が最近やたら多いのが気になる。富士山の噴火もいずれ起き、首都に火山灰が降りつもり、機能が麻痺するときがくる。その後で根室沖巨大地震が起きたら、政府の支援はあてにならない。自力でやるしかない。だから、借金を減らし、災害復興準備金を積み立てる必要がある。子どもたちや孫たちのためにぜひそうしてもらいたい。
 市議会議員のみなさんは、市民の代表だから、災害が発生したときに備えて万全の体制が取れるように、市議会で真摯な議論をしてくれるだろう。期待している。

<余談>
 「広報ねむろ6月号」の2頁と3頁には令和元年度下期(10-3月期)の一般会計歳入と歳出が載っている。歳入予算額296億円、歳出予算額296億円だ。4頁目に令和2年度の根室市の予算が載っているが、「令和2年度一般会計当初予算額」は191.35億円である。なぜ、令和元年の半期一般会計予算と令和2年の通期(1年間)一般会計予算が105億円も違うのか、わたしにはさっぱりわからない。半期の予算の方が105億円も多い。
 先ほど問い合わせて理由がわかったので、稿を改めて取り上げる。ベテラン財務課職員さん、応対どうもありがとう。


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