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#4272 変形生成文法との出遭い June 18, 2020 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

 #4271でチョムスキーの変形生成文法に触れたので、思い出したことがあり、書き留めておきます。

 実は、商学部会計学科の学生だった時にチョムスキー著・安井稔訳『文法理論の諸相』(1970年刊)を買ってました。ちょっと変わった文法理論だなくらいでした、強いニーズがなかった、それで途中で放り投げたんです、難解でした。この本は初版で絶版になっています。これは構造言語学の専門書で「理系の本」であって、「英文法書」ではなかったのです。読んで理解できる英文法学者や研究者、学生が少なかったのだろうと推察します、売れるわけがありません。
 3年くらい後で、大野照男著『変形文法と英文解釈』を読んでます。Eric Roll"A history of economic thought"を読み、ノートに日本語訳を書いていて、意味不明な個所がいくつも出てくるので、何とかしたいと切実な思いがあったときに、板橋区立図書館で『変形文法と英文解釈』を見つけたのです。強いニーズが背景にありました。入試直前でしたが、ノートに要点をメモしながら、半分ほどやるのに1週間かけました。大学院経済学研究科の受験の仕上げにはそれで十分でした。
 3校受けましたが、点数の確認ができたのは1校だけ。英語は90点でした。受験生は控室で待ちますが、次に面接する人は面接室のドアの横に置かれた椅子まで移動して着席して待つことになっていました。前の人が出てきた後、名前と得点を読み上げる声が聞こえてきました。「ああ、合格したな」。(笑) この本のお陰です。他の2校もたぶん9割前後だったでしょう。変形生成文法が身につくと、訳文にはっきり差がつきます。1校はB4版に小さな文字でびっしり英文が並んでいました。外部経済と内部経済、マーシャルだったと後でわかりましたが、まったく馴染みのない分野でした。量が多いので1時間では全訳できるわけもないので、出題者は抄訳を要求していると判断して、コンパクトに要旨を書き並べていきました。それでも時間いっぱいかかってます。得点はそこが一番よかったでしょうね。50人ほど受験して合格者は2人です。
(受験した3校のうちの1校は母校でしたが、学内試験含めて、3度受験して、3度とも合格者無し、つれない母校でした。試験は3度ともトップだったと思います。商学部会計学科の学生が経済学研究科を受験して、学内試験のときに指導教授になる人と議論して貨幣論で大きな採点ミスが判明し、30人ほど教授たちが並んでいるところでコテンパにやつけてしまったのが祟りました。ミスは明らか、それも商学部会計学科の学生から指摘されたのですから、顔がみるみる真っ赤になってました。経緯は2度ほど弊ブログに書いてます。「君の後輩は苦手だよ」、入試の後その教授から同じゼミだった院生の先輩が某教授がそう言っていたと教えてくれました。採るつもりがなかったのです、時間を無駄にしました。他の受験生の迷惑にもなったでしょう。「合格者無し」の巻き添えですから。母校の経済学研究科で合格者無しは後にも先にも、その3度のみだったのかも。それでよかったと思います。お陰で業種の異なる4社を経験して、経済学研究が格段に深くなったのです。大学に残っていてはわからないマルクス『資本論』の深淵(公理的演繹体系の全体像)を覗き見し、マルクスが弁証法を用いたことでその経済学の体系化に破綻をきたしたことが理解できました。日本のマルクス経済学者はいまだに誰も気がついていません。『資本論』や『経済額批判要綱』や『数学手稿』を丹念に読んでいないからでしょうね。解説書を読んでいたのでは永久にわかりません。ユークリッド『原論』を読んで考え抜いたらわかるかもしれません、わたしはそうしました。)

 ついで、R・ジェイコブズとP・ローゼンボーム共著『基礎英語変形文法 上・下』(1977年6版)を本屋で見つけました。新宿紀伊国屋(旧店舗)だったのではないかと思います。この本は基本を平易に解説した好い本でした。変形文法の入門書です。

 1978年から1984年1月まで産業用・軍事用エレクトロニクス輸入専門商社で会社の経営改革とシステム開発を担当していたので、AIにも興味が広がり、自然言語処理がどのような学問的な背景をもって研究されているのか、チョムスキーの構造言語学の解説書や彼自身の著作を読んでみたいと思ったのです。好奇心に突き動かされました。1冊精読してしまえば、あとは読むのにそれほどの困難はありません。自分の専門外の専門書を読むのは、最初の一冊がたいへんなのです。あとは好奇心に任せて「芋づる式」に本を選びかったぱしから読破していく。つまらないと感じたらすぐにやめる。50頁も読んだところで、読む価値がなかったとわかる本もたまにあるのです。それが3000円から5000円ほどもするような本だとがっかりです。高い本はタイトルだけで判断せずに、手に取って30分は本屋で立ち読みしてから買うようになります。学生時代はそんなにお金ありませんから。社会人になってから本題に費やすお金が楽になりました。

①  John Lyons "CHOMSKY" 1977

②  Editor:Frank Kermode "CHOMSKY" 1985, Fifteenth impression(15刷)
③  Noan Chomsky "Knowledge of Language  Its Nature, Origin, and Use" 1986
④  V.J.Cook "Chomsky's Universal Grammar An Introduction" 1988
⑤  Andrew Radford "TransformationalSyntax (A student's guide to Chomsky's Extended Standard Theory)" twice 1988
  

 ③と④は必要を感じていたので全頁読みました。③はSRL八王子ラボで機器担当しているときに、暇潰しに仕事中に読んでいた本です。購買課では購入申請受付審査業務、購入業務、検査機器の共同開発、購買システムのメンテナンス、機器購入予算管理、ラボ内の危機の標準化業務などを担当していました。ラボ内図書室の30種類ほどの欧米の医学雑誌も仕事中に読み漁っていました。「2回の図書室で医学雑誌読んでいるので、用事があったら図書室へ電話まわしてください」、それでよかった。業務に優先順位をつけて優先度の低い業務は2割程度廃止、重要なものはシステム化をしてしまう。やりたい仕事ができたら、必要な予算は自分で提案書を書いて金額に応じて一般協議書か稟議書で許可をもらえばいいだけ。ルーチン業務をシステム化してしまうと、いくらでも時間ができます。減価償却費予算の計算と固定資産管理はシステム化で劇的に変わってしまいました。だから移動すると同時に、購入協議書周りの業務と固定資産管理業務を購買課へもってきて担当してます。それに購買課にもとからあった購入業務がルーチン業務となりました。不具合のあった購買在庫管理システムの手直しもしてます。3人の担当者がいたのですが、だれもシステムに関するスキルをもっていなかった。あまりもたついているので、出力帳票の半分くらいは仕様書を書いてあげました。
 固定資産実地棚卸マニュアルや実務フローは当時とほとんどかわらないでしょう。固定資産分類コードも制定しました。ラボ管理部の機器や予算担当者に協力してもらって、現物確認しながら数か月かけて分類整理をしていきました。機器の種類が多くて整理がたいへんでしたが、いったんやってしまうと、便利です。-80度の冷凍庫が八王子ラボ内にどの検査部署に何台あるのか、すぐに画面で確認できます。国からの調査依頼が年に一度ありますが、それまでいい加減な数字を書いていました。何も資料がないのですから仕方ありませんでした。
 投資予算と既存固定資産をベースにした減価償却費予算も精度が一桁アップしました。それまで1億円を超える予算差異がでていましたが、投資予算管理をシステム化して固定資産管理システムと統合することで、減価償却費予算差異が1000万円くらいに縮小しました。減価償却費予算差異の縮小が上場要件の一つとして挙がっていましたが、これでクリア。他に、固定資産税申告に3人のバイトを雇い社員一人と3か月かかっていましたが、ゼロになっています。自動出力に変えてしまいましたので、申告書添付の固定資産台帳の作成作業は消滅しました。もちろんいまでも同じでしょう。全部1984-85年に創りました。

 話を構造言語学の専門書に戻しますが、またすぐに脱線します。①②⑤は抜き読みしただけです。
 ④を読んでいた時に、ラボの学術開発本部担当役員が机の前を通りかかって、「何読んでいるんだ」と言いながら、本を手に取って一瞥すると、席に戻ってすぐに社内電話がありました。
「俺のところに来ないか」
 異動のお誘いでした。学術開発本部内には学術情報部、開発部、精度保証部の三つの部がありました。わたしは取締役直属のスタッフとして三つの部門で手に余る仕事や開発部でやっている製薬メーカとの検査試薬共同開発案件2つと共同開発手順の標準化を担当。そして担当できる者がいなかった学術営業から依頼のあった沖縄米軍がらみの出生前診断検査や慶応大学病院との出生前診断(トリプルマーカ―)の日本標準値制定に関する産学共同研究プロジェクト案件を任されることになりました。
 ここで、また仕事の幅が広がります。学術開発部長のK尻さんとは臨床検査項目コードの日本標準制定プロジェクトで3年前に一緒に仕事をしていました。わたしの提案で始まった大手六社と臨床病理学会(現在、日本検査医学会)項目コード検討委員会の産学協同プロジェクトは5年ほど毎月検討会議を重ね、臨床病理学会から公表されて、いま全国の病院で使われている臨床検査項目コードとなっています。項目コードの新設や改定は作業はSRLに事務局を置いてやっているはず。
 1984年に上場準備中のSRLに中途入社したときには全社の予算編成と管理がルーチン業務、そして統合システム開発の中心部分を担いました。財務会計及び支払い管理システムと投資・固定資産管理システムを開発しています。前者は仕様書作成スタート8か月で本稼働。異常に短い期間での開発でした。必要なスキルが全部そろっていたのでやれました。原価計算システム、購買在庫管理システム、売上債権管理システムとのインターフェイス仕様書は1週間で書き上げました。いまも当時のままでインターフェイスしているでしょう。当時は全部作りこみですから、外部仕様書と実務デザインは当時の日本のトップレベルのスキルが必要でした。
 それをやり切って、予算編成・管理責任者として16億円の検査試薬(材料費)カットを提案したら、専務が価格交渉プロジェクトを作るから、お前が八王子ラボの購買課へ2か月間行って価格交渉を担当しろと言われて、ラボ勤務。製薬メーカを個別に呼んで予定通りコストカットすると、すぐに購買課への異動辞令が出されました。そんな話ではなかったのに。(笑) 翌年も20%ダウンが可能でしたから、利益管理上外せなくなったのです。それにしても2年やれば一つの型ができてしまいますから、あとは誰でもやれます。2年以上わたしに担当させる意味はありません。それまで、製薬メーカと価格交渉したことがありませんでした。卸問屋とやっていたのです、阿呆な話です。卸問屋にはせいぜい10%しか利益がないのに、20%の原材料費をカットできるわけがありません。だから、「やれっこない」と現場の課長から反対意見があったのでしょう。困った本社専務(富士銀行からの転籍組、陸士と海士に合格し陸軍士官学校卒、戦後は東大に入り直してご卒業)は、言い出しっぺの予算編成統括責任者のわたしに材料費カット・プロジェクトを引っ張らせることにしたというわけ。自分でやれないことは提案しませんから、望むところでした。
 機器担当の2年余に、数件の検査機器の共同開発をやりました。産業用エレクトロニクス輸入商社にいたときに、6年間毎月世界最先端の計測器を開発する欧米50社のメーカーからエンジニアが来て理系大卒の営業マン相手に製品説明会を開いていたので、ずっと聞いてました。門前の小僧習わぬ経を読む類で、マイクロ波計測器についてずいぶん詳しくなりました。ディテクターとデータ処理部と双方向インターフェイスの三つの構成要素から計測器ができていました。データ処理部は要するにコンピュータですから、こちらは数種類のプログラミングを経験済みの専門家でしたから、そこを中心に理解しました。検査機械も基本的な構成は同じです。ディテクターの種類が違うだけ。同じ三つの部分から構成されていたのでわかりやすかった。インターフェイスやデータ処理部が検査機械はびっくりするほど遅れてましたね。だから、エンジニアでもない私でもメーカとの間に入って、共同開発の調整ができたのです。世界最先端の理化学計測器の最新情報を6年間も勉強してきたわけですから、無駄にはなりませんでした。どこで得するかわからないものです。
 LKB社の紙フィルター方式の液体シンチレーションカウンター2台(96チャンネルだったかな、96検体同時測定だからバイアル方式の従来タイプに比べて、処理速度は比較にならぬほど速いしガラスのバイアルを紙フィルターに置き換えるので省スペース)世界初導入、SRL仕様でのγカウンター開発、栄研化学LX3000、結石前処理アームロボット(これはラボ管理のO形さんの担当で、相談されて一緒に業者対応しただけ)、ニコン子会社ニレコ社との染色体画像診断装置開発断念と英国メーカ―IRS社の染色体画像解析装置導入など、2年半ほどいた期間中の仕事でした。
 先に書いたようにひょんなきっかけで、学術開発本部へ異動しましたが、その直前まで八王子ラボの検査機器の標準化も進めてました。電子天秤は世界最高のメトラー社に統一、検査担当者が異動するたびに電子天秤のメーカが違って、マニュアルを読むのはばかばかしいので。(笑)
 いま話題のPCR自動検査機器を製造しているPSS社の田島社長は1987年当時はアドバンテック東洋という会社の営業マンでした。SRLの業務部とRI部で自動分注機の開発をしていました。かれはすぐに独立しました、目先の利く人でした。自動分注機では日本でナンバーワンの会社でしょう。その技術とPCR検査機器を組み合わせただけ。だから、もう30年も前に要素技術の開発は終わっていたのです。八王子の居酒屋で一度だけお酒を飲みました。一人で数十億円の購入協議書を受け付け、審査して、業者へ仕事を発注していましたから、取引先とは年に一度だけお酒の席のお付き合いをすると決めていました。ほとんど居酒屋です。一社だけ、社長さんがキャバレーが大好きで、突き合わされてことがあります。メーカ側の人からは必要な開発情報や不満も聞いておく必要がありました。田島さんには、「SRLにこだわっていたらそれだけの会社になってしまう、そろそろ離れたら?」そんな話をした覚えがあります。「SRL御用達」の会社になりつつありました。せっかく独立してPSSという旗を挙げたのですから、いつまでもSRL御用達では成長力が削がれます。田島さん、びっちり現場に張り付いて、ニーズの吸い上げを渾身の力でやってました。偉い人ですが、それゆえ危ない面もあったのです。紙一重ですね。両方を牽制しました。小さいけれどSRLにとっては大事なメーカさんと現場の間で不祥事が起きてしまっては影響が小さくありません。粒は小さいながら当時もSRLにとっては自動化に欠かせない大事なメーカーでした。
 入社2年目には開発部長の金額の大きい不祥事(業務上横領、懲戒免職処分)があったし、それから数年して業務部社員の不祥事(取引業者から毎月現金受領、懲戒免職処分)もあった。この二つは金額が大きかった。長くやっていたらどこかでバレます。購買関係者はつねに業者のターゲットです。危ういお付き合いをしている社員や管理職がいました。早く異動させてしまうのがいい。お酒が好きなら素敵な女性のいるバーへ、「どうぞお使いになって結構です」なんて言うんです。請求書は製薬会社へ回ります。ゴルフが好きなら接待ゴルフ漬け。最初は小さい接待、徐々に麻痺してくるんです、それが怖い。何人か見ました。どこかで誰かが知ることになります。創業社長のもとへは3日に一通の内部告発文書が届いていました。ちゃんとしている社員の方が断然多い、たまにヘンなのが出るんです。そのほとんどが管理職でした、権限が大きいですからね。
 暇ができたら、好奇心に任せて本を読んでいたら、そうしたことからは距離を置けます。ゴルフの趣味もないし、綺麗なギャルのいる店で飲む必要もありません、ラボにはお酒の好きな女子社員がたくさんいます、1000人中800人ほどが女性でした。銀座でお店を一軒持ってもやっていけるような美人でスタイルがよくて色っぽくて言葉遣いのきれいな女性もいました。たまに誘って数人で飲んで騒げば十分愉しいのです。仲の好い同僚と二人で新宿の居酒屋や銀座のライオンで飲めば、女性同士で来ている客と相席してにぎやかに呑むこともできます。
 染色体画像解析装置を2台まとめて購入したときに、バックアップ用に1台ラボ内に設置してもらうようにお願いしました。英国エジンバラにあるメーカでしたから、機器にトラブルがあってもすぐに対応できません、こちらはルーチン検査に使うのですから、即時対応が必要です。だから、バックアップ1台設置を提案しました。向こうが呑みやすいように、値引き要求はしません。こちらもニコン子会社と染色体画像解析装置開発失敗経験があり、IRSの製品が高性能であることは認めてました。手作りのプリント基板のボードコンピュータにCCDカメラ、そしてソフトと高性能レーザプリンタですから、原価はせいぜい定価の20%程度だと思います。エレクトロニクス輸入商社でマルチチャンネルアナライザーを開発、販売するために原価計算した経験があるので、機械の中身とソフトの動きを見ればコストは見当つきました。
 バックアップをメーカ側に飲ませる口実を用意したのと、販売会社である日本電子輸入販売の担当者へは商談を一つ紹介してあげました。「二番手の会社にSRLで導入したので買わないかと商談してみろ、必要なら当社の現場(染色体課)を見学させてあげるから、値段は1円も引くな、それでも売れる」と提案。その通りになりました。営業マンのSさん喜んでました、もうけが大きい。(笑) 製造は英国のメーカでしたから、ゴルフの名門セントアンドリュースでのゴルフ接待、会社の了解がとれたので、一緒に行きましょうと提案がありました。彼はゴルフが大好きだったのです。わたしにはゴルフの趣味がない、「会社の了解とったのに…」とガッカリしてました。期待に応えられず申し訳なかった。染色体画像解析装置はほかに国内の臨床検査センター2社販売されました。3年後にその一社である東北の臨床検査センターに1億円の出資交渉をして役員出向することになります。運命の糸はずっと前からつながっていました。そしてさらに4年ほど後で、もう一社である帝人の臨床検査子会社の買収交渉を担当することになるのです。
 どちらの会社も採算が悪いので、打開のために新規分野へ進出しました。しかし、この分野はSRLが80%の寡占分野で、検体を集められるわけがありません、経営判断が甘いと思いました。高額の機器の他に染色体検査の要員を揃えると赤字はさらに膨らみます。いずれ経営が行き詰まると1990年ころに判断してました。その通りになったのです。だから、帝人との臨床治験合弁会社の経営をSRL近藤社長から任されたときに、合弁会社の黒字化と帝人の臨床検査子会社の買収も3年以内にやれという指示は、わたしにはもう何年も前に、シミュレーション済みのことでしたから、ラボ内を一度見学させてもらって3年分ほどの決算書を分析して、権限をもっている帝人本社役員を説得できると確信しました。帝人のほうにもメリットのある話ですから。「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」、もちろんそこで働く従業員が一番だいじでした。ちゃんと期限内に仕事をしました。
 SRL側のラボを移転、大型自動化ラボを中心に会社を作り変える構想をもっていました。米国市場で臨床検査子会社を造り展開すればさらに大きくなったでしょう。ラボの自動化では世界一の水準です。
 グループ企業全体をコントロールする、利益管理に収斂する画期的な経営統合システム構想は1988年ころにつくってありました。実行していたら、グループ全体の売上規模は4倍、売上高経常利益率は15%を超えていたでしょうね。米国での事業展開にめどがついたら、英国、ドイツ、フランスで展開すればよかった。SRLは大きな可能性を秘めた面白い会社でした。

 機器の統一は例えば、ウィルス部の蛍光顕微鏡はツァイス製品に統一。値段は350万円ほどしました。ニコン製品だと250万円、オリンパスだと180万円くらいでしたね。購入申請が出ると、ウィルス部の検査課長に「オリンパスでなくていいよ、カーツ・ツァイスを買ってあげるから、検査管理部に話は通しておくから、購入協議書書き換えてきて、見積書はこちらでとっておきます」、「え!ほんとうに買ってもらえるんですか?」、「任せとけ、その代わり使っている機器に見合ういい仕事してください(笑)」。支払う税金が少し減るだけ。
 検査担当者にいいもの使わせると、いい仕事してくれるんです。大学検査室の先生たちや大学病院の先生たちのラボ見学のときにも、そういう世界最高の顕微鏡がズラっと並んでいると、説明の必要がなくなるんです。「さすがSRLさんだ、技術レベルが高いから、使っている機器も違う」、ラボ見学のご案内をしているときに表情をみるとよくわかります。法人税20億円も支払うくらいなら、ラボの機器を世界最高性能のものに揃えたほうが「お得」です。350万円しても4割引き、210万円で買ったようなもの。ニコン製品よりも安いというのが、予算管理をしていた私の感覚です。「好いもの揃えるから」って、本社役員にあったついでに一言いうだけで、全部通ります。わたしの後継の予算管理担当者もだまって予備費から予算を回してくれます。入社して2年間は予算編成と予算管理の統括責任者をしていたので、副社長や経理担当役員に話を通すだけで、全部OKがでました。要するに八王子ラボと本社のパイプ役だったんです。それまで、本社管理部門で、検査や検査機器、ラボの自動化についてスキルのある社員が一人もいませんでしたから、貴重な存在だったのでしょう。これからもそういうマルチのスキルのある人間が民間企業本社部門には必要です。

 好奇心がわいたら、原典を探して読む、そういうことが仕事のさまざまな方面で活きてくるんです。あるとき思いがけない方向へ広がっていきます。チョムスキーの構造言語学への興味を通してそういうことが言いたかった。
 今日も弊ブログを読んでくれてどうもありがとう。

*PSS(プレシジョン・システム・サイエンス)社ホームページ:http://www.pss.co.jp/

1. チョムスキー著・安井稔訳『文法理論の諸相』(1970年刊)
SSCN3580.JPG


2. R・ジェイコブズとP/ローゼンボーム共著『基礎英語変形文法 上・下』(1977年6版)
SSCN3583.JPG


3. ①  John Lyons "CHOMSKY" 1977
  ④  V.J.Cook "Chomsky's Universal Grammar An Introduction" 1988
  ③  Noan Chomsky "Knowledge of Language  Its Nature, Origin, and Use" 1986


SSCN3584.JPG

4.大野照男『変形文法と英文解釈』
  Noam Chomsky "Refrections on language"
  ⑤  Andrew Radford "TransformationalSyntax (A student's guide to Chomsky's Extended Standard Theory)" twice 1988


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#4271 Sapiens (32nd) : page 43 June 18, 2020 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

 第1部第2章"The Tree of knowledge"のまとめsummeriseの箇所で、少し複雑な構文があったので紹介する。

<43.1> To summarise the relationship between biology and history after the Cognitive Revolution:

a.  Biology sets the basic parameters for the behaviour and capacities of Homo sapiens. The whole of history takes place within the bounds of this biological arena.

b.  However, this arena is extraordinarily large, allowing Sapiens to play an asutounding variety of games. Thanks to their ability to invent fiction, Sapiens create more and more complex games, which each generation develops and elaborates even further.
 
c.  Consequently, in order to understand how Sapiens behave, we must describe the historical evolution of their actions. Reffering only to our biological constrains would be like a radio sportscaster who, attending the World Cup football championships, offers his listeners a detailed description fo the playing field rather than an accont  of what the players are doing.

  What games did our Stone Ages ancestors play in the arena of history?

 アンダーラインを引いた箇所が高校生にはなかなかむずかしいようだ。文の中に文が埋め込まれているので、目くらましに遭う。こういう文は生成変形文法と利用すると理解のピントを外さない。意味は基底文deep structureにあるのだ。

Reffering only to our biological constrais would be like a radio sportscaster who, attending the World Cup football championships, offers his listeners a detailed description of the playing field rather than an accont of what the players are doing.

 挿入句を外すだけで、ずいぶんと軽くなる。
Reffering only to our biological constrais would be like a radio sportscaster who offers his listeners a detailed description of the playing field rather than an accont of what the players are doing.

 これなら、高校教科書に出てくるレベルの難易度の文である。挿入句[, attending the World Cup football championships, ]があるだけで、英語の偏差値が75の高校生でも眩暈(めまい)がしてくるのである。挿入句は[, ..... ,]のように、両端がカンマになっているのですぐに見分けられるから、それを外してみたらいい。

 以下は、3つの文に分解したもの。(3)は基底文ではないが、意味を捕まえるためにはここまでで十分である。
(1) Reffering only to our biological constrais would be like a radio sportscaster.
(2) [a radio sportscaster who is] attending the World Cup football championships.

(3) [a radio sportscaster whooffers his listeners a detailed description of the playing field rather than an accont of what the players are doing.


(1) 生物学的な制限にのみ言及することはラジオのスポーツキャスターのようなものだろう。
(2) ワールドカップサッカー大会で実況中継中のラジオスポーツキャスター
(3) 選手たちが何をしているのかをほったらかしにして競技場の構造や色彩や芝の状態などどうでもよいことをこまごまと視聴者に伝えるラジオスポーツキャスター

 スラッシュリーディングならこれだけで十分だ、滑らかな日本語にするにはつなげばいいだけ。翻訳家ではないのだから、翻訳者の柴田さんのような訳文にならなくてもいい。高校生や大学生なら日常使う言葉で表現できたら十分だ。
「生物学的な制限にのみ言及するというのは、ラジオのスポーツキャスターがワールドカップの実況中継中に、競技場で選手たちが何をしているかをほったらかして、競技場の構造や色彩や芝の状態がどうなっているのか事細かくしゃべり続けるようなもの。…」ebisu訳案

 太字で示した部分の訳がちょっと悩ましい。
 arena:①試合場、競技場、アリーナ、リング ②(…の)闘争の場、(…の)界

 さてthis biological arenaは「この生物学的な競技場」と「この生物界」のどちらがいいのだろう?
 主語には定冠詞がついているから、「The whole of history」その意味は「サピエンス全史」である。「サピエンス全史が生物学上の競技場という範囲内で生起している」と読むべきだろう。だから、arenaは「競技場」、gamesはそこで行われる「試合」と訳したい。
 ハラリはarenaとgamesをセットで考えて書いている。競技場とそこで行われる試合を比喩として使っているのだ。

 プロの翻訳家の訳文を参考までに挙げておく。
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 認知革命以降の生物学と歴史の関係をまとめると、以下のようになる。
a 生物学的特性は、ホモ・サピエンスの行動と能力の基本的限界を定める。歴史はすべてこのように定められた生物学的特性の領域(アリーナ)の協会内で発生する。
b とはいえ、このアリーナは途方もなく広いので、サピエンスは驚嘆するほど多様なゲームをすることができる。サピエンスは虚構を発明する能力のお陰で、次第に複雑なゲームを編み出し、各世代がそれをさらに発展させ、練り上げる。
c その結果、サピエンスがどうふるまうかを理解するためには、かれらの行動の歴史的進化を記述しなくてはならない。わたしたちの生物学的な制約にだけ言及するのは、サッカーのワールドカップを観戦しているラジオのスポーツキャスターが、選手たちのしていることの説明ではなく、競技場の詳しい説明を視聴者に提供するようなものだ

 それでは石器時代のわたしたちの祖先は、歴史というアリーナでどのようなゲームをしたのだろう?
 …柴田裕之訳 57頁
------------------------------------------


<余談:高3英作文トレーニング>
 1月半ばから、週4回、高校3年生対象に問題文と解説をメール配信でやっている。「英作文1000本ノック」と命名したが、これはNHKラジオ英会話の大西泰斗先生のテキストと解説がベースになっている。必要な範囲で問題を付け加えたり、解説を増やしたりしている。一昨日が75回目、平均して7問題くらいだから、500題を超えたので、どうやら1,000題やれそうです。
 しっかりやってくる生徒、時々やってくる生徒、やっているのかやっていないのかわからない生徒(笑)の三つのグループに分けられる。「わからなけりゃ、主語と動詞だけで十分だよ、そこまでやってきたらそのあとどうしたらいいかは個別に指導するから」と生徒たちには伝えてある。「数学大好き&英語嫌い」な生徒がほとんどなので、てこずっています。
 願わくば、長文対策には弊ブログの「原書講読講座Sapiens」シリーズも利用してもらいたい。

大西が当初から目指しているものは、認知言語学で広く使用されているイメージ・スキーマを一般の学習者にわかり易いように変えたメージを用いた英文法のわかり易い教授である
認知言語学はチャールズ・フィルモア格文フレーム意味論レイコフらが1970年代に提唱し、いわゆる「言語学論争」にまで発展した生成文法左派の生成意味論、そしてロナルド・ラネカーが独自に研究を進めていった空間文法(space grammar:後の認知文法)などが基となって融合的に発展した分野である。

 ノーム・チョムスキーの生成変形文法に出遭ったのは、1974年ころのことだった。経済学の原典を読んでいて、ときどき意味のつかめない箇所が出てきて困っていた。著名な経済学者が訳した良質な翻訳書で調べても納得のいく訳文ではなかった。板橋区常盤台の区立図書館で生成変形文法理論の専門書(大野照男著)『変形文法と英文解釈』見つけて、朝9時から夜6時ころまで1週間ほどで読み切って、ようやく原因が何だったかわかった。著名な先生たちでも文法工程指数の高い文はどうしようもないから、前後関係だけで当て推量の訳をしていることがわかった。論説文なら、基底文に分解・整理すれば、文法工程指数の高い文でも適切に処理できる。
 せっかくだから、生成変形文法の本は本家本元のノーム・チョムスキーの著作も数冊読んでみた。構造言語学に興味があったのは5年もあったかな、そんな程度です。理論のあまり細かい処へ立ち入ると、かえって煩雑になるので、適当なところで妥協しておくのがよい。
 ☆ 複雑な問題に遭遇したら、「必要なだけの小部分に分割すること」
*デカルト『方法序説』より「科学の方法、4つの規則の第二より」

 安井稔先生が高校の先生向けの参考書『英文法要覧』を書かれていますが、これは生成文法をベースにした英文法書です。専門書ではありませんので、とっつきやすいでしょう。安井先生にはチョムスキーの『文法理論の諸相』という本の翻訳があったはず。

 大西先生のイメージに基づく意味解説はとってもわかりやすくて助かるし、英文をどのように書けばいいのか指針になる。なにより、認知言語学は生成文法左派の生成意味論と関係があるらしいから、さらに親近感がわいた。


*https://ja.wikipedia.org/wiki/大西泰斗
**https://ja.wikipedia.org/wiki/認知言語学

*#4272 変形生成文法との出遭い June 18, 2020
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2020-06-18



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