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#2162 クリントン 州知事時代の教育改革 Dec. 26, 2012 [64. 教育問題]

 昨夜11時頃雪がやんだので、車庫前と打ちの前の歩道、そしてバス停の雪掻きした。ところが夜中に風が出て猛吹雪、庭や歩道にふきだまっていた。ブルが除雪したので道路への出口を雪の塊が70センチほどの高さで塞いでいた。朝8時頃から1時間かけて除雪をした。汗びっしょり、いい運動になった。風呂に入ってから朝ごはん、そして30分ほど床暖房のぬくもりに包まれながらぐっすり転寝(うたたね)。1時から中3年生の冬季特訓(4時間)だ。その合間を縫ってブログを書く。

 #2161を読んだ神奈川県の友人(Eさん)から、コメントが送られてきたので紹介したい。アーカンサス州知事時代のクリントンの教育改革である。州単位で独立性が強いからこそできた改革ではあるが、文部科学省が全国津々浦々まで支配している日本の弱点も比較によって明らかになる。
 そうした現状を踏まえた上で、なお日本の教育改革がどうあるべきか、またどのような改革がありうるのかを展望してみたいものだ。クリントンの教育改革をアンチテーゼとして日本の現状を相対化してみよう。

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本日のブログ読みました。
 成績下位層の肥大化と上位層の減少は数世代前の都会への流出がもたらした負の連鎖であるという指摘は、まことに興味深く拝読しました。
 
この記事を読んで、昔、クリントンがアーカンサス知事のとき強引ともいえる教育改革で実績を挙げ、一躍大統領候補として頭角を現した時のことを思い出しました。
 
知事時代のクリントンの教育改革も、その動機はこの負の連鎖を恐れてのことだったのだろうと今頃になって納得できました。 
 
アメリカには文部省に相当する官庁はないので教育は各州知事の専権事項となります。ですから、やろうと思ったときはかなり思い切った改革ができます。そうした前提があるとはいえ、日本も参考にすべき点はクリントンが教育改革の中心を教師のレベルアップに置いたことでしょう
 
クリントンは全米最下位というアーカンサスのハイスクールの生徒の学力を引き上げるために、教師のレベルアップをはかりました。ハイスクールの教員の給料を2倍にするという条件で、ヴェテラン教師も新任教師と同一の試験の受験を義務付けたのです。そして一定レベルに達しない教師は年功に関係なく、現場から外して待機処分とし、1年後の再受験か転職かを迫りました
 
当然、組合幹部は反対し、試験ボイコットを叫んで組合の団結をはかりました。ところが意外なことに、組合員たる現場の教師の多くは組合幹部の説得を斥けて試験を受けたため、組合もこの改革措置に協力せざるをえなくなったそうです。
 
もともとクリントンは現場の教師の中には組合の方針とは異なった意見を持ち、そうした人ほど子供を教えることに熱意をもっていることが多いという感触をつかんでいたから、あえて組合と対決してまでもこの措置を取ったようです
 
この結果、アーカンサスのハイスクールの学力は3年程で全米最下位から脱出し、それどころか上位にランク・インするという目覚ましい結果が生まれました。
 
もっともこれだけならアメリカの辺鄙な州の成功譚に過ぎないのですが、アメリカの場合、国土が広大なので各州の人的交流を盛んにするためにいろいろな工夫があります。
 
学生の場合は、州レベルではthe Boys State Programthe Girls State Programという制度があって、各州の学生が自分たちのリーダーを選びます。これは学生が主導するもので、大人は口出しが禁止されています。各学校でリーダーを選び、そのリーダーたちが集まってキャンプ生活をともにし、その時期の諸問題を議論しながら、その州の次世代のリーダーを選ぶのです。
 
国レベルではthe Students Nation Programという制度があります。これは各州から選出された次世代のリーダーを首都ワシントンに集めて、上院議員と同等の資格でホワイトハウス、連邦議会、各主要官庁に招待し、会議や委員会に参画させることで国政の運用とはどういうものかを実地に見聞させるのです。当然、このときも全米から集められた州代表の互選で次世代のリーダーを選びます。クリントンが大統領選挙のときにホワイトハウスでケネディ大統領と話している写真が話題を呼びましたが、それはこのプログラムでホワイトハウスに行った時のものでした。 

 
クリントンの教育改革は、意外な効果を発揮しました実はアーカンサス州代表としてワシントンに送られた生徒の全米競争力が飛躍的にアップし、クリントン以降は影が薄くなっていたアーカンサスの学生の活力が復活したのです。それとともにアーカンサス州全体の活力も盛り返しました。ローズ奨学金でオックスフォードに留学する学生も増加しました。そして、この時にできた友人関係が将来的に全米レベル、あるいは国際的なレベルのプロジェクトを担当するときに人的資源として大いに役立つのです。クリントンの大統領選挙のときもそうでした。 

 
もちろん、アメリカと日本とは教育の制度や組織が全く異なっているのでそのまま参考にするわけにはゆかないのは承知していますが、それでも大人を関与させずに学生たちに次世代のリーダーを選ばせ、さらに、国政レベルの運用を実地体験させることで、今後、どのような勉強が必要なのかを気づかせるというのは、やはり優れたシステムと言えると思います。
 日本でこれを行なうとするなら、実験的に例えば老人がのさばるだけの甲子園野球や各種全国大会を廃止して、全国の高校生や大学生の代表で組織する協会を組織し、各種全国大会の運営を任せて社会経験を積ませる等の方法は考えられますね。そうすれば否応なく、どんな勉強が必要か、社会を動かすにはどれほどのレベルに達していなければならないかを身につまされて知ることにもなるので、勉強は他人から押し付けられてするものではないということを自然と学ぶようになるでしょう
 今、学校の勉強と社会が必要とする知のレベルとの差が離れすぎているにもかかわらず、その溝は放置されたままで、お互いに知らん顔を決め込んでいるというのが現状ですが、人口減少は間違いなく今後の趨勢なのですから、この溝をうめるための方法と努力は大いに検討されてしかるべき課題のように思います。

 ブレアの教育改革も旧労働党をつぶして新労働党に再生させ、ひいてはイギリスをふたたび活性化させた功績があって、参考すべきものだと思います。

 
20年も昔のことを記憶を頼りに書いているので、細部に記憶違いがあるかも知れません。詳細については分厚くて恐縮ですが、クリントン回想録『マイライフ』上巻の真ん中あたりで触れてあったので参照してください。

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マイライフ クリントンの回想 MY LIFE by Bill Clinton 上

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  • 作者: ビル・クリントン
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2004/09/10
  • メディア: 単行本
マイライフ クリントンの回想 MY LIFE by Bill Clinton 下

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*#2160 全国学力テスト根室管内版データの分析(1) :本論  Dec. 21, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-21

*#2161 全国学力テスト根室管内版データの分析(2) :余談 Dec. 24, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-24

【あとがき】12月28日追記
 東京で学ぶ意味はおそらくこういうことにもあるのだろう。全国から異色な才能と強烈なエネルギーをもった人材が集まってくるから、そういう人たちとの人的なネットワークを築くことができる。類は友を呼ぶ、首都圏は日本の人口の30%を集めた大きな人材のプールなのである。札幌と比較したらそのサイズの大きさが分かる。総人口比では15倍だが、学生の数でいうと30倍を超えているだろう。切磋琢磨にはよい場所だ。

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