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産婦人科医 来月の派遣中止 [26. 地域医療・経済・財政]

  2,008年3月28日   ebisu-blog#151 
  総閲覧数: 8722/122 days (3月28日10時00分) 

 残念なニュースが流れた。3月27日、北海道新聞朝刊・根室地域版より転載

 産婦人科医 来月の派遣中止
  非常勤医の診療を継続
 【根室市は26日、国の「緊急臨時的医師派遣システム」で、4月から市立根室病院に赴任する予定だった産婦人科医の派遣が中止になったと発表した。診療の応援体制などで意思との条件が折り合わなかったという。4月からの常勤医数も新年度予算で想定した15人に届かず、現行と同じ11人でスタートを切ることが固まった。(仁科裕章)

 同病院への産婦人科医派遣は昨年10月、厚生労働省の「地域医療支援中央会議」で決定。同会議が設置した「ドクタープール」から、神奈川県の医師を半年間派遣する予定だった。だが、この医師が現在、道外の離島の病院で月に1週間実施している診察応援の継続などを条件提示したため、調整が難航。国、同と支援体制を協議したが、条件に応じることができず、断念したという。
 4月以降の産婦人科の診療体制は、釧路赤十字病院の非常勤医による週2回の診察を継続。2006年9月から休止している入院・分娩は再開できない。島谷満病院事務長は「残念だが常勤医が1週間不在になる体制はリスクが大きい。引き続き、産婦人科医の招聘活動に取り組む」と話す。
 また、、26日発表の市人事では、常勤医を内科6人、外科2人、小児科1人、泌尿器科1人、眼科1人の11人体制で発令。石垣雅敏副市長は「現在も調整中だが、4月1日での増員は難しい」という。
 病院事務局には経営推進課を新設し経営改革を進めるが、産婦人科に加え、整形外科なども常勤医不在の状態が続けば、赤字解消を掲げた新年度予算が今対から崩れる恐れがある。

《コメント》
 コメントすべきことは三つ。①判断の誤り、②新年度予算との関係、③経営推進課の役割である。
 根室は医者から見るとまぎれもない僻地である。こちらの希望条件どおりの医師が来てくれれば良いが、なかなかそうはいかない。報酬で報いたり、どこかで報いるところがないと医師確保は難しい。この医師の場合は離島での1週間の診察継続であったわけだ。
 たしかに入院患者を抱えたら、1週間の医師不在は大きなリスクとなるが、産婦人科学会は常勤医2名での診療を求めている。だから、とりあえず、この医師を確保して、それから産婦人科学会指針通り、もう1名の医師を確保しないと、正常な体制での入院患者の受け入れができない。2段階で医師確保を考えないと、分娩の受け入れはできないと考えるのが普通の感覚である。
 島谷事務長と石垣副市長は何か勘違いしているのではないだろうか。医師一人に入院患者を任せるつもりなのだろうか。それはリスクが大きすぎて無理だろう。
 
 二つ目は、新年度予算である。11人体制が続く場合には病院事業会計の赤字が膨らむ。3月16日付のブログ『医師11人体制なら4億円の(追加)赤字』にも書いた。4億円は市側の計算だが、予算で6.1億円の繰入を見ているから合計10.1億円となる。この金額自体、他の同規模の自治体と比較しても異常に大きい。
 元々、常勤医15名体制を予算前提としたこと自体がおかしい。市長は市議会で「調整中」だから内容は話せないと答弁したが、産婦人科医の件以外何も出てこない。その場しのぎの言い逃れ答弁であったようだ。助役時代の病院移転場所(ニホロ)選定過程に関する説明会での答弁を思い出してしまう。他でどうであるかは知らないが、病院に関してはその場しのぎの無責任な答弁が多い。本当は、お人柄は誠実だが、立場上仕方なく言い逃れの答弁に終始しているのかもしれない。
 平成19年度の着地見込を元に11人体制で計算してみると、売上高21.5億円、営業費用32.5億円、営業外費用0.8億円で、経常損失は11.8億円である。予算外の赤字が5.7億円でることになる。それは赤字特例債の発行条件に抵触する。
 10億円以上の赤字が3年続いているのに、6.1億円しか一般会計からの繰入予算を組まないことがおかしい。当初から非現実的な予算案であるのに、市議会は予算案を可決してしまった。そして危惧したとおりの状況になっている。

 財務課の事情はこうだろう。一般会計が5億円の赤字予算となるから11億円の繰入予算が組めない、そこで赤字の幅が6億円になるように15人体制を逆算して予算案を作った。つまり数字の辻褄合わせに終始した。その一方で平成20年度も根本的な対策が等閑視されてしまった。そこが一番困る。病気なのに治療せずにほうっておくようなものだ。病気は次第に重くなっている。
  さて、もうすぐ4月である。市長の言っていた常勤医師15名体制は「調整中だから言えない」という市議会での答弁がその場しのぎの発言であったかどうかが判明する。

 三つ目の論点は経営推進課である。病院内に経営推進課を新設するとあるが、何をやるのだろう。医師とコメディカル・スタッフと事務職員とを同じ目標に向かって協調させなければ経営改革はできない。経営スキルと医療に関わる良質の知識と経験をもちあわせなければできっこない仕事である。いままで病院業務や経営にまったく関与したことのない市役所職員を異動させていったいこの重要な業務が担えるのだろうかという疑問がわく。長い時間をかけて、いくつか病院内の仕事を担当させて意識的に育てなければ、人材はえられない。いままでそういうことをサボってきたから、付けが回っている。今後の課題としておこう。
 組織を増やすと経費が増え、赤字が膨らむ。具体的な効果が出せなければ新組織の存在意義はない。長谷川市長の市議会での答弁によると、対策は「医師の招聘活動」に尽きている。他には何も提案がない。経営改革には戦略目標が必要だが、その提示すらない。経営推進課はいったいどこへ向かって走るのだろうか?市長は具体的な目標を指示すべきだ。
 10年後26000人の人口を想定して、今後病院事業がどうあるべきかをしっかり見定めて、赤字を市民一人当たり1万円程度に縮小する具体策を策定・実施してもらいたい。この辺りの情報は公開して欲しい。病院がどのように変わるかは市民にとって重大問題である。目標策定と具体策立案・実施に期限を設け走って欲しい。


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