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#4605 高学力の子どもが根室から出て行く事情 Aug. 21, 2021 [65.a 成績上位層にかかわる問題]

 根室には1学年当たり180-200人ほどの生徒がいる。上位5人くらいは高校生になりベネッセ全国模試で偏差値70を越えられる。都会と同じシステムで教育を受けられたらの話だ。この上位5人は北大くらいなら十分に現役合格可能な能力をもっている。だが、成績上位の者たちは根室高校への進学を避けて、釧路湖陵や札幌の進学校へ向かう傾向が強い。なぜだろう?高学力の生徒の視点から問題点を探ってみたい。

 偏差値70を超える生徒が退屈しない授業は根室では小中高を通じて、通常の授業では提供されない。授業速度も遅い。学力テストの範囲表に合わせて授業をしている先生が多いからだ。2月初旬になってもまだ終わらない。普通は12月か1月半ばには終わって、1年間の復習をやっていなければならない。西日本の先生たちと話したことがあるが、1月からは総復習をしているという。根室のスタンダードは日本標準からだいぶ外れていると思った方がよい。
 では高学力の生徒たちは難易度が低くて進捗の遅い授業時間中どうしているのだろう?
 わたしは、大学院で経済学を研究する傍ら、3年間渋谷駅前の進学教室で教えていたことがある。慶応女子(高校)や立教女学院(中学)に合格した生徒たちに授業中どうしているのか尋ねてみたことがある。
「予習方式で勉強しているし難易度の高い問題をやっているから、学校で授業中どうしているの?」
「ずっと下向いて、違うこと考えています」
 根室の高学力層の生徒たちも同じです、授業なんか聞いてやしない。速度が遅くて難易度が低い問題なんて退屈で聞いていられない、でも、ほとんどが「いい子」たちだから、じっと我慢している。ほとんど児童虐待ですよ。高学力の生徒たちにとっては学校の授業は時間のロスなのです。進学校に合格すれば、授業速度は大きいし、難易度も高い問題を授業で採り上げてくれる。退屈なんかしないですむ。都会の進学校へ行かなければ、じっと我慢の3年間を過ごさなければならない。その後に受験が待っているが、3年間レベルの低い、速度の小さい授業を受け続けたら、大学受験では圧倒的に不利になることは誰にでもわかるモノの道理です。
 一つホットなエピソードを紹介します。3月に根室高校から現役で旭川医大へ合格した生徒が、「どこの高校からきたの?」と出身校を確認し合う中で、「根室高校」と告げると、「ありえない」と数人から言われたそうです。ほとんどの生徒が関西あるいは首都圏や道内の偏差値65以上の進学校から合格しています。合格した生徒たちは偏差値45の高校から国立医大への合格が不可能であることをよく知っています。実際に東京都内の偏差値50以下の都立高校から国立医大への進学実績はゼロだと思います。国立医大を受験するには偏差値65以上の進学校を経由するのが「常識」なんです。そのクラスの高校は、道内なら、釧路湖陵理数科、帯広柏陽、札幌南、札幌旭丘、札幌光星、小樽潮陵、旭川東など。

 さて、そんな偏差値45の根室高校から難関大学へ毎年数人現役合格者を出すにはどうしたらいいのでしょう?優秀な生徒が学年5人ほどいるので、対策は案外簡単なのです。学校の先生たちが自立的な学習の邪魔しなきゃいいだけ。要求に応じてそういう生徒たち数人に放課後補習をしてあげたらもっといい。根室高校の物理と化学担当の先生お二人は、生徒二人からの放課後補習提案に週に1-2回、2か月間協力してくれました。国数英が9割(540点)取れないと、物理と化学と政経倫社が6割(180点)だと一般入試では合格できません。

①中学生なら学力テストで科目ごとに90点以上とったら、国数英理社五科目は授業を聞かなくていいことにしてもらいたい。難易度の低すぎる宿題も免除しよう。高学力の生徒は自分で学習する習慣がついているので高学力なのだ。だから、宿題なんて出す必要がない。やさしい教科書準拠問題集ではなくて自分で難易度の高い問題集にチャレンジしている。授業中にそうした問題集で自習することを認めてやったらいいのだ。
②国語の時間は文学全集やそれ以上の難易度の作品を読むことを認めたらいい。哲学や経済学や数学の専門書でもいいし、岩波新書レベルの本でもいい。好奇心の赴く分野の専門書を選択したらいい。
 わたしは高校時代に公認会計士2次試験の参考書で勉強すると同時に、その延長で経済学に興味がわいてマルクス『資本論』やヘーゲルやニーチェを読み漁った。高校生のやわらかい頭は、そういう難易度の高い本を読むことでそれ用に変わっていくもの。思索が深いところに届くようになるんです。だから他の分野でも、難易度の高い本が自然に読めるようになってしまう。思考の鋳型は中学生と高校生のときの勉強の仕方で出来上がるもののようです。思考の鋳型をつくる旬の時期が中高時代の6年間にある。旬の時期を逃してはいけません。


 さて、国数英の授業時間を自習に充てることができたら、週に10時間ぐらいは勉強時間を増やせる。
 学習は自学自習が基本だ。自律的に予習方式で学習している生徒の邪魔をする必要はない
 根室高校は数学と英語の授業は問題がなくなりました。高学力で難関大学を目指す生徒は宿題は別扱いにしてくれるように変わってます。先ほど紹介した生徒は3年間、数学と英語の授業は難易度の高い問題集やハラリの『Sapiens』を読み続け、現役で国立旭川医科大学へ合格しています。数学の教科書は「知りたいことが書いていない」とほとんど開いてすらいません。使っている問題集には教科書には紹介されないコンパクトな解法と難易度の高い問題が載ってます。高校普通科の標準的なレベルの教科書は教科書は学力の高い生徒のニーズには合わないのです。
 やり方次第で根室高校から難関大学へ現役合格者を毎年数名出せるのだから、小学校や中学校も足並みをそろえてもらいたい。弊ブログ#3941と#3942に具体的な事情は書いてあるのでそちらをご覧いただきたい。

 高学力の生徒はおおむね「よい子」が多いたまに理不尽なことには納得のいかぬ反抗的な生徒がでてきます。授業が退屈だから、難易度の高い問題集を学校にもっていって授業時間中にやっていると、「そんな難しいのをやっても、俺のテストで満点取れないだろう?」、授業を聞けと押し付ける。中学校でも同じことが起きる、そのたびに教科担当教員とバトルになる。モノの道理のわからない大人と話すのはとっても疲れると思うよ。
 放っておいてくれたらいいのだ。高学力の生徒は授業の邪魔をするわけではなく、黙々と問題集を解いているだけだから。レベルの低い内容のそして進捗速度の遅い授業は高学力の生徒たちには時間のロス以外の何物でもない札幌の進学校で勉強すれば、望み通りのハイレベルな内容の授業を受けられるのである。そういう生徒たちと大学受験を競うことになるから、授業時間のロスはできるだけ避けたいのは当然の心情だろう
 根室の学校でレベルの低い授業を受けている間に、大学受験で競い合うことになる生徒たちは受験レベルの内容の授業を受けている。根室高校にいたら、自力でそういう生徒たちに匹敵する学力をつけなければならないのだ。じゃまはしないでもらいたい
 根室にはまだ、各学年に3-5人、毎年北大以上の難易度の大学へ現役合格できる能力の子どもがいる高学力の生徒を潰さないでもらいたい
 高学力の子どもたちが、釧路湖陵や札幌の進学校へ行かずに根室高校へ進学して、希望通りの難関大学へ毎年合格できる町にするにはどうしたらいいのか、仕事を通じて自分たちに何ができるのかを問い続けてもらいたい。そうして30年後の根室の町を住みよいものにしよう
 毎年国公立医学部へ根室高校から現役合格できる生徒がいたら、学齢期の子どものいる40代の医師が市立根室病院へ赴任してくれる。20年あるいは30年間同じドクターが診察してくれる。地域医療を守れるか否かはここに住んでいる自分たちの努力次第ということ。

 「よい子」は争うのが嫌だから、文句を言わない代わりに、根室の学校を見限り、中・高から都会へ出て行くケースが多いよ偏差値45根室高校普通科へ進学したら、難関大学への現役合格はほとんど不可能となるなんて悲しい話だ全国偏差値45というのは全国レベルでは学力下位30%ということ、五段階相対評価なら「2」です
 高校統合後、入学してくる生徒の学力が下がり続けているので、普通科の授業内容はますますレベル低下を来している。20年前のレベルの授業をしたら、普通科の半数以上が赤点で留年となる。それほどひどい状態です。根室高校の先生たちはあきらめちゃって赤点(30点未満)の生徒に追試をやらない科目が増えてます。異様に難易度の低い選択科目も増えています。例えば、「基礎数学」。この科目選択した生徒は標準的な高校普通科の生徒の学力はありませんよ。3年生ではコミュニケーション英語(教科書はVIVIDⅢ)も選択科目です。

 今年は旭川医大へ現役した生徒のほかに北大理系へ2人合格しそうな生徒がいたが、わたしの眼から見たら「よい子」だったのと、小学校からの大学受験長期戦略がなかったので、希望通りにいかなかった。じつにもったいない結果になった。現役合格できる潜在的な能力は十分にあったよ。根室のシステムの中で、そして長期戦略を欠いたために願いが叶わなかっただけです。浪人できたら北大理系に合格できるのに、みんなが浪人できるわけではありませんから、「現役合格」させてやるというのは、その生徒に人生にとってはとっても大切なことなんです。
 今もそういう生徒が中学生で各学年に5人ほどいます学校の先生たちは彼ら・彼女たちの勉強の邪魔をしないでもらいたい。自立的な学習が大切であることは、先生たちが普段から生徒へ言っていることなのだから、自分の言葉に責任をもってもらいたい。

 市教委も、根室教育長も高学力層に固有なこうした問題解決に取り組んでもらいたい。いま根室市議選が行われており、明日8/22が投票日だ。新聞をみると市議候補たちの7人が石垣市政に五段階評価で5をつけているが、根室の教育行政をチェックするような姿勢がないということだろう。

 別海町はこの十数年で学力がアップしている根室の市街化地域の中学校よりも格段に学力テストの平均点が高いが、眞籠(元)教育長と青坂(元)別海中央中学校長など、教育行政と学校管理職がしっかりタッグを組んだ成果だろう。眞籠さんは地元町役場の職員だった。今は退職して、毎日畑を耕して汗を流しておられる。少年団の活動にいまもかかわっている。青坂さんは一時期厚床の校長でした。もったいないことをしました。市教委は、なぜ光洋中学校の校長にしなかったのでしょう。千葉大学教育学部卒だから大学入試は北大教育学部よりも上。学力アップという具体的な成果を上げてくれたはずです。啓雲中学校では佐藤校長が荒れていたのを大石先生となんとかしました。2010年に北海道新聞が啓雲中学校を取材した記事#1307があります。毎日火災報知器が発報するような学校でした。せっかくよくなったのですが、彼が退職して校長が変わると元の木阿弥になりました。学校マネジメントはむずかしいようですね。「中小企業はオヤジ次第」と言いますが、学校も校長のマネジメント次第で、子どもたちの学力向上ができます。
*「#1307教育再考:根室の未来 低学力④荒れる中学校
 釧路の元教育長だった角田さん(釧路の教育を考える会の会長)は80歳を過ぎたいまも子どもたちも学力問題に取り組んでおられる。釧路市役所の経済部長だった人だ。
 翻ってわが町のありさまを見ると、根室の教育長は、道庁から派遣されて任期が終わると、さっさと根室から去っている。根室へ愛着をもった人はこの十数年間一人もいなかった。こんな教育行政でも五段階評価の五をつける市議の神経がわからない。
 お一人、市政チェックの役割を果たしたいという候補がいるようだ。定員16人のところへ18人の候補者だから、たった2人落ちるだけ、当選したら、何人もの市議が根室の教育行政にモノ申してもらいたい。この18年間市議会は根室の子どもたちの学力低下問題にまったく取り組んでこなかったといってよいのではないか。教育が未来の町づくりの礎である、根室の市議たちは未来を見て仕事をしてこなかったということ。30年先を見通し、確固としたビジョンをもって市議を務めてもらいたい。今回がそんな市議が現れる市議会議員選挙になってくれたらうれしい。

*  「#4099 学力テスト総合A18校科目別データ Oct. 11, 2019
**「#4119 全国学力調査の現実:根室は14管内最低

   #3942話し合い(2):背景事情 Mar. 2, 2019
 #3941話し合い(1):学力トップ層をどう育てるか Mar. 1. 2019
 #3940進研模試の結果データ:全国平均値と根室高校平均値との比較



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