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#4158 ルノー経営危機:日産株はどうなる? Dec, 31, 2019  [8. 時事評論]

 カルロス・ゴーン氏が楽器の箱に入って国外逃亡、トルコからプライベートジェット機でレバノンへ、そんなニュースが大みそかに流れていた。日本の検察、油断だったね。かわいそうに、出し抜かれて、間抜けを絵に描いたようなもの。海千山千のゴーンを相手にしていたのを忘れてたのか。
 こんなことはどうでもいい、本題は別のところにある。日産株下落がルノーを経営危機に陥れている、それをデータで確認しようというわけ。

 ルノーがもっている日産株は18.3億株である。2018年12/28の終値が880.3円だったから、ルノーの2018年決算書上の評価額1.61兆円であった。2019年12/30の終値は636円、その時価評価額は1.16兆円。ルノーは4500億円の評価損を出すことになる。
 2107年12/29の株価は1124.50円であるから、2.06兆円だった。時系列で、日産株の時価評価額を並べると次のようになる。

 2017年12月末  1124.50円 2.06兆円
 2018年12月末  880.30円 1.61兆円(-4500億円)
 2019年12月末  636.10円 1.16兆円(-4500億円)

*http://www.ullet.com/日産自動車/大株主
https://www.bing.com/search?q=2018%E5%B9%B4%E6%9C%AB%E3%81%AE%E6%97%A5%E7%94%A3%E6%A0%AA%E3%81%AE%E4%BE%A1%E6%A0%BC&form=EDGTCT&qs=PF&cvid=0ab65562c44241cba1a297f4cb17e724&refig=5c630335cb854b11fc010860ff6b915a&cc=JP&setlang=ja-JP&plvar=0&PC=NMTS


(円ドルレートは2018年12/28に110.28/$、今年の12/30が108.84/$であるから、為替変動は無視してよい。)


 ルノーの2018年度決算は、純利益33億0200万€(4312億円)であるが、これには日産の寄与部分「親会社株主に帰属する当期純利益 3,191億円」があるから、ルノー単体では1100億円程度の利益しかない。日産が赤字転落となれば、寄与分がゼロとなる。そこへ日産株評価損4500億円の計上となるから、2019年度ルノーの赤字転落は避けようがない。3000億円を超える純損失となりそうだ。
*https://www.nissan-global.com/JP/IR/LIBRARY/FINANCIAL/2018/

 2019年度上半期、ルノーの売上高は前年度同期比6.4%減、純利益は半減している。下半期が同じでも、通期では2000億円程度、そこへ4500億円の保有日産株式評価損が加わる。
*ルノー 2018年度決算情報
https://response.jp/article/2019/02/15/319144.html

 Renault S.A(Societé Anonyme=株式会社)の2018年度損益計算書と貸借対照表
**https://jp.investing.com/equities/renault-income-statement
***https://jp.investing.com/equities/renault-balance-sheet


 日産の売上高営業利益率は1.4%まで落ち込んでいる、トヨタのそれは8%である。日産が赤字となり、1年後に株価が半分になれば、2020年度決算ではルノーはさらに5000億円を超える評価損を出すことになる
 ルノーの2018年12月31日の自己資本額は354.89億€だから、¥110.29/€で円換算すると、3.91兆円である。2019年末には6500億円ほど減って、3.26兆円となり、2020年度末にはebisuの予想では2.5兆円になりそうだ。

 日産側にとっては、株の引き取り交渉のチャンス、500円/株で半分くらい引き取って消却してしまえばいい。さて、おカネがあるかな。
 2019年3月決算貸借対照表を見たら、現預金残高は1.04兆円しかない。2018年度の売上が11.5兆円だから、運転資金はほとんどギリギリ。2018年度に有利子負債を4.27兆円減らし、投資を1.26兆円増やしているから、余裕資金を有利子負債返済と投資に回したということ。
 自社株式を購入して消却する余裕資金はゼロだからこの手(自社株購入と消却による株価アップ)は無理。有利子負債の返済という、教科書通りの経営で、効率を重視して忍び寄るリスクに気がついていなかった。日産は2018年度は利益があるのに株主資本が1.36兆円減少して、4.26兆円になった理由がわからない。
*https://jp.reuters.com/investing/quotes/balanceSheet?symbol=7201.T


 ルノーは日産株を売りたくても売れない状況にとっくになっている。売却すれば日産株が値崩れを起こして、評価損はさらに大きくなるからだ。
 ルノーは日産にこだわりすぎたために、すでに死に体である。日産株をどこかほかの自動車メーカに相対で売却せざるを得ないだろう。それができなければ、他のメーカに救済合併してもらうしかない。FCA(フィアット・クライスラー)との合併話が5月に浮上して消えたが、こういう文脈を考えると当然のことだった。日産株が4月に961円をつけてから、5月に742円に急落している、経営破綻を切り抜ける策だった、他に打つ手がなかったというのが正直なところだろう。ルノーは元はフランス国営会社であり、1996年に民営化されたが、いまだにフランス政府が19%株を保有している。フランス最大の企業である、そこが経営破綻したら、フランス経済に深刻な打撃となる。
 つぶれるかもしれない、ルノー経営陣は途方に暮れている

 カルロス・ゴーンという六でもない経営者を20年近くもトップにいただいたのは、日産の社内抗争という負の歴史の必然的な結果と思える。川又社長と労組の親玉の塩路がタッグを組んで社内抗争に明け暮れ、その後の社長石原と塩路が経営方針をめぐって争い、石原社長は塩路の追い落としに成功する。そして経営危機に陥り、金の亡者のカルロス・ゴーンの餌食となる。よくこんなに私利私欲の経営者や労組のボスが続いたものだ。世にもまれな会社である。50年も前から日産はビジネスの王道から外れっぱなし。

 ゼロ戦をつくった中島飛行機の後継会社でもあり、技術は素晴らしいものがあったのに、経営者も労組の親玉も私利私欲の我利我利亡者、わかりやすい企業だ。それをとめられなかった社員たち、なんだか現在の政治状況に似ていなくもない。
 両社で数万人単位の人員整理が始まる。生産を拡大している大手自動車メーカはほとんど存在しないから、再就職は他業種、経験のない仕事を探さねばならない。
 これからあおりを食らう、ルノーの社員と日産の社員がかわいそうだ。



 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし
 これがビジネスの王道、ビジネスはすべからくそうありたいもの。経営者は経営の腕を磨け、そして片時も取引先や従業員の繁栄を忘れてはならない、自分の繁栄はその後でいい、それもほどほどに。
 動物本能のエゴの暴走を抑えて、
 「足るを知る





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日産 独裁経営と権力抗争の末路 ―ゴーン・石原・川又・塩路の汚れた系譜

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