#4352 安倍総理大臣辞任②:アベノミクスの功罪 Aug. 30, 2020 [8. 時事評論]
8/28日夕方、2か月半ぶりの記者会見を開き、潰瘍性大腸炎悪化を理由に辞任発表。
新型コロナは8月になっても衰える兆しなし、なすすべもなく持病を抱えての総理大臣の仕事は限界だったのだろう、お気の毒にと思った。
ところが点滴による薬剤が効いて現在の体調に問題がないことは記者会見で本人が述べている。症状が悪化したとされる7月中旬以降も、高級レストランや料亭で会合を続けているのは説明と矛盾している。潰瘍性大腸炎が悪化したら、レストランや料亭でこってりした料理は食べられないし、脂っこいものたとえば霜降り肉のステーキを食べビールを飲んだらすぐに下痢してしばらくはトイレから出てこれない。安倍総理が7月中旬以降どこへ出かけ、誰と会食し何を食べ何を飲んでいたかは首相の動向をピックアップすればわかる。症状が悪化している潰瘍性大腸炎の患者の行動とはとても思えぬ健啖家ぶりだ。
<首相動向>
新型コロナは8月になっても衰える兆しなし、なすすべもなく持病を抱えての総理大臣の仕事は限界だったのだろう、お気の毒にと思った。
ところが点滴による薬剤が効いて現在の体調に問題がないことは記者会見で本人が述べている。症状が悪化したとされる7月中旬以降も、高級レストランや料亭で会合を続けているのは説明と矛盾している。潰瘍性大腸炎が悪化したら、レストランや料亭でこってりした料理は食べられないし、脂っこいものたとえば霜降り肉のステーキを食べビールを飲んだらすぐに下痢してしばらくはトイレから出てこれない。安倍総理が7月中旬以降どこへ出かけ、誰と会食し何を食べ何を飲んでいたかは首相の動向をピックアップすればわかる。症状が悪化している潰瘍性大腸炎の患者の行動とはとても思えぬ健啖家ぶりだ。
<首相動向>
6/19熟成肉ステーキ(アンダーズ東京)
6/20ギャピトル東京
6/22日本料理(パレスホテル東京)
6/24日本料理(料亭 たい家)
7/21フランス料理(シェ松尾)
7/22ステーキ(銀座ひらやま)
7/30ステーキ(パレスホテル東京)
8/11焼き肉(龍月園)
8/12焼き肉(下関・金鶏)
8/13焼き肉(下関・アリラン)
事実の分析からわかることは、潰瘍性大腸炎の症状が悪化したのではなく、政治的状況が悪化してどうにもならなくなって、仕事を放り投げたのだということ。側近の提案を鵜呑みして実行してきたが、無能なだけでなくセンスも悪いことがアベノマスクやGoToトラベルそして東京オリンピックではっきりした。使える者がいない、2度目の立ち往生である。どのように手じまいするかに智慧を絞ったというのが真相ではないだろうか。
完璧な嘘はつけないもの、どこかで事実と矛盾してほころびが生ずる。わがまなお坊ちゃん育ちの見栄っ張りが彼の本質である。うまくいっているうちはよいが、窮地に陥った途端に心の奥底に潜んでいる幼児性が鎌首をもたげる。森友学園に関する国有地払い下げ問題を追及されて、「わたしや妻が関係してたら議員を辞める」とまで口走ってしまったのも幼児性の現れ。窮地に陥ると自己抑制が利かなくなる。子どものころに形成された人格の本質的なものは生涯変わらないのが普通の人だろう。(まれに変わる人がいることは認めよう)
まあ、その辺はさておいて、政治経済的な状況がどうであるのか、安倍総理の関心事と経済政策を一つ一つ検討してみたい。
新型コロナで東京オリンピックは中止の可能性が大きくなった、10月には結論が出る。この件では安倍総理はお手上げ、側近に何とかできる問題ではない、もう何ともならぬ。誰かに後始末をしてもらいたいのだろう。
金融と経済政策をつぶさに見ていけば、こちらも行き詰まりを迎えていて、にっちもさっちもいかなくなって投げだしたことがわかる。「お友達」を重用したが、新型コロナ感染症後の政治経済のビジョンを描ける者が一人もいない。
こういうことを書いているから、わたしを左翼だと誤解している人がいるらしい。書いていることをちゃんと読んでもらいたい。健全な保守主義の台頭を期待して、その立場からモノを言っている。
(マルクス経済学をその根本部分、公理を析出して否定したのはいまのところ世界中でわたしだけである。新しい政治経済体制はそこにヒントがある。公理を入れ替えることで別の経済学体系が生まれる。関連のカテゴリーをいくつか設定してあるので、興味があれば左サイドバーにあるカテゴリー欄をクリックしてご覧いただきたい。『資本論』や『経済学批判要綱』を読んだことのない自称左翼や共産党幹部のみなさんもぜひご一読いただきたい。)
北方領土返還交渉について安倍総理の在任8年間がどうだったのかは、27回もプーチン大統領と会談して、ロシア憲法改正によって領土不返還が規定されて、完全に行き詰まった。これ以上、やったふりを続けるのはみじめ。
本題はアベノミクスである。立場の違いでまるで違ったものに見えてくることを明らかにしたい。
アベノミクス三本の矢とは
1.金融緩和策
2.財政政策
3.経済成長
これらは何を目的としていたのか。国民の生活が楽になり、所得が増えて、消費が増える、つまりトリクルダウンが起きることを想定していた。デフレを抑え込めば、株価が上がり、企業収益は増大し、その結果、自然に国民所得が増える、というような牧歌的な想定をしていた。経済顧問の浜田宏一氏や竹中平蔵氏の意見を鵜呑みしていたのだろう。経済学者の言うことがあてにならぬ見本のようなものだ。もっとも浜田の専門は国際金融論と50年も前のマクロ経済学である。こんなロートル学者の意見をまともに受け止める方がどうかしている。
<金利政策の行き詰まり>
異次元の金融政策はマイナス金利へ突入したまま、いまや大手都市銀行まで業績が悪化して青息吐息である。金利はもう下げようがない。新型コロナ騒ぎで、廃業する個人事業者が激増しているが、赤字国債発行で補助金をバラまくしか打つ手がないのである。
日銀総裁を白川から黒田へ変えたら3か月でデフレ脱却ができると豪語したのは、安倍総理の経済政策顧問の浜田宏一東大名誉教授だった。3か月どころか3年たっても5年たってもそうならなかった。浜田は国際金融論の専門家である。金融で実体経済が何とかなると勘違いしていた。首相官邸のだれが浜田を推挙したのか?見る目がなさすぎる。各種の政府委員を務めている竹中平蔵はパソナの会長として、電通と組んで今回の補助金のばらまきに深く関与している。その仕組みもバレバレになって批判を浴びている。国会を開けば追及される。
金利は低金利どころか、マイナス金利にまで踏み込み、これ以上下げられない。下げれば、地銀はもとより大手都市銀すら経営危機に陥る。
<幻のトリクルダウンと株価操作>
上場企業の役員の所得は大幅にアップしたし、内部留保も厚くなったのに、サラリーマンの実質所得は上がっていない、トリクルダウンは幻だった。経済界に賃上げ要請を繰り返したが、非正規雇用割合が増えているので、社員の賃上げを少しやったくらいでは全体の賃金は低下するかせいぜい横ばいだからどうにもならぬ。
「2012年を100とする指数で2018年の状況を見ると、消費者物価指数が106.60に上昇した一方、実質賃金指数は96.44に低下し、実質世帯消費動向指数は90.72まで低下していました。」
完璧な嘘はつけないもの、どこかで事実と矛盾してほころびが生ずる。わがまなお坊ちゃん育ちの見栄っ張りが彼の本質である。うまくいっているうちはよいが、窮地に陥った途端に心の奥底に潜んでいる幼児性が鎌首をもたげる。森友学園に関する国有地払い下げ問題を追及されて、「わたしや妻が関係してたら議員を辞める」とまで口走ってしまったのも幼児性の現れ。窮地に陥ると自己抑制が利かなくなる。子どものころに形成された人格の本質的なものは生涯変わらないのが普通の人だろう。(まれに変わる人がいることは認めよう)
まあ、その辺はさておいて、政治経済的な状況がどうであるのか、安倍総理の関心事と経済政策を一つ一つ検討してみたい。
新型コロナで東京オリンピックは中止の可能性が大きくなった、10月には結論が出る。この件では安倍総理はお手上げ、側近に何とかできる問題ではない、もう何ともならぬ。誰かに後始末をしてもらいたいのだろう。
金融と経済政策をつぶさに見ていけば、こちらも行き詰まりを迎えていて、にっちもさっちもいかなくなって投げだしたことがわかる。「お友達」を重用したが、新型コロナ感染症後の政治経済のビジョンを描ける者が一人もいない。
こういうことを書いているから、わたしを左翼だと誤解している人がいるらしい。書いていることをちゃんと読んでもらいたい。健全な保守主義の台頭を期待して、その立場からモノを言っている。
(マルクス経済学をその根本部分、公理を析出して否定したのはいまのところ世界中でわたしだけである。新しい政治経済体制はそこにヒントがある。公理を入れ替えることで別の経済学体系が生まれる。関連のカテゴリーをいくつか設定してあるので、興味があれば左サイドバーにあるカテゴリー欄をクリックしてご覧いただきたい。『資本論』や『経済学批判要綱』を読んだことのない自称左翼や共産党幹部のみなさんもぜひご一読いただきたい。)
北方領土返還交渉について安倍総理の在任8年間がどうだったのかは、27回もプーチン大統領と会談して、ロシア憲法改正によって領土不返還が規定されて、完全に行き詰まった。これ以上、やったふりを続けるのはみじめ。
本題はアベノミクスである。立場の違いでまるで違ったものに見えてくることを明らかにしたい。
アベノミクス三本の矢とは
1.金融緩和策
2.財政政策
3.経済成長
これらは何を目的としていたのか。国民の生活が楽になり、所得が増えて、消費が増える、つまりトリクルダウンが起きることを想定していた。デフレを抑え込めば、株価が上がり、企業収益は増大し、その結果、自然に国民所得が増える、というような牧歌的な想定をしていた。経済顧問の浜田宏一氏や竹中平蔵氏の意見を鵜呑みしていたのだろう。経済学者の言うことがあてにならぬ見本のようなものだ。もっとも浜田の専門は国際金融論と50年も前のマクロ経済学である。こんなロートル学者の意見をまともに受け止める方がどうかしている。
<金利政策の行き詰まり>
異次元の金融政策はマイナス金利へ突入したまま、いまや大手都市銀行まで業績が悪化して青息吐息である。金利はもう下げようがない。新型コロナ騒ぎで、廃業する個人事業者が激増しているが、赤字国債発行で補助金をバラまくしか打つ手がないのである。
日銀総裁を白川から黒田へ変えたら3か月でデフレ脱却ができると豪語したのは、安倍総理の経済政策顧問の浜田宏一東大名誉教授だった。3か月どころか3年たっても5年たってもそうならなかった。浜田は国際金融論の専門家である。金融で実体経済が何とかなると勘違いしていた。首相官邸のだれが浜田を推挙したのか?見る目がなさすぎる。各種の政府委員を務めている竹中平蔵はパソナの会長として、電通と組んで今回の補助金のばらまきに深く関与している。その仕組みもバレバレになって批判を浴びている。国会を開けば追及される。
金利は低金利どころか、マイナス金利にまで踏み込み、これ以上下げられない。下げれば、地銀はもとより大手都市銀すら経営危機に陥る。
<幻のトリクルダウンと株価操作>
上場企業の役員の所得は大幅にアップしたし、内部留保も厚くなったのに、サラリーマンの実質所得は上がっていない、トリクルダウンは幻だった。経済界に賃上げ要請を繰り返したが、非正規雇用割合が増えているので、社員の賃上げを少しやったくらいでは全体の賃金は低下するかせいぜい横ばいだからどうにもならぬ。
「2012年を100とする指数で2018年の状況を見ると、消費者物価指数が106.60に上昇した一方、実質賃金指数は96.44に低下し、実質世帯消費動向指数は90.72まで低下していました。」
株価は高止まりしているが、理由がある。日銀とGPIF(年金機構)が上場企業株を買いあさって値を釣り上げた。この2機関ですでに上場企業株の10%ほどを保有している。いずれ売却処分しなければいけないが、その時には暴落が起きるだろう。株高は自作自演である。GPIFが年金支払いのために保有株を売却していけば、株式市場はいずれ暴落する。日銀は数兆円の巨額評価損を出して、債務超過となる。もう時間切れが迫っている。ここでももう打つ手がない。法律を変えて日銀による国債の全額引き受けまでやっている、これは掟破りというモノだ。
<失業率の低下と上がらなかった実質所得の原因は?>
失業者が減ったのはアベノミクスの成果だとも言った。ほんとうだろうか?国勢調査資料によれば、生産年齢人口は2010年8173万人から2020年に7405万人へ767万人も減少しているから、労働市場がひっ迫しているだけだろう。2030年の推計値は6878万人、年平均575万人の減少であるから、新型コロナで個人事業者が廃業した分が労働力市場へなだれ込んでこない限り、失業率が増える心配はなさそうだ。しかし、外食産業では人件費の安いバイトが確保できなくて大量の閉店が相次いでいる。
労働力人口統計を見ると、安倍政権発足時の平成24年は5161万人、令和元年は5660万人だから500万人増えたことになる。増えた労働力人口500の中身を見ると、非正規雇用が349万人を占めている。正規雇用は2010年3345万人が令和元年に3494万人へ149万人増えただけ。これは定年延長によるものだろう。定年を60歳から65歳へ延ばし、年金受給年齢を引き上げることで、60歳以上の人たちが現職を続けたままその職にとどまり、若者の正規雇用の機会を奪ってしまっている。生活が成り立たないために結婚しない若者が増え、出生率が低下している。わたしたちはそういう社会を目指したかっただろうか?政府は出生率を上げたかったのだが、ちぐはぐで場当たり的な政策で、出生率は上がらなかった。
一方で、非正規雇用がこんなに増え、間もなく40%を超えようとしている。企業経営者にとっては、正規雇用を減らし、非正規雇用を増やせば、企業が負担する人件費を低減できる。だから、国民の実質所得は上がらない。
上場企業の役員報酬はトヨタや日産のようにいまでは一人10億円を超えるところすらある。30年前の上場企業の役員報酬は社長でも3000万円程度が普通だった。企業経営者から見るとアベノミクスは大きな効果があったと言えるだろう。
株価はGPIFという政府機関と日銀が買い占めを行い高止まりしているし、非正規雇用割合を増やして人件費を抑え込むことができた。そのおかげで内部留保はかつてないほど積みあがっている。安倍政権発足時の2012年の上場医業の内部留保は300兆円強だったが、いまでは550兆円に膨らんでいる。
普通のサラリーマンや非正規雇用で働く人たちから見たら、アベノミクスは悪夢であり、企業経営者や株主の視点に立てば、効果が大きい経済政策であった。
<ばらまき財政政策の結果>
財政政策はどうだったのか?安倍政権発足時2012年の政府債務残高は1133兆円であったが2019年末には1325兆円に膨らんでしまった。192兆円増である。今年度末にはさらに100兆円増えそうだから、合計で300兆円、これは税収5-6年分に相当する。度外れた放漫財政で歳出抑制がなされたようには見えない。新型コロナ騒ぎで、飲食店業者の廃業が増えているし、外食産業で働く非正規雇用の者たちは給与がゼロになっているところが多いのに、国会議員のボーナスを減額することも公務員のボーナスを減額することもなかった。政府の歳出増はそのまま国債増発へと直結している。使い放題と言ったら言い過ぎだろうか?
新型コロナの補助金配布を見ても、実質電通が運営するNPO法人経由で手数料が3000億円というようなデタラメな支出があたりまえになりつつある。放漫財政はこのように一部の関係者に巨額の利益をもたらし、害毒を垂れ流す。
1946年2月17日預金封鎖と新円切り換えが行われた。赤字国債を出し続けたツケが回って来てそうなった。国民の預金を没収することでツケを支払ったのである。アベノミクス2番目の財政出動が何を招くことになるか、注意して観察したらいい。
アベノミクスの災厄はまだ来ていない、いずれツケは国民に回される。財務省はもう国債返済をあきらめているようだ。
三本の矢のうち2つは、金利を下げ、国際を増やして財政出動するだけだから、日銀総裁の人事を左右できれば、総理大臣の権限でできる。事実そうした。
では最後の矢である経済成長策はどうだったのか。政府主導でやったのは原発の輸出である。輸出した原子炉で30年後に大きな事故が起きたら、勧めた日本政府の責任になりかねない。
そして肝心の原子炉メーカーの一つである東芝が原子力事業の失敗から、手を引いてしまった。会社そのものが大きなダメージを受けている。国策にうかうか乗ってしまうと、巨大企業と言えども事業リスクを膨らませて経営破綻しかねない時代なのだ。
米国ではGAFAや電気自動車のテスラが大きく伸びた。日本でそういう企業はまだ現れていない。GAFAもテスラも政府主導でできた会社ではないから、政府主導での経済成長は幻である。それができたのは1950-60年代の高度成長期である。
経済産業省出身の今井という人物が首相官邸にいて、さまざまな政策を書いているそうだ。アベノマスクは彼の提案だったと聞く。そのセンスの悪さに、正気と思えぬ。GoToトラベルも実施のタイミングが悪かった。どうしてそんな輩を重用するのか?類は友を呼ぶからか。
安倍政権下の経済成長は観光客の激増のみ。その中心は中国からの観光客の増大である。それは安倍政権の成果だろうか?たとえば、代表的な観光地である京都の町は不動産が中国資本に次々に買い占められ、古い街並みにホテルが乱立するようなことになっている。観光客がキャパ以上に増えて、公共交通機関が混雑して住民の日常生活にも支障が出ている。これが成果と言えるだろうか?適正な数にコントロールするのが課題として上がってきている。
これだけ、各分野で行き詰まれば、次に総理大臣になる人は、よほどの器の人でなければいけないが、そんな人材は与野党を問わず眺めてもいるだろうか?
ここまでこじれてしまった問題、行き詰まりを迎えた諸政策を何とかするのは本当に大変なことである。だれがやっても、1946年2月17日のような預金封鎖に始まる大破綻が既定路線化しつつある。これは人災である。
富士山噴火や首都圏直下型大地震、東南海巨大地震と津波、千島海溝を震源とする巨大地震と津波、これらの大災害と人災が重ならないことを祈るばかりだ。自然災害はいつ起きても不思議ではない、目を覚まそう、そしてできうる限りの備えを固めよう。
それまで貯めた預貯金や住むべき家がある日を境に突然失われる、そこから茫然自失の日々が始まる。そんな未来をありありと想像し、備えよ!
実際には備えようがなくて、ほとんどの国民が覚悟を決めるだけになるだろう。
<失業率の低下と上がらなかった実質所得の原因は?>
失業者が減ったのはアベノミクスの成果だとも言った。ほんとうだろうか?国勢調査資料によれば、生産年齢人口は2010年8173万人から2020年に7405万人へ767万人も減少しているから、労働市場がひっ迫しているだけだろう。2030年の推計値は6878万人、年平均575万人の減少であるから、新型コロナで個人事業者が廃業した分が労働力市場へなだれ込んでこない限り、失業率が増える心配はなさそうだ。しかし、外食産業では人件費の安いバイトが確保できなくて大量の閉店が相次いでいる。
労働力人口統計を見ると、安倍政権発足時の平成24年は5161万人、令和元年は5660万人だから500万人増えたことになる。増えた労働力人口500の中身を見ると、非正規雇用が349万人を占めている。正規雇用は2010年3345万人が令和元年に3494万人へ149万人増えただけ。これは定年延長によるものだろう。定年を60歳から65歳へ延ばし、年金受給年齢を引き上げることで、60歳以上の人たちが現職を続けたままその職にとどまり、若者の正規雇用の機会を奪ってしまっている。生活が成り立たないために結婚しない若者が増え、出生率が低下している。わたしたちはそういう社会を目指したかっただろうか?政府は出生率を上げたかったのだが、ちぐはぐで場当たり的な政策で、出生率は上がらなかった。
一方で、非正規雇用がこんなに増え、間もなく40%を超えようとしている。企業経営者にとっては、正規雇用を減らし、非正規雇用を増やせば、企業が負担する人件費を低減できる。だから、国民の実質所得は上がらない。
上場企業の役員報酬はトヨタや日産のようにいまでは一人10億円を超えるところすらある。30年前の上場企業の役員報酬は社長でも3000万円程度が普通だった。企業経営者から見るとアベノミクスは大きな効果があったと言えるだろう。
株価はGPIFという政府機関と日銀が買い占めを行い高止まりしているし、非正規雇用割合を増やして人件費を抑え込むことができた。そのおかげで内部留保はかつてないほど積みあがっている。安倍政権発足時の2012年の上場医業の内部留保は300兆円強だったが、いまでは550兆円に膨らんでいる。
普通のサラリーマンや非正規雇用で働く人たちから見たら、アベノミクスは悪夢であり、企業経営者や株主の視点に立てば、効果が大きい経済政策であった。
<ばらまき財政政策の結果>
財政政策はどうだったのか?安倍政権発足時2012年の政府債務残高は1133兆円であったが2019年末には1325兆円に膨らんでしまった。192兆円増である。今年度末にはさらに100兆円増えそうだから、合計で300兆円、これは税収5-6年分に相当する。度外れた放漫財政で歳出抑制がなされたようには見えない。新型コロナ騒ぎで、飲食店業者の廃業が増えているし、外食産業で働く非正規雇用の者たちは給与がゼロになっているところが多いのに、国会議員のボーナスを減額することも公務員のボーナスを減額することもなかった。政府の歳出増はそのまま国債増発へと直結している。使い放題と言ったら言い過ぎだろうか?
新型コロナの補助金配布を見ても、実質電通が運営するNPO法人経由で手数料が3000億円というようなデタラメな支出があたりまえになりつつある。放漫財政はこのように一部の関係者に巨額の利益をもたらし、害毒を垂れ流す。
1946年2月17日預金封鎖と新円切り換えが行われた。赤字国債を出し続けたツケが回って来てそうなった。国民の預金を没収することでツケを支払ったのである。アベノミクス2番目の財政出動が何を招くことになるか、注意して観察したらいい。
アベノミクスの災厄はまだ来ていない、いずれツケは国民に回される。財務省はもう国債返済をあきらめているようだ。
三本の矢のうち2つは、金利を下げ、国際を増やして財政出動するだけだから、日銀総裁の人事を左右できれば、総理大臣の権限でできる。事実そうした。
では最後の矢である経済成長策はどうだったのか。政府主導でやったのは原発の輸出である。輸出した原子炉で30年後に大きな事故が起きたら、勧めた日本政府の責任になりかねない。
そして肝心の原子炉メーカーの一つである東芝が原子力事業の失敗から、手を引いてしまった。会社そのものが大きなダメージを受けている。国策にうかうか乗ってしまうと、巨大企業と言えども事業リスクを膨らませて経営破綻しかねない時代なのだ。
米国ではGAFAや電気自動車のテスラが大きく伸びた。日本でそういう企業はまだ現れていない。GAFAもテスラも政府主導でできた会社ではないから、政府主導での経済成長は幻である。それができたのは1950-60年代の高度成長期である。
経済産業省出身の今井という人物が首相官邸にいて、さまざまな政策を書いているそうだ。アベノマスクは彼の提案だったと聞く。そのセンスの悪さに、正気と思えぬ。GoToトラベルも実施のタイミングが悪かった。どうしてそんな輩を重用するのか?類は友を呼ぶからか。
安倍政権下の経済成長は観光客の激増のみ。その中心は中国からの観光客の増大である。それは安倍政権の成果だろうか?たとえば、代表的な観光地である京都の町は不動産が中国資本に次々に買い占められ、古い街並みにホテルが乱立するようなことになっている。観光客がキャパ以上に増えて、公共交通機関が混雑して住民の日常生活にも支障が出ている。これが成果と言えるだろうか?適正な数にコントロールするのが課題として上がってきている。
これだけ、各分野で行き詰まれば、次に総理大臣になる人は、よほどの器の人でなければいけないが、そんな人材は与野党を問わず眺めてもいるだろうか?
ここまでこじれてしまった問題、行き詰まりを迎えた諸政策を何とかするのは本当に大変なことである。だれがやっても、1946年2月17日のような預金封鎖に始まる大破綻が既定路線化しつつある。これは人災である。
富士山噴火や首都圏直下型大地震、東南海巨大地震と津波、千島海溝を震源とする巨大地震と津波、これらの大災害と人災が重ならないことを祈るばかりだ。自然災害はいつ起きても不思議ではない、目を覚まそう、そしてできうる限りの備えを固めよう。
それまで貯めた預貯金や住むべき家がある日を境に突然失われる、そこから茫然自失の日々が始まる。そんな未来をありありと想像し、備えよ!
実際には備えようがなくて、ほとんどの国民が覚悟を決めるだけになるだろう。
<余談:領土防衛と憲法改正>
ロシアとの北方領土交渉、日韓の間で起きている竹島問題、中国が1970年代から主張しだしている尖閣諸島の領有権問題、どれをみても憲法改正の必要を感じる。このままでは尖閣諸島もなし崩しに中国の実効支配化に組み込まれてしまうだろう。こういう時は、林子平の『海国兵談』を読もう。
*「林子平 〜黒船来航の60年以上前に海防を説いた慧眼」
「三国通覧輿地路程全図」
東を上にした地図だと、ロシアや中国が太平洋へ進出する出口を日本列島全体が覆っている。ロシアや中国にとっては目の上のたん瘤の位置にある。日本の地政学的な位置を江戸時代に視覚的に表現した林子平の感覚の鋭さに驚嘆するしかない。この写真は根室印刷が複製してカレンダーとして配ったものを写した。ニムオロ塾の壁に貼ってある。歴代の根室高校北方領土研究会のメンバーが何人もこの地図を見ているはずだが、反応はさっぱりだ。もっと勉強しろ(笑)
弊ブログ「#4267北構保男さんの思い出」に掲載。
*#3953 北構コレクションの常設展示:オホーツク文化 Mar. 15, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-03-15
#2781 北方領土の地政学的な位置 Aug. 19, 2014
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2014-08-19
#2260 東西の古地図に見る日本・北海道・千島:展示会 Apr. 10, 2013
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2013-04-10
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-03-15
#2781 北方領土の地政学的な位置 Aug. 19, 2014
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2014-08-19
#2260 東西の古地図に見る日本・北海道・千島:展示会 Apr. 10, 2013
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#2264 なぜ松前藩だけが地図をつくれなかったのか? Apr. 16, 2013
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2013-04-15
2020-08-29 12:58
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