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#150 ゲーム脳化症候群 2,008年3月28日 [57. 塾長の教育論]

  2,008年3月28日   ebisu-blog#150 
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 今冬は雪が少ないと書いたばかりなのに、夕方から大粒の雪が風のない空から落ちて積もっている。8センチばかり積もった。さっと玄関前の雪をかいだ。気温は-0.7度、比較的暖かい夜である。

 気になっていることがある。授業中に私語が多い生徒が数人いる。何度注意しても2分とたたないうちにまたぞろ私語を始めてしまう。私語が飛び交ううちは集中力がなくなり、実際には授業を聞いていないから成績は下がってしまう。授業中の私語は、説明をきちんと聴いている他の生徒には迷惑である。私語が耳に入ると集中力が途切れてしまう。私語の多い生徒は、回りへの配慮ができなくなるのも共通した「症状」であるゲームやインターネット、携帯メールに嵌っている生徒にそうした傾向が強い。

 数年前に携帯メールを一日百通以上打っている生徒がいた。メールを打つのは実に速い、器用なものである。1年間その生徒は私が黒板に解説を書くまで周りとお喋りするか、「待機」していた。ただ黒板を写して帰るだけで、成績はまったく上がらなかった。性格はおおらかでのんびりしており、いつもニコニコしている。問題だけでも3回は読むように言っても、ニコニコ笑顔ですぐまたおしゃべりを始める。めんこい生徒ではあった、だから余計に何とかしてあげたくなる。ついにだめだった。こういうときは集団授業の無力を感じる。1対1で補習授業するしか打つ手がない。これはメールに嵌った極端な例である。小さな私塾でもこういう生徒に出遭うということは、学校ではこうした生徒が少なくないのかもしれない(生徒に聞いたら、わたしは200と言う生徒がいた)。勉強する時間もなくなるわけだ。生活習慣に問題が生じていると見てよいだろう。

 ゲームに嵌っていない生徒の中にも集中力が保てない生徒も小数だがいる。だから全部がゲームのせいとは言えないが、大半の場合にゲームが関係していることは事実である。
 子供は脳が柔らかいことから、ゲームに嵌ると将来を左右しかねない問題を孕んでいる。

 森昭雄氏がゲーム脳という言葉を始めたつかったようだ。脳波のパターンに違いがでるということらしいが、わたしの言うゲーム脳化は少し違う。塾で生徒を観察する限り、自分ではコントロールできないほどの強い習慣性こそがゲーム脳化の本質であると感じている。そして脳は毎日長時間繰り返されるパターンに慣らされてしまう。毎日何時間も前頭前野が停止した状態を繰り返すことが、成長期の子供の脳活動に影響がないわけがないだろう。子供の前頭前野が未発達のままに大人になってしまったら、思考力が弱くセルフコントロールの利かない、切れやすく、コミュニケーションが苦手の人間が出来上がるのは当たり前である。

 程度の差はあるが、ゲーム脳化が進んでいる生徒は、セルフコントロールが弱くなる。つらいことや嫌なこと(たとえば嫌いな科目の勉強)を我慢できない傾向がある。成長期の子供が毎日何時間もゲームにふけっていたら、勉強する時間はなくなる。生活習慣の崩れが学力に影響が大きいのかもしれない。本を読む時間も少なくなる。語彙を豊かにすべき時期にゲームにはまり込んでしまうことで、語彙の脳への入力量が相対的に少なくなってしまうことも問題だ。ゲーム機と向き合う時間が多くなうrことで、人とのコミュニケーションの時間も確実に減る。コミュニケーションによって語彙が広がったり、語彙の使い方をおぼえたり、自分の意思を伝えたりという能力が未発達のままで大人になってしまう。社会人になったときにコミュニケーション障害など、副作用が出て当然である。

 生徒を観察しているとあるときを境に反応が鈍くなることに気づくことがある。こちらから問いかけても返事をしなくなる。コミュニケーションに障害が出ているのだが、本人は気づいていない。問いかけられたことを無視しているのではなくて、自分が問いかけられていることに気づかない。何かに集中していて気がつかないならいいが、よく観察してみると、ボーっとしていながら気がついていないのである。つまり、脳の活動が著しくおちている状態、たとえて言うと「上の空」状態である。

 子供の頭は短期間でゲーム脳に変わってしまうようだ。本人に自覚はまったくないのが特徴である。コミュニケーション障害がでるので、質問をするような形式の授業をしていれば教師の方にはその変化がわかる。もちろん本人にはその旨警告するが、煙草やお酒のような「生活習慣病」と同じだから、なかなか治すことができない。専門医ではないから本人の自覚を促すことぐらいしかできないのが実情である。
 脳内麻薬物質のドーパミンが分泌され、一種の反応回路が形成されてしまうから、パチンコや覚醒剤と同じで習慣性が強く、なかなか抜けられないらしい。アルコール中毒の専門病院が千葉の久里浜にあるが、ゲーム脳についてもそうした専門の病院があってもよい。 覚醒剤でもそうだが、脳科学者に言わせると覚醒剤で脳内に形成された反応回路を消すことは不可能で、回路を消去する治療法も技術も存在しないという。脳へのゲームの影響は覚醒剤と変わらない。しかし個人差が大きく、分からないことも多い。環境汚染物質のように作用機序が解明されてからでは手遅れということもある。
 覚醒剤やアルコール中毒は何かのきっかけで「再発」することが知られている。一時やめられても、大人になってからぶり返す危険性がゲーム中毒にもある。社会人になってから、何かのきっかけでまたゲームに嵌って引きこもりになり、仕事へ行けなくなる。
 仕事は必ずコミュニケーションを伴う。それがうまくいかなくなることも「きっかけ」のひとつかもしれない。人に聞かれて返事をしていないことに本人は気づかない。そういうところがこの「病気」の「静かな症状」である。
 煙草やアルコールが子供の発育に悪影響があるので禁止されているが、それ以上の習慣性があり脳へ永久的な回路を刻んでしまうゲームの使用については野放しである。親が守るしかない。


 最近わけのわからない殺人事件が相次いでいるが、その背後にゲームによる引きこもり、コミュニケーション障害のあるケースが見受けられる。ゲームの過度な利用で自己抑制機能の一部が破壊されるようだが、そうした人間が社会に増えていけば、犯罪パターンも変わって当然である。(土浦駅前で起きた殺人事件の犯人は、典型的なゲーマーで大きな大会でも準優勝の経験があると報道されていた。切れやすい性格で、猫や犬を蹴飛ばしたり、エアーガンで狙い撃ちしたりしていたと、テレビで友人が語っていた)

 ゲームの影響は個人差が大きいことも事実である。だから、しばらく嵌っていても自力で抜け出せる子供もいる。飽きてしまうのが一番よい。「飽きる」というのは自己防衛のための健全な「免疫反応」かもしれない。ある高校生は中学校時代ゲームに嵌った典型的な生徒であった。親子で嵌っていたから習慣を変えることはいっそう困難と見ていた。ところが、いまはほとんどゲームをしない。強い意志で自分をコントロールできるようになった、この1~2年で成長したのだろう。


 中学生のときに私語が多くても、高校生になれば授業中に私語をするものは一人もいなくなる。高校生の授業で私語をする者は一人もいない。ゲームにはまって、ゲーム脳となった生徒は塾には来ないのかもしれない。
 学ぶボリュームが圧倒的に増えるから、学習意欲の有無ではっきり差がついてしまうのが高校生だろう。
 高校で勉強するボリュームは中学校に比べると英語も数学も時間数が格段に多くなるので、同じ1週間でも進み方が速い。ゲームは生活習慣の一部になってほとんど変えることができないから、予習・復習をきちんとしない生徒は授業についていけなくなって、脱落してしまう。当然授業や学科内容に興味を失い勉強から遠ざかる。
  就職する場合でも、高校時代に学問を深めておくことは大切で、社会人になったときに必ず役に立つ。仕事で必要な知識や智慧の領域は無限に広がっている。

 さて、対策である。極めて簡単な対処法をお勧めしたい。ゲーム脳の傾向が出ていたら、ゲームを買い与えるのをやめる。もっているハードとソフトは棄てる。子供の側からは強い反発がでるが、妥協してはいけない。子供が可愛いなら断固ゲームとさよならさせるべきだ。持っているゲーム機を壊して棄てるくらいの強い決意がないと、やめさせることは難しい。もったいないと思ってはいけない。数千円のソフトや数万円のゲーム機よりは、子供の将来の方が比較にならないほどの大きな価値がある

 フリータと正規社員では新卒でも年収が100万円も違ってしまうのが現実である。年齢を重ねるほど差は広がる。正社員や正職員の職は数が少なく競争が激しい。特別なコネがある場合を除き、成績上位で性格のよいものから順に採用される。辛いことや嫌なことでも辛抱してやりぬける習慣を中・高生のうちに培っておこう
 子供の生活を見ていれば、ゲーム脳になっているかどうかはわかるはずである。毎日数時間ゲームをやっていたら、これはもう立派な生活習慣病と判断してよいだろう。
 
 他人のことをあげつらうのは易い。こうして毎日ブログを書いている私も似たようなものだろう。私は大人だから、仕事に影響するようなバランスを崩した生活習慣はある程度コントロールできる。ブログは習慣性がたしかにある。気がつくと、夜中の2時頃まで書いていることがある。だから最近1時には書くのをやめて寝ることにした。
 それから生徒をイニシャルで書くことはやめにする。今後は出て来る順にA,B,C,D,E・・・と記す。


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