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#4152 PISA読解力15位の衝撃:なぜ? Dec. 17, 2019 [71.データに基づく教育論議]

<最終更新日時>
12/18朝8:25

 今朝、7時台のNHK第一放送聞いていたら、PISA(学力到達度調査)で(日本の15歳が)OECD中、読解力15位(前回8位)と言っていた。年々下がっているのだが、これはPISAの問題傾向がこの数年間で変わったことによるらしい。大量の情報から、自分に必要なものを読み取る、批判的に読む、人の意見を精確に読む、読んだことに対する自分の意見を文章にまとめる、そういう力を測定するように、読解力の問題が構成されているのだそうだ。数年前から、出題傾向がそういう風に変わっているという。インターネットの時代だから当然だね。

 「作者はどう考える?」なんて設問で、出題者が自説あるいは自分の解釈を強要するような日本の国語テストとはまるで違う。慥かな論拠があって、論理的な整合性がとれていればOKですから、採点視点がまるで違います。問題意識の斬新さや切り口の鋭さが現れていたら最高でしょうね。大学で哲学教えている友人が、そういう採点しているって、言ってました。

 思索を深めるのは哲学が有効です。PISAの読解力テストで高得点を挙げるには、哲学がベースにないといけません。日本の中学校や高校の国語の先生は哲学の素養がないから、この手の指導は無理、専任教員を置いて高校で哲学を必修科目にすべきです週に2日は授業時間を7時間にして哲学に充ててもも好いじゃありませんか。中学校でも週に1日は7時間授業にして、テクスト選びがたいへんそうですが、哲学系の本の音読トレーニングをやったらいい。そういう環境下で先生を育てて、全国に配置するとしたら、30年はかかります。
  大学共通入試問題を記述式に変えればなんとかなるなんてことは、答えのある受験問題を一生懸命に解いた小利口な人の考えそうなことです。文科省は何度もそういう「改革」を繰り出して、結果が出せません。いい加減に気がついたらどうなんでしょ。

 ヨーロッパでは高校生には哲学が必須科目になっています。それどころか、フランスでは国語のテクストに『方法序説』を使っているそうです。これはデカルトのバリバリの哲学書、「方法」とは科学の方法のこと、科学の方法とはいったいなんなのだろうというデカルトの考察を一度読んでみてください、こういう本をフランスの高校生が国語の時間に読んでます。どれほど理解しているかはわかりませんが…デカルトは哲学者であると同時に数学者でもあります。関数の平面座標、あれデカルト座標ともいいます。

 十人十色、百家争鳴という言葉があるように、人の意見はさまざま。自分の意見もその中の一つ。相対的に物事を見るとか、意見と事実を分けて考えることもとっても大事なこと。科学史や歴史を見てごらんなさい、時間がたつと通説は崩され、新しい説が具体的な論拠や新しい理論をバックに現れてきます。いつでも、どこでも真であるというのは数学くらいなものです。


 わたしは、高校時代に公認会計士2次試験の参考書を読み答案練習を始めていたので、論理的な文章を読むことも書くことも、その時にトレーニングしました。当時の試験科目は7科目、「経済学」もありました。好奇心から経済学や哲学の専門書も高校2年から読み始めたので、例えば、経済学は公認会計士2次試験科目にあって、近代経済学(主として限界効用学説とケインズの有効需要と乗数理論
)だったから、学説のバランスをとるために高校図書室でマルクス『資本論』(労働価値学説)を読みました。そして会計学は学説の異なる二人の学者の著作を読むようにしました。高校生の時に異なる学説を両方頭の中に共存させて、比較思料するという学習スタイルが身につきました。相対立する学説や通説への疑問が頭の中で共存しています、そういう状態を何年も維持すると思考が次第に深くなっていきます。こうして世の中にはまだ答えのない問題を考え続けます。答えが見つかるか見つからないかはわかりません。ひたすら考え続けます、見つけたら新しい理論が生まれます。赤字の企業を黒字にするような企業経営改革も似たような作業ですがずっと簡単です。答えのない問題を発見し、独力で考え抜くこと、そういう思考スタイルがようやく国際的に推奨される時代になったということでしょう。どうやら50年先を歩いていました。(笑)

 受験勉強なんて答えのはっきりしている狭い範囲で学習していたら、社会に出てから行き詰まります。知識を問う問題なら、もうAIには勝てません、「東ロボ君」で実証済みです。しかし、東ロボ君は文章の意味理解がネックになって、偏差値が57付近で頭打ちになっています。
*「東ロボくん」が偏差値57で東大受験を諦めた理由
[https://diamond.jp/articles/-/108460
 知識を問う問題や計算問題には圧倒的に強いが、文章の意味理解が苦手な東ロボ君。笑えるのは中高生には東ロボ君以下の文章読解力の生徒が多いという事実です。
 時代がこれからさらに大きく変わり、社会が要求する能力が変化しています。複雑なそして抽象的な表現の文章でもそれを精確に読みとって考えること、答えのまだ見つかっていない問題を考え続け、新しいものを生み出す能力、そういうスキルが問われる時代になっているのです。計算も既存の知識ベースで答えの見つかる問題もすでにAIに勝てません。そこは人間の分野ではなく、AIに任せるべき分野、さまざまな分野の仕事がつぎつぎにAI[にとって代わっていきます。

 大学生は、しっかりした学者のゼミで鍛えられたら、上述したような(文章の意味理解、思考の型、答えのない問題を考え続ける)スキルが身につきます。
 でも、社会科学系の分野では北海道の大学にはそういうレベルの先生はほとんどいないかもしれない。しっかりしたというのは、その分野で日本で三本の指に入るということ。47都道府県あるから、その中に日本で三指に入る人がいるというのは、なかなかあり得ないことでしょう。優秀な学者は首都圏に集まってしまいます。

 比較的たくさん本を読んでいるはずの文系の学卒でも、50代になっても自分の意見しか世の中にはないような人がたまにいます。異なる他人の意見を受容できない、知的には片輪のようなものです。

 本を批判的に読むというスキルは、ゼミで先輩たちと議論する中でも鍛えられます。早稲田の政経出身者でマックスウェーバーの著作をとりあげたゼミで勉強したハンドルネーム「後志のおじさん」がなかなかすごい人でした。ちゃんと議論できる。指導教授が誰だったのか訊きそびれました。

 もちろん、大学に行かなくたって、さまざまなジャンルの本を読むことで、こうしたスキルは身につきます。最初は書き手の意見に沈潜し、そして次第に批判的に読めるようになる。
 文系分野の専門家は、自分の専門分野の本はスキミング(skimming)するだけで内容が理解できるので、十倍速でもそれなりに読めちゃいます。専門分野は最低二つ、できれば三つも五つももっちゃいましょう。なるべく、離れた分野がいい。いずれつながりだしますから。文系の人だったら理系分野、理系の人だったら文系分野、ということ。

 わたしが謦咳に接したのは市倉宏祐教授(哲学・学部のゼミ、ヘーゲル研究とサルトル研究の専門家、のちにパスカルの研究もしておられました)、内田義彦教授(経済学史。学部の授業)、増田四郎教授(西洋経済史・元一ツ橋大学長)の3人、もちろん、それぞれの分野で一流の学者でした。とくに増田先生の授業は院生たった3人だけの超贅沢な特別講義、ありがたくって授業のたびに冷や汗かいてました。(笑)


 一流の学者と対話を重ねても、相手に呑み込まれないだけの鮮烈な問題意識と思索の深さが必要です。三人の先生たち、すでにどなたもいらっしゃいません。弟子たちが、それぞれの分野で活躍しています。背中を見てその学風から学ぶんです。手を取って教えてくれるなんてことはありゃしませんよ。学ぶんだったら、一流の学者の背中から学べ、というのがわたしの意見です。若い者は東京を目指せ、東京には一流の学者が集まっています。闇を照らす炎に虫たちが集まるように、優秀な学生も一流の学者の下に自然に集まってきます。そういう場(fields)で自分を磨いたらいい。ふるさとへ戻るのはさらに社会経験を積んでからだ。

*PISA読解力テスト
https://news.livedoor.com/article/detail/17480531/

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[日本、PISA読解力ランキング「過去最低」これだけ改革して、なぜ…? 「読書離れ」は止まったはずなの]

読解力「15位」の衝撃

2019年12月3日に、2018年に実施されたPISAの最新結果が発表され、参加した79の国・地域の中で日本は「読解力」で15位、「数学リテラシー」で6位、「科学リテラシー」で5位となり、いずれも前回の2015年調査よりも順位・スコアが後退した。

…学力が低下するのではないかという心配を心から解消するためには、親や教師が一丸となって読書教育を推進する必要があると思う。なぜなら、読解力はすべての学力の基礎だからである〉(有元秀文[国立教育政策研究所総括研究官・当時]「読書教育の曙光」、「図書館雑誌」Vol.97, No.6(2003年6月号)、377,378ページ)

このように、PISAのスコアがトップであるフィンランドと日本の子どもを、読解力と読書量から比較し、「日本の子どもは読書量が足りないから読解力が低く、記述式の問題が書けないのだ」と結びつけている。

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#3026 これが根室の教育長の発言、何かの間違いでは?:釧路新聞より Apr. 16,2015
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2015-04-16



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