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藤田まこといい俳優だった #911 Feb.18, 2010 [A8. つれづれなるままに…]

 私が最初に記憶にあるのは、白木実ると一緒の「てなもんや三度笠」である。コメディアンとしてだ。それが、「必殺仕事人」で中村主水役の渋い演技派に変わった。そして「はぐれ刑事純情派」で人情味溢れる刑事役を演じた。シリーズものでつい最近まで朝10時からの再放送を楽しんでいた。人情が台詞からにじみ出る稀有な役者だった。

 最近新しく「はぐれ刑事純情派」を撮ったものをみたが、やつれていた。「仕置き人」の新しいほうも同じだった。2008年に癌で入院してから2年たっていたが、病気で無理を押している感じだった。急に老け、やつれて、どちらの役も合わない。そういう状態になったのを見計らっていたかのように天は彼を召し上げた。

 もともと形態模写の人だという。調べたら動作や声を真似る寄席芸とある。コメディアンへの転進はその後のことだったのだろう。藤山甘美もそうだが喜劇役者は人情モノを演じさせると巧い。絶妙な味が出る。「てなもんや三度笠」が終わった後、歌手へ転進し、キャバレー回りをしてしばらく不遇の時代が続いたという。演技に味があるのはそういう時代に磨きがかかったからだろう。不遇の時代に自分を磨くものは偉い。
 お兄さんを沖縄戦で亡くして、60年後にオニギリをもって沖縄の地を踏んだという。60年間行けなかった。テレビのインタビューに答えたときにポケットからお兄さんからの最後の葉書を取り出して見せた。その末尾に「さようなら」と書いてあった。大切そうにビニール袋に入れていつも持ち歩いていた。

 つい先ごろ森繁久弥、そしていい俳優がまた一人逝った。
 味のあるシリーズをありがとう。
 
 合掌。


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