#4139 学力テストと定期テストの難易度の差 Dec. 5, 2019 [71.データに基づく教育論議]
全国学力調査で北海道の平均正答率は全国47都道府県で42位(小中学生合算)管内は道内で離れ小島のような位置で、最低を記録した。その根室管内で、普段の学力テストの結果を見ると、根室市内が最低ラベルにあるのだ。(弊ブログ#4130の14支庁「管内の平均正答率の分布」表参照)
*学力調査。都道府県別正答率ランキング
https://education-career.jp/magazine/data-report/2019/ranking-achievement-test-2018/
ふだんの学力テストの平均点と定期テストの平均点を比べると、いろいろなことがわかる。まず、比較表をご覧いただきたい。(データはC中学校)
中3の学力テストは60点満点だから「百換算SD」は「百点換算値での標準偏差値」を表すように補正しているから、定期テストの平均点の標準偏差と直接比較していい。青字で示された数学の標準偏差値を比較すると、学力テストは1.5点と幅が小さいのに、定期テストは8.1で5倍以上もばらつきが大きい。なぜ、定期テストの標準偏差が大きくなったのかは、定期テスト3回の平均点の推移を見たら一目瞭然である。過去3回の定期テストの平均点は、「43.8⇒37.8⇒57.2」で、最大値と最小値に19.4もの開きがある。学力テストは4回やっているが「最大値―最小値」は2.5点に過ぎない。つまり、学力テストは難易度が一定しているとみることができる。反対に、定期テストは難易度がその都度大きく変わったということ。
定期テストの初回は、計算問題がほとんどだから平均点が年間を通して一番高いのが普通だ。難易度をそのままにして6月の定期テスト問題をつくったように見える。1回目の定期テストは「第1章多項式」と「第2章平方根」の一部だから、計算問題がほとんど。2度目の定期テストは「第2章平方根」の後半部と「第3章2次方程式」である。2次方程式の文章題はとくに苦手な生徒が多いから、平均点は下がることになる。これも毎年のことだ。慌てたのか、3度目の定期テスト(11月実施)の難易度を下げたようだ。平均点が+19.4点もアップしてしまった。
4回の学力テストの平均点は表にあるように15.8点、百点満点換算値では26.3点であるから、定期テスト3回の平均点46.3点に比べて20点も低い。そういう状況下で、数学担当の先生は問題の難易度設定に右往左往しているのではないか、お気の毒である。
(英語の定期テスト標準偏差が0.7点でとっても低いのは驚きです。英語の先生はテスト問題作りの名人のようです。こんな範囲には収められませんよ。平均点が50.8点±0.5点です!ありえない精度にコントロールされてます。その一方で、学力難易度指数は0.63ですから、定期テスト問題の難易度は学力テストに比べて格段にやさしいものになっています。これでは生徒の学力が低いままに固定化されてしまいます。定期テストの難易度をあげながら、平均点が下がらないような授業ができたら素晴らしい。)
(国語の難易度指数が1.1になっている。定期テストのほうが学力テストよりも難易度が高いということを表している。うん、なかなかだな。79か国で実施されている2018年度実施の学習到達度調査(PISA)では日本の15歳の高校生の読解力は8位から15位に大きく後退しているから、国語教育が読解力の点から見直されなければならない。根室の子どもたちの日本語読解力もスマホが中学生に普及し始めた11年前から急激に落ちている。)
*学力調査。都道府県別正答率ランキング
https://education-career.jp/magazine/data-report/2019/ranking-achievement-test-2018/
ふだんの学力テストの平均点と定期テストの平均点を比べると、いろいろなことがわかる。まず、比較表をご覧いただきたい。(データはC中学校)
<学力テストデータ> | ||||||
5教科計 | 国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | |
4月 | 117.5 | 32.0 | 25.4 | 16.0 | 24.2 | 19.9 |
総合A | 111.5 | 36.1 | 25.5 | 15.8 | 16.5 | 17.6 |
総合B | 106.6 | 27.9 | 24.4 | 14.4 | 20.9 | 19.0 |
総合C | 113.2 | 34.4 | 23.6 | 16.9 | 17.9 | 20.4 |
平均 | 112.2 | 32.6 | 24.7 | 15.8 | 19.9 | 19.2 |
標準偏差 | 3.9 | 3.1 | 0.8 | 0.9 | 3.0 | 1.1 |
百換算SD | 6.5 | 5.1 | 1.3 | 1.5 | 4.9 | 1.8 |
<定期テストデータ> | ||||||
5教科計 | 国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | |
前期中間 | 266.6 | 55.3 | 63.7 | 43.8 | 52.5 | 51.3 |
前期期末 | 241.5 | 45.2 | 63.9 | 37.8 | 43.2 | 51.4 |
後期中間 | 273.2 | 47.9 | 60.6 | 57.2 | 57.7 | 49.8 |
平均 | 260.4 | 49.5 | 62.7 | 46.3 | 51.1 | 50.8 |
標準偏差 | 13.7 | 4.3 | 1.5 | 8.1 | 6.0 | 0.7 |
<難易度指数> | ||||||
5教科計 | 国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | |
難易度指数 | 0.72 | 1.10 | 0.66 | 0.57 | 0.65 | 0.63 |
*難易度指数=百点満点換算学力テスト平均点/定期テスト平均点 |
中3の学力テストは60点満点だから「百換算SD」は「百点換算値での標準偏差値」を表すように補正しているから、定期テストの平均点の標準偏差と直接比較していい。青字で示された数学の標準偏差値を比較すると、学力テストは1.5点と幅が小さいのに、定期テストは8.1で5倍以上もばらつきが大きい。なぜ、定期テストの標準偏差が大きくなったのかは、定期テスト3回の平均点の推移を見たら一目瞭然である。過去3回の定期テストの平均点は、「43.8⇒37.8⇒57.2」で、最大値と最小値に19.4もの開きがある。学力テストは4回やっているが「最大値―最小値」は2.5点に過ぎない。つまり、学力テストは難易度が一定しているとみることができる。反対に、定期テストは難易度がその都度大きく変わったということ。
定期テストの初回は、計算問題がほとんどだから平均点が年間を通して一番高いのが普通だ。難易度をそのままにして6月の定期テスト問題をつくったように見える。1回目の定期テストは「第1章多項式」と「第2章平方根」の一部だから、計算問題がほとんど。2度目の定期テストは「第2章平方根」の後半部と「第3章2次方程式」である。2次方程式の文章題はとくに苦手な生徒が多いから、平均点は下がることになる。これも毎年のことだ。慌てたのか、3度目の定期テスト(11月実施)の難易度を下げたようだ。平均点が+19.4点もアップしてしまった。
4回の学力テストの平均点は表にあるように15.8点、百点満点換算値では26.3点であるから、定期テスト3回の平均点46.3点に比べて20点も低い。そういう状況下で、数学担当の先生は問題の難易度設定に右往左往しているのではないか、お気の毒である。
(英語の定期テスト標準偏差が0.7点でとっても低いのは驚きです。英語の先生はテスト問題作りの名人のようです。こんな範囲には収められませんよ。平均点が50.8点±0.5点です!ありえない精度にコントロールされてます。その一方で、学力難易度指数は0.63ですから、定期テスト問題の難易度は学力テストに比べて格段にやさしいものになっています。これでは生徒の学力が低いままに固定化されてしまいます。定期テストの難易度をあげながら、平均点が下がらないような授業ができたら素晴らしい。)
(国語の難易度指数が1.1になっている。定期テストのほうが学力テストよりも難易度が高いということを表している。うん、なかなかだな。79か国で実施されている2018年度実施の学習到達度調査(PISA)では日本の15歳の高校生の読解力は8位から15位に大きく後退しているから、国語教育が読解力の点から見直されなければならない。根室の子どもたちの日本語読解力もスマホが中学生に普及し始めた11年前から急激に落ちている。)
生徒の学力分布がいまのままで、学力テスト並みの難易度設定したら、得点は25点未満のところに集まってしまい、成績をつけるのに実務上困ることになるから、定期テストの難易度を下げざるを得ないのではないか?
学力テストの点数が10点に満たない生徒は、1時間の放課後補習のあとでなければ部活参加を認めなければいいのだが、そんなことを数学担当の先生二人だけでやれるわけもない。校長や保護者の了解がなければできない相談だ。
校長権限でもできそうなものだが、そういうことを実施した校長は、根室へ戻ってきてから16年間一度もみたことがない。同じ学校での校長職は2-5年くらいなものだから、その間は波風を立てずに無事に通り過ぎればいいと考えるのはあたりまえのことだろう。かくして、根室市内の中学生たちの全国学力調査の平均正答率が、全国42位の北海道で、さらに14支庁管内で根室支庁管内が最低となり、そして根室市内の市街化地域の3中学校は、別海中央のはるか後塵を拝し、中標津町の2校よりも低いという、まことに無念な状況に立ち至っているのである。
数日前に届いた『広報ねむろ12月号』のなかに「ねむろ市議会だより」があり、9月定例議会での各議員の質問要旨が載っているが、お一人も根室の中学生の低学力問題を論じた方がいないのはまことに寂しいことである。低学力を放置したら、根室の地元産業は人材不足から必然的に衰退の度を早め、消えていく企業が増え、人口縮小が加速するだろう。藤原市長⇒長谷川市長⇒石垣市長と人口減少は、この十数年間年間400人前後から600人前後と増えている。釧路の2倍の速度で人口減少がとっくにはじまっている。
「根室市議会=文教・厚生常任委員会」のメンバーは委員長が工藤勝代議員、副委員長が久保田陽議員、委員は橋本竜一議員、久保田浩昭議員、田塚不二夫議員、滑川義幸議員の6名で構成されている。
釧路市議会は、基礎学力保障条例を制定し、子どもたちの学力アップが地域経済の活性化に寄与すると、教育問題を積極的に議会で採り上げ、釧路市教委と激しい議論を戦わせている。
その釧路市の中学校3年生の学力テストの五科目平均点は根室市内の市街化地域の3校に比べて、20点ほど高い(300点満点)。根室市内の3中学校の基礎学力はすでに崩壊しているのだ。そうした事実を、根室市長も根室教育長も根室市教委も根室市議会も経済諸団体も、だあれもとりあげない根室の不思議。
根室の子どもたちの学力をどうやって底上げしたらいいのかについては弊ブログで具体案を採り上げている。市議会文教厚生委員会がオープンな場で市民と率直な意見交換をする日が来ることを祈っている。根室の子どもたちの学力低下は、権限をもつ大人たちが少しずつ配慮し、児童・生徒の親たちがともに協力すれば、なんとでもできることなのだ。わたしの役割はデータに基づいた分析と提案をし、小さな私塾で生徒たちを教えることだけ。
<アフガンの中村哲医師>
ペシャワール会の中村哲医師がアフガニスタンで銃弾に倒れた。かれは干ばつで多数の子どもたちが不衛生な水を飲まざるをえなくて、次々に病気になって死んでいく様を見続け、井戸を数千掘り続けた。そして荒野に20㎞もの距離に灌漑用水路を建設し、その周辺を麦畑とすることで、200万人の人たちが、故郷で食べて行けるような世界を実現した。そうした努力が難民の増大を防ぎ、テロを防ぐのである。
千数百もの井戸のお陰で、衛生的な水が確保され、子どもたちの病気(赤痢など)も激減した。そういう活動を30年も続けて来られた、偉い人だと思う。アフガンの現状を人として見捨てておけなかった。写真からは柔和な表情の奥に、一人でも頑としてやりぬく、強い意志を感じた。
朝日新聞ニュースより転載
*井戸掘り
https://blog.goo.ne.jp/musshu-yuu/e/b3a5ea05d7ca0222c41e48c97297d30b
*#4130 根室市の子どもたちの学力アップの具体的な方法:「学力向上特区申請」 Nov. 23, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-22
#4128 釧路と根室管内の子どもたちの学力はなぜ低いのか? Nov. 20, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-20
#4127 学力テストは教員の力量の評価:元釧路市議会議長月田さん Nov. 17,2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-17-1
*#4119 全国学力調査の現実:根室は14支庁管内最低 Nov. 9, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-07-1
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釧路市議会は、基礎学力保障条例を制定し、子どもたちの学力アップが地域経済の活性化に寄与すると、教育問題を積極的に議会で採り上げ、釧路市教委と激しい議論を戦わせている。
その釧路市の中学校3年生の学力テストの五科目平均点は根室市内の市街化地域の3校に比べて、20点ほど高い(300点満点)。根室市内の3中学校の基礎学力はすでに崩壊しているのだ。そうした事実を、根室市長も根室教育長も根室市教委も根室市議会も経済諸団体も、だあれもとりあげない根室の不思議。
根室の子どもたちの学力をどうやって底上げしたらいいのかについては弊ブログで具体案を採り上げている。市議会文教厚生委員会がオープンな場で市民と率直な意見交換をする日が来ることを祈っている。根室の子どもたちの学力低下は、権限をもつ大人たちが少しずつ配慮し、児童・生徒の親たちがともに協力すれば、なんとでもできることなのだ。わたしの役割はデータに基づいた分析と提案をし、小さな私塾で生徒たちを教えることだけ。
<アフガンの中村哲医師>
ペシャワール会の中村哲医師がアフガニスタンで銃弾に倒れた。かれは干ばつで多数の子どもたちが不衛生な水を飲まざるをえなくて、次々に病気になって死んでいく様を見続け、井戸を数千掘り続けた。そして荒野に20㎞もの距離に灌漑用水路を建設し、その周辺を麦畑とすることで、200万人の人たちが、故郷で食べて行けるような世界を実現した。そうした努力が難民の増大を防ぎ、テロを防ぐのである。
千数百もの井戸のお陰で、衛生的な水が確保され、子どもたちの病気(赤痢など)も激減した。そういう活動を30年も続けて来られた、偉い人だと思う。アフガンの現状を人として見捨てておけなかった。写真からは柔和な表情の奥に、一人でも頑としてやりぬく、強い意志を感じた。
朝日新聞ニュースより転載
NGO「ペシャワール会」現地代表の中村哲医師(73)が4日、突然の銃弾に倒れた。苦しむ人たちに向き合い、医師の役割を超えて農業支援にも活動を広げていった中村さん。現地・アフガニスタンでも高く評価されていただけに、交流があった人たちは「なぜ」と言葉を失った。
福岡市のペシャワール会事務局で4日、記者会見した広報担当理事の福元満治さん(71)は悲痛な面持ちで「正直、信じられない。無念でしかたない。この事業は中村哲という人物でなければできなかった」と語った。
干ばつにあえぐ大地に用水路を造り、1万6500ヘクタールの農地を潤した。現地の住民は中村さんに「畏敬(いけい)の念を持っていた」という。「30年以上やって現地の信頼が一番のセキュリティーだった。(事件は)アフガンのことを思うとありえないこと」。今後の活動については、「あくまで続けるのが中村医師の遺志であると思っている」としながらも、「事業を拡大していくのはなかなか難しいのではないか」とも話した。
中村さんは「自分は好きで勝手なことをしているので、家族には迷惑をかけたくない」と周囲に話していたという。妻の尚子さんは報道陣の取材に「いつも家にいてほしかったが、本人はこの仕事にかけていた。いつもサラッと帰ってきては、またサラッと出かけていく感じでした。こういうことはいつかありうるとは思っていたが、本当に悲しいばかりです」と話した。
*井戸掘り
https://blog.goo.ne.jp/musshu-yuu/e/b3a5ea05d7ca0222c41e48c97297d30b
*#4130 根室市の子どもたちの学力アップの具体的な方法:「学力向上特区申請」 Nov. 23, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-22
#4128 釧路と根室管内の子どもたちの学力はなぜ低いのか? Nov. 20, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-20
#4127 学力テストは教員の力量の評価:元釧路市議会議長月田さん Nov. 17,2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-17-1
*#4119 全国学力調査の現実:根室は14支庁管内最低 Nov. 9, 2019
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#4138 多角形の内角の和:一般化と拡張 Dec. 4, 2019 [51. 数学のセンス]
中3の生徒が多角形の内角の和に関する問題を読んでいて、しばらく考えているようなのでそばに行くと「さっぱりわからない」とぼやいた。(笑) どうすればいいのか悩んでいたのである。
多角形の内角の和は2年生で習う。この生徒は1年生のところもわからないところがたくさんあるとつぶやいた。教科書や問題をもってきて遠慮しないで片っ端から質問したらいいのである。何をどのように質問したらいいのかわからないのだろう。たくさん質問しているうちに、質問のしかたのコツが呑み込めてくる、それも大事なことなのだ。あまりそばに行って頻繁に質問を拾うのは気をつけないといけない。自主性の芽を摘みかねない。わからないことをわからないと伝えるのは社会人になってからはとっても大事な能力なのである。
どれどれ、どういう問題なのか見てみよう。問題は次のような形で出題されていた。
n角形は( A )個の三角形に分けることができる。三角形の内角の和は180度だから、n角形の内角の和は( B )の式であらわせる。
正六角形を黒板に書いて、頂点に左回りでABCDEFと記号を振っていき、頂点AとCを線でつなぐと1つ目の三角形ができる。次いでAとDをつなぎ、AとEをつないだら、もうそれ以上三角形はつくれないことがわかる。そこで何個の三角形ができたか質問する。数えるだけだからすぐに4と答えた。正解である。
六角形⇒三角形4個
T:「では6をnとしたら、4はいくつと表せますか?」
…
S:「n-2ですか?」
T:「正解ですね、では( A )の答えは?」
S:「n-2です、そういうことか」(笑顔)
4つの三角形に分解したので、その三角形の内角それぞれに弧の記号をつけていく。全部つけ終わったところで、全体を眺めると、六角形の内角の和になっていることがわかる。
T:「三角形4個の内角の和は何度になりますか?三角形の内角の和は180度ですよ、計算してみてください」
…
S:「180×4で、720度です」
T:「4=n-2でしたから、nを使って書いた式が( B )です」
S:「(n-2)×180度ですか?」
T:「はい、それが、多角形の内角の和の公式です」
この生徒の場合は、独力で一般化ができないので、理解が深いところに届かず、問題の形が変わると、別の問題に見えてしまってできない。理解をさらに深めるために黒板に正方形を書きます。
T:「正方形の内角の和は何度ですか?」
S:「360度です」
T:「では、対角線を一本引きましょう。二つの三角形ができます、三角形ふたつの内角の和は何度?」
S:「180度×2=360度です」
正方形の内部にできた三角形の内角に弧のマークを順位つけていきます。全部つけ終わると、正方形の内角の和になることが視覚的に了解できます。
ついで、正五角形をの頂点Aから、CとDに対角線を引いて3つの三角形に分けて見せます。
まとめです。それぞれの多角形とそれを三角形に分解したときの数を並べてみます。
正方形⇒ (4,2)
正五角形⇒ (5,3)
正六角形⇒ (6,4)
正七角形⇒ (7、5)
正n角形⇒ (n、n-2)
S:「ああ、そういうことだったんだ、nの意味が分かった」
T:「そして、これは”正”をとっても同じです、長方形や平行四辺形やひし形で試してみましょう」
ここまでやって、概念の一般化と拡張の操作が理解できる。こういうことを繰り返し体験させることで、概念の「一般化」や「拡張」に慣れてくる。自分で規則性を見つけて、一般式で表すことができるようになる。2割くらいこういう教え方をしないといけない生徒がいる。
メタ認知能力とはちょっと違うように思う、たんに概念の一般化や拡張操作に慣れていないだけ。だから、こういう操作に習熟することで、理解が深まり学力が上がってくる。しかし、普通の生徒の5倍くらい手間はかかります。(笑)
この生徒は夏休みの後で入塾してきた中3の生徒です。もうすぐ高校生になります。
高校数学では座標平面上の内分と外分がベクトル座標上でも再定義されて出てきますが、それも「拡張操作」の一つです。2次関数が3次関数に拡張されます。指数関数の逆関数として対数関数が定義されます。逆関数という新し概念が出てきます。数列の一般項も「一般化」の典型的な例です。漸化式もいくつかのタイプに分けることができますから、これも一般化に入れていいでしょう。微分と積分が三角関数や指数関数、対数関数で定義されますが、これは拡張です。実数が拡張されて複素数が定義されますがこれも数の概念の拡張です。数の拡張にともなってデカルト座標が複素平面に拡張されるという風に、概念の「一般化」や「拡張」が随所に出てくるので、そうした「操作」に慣れておかないといけません。
こうした操作が自然に身についてしまう生徒が1割くらいいます。そういう生徒は分野が変わっても、新しい分野の中に前に別の分野で習った事項が透けて見えてしまう。そういう生徒にとっては同じことを繰り返しているだけだから、簡単に理解できてしまいます。生徒一人一人にこの辺の能力にはたいへんな差があります。だから小さな塾では、個別指導で教えるのがベストなのです。
多角形の内角の和は2年生で習う。この生徒は1年生のところもわからないところがたくさんあるとつぶやいた。教科書や問題をもってきて遠慮しないで片っ端から質問したらいいのである。何をどのように質問したらいいのかわからないのだろう。たくさん質問しているうちに、質問のしかたのコツが呑み込めてくる、それも大事なことなのだ。あまりそばに行って頻繁に質問を拾うのは気をつけないといけない。自主性の芽を摘みかねない。わからないことをわからないと伝えるのは社会人になってからはとっても大事な能力なのである。
どれどれ、どういう問題なのか見てみよう。問題は次のような形で出題されていた。
n角形は( A )個の三角形に分けることができる。三角形の内角の和は180度だから、n角形の内角の和は( B )の式であらわせる。
正六角形を黒板に書いて、頂点に左回りでABCDEFと記号を振っていき、頂点AとCを線でつなぐと1つ目の三角形ができる。次いでAとDをつなぎ、AとEをつないだら、もうそれ以上三角形はつくれないことがわかる。そこで何個の三角形ができたか質問する。数えるだけだからすぐに4と答えた。正解である。
六角形⇒三角形4個
T:「では6をnとしたら、4はいくつと表せますか?」
…
S:「n-2ですか?」
T:「正解ですね、では( A )の答えは?」
S:「n-2です、そういうことか」(笑顔)
4つの三角形に分解したので、その三角形の内角それぞれに弧の記号をつけていく。全部つけ終わったところで、全体を眺めると、六角形の内角の和になっていることがわかる。
T:「三角形4個の内角の和は何度になりますか?三角形の内角の和は180度ですよ、計算してみてください」
…
S:「180×4で、720度です」
T:「4=n-2でしたから、nを使って書いた式が( B )です」
S:「(n-2)×180度ですか?」
T:「はい、それが、多角形の内角の和の公式です」
この生徒の場合は、独力で一般化ができないので、理解が深いところに届かず、問題の形が変わると、別の問題に見えてしまってできない。理解をさらに深めるために黒板に正方形を書きます。
T:「正方形の内角の和は何度ですか?」
S:「360度です」
T:「では、対角線を一本引きましょう。二つの三角形ができます、三角形ふたつの内角の和は何度?」
S:「180度×2=360度です」
正方形の内部にできた三角形の内角に弧のマークを順位つけていきます。全部つけ終わると、正方形の内角の和になることが視覚的に了解できます。
ついで、正五角形をの頂点Aから、CとDに対角線を引いて3つの三角形に分けて見せます。
まとめです。それぞれの多角形とそれを三角形に分解したときの数を並べてみます。
正方形⇒ (4,2)
正五角形⇒ (5,3)
正六角形⇒ (6,4)
正七角形⇒ (7、5)
正n角形⇒ (n、n-2)
S:「ああ、そういうことだったんだ、nの意味が分かった」
T:「そして、これは”正”をとっても同じです、長方形や平行四辺形やひし形で試してみましょう」
ここまでやって、概念の一般化と拡張の操作が理解できる。こういうことを繰り返し体験させることで、概念の「一般化」や「拡張」に慣れてくる。自分で規則性を見つけて、一般式で表すことができるようになる。2割くらいこういう教え方をしないといけない生徒がいる。
メタ認知能力とはちょっと違うように思う、たんに概念の一般化や拡張操作に慣れていないだけ。だから、こういう操作に習熟することで、理解が深まり学力が上がってくる。しかし、普通の生徒の5倍くらい手間はかかります。(笑)
この生徒は夏休みの後で入塾してきた中3の生徒です。もうすぐ高校生になります。
高校数学では座標平面上の内分と外分がベクトル座標上でも再定義されて出てきますが、それも「拡張操作」の一つです。2次関数が3次関数に拡張されます。指数関数の逆関数として対数関数が定義されます。逆関数という新し概念が出てきます。数列の一般項も「一般化」の典型的な例です。漸化式もいくつかのタイプに分けることができますから、これも一般化に入れていいでしょう。微分と積分が三角関数や指数関数、対数関数で定義されますが、これは拡張です。実数が拡張されて複素数が定義されますがこれも数の概念の拡張です。数の拡張にともなってデカルト座標が複素平面に拡張されるという風に、概念の「一般化」や「拡張」が随所に出てくるので、そうした「操作」に慣れておかないといけません。
こうした操作が自然に身についてしまう生徒が1割くらいいます。そういう生徒は分野が変わっても、新しい分野の中に前に別の分野で習った事項が透けて見えてしまう。そういう生徒にとっては同じことを繰り返しているだけだから、簡単に理解できてしまいます。生徒一人一人にこの辺の能力にはたいへんな差があります。だから小さな塾では、個別指導で教えるのがベストなのです。