SSブログ

#2161 全国学力テスト根室管内版データの分析(2) :余談 Dec. 24, 2012 [64. 教育問題]

 三日ほど寒い、昨日は正午もマイナス5度だった。一昨夜さらに降り積もった雪で今年もホワイトクリスマスになった。クリスマスイブの今宵は明治公園の「ツリー」にたくさんの人が集まるだろう。団塊世代のわたしが高校生のころはあんなツリーはなかった。あったらいまはワイフとなっている彼女を誘って周りの雪が溶けるような熱々のデートをしただろう。彼女・彼氏のいる中高生たち、ロマンチックないい夜を過ごせ。

 さて、弊ブログ「#2160」で北海道教育委員会が公表した表記報告書の追加分析を試みて、北海道平均に比べて根室管内の小中学生は成績下位層が肥大化し、成績上位層の割合が半分であることがデータから読み取れた。

 成績上位層の割合が半分しかないことはきわめて深刻な現象だと言わねばならぬ。国や地方を支える人材層の割合が全道平均の半分ではいろいろな分野で支障が出るのはあきらかだろう。問題は根室管内の学力上位層の割合がなぜ全国平均の半分なのかにある

 普段学校で実施している学力テスト結果を見ていると、成績下位層の肥大化はこの数年間著しく進行しているように思う。B中学校が以前はゼロだった学力低位層が15人くらい常時いるように変わってしまっている
 地域や日本の将来にとって大きな問題になりそうなのが学力上位層の"枯渇化現象"である
 普段の学力テストで400点以上が市街化地域の3校220人で5~10人(2~5%)に減少している。3校の生徒数が300人の時には50~60人(20%弱)いたのだが、この数年間で急激に減少した。再来年くらいから、根室高校の大学進学者数が半減と進学先のレベルダウンが予測できる。大学ではなく、学力不足から就職もできず専門学校進学を余儀なくされる生徒が増えるだろう。
 昔も今も成績上位5%層はほとんどが大学進学をして根室にもどってこない。団塊世代は1学年1000人近くいたからずいぶんな数の勉強熱心だった生徒達が都会へ出て行った。全国レベルでいま成績上位層といえるのは根室市内で1学年5人前後だ。
 地方から勉強熱心な生徒達が大学目指して都会へと集まり都会の発展を支えてきたのだが、地方は人材供給力を急激に失いつつある。日本経済を支えるペリフェリ(鄙=田舎)からセンター(都会)への高学力層の人材供給パイプが高度成長期に比べると10分の1の口径になってしまっているから、人材面から考えても、日本経済がこの先、世界で枢要な地位を占め続けることはむずかしい。

 わたしは、地方における成績下位層の肥大化と成績上位層の激減という現象は、同じ事象の表裏ではないかと危惧している

 突き放した見方をしてみたい。ある一地域から高学力層を1.5世代にわたって引っこ抜いて都会へ出し続けたらどうなるかということ。思考実験だと思ってお付き合いいただきたい。
 中高生のときに一生懸命勉強して学力を上げた者は大学へ進学してからも勉強するだろう。それはほとんど習慣化されて人格の一部として生活習慣や性格的なものに勉学がプログラムされてしまう。勉学することへの関心が高いから子供ができたら、子どもの教育にも熱心になる。勉学とブカツのバランスは議論の余地もないほど当然のことと考える。家庭学習習慣の躾けも相対的に厳しいに違いない。勉強するときの姿勢や鉛筆や箸のもち方にもうるさいだろう。自分が大学を出たように子供にも大学進学を考える、そして都会には大学がたくさんあるから経済的にも進学させやすい。
 だから、都会へ出た者たちの子供と地元に残った者たちの子供を比較したら、大学進学率と進学先の学校のレベルに歴然とした差がついている。都会では三人に二人ぐらいは大学進学するが、根室からの大学進学率は概ね20~25%(56~70人)程度である
 全国レベルの話しをすると、1学年120万人に対して大学定員は66万人、6万人の定員不足が生じているから、全国平均での大学進学率は50%である。

 大学進学して都会へ出て行って都会で就職した者たちの子供と地元に残った者たちの子供の世代で大学進学率に3倍の格差があるのが現実だ
 中高生時代にブカツに熱心で勉強は苦手という者たちが多く地元に残る。それが1.5世代にわたって続けばどうなるかは分かるだろう。あらゆる分野で人材の枯渇現象が生じる。ブカツに異常に熱心な親が多いのもこうしてみると肯ける。自分が中高生時代にそうしたように子供を育てているのである。だから、家庭学習習慣のない小学生や中学生の割合も全国平均に比べて「異常に」多い

 人材枯渇現象の具体例を三つ挙げる。
 一つは市立病院の建て替えである。当初はニホロ地区その次は駒場町、そして絶対にやれないはずだった現地建て替えと場所が三転した。その上予算総額をを決めてまともにコストカットして市立病院の建て替えをやれば30億円前後でなんとかなるものを、70億円もかけてしまうテイタラクはこの方面の仕事ができる者が市役所にいないからだ。市の招聘を受けて三度も根室を訪れて病院建て替えについて講演をした病院コンサルタント・公認会計士の長隆氏は本田市議のブログや弊ブログ記事と寄せられたコメントを引用しつつ、提言を無視した病院建て替えに警告を表明していた(2009年12月6日)。あて先はもちろん長谷川俊輔根室市長。
*「市立根室病院建て替え問題への警告」(医療経営財務協会ホームページより)
 
http://www.izai.net/2009/11/post-452.html
 二つ目は根室市議会のレベルである。北海道新聞記事によれば、先日(11月26日)、議会改革のための「基本条例案」の説明会で、市議側は十数名の市民に厳しい批判を浴び、「議会は ... 佐藤敏三委員長は「今後は議会報告会を年1回以上開き、インターネットなども活用する」と釈明したが、新たにブログやホームページを開設した市議会議員は一人もいない。壺田市議と本田市議が以前からブログで情報発信しているのと共産党市議団がホームページをもっているのが例外だ。これでは市議の大半の情報リテラシー(情報活用能力)に疑問符がつく。ネットを通じて個人的な情報発信すらできないようでは市議の職務がまっとうできるとは思えぬ。市議会が市側の提案を全部承認して市政チェック機能が果たせないのは、学力不足で簿記知識がなく予算書や決算書すら読めないからではないのか。報酬をもらってやっている仕事であるから、その職をまっとうするのに必要な勉強はするべきだし、必要とされるスキル(情報リテラシー)も身につけるべきだ。
 三つ目は釧路高専に関する問題である。全国の国立高専で釧路が唯一定員割れすると同時に学力不足で授業についていけない留年や退学が激増して年間数十人単位に膨れ上がっている。釧路高専卒業者の学力評価を維持するには定員を減らすか毎年大量の留年や退学者を出すしかない。
 このように釧路高専の維持・存亡にかかわる危機的な状況が現出しているのだが、これは周辺地域の学力上位層の枯渇化現象と関連がある。昔の釧路高専受験生のような高学力層が周辺地域(根室釧路管内)から激減している。こうして釧路の町も周辺地域から集まる高学力層が激減しつつある。

 わたしは10年前にふるさと根室に戻り、釧路のポスフールを訪れたときの印象が頭を離れない。そこに集っている客層全体に東京のそれとは違う空気を感じたからである。40年ぶりに訪れた釧路はあきらかに"劣化"していた。そのときはなぜこんなにレベルが低くなったのかと驚いたが、いまようやくその理由の一端がおぼろげながらわかったような気がしている。炭鉱がなくなり、マルサンツルヤがなくなり、北大道りがシャッター街化してしまったことに象徴されるように、経済的に衰退しただけではない、根室と同じことが釧路にも起きていた。根室はまだ水産業の割合が高いから、平均的な所得を見れば根室のほうが経済的にはゆとりがあるが、知的レベルの劣化は釧路も避けようがなかったのだ。ただ、根室のように最盛期の人口に比べて半分に近くなるほど人口減少が起きていないから、釧路の町は根室ほど激しい学力上位層の流出には見舞われなかったのだろう。経済面では根室よりも苦しいが、人材面では釧路は根室よりもよほど余力を残している。


 学力上位層の枯渇化現象は同じ事象の表裏であるという假説を採用してみよう。
 1.5世代に渡って学力上位層を都会へ供給し続けたために、地元に学力上位層の供給力が急激に失われつつある(事実)。勉強が楽しくてしょうがないような性格的素因をもった遺伝子グループが大学進学して都会で就職して流出し続け、他方で学力向上に興味がない、勉強することに喜びを見出せず苦痛を感じるような遺伝的素因をもったグループが選択的に地元に残るというようなことが起きてしまったのではないだろうか(具体的事実にもとづく推論)
 この数年間の中学生の急速な学力低下にはなにかが閾値を越えたのではないかと思わせるものがある。論理よりは感覚のほうがたしかだ。
 この数年の成績下位層の急激な肥大化と並行して成績上位層の急激な減少は、ふるさと根室が維持している遺伝子プールが、四十数年間にわたり高学力層を流出させることで、学力面からみると劣化しつつある証左ではないのか?
 1.5世代で学力上位層の割合が全道平均値の半分になった。あと15年、つまり2世代続けば事態はもっとハッキリし、学力上位層の割合は四分の一になり、自分達の町を維持していく人材を自前で供給することが不可能になるような深刻な事態を迎えるのではないか。いやもうとっくにそうなっている
 釧路の人口規模(18万人)ならまだ何とかなるが、センターから距離的に離れたペリフェリである地方の人口5万人以下の小都市は学力上位層を都会へ供給し続けたことで、人材面から急速に衰退してしまうのではないだろうか?「釧路の教育を考える会」や市議の超党派議員団の基礎学力に関する研究会の動きを見れば、釧路は危機意識が高く、まだ間に合う。12月14日に全国初の「基礎学力保障条例」も市議会で承認され、これから実施される。根室にはこういう問題を担いうる人材層がそもそもないようにみえる。全国学力調査で根室管内は全道最低のレベルだが、なんとかしようという動きは市議会にもない。

 現象を結果のほうから眺めると、地方がもっていた高学力層の人材供給力が1.5世代にわたる人材流出で急激に衰えはじめたと言える。縮小再生産のサイクルにいまから有効な手が打てたとしても、試行錯誤があるからこれから3世代・百年間はアウトだろう。百年後に望みを託すために、いまやるべきことを明らかにし、いま適切な手を打とう。教育はふるさとや国家の百年の計そのものである。

 この国は高学力層の有力な培地である地方を失いつつある。根室管内の成績下位層の肥大化と成績上位層の激減はそうした全国的な傾向を象徴的に表している
 わたしの假説が正しいかどうかは、全国の5万人以下の市町村の学力テストデータを調べればわかることだ
 文部科学省だけがそのデータをもっている。国の未来にかかわる重大問題だから、調査分析すべきだ。ターゲットはハッキリしているからそれほど手間はかからぬ。5人のプロジェクトで2ヶ月あれば充分やれる。
 文部科学省がやらないなら、わたしに全国学力テストの原始データを提供してほしい。EXCELでは無理だ、ACCESSのデータベース・ファイルで処理するサイズだ。守秘義務に関する契約書に判を押すから、分析させてほしい。
 これは世のため人のための仕事だ。この国の衰退を食い止めるために、全国一斉学力テストの原データは宝の山である。データが語るところを聞くためには、分析が必要である。文科省は宝を限定公開してほしい。たとえば、都道府県教委に全国データを。47都道府県もあれば、全国データを有意義に利用して、日本全体がどのように変化しているのかを明らかにするところが出てくるだろう。


*#2160 全国学力テスト根室管内版データの分析(1) :本論  Dec. 21, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-21

にほんブログ村 地域生活(街) 北海道ブログ 根室情報へ
にほんブログ村


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 2

cccpcamera

「学力上位層の割合が半分」これは深刻ですね。学力最上位層を見たら、もっと深刻ではないかと推測します。

 成績優秀者の流出を問題とされています。群馬の田舎出身の自分のことを書くと、少年のころ、地元の進学高校に入学した者は、女子のほとんどが地元を離れています。男子は、教師・医師になったもの、地元の銀行に就職した者などが地元に戻ることもあり、1/2ぐらいがリターン組です。
 優秀な女子が地元を離れて、外からはあまり来ないので、不勉強だった母親が増え、そういう人が子育てするものだから、子供の成績は悪くなります。成績優秀な女子に魅力のない地域が衰退するのは、しかたないことです。

 ところで、全国一斉学力検査は、首都圏の中高一貫私立の多くは受験していません。このため、中位・下位の動向調査には役立っても、中学校・上位層の調査には不十分なテストです。
by cccpcamera (2012-12-26 10:18) 

ebisu

cccpcameraさんこんばんわ。

群馬県と根室ではずいぶん事情が違いますね。同学年の成績上位10%に限っていうと、根室はそのうちの95%以上が地元にもどってきません。

首都圏には有名市立の中高一貫校がたくさんありますから、公立中学校のデータは成績上位層には限定的にしか使えないことはご指摘の通りです。首都圏に限っていうと、中高一貫校へ成績上位層の半分くらいが行ってしまうのではないでしょうか。

北海道はピントが少しずれていて、小・中一貫校なんていう議論があります。何を勘違いしているのかとびっくりします。
by ebisu (2012-12-26 18:59) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0