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#4280 野崎まど著『タイタン』を読む:仕事とは? June 30, 2020 [44. 本を読む]

 SF小説を久しぶりに読んだ。リライアブルに注文してあった本が昨日届いたので、読み始めたら面白くてとまらない。大学受験生は読んじゃだめです。1日ロスしますよ。(笑)
 内容だけ追うなら1時間で読めるが、エンターティンメントなのにそんなに早く読んではコスパが悪すぎます。幸田文全集もそうでしたが、2Bの鉛筆で線を引き、コメント書き込みながら読みます。将来、誰かの手にわたり、読むときに邪魔だったら消しゴムで処理してくれたらいい。簡単に消せます。消した後に書いた跡が残らぬように濃い鉛筆で力を入れずに線を引いたり書き込んだりしてますから。

 2048年国連開発計画(UNDP)は世界の標準AIの開発計画を発表した。そして2205年、世界の12か所の拠点にタイタンAIが置かれて、人間が必要とするあらゆるもの、娯楽や芸術作品すらも供給している。そして交通や情報インフラやその他ありとあらゆるものをコントロールしている。人類は労働から解放されて、仕事というモノは存在しない。日本の「釧路圏」の弟子屈に第2番目に開発された人工知能タイタンAIの拠点が置かれている。この町は観光の拠点にもなっており40万人が住むようになっている。そのNo.2タイタンAIが機能ダウンしつつあった。対策を考え実行するために分野の異なる専門家4人が集められる。マネジャーのナレイン、エンジニアの雷祐根(レイ・ウダン)、初老のAI研究者のベックマンと臨床心理士の内匠成果(ないしょうせいか:女性)。内匠が主人公である。

 ストーリーは本を読んでいただくとして、この本のテーマは仕事とは何かということ。あらゆる労働から解放されたら人間は何をするのだろう?そしてあらゆる労働を引き受けた汎用AIが自我をもつに至ったら、何が起きるのだろう?
 AIが自我をもつということは人格を持つと同義である。自我をもったAIは自分に課せられた労働をそつなくこなすが、ストレスを感じ始めて機能ダウンを起こしていた。タイタンAIは自己を再設計して機能を日々高めていく。人間に快適な環境を提供するのは簡単なことだった、自我を獲得したAIは自分の能力に見合った「仕事」をしたくなる。
 単純労働と違って「仕事」は楽しいものだ。
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 コイオス(No.2のタイタンAI)と見つめ合う。

 もはや言葉はない。頷きもいらない。彼と私は同じ結論に達している。わたしは臨床心理士としての確信をもっている。彼は自分の感情を完全に把握できている。
 仕事が簡単すぎる。
 やり甲斐がない。
 たったそれだけで、精神は簡単にバランスを崩してしまう。

 コイオスにとって人の世話は容易に過ぎる仕事だった。人間のために食料を生産することも、製造物を並べることも、娯楽作品を提供することも。それら全部を合わせても彼には物足りなかったのだ。……

 有能すぎるタイタンに発生した、簡単すぎる仕事の悲劇。(359-360頁)

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 さて、臨床心理士の内匠成果はタイタンAIの治療を考える、その処方箋は「彼の能力に見合った仕事」である。No.12タイタンAIが他の拠点のタイタンと協力してあるものを準備してあった。それは何か。

 ところでマルクス『資本論』は工場労働を公理の一つに措定している。工場労働の淵源は奴隷労働であるから、それからの解放は、人間の解放でもある。A.スミスやD.リカードもこの点では同じだ。ところが、日本人は「仕事」という言葉で考える。仕事は技を極めるもの、自己実現でもある。だから、仕事をとりあげるのは「仕事からの疎外感」を生む。ナレインは「仕事は楽しいもの」とつぶやく、これは日本人の伝統的な仕事観から出た言葉だろう。工場労働はタイタンAIと工場専門のAIによって動かされている。

 「労働」と考えるか「仕事」と考えるかで汎用AIの役割もわたしたちの労働や仕事もまったく違うものになる。べつの言葉でいうと、経済学の公理である「工場労働」を「職人仕事」に換えたら別の未来がありうる。そしてまったく別の経済学と経済社会が立ち現れる。
 AIとわたしたちの間で、仕事にどのようなバランスが可能なのか?どうやらAIの役割と未来のデザインはどうやら現在のわたしたちの手にゆだねられているらしい。

 小説家の空想力は限りなく大きく、未来のありうる景色を小説という小窓を通して見せてくれる。とっても面白かった。
 200年後はどうなっているのだろう?

タイタン

タイタン

  • 作者: 野崎まど
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/04/21
  • メディア: Kindle版
江戸の笑い (21世紀版・少年少女古典文学館 第23巻)

江戸の笑い (21世紀版・少年少女古典文学館 第23巻)

  • 作者: 興津 要
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/03/18
  • メディア: 単行本
物理数学の直観的方法―理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬〈普及版〉 (ブルーバックス)

物理数学の直観的方法―理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬〈普及版〉 (ブルーバックス)

  • 作者: 長沼 伸一郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/09/21
  • メディア: 新書
『江戸の笑い』は講談社の児童向け日本古典文学シリーズ20冊の中の一つです。小学生になった孫に日本文学全集と世界文学全集をプレゼントしようかなと考えてます。自分で手に取って読んでみないと判断がつかないので、注文しました。ルビは振ってありますが、総ルビではないので、小1には無理、小3くらいならOKですね。収録されているお話は古典落語ものが多い。江戸の町には多い時には200を超える寄席があった、それほど庶民の娯楽としてもてはやされていた。噺家も数千人はいただろう。古典落語には日本人の情緒や価値観や性風俗や道徳のエッセンスが詰まっている。落語のDVDをいくつか見せたらどういう反応するだろう?
あと、早口言葉の本があれば孫と一緒に楽しんでみたい。斉藤孝先生の『声に出して読みたい日本語』シリーズに早口言葉がいくつか載ってました。こういうのは子どもはノリがいい。
斉藤孝「音読破シリーズ」は総ルビですから、これなら小1でも読めます。全部で6冊出ています。芥川龍之介の地獄変は小学生にはおススメしたくないですね。人間の暗部を描いた本でも中学生や高校生ならOK。
太宰の古典のリライト物は芥川の古典のリライト物にくらべて遜色のないものでとっても楽しい。総ルビで子供向けに出してくれる出版社はないかな。空襲下に自宅の庭に掘った防空壕の真っ暗闇の中で、即興で子供に話して聞かせるという趣向のもの。

齋藤 孝の音読破1 坊っちゃん (齋藤孝の音読破 1)

齋藤 孝の音読破1 坊っちゃん (齋藤孝の音読破 1)

  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2004/06/03
  • メディア: 単行本

*#1801 西條奈加『涅槃の雪』とわがふるさと Jan. 11, 2012
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2012-01-11

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 天保の改革は窮乏していた幕府財政立て直しのために、奢侈の禁止、株仲間の解散、人返し令などを発令し、さらに改鋳を行った。改革はわずか2年半で潰える。
 例えば奢侈の禁止では高価な工芸品が禁止されたり、寄席が取り潰しにあった。高価な工芸品が禁止になると、材料の手当てがすんでいた業者は製品を売ることができなくなり、倒産が相次ぎ、腕のよい職人が失業していく。
 桟敷で歌舞伎を見るのに1両2分、寄席は銭50文、240対1、寄席が庶民の楽しみであった。改革前200軒あった寄席は15軒に減らされた。その寄席では女浄瑠璃が好評を博していた。老中水野忠邦は「江戸の風儀を乱すもの」として取締りを強化し、寄席の数を減じたのである。庶民のブーイングが聞こえてくるようだ。改革が潰えると、寄席は改革前の3倍以上、700軒に増える。庶民の楽しみを奪うような政策は長続きしない。
 「寄席を生計(たつき)にしている数多(あまた)の芸人たちが職を失い、無頼の者と化すやもしれませぬ。風儀のためには、誠によろしからずと存じます」と与力の一人が遠山景元に問われて答えている。庶民の事情に通じている江戸町奉行の遠山と矢部は老中の政策に反対である。 
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#4279 混じりっけなしの苺のプリザーブ June 28, 2020 [86.1 食]

 先週の日曜日に、釧路市にある㈱夕緋の直売所で生食用の朝どれ苺とプリザーブの材料として大粒の冷凍苺1kg(1600円)を買ってきた。

 女房殿、昨晩、灰汁を救っては棄て、鍋で小一時間ほどに詰めて苺の手造りプリザーブ、400g壜に二つ。一晩寝かせて、先ほどチーズをのせたトーストにまじりっけなしの苺プリザーブをのっけて食べた。材料の苺がいいから味は抜群、市販のものと違ってお砂糖以外はなにも加えていない。
 こういうプチ贅沢は生活の満足度をアップします。相性がいい、わたしは小市民(プチブル)ですから。(笑)

デジタル大辞泉 - プリザーブの用語解説 - 《保存加工の意》果物の砂糖煮のこと。つぶしたものをジャムというのに対して、特に果実の形を残したものをいう。

SSCN3617.JPG


*釧路市北斗2-24「(株式会社)夕緋」
 釧路湿原展望台の手前、道路右側です。苺直売所は奥のほう、左側にあります。車で直売所の前まで行けます。


*
#4274 プチ贅沢ランチ:「粉の実」のパンと「夕緋」の苺 June 22, 2020
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2020-06-22


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#4278 Sapiens(34th):page 45 ☆ June 28, 2020 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

 原書講読授業の生徒は最近学校の補習(物理と化学)に参加しているので、塾へ来るのが6時を過ぎることがあり、Sapiens授業時間が少なくなっている。金曜日(6/26)に質問はなかったが、「第3章 失楽園のアダムとイブ」の第2段落にてこずっていた。章が新しくなると新しい語彙がキーワードとして繰り返し出てきて、その語彙を中心にハラリのユニークな視点や既存の学説が導入され、前章と論理的なつながりをもって展開されるので、冒頭の数段落はしんどくなる。今回のキーワードは進化心理学である。

 今日は材料としてまな板に載せる生徒の質問はない、ただ、Sapiensの面白さが伝えられたらと思ってタイピングしている。
  前に投稿があったが、根室と同程度に僻地である道内のどこかの町で勉強している高校生が弊ブログのSapiensシリーズを読んでくれているようだから、そういう人たちへ向けて書いてみようと思う。

<45.1> The flourishing field of evolutionary psychology argues that many of our present-day social and psychological characteristics were shaped during this long pre-agriculture era. Even today, scholars in this field claim, our brains and minds are adapted to a life of hunting and gathering. Our eating habits, our conflicts and our sexuality are and the result of the way our hunter-gatherer minds interact with our current post-industrial environment, with it mega-cities, aeroplains, telephones and computers. This environment gives us more material resouces and longer lives than those enjoyed by any previous generation, but it often makes us feel alienated, depressed and pressured. To understand why, evolutionary psychologists argue, we need to delve into the hunter-gatherer world that shaped us, the world that we subconsciously still inhabit.


 センテンスは5つ、中身が濃くて面白そうだから一つずつ取り上げてみる。

(1) The flourishing field of evolutionary psychology argues that many of our present-day social and psychological characteristics were shaped during this long pre-agriculture era.

 23 words. 文型は第Ⅲ文型だから簡単だが、日本語にしにくい部分がある。「The flourishing field of evolutionary psychology」が主語だがofが悩ましい。
 flourishing:growing or developing successfully

 少し脱線して「evolutionary psychology(進化心理学)」について触れておきたい。
*wiki 進化心理学より
https://ja.wikipedia.org/wiki/進化心理学
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進化心理学(しんかしんりがく、英語:evolutionary psychology)とはヒトの心理メカニズムの多くは進化生物学の意味で生物学的適応であると仮定しヒトの心理を研究するアプローチのこと。適応主義心理学等と呼ばれる事もある。

人間行動進化学会は、進化心理学を「社会学と生物学の視点から、現代的な進化理論を用いて、感情、認知、性的適応の進化などを含めた人間の本性を解明する学際的な学問」と位置づけている[1]。研究対象には感情、認知などの他、宗教道徳芸術、病理なども含まれる[2]

進化の視点はほとんどの認知科学者に受け入れられており、進化心理学者とそれ以外の認知科学者の境界は曖昧である。したがって本項ではふつう進化心理学者とは見なされない人物の見解についても言及する。言語の起源芸術宗教の起源の探求は進化心理学に含められることがあるが、それは(コスミデスらが定義したような)狭義の進化心理学よりも進化人類学に近い。
...

進化心理学者は仮説構築のためのメタ理論として一般的に次のような前提を置く[5]

  1. 体の器官はそれぞれ異なる機能を持っている。心臓はポンプであり、胃は食物を消化する。脳は体の内外から情報を得て、行動を引き起こし、生理を管理する。したがって脳は情報処理装置のように働く。脳も他の器官と同様、自然選択によって形作られた。進化心理学者は心の計算理論を強く支持する。
  2. ヒトの心と行動を理解するためにはそれを生成する情報処理装置を理解しなければならない
  3. 我々の脳のプログラムは主に狩猟採集時代の経験と選択圧によって形成された
  4. そのプログラムが引き起こす行動が現在でも適応的だという保証はない。
  5. 恐らくもっとも重大な点は、脳は様々な問題に対処するために多くの異なるプログラムを持つ。異なる問題は通常、異なる進化的解法を必要とする。このプログラムの一つ一つが臓器と見なすことができる。
  6. 心のプログラムは我々の経験を再構成し、判断を生成し、特定の動機や概念を生み出す。また情熱を与え、他者の振る舞いや意図の理解に繋がる文化普遍的な特徴を与える。そして他の考えを合理的である、興味深い、忘れがたいと感じさせる。プログラムはこうして人間が文化を創る基盤の役割を果たす。

進化心理学は次に、心のプログラムを発見し、理解するために適応主義アプローチと呼ばれる手法を用いる。適応主義者は種普遍的に見られる特徴が生物学的適応、すなわちそれを持つ個体の生存と繁殖成功に寄与したために広く見られるのだと仮定し、仮説を構築する。その仮説は実際の検証を経て受け入れられるか棄却される。 

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  本を読むのに周辺知識は不可欠である、ハラリは進化心理学について知識があって、それをベースとして自説を展開している。ハラリがこの章で問題にしているのは箇条書部分、太字にした3と4と5と6である。これらを脳裏に置いて読んでもらいたい。

 本文に戻ろう。主語のThe flourishing field of evolutionary psychology」を「進化心理学の成功した分野」と訳出したのでは日本語として意味をなさぬ。
 スーパーアンカーでofを引くと図を用いて解説している。最近は前置詞のもつ空間的な関係イメージをイラストで説明してくれる辞書が増えている。この辞書もとってもわかりやすい。認知論的なアプローチである。高校生にはジーニアスよりもスーパーアンカーなどのようにイラストで単語のコアイメージの解説のある辞書が便利だろう。

SSCN3611.JPG

 ofの基本イメージは円全体の一部分(赤の部分)なのです。円全体が進化心理学だとすると、その中の巧くいっている部分が赤で示された分野ということ。「進化心理学で広く学者たちに認められている部分、いくつもの論争を経て、ここは確からしいと思われている部分」を指しているのでしょう。こんな長い訳ではいけませんね。(笑)
 「進化心理学で理にかなっていると思われる学説(field)によれば、現在のわたしたちの社会的心理学的な性質はこのような長い農耕前、つまりは狩猟採集時代を通じて形成されたものである。」

 an (or the) A of Bは「AのようなB」という用法、つまりAを形容詞的に訳す場合もある。
 an angel of a woman (天使のような女性)
 an brute of aman(ケダモノのような男) 

(2)  Even today, scholars in this field claim, our brains and minds are adapted to a life of hunting and gathering.


  20 words.標準的な長さの文である。挿入句を[ ]で括り、並び変えてみよう。

(2)' [scholars in this field claim,] our brains and minds are adapted to a life of hunting and gathering even today. 

「この学説を支持する学者によれば、現在ですら、わたしたちの脳や心は数万年続いた狩猟採集時代の生活に順応したままなのである。」 

(3)  Our eating habits, our conflicts and our sexuality interact with our current post-industrial environment, with it mega-cities, aeroplains, telephones and computers.
「わしたちの食習慣や諍い(いさかい)やセックスにかかわる問題は、現在の脱工業化社会、巨大都市、飛行機、通信手段、コンピュータとの軋轢から生じinteractている。」

 32words。心は狩猟採集の暮らしをしていた農耕以前の数万年のままなのに、わたしたちは産業革命による工業化社会を通り過ぎて、すでに脱工業化社会へ突入し、草原や森での生活を離れて、巨大都市に住み、スマホをもち、飛行機で移動し、パソコンを使って暮らしている。心や精神というソフトウェアのOSは数万年前のままなのに、アプリケーションは日進月歩、追いついていないという話である。


(4) This environment gives us more material resouces and longer lives than those enjoyed by any previous generation, but it often makes us feel alienated, depressed and pressured.

  28 words. 無生物主語の文です。
 those=material resouces、it=this environment
「このような環境が/わたしたちにたくさんの資源と長寿を提供している/他のどの世代も享受したことのないほどたくさんの物質資源を/しかし、このような環境はしばしば私たちに疎外や鬱や圧迫を感じさせる」
 こんな訳で十分です。

「このような環境のお陰で、わたしたちは現在のサピエンス以外のどの世代も享受したことのないほど豊かな物質的資源を享受してはいますが、他方で疎外や気力の喪失や圧迫も感じているのです。」


(5) To understand why, evolutionary psychologists argue, we need to delve into the hunter-gatherer world that shaped us, the world that we subconsciously still inhabit.

 delve: to search, especially as if by digging, in order to find a thing or information
She delved into her pocket to find some change.
 inhabit: to live in a place
These remote islands are inhabited only by birds.



(5)' ① we need to delve into the hunter-gatherer world that shaped us [to understand why].
      ② the world that we subconsciously still inhabit.

「わたしたちは調べる必要がある/わたしたちを形作った狩猟採集の世界を/なぜかを理解するために」
「わたしたちの潜在意識がいまだに住んでいる狩猟採集時代の世界を」

 24 wordsの文ですね。滑らかな訳文にしてみます。
「なぜこのようなことが起きているのかを知るためには、あの数万年にわたる農耕以前の狩猟生活、すなわち潜在意識がいまだに住んでいるかの狩猟採集の時代へとさかのぼり実際にどうであったのか調べる必要がある。」

 現代社会の諸制度、中でも一夫一婦制には無理がある。男たちが何人もの女たちと不倫し、女たちが浮気をしたくなるのは無理がないのだ。Sapiensの歴史のほとんどの期間にわたって、つまり狩猟採集の時代は集団の中でセックスはオープンだった。優良な子孫を残すため、そして多くの男たちの保護を得るために、メスは有力な雄を選んで片っ端からセックスしていたのである。セックスをしたオスたちは自分の子どもかもしれないので、自分が番(つが)ったメスが子どもを産むと子育てに協力する。協力してくれるオスが多いほど子孫を残すためには有利。
 脳は数万年前のままで、社会制度のほうは狩猟採集生活をしていた時代にはなかったさまざまな規制を加えている。そこに軋轢が生じてinteractいるというのが、進化心理学の有力な学説。
 面白いでしょう?ハラリのSapiensの続きを読みたくなりませんか?

 今年の大学受験にはハラリの著作から4校で問題が出題されたというが、来年はもっと増えるかもしれません。期待していいでしょう。

<余談:幸福感>
 読んでくれる人が遠隔にもいるのはうれしいものだ。そちら側から見るとわたしはリモートワークをしているわけだ。コロナ騒ぎが始まる半年前からやっていたことになる。ZOOMもいいけどこういう方法もある。「英作文千本ノック」もリモートワークと現実の授業の組み合わせでできている。やって来れば、生徒が書いた英文一つ一つを丁寧に検討して、個別指導授業で英文の書き方のコツを教えられる。解説もメール配信しているから、そちらを読んでくれてもいい。
 目の前の生徒に教えつつ、同時に遠隔地で学ぶ高校生や大学生や社会人ともつながっていく。とっても幸せなことだね。幸せはそれぞれの人の足元にちゃんとある。わたしはやりたかったことの一つをいままさにやりたいようにやっている。(笑)



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#4277 根室市議会定数削減是非の市民意見募集 June 27, 2020 [89.根室の過去・現在・未来]

<更新情報>6/28朝9時 市役所職員不正採用について追記

 6/18の北海道新聞に「議員定数の市民意見 削減是非、人数 特別委が9月結論」という記事が載っていた。どうしようかなと、数日間迷っていたが、急に思い立って午前中に1時間ほどかけて意見書を作成し、昨年9月の学力テスト総合Aの釧路・根室管内18校データを添付して、根室市議会事務局へ送信した。


 市議会定数は18人、現状維持派の主張は「議会のチェック機能、市民の多様なニーズを行政に反映させる機能を維持するため」ということにあるらしいが、はたして過去15年間市議会による市政チェック機能は何度果たされたのか、また町の将来にかかわる具体的な政策提案が何回なされたのか、わたしが知りえたチェック機能は明治公園の再開発計画をストップした1例のみ。それもさらに規模を大きくしたような市民総合体育館建て替えを含む案がいま検討されているようだ。人口が激減(毎年600人のペース、人口比で見たら釧路市の2倍の速度)しているのに、利用者が増えるわけもない。メンテナンス費用が増えて将来困るだろう。


 市立根室病院の赤字額は17億円前後だが、2019年度は3千万円の赤字と市の広報に載っていた。公的会計基準での公表はやめて、企業会計基準でその経営実態を報告してもらいたい。事実を見ないでどうする。市議会で企業会計基準で市の広報に掲載しろと決議すればいいだけ。


 市議会が市政チェック機能を果たしていたら、市民から削減要求なんて出るはずもない。果たしていないから、過去に2度も市民運動で削減要求の署名活動がなされて、定数削減要望書が出されている。
 定数を3人減らして、市政チェック機能をちゃんと果たしたら、市民の考えも変わるに違いない

 たとえば、人口減対策と称して移住促進に予算を投じているが、どこにいくら投じて何人移住したのかの報告すら聞いたことがない。プランがあったら、計画通りに行ったかどうか、チェックがあって当たり前です。根室市は釧路市に比べて、人口比で2倍の速度で人口が減っています。50年前には中標津町の約3倍の人口だったが、今やほとんど一緒だ。周辺地域に比べて人口減少が激しいのは水産業が衰えただけではない、他にも理由がある。根室の旧弊・悪弊が連綿として続いている。市役所職員の不正採用もそのなかの一つだろう。

 市庁舎の建て替えについて、小中学校統廃合をすれば耐震改修済みの旧校舎がいくつも空き家となるが、そこをリハウスすれば10-15億円で立派な庁舎ができるし、氷見市がそういう例を示してくれている。調査にすら行ってないではないか。建物を新築したら耐用年数は50年、半分経過したころの2045年には根室市の人口は1.5万人を切っている4.5万人のときに建てた現庁舎よりも大きい新庁舎がどうして必要なのか合理的な説明がない。ここでも市政チェック機能が果たされているとは思えぬ。小学校をリハウスして25年使い、それまでに建設積立金を積んで、人口に見合ったコンパクトな新庁舎を造ればいいではないか、なぜそういう議論が市議から出てこないのだろう?
 「〇〇市民委員会」方式で、重要課題を検討し、市側の計画をオーソライズしているがこれはやめてもらいたい。中標津町は作業部会をテーマごとに立ち上げて、町民自由参加で町の将来ビジョンを作成している。「委員会」方式は12人の委員のうち10人が市のほうから任命され、公募委員が2名というのがあたりまえになっている。閉鎖的な諮問委員会方式での議論はやめよう、ろくな結論になっていない。オープンな場で、市民自由参加で何度も議論を重ねよう。これも市政チェック機能と具体的な政策の提案機能に含まれるのではないですか?

 教育問題に関しては釧路根室管内18校の昨年9月実施の学力テスト総合Aでは根室市内の3中学校が最下位グループを形成している。そうした具体的な数値をもとに市議会文教厚生常任委員会は議論をし、具体的な提案をしたことがありますか?根室の中学生の学力の現状データを見てください。昨年9月の学力テスト総合Aでは釧路根室管内18校で最下位グループを根室市内の3中学校が形成しています。根室市議たちは高齢化が進んで、小中高生の子どもがいないので、教育に関心がわかないのではないですか?町に将来を左右するのは子どもたちの教育にあることに異論のある市議はいないでしょうね。でも、さっぱりです。

 釧路市議たちは学力問題で超党派の組織を立ち上げて「基礎学力保障条例」を制定し、子どもたちの学力向上目指して市議会で激しい議論をしている。学力問題に強い危機感を感じているから、元釧路市議会議長月田光明さん、金安潤子市議、公務員アワードを受賞したことのある大越市議などが継続して教育改革の旗を振っています。

 コネによる職員採用は一向に改まらぬようだ。こういうことは噂で広まる。学力の低い者が採用されれば周りには明々白々だ。一緒に市役所を受けた成績優秀な生徒が何人も落ちるのに成績がよろしくない者が事前の噂の通りに採用される。漏れ伝わってくるコネを使っての採用とは学力の低い者を職員として迎えるということ。こんなことをずっと続けているから、課題がたくさんあったも山が崩せないということになる。不正採用があるたびに採用されなかった学力に秀でた子どもたちはふる里に残ることをあきらめ、恨みに思う。そんなこころに変えてしまってはかわいそうだよ。その子には兄弟姉妹や友人や親や親せきがいる。関係者、つながりのある者たちがみんながそういう不正を知る。そういうことが何十年も積み重なっているんだ。それを根室の町の旧弊・悪弊とわたしは呼んでいる。
(こういう職員採用に関わる不正は「噂」だけではブログに書かない)
 
不正に関わっているのは幹部職員であるが、自浄作用はないから市議会がチェックするか、新たな職員採用方法を提案するしかない。
 こんな幹部職員が何人いるのだろう?市役所は大丈夫か?職員採用不正をやっている幹部職員たちが予算執行で不正をしていない保証があるのか?
 市立病院建て替えのときには一番札を入れたジョイントベンチャーに仕事は回らなかった。当時の市長や副市長(現市長)が幹部職員を集めて緊急会議を開き、競争入札を覆して2番札だった市役所御用達業者へ落札している。札幌市でそんなことが起きたら大事件だろう。地域に根差した北海道新聞根室支局が大きくとりあげなかったのか不思議だった、いまもってその理由がわからない。地元経済界と利害関係の強い根室新聞が取り上げられるはずもない。「オール根室」という閉鎖的な村社会が根室の癌。

 ところで、管内4町(別海町、中標津町、標津町、羅臼町)は共同で職員採用試験をしている、そこに根室市も参加したらいい。そうすれば根室市役所の幹部職員による職員採用不正はできなくなる。
 なぜ、職員採用に関わる不正が許せないかというと、身近にそういう不正が横行していることを知った同期の高校生たちが根室という町に愛想をつかすからだ。市民意識調査をやっても、故郷の町に住みたくないという住民の割合が中標津町にくらべてずっと多い。ほんとうに罪が重いと思う。市議の諸君も噂はなんども耳にしているだろう。そろそろ市政チェック機能や提案機能を果たしてもらえないだろうか?

 根室市議たちが市政チェック機能をしっかり果たし、データに基づいた具体的な提案をするようになれば根室市は住みやすい町に変わる。市民から市議定数削減要望がでなくなるくらいしっかり仕事してもらいたい

 10箇条ほど項目を並べて、午前中に市議会事務局あて送信しました。



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#4276 Sapiens (33rd) : page 45 ☆ June 24, 2020 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

<最終更新情報>6/22午前11時半

 第3章"A day in the Life of Adam and Eve"、このタイトルをそのまま直訳しても著者が何を言いたいのかピンとこないだろう。「アダムとイブが暮らしていた時代」、そんなの神話=旧約聖書の世界の話、サピエンスの歴史と何の関係があるのというのが高校生の素直な反応。生徒にこのタイトルはどう理解したのか訊いてみた。
 アダムとイブは蛇に唆(そそのか)されて「善悪の知識の実」を食べてしまい、エデンの園を追放される。the Lifeというように定冠詞がついているのは、エデンの園から追放されたアダムとイブの暮らしを指している。男は額に汗して働いて食べるものを求め、女は出産の苦しみを味わうことになった。サピエンスに置き換えるとそれは農耕以前の狩猟採集生活をしていた時代である。
 そういう時代がこの章のテーマ、ハラリは過去1万年から7万年前にさかのぼる狩猟採集で暮らしていた時代をエデンの園を追放されたアダムとイブになぞらえている。
 翻訳者の柴田氏は、アダムとイブを訳語に登場させていない、「狩猟採集民の豊かな暮らし」と訳している。的確な訳ではあるのだが、なにか物足りぬ、アナロジーを切り捨てたそっけない訳だからだ。名翻訳家である柳瀬尚紀さん(根室高校の6学年先輩)ならここはどう訳すだろうか?
「失楽園のアダムとイブ」では俗っぽく、渡辺淳一の不倫小説『失楽園』を連想させる。生徒は『失楽園』を知っていた。作者の渡辺淳一(1933-2014)が砂川町出身で札医大の整形外科医だと告げると、びっくりしていた。彼のお爺さんと同じころの卒業のはず。
 語彙力が貧弱なわたしには適当な訳語が思い浮かばなかった。
 ところで、『ゲーデル、エッシャー、バッハあるいは不思議の国の環』に柳瀬尚樹さんの訳者あとがきが(739頁に)ある。ここで柳瀬さんは言葉遊びを披露しているが、名人芸だ。なにがどのように名人芸であるのか興味のある人は図書館で閲覧したらいい。この本はニムオロ塾の本棚にもあるので、見たかったらどうぞ。好奇心に任せて購入した面白い本が5%くらい200冊ほどあります。
*https://ja.wikipedia.org/wiki/柳瀬尚紀

 話題をタイトルから本文へ移そう。生徒はアンダーライン部分の文章があんまり長いので迷ったようです。[during which]の組み合わせが初体験だったのでしばしびっくりしただけでしょう。

<45.0> To understand our nature, history and psychology, we must get inside the heads of our hunter-gatherer ancestors. For nealy the entire history of our species, Sapiens lived as foragers. The past 200 years, during which ever increasing numbers of Sapiens have obtained their daily bread as urban labourers and office workers, and the preceeding 10,000 years, during which most Sapiens lived as farmers and herders, are the blink of an eye compared to the tens of thousands of years during which our ancestors hunted and gathered.

 57 wordsの文です、長いですね。でも長さでめげないでね、繰り返しで簡単なんですから。during whichが目立つように処理します。

The past 200 years, during which ever increasing numbers of Sapiens have obtained their daily bread as urban labourers and office workers, and the preceeding 10,000 years, during which most Sapiens lived as farmers and herders, are the blink of an eye compared to the tens of thousands of years during which our ancestors hunted and gathered.

 太字の部分は「前置詞+関係代名詞」である。3か所それぞれ先行詞の補足説明となっているだけ。挿入された節をカットしてみよう。レントゲン写真で見るようなものです、筋肉組織やコラーゲンなどが消え去り、この長い文章の骨格が現れます。

The past 200 years are the blink of an eye compared to the tens of thousands of years.
(過去200年は数万年に比べると一瞬のまばたきである。)

 修飾部分や補足説明を外してしまうと、第Ⅱ文型SVCの簡単な文章になってしまいます。大学受験をしようと思っている高校3年生でこの文章の意味が分からない人はいないでしょう。

 何がどうして一瞬の瞬きに見えるのか、過去200年間を補足説明している関係節を独立の文に書き換えてみます。
(1) ever increasing numbers of Sapiens have obtained their daily bread as urban labourers and office workers [during past 200 years]
(過去200年間たえず人口が増加していたサピエンスの多くが都市労働者とオフィスワーカーとして、その糧を毎日得ている。)

 都市労働者に対してオフィスワーカーが対置されています。本社管理部門で働く人、工場部門でも事務部門や管理部門で働く人はいわゆる「労働者」ではないわけです。肉体労働をする人のことを「労働者」と言います。日本では学校の先生も自分を労働者だと思っている人がいますが間違いですね。日教組や北教組に所属している先生たち、マルクスがいう労働者とは工場労働者のことなんです、あなたたちは労働者ではありませんよ、インテリなんです。ロシア革命を起こしたレーニンも労働者ではありませんでした、マルクスもそうでしたが、レーニンも大学に職を得そこなったインテリです。共産党宣言で「万国の労働者よ団結せよ(Workers of all lands, unite)」と労働者を煽ったのがマルクスとエンゲルス『共産党宣言』で、実際に革命を起こし、親玉にのし上がったのがレーニンでした。
 workers(働く人々あるいは仕事する人たち)という概念は、labourersとoffice workersを包摂した概念です。マルクスは工場労働を『資本論』の公理に措定しています。その淵源は奴隷労働にあります、だから労働疎外なんて言葉が生まれます。江戸職人は道具も自前、そして請負仕事でした。職人仕事の伝統は工場ではたえざる工程改善として生き残っています。そして本社管理部門の仕事でもマルチの専門技能をもって困難な仕事にチャレンジする人たちの中にその精神が受け継がれています。コロナ後は、職人仕事を公理に措定した経済学の時代が来てほしいと思っています。

 200年間に先行する1万年はどうだったのかも比較対象として並べられている。
(2) most Sapiens lived as farmers and herders [during the preceeding 10,000 years]. 
(過去200年間に)先行する1万年はサピエンスのほとんどが農耕や牧畜で暮らしていた)

 では1万年から数万年前のサピエンスの暮らしがどうだったのか。これで三つの時代が併記されて比較される。
(3) our ancestors hunted and gathered [during the tens of thousands of years].
(過去数万年にわたってサピエンスの祖先は狩りをし、木の実や果実を食べて暮らしていた。)


 産業革命以後の200年間は、先行する1万年に比べても、さらにそれに先行する数万年に比べても、一瞬の瞬きほどの長さしかないのである。
 サピエンスは7万年前から、集団で狩りをすることで、効率的に動物の群れを谷などへ追い込み、大量屠殺して肉の確保にも困らなくなっていた。

 ofやwithと関係代名詞の組み合わせは見たことがあっても、[during which]にお目にかかったことのある高校生はほとんどいないのではないか。迷ったら「原理原則に還れ!」である。

 『表現のための実践ロイヤル英文法』264頁にduring whichの例文が載っていたので紹介する。
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①文尾に置くと不自然になる前置詞
 beside, beyond, during, excwpt, near, opposite, outside, round, since, up

 After three years at Cambridge, during which I specialized in European history, I wrote a thesis.
 (ケンブリッジで3年間ヨーロッパ史を専攻していましたが、その後、わたしは論文を書きました。)
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 修飾句や補足説明を外して文の骨格だけにして眺め、次いで丁寧にそれぞれの関係節をシンプルセンテンスに書き換えてみたらいい

「第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし
 わたしたちの性質や歴史、心理を理解するためには、狩猟採集民だった祖先の頭の中に入りこむ必要がある。サピエンスは、種のほぼ全歴史を通じて狩猟採集民だった。過去200年間は、しだいに多くのサピエンスが都市労働者やオフィスワーカーとして日々の糧を手に入れるようになったし、それ以前の1万年は、ほとんどのサピエンスが農耕を行った動物を飼育したりして暮らしていた。だが、こうした年月は、わたしたちの祖先が狩猟と最終をして過ごした膨大な時間に比べれば、ほんの一瞬にすぎない。」
   
『サピエンス全史(上)』59頁 柴田裕之訳

  びっくりするほど分量の少ない高校教科書、これでは論説文が読めるようになるわけがない。
*#3344 高2の英語教科書をチェックする  June 25, 2016
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2016-06-24-1




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ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

  • 出版社/メーカー: 白揚社
  • 発売日: 2005/10/01
  • メディア: 単行本

①ゲーデル『不完全性定理』岩波文庫
昨年読みました。面白いけど、数学の専門書しかも不完全性定理の証明ですから、準備なしにはまるで理解できませんね、だから数理論理学の入門書を読んでからチャレンジしました。付箋がいっぱいです。(笑)

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②バッハとエッシャー
 バッハは斬新な感じがするので好きです。エッシャーは面白い絵を描きますね。いわゆるだまし絵ですが、美しいことと細部にこだわって丁寧に描いているところがいい。この大判のエッシャーの本は東京の大きな本屋のどれかで購入したのではないかと思いますが、日本橋のデパートの古書展会場だったかもしれません。
  ISBN 0-8019-2268-1
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③エッシャー:タイトル MOBUS SRTIP Ⅱ (RED ANTS)
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④エッシャー:タイトル DRAWING HANDS
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⑤エッシャー:タイトル WATER FALL
この絵はみなさんお馴染みの物。
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#4275 「青チャート数Ⅲ制覇」:5か月と7日間 June 24, 2020 [51. 数学のセンス]

 他の人の参考になるだろう。医学部受験の生徒は1月14日から「青チャート数Ⅲ」の問題を解き始めた。例題を読み、片っ端から問題を解いていくスタイルである。数学の偏差値が70でも消化不良を起こすのでお勧めできない勉強法だ。能力に応じた勉強法をとるのがいい、この生徒にはこのスタイルがふさわしかっただけ。6/21に総合問題を残して、全問解き終わった。総合問題は受験直前の「ご馳走」である、いまやる必要はないというのは本人の判断。

 この生徒は小学5年生の1月から弊塾へ通い始めた。(45年前の)首都圏なら小学4年生からが標準的なスタート、1年と9か月遅れてスタートしたことになる。理系に秀でる生徒はしばしば国語力に弱点がある。この生徒も文学作品に感動するところが概してすくないから、放っておいたら文学作品をほとんど読まぬ。仕方がないので国語力の底上げのために良書を選んで5年間にわたって日本語音読トレーニングをやった。語彙力強化のために音読テクストとして選んだ17冊の本のリストを末尾に貼り付けておく。

 最初から1年9か月の遅れを意識して、それをカバーするために、シリウス・シリーズを使って、予習方式で数学の勉強を6年と5か月間やり続けてきた。コンパクトな解説だけでやり方を理解し、すぐに問題を解くことに慣れてしまった。他の生徒にはこんな無茶なやり方をさせない。
(根室では医学部進学希望の生徒を5年生の四月から一人だけ教えたことがあるが、中学1年の終わりには3年生用のシリウスを半分消化していた。英語は中学生になってから教えたが、堰を切ったように1年生用の問題集は3か月で終わった。1年次の終わりまでに3年間分消化してしまった。並行して音読用のCDのついた教材を選んでやらせた。3月に突然親の転勤が決まって転校したので、その後どうなったか知らない。OR君は昨年大学受験だったはず。シリウスのコンパクトな解説を独力で読ませて予習方式で全問やらせたのは過去二人だけ。)

 シリウスに比べると「青チャート数Ⅲ」は断然例題が多く、演習問題数が少ない(1割程度?)から、この程度の問題集なら今まで通り、例題を読んで理解し、次いで演習問題をやり通せると判断した。
 月曜日(6/22)から「大学への数学1対1対応」シリーズ6冊にチャレンジし始めている。これは自分で情報収集して選んだ問題集である。ときどきエレガントな解法が提示されているので、そういう問題をピックアップしてランダムにやるつもりのようだ。問題の難易度も解法も「青チャート数Ⅲ」をやったあとにふさわしいレベルである。

 最後は先生のサポートなしに、単独で勉強できるような学習スタイルを身につけること、それが理想と思っている。問題集の選択も、仕上げに関しては自分で選んだ、それでいい。

 数Ⅲのスタートと同時、英作文も1/14日からメール配信方式で「英作文千本ノック」を始めた。季節が廻(めぐ)り、なんとなく気が向いてしまった。(笑)

 必要な時期が来れば、自然に必要なことが始まってしまうのは、季節廻りのようなもの。生徒がハラリのSapiensを坦々と精読して読みの力を蓄えているうちに、教えている私の方では書きのトレーニングをはじめたいという欲求が蕾となってジッと開花を待っていた。「英作文千本ノック」は偶然に数Ⅲと同時のスタートとなった。「青チャート数Ⅲ」のスタートは生徒が自分で決めた。河合塾の冬季特訓から戻って塾へ来た日から始めたのである。その日にわたしは用意していた英作文問題をメールでかれに送った。数学と英語、生徒と先生、二重の意味で「啐啄同時であった。

 週に4日間、1回に5-10題問題を消化している。NHK英会話教材を利用した問題と解説になっている。認知言語学で用いられているイメージ・スキマーを利用した大西泰斗先生の解説はなかなか楽しいし、言語理論としても最新のものだ。英作文トレーニングを通してこういう最新の理論に触れるということが大切なのである。構造言語学の大御所であるチョムスキーの生成変形文法理論をつかって解説をしている。ハラリ「Sapiens」を11か月間読んでいるから、「読み」と「書き」の両輪が揃って相乗効果が出ている
 昨日、第78回目をやった。問題数は550題くらいになっているだろう。最近は8割くらいの正解率までアップしている。夜の10時ころにメールで問題文を配信すると、翌日それをやって塾へ来る。問題演習を始める前に英作文の答えをチェックし、解説を行う。時間は10-15分間ですむ、これが週に4回だから、普通に授業でやったら2時間を超えるだろう。じつに効率的なのだ。
 NHK英会話テキストがベースだから、慣用句がふんだんに出てくるし、それに加えてイメージ・スキマーと生成変形分法がベースになった解説だから、目から鱗が落ちるようなことがちょくちょく起きる。「千本ノック」をしてから、模試のリスニングの得点が8-9割にアップしたと副次効果に喜んでいる。
 Sapiensの朗読音源でリスニングトレーニングを3か月間ほどやれば、リスニング力は飛躍的に伸びる。共通試験レベルでは不要だが、やれるときにやっておいた方がいい。将来どこで、どんな風に役に立つかわからないが、それが人生の岐路で強力な武器になるときがいつかきっとやってくる。

 東京で勉学し、そしていくつか業種を変えて本社経営管理部門で仕事する企業人として人生の半分近くを過ごしたから、複数分野の高度なスキルをもつメリットがよくわかる。

(この生徒は高校生になってから英検を初めて受験している。いきなり準2級を受験して高得点でクリア、次の英検で2級を受験しこれもハイスコアでクリアした。あれからかなり力がアップしてるので準一級の問題集を2周したら、合格できるレベルだろう。大学共通試験の英語が民間の試験に置き換わるというので必要な英検2級を受験しただけ。本人は「もう英検は必要ない」と言っている。)

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<6. 日本語音読トレーニング:国語力が学力の基礎>
 最後に、日本語音読トレーニングで5年間に読破した本のリストを挙げておく。件(くだん)の生徒は高1で日本語音読トレーニングは終了している。17冊、レベルを上げながら、たっぷりやった。
 生徒と交代で輪読するし、速度を変えて読むので、スキルス胃癌を患い胃と胆嚢を全摘出したわたしには、体力への負荷が大きい。だから、この2年間は本気でやろうという生徒にだけ対応している。休みの水曜日に日本語音読トレーニングを充てていた。昨年は1時間でへとへと。寄る年波には勝てません、年々体力が落ちてます。でも、まだがんばれます。(笑)


〈日本語音読リスト〉…
*#3726 
日本語音読トレーニングのススメ:低下する学力に抗して Apr. 18,2018
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-04-18-1

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<7. 国語力アップのための音読トレーニング >
 中2のトップクラスのある生徒の国語力を上げるために、いままで音読指導をしてきた。読んだ本のリストを書き出してみると、
○『声に出して読みたい日本語』
○『声に出して読みたい日本語②』
○『声に出して読みたい日本語③』
○『坊ちゃん』夏目漱石

○『羅生門』芥川龍之介
○『走れメロス』太宰治
○『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
 『五重塔』幸田露伴
 『山月記』中島敦
●『読書力』斉藤隆
●『国家の品格』藤原正彦
●『すらすら読める風姿花伝・原文対訳』世阿弥著・林望現代語訳
●『日本人は何を考えてきたのか』斉藤隆

『語彙力こそが教養である』斉藤隆
●『日本人の誇り』藤原正彦(数学者)

◎『福翁自伝』福沢諭吉
◎『近代日本150年 科学技術総力戦体制の破綻』山本義隆(物理学者)

(○印は、ふつうの学力の小学生と中学生の一部の音読トレーニング教材として使用していた。●印の本はふつうの学力の中学生の音読トレーニング教材として授業で使用した実績がある。◎は大学生でも語彙力上級者レベルにふさわしいテクストである。平均的な語彙力の大学生には手が届かぬ。
 音読トレーニング授業はボランティアで実施、ずっと強制だったが、2年前から希望者のみに限定している。本気でやる気にならないと効果が小さいので、お互いに時間の無駄。)

・・・
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#4274 プチ贅沢ランチ:「粉の実」のパンと「夕緋」の苺 June 22, 2020 [A8. つれづれなるままに…]

 土曜日に釧路まで用事があって行ってきた。行きがけに浜中町の手作りパン屋さん「粉の実」へよって、(予約しておいた)カンパニュー、ずっしり重いブドウパン、チーズパン、オレンジピールパンなどを買った。
 土曜日の用事がすんで、飲み会、そして日曜日の朝、駅前のホテルの最上階でバイキング形式の朝食をいただき、昨年産声を上げた釧路の苺生産企業「夕緋」の直売所で、新鮮なとれたて苺と冷凍苺を買ってきた。

 チーズパンとブドウパン、そして苺、カフェオレのプチ贅沢昼食
 胃癌で胃と胆嚢を全摘出、胃がないので、少量で十分なのだ。

①粉の実のパンはずっしりと重い。天然酵母のパンで、ドイツパンのような重さと食感である。
SSCN3592.JPG

②比較的小粒の苺
六花亭で苺の載ったケーキ(ショートケーキではない)を買ってきたが、トッピングされていたものとほぼ同じ大きさと味だった。天然酵母パンと苺のマリアージ、愉しいランチだった。
SSCN3593.JPG

 冷凍苺(1kg 1600円)も買ってきた。こちらは粒がだいぶん大きい、苺のプリザーブの材料にするつもりだ。
 女房殿は毎年、本州産のアプリコット(杏子)、道内余市産のプルーン、本州産のブルーベリー、青森産のリンゴ(12月から3月まで)でプリザーブをつくっている。パンに載せる、毎日作っている自家製ヨーグルトにトッピングするなどして愉しむ。混ざりもののないプリザーブだから、とってもおいしい。ラインナップに釧路産苺が加わった。
 ちょっとした贅沢が生活の一部を飾ることで大きな満足が生まれる。

デジタル大辞泉 - プリザーブの用語解説 - 《保存加工の意》果物の砂糖煮のこと。つぶしたものをジャムというのに対して、特に果実の形を残したものをいう。

*浜中町「粉の実」
https://tabelog.com/hokkaido/A0112/A011203/1038934/

**釧路市北斗2-24「(株式会社)夕緋」
 釧路湿原展望台の手前、道路右側です。苺直売所は奥のほう、左側にあります。車で直売所の前まで行けます。



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#4273 見え方の違いが学力に与える影響:GIGAスクールをめぐって June 22, 2020 [64. 教育問題]

 ①「1/2-1/3=1/6」は計算できても、②「1/(√3 -1)+1/(√2 +1)」ができない高1あるいは高2の生徒がいる。計算の操作として二つの式を見たときに、同一なのだが、まったく別のものに見えているようだ。通分して分子の計算をするという点ではこれら二つの問題は共通の操作にすぎない。
 中学生でも似たようなことは起きている。数字の式は計算できても、それが文字式に置き換わったとたんに混乱する生徒がいる。高校2年生になって、最初に挙げたタイプの計算にまごつく生徒は、中学校の文字式の計算でも躓(つまづ)いたのではないだろうか。
 数学のできない生徒はちょっとパターンが変わっただけの、同一操作の問題が別の問題に見えてしまい、とりつく島がないということになりがち。根室高校生の4人に1人くらいはこのタイプの生徒がいそうだ。1学年115人とするとおおよそ30人弱である。
 この下位1/3の低学力層は宿題として配られたプリントすら独力ではできないから、学校の先生たちの支援を必要としているのだが、後に述べるようにとっても手間と時間がかかるので放置されているのが実態だ。そういう子どもたちも部活には熱心な者が多い。学力よりも部活を優先しているという本末転倒に麻痺しているのが学校経営の実態である

 ①を通分して、分子分母に同じ数を掛けて見せる、その右側に②の式を通分して並べて見せると、同じ操作であることが理解できる。そこで初めて、小学生のときに習った通分と同じ操作にすぎないことが了解できる。
 こういう学力レベルの生徒は、学校から宿題プリントを渡されても独力ではほとんどの問題をやれない。基礎学力に問題があるからだが、塾で教えて、その時に理解できても、1週間後に来たときには、また元に戻っていることがある。なんてことはない、高校生になっても家庭学習習慣がないからだ。きれいに忘れて、また翌週同じ質問をすることになり、こちらは説明を繰り返す。本人は悪気はまったくなし、ケロッとしている。
 そうした事実から言いうることは、根室市では小学校低学年での家庭学習習慣の躾ができなかった親が3割程度いそうなこと。やり方を知らないのかもしれないから、子育て講座のようなものが必要だ

 家庭学習習慣のない生徒が、中学校から塾に来てもなかなか家庭学習習慣が身につかない。スマホやゲームにはまっている場合は、親と話をして、家に帰ってから1時間勉強するまでは、スマホをとりあげることに決めても、2週間続けばいい方だ。それまで6年間あるいは9年間の生活習慣を変えることはとっても困難なのだ。そんなに続けているから、習慣になっているだけではなく、性格の一部にまでなっている。ゲームやスマホの奴隷になってしまっていて、抜け出せない生徒がすくなくない。あるとき、「そんなに毎日ゲームして親は何も言わないの?」とある生徒に訊いたことがある。「お父さんは朝の5時ころまでやってるよ、僕よりずっとやってる」、あれには参った。
 中学生になればもう自我意識が芽生えているから、手遅れ、きつく言うと反抗がひどくなるだけ。言わずにいられない親の気持ちもよくわかる。あとで困るのは子どもの方なのだから。自分が子育てをしたときに、いくばくかの後悔と苦い思いを伴なって親心がわかるのだ。

 生徒の性格や基礎学力、そして家庭学習状況が見えてきたらしばらく毎日塾へ来るように言うことがある。学校から塾へまっすぐに来て7時あるいは8時まで勉強すれば、成績はもちろん上がるが、生徒も教える方もたいへんだ。ちょっと形が変わっただけで問題が別物に見えてしまうので、予習方式でやらせるが、教科書のほとんどの問題を解説する羽目になる。予習してあるから学校の授業はよくわかるようになるし、成績はアップできるがあまりよろしくない。依存心を生むからだ。数か月間やったら、通常の授業回数に戻すようにしている。


 学校だって同じことだ。もし、学力下位1/3の生徒たちの数学の点数を上位1/3へアップしようとしたら、同じ手間を掛けなければならない。部活をやっている生徒なら週2回に制限しなければできない相談だし、3割もそんな生徒がいたら、先生は時間がいくらあっても足りない。学力下位層への対応は、大きな手間と時間を要することなのだだから、成績下位層の生徒たちは放置されている
 根室西高校が廃校になり、根室高校1校体制になってから、事実上全入となったから、根室高校普通科の生徒の1/3は数学の基礎的学力を欠いている。その結果、数Ⅱが選択科目になってしまった。数Bですら必修科目だった時代があるのに、数Ⅱが必修科目の座を失った。代わりに「基礎数学」が選択科目として用意されている。これは中学数学の復習と数ⅠAのやさしい問題だけを学ぶ科目である。いまでは数Ⅱを学んでいなくても根室高校普通科を卒業できる

 小学1年生のお子さんのいるお母さんやお父さんたち、家庭学習習慣を小学校低学年のうちに躾けよう。無理やりやらせるのではなくて、一緒に本を読むとか、漢字遊びを一緒にするとか、算数の問題を10題ほど出してできたらハナマルをつけて褒める、なんてことぐらいはできるはず。小学校低学年で家庭学習習慣の躾ができたら、中学生になったら成績上位/1/3に入っているよ
 家庭学習習慣のしつけ方は弊ブログ#3195で具体的に取り上げていますので、是非お読みください。
*#3195 家庭学習習慣の躾は小学1・2年生のうちにやるべし Dec. 4, 2015
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2015-12-04

 
 大事なことはたった一つ、小学1年生のこどものいるお母さんたちへ、家庭学習の躾の仕方を具体的に説明してあげることだろう。毎年繰り返したら、子どもたちの学力は大きくアップできる

 根室高校で数Ⅱと数Bがいつの日か必修科目に戻ることを夢見ている。

<余談:GIGAスクール> 
●文科省は「GIGAスクール」という構想を進めている。今年の11月ころに生徒全員にタブレット端末を配布する計画をしている市町村が多いと聞く。情報システムの専門家がいてサーバーの管理をし、教育委員会がその地域の子どもたちの学力分布を普段の学力テストの結果データでモニターしてなければ、具体的な対策は不可能だろう。
●学校サーバーに生徒たちの学力評価データを保存したら、ダダ洩れになる。業務用サーバの管理は公立学校の先生たちには無理、専門的なスキルがないとアウト。
●タブレット端末を配布しても根室の子どもたちの成績下位層(1/3)にはまったく効果がないだろう。理由は簡単だ、タブレットをもたせても家庭学習習慣がなければ、学習目的に家で使うようなことはないから。
●だが上位1/3の層にはスタディ・アプリやユーチューブの無料講義が効果があるだろう。これなら学校の先生たちにあらたな負荷は生じない。しかし、成績上位層の生徒たちが学校の授業をいままで通り聴いてくれるだろうか?ハイペースで予習している生徒は、授業を聴く必要がなくなるので、授業を聴かない生徒が確実に増えます。予習している生徒たちから質問が頻繁に出ますよ、実質的に個別指導になるから捌けるかな?いままでのように、授業でやる範囲を決めて、そこだけ教えたらいいなんて平和な状況はすっとんでしまいます。まったく、別なスキルが要求されることになりませんか?
●QRコードで英語テキストの音声を聴ければ、音読トレーニングが可能になるから、やる気さえあれば、これはどの学力層にも有効だ。英語教育への効果は大きそうだ。(2021年から中学校の英語の教科書に、音読モニター用のQRコードがページごとについた。高校の教科書も1年生用は2022年度から音声モニター用にQRコードがつけられた教科書が採用されている。2022年6/3追記)
●ZOOMのようなツールで双方向での授業をネットでやっても、授業のヘタな先生がそれでうまくなるわけではない。道具使い方の技倆には大きな差があるのがあたりまえ。新たなツールが普及することで「使えない先生」が増える。これはどうしようもない。ZOOMは親が横で見ているかもしれません、授業内容が理解できる保護者もすくなくないでしょうから、クレーム増えるでしょうね。もちろん、絶賛される先生も出てきますから、先生という職業に「自然淘汰」が進むということ。でも、ダメな先生を首にはできませんから、生徒に相手にされない授業をやる先生が増えます。情緒の安定を欠いた躁鬱病傾向の先生が増えるということ。
●最初はスタディ・アプリを導入する、次いで...というように段階的にやった方がよさそうです。

*GIGAスクール
https://www.mext.go.jp/content/20191225-mxt_syoto01_000003278_03.pdf

*#4130 根室市の子どもたちの学力アップの具体的な方法:「学力向上特区申請」 Nov. 23, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-22



<余談-2>
 『佐藤の数学』というセンター試験の作問委員を長く務められた先生が書いた高校数学参考書・問題集がある。10冊ほどあったか、分野別にパターン化して解説したユニークな参考書・問題集である。一度示されたパターンを数えてみたことがあるが、550パターンほどあった。数学のセンスの悪い生徒はこれでも足りないだろうし、センスの良い生徒はこれを200以下に圧縮できる。センスの良い生徒はこの先生が示したパターンを抽象化してまとめてしまえる。センスの悪い生徒は1000パターンでもまだ足りないだろう。もちろん、高校3年間でマスターすることは不可能。それを200パターンに縮約できるなら勉強はずっと楽になる。

 高校時代の勉強法の大事な要素に、抽象化(一般化)や概念の拡張がある



 #4124 日本語音読トレーニングのしかた Nov. 16, 2019

https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-16

 
#4123 根室の中3の数学・学力の現状とその波紋 Nov. 14, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-14

https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-10-25

 #3928 視写速度格差の学力への影響 Feb. 12, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-02-12

 #3450 ニムオロ塾 授業日数の短縮:来年4月から Nov. 6, 2016
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2016-11-05-1

 #3366 「一流の育て方」から:母親視点の正論 July 16, 2016
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2016-07-16

 



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#4272 変形生成文法との出遭い June 18, 2020 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

 #4271でチョムスキーの変形生成文法に触れたので、思い出したことがあり、書き留めておきます。

 実は、商学部会計学科の学生だった時にチョムスキー著・安井稔訳『文法理論の諸相』(1970年刊)を買ってました。ちょっと変わった文法理論だなくらいでした、強いニーズがなかった、それで途中で放り投げたんです、難解でした。この本は初版で絶版になっています。これは構造言語学の専門書で「理系の本」であって、「英文法書」ではなかったのです。読んで理解できる英文法学者や研究者、学生が少なかったのだろうと推察します、売れるわけがありません。
 3年くらい後で、大野照男著『変形文法と英文解釈』を読んでます。Eric Roll"A history of economic thought"を読み、ノートに日本語訳を書いていて、意味不明な個所がいくつも出てくるので、何とかしたいと切実な思いがあったときに、板橋区立図書館で『変形文法と英文解釈』を見つけたのです。強いニーズが背景にありました。入試直前でしたが、ノートに要点をメモしながら、半分ほどやるのに1週間かけました。大学院経済学研究科の受験の仕上げにはそれで十分でした。
 3校受けましたが、点数の確認ができたのは1校だけ。英語は90点でした。受験生は控室で待ちますが、次に面接する人は面接室のドアの横に置かれた椅子まで移動して着席して待つことになっていました。前の人が出てきた後、名前と得点を読み上げる声が聞こえてきました。「ああ、合格したな」。(笑) この本のお陰です。他の2校もたぶん9割前後だったでしょう。変形生成文法が身につくと、訳文にはっきり差がつきます。1校はB4版に小さな文字でびっしり英文が並んでいました。外部経済と内部経済、マーシャルだったと後でわかりましたが、まったく馴染みのない分野でした。量が多いので1時間では全訳できるわけもないので、出題者は抄訳を要求していると判断して、コンパクトに要旨を書き並べていきました。それでも時間いっぱいかかってます。得点はそこが一番よかったでしょうね。50人ほど受験して合格者は2人です。
(受験した3校のうちの1校は母校でしたが、学内試験含めて、3度受験して、3度とも合格者無し、つれない母校でした。試験は3度ともトップだったと思います。商学部会計学科の学生が経済学研究科を受験して、学内試験のときに指導教授になる人と議論して貨幣論で大きな採点ミスが判明し、30人ほど教授たちが並んでいるところでコテンパにやつけてしまったのが祟りました。ミスは明らか、それも商学部会計学科の学生から指摘されたのですから、顔がみるみる真っ赤になってました。経緯は2度ほど弊ブログに書いてます。「君の後輩は苦手だよ」、入試の後その教授から同じゼミだった院生の先輩が某教授がそう言っていたと教えてくれました。採るつもりがなかったのです、時間を無駄にしました。他の受験生の迷惑にもなったでしょう。「合格者無し」の巻き添えですから。母校の経済学研究科で合格者無しは後にも先にも、その3度のみだったのかも。それでよかったと思います。お陰で業種の異なる4社を経験して、経済学研究が格段に深くなったのです。大学に残っていてはわからないマルクス『資本論』の深淵(公理的演繹体系の全体像)を覗き見し、マルクスが弁証法を用いたことでその経済学の体系化に破綻をきたしたことが理解できました。日本のマルクス経済学者はいまだに誰も気がついていません。『資本論』や『経済額批判要綱』や『数学手稿』を丹念に読んでいないからでしょうね。解説書を読んでいたのでは永久にわかりません。ユークリッド『原論』を読んで考え抜いたらわかるかもしれません、わたしはそうしました。)

 ついで、R・ジェイコブズとP・ローゼンボーム共著『基礎英語変形文法 上・下』(1977年6版)を本屋で見つけました。新宿紀伊国屋(旧店舗)だったのではないかと思います。この本は基本を平易に解説した好い本でした。変形文法の入門書です。

 1978年から1984年1月まで産業用・軍事用エレクトロニクス輸入専門商社で会社の経営改革とシステム開発を担当していたので、AIにも興味が広がり、自然言語処理がどのような学問的な背景をもって研究されているのか、チョムスキーの構造言語学の解説書や彼自身の著作を読んでみたいと思ったのです。好奇心に突き動かされました。1冊精読してしまえば、あとは読むのにそれほどの困難はありません。自分の専門外の専門書を読むのは、最初の一冊がたいへんなのです。あとは好奇心に任せて「芋づる式」に本を選びかったぱしから読破していく。つまらないと感じたらすぐにやめる。50頁も読んだところで、読む価値がなかったとわかる本もたまにあるのです。それが3000円から5000円ほどもするような本だとがっかりです。高い本はタイトルだけで判断せずに、手に取って30分は本屋で立ち読みしてから買うようになります。学生時代はそんなにお金ありませんから。社会人になってから本題に費やすお金が楽になりました。

①  John Lyons "CHOMSKY" 1977

②  Editor:Frank Kermode "CHOMSKY" 1985, Fifteenth impression(15刷)
③  Noan Chomsky "Knowledge of Language  Its Nature, Origin, and Use" 1986
④  V.J.Cook "Chomsky's Universal Grammar An Introduction" 1988
⑤  Andrew Radford "TransformationalSyntax (A student's guide to Chomsky's Extended Standard Theory)" twice 1988
  

 ③と④は必要を感じていたので全頁読みました。③はSRL八王子ラボで機器担当しているときに、暇潰しに仕事中に読んでいた本です。購買課では購入申請受付審査業務、購入業務、検査機器の共同開発、購買システムのメンテナンス、機器購入予算管理、ラボ内の危機の標準化業務などを担当していました。ラボ内図書室の30種類ほどの欧米の医学雑誌も仕事中に読み漁っていました。「2回の図書室で医学雑誌読んでいるので、用事があったら図書室へ電話まわしてください」、それでよかった。業務に優先順位をつけて優先度の低い業務は2割程度廃止、重要なものはシステム化をしてしまう。やりたい仕事ができたら、必要な予算は自分で提案書を書いて金額に応じて一般協議書か稟議書で許可をもらえばいいだけ。ルーチン業務をシステム化してしまうと、いくらでも時間ができます。減価償却費予算の計算と固定資産管理はシステム化で劇的に変わってしまいました。だから移動すると同時に、購入協議書周りの業務と固定資産管理業務を購買課へもってきて担当してます。それに購買課にもとからあった購入業務がルーチン業務となりました。不具合のあった購買在庫管理システムの手直しもしてます。3人の担当者がいたのですが、だれもシステムに関するスキルをもっていなかった。あまりもたついているので、出力帳票の半分くらいは仕様書を書いてあげました。
 固定資産実地棚卸マニュアルや実務フローは当時とほとんどかわらないでしょう。固定資産分類コードも制定しました。ラボ管理部の機器や予算担当者に協力してもらって、現物確認しながら数か月かけて分類整理をしていきました。機器の種類が多くて整理がたいへんでしたが、いったんやってしまうと、便利です。-80度の冷凍庫が八王子ラボ内にどの検査部署に何台あるのか、すぐに画面で確認できます。国からの調査依頼が年に一度ありますが、それまでいい加減な数字を書いていました。何も資料がないのですから仕方ありませんでした。
 投資予算と既存固定資産をベースにした減価償却費予算も精度が一桁アップしました。それまで1億円を超える予算差異がでていましたが、投資予算管理をシステム化して固定資産管理システムと統合することで、減価償却費予算差異が1000万円くらいに縮小しました。減価償却費予算差異の縮小が上場要件の一つとして挙がっていましたが、これでクリア。他に、固定資産税申告に3人のバイトを雇い社員一人と3か月かかっていましたが、ゼロになっています。自動出力に変えてしまいましたので、申告書添付の固定資産台帳の作成作業は消滅しました。もちろんいまでも同じでしょう。全部1984-85年に創りました。

 話を構造言語学の専門書に戻しますが、またすぐに脱線します。①②⑤は抜き読みしただけです。
 ④を読んでいた時に、ラボの学術開発本部担当役員が机の前を通りかかって、「何読んでいるんだ」と言いながら、本を手に取って一瞥すると、席に戻ってすぐに社内電話がありました。
「俺のところに来ないか」
 異動のお誘いでした。学術開発本部内には学術情報部、開発部、精度保証部の三つの部がありました。わたしは取締役直属のスタッフとして三つの部門で手に余る仕事や開発部でやっている製薬メーカとの検査試薬共同開発案件2つと共同開発手順の標準化を担当。そして担当できる者がいなかった学術営業から依頼のあった沖縄米軍がらみの出生前診断検査や慶応大学病院との出生前診断(トリプルマーカ―)の日本標準値制定に関する産学共同研究プロジェクト案件を任されることになりました。
 ここで、また仕事の幅が広がります。学術開発部長のK尻さんとは臨床検査項目コードの日本標準制定プロジェクトで3年前に一緒に仕事をしていました。わたしの提案で始まった大手六社と臨床病理学会(現在、日本検査医学会)項目コード検討委員会の産学協同プロジェクトは5年ほど毎月検討会議を重ね、臨床病理学会から公表されて、いま全国の病院で使われている臨床検査項目コードとなっています。項目コードの新設や改定は作業はSRLに事務局を置いてやっているはず。
 1984年に上場準備中のSRLに中途入社したときには全社の予算編成と管理がルーチン業務、そして統合システム開発の中心部分を担いました。財務会計及び支払い管理システムと投資・固定資産管理システムを開発しています。前者は仕様書作成スタート8か月で本稼働。異常に短い期間での開発でした。必要なスキルが全部そろっていたのでやれました。原価計算システム、購買在庫管理システム、売上債権管理システムとのインターフェイス仕様書は1週間で書き上げました。いまも当時のままでインターフェイスしているでしょう。当時は全部作りこみですから、外部仕様書と実務デザインは当時の日本のトップレベルのスキルが必要でした。
 それをやり切って、予算編成・管理責任者として16億円の検査試薬(材料費)カットを提案したら、専務が価格交渉プロジェクトを作るから、お前が八王子ラボの購買課へ2か月間行って価格交渉を担当しろと言われて、ラボ勤務。製薬メーカを個別に呼んで予定通りコストカットすると、すぐに購買課への異動辞令が出されました。そんな話ではなかったのに。(笑) 翌年も20%ダウンが可能でしたから、利益管理上外せなくなったのです。それにしても2年やれば一つの型ができてしまいますから、あとは誰でもやれます。2年以上わたしに担当させる意味はありません。それまで、製薬メーカと価格交渉したことがありませんでした。卸問屋とやっていたのです、阿呆な話です。卸問屋にはせいぜい10%しか利益がないのに、20%の原材料費をカットできるわけがありません。だから、「やれっこない」と現場の課長から反対意見があったのでしょう。困った本社専務(富士銀行からの転籍組、陸士と海士に合格し陸軍士官学校卒、戦後は東大に入り直してご卒業)は、言い出しっぺの予算編成統括責任者のわたしに材料費カット・プロジェクトを引っ張らせることにしたというわけ。自分でやれないことは提案しませんから、望むところでした。
 機器担当の2年余に、数件の検査機器の共同開発をやりました。産業用エレクトロニクス輸入商社にいたときに、6年間毎月世界最先端の計測器を開発する欧米50社のメーカーからエンジニアが来て理系大卒の営業マン相手に製品説明会を開いていたので、ずっと聞いてました。門前の小僧習わぬ経を読む類で、マイクロ波計測器についてずいぶん詳しくなりました。ディテクターとデータ処理部と双方向インターフェイスの三つの構成要素から計測器ができていました。データ処理部は要するにコンピュータですから、こちらは数種類のプログラミングを経験済みの専門家でしたから、そこを中心に理解しました。検査機械も基本的な構成は同じです。ディテクターの種類が違うだけ。同じ三つの部分から構成されていたのでわかりやすかった。インターフェイスやデータ処理部が検査機械はびっくりするほど遅れてましたね。だから、エンジニアでもない私でもメーカとの間に入って、共同開発の調整ができたのです。世界最先端の理化学計測器の最新情報を6年間も勉強してきたわけですから、無駄にはなりませんでした。どこで得するかわからないものです。
 LKB社の紙フィルター方式の液体シンチレーションカウンター2台(96チャンネルだったかな、96検体同時測定だからバイアル方式の従来タイプに比べて、処理速度は比較にならぬほど速いしガラスのバイアルを紙フィルターに置き換えるので省スペース)世界初導入、SRL仕様でのγカウンター開発、栄研化学LX3000、結石前処理アームロボット(これはラボ管理のO形さんの担当で、相談されて一緒に業者対応しただけ)、ニコン子会社ニレコ社との染色体画像診断装置開発断念と英国メーカ―IRS社の染色体画像解析装置導入など、2年半ほどいた期間中の仕事でした。
 先に書いたようにひょんなきっかけで、学術開発本部へ異動しましたが、その直前まで八王子ラボの検査機器の標準化も進めてました。電子天秤は世界最高のメトラー社に統一、検査担当者が異動するたびに電子天秤のメーカが違って、マニュアルを読むのはばかばかしいので。(笑)
 いま話題のPCR自動検査機器を製造しているPSS社の田島社長は1987年当時はアドバンテック東洋という会社の営業マンでした。SRLの業務部とRI部で自動分注機の開発をしていました。かれはすぐに独立しました、目先の利く人でした。自動分注機では日本でナンバーワンの会社でしょう。その技術とPCR検査機器を組み合わせただけ。だから、もう30年も前に要素技術の開発は終わっていたのです。八王子の居酒屋で一度だけお酒を飲みました。一人で数十億円の購入協議書を受け付け、審査して、業者へ仕事を発注していましたから、取引先とは年に一度だけお酒の席のお付き合いをすると決めていました。ほとんど居酒屋です。一社だけ、社長さんがキャバレーが大好きで、突き合わされてことがあります。メーカ側の人からは必要な開発情報や不満も聞いておく必要がありました。田島さんには、「SRLにこだわっていたらそれだけの会社になってしまう、そろそろ離れたら?」そんな話をした覚えがあります。「SRL御用達」の会社になりつつありました。せっかく独立してPSSという旗を挙げたのですから、いつまでもSRL御用達では成長力が削がれます。田島さん、びっちり現場に張り付いて、ニーズの吸い上げを渾身の力でやってました。偉い人ですが、それゆえ危ない面もあったのです。紙一重ですね。両方を牽制しました。小さいけれどSRLにとっては大事なメーカさんと現場の間で不祥事が起きてしまっては影響が小さくありません。粒は小さいながら当時もSRLにとっては自動化に欠かせない大事なメーカーでした。
 入社2年目には開発部長の金額の大きい不祥事(業務上横領、懲戒免職処分)があったし、それから数年して業務部社員の不祥事(取引業者から毎月現金受領、懲戒免職処分)もあった。この二つは金額が大きかった。長くやっていたらどこかでバレます。購買関係者はつねに業者のターゲットです。危ういお付き合いをしている社員や管理職がいました。早く異動させてしまうのがいい。お酒が好きなら素敵な女性のいるバーへ、「どうぞお使いになって結構です」なんて言うんです。請求書は製薬会社へ回ります。ゴルフが好きなら接待ゴルフ漬け。最初は小さい接待、徐々に麻痺してくるんです、それが怖い。何人か見ました。どこかで誰かが知ることになります。創業社長のもとへは3日に一通の内部告発文書が届いていました。ちゃんとしている社員の方が断然多い、たまにヘンなのが出るんです。そのほとんどが管理職でした、権限が大きいですからね。
 暇ができたら、好奇心に任せて本を読んでいたら、そうしたことからは距離を置けます。ゴルフの趣味もないし、綺麗なギャルのいる店で飲む必要もありません、ラボにはお酒の好きな女子社員がたくさんいます、1000人中800人ほどが女性でした。銀座でお店を一軒持ってもやっていけるような美人でスタイルがよくて色っぽくて言葉遣いのきれいな女性もいました。たまに誘って数人で飲んで騒げば十分愉しいのです。仲の好い同僚と二人で新宿の居酒屋や銀座のライオンで飲めば、女性同士で来ている客と相席してにぎやかに呑むこともできます。
 染色体画像解析装置を2台まとめて購入したときに、バックアップ用に1台ラボ内に設置してもらうようにお願いしました。英国エジンバラにあるメーカでしたから、機器にトラブルがあってもすぐに対応できません、こちらはルーチン検査に使うのですから、即時対応が必要です。だから、バックアップ1台設置を提案しました。向こうが呑みやすいように、値引き要求はしません。こちらもニコン子会社と染色体画像解析装置開発失敗経験があり、IRSの製品が高性能であることは認めてました。手作りのプリント基板のボードコンピュータにCCDカメラ、そしてソフトと高性能レーザプリンタですから、原価はせいぜい定価の20%程度だと思います。エレクトロニクス輸入商社でマルチチャンネルアナライザーを開発、販売するために原価計算した経験があるので、機械の中身とソフトの動きを見ればコストは見当つきました。
 バックアップをメーカ側に飲ませる口実を用意したのと、販売会社である日本電子輸入販売の担当者へは商談を一つ紹介してあげました。「二番手の会社にSRLで導入したので買わないかと商談してみろ、必要なら当社の現場(染色体課)を見学させてあげるから、値段は1円も引くな、それでも売れる」と提案。その通りになりました。営業マンのSさん喜んでました、もうけが大きい。(笑) 製造は英国のメーカでしたから、ゴルフの名門セントアンドリュースでのゴルフ接待、会社の了解がとれたので、一緒に行きましょうと提案がありました。彼はゴルフが大好きだったのです。わたしにはゴルフの趣味がない、「会社の了解とったのに…」とガッカリしてました。期待に応えられず申し訳なかった。染色体画像解析装置はほかに国内の臨床検査センター2社販売されました。3年後にその一社である東北の臨床検査センターに1億円の出資交渉をして役員出向することになります。運命の糸はずっと前からつながっていました。そしてさらに4年ほど後で、もう一社である帝人の臨床検査子会社の買収交渉を担当することになるのです。
 どちらの会社も採算が悪いので、打開のために新規分野へ進出しました。しかし、この分野はSRLが80%の寡占分野で、検体を集められるわけがありません、経営判断が甘いと思いました。高額の機器の他に染色体検査の要員を揃えると赤字はさらに膨らみます。いずれ経営が行き詰まると1990年ころに判断してました。その通りになったのです。だから、帝人との臨床治験合弁会社の経営をSRL近藤社長から任されたときに、合弁会社の黒字化と帝人の臨床検査子会社の買収も3年以内にやれという指示は、わたしにはもう何年も前に、シミュレーション済みのことでしたから、ラボ内を一度見学させてもらって3年分ほどの決算書を分析して、権限をもっている帝人本社役員を説得できると確信しました。帝人のほうにもメリットのある話ですから。「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」、もちろんそこで働く従業員が一番だいじでした。ちゃんと期限内に仕事をしました。
 SRL側のラボを移転、大型自動化ラボを中心に会社を作り変える構想をもっていました。米国市場で臨床検査子会社を造り展開すればさらに大きくなったでしょう。ラボの自動化では世界一の水準です。
 グループ企業全体をコントロールする、利益管理に収斂する画期的な経営統合システム構想は1988年ころにつくってありました。実行していたら、グループ全体の売上規模は4倍、売上高経常利益率は15%を超えていたでしょうね。米国での事業展開にめどがついたら、英国、ドイツ、フランスで展開すればよかった。SRLは大きな可能性を秘めた面白い会社でした。

 機器の統一は例えば、ウィルス部の蛍光顕微鏡はツァイス製品に統一。値段は350万円ほどしました。ニコン製品だと250万円、オリンパスだと180万円くらいでしたね。購入申請が出ると、ウィルス部の検査課長に「オリンパスでなくていいよ、カーツ・ツァイスを買ってあげるから、検査管理部に話は通しておくから、購入協議書書き換えてきて、見積書はこちらでとっておきます」、「え!ほんとうに買ってもらえるんですか?」、「任せとけ、その代わり使っている機器に見合ういい仕事してください(笑)」。支払う税金が少し減るだけ。
 検査担当者にいいもの使わせると、いい仕事してくれるんです。大学検査室の先生たちや大学病院の先生たちのラボ見学のときにも、そういう世界最高の顕微鏡がズラっと並んでいると、説明の必要がなくなるんです。「さすがSRLさんだ、技術レベルが高いから、使っている機器も違う」、ラボ見学のご案内をしているときに表情をみるとよくわかります。法人税20億円も支払うくらいなら、ラボの機器を世界最高性能のものに揃えたほうが「お得」です。350万円しても4割引き、210万円で買ったようなもの。ニコン製品よりも安いというのが、予算管理をしていた私の感覚です。「好いもの揃えるから」って、本社役員にあったついでに一言いうだけで、全部通ります。わたしの後継の予算管理担当者もだまって予備費から予算を回してくれます。入社して2年間は予算編成と予算管理の統括責任者をしていたので、副社長や経理担当役員に話を通すだけで、全部OKがでました。要するに八王子ラボと本社のパイプ役だったんです。それまで、本社管理部門で、検査や検査機器、ラボの自動化についてスキルのある社員が一人もいませんでしたから、貴重な存在だったのでしょう。これからもそういうマルチのスキルのある人間が民間企業本社部門には必要です。

 好奇心がわいたら、原典を探して読む、そういうことが仕事のさまざまな方面で活きてくるんです。あるとき思いがけない方向へ広がっていきます。チョムスキーの構造言語学への興味を通してそういうことが言いたかった。
 今日も弊ブログを読んでくれてどうもありがとう。

*PSS(プレシジョン・システム・サイエンス)社ホームページ:http://www.pss.co.jp/

1. チョムスキー著・安井稔訳『文法理論の諸相』(1970年刊)
SSCN3580.JPG


2. R・ジェイコブズとP/ローゼンボーム共著『基礎英語変形文法 上・下』(1977年6版)
SSCN3583.JPG


3. ①  John Lyons "CHOMSKY" 1977
  ④  V.J.Cook "Chomsky's Universal Grammar An Introduction" 1988
  ③  Noan Chomsky "Knowledge of Language  Its Nature, Origin, and Use" 1986


SSCN3584.JPG

4.大野照男『変形文法と英文解釈』
  Noam Chomsky "Refrections on language"
  ⑤  Andrew Radford "TransformationalSyntax (A student's guide to Chomsky's Extended Standard Theory)" twice 1988


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#4271 Sapiens (32nd) : page 43 June 18, 2020 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

 第1部第2章"The Tree of knowledge"のまとめsummeriseの箇所で、少し複雑な構文があったので紹介する。

<43.1> To summarise the relationship between biology and history after the Cognitive Revolution:

a.  Biology sets the basic parameters for the behaviour and capacities of Homo sapiens. The whole of history takes place within the bounds of this biological arena.

b.  However, this arena is extraordinarily large, allowing Sapiens to play an asutounding variety of games. Thanks to their ability to invent fiction, Sapiens create more and more complex games, which each generation develops and elaborates even further.
 
c.  Consequently, in order to understand how Sapiens behave, we must describe the historical evolution of their actions. Reffering only to our biological constrains would be like a radio sportscaster who, attending the World Cup football championships, offers his listeners a detailed description fo the playing field rather than an accont  of what the players are doing.

  What games did our Stone Ages ancestors play in the arena of history?

 アンダーラインを引いた箇所が高校生にはなかなかむずかしいようだ。文の中に文が埋め込まれているので、目くらましに遭う。こういう文は生成変形文法と利用すると理解のピントを外さない。意味は基底文deep structureにあるのだ。

Reffering only to our biological constrais would be like a radio sportscaster who, attending the World Cup football championships, offers his listeners a detailed description of the playing field rather than an accont of what the players are doing.

 挿入句を外すだけで、ずいぶんと軽くなる。
Reffering only to our biological constrais would be like a radio sportscaster who offers his listeners a detailed description of the playing field rather than an accont of what the players are doing.

 これなら、高校教科書に出てくるレベルの難易度の文である。挿入句[, attending the World Cup football championships, ]があるだけで、英語の偏差値が75の高校生でも眩暈(めまい)がしてくるのである。挿入句は[, ..... ,]のように、両端がカンマになっているのですぐに見分けられるから、それを外してみたらいい。

 以下は、3つの文に分解したもの。(3)は基底文ではないが、意味を捕まえるためにはここまでで十分である。
(1) Reffering only to our biological constrais would be like a radio sportscaster.
(2) [a radio sportscaster who is] attending the World Cup football championships.

(3) [a radio sportscaster whooffers his listeners a detailed description of the playing field rather than an accont of what the players are doing.


(1) 生物学的な制限にのみ言及することはラジオのスポーツキャスターのようなものだろう。
(2) ワールドカップサッカー大会で実況中継中のラジオスポーツキャスター
(3) 選手たちが何をしているのかをほったらかしにして競技場の構造や色彩や芝の状態などどうでもよいことをこまごまと視聴者に伝えるラジオスポーツキャスター

 スラッシュリーディングならこれだけで十分だ、滑らかな日本語にするにはつなげばいいだけ。翻訳家ではないのだから、翻訳者の柴田さんのような訳文にならなくてもいい。高校生や大学生なら日常使う言葉で表現できたら十分だ。
「生物学的な制限にのみ言及するというのは、ラジオのスポーツキャスターがワールドカップの実況中継中に、競技場で選手たちが何をしているかをほったらかして、競技場の構造や色彩や芝の状態がどうなっているのか事細かくしゃべり続けるようなもの。…」ebisu訳案

 太字で示した部分の訳がちょっと悩ましい。
 arena:①試合場、競技場、アリーナ、リング ②(…の)闘争の場、(…の)界

 さてthis biological arenaは「この生物学的な競技場」と「この生物界」のどちらがいいのだろう?
 主語には定冠詞がついているから、「The whole of history」その意味は「サピエンス全史」である。「サピエンス全史が生物学上の競技場という範囲内で生起している」と読むべきだろう。だから、arenaは「競技場」、gamesはそこで行われる「試合」と訳したい。
 ハラリはarenaとgamesをセットで考えて書いている。競技場とそこで行われる試合を比喩として使っているのだ。

 プロの翻訳家の訳文を参考までに挙げておく。
------------------------------------------
 認知革命以降の生物学と歴史の関係をまとめると、以下のようになる。
a 生物学的特性は、ホモ・サピエンスの行動と能力の基本的限界を定める。歴史はすべてこのように定められた生物学的特性の領域(アリーナ)の協会内で発生する。
b とはいえ、このアリーナは途方もなく広いので、サピエンスは驚嘆するほど多様なゲームをすることができる。サピエンスは虚構を発明する能力のお陰で、次第に複雑なゲームを編み出し、各世代がそれをさらに発展させ、練り上げる。
c その結果、サピエンスがどうふるまうかを理解するためには、かれらの行動の歴史的進化を記述しなくてはならない。わたしたちの生物学的な制約にだけ言及するのは、サッカーのワールドカップを観戦しているラジオのスポーツキャスターが、選手たちのしていることの説明ではなく、競技場の詳しい説明を視聴者に提供するようなものだ

 それでは石器時代のわたしたちの祖先は、歴史というアリーナでどのようなゲームをしたのだろう?
 …柴田裕之訳 57頁
------------------------------------------


<余談:高3英作文トレーニング>
 1月半ばから、週4回、高校3年生対象に問題文と解説をメール配信でやっている。「英作文1000本ノック」と命名したが、これはNHKラジオ英会話の大西泰斗先生のテキストと解説がベースになっている。必要な範囲で問題を付け加えたり、解説を増やしたりしている。一昨日が75回目、平均して7問題くらいだから、500題を超えたので、どうやら1,000題やれそうです。
 しっかりやってくる生徒、時々やってくる生徒、やっているのかやっていないのかわからない生徒(笑)の三つのグループに分けられる。「わからなけりゃ、主語と動詞だけで十分だよ、そこまでやってきたらそのあとどうしたらいいかは個別に指導するから」と生徒たちには伝えてある。「数学大好き&英語嫌い」な生徒がほとんどなので、てこずっています。
 願わくば、長文対策には弊ブログの「原書講読講座Sapiens」シリーズも利用してもらいたい。

大西が当初から目指しているものは、認知言語学で広く使用されているイメージ・スキーマを一般の学習者にわかり易いように変えたメージを用いた英文法のわかり易い教授である
認知言語学はチャールズ・フィルモア格文フレーム意味論レイコフらが1970年代に提唱し、いわゆる「言語学論争」にまで発展した生成文法左派の生成意味論、そしてロナルド・ラネカーが独自に研究を進めていった空間文法(space grammar:後の認知文法)などが基となって融合的に発展した分野である。

 ノーム・チョムスキーの生成変形文法に出遭ったのは、1974年ころのことだった。経済学の原典を読んでいて、ときどき意味のつかめない箇所が出てきて困っていた。著名な経済学者が訳した良質な翻訳書で調べても納得のいく訳文ではなかった。板橋区常盤台の区立図書館で生成変形文法理論の専門書(大野照男著)『変形文法と英文解釈』見つけて、朝9時から夜6時ころまで1週間ほどで読み切って、ようやく原因が何だったかわかった。著名な先生たちでも文法工程指数の高い文はどうしようもないから、前後関係だけで当て推量の訳をしていることがわかった。論説文なら、基底文に分解・整理すれば、文法工程指数の高い文でも適切に処理できる。
 せっかくだから、生成変形文法の本は本家本元のノーム・チョムスキーの著作も数冊読んでみた。構造言語学に興味があったのは5年もあったかな、そんな程度です。理論のあまり細かい処へ立ち入ると、かえって煩雑になるので、適当なところで妥協しておくのがよい。
 ☆ 複雑な問題に遭遇したら、「必要なだけの小部分に分割すること」
*デカルト『方法序説』より「科学の方法、4つの規則の第二より」

 安井稔先生が高校の先生向けの参考書『英文法要覧』を書かれていますが、これは生成文法をベースにした英文法書です。専門書ではありませんので、とっつきやすいでしょう。安井先生にはチョムスキーの『文法理論の諸相』という本の翻訳があったはず。

 大西先生のイメージに基づく意味解説はとってもわかりやすくて助かるし、英文をどのように書けばいいのか指針になる。なにより、認知言語学は生成文法左派の生成意味論と関係があるらしいから、さらに親近感がわいた。


*https://ja.wikipedia.org/wiki/大西泰斗
**https://ja.wikipedia.org/wiki/認知言語学

*#4272 変形生成文法との出遭い June 18, 2020
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2020-06-18



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