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小学生の語彙力  #877 Jan.24, 2010 [62. 授業風景]

 5年生が問題集を忘れてきたので、『言葉力ドリル実践編』「21」をやらせてみた。次の問題がひとつしか正解できなかった。言葉を知らない、根室の平均的な生徒はこの程度の語彙力だろう。
 自宅で勉強する習慣のない生徒が半数以上を占めており、母親が読書に関与するのは児童書までで、それ以降子どもたちは読書習慣がなくなってしまう。
 さて、問題をみていただこう。

次の①~⑦の文の( )に当てはまる言葉をあとの語群から選び、その漢字の読みをひらがなで書き入れましょう。
① つるには群れをつくる(  )がある。
② しょうゆは多くの料理に使える(  )な調味料だ。
③ 犯人の(  )をつきとめる。
④ この話しは(  )として大いに役立つ。
⑤ ごみをきちんと(  )する。
⑥ とんどもない(  )におちいる。
⑦ 政治家の(  )があばかれる。

 < 重宝 不正 完成 事態 習性 格別 所在 教訓 思案 始末 >

 生徒は重宝の「ちょう」という読みを知らなかった。自分の語彙となっていないものは使えないから、読めない漢字は文章の中に入れられない。つまり最初からつまづいてしまい「先生、わからない」「なにが?」ここから生徒とのコミュニケーションが始まった。
 「きちょうひんって知っているか?」
 「知ってるよ」
 「意味は何だろう?」
 「大事なものっていうことでしょう」
 「そうだよ、こう書くんだ、「貴重品」ってね」
 「え、「ちょう」って読むの?」
 「だから、最初の熟語は「ちょうほう」って読む、聞いたことないかい?」
 「ないよ」
 「「ちょう」「じゅう」「おもい」とも読むね。大事なものや大事なことっていう意味だ」

 中1で500点満点で400点近くとっている生徒でも、半分しかできない者がいると思う。言葉自体もそうだが、用例を知らない生徒が多い。小学生や中学生の日常会話で出てくる語彙ではないから、本を読んでいなければ、こういう語彙群には出遭わない。

 そういえば、今週「音読み訓読みの区別がつかない、どうしたらいいの先生?」と質問した生徒がいたが、あれは6年生だっただろうか、中学生だったろうか?訓は振り仮名を振るとそれだけで日本語としての意味のある言葉になるからそれで区別すればいい、音読みはそれだけでは意味のある言葉にならないよと例を10個余り挙げて説明したら、なんとか区別がつくようになった。言語は割り切れない部分が必ず残るから、大筋、原理・原則を示し、いくつかの例外も説明すればいい。グレーゾーンのあることが「味」だ。いろいろな分野に黒白のつかないものがたくさんあることを知ることも大人へのステップである。そういうなかで黒白の分け方や使い方を誤らないために、センスを磨く。学ぶ側と教える側の対話しだいで、内容はいくらでも広がる。だから、わたしは授業で生徒との直接対話を重視している。
 子どもたちの日本語力が危ない、4月から小学校で英語教育が始まるという。日本語力をこれ以上衰退させたら子どもたちの学力はどうなるのだろう?3年生までは社会や理科をやる必要はない。国語と算数の時間を2倍にすべきだ。

 インターネットでもパソコンを使ったネット教材が氾濫しているが極めて単純な理由でニムオロ塾では使わない。生徒と授業を通じた対話ができないからだ。パソコンに限らず「プログラム学習法」には一定の効果があるのは事実である。わたしは30年ほど前にある会社で統合システム開発をしていた。仕事に必要でシステム関係の専門書を読み漁っていた時期である。仕事のスケジュール管理をするためにPERT(Program Evaluation and Rview Technique)に関する専門書も数冊読んだ。分厚い専門書を読んだあとで薄い「プログラム学習法」に基づくテキストを読んだが、実に効率的なトレーニング書だった。だからそのよさもすこしは知っている。購入してから程なく絶版になったのが残念だ。何部かコピーして数人にあげたことがある。インターネットを通じたパソコン学習は単に有名講師の授業ビデオだけのお粗末なものもあるが、数は少ないがプログラム学習法を取り入れたものがあるかもしれない。30年以上も前からある「プログラム学習法」はテクニックの修得には実にすぐれたツールだが、それ以上でも以下でもない。コミュニケーションの苦手な子どもたちには危険なツールと言うほかはないので、よくよく自分の子供を見極めて与えたほうがよい。社会人となってから深刻な副作用がでるからだ。コミュニケーション障害を抱えたら人が社会人としてやっていくのはたいへんなことで、うつ病になりやすい。そうした例をいくつかの企業でみてきた。生徒とのコミュニケーションを重視するのはこうした経験に基づく。自分の生徒をそういう大人にしたくないからだ。
 話しを元に戻すと、生徒はどんな角度から質問してくるかわからない。大人が気づかない発想や疑問に驚かされることがある。

 小学生高学年から中学生にかけておしゃまな女子は恋愛小説を読みふける。その先に他のジャンルへも興味を広げてくれればいいが、大人の本への橋渡しがない。ルビを振った本が稀なことも大人の本への飛躍を妨げている。出版社は子どもたちが大人の本を読めるように是非ともルビを振った本を数多く出版してほしい。

 ニムオロ塾では中学生の英語の時間を延長して、読書指導をしている。1年生は『読書力』斉藤孝著(岩波新書)、2年生は『国家の品格』藤原正彦著()、3年生は『風姿花伝』世阿弥著林望訳()をそれぞれ音読し、三色ボールペンで線を引く。
 国語の点数が悪い者は出てくる感じの書き取りもさせる。日常会話では使われない、生きた語彙を増やすことが読書指導の目的だからだ。家で音読を繰り返し、日本人としての語感を磨くことも大切な目標である。

 ゲームやケイタイのメールに時間を費やす前に、家に帰ったらまっさきに30分は勉強させよう。他のことはそれからである。
 小学校に入学したら、学校から帰ってきたら、足し算や引き算の問題を紙に書いてやらせよう。市販の教材よりも最初のうちは、母親が手で書いた問題の方がいい。そして、大きなまるをつけてあげよう。漢字の書き取りトレーニングや、その漢字を使った短文作成は日本語能力を高めるのに効果が大きい。算数と併用してやってみよう。こどもは勉強が楽しいものだと体験することになる。
 中学生になってから、家庭学習習慣を育むのは困難を極める。6年間家庭学習をしなかった生徒が、生活習慣を切り換えることはたいへん困難なことだからだ。タバコやお酒を考えたらわかる。大人だって生活習慣を変えるには強い意志の力がいる。
 小学校に入ったらすぐに家庭学習習慣をつけるべきだ。それが親の果たすべき義務だ。しつけは家庭学習も含めて家庭でやる。学校でも塾でもない、躾はの基本は家庭であり、親の仕事だ。

 ちなみに、ニムオロ塾では教室へ入ってきたときに「こんにちわ」「こんばんわ」、出て行くときには「さようなら」「ありがとうございました」「ありがとうございます」と挨拶することになっている。これはしつけではない、「おしつけ」である。
 「おしつけ」て挨拶のできない子はひとりもいない。家庭学習も同じことだ。小学校へ入学したらすぐに親がしつけるべきだ。がんばれ、根室の小学生の親たち!
 勉強のできる子どもは小学生に入学した2年間に親がその土台を造る。いちばん大事なことは家庭の躾である。

読書力 (岩波新書)

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