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#4141 Sapiens: page 13 Dec. 6, 2019 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

<最終更新情報>
12/7朝11時

 今日の授業は13頁である、質問のあった個所は2つだけだったが、ネット上の高校生や大学生の読者のために2-3蛇足を付け加える。

<13.0>  Having so recently been one of the underdogs of the savannah, we are full of fears and anxieties over our position, which makes us doubly crued and dangerous. Many histrical calamities, from deadly wars to ecological catastrophes, have resulted from this over-hasty jump.

 アンダーラインを引いたoverの意味が分からないということだった。overは「上に、覆う、越える」というのが原義だから、「われわれの地位を覆っている恐怖と不安」、つまりわたしたち人類はつい最近(40万年前)までサバンナの負け犬だったので、急激に生態系の頂点に上り詰めたことで威風堂々と頂点に君臨し続ける自信の裏付けがない、いつどうなるか恐怖と不安で覆われているということ。それがなにをもたらしているのかはwhich以下で説明されている。わたしたちが生態系の頂点にいるということから生じる恐怖と不安がわたしたちをより残忍で危険なものにしているとハラリは書いた。
 前置詞は基本イメージを抑えておこう。前置詞は運動方向や空間的な位置関係を表している。名詞とくっついたときには前置詞だが、動詞とくっつくと副詞である。前置詞と副詞は便宜的な(機能上の)区分けにすぎぬ。

<13.1>  A significant step on the way to the top was the domestication of fire.

 ついでだから、質問はなかったが、前置詞ofについても言及したい。「A of B」のときに、①Bが主語になる場合と②目的語になる場合の2通りあることに注意。
 例: ①the rise of the sun (日の出)<The sun rises>
    a statement of facts  (事実の陳述)<Somebody states facts.>

  domestication:飼いならすこと
「人類が生態系の頂点へと昇りつめる重要なステップは火を飼いならすことだった」

 ところでこの節のタイトルは<A Race of Cooks>である。「of+目的格」ととらえたら、「調理をする種族」と訳せる。ハラリの脳裏にいろいろな種族がが想定されていることは、不定冠詞 "a" が付されていることからわかる。いろいろな種族の中で日常的に火を使うのはヒト(デニソワ人、ネアンデルタール人、サピエンス)である。すると種族全体は動物ということになるだろう。"cooks"と複数になっていることにも注意したい。わたしは"with fire" を Cooksの後に付けて理解した。< A race of Cooks with fire >火を使って煮たり焼いたりするという風に。柴田訳では「調理をする動物」となっている。不定冠詞や複数形、そして"of"の用法についても文法的な吟味を十分にしている、なかなかいい訳だ。高校生や大学生にはとっては参考になる優良な翻訳である。
 ところで、土器を使って初めて穀類を煮炊き(調理)した人類は縄文人である。縄文土器は煮炊きに使われた世界最古の土器で、中国へ伝わり、そしてシルクロードを渡って中東やヨーロッパに西端まで広がっていった。NHKが特別番組を放映したのを見た記憶がある。

<13.1-1>  Not long afterwards, humans may even have started deliberately to tourch their neighbourhoods.
 
 最初の副詞句について質問があったがなんてことはない、「ほどなくして」くらいでいいのだ。こういう場つなぎの副詞句は辞書を引く前に前後関係contextを読めばおのずと適当な日本語語彙が思い浮かぶようになる。前の文章との論理的整合性を考えたら適語は自然に絞り込まれる。そのあとで辞書を引けばいい。
 "not long" 「長くない」と"after+ward"だから、おおよそ見当がつこうというもの。wardは「区画・区域」だから、「後ろのほうの区域⇒後で」、forwardとセットで覚えてしまおう。forefatherという語もでてきた。foreは「前」だから、前方に父そのまた父そのまた父とラインナップされている状態が想像できるから、「先祖」という意味は前後関係からも容易に類推できる。辞書を引くときは「接頭辞+語幹+接尾辞」から意味を類推し、さらに文脈からも意味を判断してみよう。
 それよりもtourchの訳が問題だった。名詞では「たいまつ」だが、動詞になると「火をつける」だから、「故意にdeliberately自分たちの住居の周りに火をつけ始めたかもしれない」。deliberateとdeliver(配達する)、その名詞形deliveryは似ているから注意しよう。neighbourhoodsは近隣地域という意味と隣近所の人々という意味があるが、前者である。具体例がすぐに出てくるので、確認できる。


<13.1-2>  In addition, once the fire died down, Stone Age entrepreneurs could walk through the smoking remains and harvest charcolated animals, nuts and tubers.

  entrepreneurs(アントレプレナー)はわたしには懐かしい語である。大学生の時に習った。enterpriseのもとの語で、フランス語である。企業家と訳すが、原義は「冒険」だから、「冒険者」と訳したい。"walk through"「歩いて通り抜ける」を接続詞のthoughと勘違いしたので混乱したらしい。わたしにはセットで見えるのだが、切り離して接続詞に見えたという。頭がだいぶ混乱していたようで、harvestが動詞であることも見抜けなかった。名詞の「収穫」と思い込んだのは、次のcharcolatedが動詞だからだろう。こちらのほうはanimalsを修飾する分詞形容詞である。いったん思い込んだらなかなかそれを頭の中から消すことができない。簡単な文だったのだ。頭の中に情景をイメージしながら読むと好いのだが、まだそこまで行ってないということ。

a) Stone Age entrepreneurs could walk through the smoking remains
b) Stone Age entrepreneurs could harvest charcolated animals, nuts and tubers.

 同一主語と助動詞の省略である。こんな簡単なことが頭が混乱すると見抜けない。シンプルセンテンスに分解すれば、こんなに簡単だから読み間違えたり、混乱するわけがない。まだ意味の塊を見抜いて読むレベルにはないということだ。スラッシュ・リーディングはこういう意味の塊を瞬時に見抜きながら読むということだから、このレベルのテクストの読解には英検2級くらいではとても手が届かない技である。毎日トレーニングを積んでスキルを磨けばいい。
 スラッシュ・リーディングはじつは日本語の文章の先読み技術と同じことである。それができない中学生がこの10年間で激増した。それは根室市内の中学生だけではあるまいが、毎日教えているわたしとしてはふる里の未来に危機感を覚えるくらい、子どもたちの学力低下を推し進めてしまっているように感じる。
 意味の塊を意識して英文を音読することでも先読みに慣れることができる。併用したら、相乗効果が期待できる

 remainsも動詞ではなくて名詞、「煙のくすぶっている焼け野原を歩いて通り抜ける」サピエンスが脳裏に浮かんでくるようになればしめたものだ。マル焦げになった動物もナッツ類もイモ類もご馳走だらけなのである。チャコール(こげ茶色)はチャコール・グレイ(消し炭色)などで色を表すのに使われている。

わたしたちはつい最近までサバンナの負け犬だったため、自分の位置についての恐れと不安でいっぱいで、そのためなおさら危険な存在となっている。多数の死傷者を出す戦争から生態系の大惨事に至るまで、歴史上の多くの災難は、このあまりに性急な飛躍の産物なのだ。」24頁 柴田訳

頂点への第一歩は火を手なずけたことだった。
その後まもなく、人類は故意に近隣に火を放ちさえし始めたかもしれない
しかも、いったん火がおさまれば、石器時代の才覚者たちはくすぶる焼け跡を歩き回って、うまい具合に焼きあがったう物や木の実、芋類などを収穫できた。

 さて、少しは予習してきたようだが、1/2頁ほどしか進めなかった。毎回1ページのペースでやると先週言い渡してあるから、少し焦っている様子だった。英語の力に不足を感じている、もっと力をつけたいという気持ちが現れていた。
 4月までには「2頁/90分授業」のペースにアップすると目標値を設定して、共有している。毎月16頁、高校3年教科書の1年分の分量である。そこから半年以内にブレークスルー"break through"が訪れる。一気に読み切るだろう。
 どうして札幌でやる冬季特訓教材もってこなかったか訊いてみた。ハラリをやる時間がなくなるので、それが嫌だと云った。うれしいね、モノがよく見えている。
 1ページ予習して来れば、わからなかったところだけ対話形式で授業するだけでいいから、もっとペースアップできる。予定のペースに慣れるまで、しばらくきついだろう。英語だけやっているわけではない、数学も微分積分を早く終えて数Ⅲに入りたいはず。微分積分はシリウスは問題量が多いし、難関大学の過去問が並んでいるから、後半部は手ごわい。
 よくがんばっている。いまはしんどいだろうが、2月が終わるころにはずいぶん見通しがよくなっている。

*#4140 高難易度冬季特訓英語教材で質問あり Dec. 6, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-12-06



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#4140 高難易度冬季特訓英語教材で質問あり Dec. 6, 2019 [65.a 成績上位層にかかわる問題]

 根室の高校生は冬休みに札幌で開催される大手進学塾(駿台、河合、代ゼミ)の冬季特訓を受講する者が十数人程度いるのではないか。早く申し込んだ生徒にはすでに教材が届いている。
 ある大手進学塾が札幌で開催する冬季特訓英語教材を予習している高2の生徒が、読めない英文があるので、持ってきて質問していいかと訊くので、承知した。昨日もってきたので質問箇所を聞いた。二つ長文問題があった。かれは電子辞書を引いて全文を和訳していたが、一部が訳せないと他も疑心暗鬼であやしくなるのは当然のこと。

 一つ目はアインシュタインの科学者としての知識欲と宗教的信念がテーマになっていた。the creationと書いてあったから、「天地創造」のことだが大文字になっていないので、アインシュタインの宗教がユダヤ教なのかキリスト教なのか、この文面からははっきりしない。大文字で書いていないことからキリスト教ではないなと察しはつく。この段階では、かれがユダヤ人だからユダヤ教だろうとぼかした英文から推測。

(ユダヤ教とキリスト教とイスラム教はみな同じ天地創造神を崇めている。同じ神だがそれぞれの宗教によってその名前が異なる。ユダヤ教では絶対唯一の創造主「ヤハウェ」、キリスト教では「父なる神=造物主」、イスラム教では「アッラー」である。みな天地創造の神である。『古事記』にも天地創造神が三神(アメノミナカヌシノ神、タカミムスビノ神、カミムスビノ神)が現れるが、天地を創造するとすぐに役目を終えたかのように身を隠してしまい、2度と出てこない、そして国生みの神が登場する。)

 気になったので、ネットで検索して確かめたら、アインシュタインはユダヤ教です。書き手はキリスト教徒なのでしょう、だから宗教が違うことをぼかして書いているように感じたのでしょう。


 原爆とは書いていなかったが、婉曲に原爆についてはもちろん触れられていた。「地球上の種speciesを絶滅するような兵器instrument」(speciesは単複同型)というような表現がありました。科学史についての周辺知識があればこのテーマの理解は容易です。そして論説文だから、修辞上はそれほど問題のある文はなかった。最後のほうで第五文型SVOCのOCがCOと逆順になっていたのが例外かな。Oの部分に1行を超えるような長い修飾句か修飾節がついていたから、修辞上逆順にせざるを得ないことは当然です。もちろん、高校教科書程度では(SVCOなんて並びの文は)出てきません、基本を理解するのが高校英語の範疇です。この特訓教材を作成した人は高校英語の範囲を超えたイレギュラーな英文が入っているものばかりを選んだのかな。さすが大手進学塾の最高難易度の英語特訓コース教材!


 もう一つのほうは、解せない問題だった。何かの物語から一部を採録したのだろうが、シーンについての説明がない。登場人物は二人、男と女が一人ずつだ。短い段落は、一緒に暮らしている男女がプラハからローマへ出発するところから始まっていた。男は23年間イタリアに住んでいたらしい。男の視点から一人称で物語が語られていく。いまチェコのプラハで空港にいてローマへの飛行機へ搭乗したところである。女の背景は一切不明。「再び」という語が入っているから女もイタリアに住んでいたことがあるようだが、採録された文には女がいつイタリアにいたのかは書かれていない。どこで知り合ったのかもわからないし、いつから一緒に暮らし始めたのかもそして職業も不明である。

 生徒がわからないという文章を数か所指さした。ざっと読んでもシーンの背景がさっぱりわからないし、時間軸や空間軸からの整理が情報不足で、なぞなぞを解くようなものだった。
 数行にわたるso~that構文が前半部にあった。すこし議論していたら生徒が~の部分が1行を超えていることに気がついた。"so deeply ..., ..., that, ..., ..." というようなso以下とthat節の2か所にに挿入句のはさまった特殊な構造の文である。これほど長いものは滅多に出てこない、でもこういう英文の解説をやるのが、この進学塾の最高難易度の冬季特訓コースの趣旨であるようだ。英検2級程度の英語力ではまるで歯が立たない特殊な構文が並んでいた。

 ああ、Sapiensでも、最近so~that構文で、「~」の長いものがあった、あそこでしっかり学んだから気がついたのだろう。
 進研模試の長文問題ですら、分量は3-5倍はある。こういう短い「長文」でシーンの背景説明のない英文を教材に使うと半分程度はなぞなぞになる、「英語は構文だ」なんてことを言いそうな講師かもしれぬ、いろんな人に教えを請えば自然に目が肥える。

 ハラリの”Sapiens”を読み進んだ方が英語の勉強になると思うが…というのはわたしの感想である。生徒は生徒自身の判断があるし、いま抱えている問題意識で動く。大手進学塾の冬季特訓で、根室の小さな塾でやっているふだんの英語授業のレベルがどれほどか確認してきたらいいのである。指導の角度が違うから、そこから得られるものはある。長文もさまざまなジャンルのものを読むのはよいことなのである。もっとも2000円前後でいくらでもその手の教材は市販のものがある。音読用のCDまでついている。コスパは断然いい。

 昨日は、他塾の特訓教材の質問を処理したので、今日はハラリのSapiensを読むつもりだが、あの様子だと他のトピックスがまだ数個あるだろうから質問があるはず。そういうわけで、昨日と今日と、Sapiens授業には開店休業の札が下りている。しばし道草。

 1年7か月の精読修行を経たこの生徒がいまクリアすべき課題は、Sapiens程度の人類史の専門書を読みながら速度アップすることである。意味の塊(かたまり)単位で頭からどんどん読みこなして、速度を上げることなのだ。Sapiensを読了すれば、大学生になってから医学専門書を読むのに苦労は要らない。自分の専門分野は専門用語を数千覚えてしまえば、じつに簡単なのだ。京大や東大大学院でも数冊医学専門書を読破すれば、英語は合格できる。医学部はどこへ入ってもいい、最終学歴はそこではない。

<余談:宗教と雑然とした本棚とユニークな生徒>
 ユダヤ教とキリスト教とイスラム教の神については、小室直樹の本が面白かったのでamazonから貼り付けておく。高校生や大学生そして知的好奇心の旺盛な社会人に薦めたい。

 線を引きながら読んだが、探してみたが本棚のどこかにうずもれて行方知れず。このごろそういう本が多い。帯広畜産大4年の生徒がいれば、4000冊の蔵書の中からすぐに見つけてくれる…「先生、ここにあるよ」って。あの子は本を読むスピードがとっても大きかった。中学生のころからジャンルを問わぬ濫読をしていた。ゲームの小説、東野圭吾、軽いけど分厚い哲学入門書、グリム童話の元々のバージョンのお話…そして私の本棚から片っ端から取り出して遊んでいた。学校が終わるとすぐに塾に来て9時までいるのだが、なぜか英語と数学の勉強だけは嫌いでやらなかった。いつ部活をやっていたのだろう、吹部はずいぶん練習がきついはずだが、あまり練習には参加してなかった様子。「わたし楽譜読めないから、でも聞けばわかる」とへっちゃら。ピアノは高校生になってから時間がとれなくてやめた。「風と共に去りぬ」やダーレンシャンの小説を原書で読みたいといったので付き合ったが、10ページほどでどちらも投げ出した。型にはまらない性格だったので、放っておいたら、なるようになった。バンドをいくつか掛け持ちして、ひとつはボーカルをやっている。高校時代は吹部でサックスを吹いていた(柏陵中学校でも吹部だった、14日6時半から文化会館で定期演奏会がある)。2年生になって突然写真部へ入部するとどういうわけか部長を引き受けざるを得なくなって、その年に高文連が根室で開催。なんでもこなしてしまう、そしていつの間にか仕切り屋におさまっているという不思議な生徒。書道は「学生チャンピオン」だったかな、そして絵、人物を描かせたら目力のあるセンスのいい画になる。スマホでも絵を描いていた、プロはだしの技術。とんでもなく才能に富んだ生徒。酪農と家畜をテーマに漫画作家になれば、年収1億円以上稼げるだろう。高校時代の同級生にゴルゴ13の斉藤タカオの一番弟子の神田たけしがいる、親戚でもある、付き合いはながいので、漫画家のセンスを見る目は多少はある。主人公の表情が生きている漫画は大きくヒットする。この4年間で酪農と畜産の材料が描き溜まったはず。数年仕事した後、どうするのか。化けるかな、化けずに終わるかな。まったくわからぬ(笑)

日本人のための宗教原論―あなたを宗教はどう助けてくれるのか

日本人のための宗教原論―あなたを宗教はどう助けてくれるのか

  • 作者: 小室 直樹
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2000/07/01
  • メディア: 単行本

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