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#4157 市立病院決算:年間17億円の赤字 Dec. 29, 2019 [26. 地域医療・経済・財政]

<最終更新情報>
12/30夜6時15分 経営悪化の不等式追記 「Δ売上-Δ費用<0」

 年の瀬に当たり、昨年度の市立根室病院の赤字額がいくらになっているのか、市役所ホームページで検索してみたら、平成29年度の決算情報しかありません。平成30年度の決算は令和元年3月31日ですが、9か月たってもアップされていません。そろそろアップされるのかな?
 上場企業は決算後3か月内の決算公表を法律で義務付けられていますが、公的会計のなんとのんびりしたことよ。3か月でホームページ上にアップできるように来年は改善したらいかがでしょう?

 仕方がないので、平成29年度の「決算カード」から赤字額を計算してみます。
*決算カード
https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/material/files/group/8/H29card.pdf

 「病院事業」の2項目、「収支額」-42,247千円と「普通会計からの繰入額」1,578,029千円の合計額、1,620,076千円(16.2億円)が、平成29年度の病院事業損失額です。平成30年度も17億円前後の損失をだしているのでしょう。中標津町立病院とほぼ同じ規模の損失計上です。決算カードには病院事業の売上が書いてありません。売上とコストの両方が掲載されていなければ、実態がわかりません。株式会社ではこのような決算報告は認められません。

 『広報ねむろ1月号』10ページ目に「病院事業会計」があります。収益45.9億円、費用47.6億円、当年度損失1.6億円となっていますが、これは事実ではありません。収益の中に一般会計からの繰入金(赤字補填金)が含まれているからです。企業会計基準では売上ではない項目を売上区分に計上できません。一般会計からの繰入金は、企業会計上は損失補填の特別利益区分に計上すべき費目です。平成30年度は17億円前後の赤字です。ああ、ありました。
 当年度損失1.6億円+繰入金15.4億円=17.0億円
 平成30年度病院事業損失は17億円です

 1年前の「広報ねむろ1月号」を検索してみたら、収益46.3億円、費用46.6億円、一般会計繰入金16.3億円ですから、やはり30億円の売上があったようです。
*「広報ねむろ1月号」(2019年1月)6ページhttps://www.city.nemuro.hokkaido.jp/material/files/group/6/kouhou3001.pdf

 平成29年度の市税収入は30.6億円です。病院事業の赤字がいかに重いかわかります。
 平成29年度データを使うと、11月末現在の根室市の人口は25,171人ですから、市民一人当たり市立病院赤字額は64,370円です。4人家族だと約26万円になります。全額市民が負担しているわけではありません。国から赤字補填部分があります。

 2013年に病院の建て替えがなされました。それ以降毎年16-18億円の病院事業赤字が続いていますから、経営改善のために、管理課長職を新設しました。それで効果がないとわかると経営改善の業務委託もしました。全部お金のかかっていることです。効果ゼロでした。
 病院の決算書だけを見ていても具体的な改善策はでてきません。大雑把にいうと25億円の売上を上げるために、41-42億円コストがかかっています。国からの補助金等が10億円前後あるので、市側の実質負担へ6-7億円です。これくらいの経営改善は可能です。平成30年度の病院会計事業には費用47.6億円で損失が17.0億円ですから、病院売上が30.6億円あった計算になりますが、病院建て替え前の売上は22-25億円でした。計算上30億円の売上がなければいけませんが、ありえない数字です。売上増やして、純損失も増やしたということ、なんだかわけわかりませんね、民間会計基準の決算書に組みなおして市民へ報告してもらいたい。建て替えでスペースが広くなったので診療科目が増えたと理解したらいいのかな。常勤医は12名で増えていないから、売上が増えた分は非常勤医あるいは派遣医で賄ったということ。それなら採算が悪化するのはよくわかります。関係者のみなさんは病院経営の改善の仕方がちっともわかっていらっしゃらないということのようです。どうすればいいのか、読者のみなさんはそろそろ気がついたのではないでしょうか。
 市議のみなさん、とりわけ、文教厚生常任委員会のみなさんは、この決算データをちゃんと見ているのでしょうか?
 病院のホームページには経営指標がいくつか載っていますが、元のデータがインチキですから、「①経常収支比率」なんて何の意味もありません。経常収入に赤字補填の特別利益を入れてしまっているのですから、それを加工して経営比率を算出しても意味がないのです。平成25年から95%を超えてますから、経常収支にはなんの問題もなしとなってしまいます。17億円の年間赤字でもそうなってしまいます。公的会計基準というのは罪が深い。問題を隠ぺいしてしまうのです。だから、企業会計基準で決算を公表し、そのデータを元に各種の経営比率を計算すべきなのです。

 ところで、前々院長の荒川先生は赤字がこんなに膨らむ原因を知ってました。数年前にメールでやり取りして、原因の分析と具体案の検討を手伝ってくれました。市長や院長が早く気がついて、適切な手を打つことができたら、1年後には損失額を5億円減らせます。経営悪化の原因分析ができないために、焦って経営を悪化させるような選択をしてしまいました。「収益改善=売上増大」だと単純に思い込んでしまったようです。売上を増やしたくて、派遣医を増やしたように見えます。その結果、費用の増分の方が多かったということ。「Δ売上-Δ費用<0」という不等式が成立していたということ。「Δ売上」は売上の増加分を表し、「Δ費用」は費用の増加分を表します。売上増大が経営改善に結びつくのは不等号の向きが反対の不等式「Δ売上-Δ費用>0」が成立しているときです。こんなことは簿記を習った根室高校商業科の1年生でもわかる理屈です。でも、実際の経営になると頭が混乱してしまうみたいですね。関係者はいまだにだれも気がついていないし、それゆえ経営改善とは真逆の運営が6年間なされ続けたということ。お判りいただけましたでしょうか。


 病院の経営改善には、じつは、教育が鍵なんです。
 40歳代の医者に20年30年、根室に住み続けて診療をしてもらうには、子どもの教育が鍵なんです。そこさえクリアできたら、いくらでも医師は集められます。
 現在、常勤医は12名ですが、25名の常勤医で充実した診療内容をもった病院に生まれ変わることができます。北海道でナンバーワンの地域医療を実現してください。

 根室市の中学生の学力は根室管内で最低レベルです。今年の全国学力調査で根室管内は道内14支庁管内で最低でした。こんな根室に、学齢期の子どもを抱えたドクターが赴任してくれるはずがありません。根室にいても、医学部進学が可能だという教育環境を用意したらいいだけ。

 自前で医者を育てる必要もありますが、それに異論のある人はいないでしょう。市内で3番以内の学力の生徒は上手に育てたら医学部進学が可能です。6年間の学費と生活費を丸ごと面倒見てやったらいい。学費+生活費20万円/月額、アルバイト禁止です。
 毎年1-2人が医学部進学してくれたら、30年間で45人、根室出身の医師が誕生します

 具体的な方法は書きません。それに自力で気がつくぐらいでないと、アイデアを実際に移す際に立ちはだかるもろもろの困難を突破できないからです。具体案を思いつくのと実際にやることは次元が違います。赤字の会社を黒字経営に作り替えるときと同じです。赤字会社を高収益企業にするのはそんなにハードルの高い仕事ではありません。経験的事実です。業種を変えて数社で試しました。

 年間5億円病院事業損失を減らせたら、10年間で50億円ですよ。200億円を超えている根室市の負債を減らすことができます。いずれ400年に一度の巨大地震と20mの津波が根室市太平洋沿岸を襲います。借金をゼロにして、子どもたちや孫たちのために巨大地震時の災害復興資金を積み立てておくべきでしょう。

 令和2年の来年は、根室市の未来がよい方に代わる転換点となるといいですね。
 25年後、2040年の根室の地域医療は大丈夫です。看護学校や医学部進学の生徒たちに受験勉強を教えるだけでなく、病院経営のできる人材をしっかり育てておきます。それがわたしの役回り。
  
<忘年会>
 釧路の教育を考える会の忘年会が27日にありました。教育問題に熱心な笠井龍司道議が、道議会文教委員会の委員長に就任したという、うれしいニュースがありました。
 教員志望の学生が減少して、質の低下が危惧されています。市内すべての学校の数学授業を片っ端から参観して調査した市教委もあります。「アクティブ・ラーニング授業以前の問題だ」と驚いたようです。
(釧路市教委が校教育部の大山指導参事が釧路市内の学校を片っ端から回っていたから彼の仕事かな。)
 学級の規模はすでにほとんどが25人以下となっていますが、「30人学級実現」などというピントの外れたスローガンが教育行政では飛び交っているようです。

 道教委が提案した単位制導入による高校統廃合の失敗事例として、根室を徹底的に調査研究したらいい。中学生の学力が低下しているのはさまざまな原因がありますが、高校が統廃合で1校になったことで、中学校で学力崩壊が起きているのは事実です。
 高校入試5科目最低点を100点(300点満点)に設定するとか、高校で授業についてこれない生徒を落第させるとか、厳しい環境があれば、低学力層は遊び惚けるのをやめます。低学力の生徒だって高校へは行きたいから、厳しくすれば低学力層の大半の者たちが努力します。それでも勉強しない生徒が全体の1割程度は残るでしょう。高校へいって勉強しなければならないと思うときが来たら、もう一度勉強しなおして高校受験すればいいのです。でも、だれかが教えてやらないと、学力が低ければ独力での勉強は無理です。市内の中学校を1校に統合したら、教員に3割程度の余裕ができるので、そういう受け皿もつくれます。もちろん、道教委と相談しなければなりません。
 道内14支庁管内で学力が低い地域、根室、日高、宗谷、オホーツク、釧路管内は公立小中学校と高校の役割分担について、デザインしなおさないと子どもたちの学力低下に対応できないのです。
 勉強しなくても高校へ進学できて、勉強しなくても卒業させてくれるから、ますます勉強しないだけのことです。


*#4147 眼科受診:緑内障前期症状あり Dec. 13, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-12-13

  #4115 二度目の尿管結石 Nov. 2, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-02

 #4130 根室市の子どもたちの学力アップの具体的な方法:「学力向上特区申請」 Nov. 23, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-22



#4128 釧路と根室管内の子どもたちの学力はなぜ低いのか?
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-20


 #4123 根室の中3の数学・学力の現状とその波紋 Nov. 14, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-14

 #4122 学力テスト総合B学校別比較データ:釧路管内8校と根室管内6校  Nov. 13, 2019
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2019-11-13



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アフリカのサラリーマン

間違えです
×平成30年度の決算は令和元年3月31日
○平成30年度の決算は平成31年3月31日

荒川先生以前は経営改善努力していたのね?
根室病院は前院長から経営改善努力してないの?
それはないでしょう?
経営能力(病院)と経営監査(役所)の能力ないのか?
by アフリカのサラリーマン (2019-12-30 08:55) 

ebisu

アフリカのサラリーマンさん

五月1日から令和でしたね、3月31日はまだ平成、忘れてました。
同じことでしょ。

4行目以降は、もう一度読み直して、そのうえでご意見あれば投稿してください。

by ebisu (2019-12-30 09:50) 

ebisu

事実を書いておきます。
前々院長の荒川先生のころは、市立病院の年間赤字額は8-10億円の範囲内です。

病院建て替えのときに病院側で損益見通しを試算していましたが、赤字の最大値は12億円を超えてませんでした。ところが、建て替えを契機に赤字額は10億円を超え、12億円も超え、17億円前後に膨らんだまま。
計画とは全然違ったことになっています。

H22年9月作成の「市立根室病院事業改革プラン」の22頁の表に平成22年から27年までの、一般会計からの繰出し金予定額が載っています。9.6億円から11.9億円の範囲です。これが予定されていた年間赤字額でした。
2013年に病院建て替えがなされてから、年間赤字額は17億円に膨らみ、なすすべがありませんでした。
経営改善のために組織を新設して課長を置いたことや外部へ経営改善の業務委託をしたことが、経営努力だというなら、努力でしょう。まったく効果がありませんでした。アフリカのサラリーマンさんは民間企業の方ではなさそうです。
努力しました、結果はゼロでしたでは民間企業では仕事になっていません。結果を出せたかどうかが問われます。17億円の赤字が何億円減らせたかどうかを検証すればいいだけ。6年間結果はゼロでしょ。

経営改善の具体策が考え出せなかっただけです。考え出せたとして、次はその実行ですが、もうすこしハードルが高くなります。

市立病院の赤字補填のために、一般会計から病院事業会計への繰出し金の推移(2002年から2014年まで)を表にしたサイトがあるので、そちらを紹介します。
http://nemuro-city.jugem.jp/?cid=9

表の方はこちらにあります。
http://img-cdn.jg.jugem.jp/d64/3578401/20161003_953834.png?_ga=2.217237343.89897758.1577610532-250855478.1514731304

データに基づいてモノを言いましょう。
by ebisu (2019-12-30 10:33) 

ebisu

H22年(2010年)9月作成の「市立根室病院事業改革プラン」のURLを書くのを忘れてました。

http://www.city.nemuro.hokkaido.jp/cgi-bin/hsp/dl/kaikakupuran.pdf

補助金申請と審査のために、つじつま合わせでつくった資料でしょうね。まるで現実味がありません。
こういう仕事を平気でやる、ものごとに正面から取り組もうとせず、小手先でのごまかしをする。何年もこんな仕事の仕方をしていたら、まともな仕事ができるわけがありません。
民間会社なら、計画と実績を突き合わせますから、荒唐無稽な計画立案をした管理職は責任を問われて、外されます。降格でしょう。
根室市役所は職員が500人もいるのですから、ギリギリ大企業の規模です。誇りをもって上場企業並みの仕事しましょう。
by ebisu (2019-12-30 10:42) 

ebisu

病院建て替えがなされた2013年以降、赤字の増え方が半端ではないので、荒川先生の意見を聞いてみました。決算数値を見て、さらに診療サイドの具体的な話を聞かないと、赤字拡大の原因も適切な対策もわからないのです。
メールで200通くらいやり取りしたと思います。
やり取りしたときには、荒川先生とっくに院長やめた後でした。おやめになった事情も、おやめになった後の院内の状況も含めて議論してました。他にもドクターがお二人、ブログを見てメールをくれて、状況を把握してました。
荒川先生が院長おやりになっていたら、わたしは手をかしたでしょう。やりようがありました。
いまは、ちいさな私塾の運営で精一杯です。看護師さんや医学部進学希望の生徒たちを育てるのがわたしの仕事です。30年後の根室の地域医療を盤石なものにするために、いましばらく仕事をし続けます。(笑)

なんども書きますが、常勤医を25人集めるのは簡単です。やり方次第、担当の方、気がついてください。あなたの仕事ですよ。
by ebisu (2019-12-30 11:04) 

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