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#1616 米国経済悪化による円高とNYダウ512ドル暴落  Aug. 5, 2011 [95.増え続ける国債残高]

 米国がデフォルトを起こす寸前までいって、事なきを得た。国債発行枠拡大法案が議会を通ったが経済の悪化は出口が見えぬ。

「オバマ米大統領は二日、債務不履行(デフォルト)を回避するため、債務上限を二兆一千億ドル(約百六十二兆円)引き上げる財政健全化法案に署名し同法が成立した。これにより米政府は新たに四千億ドルの国債発行枠を確保。発行額は今秋から順次拡大され、来年十一月の大統領選終了までの資金調達にめどをつけた。 」8月3日東京新聞より
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2011080302000177.html

 今後十年間で1兆ドルの財政赤字削減を条件とする法案だから、歳出削減のためにイラクやアフガンからの撤退を余儀なくされる。民間企業からの雇用兵が多いから高給で雇われていた彼らの失業は国内経済へのダメージが小さくないだろう。消費需要は減退する。

 ニューヨーク証券取引所では昨日(4日)ダウが512.76$下げ11,383.68$に急落。2008年12月のリーマンショック以来の下げ幅である。東京証券取引所でも前場が始まってすぐに日経平均が一時400円下げた。
 財務相と日銀は円買い介入を実施して、2円の円安で79.43円/$となっているが、ドル売り円買い圧力が強くなるだろう。

  日銀は4日慌てて追加緩和策10兆円を公表したが、銀行から国債を買い取ることで資金を供給してもその資金は再度長期国債購入へと向かうか円キャリートレードによって国際投機筋に使われるだけでありほとんど意味がないことは2010年9月の金融緩和策で実証済みである。
 にもかかわらず、またも"金融緩和策"を打ち出したのは単なるパフォーマンスで、有効な策がないことを吐露しているようにみえる。国内に銀行が融資枠を拡大できるような優良な資金需要はほとんど見当たらぬ。

*「日銀が追加緩和 資金買い取り基金10兆円増の50兆円に
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819591E2E6E2E39D8DE2E6E2EAE0E2E3E39F9FEAE2E2E2;at=ALL

 外国為替市場へ介入し円売りドル買いすれば手持ちのドルが増えるが、円高が進めばその手持ちの$資金に帳簿上為替差損が発生する。1兆ドルにも膨らんでいるドル債権(米国財務省証券)の購入平均為替レートは120円/$といわれているから、外為特別会計にはすでに40兆円近い為替差損が生じており、剰余金と相殺すると20兆円近い債務超過になっている。外為会計に埋蔵金はないのである。どういうわけかマスコミはこの事実を報道しない。実は外為特別会計の会計基準にインチキがある。為替差損を損失処理していないのであり、こんなインチキ処理をやっている国は先進国では日本くらいなものだろう。きちんと処理したら国民も国会議員も外為特別会計残高を縮小しろと騒ぐに決まっている。そうしたら、輸出産業のために円安誘導ができなくなるのである。日本政府は民主党政権になっても、輸出産業を守るために数十兆円単位の為替差損を平気で垂れ流しているのだ。米国財務省証券が満期を迎えたとき、為替差損は処理せざるを得なくなるのだが、買い替えという手段で問題の先延ばしをするのだろう。姑息だ、次世代へのツケ回しはやるべきではない。われわれの世代の損失はわれわれが負担・処理すべきだ。正直に・誠実に仕事をするのが一番よいのだ。
(私見であるが、30年もち続ければ日本経済の衰退により超円安が生じ、宝の山に変わる可能性大だから、為替差損はほうっておいてよい。)

*「外為特別会計の資産・負債の推移」
http://www.cao.go.jp/sasshin/shiwake3/details/pdf/1030/haifushiryo/A20-02.pdf


 これから10年間の為替変動について興味がおありの方はを#346「これから10年間の日本経済のシナリオお読みいただきたい。
 これを書いた当時の為替相場は100.58円/$であった。このときに今後十年の前半に50~80円/$の円高があると"予言"した。その通りの展開である。10年後の後半部分で為替相場がどうなるか知りたくはないだろうか?

 武田邦彦教授が円高について面白い解説をしているので、紹介しておきたい。
「円高で「庶民の懐」はどうなるか?」
http://takedanet.com/2011/08/post_5ef7.html


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*#1488 「経済成長論の終焉(補遺):4基同時の福島第一原発事故」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-04-26

#1254 経済成長論の終焉 Oct.24, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-24-1

*#1482 「東北大震災とパラダイムシフト:良寛をめぐって」 Apr. 22, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-04-21


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 #346 「これから10年間の日本経済のシナリオ [経済学ノート]」 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-10-10

 #1148 「馬場宏二 過剰富裕化論」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-05-2

 #1158 「過剰富裕化論(2):過剰富裕化とは何か」 Aug. 12, 2010
  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-12

 #1162 「過剰富裕化論(3): 経済学部を目指す高校生へ」 Aug. 16, 2010 
  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-16

 #1164 「過剰富裕化論(4):人類史上最短労働時間の社会への道」 Aug. 18, 2010 
  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-18

  #1165 「過剰富裕化論(5):節度ある明るい未来」 Aug. 19, 2010
  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-19 

 #1182 民主党代表選挙と国家財政の現状:過剰富裕化論  Sunday, Aug. 29, 2010 
  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-29

 #1185 日銀金融緩和策公表も効果なし:資金の過剰富裕化は何をもたらすのか  Sep. 1, 2010
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-09-01

 #484「国民の95%が幸せ…屈託のない笑顔」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-01-11-1

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Fortia Spes

国内輸出企業は為替変動への対策として現地生産(または現地生産委託)比率を高めていくしかないでしょうね。今期の営業利益見通しでソニーは現地生産委託へのシフトにより為替変動リスクがゼロになる見通しとの発表がありました。今後主要輸出企業にとっては為替変動リスクは限りなくゼロになっていくのではないでしょうか。

それよりも今後国内企業にとってもっとも恐れるべきリスクは資源争奪による原材料費やエネルギーコストの増大ですから、リンク先の武田先生の論には私も賛成です。変動費を抑えて限界利益率を向上させるためには円が強くなければなりません。

海外生産(または生産委託)へのシフトは国内の働き手が失われていくという見方もありますが、付加価値が上げられないような仕事はどんどん人件費の安い国へシフトしていくという流れはもはや止められません。

H21年に成立した海外外国子会社配当益金不参入制度のように、日本企業が海外で稼いだマネーを国内へどんどん還流させるような税制改正等の仕組み作りを国家戦略として行うべきだと思います(今は色々と叩かれている経済産業省も良い仕事はきちんとしています)。

そして、国内へ還流してきたマネーは研究開発投資や設備投資、人材育成など、知的財産や付加価値を高める仕事や教育へと国内消費してもらうように、それらを促進させるような優遇措置等を考えることが必要だと思います。これからの時代で日本が生き残っていくためのキーワードは、モノの輸出ではなく知の輸出であると思います。

為替介入は所詮は対処療法に過ぎないので、抜本的な対策とビジョンを国家戦略として描いて、時の経済状況に決して右往左往せずに、描いたビジョンを着実に具現化していくという姿勢で臨まなければ日本は疲弊して終わりです。
by Fortia Spes (2011-08-06 06:40) 

ebisu

Fortia Spes さんへ

輸出産業が為替変動リスクをゼロにするような企業行動をとるという説は肯けますね。
わたしも輸入商社の企業参謀をしてい80年代初頭にそういう仕組みをつくり、為替変動から企業業績を切り離しました。

円が強くなれば限界利益率が上がるというのはその通りだと思います。
わたくしは2008年に50円~80円/$の円高の時期の後に日本経済がエネルギーを失い200円/$を越す円安の時期が10年以内に来ると書いたのですが、円安になったときの国内経済への打撃は計り知れません。北海道では冬の暖房費が3倍以上になることを意味します。食糧の値上がりを考えてもその影響はぞっとさせるものがあります。雇用形態が変わっていますから、このままでは悲惨な状況を招来することになるでしょう。

生産の海外シフトはわたしはある部分は止められると考えたいのです。リカードは比較生産費説を国際市場に拡大しましたが、そういう世界ではない経済社会が日本なら成立するかもしれないと考えています。
キーは"信用""信頼性の高さ"です。たとえば日本製なら値段が2倍でも受け入れようというように、消費者行動に変化を起こさせる仕掛けが何かありそうな気がしています。

税制は改革は人の行動に直接影響するのでインセンティブとして国家戦略上の重要性があると私も思います。問題はそういうことを意識して税制改革ができるかということですが、この分野は官僚の仕事でしょう。
利権と関係のない分野ならば官僚はいい仕事をするのかもしれません。利権が絡むともう小学生以下の仕事になってしまう。資源エネルギー庁や原子力安全保安院がその典型でしょう。

最後の「抜本的な政策とビジョン」が問題ですね。過剰富裕化論のように価値観の転換を伴う選択肢がありますが、それを受け入れる素地の部分が壊れかかっているようにみえます。
by ebisu (2011-08-06 10:23) 

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